説明

超高速度テレビカメラ用電源装置

【課題】電源電圧の異常によるISIS−CCDの損傷が抑えられるようにした超高速度テレビカメラ用電源装置を提供すること。
【解決手段】CCD基板10に搭載されているISIS−CCDと制御基板30に搭載されている電源供給制御回路FPGAに、電源基板20に搭載されている7回路のDC/DCコンバータ201〜207から夫々異なった電圧を供給するようにした電源装置において、複数のDC/DCコンバータ201〜207から供給されている電圧を監視する複数の監視部401〜408を設け、複数のDC/DCコンバータ201〜207の中で電圧が異常になったDC/DCコンバータが検出された場合、前記複数のDC/DCコンバータ201〜207の全てが同時にOFFにされ、ISIS−CCDの破損が抑えられるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子に固体撮像デバイスを用いたテレビカメラの電源装置に係り、特に、固体撮像デバイスとして画素周辺記録型撮像素子を用いて超高速度の撮像に対応するようにした超高速度テレビカメラの電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、爆発、燃焼、破壊、弾丸の発射状況や飛翔状況など、状態が短時間の間に大きく変化する現象、いわゆる高速現象を伴う被写体は、そのまま肉眼で観察しても像として捉えることは殆どできず、従って、現象の分析が極めて困難であり、このためには、例えば1秒間に100万コマ、つまり1フレームの撮像時間が1μ秒以下という高速度で被写体を撮像する必要がある。
【0003】
しかしながら、従来から用いられている通常のCCD固体撮像デバイスによっては、このような高速度の撮像に対応するのは困難で、例えばストロボ照明による光サンプリングにより撮像しなければならなかった。
そこで、近年、ISIS(In-situ Storage Image Sensor:画素周辺記録型撮像素子)と称されるCCD固体撮像デバイス、いわゆるISIS−CCDが実用化され、このISIS−CCDによれば、高速度の撮像が通常の照明のもとで容易に得られるようになってきた(例えば特許文献1などを参照)。
【0004】
ところで、このISIS−CCDを動作させるためには複数の異なった電圧の電源が必要であり、しかもCCD素子の破損を防止するため、動作立ち上げ時におけるこれら各電源の供給については、それらの投入順序が厳格に規定されている。
そこで、従来から、例えば図4に示すように、ISIS−CCDを搭載したCCD基板10に対して、共通の入力電源Pから給電される7回路のDC−DCコンバータ201〜207が搭載されている電源基板20と、電源供給制御回路FPGAが搭載されている制御基板30を備えた電源装置が提案されている。
【0005】
この例の場合、まず、CCD基板10には、電源基板20から4種の直流電圧、すなわち−5V、15V、24V、30Vの4種の独立した直流電圧が供給され、次に、制御基板30に搭載されている電源供給制御回路FPGAには、電源基板20から別の3種の直流電圧、すなわち3.3VD、3.3VA、5Vの3種の独立した直流電圧が供給されるようになっている。
【0006】
そして、この電源供給制御回路FPGAにより、動作立ち上げ時におけるISIS−CCDに対する電源の供給タイミングが制御され、それらの投入順序が厳格に規定されている通りになるように制御される。
ここで、図5(a)は、このときの電源電圧投入順序の一例を示すタイミングチャートで、図の左下に矩形の枠で囲って示されているのが、CCD基板10に対する電源電圧投入タイミングである。
【0007】
図示されているように、まず、30Vと24Vの電圧は、電源ONから800ミリ秒経過後に立ち上げられ、次に、−5Vと15Vの電圧は、1000ミリ秒経過後、ONに立ち上げられるように、夫々電源供給制御回路FPGAにより制御されるようになっている。
ここで、これら−5Vと15Vの電圧を後で立ち上げるのは、これら−5Vと15Vの電圧か、ISIS−CCD駆動用パルスを発生するICの電源として使用されるからである。
【0008】
従って、これらの立ち上がりを遅らせないと、ISIS−CCDが起動する前に駆動パルスだけが供給されてしまうことになってしまうからであり、この場合、素子が破損されてしまうので、これを防止するためである。
ここで、電圧を“立ち上げる”とは、電圧が印加されていない状態のとき所望の電圧がステップ状に印加されることであり、他方、“立ち下げる”とは、所望の電圧が印加されている状態からステップ状に電圧が印加されていない状態にされることである。
【0009】
そして、CCD基板10では、この30Vと24Vの電圧からISIS−CCDに供給される各種の電圧が生成されるのであるが、このとき、これら各種の電圧VNS、SFD、VPS、RG−BIAS、OGの印加タイミングについては、撮像素子破損抑止の見地から図5(b)に示すタイミングになるように夫々制御される。
ここで、VNS、SFD、VPS、RG−BIAS、OGは、ISIS−CCDの駆動に必要な各種の電圧(電源電圧)のことである。
【0010】
まず、この図5(b)において、電源電圧+30V(=30V)が立ち上げられた時刻をtS とする。
そして、この時刻tS の後、まず、時刻t1 では電圧VNSを立ち上げ、次に、時刻t2 では電圧SFDを立ち上げ、次いで時刻t3 で電圧VPSを立ち上げ、最後に時刻t4 では電圧RG−BIASと電圧OGを立ち上げるのである。
