説明

足場構築体

【課題】水上構造物を支持する支柱の水面位置近傍部分に対する補修作業が可能な足場構築体として、海水等の水を遮断するとともに安定した状態で作業を容易に行うことができ、しかも作業者や道具等の水中への落下のおそれがない足場構築体を提供する。
【解決手段】支柱Pの水面位置近傍部分P1の外側を取り囲むように設けられて当該支柱部分との間に足場構築用および作業用の空間を形成する上端が開口した半カプセル状の本体2と、本体2の内面側に取り付けられる作業用の足場16と、支柱Pに対して本体2の上部側を固定するための複数の連結部材9とを備える。本体2は、シール部材5を介して互いに水密状態に連結されて支柱部分P1を取り囲む周壁部21および底壁部22を形成する複数の壁部形成部材4で構成する。この本体の底壁部22には、支柱Pの外周面にシール部材8を介して圧接されて当該支柱部分P1をクランプするクランプ部23を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、桟橋や移送用パイプ等の水上構造物を支持する支柱の水面位置近傍部分の補修作業を行うための足場構築体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、液化天然ガス等を積載したタンカーから当該積載物を陸上の貯蔵タンク等に移送する手段として、陸上から海上の桟橋や係船岸等の係留施設に向けて又は沿って海側に突き出すように移送用のパイプや桟橋を設ける場合がある。この種の水上構造物は、海底の土中に打設された鋼管杭等の支柱によって支持されるのが通例であるが、このような鋼製の支柱は海水や潮風に常に曝されているために腐蝕が起きやすい。
【0003】
この腐蝕の速度は支柱の部位によって異なる。最も腐食速度が速いのは、酸素と水分が供給されやすい飛沫帯(大気中に露出したり水中に没したりを繰り返す干満帯の直ぐ上側の、常にしぶきを浴びている部分)と平均干潮面直下の部分、すなわち支柱の水面位置近傍部分であり、大気中の約100倍の速さで腐食が進行すると言われている。
【0004】
上記のような水上構造物を支持している支柱、特にその水面位置近傍部分に対しては、定期的にあるいは必要に応じて適宜、防食塗装等の補修作業を行う必要がある。その場合、岸に近い水深の浅い場所にある支柱については土嚢を積むことによって海水を遮断した状態で作業を行うことができるが、岸から離れた水深の比較的深い場所にある支柱については、土嚢を積む方法は採れない。このため、水深の比較的深い場所にある支柱については、例えば特許文献1に記載の桟橋の下面側に対する補修作業(特許文献1中の図6参照)の場合と同じく、水上構造物から作業用の足場を吊り下げ、この足場上から防食塗装等の補修作業を行うことが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−327302号公報(段落番号0003、図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような吊り下げタイプの足場では、水上構造物の支柱のうちでも特に錆びやすい水面位置近傍部分に対する作業を行うのが難しい。すなわち、吊り下げタイプの足場では、水面より下の部分は勿論のこと、水面より上の部分であっても波や水しぶきがかかったり満潮時に水中に没したりするような部分は、補修作業を完全に終えるまでの間、海水を遮断しておくことができないため、作業者による作業自体が不可能または困難であるだけでなく、たとえ作業を行うことができたとしても使用した防食塗料等を充分に乾燥させることができない。したがって、水上構造物の支柱において、大気中に露出したり水中に没したりを繰り返す干満帯の直ぐ上側の常にしぶきを浴びている飛沫体部分や平均干潮面直下の部分のように、特に腐蝕の進行しやすい部分に対しては、吊り下げタイプの足場では充分な補修作業を行うのが困難である。
【0007】
加えて、吊り下げタイプの足場では側壁がないのが普通であるが、そのような側壁のない足場では、作業中に誤って作業者が落下する危険性があるだけでなく、補修用の道具や材料を不用意に落下させてしまったり、ケレン時等に発生する有害な旧塗膜の削りゴミが海中等に飛散したりするおそれがある。また、吊り下げタイプの足場は揺れやすく不安定なため作業が行い難く、一端構築されてしまうと足場の高さ位置の変更が容易ではないため、高さ方向における作業可能な範囲が比較的狭い範囲に限られるという問題もある。