説明

超高純度水素ガスの製法

【課題】不純物を含んだ水素ガスを安価で効率よく、大量に高純度化できる精製法と製造装置を提供する。
【解決手段】一次水素ガス濾過槽10内に超純水32が入れられ、一次水素ガス濾過槽10に導入された水素ガスは超純水層11を通る間に精製され高純度化一次水素ガスとなり、次いで、高純度水素ガス接続管を通って二次高純度水素ガス濾過槽15に導入される。二次高純度水素ガス濾過槽15において、下方は高純度水素ガス・超純水混合室16が位置し、上方は超高純度水素ガス室19が位置する。二次高純度水素ガス濾過槽15は、下方にメッシュ板などの気体や液体の通過が自由な仕切り板18を設けると共に、その上方にも、メッシュ板などの気体や液体の通過が自由な仕切り板18'を設け、その間にカール線材を充填してある層を形成し水素の純度を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超高純度水素ガスの製法並びにその製造装置に関する。特には、本発明は、不純物を含有している既存の水素ガスから、安価で且つ簡単な手法、安全で且つ効率的な手法で、燃料電池等に使用することのできる、少なくとも96〜97容量%(Vol%)以上の純度を持つ超高純度水素ガスの製法並びにその製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水素は、化学工業及び石油精製などに使用される重要な工業ガスである。最近では、環境負荷の少ないクリーンエネルギー源として注目されている。特には、家庭用や自動車用の燃料電池等の用途に期待されている。燃料電池の発展に伴い、拡大する水素需要に答える、安価で且つ効率的な、そうして容易な手法での、水素の高品質化が不可欠となっている。
【0003】
ガスを高純度化するには、膜分離あるいは比重分離などの方法があった。しかしながら、水素は元素中最も軽くしかも粒径が小さいために、従来の比重分離では、その高純度化は困難を極めた。また、膜分離も効率上必ずしも満足のいくものではなかった。例えば、Pd膜透過法等などが用いられている。Pd膜透過法は、一定以上の温度において、Pd合金の組織内を原子状水素のみが拡散透過するという現象を利用したもので、Pd合金膜の一次側へ原料水素を流し圧力をかけ、約420℃程度に加熱する。水素ガスは、Pd合金膜表面へ物
理吸着されて、表面で水素原子に解離し、さらに水素イオンの状態でPd合金の格子内に侵入し、水素ガスの濃度差により、Pd合金膜を拡散透過し、二次側に純粋な水素ガスとして透過する。水素以外の不純物はPd合金膜を透過できず、Pd合金膜の一次側でブリードガスとともに排気される。本Pd膜透過法は、精製ガス流量当りの装置コストが高く、さらに、大量の水素ガスを効率よく且つ安価に得るには問題がある。
【0004】
さらに、圧力を変化させて吸着と脱着を繰り返すことを利用する圧力スイング吸着(Puressure Swing Adsorption: PSA)を含めたガス吸着による分離法もあるが、効率が悪く産
業利用に耐えるものではなかった。水素ガスの精製法は、特開平6-31104号公報〔特許文
献1〕、特開平7-242401号公報〔特許文献2〕、特開平10-203803号公報〔特許文献3〕
、特開平11-29301号公報〔特許文献4〕、特開2003-170018号公報〔特許文献5〕にも開
示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6-31104号公報
【特許文献2】特開平7-242401号公報
【特許文献3】特開平10-203803号公報
【特許文献4】特開平11-29301号公報
【特許文献5】特開2003-170018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水素ガスを発生させる方法は種々あるが、生成される水素ガスはいずれも不純物が含まれた状態のガスのために、そのままでは燃料電池等に使用するのには問題があり、高純度化が要請されており、それに応えることが求められている。
水素は元素中最も軽くかつイオン半径も小さいことによって、不純物からの完全分離は産業規模においては事実上不可能に近かった。また、不純物の主なものはとしては、窒素
、酸素、炭酸ガス、有機ガスの中にはメタン、エタン、プロパン、その他の有機物等である。これらの不純物は水素に比べると比重もイオン半径も大きいことから容易に分離できそうに思えるが、水素原子のガスとしてミーンフリーパス(mean Free path:平均自由飛程)が長いために不純物の中に多量の水素ガスが混入して分離が難しいのである。
燃料電池等に使用するにも十分な純度を有する水素ガスを、簡単で、経済的で、さらに安全に且つ効率的に取得する技術の開発が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記の課題を解決するために鋭意研究を行った。その結果、水素ガスの高純度化については、不純物を含有する水素ガスが通過するタンク内に超純水を入れておき、タンク内の超純水をポンプにて強制循環することによっていとも簡単に超高純度化することができることを知見し、また、超純水を入れたタンク内にステンレスカール線材を充填した層を設置し、当該カール線材充填層を、強制循環せしめられている超純水が通過せしめるようにされており、一方、該超純水の流れに向流接触するように、不純物を含有している水素ガスが当該カール線材充填層を通過するようにせしめられることにより、より効率よく水素ガスを高純度化することが可能であることを見出した。
水素ガス中の不純物の特性を逆に捉えることによって、上記不純物と水の親和性を利用して、不純物の除去を優先させることが可能である。
【0008】
かくして、本発明は次なる態様を提供している。
〔1〕超純水相を有する超純水タンクであるガス濾過槽内に不純物を含有した水素ガスを導入し、且つ、超純水相を通過させることによって、水素ガスの水素の純度を高めることを特徴とする水素ガス精製法。
〔2〕超純水タンクであるガス濾過槽内の上下の部分にステンレスのパンチングメタル板を置き、その間にステンレスカール線材を充填し、そこに超純水を満たした超純水相を設け、ガス濾過槽内に導入された不純物を含有した水素ガスが当該超純水相中を通過するようにせしめ、水素ガスの水素の純度を高めることを特徴とする上記〔1〕に記載の水素ガス精製法。
〔3〕原料水素ガス中に含まれる不純物が超純水により除去できることを利用し、気体である水素ガスと液体である超純水との接触を含めた相互作用を効率的に行おうとする水素ガス製造装置で、当該水素ガス製造装置は、不純物を含有している原料水素ガスから不純物含有量の低減化されている高純度水素ガスを製造する高純度水素ガス製造装置であって、不純物を含有している原料水素ガスを供給する原料水素ガス供給ラインと、精製された高純度水素ガスを取り出す高純度水素ガスラインと、超純水を供給する超純水供給ラインと、使用済みの水を排出する水排出ラインと、超純水を収容している水素ガス濾過槽であり、且つ、超純水で満たされた空間である超純水層に気体である水素ガスを放出するための水素ガス出口ノズルを備え、超純水層を通過した気体である水素ガスが貯留する高純度水素ガス室を有している水素ガス濾過槽とを備えることを特徴とする水素ガス製造装置。〔4〕該水素ガス濾過槽は、3段構造とされており、下段に超純水の貯留槽(超純水室)、上段に精製された水素ガス槽(高純度化水素ガス室)を備え、中段部の上下の位置に気液通過が自由な仕切り板が配置され且つその中間部にカール線材が充填されている中間槽(中間室)を備えたものであることを特徴とする上記〔3〕に記載の水素ガス製造装置。〔5〕一次水素ガス濾過槽、二次水素ガス濾過槽、及び、高純度化された超高純度水素ガスを貯留する水素ガス槽を少なくとも備えていることを特徴とする高純度水素ガス発生装置であることを特徴とする上記〔3〕又は〔4〕に記載の水素ガス製造装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、極めて簡単な手法であり、且つ、経済的に優れ、さらに、環境負荷の点でも有利に、不純物を含有している水素ガスを高純度の水素ガスにすることが可能であり、得られる高純度化された高純度水素ガスや超高純度水素ガスは、それを燃料電池用水
素ガスとして好適に使用可能であるばかりか、その他の用途に使用できる。
本発明のその他の目的、特徴、優秀性及びその有する観点は、以下の記載より当業者にとっては明白であろう。しかしながら、以下の記載及び具体的な実施例等の記載を含めた本件明細書の記載は本発明の好ましい態様を示すものであり、説明のためにのみ示されているものであることを理解されたい。本明細書に開示した本発明の意図及び範囲内で、種々の変化及び/又は改変(あるいは修飾)をなすことは、以下の記載及び本明細書のその他の部分からの知識により、当業者には容易に明らかであろう。本明細書で引用されている全ての特許文献は、説明の目的で引用されているもので、それらは本明細書の一部としてその内容はここに含めて解釈されるべきものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に従った高純度水素ガス発生装置において用いられる超純水による水素ガス精製装置の一例の概略を示すフロー図である。
【図2】本発明に従った高純度水素ガス発生装置の一例の概略を示すフロー図である。
【図3】実施例1で使用された超純水による不純水素ガス濾過装置の概略を示す。
【図4】実施例1の〔1〕の反応で発生させた水素ガスを直接捕集したガス試料(試料No.1)のトータルイオンクロマトグラフィーを示すチャートである。図4の下段のチャートは、上段のチャートの拡大図である。図4中、ピーク1:推定成分2,2,4-トリメチルペンタン、ピーク2: 推定成分2,5,9-トリメチルデカン、ピーク3: 推定成分2,5,9-トリメチルデカン、ピーク4: 推定成分3,5,5-トリメチルヘキセン-1、ピーク5: 推定成分デカナール、そして6: 推定成分n-ヘキサデカン酸である。
【図5】実施例1の〔2〕で超純水精製処理後に超純水上で捕集された水素ガス試料(試料No.2)のトータルイオンクロマトグラフィーを示すチャートである。図5の下段のチャートは、上段のチャートの拡大図である。図5中、3: 推定成分2,5,9-トリメチルデカン、そして5: 推定成分デカナールである。
【図6】図4中のピーク1の成分検索の結果を示す。上段は、ピーク1の質量スペクトル、下段は、検索成分である2,2,4-トリメチルペンタンの質量スペクトルを示す。
【図7】図4中のピーク2の成分検索の結果を示す。上段は、ピーク2の質量スペクトル、下段は、検索成分である2,5,9-トリメチルデカンの質量スペクトルを示す。
【図8】図4中のピーク3の成分検索の結果を示す。上段は、ピーク3の質量スペクトル、下段は、検索成分である2,5,9-トリメチルデカンの質量スペクトルを示す。
【図9】図4中のピーク4の成分検索の結果を示す。上段は、ピーク4の質量スペクトル、下段は、検索成分である3,5,5-トリメチルヘキセン-1の質量スペクトルを示す。
【図10】図4中のピーク5の成分検索の結果を示す。上段は、ピーク5の質量スペクトル、下段は、検索成分であるデカナールの質量スペクトルを示す。
【図11】図4中のピーク6の成分検索の結果を示す。上段は、ピーク6の質量スペクトル、下段は、検索成分であるn-ヘキサデカン酸の質量スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、様々な方法によって発生させたあらゆる水素ガスには、必ず多量の不純物が含まれているが、その不純物を、簡単な手法で取り除いて水素ガスを超高純度にする方法を教示するものである。
水の構造については、川田薫理学博士によって1997年、次のように明らかにされている(Kaoru Kawada, Advances in Colloid and Interface Science, 71-72 (1997), pp.299-316)。超純水は水分子が合体して平均2nmの1次粒子をつくり、1次粒子が合体して平均20nmの2次粒子を形成し、この2次粒子がさらに、合体して平均100nmの3次粒子を形成し、これらの粒子の離合集散を激しく繰返しているのが水の実体であると言うものである。
つまり、水は球形粒子の離合集散を繰り返しているために、水の粒子と粒子の間は隙間だらけであり、その隙間に水以外のものを容易に取り込むことができるという。水のこの
様な特徴を利用すると、水素ガスを、超純水の中を通過させるだけで、水素ガス中の不純物を取り除くことが極めて簡単にできることが分かる。