従って、これらの時刻については、t1 <t2<t3 <t4 の関係になっている。
【0011】
しかも、このとき、電圧SFDについては、更に確実な撮像素子破損抑止の見地から、直ちにISIS−CCDの定格(Rating)電圧Vrat まで立ち上げるのではなく、2段階に分けて電圧を立ち上げるようになっている。すなわち、まず、時刻t2 では、電圧VPSよりも低い電圧(SFD<VPS)に立ち上げ、この後、電圧VPSが立ち上げられた時刻t3 の後の時刻t3+α で所望の電圧、つまり定格電圧Vrat (=SFD>VPS)にまで電圧SFDを立ち上げるのである。
【0012】
また、このことは、電源遮断時での電圧立ち下げ時にも必要である。
但し、このとき電源電圧30Vの立ち下げ時刻をte とした場合、図5(b)に示されているように、順序が反対になる。
すなわち、時刻te に先立った所定の時刻t5 において、まず、電圧RG−BIASと電圧OGを立ち下げ、次に、時刻t6 で電圧VPSを立ち下げ、次いで、時刻t7 で電圧SFDを立ち下げ、最後に時刻t8 では電圧VNSを立ち下げるのである。
【0013】
そして、このときも、電圧SFDについては、同じく確実な撮像素子破損抑止の見地から2段階に分けて電圧を立ち下げるようになっている。
すなわち、時刻t5 の後の時刻t6-α では、まず一旦、電圧VPSを、定格電圧Vrat よりも低い電圧(VPS<VPS)に立ち下げ、この後、電圧VPSが立ち下げられた時刻t6 の後の時刻t7 になったとき、ここで、はじめて0電圧にまで立ち下げるのである。
【0014】
このときの制御は、上記したように、何れも制御基板30に搭載されている電源供給制御回路FPGAから供給される各電源電圧ON信号により遂行されるのであるが、このとき制御の順序が守られなかった場合、例えば電源投入の順番が逆になった場合、ISIS−CCDに逆電流が流れてしまうので、素子に破損の虞が生じてしまうからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2008−124624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記従来技術は、ISIS−CCDの破損防止に万全を期しているとは言えず、電源電圧の異常によるISIS−CCDの破損防止に問題があった。
固体撮像素子としてISIS−CCDを用いたテレビカメラの場合、上記したように、撮像素子破損抑止の見地から動作電圧の立ち上げタイミングと立ち下げタイミングの適正化が必要であるが、従来技術は、このタイミングの適正化に関しては配慮がされている。
【0017】
しかし、このようなテレビカメラでは、動作中、各電源の何れかの電圧でも異常になった場合にはISIS−CCDが破損する虞があり、しかも、この場合、テレビカメラ装置の故障にもつながってしまうので、直ちに全部の電源をOFFしなければならない。
しかしながら、従来技術は、この点に関しては、何も配慮がされていないので、上記したように、ISIS−CCDの破損防止に問題が生じてしまうのである。
【0018】
本発明は、上記した従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、電源電圧の異常によるISIS−CCDの損傷が抑えられるようにした超高速度テレビカメラ用電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的は、撮像素子にISIS−CCDを用い、動作立ち上げ時での前記ISIS−CCDに対する複数の電源の供給タイミングを制御して当該ISIS−CCDの損傷を抑えるようにした超高速度テレビカメラ用電源装置において、前記複数の電源の各々の電圧を監視する複数の電圧監視手段が備えられた保護回路部を設け、前記複数の電源の中で電圧が異常になった電源が検出された際、前記複数の電源の全てが同時にOFFされるようにして達成される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、多数の電源の何れについても、その電圧が異常になった場合には、直ちにISIS−CCDに対する全ての電源がOFFにされる。
従って、本発明によれば、電源異常に伴うISIS−CCDの破損が未然に防止されるので、テレビカメラの信頼性を高め、且つ、高価な素子の破損によるコストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による超高速度テレビカメラ用電源装置の一実施の形態を示すブロック構成図である。
【図2】ISIS−CCD固体撮像素子に必要な電源の説明図である。
【図3】本発明の一実施形態における保護動作電圧の説明図である。
【図4】従来技術によるISIS−CCD固体撮像素子用電源装置の一例を示すブロック構成図である。
【図5】ISIS−CCD固体撮像素子に必要な電源投入動作を示すタイミング図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明による超高速度テレビカメラ用電源装置について、図示の実施の形態により詳細に説明する。
ここで、図1は、本発明の一実施の形態で、図において、40は保護回路であり、その他の構成は、CCD基板10と制御基板30が上下に入れ替わって描かれている点を除き、図4で説明した従来技術の場合と同じである。