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みてなされたもので、水上構造物を支持する支柱の水面位置近傍部分に対する補修作業が可能な足場構築体として、海水等の水を遮断するとともに安定した状態で作業を容易に行うことができ、しかも作業者や道具等の水中への落下のおそれがなく、ケレン時等に発生する有害な旧塗膜の削りゴミの海中等への飛散も防止できる足場構築体を提供することを目的とする。また、このような足場構築体として、高さ方向において比較的広い範囲にわたって作業が可能な足場構築体を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明は、海上等の桟橋や移送パイプあるいは係船岸等の水上構造物を支持する支柱の水面位置近傍部分の補修作業を行うための足場構築体として、次のように構成したことを特徴とする。
【0010】
すなわち、本発明の足場構築体は、支柱の水面位置近傍部分の外側を取り囲むように設けられて当該支柱部分との間に足場構築用および作業用の空間を形成する上端が開口した半カプセル状の本体と、本体の内面側に取り付けられる作業用の足場と、支柱に対して本体の上部側を固定すべく本体と支柱とを連結する複数の連結部材とを有する。
【0011】
足場構築体の本体は、シール部材を介して互いに水密状態に連結されて前記支柱部分を取り囲む周壁部および底壁部を形成する複数の壁部形成部材で構成する。この本体の底壁部には、前記複数の壁部形成部材を連結して前記支柱部分との間に足場構築用および作業用の空間を形成した状態において支柱の外周面にシール部材を介して圧接されて当該支柱部分をクランプするクランプ部を設ける。
【0012】
本体は、複数の壁部形成部材を同一の高さレベルにおいて互いに連結するとともに上下方向にも互いに連結した構造とするのが望ましい。連結手段としては、ボルト・ナットなど一般に使用される締結部材を用いることができるが、これに限られないことは勿論である。例えば本体が左右一対(平面視で半割り状)の2個の壁部形成部材によって構成される場合には、両壁部形成部材の対応する一側部についてはヒンジで連結し、他側部をボルト・ナット等で連結する構成としてもよい。
【0013】
本発明の足場構築体においては、作業用の足場の基端側の下面に係合ピンを突設する一方、本体の内面側には前記係合ピンを係合させうる係合部を設け、この係合部に前記係合ピンを係合させることにより作業用の足場が本体の内面側に着脱自在に取り付けられる構造とすることができる。
【0014】
安全性向上のため、本体または連結部材には、上端側が水上構造物に連結されたチェーンまたはロープの下端側を連結するのが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の足場構築体においては、上端が開口した半カプセル状の本体が支柱の水面位置近傍部分の外側を取り囲むように設けられて当該支柱部分との間に足場構築用および作業用の空間を形成する。この本体は、その周壁部および底壁部を形成する複数の壁部形成部材を、シール部材を介して互いに水密状態に連結することによって構成される。したがって、本体の下部側が水面下に位置していても、上記の複数の壁部形成部材を連結してなる壁部によって水を遮断できるので、本体内の足場構築用および作業用の空間に水が浸入してくることはない。
【0016】
本体の内面側には作業用の足場が取り付けられるので、この足場を利用して支柱の補修作業を行うことができる。このとき、補修を行うべき支柱部分は本体の中心部分に位置しており、これを取り囲むように足場が位置することとなるから、当該支柱部分に対する例えばサビ落としやケレン、塗装等の補修作業は容易に行うことができる。そして、本体壁部に囲まれた作業用の空間内で作業を行うので、作業者が誤って水中に落下してしまったり補修用の道具や材料を水中に落としてしまったりする事態も確実に防止でき、さらにはケレン時等に発生する有害な旧塗膜の削りゴミの海中等への飛散も防止できる。
【0017】
上記の足場構築用および作業用の空間を形成した状態において、本体の底壁部に設けられているクランプ部が支柱の外周面にシール部材を介して圧接されて当該支柱部分をクランプする。一方、複数の連結部材を介して本体と支柱とが連結されることにより、本体の上部側が支柱に対して固定される。こうして本体の上部側および下部側がいずれも支柱に対して固定されることにより本体が安定するから、その中で作業者は安定した状態で作業を行うことができる。
【0018】
