説明

越冬キャベツ収穫装置

【課題】圃場で収穫したまま越冬させたキャベツを春先に土の付着なしで簡単に回収できるようにすること。
【解決手段】車体前部にキャベツの茎切断用カッター部を装備し、車体中央の移送帯の入り口側端部をこの茎切断用カッター部の後方に臨ませると共に、移送帯の出口側端部を車体後部に位置させ、この出口側端部下方にマルチフィルムのフィルムロールを左右方向に横架し、キャベツを収穫しながらマルチフィルムを敷設して、このフィルムの上にキャベツを置いて冬を越させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
北海道のような寒冷地では、秋遅く収穫したキャベツを、茎を切ったままの状態で圃場に置き去りにし、冬を越し、葉もの野菜の少ない春先になって出荷することがある。これを越冬キャベツと称し甘く味が良いため消費者に好まれる。
本発明は、このような越冬キャベツ用の収穫機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
普通のキャベツの収穫作業を機械化した発明は従来公知である。
例えば、特許文献1では、自走する車体の前部にカッターを備えて、キャベツの植付条に沿って移動しながら、キャベツの茎を地表に近い位置で順次切断し、それを車体中央に設置するコンベアで車体後部に移送して後方に連結した集積車に収容する。
この機械から集積車を切り離し、取ったキャベツを車体後部からそのまま圃場に放出すれば、冬の間に雪に埋もれて越冬キャベツが得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-5626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが単純にキャベツを圃場に放置しただけでは、出荷する春先になって残雪の中から掘り出すのに、ぬかるんだ圃場に足を取られて重労働であるうえ、大切なキャベツに土が付着して出荷前に洗い落す手間がいる。従来のキャベツ収穫機械では、この点が解決できず、問題になっていた。
【0005】
本発明は、このような越冬キャベツに固有の問題を解消するもので、残雪の中から前年のキャベツを土の付着がない状態で簡単に取り出せることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、自走する車体の前部にキャベツの茎切断用カッター部を装備し、車体中央に設置する前後に長い無端式移送帯の入り口側端部を前記茎切断用カッター部の後方に臨ませると共に、出口側端部を車体後部に位置させ、さらにこの出口側端部下方にマルチフィルムのフィルムロールを左右方向に横架する構成である。
圃場のキャベツはカッターで茎を切断されたのち、移送帯に乗って車体後部へ移送され、移送帯の出口側端部から機外に放出される。他方、車体の移動に伴い、フィルムロールから繰り出たマルチフィルムが地表に敷設されるので、放出されたキャベツはそのマルチフィルムの上に落下する。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1の移送帯の出口側端部とフィルムロールの中間に、後方に低く傾斜した庇状の滑落板を設置する構成である。
これにより移送帯の出口側端部より放出されたキャベツは、先ず滑落板の上に落ち、そこを転がってその後縁からマルチフィルムの上に落下する。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1の構成において、茎切断用カッターを左右2セット装備し、これらの後方に移送帯の入り口側端部を臨ませる構成である。
これら左右2セットの茎切断用カッターにより2条の畝のキャベツを同時に収穫して、これを1台の移送帯を経て1本のマルチフィルムの上に集める。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、車体後部にフィルムロールを横架し、移送帯の出口側端部から機外に放出されたキャベツを地表に敷設したマルチフィルムの上に落下するので、キャベツに土が付着しない。翌春、残雪を掘ってマルチフィルムの裾をまくれば、キャベツがフィルム中央に集まるため、キャベツを綺麗なまま簡単に回収できるという効果がある。
【0010】
請求項2の発明によれば、キャベツはいちど滑落板の上に落ちてから地上に落下するので、落下の衝撃が緩和され、キャベツが損傷しないという効果がある。
【0011】
請求項3の発明によれば、2条の畝のキャベツを同時に収穫でき作業効率が良いうえ、2条のキャベツを1本のマルチフィルムに集めるので、フィルムの節約にもなり経済であるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明装置の全体側面図
【図2】図1の茎切断用カッター付近の拡大平面図
【図3】図1の装置の作用説明図