そこで、以下、保護回路40について詳しく説明すると、まず、これには8回路の電源電圧監視部401〜408とCCD電圧監視部410、電源電圧OFF制御部420、それに保護動作開始制御部430が設けられている。
【0023】
そして、まず、監視部401〜408は、入力電源Pから供給されているUnreg+12Vの電圧と、電源基板20に備えられているDC−DCコンバータ201〜207の夫々から供給されている−5V、15V、24V、30V、3.3VD、3.3VA、5Vの各電圧を取り込み、各々の電圧がそこに規定してある設定電圧値を保っているか否かを判定し、入力されている電圧が夫々の設定電圧値を下回ったとき、そのことを表わす異常信号を発生する。
ここで、Unreg とは、入力電源Pからそのまま安定化されずに供給されていることを表わす。
【0024】
一方、CCD電圧監視部410は、ISIS−CCDに動作用として供給されている電圧をCCD基板10から取り込み、このときISIS−CCDに供給されている電圧が設定電圧値を下回ったとき、そのことを表わす異常信号を発生する。
ここで、図2は、このときの電源電圧の種類(名称)と用途を示したものである。なお、これは、図4で説明した従来技術でも同じである。
【0025】
また、電源電圧OFF制御部420は、監視部401〜408とCCD電圧監視部410の各々の異常信号出力を取り込み、これにより何れか1部からでも異常信号が入力されたときOFF制御信号を発生し、保護動作開始制御部430に入力する。
このとき、保護動作開始制御部430には、制御基板30の電源供給制御回路FPGAからタイミング開始信号が入力されている。
【0026】
そこで保護動作開始制御部430は、電源電圧OFF制御部420からOFF制御信号が入力されたとき、タイミング開始信号が入力されていないことを条件にして各電源電圧OFF信号を発生し、これを電源基板20に搭載されているDC−DCコンバータ201〜207の全てに供給し、この時点で全てのDC−DCコンバータ201〜207の動作を停止させる。
【0027】
この結果、入力電源DC+12Vの電圧とDC−DCコンバータ201〜207の電圧の何れか一つでも異常になったとすると、CCD基板10と制御基板20の双方に供給されていた全ての電源が同時にOFFされてしまうことになり、従って、この実施形態によれば、電源異常に伴うISIS−CCDの破損が未然に防止されるので、テレビカメラの信頼性を高め、且つ、高価な素子の破損によるコストを抑えることができる。
【0028】
このとき電源供給制御回路FPGAから保護動作開始制御部430に入力されているタイミング開始信号とは、この電源供給制御回路FPGAにより、上記した動作立ち上げ時におけるISIS−CCDに対する電源の供給タイミングでの制御が実行されているとき発生される信号のことであり、従って、この場合、動作立ち上げ時におけるタイミング制御が実行されている間は、電源OFF制御が禁止され、タイミング制御が終了して全ての電源がONした後で保護動作が働くようになっている。これは、ISIS−CCDの電源が全てONしないうちに保護動作が行われた場合における素子の破損を防止するためである。
【0029】
ここで、各監視部401〜408に設定されている設定電圧の値について説明すると、これらは、それぞれ撮像素子として使用されているISIS−CCDの仕様電圧、各デバイスの絶対最大定格及び推奨動作条件を考慮して決定すればよい。
このとき、図3は、各監視部401〜408に規定されている設定電圧値の一例で、このとき使用されているISIS−CCDの場合、入力電圧DC+12Vが8.9V以下になると映像出力が不安定になることが分かっている。
【0030】
そこで、この図3の例では、余裕を持たせ、入力電圧DC+12Vが9.6Vに降下した場合に保護動作が働くように、監視部401の設定電圧を9.6Vに規定してある。
同様に、他の設定電圧についても、詳細は省くが、各々余裕を持って保護動作が働くように規定してある。
【0031】
従って、この実施形態によれば、電源異常に伴うISIS−CCDの破損が余裕をもって確実に防止できることになり、この結果、上記したように、撮像素子にISIS−CCDを適用して高速度撮像に対応させたテレビカメラの信頼性を高め、且つ、高価な素子の破損によるコストを抑えることができる。
【符号の説明】
【0032】
P:DC+12Vの入力電源
10:CCD基板(ISIS−CCD基板)
20:電源基板(7回路のDC/DCコンバータを搭載した基板)
30:制御基板(電源供給制御回路FPGAを搭載した基板)
40:保護回路(保護回路を搭載した回路基板)
201〜207:DC/DCコンバータ
401〜408:監視部(電圧監視部)
410:CCD電圧監視部
420:電源電圧OFF制御部
430:保護動作開始制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子に画素周辺記録型撮像素子を用い、動作立ち上げ時での前記画素周辺記録型撮像素子に対する複数の電源の供給タイミングを制御して当該画素周辺記録型撮像素子の損傷を抑えるようにした超高速度テレビカメラ用電源装置において、
前記複数の電源の各々の電圧を監視する複数の電圧監視手段が備えられた保護回路部を設け、
前記複数の電源の中で電圧が異常になった電源が検出された際、前記複数の電源の全てが同時にOFFされるように構成したことを特徴とする超高速度テレビカメラ用電源装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate