説明

越水防止装置

【課題】 簡単且つ軽量の越水防止装置を戸口などに設置して、一般住居や商業施設、地下施設などの浸水を防止する。
【解決手段】 本発明は、増水時に家の戸口などに設置される越水防止装置であって、折り畳み可能な不透水性のボックス(10)を複数連接した構成を有し、増水時などに住居や商業施設の戸口などに必要な形に整形して設置し、中に水や重量物などを載加して越水防止壁とする。下端部近傍には開閉可能な排水口(18a)を具え、また外側上端部近傍にはボックス内に降り注ぐ雨水が屋内側に溢れるのを防止する雨水排出口(18b)を具える。各ボックスを隔てる縦フレーム(15)の下端部近傍には連通口(15a)が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は越水防止装置に関し、特に、一般住宅や商業施設などで増水時の浸水を防止する越水防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大雨などの際に住居や商業施設への浸水を防止する対策として、土を詰めた土嚢を作成し戸口の周りに積むことが行われている。しかしながらこの方式では予め土を詰めるための袋を相当数用意しておかねばならず、また土嚢を作成するのに多大な労力がかかる。さらに、都市部では土嚢に詰める土が確保しづらいという問題もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のように積み土嚢式は非常な労力を必要とし、作成される土嚢は重く、特に非力な女性や老人などには土嚢を作成して積み上げるという作業が無理な場合がある。また、土嚢を作成する時間がかかるため、必要なときに土嚢を積み上げるのが遅れ、浸水を防げないという問題もある。また実際の作業は大雨の中行わねばならず、多大な労力と困難が伴うものである。さらに、危険が去った後は土嚢を破いて中の土を排出するが、基本的に土嚢の袋は一度きりの使用で廃棄されるため、コストがかかり環境にも好ましくない。
【0004】
本発明はこのような問題に鑑み、軽量な素材を用い折り畳み式の越水防止装置を構成し、運搬が容易で、組み立て時間が飛躍的に短縮され、非力な人間でも一人で設置可能で、安定した構造で止水性を確保した越水防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、増水時に家の戸口などに設置される越水防止装置であって、折り畳み可能な不透水性のボックスを複数連接してなることを最も主要な特徴とする。
【0006】
前記ボックスの底面に滑りにくい材質、好ましくはゴム素材が用いられていることが望ましい。
【0007】
隣接するボックスの隔壁の下部に連通口が設けられていることが望ましい。
【0008】
各ボックスの外側壁の上端部近傍に雨水排出手段が設けられていることが望ましい。
【0009】
1以上のボックスの外側壁下端部近傍に開閉式の排水口が設けられていることが望ましい。
【0010】
前記装置の両端部に他の越水防止装置または壁面等に連結するための連結手段が設けられていることが望ましい。
【0011】
前記ボックスの少なくとも左右の壁に強度のあるパネル材が用いられていることが望ましい。
【0012】
前記ボックスの左右の壁にわたされ当該壁間の距離を保持する支持部材を具えることが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の越水防止装置は、平常時は折り畳んで収納しておき、増水時に拡げて必要な場所に設置し、内部に水や他の重量物を入れて越水防止壁を構成する。不透水性のボックスを複数連設して構成しているため、内部に水を入れて重量のある止水壁を構成することができる。また、装置の底面にゴム素材等を用いて滑りにくくすると、装置際に水が押し寄せた際の滑動を防止するとともに、装置の下側から水が浸入するのを効果的に防止することができる。
【0014】
また、各ボックスの外側壁に雨水排出手段を設けると、装置の設置後にボックス内に雨水が溜まり、内側に溢れてしまうのを防止することができる。この雨水排出手段は、ボックス外側壁の上端部近傍に設けた排水口として実現することができる。また、装置の両端部に連結手段を設けると、他の装置と連結して長い止水壁を構成したり、施設の壁面等に連結して隙間から水が侵入するのを防止することができる。
【0015】
また、ボックスの左右の壁に強度のあるパネル材を用いるようにすると、設置時にボックスが撓んだり変形したりするのが防止され、強固な構造の止水壁を構成することができる。さらに、これらの壁の距離を保持する支持部材を取り付けるようにすると、装置を所望の形に確実に保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明を実施するための最良の実施形態について、図面を参照しながら以下に詳細に説明する。