本体の構造を、複数の壁部形成部材を同一の高さレベルにおいて互いに連結するとともに上下方向にも互いに連結する構造とすると、壁部形成部材の上下方向における連結数を増やすことで支柱の高さ方向における作業可能な範囲を拡張することができる。この場合、クランプ部を有する底壁部は、同一の高さレベルにおいて連結される最下部の複数の壁部形成部材によって形成される。したがって、この底壁部を形成する壁部形成部材群として、外径の異なる複数種の支柱に対応するようにクランプ部のサイズ(内径)を異ならせた複数の壁部形成部材群を予め用意しておけば、この種の底壁部形成用の壁部形成部材群を交換するだけで、外径の異なる複数種の支柱に適用可能となる。換言すれば、本体の周壁部を形成する壁部形成部材群については、外径の異なる複数種の支柱の補修作業において共通して使用できるから、その分だけ製造コストや保有コスト等を低減できる。
【0019】
作業用の足場の基端側の下面に係合ピンを突設する一方、本体の内面側には前記係合ピンを係合させうる係合部を設け、この係合部に前記係合ピンを係合させることにより作業用の足場が本体の内面側に着脱自在に取り付けられる構造とした場合には、本体内面側に対する足場の取り付け・取り外し作業が容易となる。また、本体の壁部によって囲まれた比較的狭い作業空間内においても作業がしやすくなるように、作業部位に応じて足場の取り付け位置を適宜変更したり、不使用状態の足場が邪魔になる場合は取り外したりしておくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施例を示すもので、桟橋(水上構造物)を支持する支柱の水面位置近傍部分に足場構築体を設けた状態を示す概略図である。
【図2】同じく支柱の水面位置近傍部分に設けた足場構築体の全体構造を示す縦断面図である。
【図3】足場構築体の本体を、これを構成している壁部形成部材に分解した状態で示す斜視図である。
【図4】図2のA−A線断面図である。
【図5】図2の足場構築体を上方から見た平面図である。
【図6】図2のB−B線断面図である。
【図7】図6のC−C線断面図である。
【図8】本発明の第2実施例を示すもので、支柱の水面位置近傍部分に設けた足場構築体の全体構造を示す縦断面図である。
【図9】本発明の第3実施例を示すもので、足場構築体のクランプの周辺構造を示す横断面図である。
【図10】図9のD−D線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施例) 図1は、液化天然ガス(LNG)移送用パイプを敷設した桟橋(水上構造物)を支持する支柱の補修作業に本発明の足場構築体を適用する場合を示したものである。
【0022】
図1において、液化天然ガス等を積載した海上のタンカーTから当該積載物を陸上の貯蔵施設(図示せず)に移送するパイプ(図示せず)を敷設した桟橋Lは、陸Mから海上の係船施設L1に向けて海側Nに突き出すように設けられている。この桟橋Lは、海底の土中に打設された鋼管杭からなる支柱P群によって支持されている。そして、図示例では、このうちの比較的水深の深い場所に設けられている一本の支柱Pの水面位置近傍部分(大気中に露出したり水中に没したりを繰り返す干満帯の直ぐ上側の常にしぶきを浴びている飛沫帯部分と平均干潮面直下の部分、すなわち特に腐蝕しやすい支柱部分)P1の防食補修工事を行うために、当該支柱Pの水面位置近傍部分P1を取り囲むように本発明の足場構築体1が設けられている。なお、図示例では、上記の平均干潮面(干潮時の水位と満潮時の水位を足して2で割ったもの)を水面WLとして示した。
【0023】
足場構築体1は、図1および図2に示すように、支柱Pの水面位置近傍部分P1の外側を取り囲むように設けられて当該支柱部分P1との間に足場構築用および作業用の空間Sを形成する上端が開口した半カプセル状の本体2を有する。この本体2は、図1ないし図3に示すように、ゴム製のシール部材5を介して互いに水密状態に連結された複数の壁部形成部材4で構成されている。これらの壁部形成部材4は、本実施例では、支柱部分P1を取り囲む筒状の周壁部21を形成する上段および中段の各4つの壁部形成部材(周壁部形成用の壁部形成部材)41および42と、周壁部21の下端側に連結されて本体2の底壁部22を形成する下段の4つの壁部形成部材(底壁部形成用の壁部形成部材)43とからなる。各壁部形成部材4は、本実施例では所要の強度を有する金属製の部材で形成されている。
【0024】
各壁部形成部材4の周縁部には、リブを兼ねるフランジ4aが設けられており、これらのフランジ4aに締結用のボルトを挿通するための複数のボルト挿通孔4bがそれぞれ形成されている。そして、連結すべき壁部形成部材4・4の対応するフランジ4a・4a間にゴム製のシール部材5を介装した状態で、これらを締結用のボルト6およびナット7で締結することで、隣り合う壁部形成部材4・4を互いに水密状態に連結した構成である。なお、この実施例では、各フランジ4aは、図2や図3に示されているように各壁部形成部材4の外面側に突出するように設けられている。