水だけで水素ガス中の不純物が除けない場合には、水中にパンチングメタル板やステンレスカール線材の充填材を詰め込んで、そこに水素ガスを通過させることで、実用上ほとんど問題のない超純粋の水素ガスを容易に得ることができる。
【0012】
水素の製造方法としては、様々な方法が知られており、その各水素製造法に応じて水素ガスに含まれる不純物も異なっている。不純物の主なものはとしては、窒素、酸素、炭酸ガス、有機ガスなどが挙げられ、有機ガスの中にはメタン、エタン、プロパン、その他の有機物等が挙げられる。本発明では、原料水素ガス中に含まれる不純物としては、これらの成分の全てを含むという限定的な意味ではなくて、それらのうちの少なくとも一部を含む場合も包含するという趣旨である。世界的には、水素はその大部分が熱化学的方法で製造され、残りは電気化学的な方法などで得られている。
熱化学的方法では、水蒸気改質法、部分酸化法、自己加熱改質法などが挙げられる。水蒸気改質法は、天然ガス(メタン)、LPG、ナフサ、石炭などの資源(主に化石資源を包含
する)を触媒存在下に高温のもとで水蒸気と反応させて合成ガスを得る方法で、得られた合成ガスには、炭酸ガス(CO2)と水素(H2)が主として含まれる他、未反応の原料炭化水素
、一酸化炭素、窒素、酸素、その他の不純物が含まれる。水蒸気改質プロセスとしては、ICI(Imperial Chemical Industries, Ltd.)法やトプソ(Haldor Topsoe法などが挙げられ
、プロセスは一般的には原料脱硫工程、改質工程、精製工程からなっている。本水蒸気改質プロセスを経て得られる製品水素は、通常、純度95〜97%程度である。
【0013】
部分酸化法は、炭化水素などの原料を部分酸化させることにより発生させた熱を利用し、残りの原料炭化水素と水蒸気とを反応させて合成ガスを得る方法である、原料としては、主に、重質油や石炭などが利用される。重質油ガス化プロセスとしては、GE(General Electric)法(Texaco法)、Shell法などが挙げられる。自己加熱改質法は、炭化水素などの
原料の一部を酸素あるいは空気で燃焼させ、その発熱により炭化水素と水蒸気を触媒存在下で改質反応させ、合成ガス(一酸化炭素と水素の混合ガス)を製造するプロセスであり、改質反応は吸熱反応であるが、反応に必要な熱量を炭化水素自らの酸化によって供給するため、自己熱(オートサーマル)改質と呼ばれるもので、熱を供給する設備の小型化が可能となるものである。原料としては、メタノールを使用したり、最近では、バイオマス由来のエタノールを使用する技術開発も盛んである。
電気化学的水素製造法としては、水の電気分解が挙げられる。水電解法としては、アルカリ水電気分解法、固体高分子電解質水電気分解法などが包含され、原子力発電や太陽光発電などの自然エネルギー起源の電力を利用したものも含められる。
【0014】
本発明の水素ガス精製法では、超純水が利用される。該超純水とは、極めて純度の高い水のことであり、その中の不純物を取り除いて純度を限りなくH2Oに近づけたものである

H2Oの25℃における電気抵抗率(比抵抗)の理論値は、18.25MΩ・cm(その逆数である電
気伝導率(導電率)は、0.05479μS/cm)とされており、この値に近いほど電解質濃度が
低いものであることになる。本水素ガス精製法における超純水としては、15MΩ・cm以上
(0.067μS/cm以下)の水であってよく、典型的な場合、17MΩ・cm以上(0.0588μS/cm以下)の水、好適には、18MΩ・cm以上(0.0555μS/cm以下)の水が挙げられる。より好適
には、0.05μS/cm以下の水を使用できる。さらに、水質は、TOC(Total Organic Carbon, μg/L)、微粒子数(個/L)、生菌数(個/L)、溶存酸素(μg/L)、シリカ(μg/L〜ng/L)、陽イオン、陰イオン(μg/L〜ng/L)、重金属(μg/L〜ng/L)、その他の元素、イオン、分子(μg/L〜ng/L)などについても、指標とされる。当該超純水のTOCとしては、例えば、少なくとも50μg/L未満のものが挙げられる。
【0015】
一つの具体的な態様では、本水素ガス精製法で使用される超純水としては、比抵抗18M
Ω・cm以上、TOC 5ppb以下、イオン状シリカ 1 ppb以下、金属類 5ppb以下の純度のもの
、好ましくは比抵抗18MΩ・cm以上、TOC 1ppb以下、イオン状シリカ 0.1 ppb以下、金属
類 5ppb以下の純度のものが挙げられる。ここで、該金属類5ppb以下とは、Na, Ca, Fe, Cu等の各金属の濃度がそれぞれ5ppb以下であることを指す。電気抵抗率(比抵抗)、電気
伝導率(導電率)は、JIS K0552を参照でき、TOCはJIS K0551、微粒子数はJIS K0554、生菌数はJIS K0550、シリカはJIS K0555、陽イオン、陰イオンについてはJIS K0553、JIS K0556、重金属はJIS K0553を参照できる。
【0016】
超純水の製造は、通常、水道水、井戸水(地下水)、洗浄排水等を原水とし、前処理システムにより微粒子等を除去した後、一次純水処理システム(一次純水製造装置)及び二次純水処理システム(二次純水製造装置)からなる超純水製造装置で溶解成分を極限まで除去することにより行われる。
前処理システムは、凝集沈殿装置、砂濾過装置、活性炭濾過装置等から構成され、原水は本前処理システムの当該装置を通過する過程で除濁されて前処理水となる。
得られた前処理水は、一般的には、2床3塔式イオン交換装置、逆浸透膜装置、混床式イオン交換装置、真空脱気装置、精密フィルター、有機物分解装置(紫外線照射装置)、活性炭塔等から構成される一次純水処理システムでイオン性の不純物や微粒子状の不純物を除去せしめて一次純水とし、次に、有機物分解装置(紫外線照射装置)、混床式ポリッシャー、限外濾過膜装置、逆浸透膜装置等から構成される二次純水処理システムで、更に、微量残留する微粒子、コロイダル物質、有機物、金属及びイオン等の不純物を除去せしめて、二次純水、すなわち、超純水となる。該混床式ポリッシャーにおいては、通常、強酸性カチオン交換樹脂と強塩基性アニオン交換樹脂を混床としたカートリッジが使用されて、極微量の金属イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、シリカイオンの他、他のイオン交換樹脂からの溶出物等を捕捉している。