【実施例1】
【0017】
図1は、本発明にかかる越水防止装置の構成を示す斜視図であり、図2(a)は立面図、図2(b)は正面図である。図1および図2に示すように、越水防止装置1は、垂直方向に延在する四方の壁と底面とでなる四角いボックス10を複数連設した構成を有し、各ボックス10を隔てる側壁は隣接するボックス間で共有する構成となっている。各ボックス10の壁の長さは前後左右とも0.3〜1.0mであり、装置1の高さは0.25〜0.8m程度に構成される。なお、以降の説明では、図1における紙面の手前側が屋外側すなわち外側として説明し、奥が屋内側であり内側として説明する。
【0018】
ボックス10において、装置1の前後方向に延在する縦フレーム15の基本構成を、図3を参照して説明する。本実施例の縦フレーム15は、例えば強度を有するパネル材16の両側にシート材17を張り合わせて構成される。パネル材16は軽量で強度のある例えば塩化ビニル、FRP、アクリル、強化プラスチックなどの樹脂材を用いることができ、好ましくはリサイクル樹脂を用いる。このパネル材15の厚みは1〜10mmとする。シート材17は、例えばポリエチレン、塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエステル、プラスチックゴムなど、軟質で不透水性かつ所定の強度を有する素材を好適に用いることができ、好ましくはリサイクル材を用いる。ただし、縦フレーム15はシート材17を貼り合わせることなくパネル材16のみで構成してもよい。この場合、パネル材16には不透水性のものを用いることが望ましい。なお、後に説明するように、隣接するボックス10同士で共有する縦フレーム15の下部には連通口が設けられ、ボックス内部に注がれる水が各ボックスに均等に行き渡るように構成される。
【0019】
ボックス10において、装置1の左右方向に延在する横フレーム18の基本構成を、図4を参照して説明する。本実施例の横フレーム18は前側と後側で共通の構成を有し、図3に示すように、フレーム18の半分弱の幅を有する2つのパネル材19a、19bを、表裏1枚づつのシート材20で挟み込んで構成されている。2つのパネル材19a、19b間には若干の間隔を設け、横フレーム18を折り曲げる際に互いに干渉しないようにしている。パネル材19およびシート材20の素材は縦フレーム15のものと同じであり、各パネル材19の表裏全面にシート材20が接着されている。さらに、シート材20はパネル材19より横方向において少し長めに形成され、この余剰の部分で縦フレーム18と縫製や接着、熱圧着等の手段により接続する構成となっている。これにより、横フレーム18はその中央部分を折り曲げて重ねた状態にすることができ、また縦フレーム15と横フレーム18との接合部分は可動となる。横フレーム18の下端部近傍には開閉可能な排水口18aが設けられ、ボックス10内部に溜まった水を撤去時に排出できるよう構成されている。
【0020】
底面14は、上記の縦フレーム15,横フレーム18と連続的に、ボックス10の底部全面にわたって設けられており、不透水性かつ滑りにくいシート材を用いて構成されている。このシート材はポリエチレン、ゴム、塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエステル等を用いることができ、好ましくはリサイクル材を用いる。この底面14は、図2(a)に示す前後方向の中心線14aと、底面14の対角線14b,14cを折って折り畳むことができる。折り畳む際には、中心線14aが谷折りとなり、両対角線14b,14cが山折りとなり、底面14の中心部分が上方に畳み込まれる。
【0021】
図5は、装置1を構成する1つのボックス10を拡大してその詳細な構成を示す図である。本図に示すように、前側すなわち外側の横フレーム18の上端部近傍には雨水排出口18bが設けられている。この雨水排出口18bは、装置1の設置時にボックス10内に雨水が溜まっていった場合に、内側すなわち家屋側に溢れるのを防止するために設けられている。ボックス10内で雨水排出口18bの高さまで雨水が溜まった場合にはここから外側に排出される。また、隣接するボックス10と共有される縦フレーム15の下端部近傍には連通口15aが設けられており、いずれかのボックス10に水を注いだときに各ボックス10に水が均等に行き渡るよう構成されている。
【0022】
装置1の両端部の縦フレーム15の外側面には、さらに他の越水防止装置1や既設の構造物と連結するための連結手段を設けるようにしてもよい。この連結手段としては、強力なマグネットシートあるいは面ファスナを縦フレーム15の外側面の一部あるいは全部に設けたり、両面粘着テープを用いて他の装置や構造物と隙間なく連結するようにしてもよい。
【0023】
このように構成した越水防止装置1の使用方法を説明する。まず、装置1を折り畳んで保管する方法について、図6を用いて説明する。図6は、装置1を上から見た状態を示す図である。図6(a)に示す拡げた状態から、図6(b)に示すように各ボックス10の横パネル18を内側に折るとともに左右から縮めて、図6(c)に示すように収納状態とする。この際、上述したように底面14は折り曲げ線14a〜14cに沿って上方に畳み込まれる。この状態で装置1を運搬し、平常時は物置などに保管しておく。小さく折り畳めるため保管スペースを有効に利用することができる。なお、出願人の試算では高さ50cm、左右長さ6m(ボックス数10)、前後長さ60cm程度の装置で重量が10kg以内に収まり、一人でも容易に運搬することができる。
【0024】
家屋,店舗,地下施設などの浸水の危険が生じた場合、この装置1を折り畳んだ状態で必要な場所に運搬し、図6と逆の順序で拡げて必要な形に整形して設置する。本装置1は、例えば住居や商店の戸口などを囲むように設置する。この場合、各ボックス10を構成する縦横フレームは可動であり、また横フレーム18は中央で折ることができるため、例えば扇型や曲線を描くように本装置1を整形することができる。また必要に応じて、上述のような連結手段により装置1を複数連結する。装置1の設置にあたり、既設の構造物と装置端部を隙間なく配設することが必要である。この場合、例えば住居の門周りや戸口の周りなどの壁面に図7に示すようにボルト21を用いて金属プレート22を打ち付けておくとともに、装置1の端面にマグネットプレートを設けて磁着させるようにしてもよい。またプレート22に面ファスナや両面粘着テープ等で装置1の端面を貼り付けるようにしてもよい。さらに、後述するように装置1のボックス内に水を入れる場合には、これらの連結手段を用いなくても水圧により装置を構造物に密着させることができる。
【0025】
さらに、必要に応じて図8のように保持部材23を用いてボックス10の形状を固定する。保持部材23は適度な弾性を有する樹脂材でなり、図8に示すように一本のレール23aに等間隔で同方向に複数の突出部が設けられ、各突出部の先端には円筒状(図8(b))あるいは球状(図8(c))の狭持部23bが設けられている。図8(a)に示すように、ボックス10を所望の形状に整形し、両側の縦フレーム15に上から保持部材23を押し込むように取り付けると、任意の狭持部23bの間に縦フレーム15が収まり、そのボックス形状が保持される。この保持部材23の構成は図8に示すものに限らず、例えば狭持部23bは他の形状とすることができる。
【0026】
このようにして越水防止装置1を設置したら、各ボックス10の内部に水または他の重量物を投入する。水を用いる場合、例えば家庭の蛇口からホースで水を導入する。この場合、各ボックス間の縦フレーム15には連通口15aが設けられているため、装置1を構成する各ボックスに均等に水が行き渡ることになる。また、図9に示すように、ボックス10の内部には水嚢24を入れるようにしてもよい。このようにすれば、水嚢24の水を後に飲料水等に用いることができ、災害対策として好適である。このような中詰材の投入により装置1の滑動が防止されるとともに、装置1と下の地面ないし床とが密着してこの部分から水が侵入するのが防止される。
【0027】
なお、装置1の設置後にも雨水がボックス10に溜まっていくことが想定されるが、ある程度の水量になれば雨水排出口18bから外側に排出されるため、屋内側に雨水が溢れてしまうようなことがない。
【0028】
水が引いて危険が去った場合には、中詰材を撤去あるいは排水して越水防止装置1を撤去する。中詰材に水を使用した場合は、ボックス10の外側下端部に設けた排水口18aのキャップを外して排水する。この場合も各ボックスは連通口18aで連通しているため、排水口18aを一カ所外せば装置内の水を排出することができる。最後に残った水は装置1を持ち上げ裏返して排出し、上述した図6の手順で折り畳み、再び収納する。このようにして本発明の越水防止装置は繰り返し使用することができる。
【0029】
図10は、ボックス10を構成するパネル材の別の実施例の構成を示す図である。上記実施例では、前後の横フレーム18を2枚のパネル材19a,19bとこれを挟み込むシート材20で構成しているが、例えば図10(a)に示すように、外側の横フレーム31のみをこのように構成して強度を確保し、内側の横フレーム32はシート材のみで構成してもよい。また、シート材が十分な強度を有する場合は、図10(b)に示すように前後の横フレームともにシート材のみで構成してもよい。この場合でも縦フレーム15はパネル材を用いて構成すれば装置としての強度は維持され、確実に越水を防止することができる。また、横フレームにパネル材を使用する場合、シート材はパネル材の全面を覆う必要はなく、パネル材19a,19bの接合部と、縦フレーム15との接合部のみに設けるようにしてもよい。
【0030】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施例に何ら限定されるものではなく、請求項の記載の意図する範囲を超えない限りにおいて、他の様々な変形例として実現することができる。特に装置1を構成するボックス数や各部の寸法形状は上記のものに限らず、人が簡単に持ち運べる限りにおいて様々な寸法を採用することができる。また、上記実施例では底面14を滑りにくいゴム材等を用いて構成しているが、これを縦横フレームのシート材と同じ材質を使用して、裏面に部分的にゴムシートを貼り付けるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明に係る越水防止装置は、簡単且つ軽量で耐久性のある装置を用いて家屋の戸口などに設置して屋内への浸水を防止するものであり、簡単かつ有用な防災グッズとして製造業ないし流通業に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】越水防止装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】越水防止装置の立面図および正面図である。
【図3】ボックス10を構成する縦フレーム15の構成を示す斜視図である。
【図4】ボックス10を構成する横フレーム18の構成を示す斜視図である。
【図5】ボックス10の詳細な構成を説明するための部分拡大図である。
【図6】越水防止装置1の折り畳み方を説明するための立面図である。
【図7】越水防止装置を設置する既設構造物に設けられる連結手段の一例を示す図である。
【図8】保持部材および適用例を示す斜視図である。
【図9】中詰材に水嚢を用いる設置例を示す図である。
【図10】ボックス10の他の実施例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0033】
1 越水防止装置
10 ボックス
14 底面
15 縦フレーム
15a 連通口
18 横フレーム
18a 排水口
18b 雨水排出口
19 パネル材
20 シート材
23 保持部材
24 水嚢

【特許請求の範囲】
【請求項1】
増水時に家の戸口などに設置される越水防止装置であって、折り畳み可能な不透水性のボックスを複数連接してなることを特徴とする越水防止装置。
【請求項2】
請求項1に記載の越水防止装置において、前記ボックスの底面に滑りにくい材質、好ましくはゴム素材が用いられていることを特徴とする越水防止装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の越水防止装置において、隣接するボックスの隔壁の下部に連通口が設けられていることを特徴とする越水防止装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の越水防止装置において、各ボックスの外側壁の上端部近傍に雨水排出手段が設けられていることを特徴とする越水防止装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の越水防止装置において、1以上のボックスの外側壁下端部近傍に開閉式の排水口が設けられていることを特徴とする越水防止装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の越水防止装置において、該装置の両端部に他の越水防止装置または壁面等に連結するための連結手段が設けられていることを特徴とする越水防止装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の越水防止装置において、前記ボックスの少なくとも左右の壁に強度のあるパネル材が用いられていることを特徴とする越水防止装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の越水防止装置において、前記ボックスの左右の壁にわたされ当該壁間の距離を保持する支持部材を具えることを特徴とする越水防止装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2006−299648(P2006−299648A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−123116(P2005−123116)
【出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(505124591)株式会社新妻組 (4)
【Fターム(参考)】