【0025】
本体2における下段の4つの壁部形成部材43で形成される底壁部22の下端側には、図1ないし図4に示すように、支柱部分P(水面位置近傍部分)1をクランプする円筒状のクランプ部23が設けられている。このクランプ部23は、図2および図4に示すように、底壁部形成用の4つの壁部形成部材43の下部に設けられた円筒形成部43aの対応するフランジ4aどうしを、これらの間にゴム製のシール部材5を挟んだ状態で合わせてボルト6およびナット7により締結することによって形成され、内径が補修すべき支柱部分P1の外径と同等もしくは所定量だけ大きい寸法に設定されている。そして、本体2と支柱部分P1との間に足場構築用および作業用の空間Sを形成した状態において支柱部分P1の外周面にゴム製のシール部材8を介して圧接されることにより、支柱部分P1との間を水密状態に保ちつつ当該支柱部分P1をクランプし、この状態で本体2の下部側を支柱Pに対して固定するようになっている。
【0026】
本体2の上端部には、図2および図5に示すように、本体2と支柱Pとを連結する複数(図示例では4つ)の連結部材9が設けられている。各連結部材9は、この実施例では、一端が平面視で略T字状の本体側連結部9aとされ、他端が支柱Pの外面に沿うように形成された部分円筒状の支柱側連結部9bとされている。そして、上段の壁部形成部材41・41の連結部における上端面に本体側連結部9aをボルト10およびナット11を用いて締結する一方、各支柱側連結部9bを支柱Pに沿わせることで全体として支柱Pを包囲する円筒状に形成し、その上で隣接する支柱側連結部9b・9bの対応する側部9cどうしをボルト12およびナット13で結合することにより当該支柱部分P1に各支柱側連結部9bを連結した構成で、これにより本体2の上部側が支柱Pに対して強固に固定されるようになっている。
【0027】
なお、図示例の足場構築体1においては、連結部材9の支柱側連結部9bと支柱部分P1との連結部、および対応する側部9c間の連結部には、これらの連結部のガタツキを防止するとともにボルト12・ナット13による締め付け性を良くするためにゴム部材14が介装されている。また、例えば本体2に想定以上の荷重が加わったときでも本体2がズリ落ちたりしないように、本体2が金属製の4本のチェーン15を介して上方の桟橋Lの下面側に連結されている(図1参照)。この場合の各チェーン15の下端側は、先に述べた連結部材9にそれぞれ連結されている。
【0028】
本体2の内面2a側には、図2、図5および図6に示すように、作業用の複数の足場16が着脱自在に取り付けられている。各足場16は、図7に示したように、水平な平面部16aと、この平面部16aに作用する荷重を受けて本体2側に支持させるべく平面部16aの下面側に設けられた側面視で三角形状の支持部16bと、平面部16aの基端側(本体側)の下面側に突設された係合ピン16cとを備えた構成である。一方、各足場16が取り付けられる本体2の内面2a側には前記係合ピン16cを係合させうる係合部2bが設けられている。そして、図7に鎖線で示した状態から実線で示したように足場16を本体2側に近づけてその係合部2bに足場16側の係合ピン16cを係合させることにより、当該足場16を本体2の内面2a側に着脱自在に取り付けた構成とされている。
【0029】
上記の足場構築体1は、例えば次のような手順で補修対象の支柱部分(水面位置近傍部分)P1に取り付けられる。まず、桟橋L上又は作業船(図示せず)上に予め用意しておいた複数の壁部形成部材4のうちの一つを、クレーン等(図示せず)を用いて補修対象の支柱部分P1の海面付近又は海面から所定深さだけ海中に入った場所に運び、これを作業船上の作業員あるいは海中のダイバー等が操作して支柱部分P1の回りに組み付ける。このとき、先ず下段の底壁部形成用の4つの壁部形成部材4(43)を支柱部分P1の回りに取り付けて連結し、次いでその上側に中段および上段の各4つの壁部形成部材4(42・41)をそれぞれ連結したうえで、上段の壁部形成部材4(41)の上端に各連結部材9を取り付けて支柱部分P1に連結固定する。このようにして本体2を組み立てた後、ポンプ等(図示せず)で本体2内の海水を外部に排出し、その後に足場16およびチェーン10を所定位置に取り付ける。これにより、補修対象の支柱部分P1への足場構築体1の組み立てが完了する。
【0030】