【0017】
一つの具体的な態様では、本水素ガス精製法で使用される超純水としては、上記二次純水処理システム(二次純水製造装置)を通すことにより製造されたものを意味してよい。
超純水製造装置及びプラントは、当該分野で知られた製造業者・販売業者から入手できる。当該業者としては、例えば、(株)日立プラントテクノロジー、野村マイクロ・サイエンス(株)、(株)トップウォーターシステムズ、(株)ティエスピー、川崎化工機(株)、旭硝子(株)、栗田工業(株)、オルガノ(株)、日本ミリポア(株)、米国Barnstead社、小松電子(株)などを挙げることができるが、これらに限定されるものではな
い。本水素ガス精製法で使用される超純水としては、こうした超純水製造装置又は超純水製造プラントを通すことにより製造されたものを意味してよい。
【0018】
本発明においては、不純物を含有している水素ガス(すなわち、不純水素ガス)は、超純水と接触させることで、水素ガス中の当該不純物を除去せしめ、それにより水素ガス精製処理が達成される。一般的には、不純水素ガスは、不純物を不可避的に含有している水素ガスである。本発明の対象となる不純水素ガスは、不純物を含有している既存の水素ガスであってよい。典型的な場合、不純物が少なくとも5〜3容量%(Vol%)含まれている水素ガス、あるいは、不純物が少なくとも3〜1容量%(Vol%)含まれている水素ガスなどが挙げられる。典型的な一つの態様では、超純水と不純水素ガスとの接触は、超純水を保有している超純水タンク、すなわち、超純水ガス濾過槽(超純水相を有する超純水タンクであるガス濾過槽)内に、不純水素ガスを導入し、超純水中を水素ガスが通過するようにせしめて行われる。
本発明に従った高純度水素ガス発生装置において用いられる超純水による水素ガス精製装置の一例の概略を示すフロー図を、図1に示す。
【0019】
図1において、水素ガス濾過槽55は超純水タンクであり、配管71より補給水(超純水)
が系内の配管に供給され、洗浄水循環ポンプ70により、水素ガス濾過槽内の上方部に配置された水吐出口61から槽内に入れられる。超純水は、槽内に充填されて、水位センサー51の監視を受けながら、ほぼ当該水位センサー51より少し上となる水位となるように保持される。水吐出口61から槽内に入れられた超純水は、槽内を下降するように流れ、水吸込み口56より水素ガス濾過槽55外に出る。通常の態様では、超純水は、槽内を上方から下方に絶えず流れるようにされる。本水素ガス精製装置の例では、制御盤72があり、水位センサー51、洗浄水循環ポンプ70、供給水バルブ、ブロー用バルブ、水質センサー74などと連関せしめられ、必要に応じて、信号を受容したり、制御信号を送って、それぞれを制御できるようにされている。
【0020】
不純水素ガスは、通常は加圧された上で、ガス入口53より、ノズル54より超純水に満たされている槽内の水素ガス-超純水混合室56に噴射される。水素ガス濾過槽55内へ導入さ
れた水素ガスは小さな泡(バブル)となって槽内超純水中を上昇していき、精製化された水素ガスの溜まる高純度化水素ガス室59に至る。水素ガス室59に溜まった高純度化された水素ガスは、水素ガス出口63より取り出される。
水素ガスを超純水で処理する場合の温度は、特に限定されず、適宜最適な温度を選択できるが、通常は常温で行うことができる。水素ガス濾過槽内へ導入される場合の水素ガスの圧力は、典型的には、大気圧以上とすることが好適で、特に限定されず、適宜最適な圧力を選択できるが、例えば、0.15MPa〜100Mpaの範囲から選択でき、ある場合には0.15MPa〜70Mpaの範囲から選択でき、さらには0.2MPa〜35Mpaの範囲から選択でき、好適には0.2MPa〜20Mpaの範囲、より好適には0.5MPa〜10Mpaの範囲、さらにより好適には1.0MPa〜3.0Mpaの範囲から選択できる。例えば、1.5Mpaを採用することができる。
【0021】
本発明に従えば、もっとも単純な態様では、下記で説明する図2の一次水素ガス濾過槽10におけるように、超純水の溜められている槽内の超純水層に不純水素ガスを吹き入れることにより、精製処理を行うことが可能である。この手法では、例えば、88vol%の純度
の水素ガスを、単純且つ簡単は手法で、95.5〜96vol%の純度の水素ガスに精製できるし
、より高純度の水素ガスに精製することも可能である。
【0022】
別の態様では、図1に示されるように、水素ガス濾過槽55内の上部の位置及び下部の位置にメッシュ板又はパンチングメタル板58', 58を配置し、その間にカール線材57を充填
して、超純水の水流に乱流が発生するようにして、水素ガスのバブルとの接触が増大するようにされて、より不純物が除去できるようにしてあることができる。
かくして、本発明では、超純水ガス濾過槽内に不純物を含有した水素ガスを通過せしめ、超純水で水素ガスから不純物を除去することによって少なくとも95〜96vol%以上に水
素ガスの純度を上げることを特徴とする水素ガス精製法が提供される。
【0023】
上記より明らかなように、本発明では極めて簡単な手法であり、且つ、経済的に優れており、さらに、環境負荷の点でも有利である、高純度水素ガス又は超高純度水素ガス製造装置が提供できる。
当該水素ガス製造装置は、原料水素ガス中に含まれる不純物が超純水により除去できることを利用し、気体である水素ガスと液体である超純水との接触などを含めた相互作用を効率的に行おうとするもので、不純物を含有している原料水素ガスから不純物含有量の低減化されている高純度水素ガスを製造する高純度水素ガス製造装置、あるいは、ある程度精製されており不純物含有量の低減化されている高純度水素ガスから不純物含有量の極めて少ない超高純度水素ガスを製造する超高純度水素ガス製造装置であって、不純物を含有している原料水素ガスを供給する原料水素ガス供給ライン(あるいは不純物を含有している高純度水素ガスを供給する原料高純度水素ガス供給ライン)と、精製された高純度水素ガスを取り出す高純度水素ガスライン(あるいは精製された超高純度水素ガスを取り出す超高純度水素ガスライン)と、超純水を供給する超純水供給ラインと、使用済みの水を排
