説明

超音波骨評価装置

【課題】本発明は、簡易な装置構成で適正な校正値を得ることができる超音波骨評価装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、載置台上に載置された生体に対して超音波を送受して生体内の骨の評価を行う超音波骨評価装置であって、前記載置台に載置された生体を挟むように配置される一対の超音波振動子34と、超音波振動子34と生体の間に位置し、音響整合材を収容した一対の整合材袋18と、整合材袋18間に位置し、一対の整合材袋18同士の内部空間を連通させる連通路44と、を備え、一対の超音波振動子34を評価対象の骨を挟む位置と、連通路44を挟む位置において超音波を送受する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を利用して骨の状態を評価する超音波骨評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
踵骨などの骨に超音波を放射し、骨組織中を伝播する超音波の音速や減衰の程度等を測定することにより、骨組織の状態を評価する超音波骨評価装置が実用に供されている。この形式の超音波骨評価装置は、互いに向き合って配置された対をなす超音波振動子を有する。これらの超音波振動子の間に評価対象となる骨を位置させて、対の一方の超音波振動子から超音波を送信し、骨組織を通過した超音波を他方の超音波振動子で受信し、この送受信信号に基づき対象の骨組織の状態の評価を行う。
【0003】
下記特許文献1には、対向する二つの超音波振動子にそれぞれ変形自在の整合材収納部を装着した超音波骨評価装置が記載されている。整合材収納部には、水などの音響整合材が収納されている。二つの整合材収納部の互いに対向する面は変形自在であり、生体に当接したとき、生体表面の形状に倣って変形する。この状態で、超音波の送受を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−204205号公報
【特許文献2】特開平5−228148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、骨組織の状態を精度良く評価するには、装置個々の特性を補正するための校正値や、音響整合材の環境変化や経時変化による特性の変動等を補正するための校正値を得て、その校正値に基づいて、超音波骨評価装置により得られた測定値を補正する必要がある。しかし、従来の超音波骨評価装置では、上記校正値を得るために、装置構成が非常に複雑となっていた。
【0006】
そこで、本発明は、簡易な装置構成で適正な校正値を得ることができる超音波骨評価装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、載置台上に載置された生体に対して超音波を送受して生体内の骨の評価を行う超音波骨評価装置であって、前記載置台に載置された生体を挟むように配置される一対の超音波振動子と、前記超音波振動子と生体の間に位置し、音響整合材を収容した一対の整合材袋と、前記整合材袋間に位置し、前記一対の整合材袋同士の内部空間を連通させる連通路と、を備え、前記一対の超音波振動子を評価対象の骨を挟む位置と、前記連通路を挟む位置において超音波を送受する。
【0008】
また、前記超音波骨評価装置において、前記生体が載置される載置台の載置面は、二つの平面がL字形に配置され、前記一対の超音波振動子は、評価対象の骨及びその周囲の測定領域において走査され、前記連通路は、前記載置面に対して前記生体と反対側の面の近傍あって、且つ前記超音波振動子の超音波の走査範囲内に配置される。
【0009】
また、前記超音波骨評価装置において、前記連通路の両端は前記整合材袋と同質の部材で塞がれ、前記連通路は、前記整合材袋の内部空間と前記連通路内とを繋ぐバイパス路を備える。
【0010】
また、前記超音波骨評価装置において、前記一対の超音波振動子の軸線方向に直交する平面内で、前記一対の超音波振動子を移動させる移動機構を備え、前記一対の超音波振動子は、前記移動機構により、評価対象の骨を挟む位置及び前記連通路を挟む位置に移動される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡易な装置構成で適正な校正値を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】踵骨を評価対象とする超音波骨評価装置の外観を示す斜視図である。