上記のようにして補修対象の支柱部分P1に組み付けられた足場構築体1においては、上端が開口した半カプセル状の本体2が支柱Pの水面位置近傍部分P1の外側を取り囲むように設けられて当該支柱部分P1との間に足場構築用および作業用の空間Sを形成する。このとき、本体2の下部側は水面WLの下に位置しているが、この本体2の壁部(周壁部21および底壁部22は、ゴム製のシール部材5を介して互いに水密状態に連結された複数の壁部形成部材によって形成されており、後述するクランプ部23と支柱部分P1との間もゴム製のシール部材8によって水蜜状態にシールされているので、本体1内への海水の浸入を防止できる。
【0031】
上記の足場構築用1においては、本体2の底壁部22に設けられたクランプ部23が支柱Pの外周面にゴム製のシール部材8を介して圧接されて当該支柱部分P1をクランプする。一方、本体2の上部側は複数の連結部材9を介して支柱Pに固定される。こうして本体2の上部側および下部側がいずれも支柱Pに対して固定されることにより本体2が安定する。したがって、この本体2内に形成された作業空間Sにおいて作業者は海水のしぶき等を被ることなく安定した状態で作業を行うことができる。
【0032】
本体2の内面2a側には作業用の足場16が取り付けられているので、この足場16を利用して支柱Pの補修作業を行うことができる。このとき、補修を行うべき支柱部分P1は本体2内の中心部分に位置しており、これを取り囲むように足場16が位置することとなるから、当該支柱部分P1に対する例えばサビ落としやケレン、塗装等の補修作業は容易に行うことができる。作業用の足場16は着脱自在とされているから、作業位置に応じて適宜取り外しておくことで、使用しない足場が作業の邪魔になるといった事態を回避することができる。また、この場合の作業は本体2の壁部に囲まれた作業空間S内で行うので、作業者が誤って海水中に落下してしまったり補修用の道具や材料を海水中に落としてしまったりする事態も確実に防止でき、さらにはケレン時等に発生する有害な旧塗膜の削りゴミの海中等への飛散も防止できる。
【0033】
なお、上記の第1実施例では、補修対象の支柱Pに足場構築体1を設けるに際して、支柱部分P1の回りに壁部形成部材4を一つずつ組み付けていったが、陸上、桟橋上、作業船上等で予め複数個の壁部形成部材4を所定の状態に連結しておき、この壁部形成部材4の連結体を支柱部分の回りに組み付けていくようにしてもよい。
【0034】
(第2実施例) 図8は、本発明の第2実施例に係る足場構築体1を示したものである。この足場構築体1においては、本体2が、上段および中段の各4つの壁部形成部材(周壁部形成用の壁部形成部材)41および42と、周壁部21の下端側に連結されて本体2の底壁部22を形成する下段の4つの壁部形成部材(底壁部形成用の壁部形成部材)43とで構成される点は第1実施例と同様であるが、このうちの周壁部形成用の壁部形成部材41および42の構成が第1実施例のものと若干異なっている。
【0035】
すなわち、この第2実施例では、上段の壁部形成部材41の周縁部の内面側にフランジ部4aが形成されている。また、中段の壁部形成部材42においては、上段の壁部形成部材41との連結側となる上端の内面側にフランジ部4aが形成され、下段の底壁部形成用の壁部形成部材43との連結側となる下端側の外面側にフランジ部4aが形成されている。これらの点以外は、第1実施例の場合と同様であるので、同様の符号を付してその説明を省略する。
【0036】
上記の壁部形成部材41等のように内面側に連結用のフランジ部4aを形成しておくと、支柱Pに対して本体2の下部側を或る程度構築してから上部側の壁部形成部材を連結していく際に、既に部分的に構築済みの本体2の内部空間を利用して上部側の壁部形成部材の連結作業を行うことができるので、例えば海水面より上の位置で上部側の壁部形成部材を継ぎ足していく必要がある場合などは海水等を気にしなくても済むから、その分作業がしやすくなる。
【0037】
(第3実施例) 図9および図10は、本発明の第3実施例に係る足場構築体のクランプ部23の周辺構造を示したものである。この足場構築体においては、本体を構成する底壁部形成用の各壁部形成部材43の下部側に縦断端面形状がコ状のエアーバッグ装着部43bがそれぞれ形成されており、この各エアーバッグ収納部43b内にクランプ兼シール用のエアーバッグ31がそれぞれ装着されている。
【0038】
