説明

超高純度流体供給配管系用溶接システム

【目的】 超高純度ガス供給配管系施工時に、溶接部表面近傍ならびガス供給系内部に付着した金属を容易にしかも完全に除去することが可能で、短時間で超高純度ガス供給系を立ち上げることが可能な超高純度ガス供給配管系用溶接システムを提供することを目的とする。
【構成】 複数の被溶接部材を溶接にて接続するガス供給配管系用溶接システムにおいて、第1の被溶接部材113に不活性ガスまたは溶接用のバックシールガス供給手段と超純水供給手段とを設け、第2の被溶接部材114に前記不活性ガスまたはバックシ一ルガスの排出手段と超純水排出手段とを設け、前記不活性ガスまたはバックシールガスを流しながら前記第1及び第2の被溶接部材を溶接し、溶接後に超純水を流して、溶接により前記被溶接部材内表面に付着した金属ヒュームを洗浄除去できる構造としたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、超高純度ガス供給配管系用溶接システムに係わり、特に高性能な半導体デバイス等の製造装置に要求される超高純度ガス供給系等の施工費を低減し、施工後の速い高性能な立ち上がりを可能とする超高純度ガス供給配管系用溶接システムに関する。
【0002】
【従来の技術】ガス供給配管系に用いられる配管並びにバルブ、レギュレータ等のガス部品の接合方法として、タングステン・イナートガス溶接、アークガス溶接、電子ビ−ム溶接等が広く用いられている。しかし、これら従来の溶接技術においては、溶接部の表面粗度、溶融部から発生する金属ヒュ−ムの供給系配管内表面への金属付着について考慮が払われていないのが現状である。特に、従来のガス供給配管並び溶接部を有する部品では、溶接により生じた金属ヒュームの供給系配管内表面への金属付着について何等処理がなされていないため、極めて活性な特殊材料ガスに接触すると、これら付着金属は腐食、剥離する。その結果、ガスを使用する半導体製造装置等のユースポイントで金属汚染が起こり、半導体デバイスの高性能化を妨げる要因となることが判明した。また、不活性な一般ガスに対しては、短期間では如実な問題は発生しないものの、長期的な信頼性においては、多分の問題を有するが本発明者により見いだされている。
【0003】従来のガス供給配管系溶接による金属ヒュ−ムの付着、溶接部の表面荒れについて、図4を用いてより詳しく述べる。図4は配管材料のタングステンイナ−トガス溶接による溶接部を示す。図において、401はタングステン電極であり、402は溶接を行う配管材料ある。403は溶接部を示し、404はこの溶融部で発生する金属ヒュ−ムである。この金属ヒューム404はアークガスやバックシールガスの流れにより溶接部403の下流側の配管材料402の表面に付着し付着金属405となる。この付着金属405は、不活性ガスに対しては剥離という問題は生じないが腐食性ガス、例えば塩化水素ガスを流すと材料表面に結合ではなく単に付着しているだけの付着金属405は剥離がする。剥離する金属としては、金属材料に主として含まれるFe,Ni,Cr,Mnであり、これら金属はLSIの特性に大きく影響するため、これら金属の除去は半導体製造において極めて重大な問題である。
【0004】しかしながら、現状の半導体製造装置のガス供給配管系施工方法においては、以上の金属汚染を効果的に除去するものはなく、特に高清浄な雰囲気を要求される装置に適用可能な溶接システムが強く望まれている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は以上の点に鑑みなされたものであり、超高純度ガス供給配管系施工時に、溶接部表面近傍ならびガス供給系内部に付着した金属を容易にしかも完全に除去することが可能で、短時間で超高純度ガス供給系を立ち上げることが可能な超高純度ガス供給配管系用溶接システムを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、複数の被溶接部材を溶接にて接続するガス供給配管系用溶接システムにおいて、第1の被溶接部材に不活性ガスまたは溶接用のバックシールガス供給手段と超純水供給手段とを設け、第2の被溶接部材に前記不活性ガスまたはバックシ一ルガスの排出手段と超純水排出手段とを設け、前記不活性ガスまたはバックシールガスを流しながら前記第1及び第2の被溶接部材を溶接し、溶接後に超純水を流して、溶接により前記被溶接部材内表面に付着した金属ヒュームを洗浄除去できる構造とした超高純度ガス供給配管系用溶接システムに存在する。
【0007】
【作用】不活性ガス供給手段またはバックシールガス供給手段を介し、不活性ガスあるいはバックシールガスを溶接部に流すことにより、パーティクル汚染源となる溶接部表面の焼けを防止することができる。溶接時に溶融部より金属ヒューム発生し、溶接部の下流側に再付着する。
