説明

足場装置

【課題】 専用レールを用いずに連続的に移動することができる足場装置を提供する。
【解決手段】 作業用の足場本体2と、この足場本体2に設けられ該足場本体2を橋梁101の鍔部103に吊下支持して移動する移動支持装置3とを備える。この移動支持装置3は、鍔部103上を移動する複数の従動輪6.6と、鍔部103下に磁力で吸着する駆動輪7と、それら従動輪6及び駆動輪7により鍔部103を挟んだ状態で足場本体2を移動する回転駆動機構と、従動輪6を鍔部103上の移動位置と非移動位置とに切替える切替え手段26とを備えるから、橋梁101の鍔部103を受動輪6と駆動輪7とにより挟んで足場本体2を吊り下げ、移動する。そして、橋桁接合部の添接板やボルト、あるいは橋桁に横桁が連結された箇所などでは、移動を停止し、従動輪6を非移動位置に切り替えて、前記箇所を通過した後、従動輪6を移動位置に切り替えて移動することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁に用いる足場装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の足場装置として、人が乗って作業することのできる足場本体に、足場本体の長手方向に摺動可能に取り付けられる摺動手段と、橋梁の橋桁、横桁等のフランジを上下から挟み全体を橋桁、桁等に吊り下げる吊下げ把持手段と、この吊下げ把持手段に対して前記足場本体を旋回させる旋回手段と、前記吊下げ把持手段を足場本体に対して昇降させる昇降手段とから成る取付旋回装置を取り付けた旋回移動式橋梁点検足場(例えば特許文献1)があり、また、人が乗って作業することのできる足場本体とこの足場本体を橋梁の横桁又はこれに平行な専用レールに走行可能と、それら橋梁又は専用レールを走行する車輪を備えた橋梁用点検足場(例えば特許文献2)がある。
【0003】
また、上記のような足場装置を橋脚下部に吊り込む方法として、俯仰アームと垂直サドル,垂直ビームからなるブームを備えた専用車両により、点検足場を橋下に潜り込ませる方法(例えば特許文献3)や、作業足場の他端部と反対側に該作業足場の重量に平衡する専用のバランスウェイトを設け、橋上から橋下に吊り込む方法(例えば特許文献4)がある。
【特許文献1】特開昭59−145807号公報
【特許文献2】特開昭59−130904号公報
【特許文献3】特開昭62−185907号公報
【特許文献4】特開昭62−288258号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の装置では、作業場所を変える際には、一方の取付旋回装置を橋桁から外し、橋桁にまだ取り付けられている取付旋回装置の旋回手段のハンドルを回して、足場本体を旋回させて移動するものであるから、移動作業に手間が掛かり、また、橋の長さ方向に足場本体を連続的に移動することができない。
【0005】
一方、特許文献2の装置では、専用レールを用いた場合は、橋の長さ方向に連続的に足場本体を移動することができる。しかし、専用レールを設けずに、橋桁のフランジなどをレールに用いた場合、鋼材からなる橋桁の接合には、両側のフランジやウエブを挟むように添接板を設けると共に、それら添接板にボルトを挿通して接合されるため、接合箇所などにおいてフランジの外面に添接板とボルトがあり、フランジ上面は連続した平面とはならず、添接板を設けた接合部で走行不能となるため、専用レールが必要となり、この専用レールは橋の全長に幅方向両側に設けなければならず、設備費用が高騰する問題がある。
【0006】
また、上述した足場装置を橋脚下部に吊り込む方法で、特許文献3では専用車両を必要とするため、汎用的なクレーンなどを使用することができず、また、特許文献4では釣合いのために別個に専用のバランスウェイトを必要とし、このバランスウェイトは吊り下ろしの際用いるものであるから、足場作業において不要であり、その重量により足場強度を余分に高める必要がある。
【0007】
そこで、本発明は、専用レールを用いずに連続的に移動することができる足場装置を提供することを目的とし、加えて、吊り下ろし作業を簡易に行うことができる足場装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、作業用の足場本体と、この足場本体に設けられ該足場本体を橋梁の鍔部に吊下支持して移動する移動支持装置とを備えた足場装置であって、前記移動支持装置は、前記鍔部上を移動する複数の上回転移動手段と、前記鍔部下に押し付けられる又は吸着する下回転移動手段と、前記上回転移動手段を前記鍔部上の移動位置と非移動位置とに切替える切替え手段とを備え、それら上,下回転移動手段により前記鍔部を挟んだ状態で前記下回転移動手段の回転力により前記足場本体を移動するものである。