各エアーバッグ31は、所要の気密性と水密性と強度とを有する素材によって形成されており、エアーバッグ装着部43bに接着剤や結着部材(例えばファスナ)などを用いて取り付けられている。そして、各エアーバッグ31内のエアーを抜いた状態(エアー未注入状態)で支柱Pを取り囲むように各底壁部形成用の壁部形成部材43を連結して本体の底壁部を形成したのち、各エアーバッグ31内へのエアー注入により各エアーバッグ31を膨張させて、図9に示したように当該支柱部分P1の外周面に押圧状態で密着させるとともに隣り合うエアーバッグ31・31どうしを密着させ、これらのエアーバッグ31により各底壁部形成用の壁部形成部材43・43間および支柱部分P1との間をシールするとともに支柱部分P1をクランプするようになっている。これらの点以外は、第1実施例の場合と同様であるので、同様の符号を付してその説明を省略する。
【0039】
上記の構成によれば、支柱Pとこれを取り囲んでいる底壁部形成用の壁部形成部材43の下端側との間に多少の隙間があったとしても、エアーバッグ31によって当該壁部形成部材43の下端側と支柱部分P1との間がシールされるので、これらの間が水密状態に保持されるとともに、上述したクランプによって本体の底壁部側が支柱Pに対して確実に固定されることとなる。
【0040】
(その他の実施例) 上記の第1実施例や第2実施例では、上、中、下の3段に壁部形成部材4(41・42・43)を連結して本体2を形成したが、この段数は補修対象となる支柱部分Pの高さ範囲に応じて適宜増減可能であることは勿論である。
【0041】
各底壁部形成用の壁部形成部材43には、クランプ部23の下部側に、支柱Pの外周面に接触する付着物除去用のエッジ部を設けることができる。この種のエッジ部は、各底壁部形成用の壁部形成部材43を所定の状態(支柱Pを取り囲む状態)に組み立てて支柱Pに沿ってその水面位置近傍部分にまで降ろしていく際に、支柱Pの外周面に付着している貝やその他の付着物を確実に削ぎ落とすことができるように、クランプ部の下部側に逆円錐台状に形成するのが好ましい。
【0042】
底壁部形成用の壁部形成部材43に外側からホース等を接続できる水抜き用の孔を設けておき、本体2内の水を抜く際に当該水抜き用の孔にホース等を接続したうえで外部の水抜き用のポンプ等を作動させて水を抜くようにすることもできる。
【符号の説明】
【0043】
1 足場構築体
2 本体
2a 本体の内面
2b 係合部
4(41・42・43) 壁部形成部材
5 シール部材
9 連結部材
15 チェーン
16 足場
16c 係合ピン
23 クランプ部
L 水上構造物(桟橋)
P 支柱
P1 支柱の水面位置近傍部分(支柱部分)
S 足場構築用および作業用の空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水上構造物を支持する支柱の水面位置近傍部分の補修作業を行うための足場構築体であって、
支柱の水面位置近傍部分の外側を取り囲むように設けられて当該支柱部分との間に足場構築用および作業用の空間を形成する上端が開口した半カプセル状の本体と、
本体の内面側に取り付けられる作業用の足場と、
支柱に対して本体の上部側を固定すべく本体と支柱とを連結する複数の連結部材とを有し、
本体は、シール部材を介して互いに水密状態に連結されて前記支柱部分を取り囲む周壁部および底壁部を形成する複数の壁部形成部材で構成されており、
本体の底壁部には、前記複数の壁部形成部材を連結して前記支柱部分との間に足場構築用および作業用の空間を形成した状態において支柱の外周面にシール部材を介して圧接されて当該支柱部分をクランプするクランプ部が設けられていることを特徴とする足場構築体。
【請求項2】
本体は、複数の壁部形成部材が同一の高さレベルにおいて互いに連結されているとともに上下方向にも互いに連結された構造とされている、請求項1記載の足場構築体。
【請求項3】
作業用の足場の基端側の下面に係合ピンが突設されているとともに、本体の内面側には前記係合ピンを係合させうる係合部が設けられており、当該係合部に前記係合ピンを係合させることにより作業用の足場が本体の内面側に着脱自在に取り付けられる、請求項1または2記載の足場構築体。
【請求項4】
本体または連結部材には、上端側が水上構造物に連結されたチェーンまたはロープの下端側が連結される、請求項1ないし3のいずれかに記載の足場構築体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−140748(P2011−140748A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−398(P2010−398)
【出願日】平成22年1月5日(2010.1.5)
【出願人】(591074390)
【出願人】(510005720)
【出願人】(510005731)
【出願人】(505179018)
【Fターム(参考)】