【0008】次に超純水供給手段から超純水を導入し、溶接部を通して排出手段から排出することにより、溶接により配管系内表面に付着した金属を洗浄除去することができる。この洗浄は、付着金属洗浄除去後の残さ物を極めて低減し、2次汚染を防ぐためにも、超純水を使用し、特に比抵抗18MΩ・cm以上、金属成分含有量100ppt以下のものが望ましい。また、水温は、洗浄効果を高めるために20〜100℃が好ましく、40〜80℃がより好ましい。洗浄時間は、水温により異なるが、40℃の場合、1時間程度である。
【0009】洗浄後は、窒素ガスやArガス等の不活性ガスを流し、内表面を乾燥して常時清浄な雰囲気に保っておくのが好ましい。
【0010】本発明の溶接システムは、特にその配管施工時の際に、ブロック毎に溶接・超純水洗浄・乾燥を行うことができ、溶接を終了したブロックから、洗浄乾燥を行えるため、超高純度ガス供給系施工スピードを損ねることなく、超高純度ガス供給配管系の施工が可能となる。
【0011】
【実施例】以下本発明の超高純度ガス供給配管系用溶接システムを実施例を挙げて説明するが、本発明がこれら実施例に限定されないことはいうまでもない。
【0012】(実施例1)本発明の第1の実施例を図1に示す。図lは、半導体ガス供給装置117からガスのユースポイントである半導体処理装置118へのガス供給系を本発明の溶接システムで施工するための一構成例を示したものである。
【0013】101二連三方弁の開閉により配管102に接続されているガス供給システムより、ArガスをSUS316L製配管113、114に供給し、二連三方弁116を介して系外に放出する。この状態で配管113と114をタングステンイナートガス溶接により溶接した。115は、溶接に用いるタングステン電極である。
【0014】次に、二連三方弁101及び116を切り替え、超純水を溶接の終了した配管内に流し、配管内部に付着した金属ヒューム等の不純物を洗い流し、排水ライン106に放出した。
【0015】30℃の超純水を5時間流した後、三方弁101、116を再び切り替え、配管113及び114中に窒素ガスを導入して水を排出し、水分が完全にパージされるまで流し続けた。
【0016】以上のガス供給系の清浄度を評価するために、従来法で施工した同一形状のガス供給系と共に以下の試験を行った。
【0017】半導体ガス供給装置117から1.4ppmの水分を含む塩化水素ガスをガス供給系に導入し,2.5Kg/cm2で12時間放置した。その後,Arガスを250cc/minで流して、半導体処理装置118のガス導入口でシリコンウエハ上にガス中の金属元素を補収し、TR−XFS(Total Reflection X-rayfluorescence Specroscopy)で、金属元素の定量を行った。従来例のガス供給系からは,Fe,Cr,Ni,Mn等の金属が検出されたが、本実施例のガス供給系からは金属は全く検出されなかった。
【0018】尚、図1に示した超純水供給システムにおいては、超純水を使用していないときには原水タンク105ヘ超純水をリターンすることで水質並びに純水供給システムの汚染を防ぐことが可能である。洗浄済みの超純水の排水回収ライン106はパ−ティクル測定装置並びに比抵抗測定装置等等の水質検査装置107が備え付けられ排水品質をモニターし二連三方弁108の開閉により比較的清浄度の高い排水は配管109を介して原水タンク105へ戻し、比較的清浄度の低い排水は配管110を介し系外に排出する。特に二連三方弁101は自動弁とすることで洗浄時間設定で溶接部の自動洗浄・乾燥が可能である。また上記例では洗浄済みの超純水の排水回収ライン106は原水タンク105ヘ接続されているが、活性炭塔111とイオン交換樹脂塔112の間に接続されてもよい。また活性炭塔111とイオン交換樹脂塔112の間に殺菌並びに水中の有機物除去のための紫外線照射装置を用いてもよい。
(実施例2)本発明の第2の実施例を図2に示す。図2は、ガス供給配管系をブロックに分け、溶接・超純水洗浄後の窒素パージと超純水洗浄とを同時に行い、ガス供給系の施工スピードを高めた溶接システムである。
【0019】ガス供給系のブロック201は、溶接と超純水洗浄が終了し、窒素ガスパージを行っている段階である。ガス供給系ブロック201の一端からは超高純度ガス供給源から窒素ガスが導入され、純水洗浄済み配管供給系201をパージ乾燥を行っている。分流弁203は、溶接時の排ガス弁及び超純水洗浄時の排水弁として使われたものであり、図では開の状態であり、パージガスはこの弁を介し系外に放出される。204二連三方弁は閉の状態にある。また、分流弁203は、最も下流のものだけを開とし残りは閉としてもよい。
【0020】一方、ブロック206は、バルブによりブロック201と遮断され、超純水洗浄が行われている段階を示している。このブロック206は、二連三方弁204を介して純水供給システムと接続されており、超純水が配管207に供給され洗浄を行う。洗浄済みの超純水の排水は分流弁203’を介して回収される。