【0009】
また、請求項2の発明は、前記足場本体は、固定足場本体と、この固定足場本体の長さ方向にスライド可能な可動足場本体と、この可動足場本体を前記固定足場本体に対してスライド駆動する駆動手段とを備えるものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の構成によれば、橋梁の鍔部を上,下回転移動手段により挟んで足場本体を吊り下げ、下回転移動手段の回転力により移動する。そして、橋桁接合部の添接板やボルト、あるいは橋桁に横桁が連結された箇所などでは、移動を停止し、上回動移動手段を非移動位置に切り替えて、前記箇所を通過した後、上回動移動手段を移動位置に切り替えて移動することができる。また、下回転移動手段は鍔部に押し付けられ又は吸着するから、該下回転移動手段の回転力により確実に足場本体を移動することができる。
【0011】
そして、橋梁の鍔部では、その上側は添接板以外に横桁の連結箇所やウエブの添接板などがあるのに対して、下側は添接板はあるが、上側に比べて、走行の妨げとなる箇所が少なく、その鍔部の下に押し付け又は吸着する下回転移動手段を回転して移動するから、足場本体をスムーズに移動させることができる。また、上回転移動手段に、回転駆動手段などを組み込む必要がないから、上回転移動手段を軽量化することができ、これにより上回転移動手段の位置を変える切替え手段も簡易なもので済む。
【0012】
したがって、橋梁に専用レールなどを設ける必要がなく、接合箇所や横桁連結箇所などがある橋桁の鍔部を用いて足場本体を移動することができる。
【0013】
また、請求項2の構成によれば、可動足場本体を外側にスライドさせて足場本体を伸ばした状態で、該足場本体の中央側の重心位置を吊上げる。そして、上回転移動手段を鍔部の上に合わせるとともに、鍔部の下に下回転移動手段を合わせ足場本体を橋梁に吊り下げる。このように張出した可動足場本体がバランスウェイトの作用をするため、構造的に無駄のない足場装置を得ることができる。
【0014】
尚、足場本体の長さ方向に対して、上,下回転移動手段を移動可能に設けた場合には、吊上げた足場本体の高さを、鍔部が上,下回転移動手段の間にくるように吊上げ、この状態で、上,下回転移動手段を足場本体の長さ方向に移動し、間に鍔部を挟むようにして足場本体を橋梁に吊り下げる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。各実施例では、従来とは異なる足場装置を採用することにより、従来にない足場装置が得られ、その足場装置を夫々記述する。
【実施例1】
【0016】
以下、本発明の足場装置の実施例1について図1〜図11を参照して説明する。同図に示すように、足場装置1は、作業用の足場本体2と、この足場本体2を橋梁101の橋桁102の鍔部103に吊上支持して移動する移動支持装置3とを備える。この移動支持装置3は、足場本体2上で左右に設けられる本体フレーム4,4と、この本体フレーム4を足場本体2の左右方向に移動可能に設けるフレーム駆動機構5,5と、前記本体フレーム4の前後に設けられる左右の上回転移動手段たる従動輪6,6と、これら前後の上回転手段6,6の間で本体フレーム4の中央に設けられる上回転移動手段たる従動輪6,6と、前記本体フレーム4に設けられ下回移動手段たる左右の駆動輪7,7とを備える。尚、前記橋桁102は鋼材などの磁性材からなる。
【0017】
前記足場本体2は、下枠部11と四方の手摺枠部12とを備える。この手摺枠部12の上桟13に前記移動支持装置3の本体たる本体フレーム4が前記フレーム駆動手段5,5により連結され、このフレーム駆動手段5は、図3に示すように、角パイプなどからなる前記本体フレーム4に上取付部材14を設け、この上取付部材14と下取付部材15とをボルトなどのピン16により連結し、前記下取付部材15に複数のローラ17,17を設け、これらローラ17,17を前記上桟13内に転動可能に挿入し、その上桟13の開口一側縁に、前記ローラ17の離脱防止を兼用するラック19が固定され、このラック19に噛合するギヤ(図示せず)を回転駆動する駆動手段たるモータ18が、前記下取付部材15に設けられている。尚、前記上桟13はコ字型の鋼材からなる。
【0018】
したがって、フレーム駆動機構5のモータ18を駆動すると、ラック19に噛合する前記ギヤが回転し、本体フレーム4が足場本体2の左右方向(長さ方向)に移動する。
【0019】
前記従動輪6は、鍔部103に接する移動位置において、前記鍔部103の上面を回転しながら移動し、前記足場本体2の荷重を支持するものであり、図4〜図6に示すように、前記本体フレーム4に取付部21,21を設け、これら取付部21,21に枢軸22により回動アーム23の基端を回動可能に設け、この回動アーム23の先端に前記従動輪6を遊転可能に設け、これにより従動輪6は、本体フレーム4に対して、枢軸22を中心に回動可能に設けられる。
【0020】
また、図4に示すように、回動アーム23の基端側には、前記本体フレーム4から離れる方向に短片部23A,23Aが一体に突設され、これら短片部23A,23Aの先端に枢軸24によりリンク片25,25の一端が回動可能に連結され、それら略弓形のリンク片25,25の他端が枢軸24Aにより、切替え手段26の作動部27に回動可能に連結されている。また、前記取付部21,21には、前記枢軸22より本体フレーム4に近い位置に枢軸28が設けられ、この枢軸28に略L字形のリンク片29,29の一端が回動可能に連結され、それらリンク片29,29の他端が前記作動部27に前記枢軸24Aにより回動可能に連結されている。また、前記取付部21の他方で、前記本体フレーム4に他側取付部31,31を設け、この他側取付部31,31に枢軸32により前記切替え手段26を回動可能に設けている。尚、図4に示すように、枢軸32は枢軸22,24,28より下方に位置する。
【0021】
前記切替え手段26は、前記枢軸32により回動可能に設けられた本体33と、この本体33に対して進退する作動杆34とを備え、この作動杆34の先端に前記作動部27が設けられている。前記作動杆34は雄螺子部34Aを有し、本体33に突設した操作軸37に、回転式のハンドル36を連結して、該操作軸37を回動することにより、前記本体33内に設けた螺子式送り機構により前記作動杆34が進退する。尚、図中、38は前記本体33に設けた筒状のカバーであり、前記作動杆34の基端側が収納される。
【0022】
そして、図4に示す従動輪6の移動位置(鍔部103の上面に沿った位置)から、作動杆34が後退すると、作動部27は、リンク片29の枢軸28を中心とする円弧Kの軌跡に沿って後退し、この作動部27の移動により、リンク片25を介して回動アーム23が回動し、図5に示す非移動位置に従動輪6が移動する。そして、この非移動位置では、足場本体2を下げても、従動輪6は鍔部103に干渉しない。尚、本体フレーム4の左右の回動アーム23には、1つの従動輪6が設けられ、本体フレーム4の中央の回動アーム23には、2つの従動輪6,6が左右に並んで設けられている。
【0023】
図7に示すように、前記駆動輪7は、取付枠41により前記本体フレーム4に取付けられている。前記取付枠41は枢軸43により前記本体フレーム4に回動可能に設けられ、その取付枠41に駆動輪7を枢軸42により回動可能に設ける。尚、前記枢軸42は、前記取付枠41に回動可能に設けられている。また、駆動輪7の他側には、該駆動輪7を上方に付勢する付勢手段44が設けられ、この付勢手段44は、一端を前記取付枠41に枢軸45により回動可能に連結し、他端を前記本体フレーム4に枢軸46により回動可能に連結し、コイルバネなどにより枢軸45,46間を開く方向の力を発するものである。
【0024】
前記駆動輪7は、鍔部103に吸着する磁石を備えた吸着車輪であり、図8〜図9に示すように、車輪フランジ111,これと一体に設けた二枚の側坂112,112,磁石114,114A,磁石取付アーム115を備え、前記磁石114,114Aは、磁石取付アーム115を介して、枢軸42に固着されている。前記車輪フランジ111は非磁性材からなり、磁石の磁場に影響を与えない。また、車輪フランジ111の全周には、駆動輪7が移動する際に、移動面である鍔部103を損傷しないようにゴムなどの柔軟材116を被覆している。
【0025】
そして、前記磁石取付アーム115を枢軸42に回動可能に設けた場合は、駆動輪7が鍔部103に沿って回転移動するとき、枢軸42に懸架された磁石114は、磁性体である鍔部103に対して最も磁場の強まる方向を自ずと向き、吸着力(吸磁力)はその方向に枢軸42を介して駆動輪7を押し付ける押し付け力として作用する。