【図2】踵骨を評価対象とする超音波骨評価装置の外観を示す斜視図である。
【図3】足置き台と振動子ユニットの拡大図である。
【図4】足置き台と振動子ユニットの拡大図である。
【図5】振動子ユニットの断面図である。
【図6】整合材袋の表側部材の形状を示す斜視図である。
【図7】整合材袋の表側部材の形状を示す斜視図である。
【図8】整合材袋の表側部材の形状を示す斜視図である。
【図9】連通管の他の構成を示す振動子ユニットの断面図である。
【図10】超音波振動子を移動させる移動機構を示す図である。
【図11】足置き台とこれに置かれた足Fを示す図である。
【図12】超音波骨評価装置の機能構成を示すブロック図である。
【図13】超音波骨評価装置による測定の流れの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態について以下説明する。以下においては、踵骨を評価対象とする超音波骨評価装置について説明するが、評価対象の骨はこれに限られない。踵骨以外の骨についても、この骨及びその周囲の形状、特性等に合わせて、装置の構成を適宜変更して、本発明の趣旨を達成することは、当業者においては容易に想定可能である。
【0014】
図1及び図2は、踵骨を評価対象とする超音波骨評価装置10の外観を示す斜視図である。装置本体12の上部には、足置き台14が配置されている。足置き台14は、略L字形の載置面を有する台であり、図2の鎖線で示すように足Fを載せ、位置決めを行うものである。踵を足置き台14のL字形の角に合わせることにより、足の位置決めが行われる。足置き台14の左右には、踵部分を挟むように、超音波振動子を含む二つの振動子ユニット16A,16Bが配置されている。左右の振動子ユニット16A,16Bは、対称の構造を有しており、特に左右を区別する必要がない時には、単に振動子ユニット16と記して、以下説明する。また、左右の振動子ユニット16A,16Bを構成する要素についても、左右の区別が必要な場合はその符号にA,Bを付し、また区別の必要がない場合には数字の符号のみを用いて説明する。振動子ユニット16は、踵部分と超音波振動子の間の音響整合を図るために音響整合部を有している。音響整合部は変形可能であり、変形して踵部分に密着し、間の空気層を排除する。音響整合部は、この超音波骨評価装置10においては、水等の音響整合材と、この水等の収容した整合材袋18を有する。足を足置き台14に置いた時に、整合材袋18が足の踵部分に当接して、超音波振動子とこの踵部分の間の音響インピーダンスの整合を図っている。
【0015】
図3及び図4は、足置き台14と振動子ユニット16の拡大図である。図3,4において、足置き台14の正中面で破断して、一方の側、つまり被検者が足置き台14に足を置いた時に被検者にとって右側となる部分が示されている。足置き台14は、略L字形状であり、L字の2辺を構成する底面20と当接面22のなす角度は、ほぼ直角となっている。被検者は足の踵の後端面を当接面22に当接させて足裏を底面20に置く。この時の足の踵、特に踵骨の位置及びその周囲の位置に当接するよう整合材袋18が配置されている。整合材袋18の踵部分およびその周囲に当接する面は、概略球面の、一つの直径に直交する面と、この直径に平行で互いに直交する二つの面とで囲まれた部分の形状となっている。足置き台14に足を置くと、踵部分及びその周囲の左右両側に整合材袋18が当接し、整合材袋18が踵部分の表面に倣うように変形し、空気層の介在を排除する。
【0016】