出する水排出ラインと、超純水を収容している水素ガス濾過槽であり、且つ、超純水で満たされた空間である超純水層(あるいは超純水を満たしてある超純水室(超純水槽))に気体である水素ガスを放出するための水素ガス出口ノズルを備え、超純水層を通過した気体である水素ガスが貯留する高純度水素ガス室(高純度水素ガス槽)〔あるいは超高純度水素ガス室(超高純度水素ガス槽)〕を有している水素ガス濾過槽を有しており、該水素ガス濾過槽内で気体である水素ガスと液体である超純水との接触などを含めた相互作用を行うことが可能であるようされているものであることを特徴とする。
【0024】
該水素ガス濾過槽内では、導入された水素ガスに含まれる不純物が超純水により除去さることが果たされるよう、水素ガスが通り抜ける超純水層の距離が実質的にあるように図られるが、それは超純水中の水素ガスの気体の泡のサイズを小さいものとしたり、超純水の流れに乱流を発生させるなどして、より効率的にしたり、及び/又は、超純水層の厚みを大きくして(水深を深いものとして)達成するものであってもよい。通常、精製作業中は、超純水は、水素ガス濾過槽内に絶えず供給され且つ使用済みの水は絶えず排出されて、水素ガス濾過槽内では超純水層に水流が存在するようにされている。一般的には、気体である水素ガスと液体である超純水とは、水素ガス濾過槽内の超純水層で向流接触される。
該水素ガス濾過槽は、水位センサーを備えて、超純水の濾過槽内での水位が監視及び/又は制御可能とされている。水の移動速度は、特に限定されず、適宜最適な水流速度を選択できるが、通常は1.0 cm/sec〜10m/secの範囲から選択でき、ある場合には、0.5m/sec
〜5m/secの範囲から選択でき、典型的な例では、1.0m/sec〜3.0m/secの範囲から選択できる。
【0025】
一つの態様では、該水素ガス濾過槽は、3段構造とされており、下段に超純水の貯留槽(超純水室)、上段に精製された水素ガス槽(高純度化水素ガス室)を備え、中段部の上下の位置に気液通過が自由な仕切り板が配置され且つその中間部にカール線材が充填されている中間槽(中間室)を備えたものであることができる。ここで超純水の水流は下段方向に流れる場合に、カール線材によりかく乱されて、上昇してくる水素ガスのバブルと、より効率よい水素ガス中の不純物を除去せしめるように作用する。本水素ガス製造装置は、水質濃度センサーが備えられ、超純水の濾過槽内での水質の監視及び/又は制御可能とされている。本水素ガス製造装置は、自動運転が可能なように、及び/又は、運転状態の監視及び/又は制御が可能なように、制御システムとリンクされている。
【0026】
本発明に従い、より効率的で且つより実用的な高純度水素ガス発生装置を構築できる。本発明に従った高純度水素ガス発生装置の一例の概略を示すフロー図を図2に示す。
図2中、1は水素発生タンクで、10は一次水素ガス濾過槽、15は二次高純度水素ガス濾
過槽で、24は高純度水素ガス槽である。
水素発生タンク1では、ナトリウム化合物補給槽6よりナトリウム化合物送圧ポンプ7を
使用して注入されたナトリウム化合物の水性液を酸化ニッケル触媒などのニッケル触媒ユニット2の存在下に水素発生反応を行う。図2中、31は水位センサーであり、ナトリウム
化合物補給槽6では液状のナトリウム化合物の量を検知し、水素発生タンク1では、ナトリウム化合物含有の反応性水性液の量を検知している。水素発生タンク1は、海水・真水投
入口3及び水質濃度弁4に連なる水質濃度センサー5が備えられており、タンク1内への水を供給したり、水質管理のためのモニターが可能となっている。水素発生タンク1で生成せ
しめられた水素ガスは発生ガス加圧装置8を介して水素ガス接続管9を通って一次水素ガス濾過槽10に導入される。水素ガスの量は、反応槽1の容量と反応物質の量とその純度等に
よって自由に変えることができる。
【0027】
ナトリウム化合物として、加水分解反応により水素生成が可能な水素化ホウ素ナトリウムを好適に使用できる。水素発生源とする化合物としては、無機水素化物などの水素化物
から選択して使用することもできる。該水素化物としては、特開2001-19401号公報や特開2002-241102号公報などに開示の金属水素錯化合物から選択されたものであってもよい。
水素化ホウ素ナトリウムはアルカリ水溶液中や乾燥空気中で安定であり、金属の塩類、例えば、鉄、コバルト、ニッケル、白金、ロジウム、ルテニウムなどの塩が共存すると、水中での水素発生反応が促進される。水素化ホウ素ナトリウムが加水分解して水素を発生するのを触媒するものとしては、ラネーニッケル触媒などのNi触媒、ラネーコバルト触媒などのCo触媒、スポンジNi-Co合金触媒などの合金触媒、酸化ニッケル触媒など、当該分
野で知られたものから適宜選択して使用されてよい。
【0028】
一次水素ガス濾過槽10内には超純水32が入れられており、一次水素ガス濾過槽10に導入された水素ガスは超純水層11を通る間に精製され高純度化一次水素ガスとなり、次いで、高純度水素ガス接続管を通って二次高純度水素ガス濾過槽15に導入される。一次水素ガス濾過槽10内には、タンクの高さのおおよそ三分の一ぐらいに超純水32が入れてある。
一次水素ガス濾過槽10は、超純水投入口33及び弁12に連なるセンサー13が備えられており、濾過槽10内への超純水を供給したり、水質管理のためのモニターすることが可能となっている。また、濾過槽10は水位センサー31があり、槽内の水の量を監視できる。
二次高純度水素ガス濾過槽15は、超純水補給管21が備えられており、ポンプ20を介して超純水が供給並びに排出できるようになっており、槽15内の超純水の水位を監視できるように水位センサー31も設けられている。二次高純度水素ガス濾過槽15において、下方は高純度水素ガス・超純水混合室16が位置し、上方は超高純度水素ガス室19が位置する。
【0029】
本発明の一つの好ましい具体的な態様では、二次高純度水素ガス濾過槽15は3段構造に
なっており、下段の一段目は超純水の貯留槽があり、そこに一次水素ガス濾過槽10を通過した水素ガスが送られてくる。例えば、この段階で96〜97vol%の水素ガスの純度になっ
ている。この二次水素ガス濾過槽は上部槽から循環ポンプにより超純水が下部槽へ流れ、水素ガスは下部槽から上部槽へ流れ対流する。二次高純度水素ガス濾過槽15において、下方にメッシュ板(あるいはパンチングメタル板)などの気体や液体の通過が自由な仕切り板18を設けると共に、その上方にも、メッシュ板(あるいはパンチングメタル板)などの気体や液体の通過が自由な仕切り板18'を設け、その間にカール線材を充填してある層を