【0021】以上述べたように、ガス供給配管系のブロック毎で、溶接、超純水洗浄、及び乾燥を行うことで、施工スピードを速めることが可能となる。
【0022】(実施例3)本発明の第3の実施例を図3に示す。
【0023】図3に溶接施工の終了した配管系を洗浄しながら、次の溶接施工が継続可能な溶接システムを示す。配管301は不活性ガス供給源またはバックシ−ルガス供給源に接続されており、これらガスは分流弁302を介してパージすることができる。配管301に導入された不活性ガスまたはバックシ−ルガスは三連四方弁303、304及びバイパス配管309を介して溶接施工中の配管305へ供給される。また、溶接施工の終了したガス供給系306に三連四方弁303を介して超純水供給システムに接続された配管307から超純水を供給することで溶接施工の終了したガス供給系306を洗浄する。その際、洗浄済みの超純水の排水は三連四方弁304を介しての排水ライン308を通して、実施例1に示す原水タンクヘ戻すかまたは系外に排出する。
【0024】本実施例の溶接システムは、特に長距離に渡るガス供給系で、超純水洗浄処理が溶接施工終了の配管内表面に対して均一に行えない場合は三連四方弁303、304をガス供給系内に適度の距離で配置し、部分的に洗浄を行うことで洗浄効果を高めることができる。また本実施例では溶接施工時について説明したが、三連四方弁をガス供給系内に適度の間隔で配置して、超高純度ガス供給系全系を施工終了した後に、超純水による洗浄を部分的に追加してもよい。
【0025】
【発明の効果】以上説明したように本発明の溶接システムによれば、溶融部から発生した金属ヒュームによる溶接部表面近傍ヘの金属付着を除去することが可能でありまた洗浄後は超高純度の不活性ガスにより乾燥させるため、活性な特殊材料ガス、特に腐食ガス性を有する塩化水素ガスを流しても溶接部の腐食、付着金属の剥離の問題を防ぐことができる。従って、本発明の超高純度ガス配管用溶接システムを用いることで、長期に渡り信頼性の高い高純度ガス供給配管系を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例を示す概念図。
【図2】本発明の第2の実施例を示す概念図。
【図3】本発明の第3の実施例を示す概念図。
【図4】従来の溶接技術の問題点を示す概念図。
【符号の説明】
101 二連三方弁、
102 ガス供給配管、
103 超純水供給配管、
104 超純水循環配管、
105 原水タンク、
l06 排水回収ライン、
l07 パ−ティクル測定装置及び比抵抗測定装置、
108,116 二連三方弁、
109 配管、
110 排水配管、
111 活性炭塔、
112 イオン交換樹脂塔、
113,114 被溶接配管、
115 タングステン電極、
117 半導体ガス供給装置、
118 半導体処理装置、
201,206 ガス供給系のブロック、
203,203’ 分流弁、
204 二連三方弁、
205 超純水供給ライン、
301 配管、
302 分流弁、
303,304 三連四方弁、
305 配管、
306 超純水洗浄中のブロック、
307 超純水供給ライン、
308 排水ライン、
309 バイパス配管、
401 タングステン電極、
402 溶接を行う配管材料、
403 溶接部、
404 金属ヒュ−ム、
405 付着金属。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数の被溶接部材を溶接にて接続するガス供給配管系用溶接システムにおいて、第1の被溶接部材に不活性ガスまたは溶接用のバックシールガス供給手段と超純水供給手段とを設け、第2の被溶接部材に前記不活性ガスまたはバックシ一ルガスの排出手段と超純水排出手段とを設け、前記不活性ガスまたはバックシールガスを流しながら前記第1及び第2の被溶接部材を溶接し、溶接後に超純水を流して、溶接により前記被溶接部材内表面に付着した金属ヒュームを洗浄除去できる構造とした超高純度ガス供給配管系用溶接システム。
【請求項2】 前記不活性ガスまたはバックシールガス供給手段および超純水供給手段と前記不活性ガスまたはバックシールガス排出手段および超純水排出手段とは、それぞれ超純水と不活性ガスまたはバックシールガスとの切り替えが可能なバルブを有することを特徴とする請求項1記載の超高純度ガス配管用溶接システム。
【請求項3】 前記不活性ガスは、Arガスまたは窒素ガスであることを特徴とする請求項lまたは2に記載の超高純度ガス配管用溶接システム。
【請求項4】 前記バックシールガスは、Arガスに水素ガスを添加したことを特徴とする請求項1または2に記載の超高純度ガス配管用溶接システム。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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