図5は、振動子ユニット16の断面図である。整合材袋18は、対象の生体である足側の表側部材24と反対側の裏側部材26を、環状のリングフレーム28に固定することにより形成される。表側部材24は、その周縁部をリングレームとリングフレーム28の内側に位置する第1固定リング30に挟持され、リングフレーム28に固定されている。また、裏側部材26は、その周縁部を第1固定リング30と第2固定リング32に挟持され、間接的にリングフレーム28に固定されている。裏側部材26は、蛇腹状に屈曲しており、中心部分は、超音波振動子34の外周部分に結合されている。裏側部材26の更に背面側には、裏側部材26が背面側に膨出しないように規制し、これを支持する支持盤36が配置されている。支持盤36は複数の円環板状の支持プレート38a,38b,38c,38dから構成され、最外周の支持プレート38aは、外周縁部分の円筒形状の部分を更に有し、これが、リングフレーム28に固定されている。最内周の支持プレート38dは、超音波振動子34の外周部分に固定されている。裏側部材26は、超音波振動子34の外周部分に設けられたフランジ40と、最内周の支持プレート38dに挟持されて超音波振動子34に固定される。支持プレート38a,38b,38c,38dは、相互にスライド可能であり、後述する超音波振動子34の振動子軸線に直交する方向の動きを許容する。
【0017】
図6〜8は、整合材袋の表側部材24の形状を示す斜視図である。表側部材24は円形状の基礎部分41を有し、基礎部分41に、足置き台14上の踵部分に向けて膨出する膨出部42、対をなす振動子ユニット16A,16Bの各々の整合材袋18A,18Bの内部空間を連通する連通管44A,44B、及び校正用のブロックを配置するための校正ブロックポケット46が設けられている。左右の連通管44A,44Bは中央部分で連結され、左右の整合材袋18の内部空間が連通されている。連通管44A,44Bを通して、左右の整合材袋18内の音響整合材が移動するため、左右の整合材袋18の圧力バランスを容易に保つことができる。後述する移動機構によって、この連通管44A,44Bの位置に二つの超音波振動子34を移動させ、これらを対向させることにより、整合材内の音速等を計測することができる。
【0018】
膨出部42の形状は、球面を一つの直径に直交する第1の平面と、前記の直径に平行で、互いに直交する第2及び第3の平面で切った形状となっている。前記の直径は基礎部分41に直交し、基礎部分41が形成する平面が前記第1の平面に相当する。第2、第3の平面は、足置き台14の底面20と当接面22が形成する面である。第2、第3の平面による切り口が第1の側面48、第2の側面50となる。また、これら第1から第3の平面により切り出された球面の一部が対象部位である足に当接する生体当接面51となる。したがって、膨出部42の第1の側面48は足置き台の底面20に沿い、第2の側面50は当接面22に沿う。そして、第1及び第2の側面48,50から形成される膨出部42の側面は、全体としてL字形の足置き台の足を置く面に沿ってL字形に形成される。また、見方を変えれば、膨出部は、高さの低いドームを、交差する二つの平面により切り取った部分的なドーム形状と見ることもできる。
【0019】
図9は、連通管の他の構成を示す振動子ユニット16の断面図である。連通管44の両端は整合材袋18と同質の部材19で塞がれている。整合材袋18は踵部分に密着させるのに適した材料であれば特に制限されるものではないが、一般的にはゴム材が使用される。連通管44は、左右の整合材袋18の内部空間と連通管44内とを繋ぐバイパス管45A,45Bを備え、左右の整合材袋18の内部空間と連通管44とは、バイパス管45A,45Bを介して連通されている。左右の整合材袋18内の音響整合材は、バイパス管45A,45Bから連通管44A,44Bを通って移動するため、左右の整合材袋18の圧力バランスを容易に保つことができる。後述する移動機構によって、この連通管44の位置に二つの超音波振動子34を移動させ、これらを対向させることにより、整合材袋を介した整合材内の音速等を計測することができる。
【0020】
図10は、超音波振動子34を移動させる移動機構52を示す図である。振動子ユニット16は、支持盤36を省略した状態で示されており、整合材袋18の裏側部材26の蛇腹形状の部分が現れている。二つの超音波振動子34A,34Bは、コの字形又はU字形の支持フレーム54の先端に固定されている。支持フレーム54は駆動機構56により、二つの超音波振動子34A,34Bが対向する方向(つまり超音波振動子の軸線方向)に直交する平面内で移動される。したがって、二つの超音波振動子34A,34Bは、これらが対向する方向においては移動せず、互いの距離も変化しないが、この対向方向に直交する方向には、いずれの方向にも移動可能となっている。この移動において、二つの超音波振動子34A,34Bは、対向状態を常に維持される。この超音波振動子34の移動を許容するために、整合材袋の裏側部材26は、蛇腹構造を有し、また、支持盤36は、多重の支持プレート38a〜38dを有する構成を備える。それぞれの支持プレート38a〜38dが相互にスライドして、超音波振動子34の移動を許容する。
【0021】
図11は、足置き台14とこれに置かれた足Fを示す図である。蛇行する矢印Yは、超音波振動子34の走査の経路を示している。この矢印Yの軌跡を囲む範囲Rが超音波ビームの走査範囲である。超音波振動子34を、踵骨Cを含む範囲Rにおいて走査して、透過超音波のデータを得る。また、図11に示すように、連通管44を足置き台14の底面20に対して足Fと反対側の面の近傍であって、且つ超音波ビームの走査範囲内に配置することが好ましい。また、図の説明は省略するが、連通管44を、足置き台14の当接面22に対して足Fと反対側の面の近傍であって、且つ超音波ビームの走査範囲内に配置してもよい。このような構成により、装置のデッドスペースを有効に活用して、踵骨Cの透過超音波のデータと共に、整合材内の音速等も計測することができる。
【0022】
図12は、超音波骨評価装置10の機能構成を示すブロック図である。振動子ユニット16A,16B、移動機構52の構造については、既に説明した通りである。振動子ユニット16A,16Bのそれぞれの超音波振動子34は、送受信切替回路66を介して受信回路68、送信回路70に接続されている。送受信切替回路66を介することにより、超音波の送信の向き、又は送信を行う超音波振動子を切り替えることができる。また、一つの超音波振動子から送信された超音波が対象にて反射した反射波を同じ超音波振動子で受信するように接続を行うこともできる。この接続を行うことにより、超音波振動子から整合材袋の膨出部42までの距離を測定することができる。
【0023】
制御部72は、受信回路68及び送信回路70を制御して、生体を通過した超音波の受信信号を得る。制御部72は、前述した送受信切替回路66の切替動作を制御する。また、制御部72は、移動機構52の動作も制御し、超音波振動子34を、例えば、図11の符号Yで示す矢印のように移動させ、さらに移動させつつ所定値において超音波の送受信波を制御し、走査範囲R(すなわち測定を行う範囲;測定範囲)内の所定の点における超音波の受信信号を得る。また、制御部72は、移動機構52の動作を制御し、超音波振動子34を、連通管の位置に移動させ、超音波の送受波を行い、連通管を通過した超音波の受信信号を得る。これらの受信された信号は、受信データ処理部74で処理され、受信データとして格納部76に格納される。格納される受信データは、受信波形、すなわち時間に対して変化する音圧のデータを含む。
【0024】
超音波骨評価装置10は、受信波形について演算処理を行う演算部78を有する。演算部78の演算処理については後述する。さらに、超音波骨評価装置10は、操作者が、装置の動作の指示を行うための操作パネル部80及び結果の表示を行う表示部82を有している。操作パネル部80と表示部82の機能が一体となった所謂タッチパネルディスプレイを採用することもできる。
【0025】
本実施形態の演算部78は、連通管を通過した超音波の受信信号に基づく受信データを基に、装置個々の特性を補正するための校正値や、音響整合材の環境変化や経時変化による特性の変動等を補正するための校正値を算出する。以下、骨の領域を通過する超音波の音速に基づく骨密度の評価を例に、校正値の算出について説明する。
【0026】