形成しておくことができる。上部槽と下部槽のパンチングメタル仕切り板にサンドイッチされたステンレスカール線材17の作用で水素ガスと超純水の接触効率が上がり、水の球形粒子の隙間に不純物は吸着され、水素ガスは99.9vol%と超高純度化されて超高純度水素
ガス糟24に送られる。当該カール線材を充填してある層は、上方から下方に流れる超純水の水流と下方から上方に移動する水素ガスなどガス流との間の相互作用が増大するとか、水素ガス中の不純物がより低減化されるように工夫されたものであってよく、同様な作用効果が達成できるものであれば、上記に限定されるものではなく、当該分野で知られた技術・手法の中から選んで適用してもよい。上記メッシュ板やパンチングメタル板、さらにカール線材などとしては、耐食性の材料などからなるもの、例えば、ステンレス鋼(ステンレススチール)などを好適に使用できる。二次高純度水素ガス濾過槽15の超純水の水位は、通常の動作中では、メッシュ板18'の少し上方に位置するように制御せしめられてい
る。二次高純度水素ガス濾過槽15にも、弁22に連なるセンサー13が備えられており、濾過槽15内の水質管理のためのモニターをすることが可能となっている。
【0030】
一般的には、本水素ガスの超純水による精製法では、超純水流と不純物を含有する水素ガス流とは向流的に相互作用せしめられて、水素ガスを高純度化するようにせしめられる。超純水流と不純物を含有する水素ガス流との間の相互作用は、水中を泡(バブル)となって移動する水素ガス流のバブルのサイズ及び/又は数を制御することにより調節することも可能である、一般的には、バブルのサイズを小さくしたり、バブルの数を多くすると、水素ガス中の不純物をより低減できる。
超純水層を通過して精製されて得られた超高純度水素ガスは、次に、水素ガス接続管23
を通って水素ガス槽24に送られる。水素ガス槽24には、排水弁28、そしてそれに連なる検知装置29やポンプが備えられていてよい。
こうして得られた超高純度水素ガスは、水素燃料電池25や水素燃料燃焼炉26に超高純度水素ガス接続管27を介して供給される。
【0031】
上記した一つの具体的な態様に従うと、例えば、出発ガスである不純物を含有する水素ガスとして、水素の純度が85〜89vol%の不純水素ガスを上記一次水素ガス濾過槽10に通
すことにより、水素ガスの純度が95vol%以上、例えば、95〜98vol%のいずれかあるいはそれ以上に上げられている高純度水素ガスが得られ、こうして得られた95vol%以上、例
えば、少なくとも95〜98vol%のいずれかあるいはそれ以上に水素ガスの純度が上げられ
ている高純度水素ガスを上記二次高純度水素ガス濾過槽15に通すことにより、水素ガスの純度が97〜99.999999vol%のいずれかあるいはそれ以上に上げられている高純度水素ガスが得られる。一つの好ましい態様では、少なくとも96〜97vol%のいずれかあるいはそれ
以上に水素ガスの純度が上げられている高純度水素ガスを上記二次高純度水素ガス濾過槽15に通すことにより、水素ガスの純度が97〜99.9vol%のいずれかあるいはそれ以上に上
げられている高純度水素ガスが得られる。
【0032】
一つの具体例では、上記一次水素ガス濾過槽10にはタンクのタンクの三分の一ぐらいとなるように超純水32が入れられており、その中を、加圧装置8を通って送られた水素ガス
純度89vol%のガスが通過せしめられる。一次水素ガス濾過槽10を通った高純度水素ガス
は、次に二次高純度水素ガス濾過槽15を通る。二次高純度水素ガス濾過槽15は3段構造に
なっており、下段の一段目は超純水の貯留槽があり、そこに一次水素ガス濾過槽10を通過した水素ガスが送られてくる。この段階で96〜97vol%の水素ガスの純度になっている。
この二次水素ガス濾過槽は上部槽から循環ポンプにより超純水が下部槽へ流れ、水素ガスは下部槽から上部槽へ流れ対流する。上部槽と下部槽のパンチングメタル仕切り板にサンドイッチされたステンレスカール線材17の作用で水素ガスと超純水の接触効率が上がり、水の球形粒子の隙間に不純物は吸着され、水素ガスは99.9vol%と超高純度化されて超高
純度水素ガス糟24に送られる。
かくして、本発明に従えば、超純水ガス濾過槽内の該槽の上下にステンレスのパンチングメタル板を置き、その間にステンレスカール線材を充填し、該ガス濾過槽内のカール線材充填部を満たすように超純水を該ガス濾過槽内に入れ、少なくとも95〜96vol%のいず
れかあるいはそれ以上に水素ガスの純度が上げられている高純度水素ガスを通過させることによって純度99.9vol%以上の超高純度水素ガスを得ることを特徴とする水素ガス精製
法が提供される。
【0033】
上記から明らかな如く、本発明では、超高純度水素ガス発生装置が提供される。
当該超高純度水素ガス発生装置は、超純水による水素ガス精製処理を少なくとも2段階行って、極めて簡単な手法であり、且つ、経済的に優れており、さらに、環境負荷の点でも有利であるもので、水素の発生から高純度化までを行うことのできるものである。当該超高純度水素ガス発生装置は、水素発生タンク、一次水素ガス濾過槽、二次水素ガス濾過槽、及び、高純度化された超高純度水素ガスを貯留する水素ガス槽を備えており、さらに、水素ガス発生タンクにおいて発生させられた水素ガスを加圧装置により加圧した上で一次水素ガス濾過槽に導入するための水素ガス接続ライン、一次水素ガス濾過槽で精製されて得られた高純度水素ガスを二次水素ガス濾過槽に設けられたノズルを介して二次水素ガス濾過槽に導入するための高純度水素ガス接続ライン、及び、二次水素ガス濾過槽で精製されて得られた超高純度水素ガスを超高純度水素ガス貯留用水素ガス槽に導くための超高純度水素ガス接続ラインを備えており、該一次水素ガス濾過槽及び該二次水素ガス濾過槽は、共に、超純水供給ライン及び水排出ラインを備え、当該水素ガス濾過槽中の超純水層を水素ガスが通ることにより精製処理がなされることを特徴としている。
該水素ガス濾過槽は、水位センサーを備えて、超純水の濾過槽内での水位が監視及び/
又は制御可能とされている。
【0034】