【図4】図1の装置のマルチフィルムを説明する拡大平面図
【図5】図4の横断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態を図に示して説明する。
1はクローラ2により自走する車体で、3はエンジン、4は運転席、及び5は運転台とクローラを連結する支脚フレームをそれぞれ示す。
6は車体1の前部に連結するカッター部である。その構造は図2に示すとおりの2条刈りで、前後に平行な前フレーム7と後フレーム8の間に、2本1組の挟持ベルト7を2組張り渡す。9は後フレーム8に沿って架設したベルト駆動軸で、その外端10にエンジン3を連結する。
後フレーム8には挟持ベルト7の駆動側プーリ11を設け、これをベベルギア(図示省略)などを介してベルト駆動軸9に接続する。また前フレーム7には挟持ベルト7の受動側プーリ12を設ける。
図中、13は緊張プーリで、バネ14の弾力で挟持ベルト7のたるみを取り、挟持ベルト7を弾力的に緊張する。
各組の挟持ベルト7の下方に、円板カッター15を配備する。16は円板カッター15に回転動力を伝えるカッター回転軸である。17は小径の遊転カッターで、円板カッター15に重なるように配置し、両カッターの外周に形成した刃先を交差させる。
18は、傘の骨のように、細い金属製の案内ロッドが複数本放射状に広がった分草体で、前フレーム7より前方に突出すように中央と左右に3体設ける。
【0014】
19は前後に長い無端の移送帯で、車体1の中央に設置し、後方に向け高く傾斜させる。この移送帯19は、その入り口側端部が茎切断用カッター部6の後方に臨んでいて、2組の挟持ベルト7の終端部下方に位置している。
また車体1の後部に位置する移送帯19の出口側端部には、後方に低く傾斜する庇状の滑落板20を接続する。
21はマルチフィルム22を巻いたフィルムロールで、滑落板20の下方に横架する。23は突き出しロールで、これによりマルチフィルムの中央部のたるみを取り除く。
なおフィルムロール21を移送帯19の下方で出口側端部より前方に設置する場合は、滑落板20は省略できる。
【0015】
次に作用を説明する。
図の例では、車体1がキャベツCを植え付けた畝2本を跨ぐように移動し、2条のキャベツCを同時に収穫する。
キャベツCは外葉が分草体18でめくり上げられながら、挟持ベルト7、7の間に案内され、ベルトに挟まれながら円板カッター15と遊転カッター17の交点で茎が切断され、いわゆる玉の部分が根と切り離され、玉だけが挟持ベルト7の終端部からその下方の移送帯19の上に運ばれる。
そして移送帯19により車体1の後部の出口側端部に移送され、そこから滑落板20の上に落ちる。
一方、フィルムロール21からは車体の移動に伴いマルチフィルム22が巻き解かれて地上に敷設されているため、滑落板20に落ちたキャベツCは、このマルチフィルム22の上に落下する(図3,4参照)。
このように2条のキャベツCは一本のマルチフィルム22の上に集まり、やがて雪がその上に積もってそのまま越冬する(図5参照)。
春先になったら、残雪の中からキャベツCを掘り出し出荷する。
【0016】
このように本発明によればキャベツCは、マルチフィルム22の上に置かれ地面に触れないから土が付着しない。従って、越冬キャベツとして出荷する際、従来のように地表面に放置されたものと違い、洗浄の必要がないばかりか、マルチフィルム22の裾をめくり上げれば、畝溝にキャベツCが転がるので取り込みが容易で労力が大幅に軽減できる。
【符号の説明】
【0017】
1は車体
2はクローラ
5は支脚フレーム
6はカッター部
7は前フレーム7
8は後フレーム8
9はベルト駆動軸
10はベルト駆動軸の外端
11は駆動側プーリ
12は受動側プーリ
13は緊張プーリ
14はバネ14
15は円板カッター
16はカッター回転軸
17は遊転カッター
18は分草体
19は移送帯
20は滑落板
21はフィルムロール
22はマルチフィルム
Cはキャベツ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走する車体の前部にキャベツの茎切断用カッター部を装備し、車体中央に設置する前後に長い無端式移送帯の入り口側端部を前記茎切断用カッター部の後方に臨ませると共に、出口側端部を車体後部に位置させ、さらにこの出口側端部下方にマルチフィルムのフィルムロールを左右方向に横架して成る越冬キャベツ収穫装置。
【請求項2】
前記移送帯の出口側端部とフィルムロールの中間に、後方に低く傾斜した庇状の滑落板を設置して成る請求項1記載の越冬キャベツ収穫装置。
【請求項3】
前記茎切断用カッターを左右2セット装備し、これらの後方に移送帯の入り口側端部を臨ませて成る越冬キャベツC収穫装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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