一つの超音波振動子34から送信された超音波が膨出部42で反射した反射波を同じ超音波振動子34で受信することにより、超音波振動子34から整合材袋18の表面つまり膨出部42までの超音波の伝播時間が算出される。超音波振動子34から膨出部42までの距離は、超音波振動子34から膨出部42までの超音波の伝播時間と音響整合材内を通過する音速により算出される。音響整合材内を通過する音速がほとんど変化しない場合には既知の値を用いることも考えられるが、温度等の環境変化や継続的な使用による経時変化により音響整合材内を通過する音速が変化する場合がある。そのため、高い精度の測定を行う点では、音響整合材内を通過する音速を測定する必要がある。音響整合材内を通過する音速を測定する方法としては、生体を挟まない状態で、一対の整合材袋同士を接触させ、超音波の送受波を行い、音響整合材内を通過する超音波の音速を計測する方法が考えられる。しかし、このような系では、一対の整合材袋同士を接触させるためには、整合材袋を伸長させる必要がある。そして、整合材袋を伸長させるためには、多量の音響整合材が必要であったり、圧力センサや圧力ポンプが必要であったりして、装置構成が複雑になり、また装置のコストが高くなるという問題がある。
【0027】
そこで、本実施形態では、連通管44を設けている。連通管44を挟む位置に一対の超音波振動子34を移動させると、対向する超音波振動子34の間には、生体が存在せず音響整合材のみとなる。よって、この位置で、超音波振動子34間の超音波の伝播時間を計測することにより、音響整合材内の音速が算出される。また、図9に示すように、連通管44の両端を整合材袋18と同質の部材19で塞ぎ、その連通管44を挟む位置で、超音波振動子34間の超音波の伝播時間を計測することにより、整合材袋18を介した音響整合材内の音速が算出されるため、より精度の高い校正値を得ることができる。なお、対をなす超音波振動子間の距離は既知である。そして、このように測定された音響整合材内の音速を利用することにより、評価対象の骨を通過する音速をより高い精度で測定することができる。具体的には、以下の手法により、音響整合材内の音速の変化の影響を排除した測定を行うことができる。
【0028】
演算部78は、連通管44を通過した超音波の受信信号に基づく受信データから、連通管44を通過する超音波の伝播時間を得て、その伝播時間と対をなす超音波振動子34の距離(一定)から、音響整合材内の音速を算出する。この値を校正値として用いて、超音波振動子34から膨出部42までの距離を算出し、そして、対をなす超音波振動子34の距離(一定)から、超音波振動子34から膨出部42までの距離を減算して、踵部分の超音波の伝播距離を算出する。また、走査範囲R(すなわち測定を行う範囲;測定範囲)内の所定の点における超音波の受信信号に基づく受信データから、骨を挟んだ位置における超音波振動子間の超音波の伝播時間を得て、その伝播時間から、超音波振動子34から膨出部42までの超音波の伝播時間を減算して、踵部分を通過する超音波の伝播時間を算出する。そして、踵部分を通過する超音波の伝播時間と踵部分の超音波の伝播距離から踵部分を伝播する超音波の音速を算出する。骨密度が低下すると、骨を伝わる音速が低下するため、骨の領域を通過する超音波の音速に基づく骨密度の評価は、その低下の程度により行うことができる。
【0029】
このように、踵部分における音速を算出する場合には、連通管44を通過する超音波の伝播時間から整合材18内の音速を求め、その整合材18内の音速を校正値として利用することにより、簡易な装置構成で高い精度の測定を行うことができる。本実施形態の校正値は、音速に制限されるものではなく、例えば、連通管44を通過した超音波の受信信号の時間波形に基づき、受信信号の時間波形自体から、その波形の鋭さを示す指標値を求め、その指標値を校正値として利用する等でもよい(指標値の算出方法は、例えば、特開平9−201354号公報参照)。
【0030】
図13は、超音波骨評価装置10による測定の流れの説明図である。まず、足置き台14上に被検者の足をセットする(ステップS100)。一方で、操作者は操作パネル部80より測定条件の入力を行い、足がセットされたことを確認した後、測定開始の指示を行う(ステップS102)。制御部72は、操作者の指示に従い、送受信切替回路66を制御して二つの超音波振動子34のうち一方を送信側、他方を受信側に設定する(ステップS104)。また、制御部72は、移動機構52に指示し、連通管44の位置に二つの超音波振動子34を移動させ、これらを対向させ、超音波の送受波を行う(ステップS106)。連通管44を通過した超音波の受信信号を格納部76に格納する(ステップS108)。また、制御部72は、超音波振動子34が図11に示す経路に沿って移動するように移動機構52に指示し、超音波ビームの走査を開始する(ステップS110)。超音波振動子34の移動中に、送信回路70は、所定間隔で超音波の送信を実行し(ステップS112)、また受信を行う(ステップS114)。走査範囲R内の超音波の受信信号を格納部76に格納する(ステップS116)。走査が終了しているか否かが判断され(ステップS118)、終了していなければ、ステップS110〜S116を繰り返し、順次、次の測定点における受信データを取得する。走査が終了したら、演算部78は、連通管44を通過した超音波の受信信号に基づく受信データを基に校正値を算出し、算出した校正値と、演算部78は走査範囲R(すなわち測定を行う範囲;測定範囲)内の所定の点における超音波の受信信号に基づく受信データから、踵部分を伝播する超音波の音速等を算出し、骨評価を行う(ステップS120)。
【符号の説明】
【0031】
10 超音波骨評価装置、12 装置本体、14 足置き台、16,16A,16B 振動子ユニット、18,18A,18B 整合材袋、19 部材,20 底面、22 当接面、24 表側部材、26 裏側部材、28 リングフレーム、30 第1固定リング、32 第2固定リング、34,34A,34B 超音波振動子、36 支持盤、38a,38b,38c,38d 支持プレート、40 フランジ、41 基礎部分、42 膨出部、44,44A,44B 連通管、45A,45B バイパス管、46 校正ブロックポケット、48 第1の側面、50 第2の側面、51 生体当接面、52 移動機構、54 支持フレーム、56 駆動機構、66 送受信切替回路、68 受信回路、70 送信回路、72 制御部、74 受信データ処理部、76 格納部、78 演算部、80 操作パネル部、82 表示部、C 踵骨、F 足、R 走査範囲。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
載置台上に載置された生体に対して超音波を送受して生体内の骨の評価を行う超音波骨評価装置であって、
前記載置台に載置された生体を挟むように配置される一対の超音波振動子と、
前記超音波振動子と生体の間に位置し、音響整合材を収容した一対の整合材袋と、
前記整合材袋間に位置し、前記一対の整合材袋同士の内部空間を連通させる連通路と、を備え、
前記一対の超音波振動子を評価対象の骨を挟む位置と、前記連通路を挟む位置において超音波を送受することを特徴とする超音波骨評価装置。
【請求項2】
請求項1記載の超音波骨評価装置であって、
前記生体が載置される載置台の載置面は、二つの平面がL字形に配置され、
前記一対の超音波振動子は、評価対象の骨及びその周囲の測定領域において走査され、
前記連通路は、前記載置面に対して前記生体と反対側の面の近傍あって、且つ前記超音波振動子の超音波の走査範囲内に配置されることを特徴とする超音波骨評価装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の超音波骨評価装置であって、
前記連通路の両端は前記整合材袋と同質の部材で塞がれ、
前記連通路は、前記整合材袋の内部空間と前記連通路内とを繋ぐバイパス路を備えることを特徴とする超音波骨評価装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の超音波骨評価装置であって、
前記一対の超音波振動子の軸線方向に直交する平面内で、前記一対の超音波振動子を移動させる移動機構を備え、
前記一対の超音波振動子は、前記移動機構により、評価対象の骨を挟む位置及び前記連通路を挟む位置に移動されることを特徴とする超音波骨評価装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−75821(P2012−75821A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226625(P2010−226625)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(390029791)日立アロカメディカル株式会社 (899)
【Fターム(参考)】