一つの典型的な態様では、該二次水素ガス濾過槽は、3段構造とされており、下段に超純水の貯留槽(超純水室)、上段に精製された水素ガス槽(超高純度化水素ガス室)を備え、中段部の上下の位置に気液通過が自由な仕切り板が配置され且つその中間部にカール線材が充填されている中間槽(中間室)を備えたものであることができる。ここで超純水の水流は下段方向に流れる場合に、カール線材によりかく乱されて、上昇してくる水素ガスのバブルと、より効率よい水素ガス中の不純物を除去せしめるように作用する。本超高純度水素ガス発生装置は、水質濃度センサーが備えられ、超純水の濾過槽内での水質の監視及び/又は制御可能とされている。本超高純度水素ガス発生装置は、自動運転が可能なように、及び/又は、運転状態の監視及び/又は制御が可能なように、制御システムとリンクされている。
【0035】
本発明の超純水による水素ガス精製技術で得られる水素ガス生成物は、燃料電池用のクリーンエネルギー源として使用可能であり、定置用燃料電池、自動車用燃料電池、家庭用燃料電池、携帯型燃料電池などの用途、水素燃料エンジン、水素燃料タービン、石油精製(分解・脱硫)など、アンモニア、メタノール、半導体用シリコン、光ファイバーなどの製造に際しての化学原料、製鉄工業、半導体工業、電子工業などで利用可能である。
得られる水素ガスは、小規模分散型水素製造装置により製造された水素ガスの精製に利用されることも可能である。
以下に実施例を掲げ、本発明を具体的に説明するが、この実施例は単に本発明の説明のため、その具体的な態様の参考のために提供されているものである。これらの例示は本発明の特定の具体的な態様を説明するためのものであるが、本願で開示する発明の範囲を限定したり、あるいは制限することを表すものではない。本発明では、本明細書の思想に基づく様々な実施形態が可能であることは理解されるべきである。
全ての実施例は、他に詳細に記載するもの以外は、標準的な技術を用いて実施したもの、又は実施することのできるものであり、これは当業者にとり周知で慣用的なものである。
【実施例1】
【0036】
〔1〕 水中に粉末状ニッケル合金触媒(3kg)を入れ、そこに1kgの水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)を添加すると、水中で激しく化学反応が進行して多量の水素ガスを容易に得る
ことができる。得られた水素を主とした混合ガスが5分間で約2,660リットル発生する。
この反応で得られる水素ガスの純度は89vol%である。
【0037】
〔2〕 上記〔1〕で発生させて得られた水素ガスを「不純水素ガス」として水素ガス濾過装置に導入して精製処理を行った。該水素ガス濾過装置の概要は図3に示してある。
図3において、不純水素ガスは入口83よりガス濾過装置85に導入される。ノズル84より不純水素ガスを超純水中に吹き入れることができる。該ガス濾過装置85は、一次フィルター94、二次フィルター93、そして超純水用メンブレンフィルター92を通ることにより得られる超純水(少なくとも電気抵抗が18メガオーム以下とされたもの)が、洗浄用超純水循環ポンプ90を介して、連続的に導入されるように構成できる。図3において、水配管系には、クッションタンク96、自動エアー抜き弁97、ブロー98が備えられており、補給水99の配管を有し、水質濃度センサー95により水質はモニターされることができる。
【0038】
該ガス濾過装置85内の超純水の水位は、下位水位センサー81と上位水位センサー82とを使用して、さらに流量計91を監視しながら、所定の位置となるよう、調節されることができる。水位は、通常は、動作中は、下位水位センサー81と上位水位センサー82との間の位置となるようにされている。該ガス濾過装置85中には、下部と上部にそれぞれメッシュ板88, 88'が設けられており、その上部メッシュ板88'と下部メッシュ板88の間にはカール線
が空間を埋めて満たすように充填されている。該メッシュ板及びカール線は、ステンレス鋼を使用することができ、例えば、SUS304メッシュ板やSUS304カール線を好適に使用できる。ノズル84より吹き込まれた水素ガスは、超純水-水素ガス混合室86を経て、該ガス濾
過装置85中を上昇するように流れて精製され、その精製された水素ガスは、超高純度水素ガス室89を経てガス出口93より、超高純度水素ガスとして得られる。
【0039】
〔3〕 上記〔1〕の反応で発生させた水素ガス(不純物を含有している水素ガス、すなわち、不純水素ガス)を直接捕集したものを、ガス試料No.1とした。また、図3に示された水素ガス濾過装置において、メッシュ板88, 88'並びにその間のカール線が、いずれも
設置してない状態の装置であること、さらに、超純水は装置内に溜めた状態として使用されていることを除いては、上記したのと同一の手法で以って処理してあり、超純水でもって精製処理後に超純水上で捕集された超高純度水素ガスを、ガス試料No.2とした。両試料を検体として、無機ガスについては、ガスクロマトグラフ/熱伝導度検出器(GC-TCD)で、有機ガスについては、ガスクロマトグラフ/質量分析計(GC-MS)及び水素炎イオン化検出
器付ガスクロマトグラフ(GC-FID)で分析した。
検体ガス中の有機ガス成分の定性分析結果を、図4〜11に示す。図4及び5に試料のトータルイオンクロマトグラムを示し、図6〜11に主な検出ピークの質量スペクトルを示す。表1に成分検索結果を示す。
【0040】
【表1】

【0041】
注1)表中の推定成分は、装置内臓の標準物質との照合により検索された成分。
注2)ピーク2、3は、同じ成分が検索されたことから、類似構造の物質と予想される。
注3)m/z35〜500の範囲を観測した。メタンは、他の検出器により確認した。
検体ガス中のガス成分の定量分析結果を、表2及び3に示す。
【0042】
【表2】

【0043】
【表3】

*)T-HC(炭化水素類の総量;メタン換算量):GC-MS測定による主な検出ピークの質量
スペクトルから脂肪族炭化水素類(分岐構造のある脂肪族炭化水素、アルデヒド類、脂肪酸類などの混合物)と推定される。
【0044】
以上より、超純水を使用して、簡単な手法で、水素ガスの純度96vol%程度まで精製で
きることが認められた。この超高純度水素ガスはそのまま燃焼塔に繋いでも良いし、別途燃料電池に利用しても十分通用する内容のものになっている。
【実施例2】
【0045】
〔1〕 実施例1と同様にして、水中に粉末状ニッケル合金触媒を入れ、そこに水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)を添加して、水中で化学反応を進行せしめて、多量の水素ガスを
得る。得られた水素を主とした混合ガスを「不純水素ガス」として水素ガス濾過装置に導入して精製処理を行った。該水素ガス濾過装置の概要は図3に示したとおりのものである。
図3において、不純水素ガスは入口83よりガス濾過装置85に導入される。ノズル84より不純水素ガスが超純水中に吹き入れられる。該ガス濾過装置85には、一次フィルター94、二次フィルター93、そして超純水用メンブレンフィルター92を通ることにより得られる超純水(少なくとも電気抵抗が18メガオーム以下とされたもの)が、洗浄用超純水循環ポンプ90を介して、連続的に導入されている。図3において、水配管系には、クッションタンク96、自動エアー抜き弁97、ブロー98が備えられており、補給水99の配管を有し、水質濃度センサー95により水質はモニターされている。
【0046】
該ガス濾過装置85内の超純水の水位は、下位水位センサー81と上位水位センサー82とを使用して、さらに流量計91を監視しながら、所定の位置となるよう、調節される。水位は、通常は、動作中は、下位水位センサー81と上位水位センサー82との間の位置となるようにされている。該ガス濾過装置85中には、下部と上部にそれぞれメッシュ板88, 88'が設
けられており、その上部メッシュ板88'と下部メッシュ板88の間にはカール線が空間を埋
めて満たすように充填されている。該メッシュ板及びカール線は、ステンレス鋼を使用することができ、例えば、SUS304メッシュ板やSUS304カール線を好適に使用できる。本実施例の精製処理においては、超純水の下降流速は、2m/sec以上として実施され、ノズル84より吹き込まれた水素ガスは、該ガス濾過装置85内で、超純水と向流して接触する。ノズル84より吹き込まれた水素ガスは、超純水-水素ガス混合室86を経て、該ガス濾過装置85中
を上昇するように流れて精製され、その精製された水素ガスは、超高純度水素ガス室89を経てガス出口93より、超高純度水素ガスとして得られる。
本発明は、水素ガス中の不純物を除去するという難問を、水の構造に注目することによって産業レベルで、高純度水素ガスを容易に得る画期的な方法であることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0047】
家庭用や自動車用の燃料電池等の高い純度が要求される用途の要求に応えることができ
、簡単で、経済的で、安全な手法で、高純度の水素ガスを提供することが可能となり、水素ガスをエネルギー源や工業原料とする産業・技術の発達に貢献できる。安価且つ大量に水素ガスを簡単に精製できて、高純度の水素ガスとすることができるので、自動車産業、半導体産業、電子機器産業、化学工業、石油精製など様々な産業での利用に適している。
本発明は、前述の説明及び実施例に特に記載した以外も、実行できることは明らかである。上述の教示に鑑みて、本発明の多くの改変及び変形が可能であり、従ってそれらも本件添付の請求の範囲の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0048】
1:水素発生タンク
9:水素ガス接続管
10:一次水素ガス濾過槽
11:超純水層
14:高純度水素ガス接続管
15:二次高純度水素ガス濾過槽
16:高純度水素ガス・超純水混合室
17:カール線材
21:超純水補給管
23:水素ガス接続管
24:高純度水素ガス槽
32:超純水
33:超純水投入口
55:水素ガス濾過槽
84:ノズル
85:水素ガスガス濾過装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
超純水相を有する超純水タンクであるガス濾過槽内に不純物を含有した水素ガスを導入し、且つ、超純水相を通過させることによって、水素ガスの水素の純度を高めることを特徴とする水素ガス精製法。
【請求項2】
超純水タンクであるガス濾過槽内の上下の部分にステンレスのパンチングメタル板を置き、その間にステンレスカール線材を充填し、そこに超純水を満たした超純水相を設け、ガス濾過槽内に導入された不純物を含有した水素ガスが当該超純水相中を通過するようにせしめ、水素ガスの水素の純度を高めることを特徴とする請求項1に記載の水素ガス精製法。
【請求項3】
原料水素ガス中に含まれる不純物が超純水により除去できることを利用し、気体である水素ガスと液体である超純水との接触を含めた相互作用を効率的に行おうとする水素ガス製造装置で、当該水素ガス製造装置は、不純物を含有している原料水素ガスから不純物含有量の低減化されている高純度水素ガスを製造する高純度水素ガス製造装置であって、不純物を含有している原料水素ガスを供給する原料水素ガス供給ラインと、精製された高純度水素ガスを取り出す高純度水素ガスラインと、超純水を供給する超純水供給ラインと、使用済みの水を排出する水排出ラインと、超純水を収容している水素ガス濾過槽であり、且つ、超純水で満たされた空間である超純水層に気体である水素ガスを放出するための水素ガス出口ノズルを備え、超純水層を通過した気体である水素ガスが貯留する高純度水素ガス室を有している水素ガス濾過槽とを備えることを特徴とする水素ガス製造装置。
【請求項4】
該水素ガス濾過槽は、3段構造とされており、下段に超純水の貯留槽、上段に精製された水素ガス槽を備え、中段部の上下の位置に気液通過が自由な仕切り板が配置され且つその中間部にカール線材が充填されている中間槽を備えたものであることを特徴とする請求項3に記載の水素ガス製造装置。
【請求項5】
一次水素ガス濾過槽、二次水素ガス濾過槽、及び、高純度化された超高純度水素ガスを貯留する水素ガス槽を少なくとも備えていることを特徴とする高純度水素ガス発生装置であることを特徴とする請求項3又は4に記載の水素ガス製造装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−254512(P2010−254512A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−105581(P2009−105581)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(509117687)株式会社日本イノベーション (1)
【Fターム(参考)】