【0026】
この駆動輪7の吸着力は、磁石・磁性体間のギャップと磁石4の形状によって決まる。このクラスの駆動輪7であれば、車輪フランジ111にかなり厚手の柔軟材116を巻いたとしても車輪フランジ111の厚さは10mmあれば十分であるから車輪フランジ111と磁石114とのキャップを12mmとすれば吸着力は250kgf位まで期待できる。この時、磁石114及びそれ以外の車輪重量はそれぞれ8kg、全体で16kgであるから、車輪単位質量当たり吸着力は約16kgf/kgとなる。
【0027】
一方、磁石114の幅Lに注目すると、接地中心から外側に行くにつれて磁石114と鍔部103とのギャップが増大するため、この方向に磁石114を大きくしてもあまり吸着力の増加は期待できず、磁石114の幅Lをある程度以上大きくする必要はない。
【0028】
また、前記取付枠41には、伸縮手段51の基端が枢軸51Aにより回動可能に設けられ、その伸縮手段51の伸縮杆52の先端52Aがリンク片53に回動可能に連結され、このリンク片53は、前記枢軸42に連結され、駆動手段たるモータ54により前記伸縮杆52が進退する。
【0029】
したがって、磁石114が鍔部103を向いた位置で、伸縮手段51を駆動すると、磁石114の向きが変わり、吸磁力が下がり、鍔部103から駆動輪7を外すことができる。
【0030】
また、前記駆動輪7の内部には、移動駆動手段であるモータ駆動の回転駆動機構56が設けられ、この回転駆動機構56は前記枢軸42に固着されており、前記モータで駆動する回転伝達輪57が前記車輪フランジ111の内周に当接し、その回転伝達輪57が回転することにより、車輪フランジ111が回転する。
【0031】
次に、前記構成につき、その作用を説明すると、図1などに示すように、従動輪6を鍔部103の上面に配置すると共に、駆動輪7を付勢手段44により鍔部103の下面に押し付け、それら従動輪6と駆動輪7により鍔部103を挟んで足場本体2を橋桁102の下に吊下げる。尚、前記移動支持装置3の本体フレーム4は、モータ18により上桟13に沿って移動可能であるから、両側の本体フレーム4の位置や間隔を橋梁101に合わせて調整できる。
【0032】
前記吊下げ状態において、駆動輪7の磁石114が磁性材からなる鍔部103に磁力により吸着することに足場本体2を支持するから、荷重的に従動輪6を小型化することができる。そして、回転駆動機構56により駆動輪7を回転駆動し、これによる回転力によって橋桁102の長さ方向に移動し、所定位置で停止して橋梁101下部のメンテナンスを行う。このメンテナンスには塗装による補修作業や各種の点検作業などが挙げられる。尚、回転駆動機構56を用いずに、駆動輪7を手動により回転し、回転力を付与するようにしてもよく、この場合は、例えば、駆動輪7の回転中心にハンドル(図示せず)などを着脱可能に取り付ける箇所を設け、そこに取り付けたハンドルを手動で操作して駆動輪7を回転するようにしてもよい。
【0033】
移動支持装置3により移動中、図10に示すように、添接板105,105に鍔部103を挟み、ボルトナット106により挟着することにより橋桁102,102を連結した箇所が、図1の右側にある場合、切替え手段26により右側の従動輪6を、図5に示したように、非移動位置とする。このようにすることにより、従動輪6が前記添接板105などに干渉することなく、移動することができる。1つの従動輪6を非移動位置に動かしても、中央と左の2箇所の従動輪6と、2つの駆動輪7により、足場本体2は安定して吊下げられる。右側の従動輪6を非移動位置にした後、図1中右側に移動すると、駆動輪7は磁石114により添接板105箇所も吸着状態で移動し、右側の従動輪6が不連続部である添接板105を通り過ぎたら再び移動位置に戻し、同様にして、中央側の従動輪6,6を非移動位置にして不連続部を通ってから、移動位置に戻し、次に、左側の従動輪6を非移動位置にして不連続部を通ってから、移動位置に戻し、このようにして、鍔部103に不連続部が有っても、足場本体2を移動することができる。
【0034】
そして、磁石114を備えた駆動輪7を、回転駆動機構56により駆動し、橋桁102の鍔部103を代用レールとして使用し、専用の走行レールが不要であるため、仮設式移動足場として複数の橋梁に対して転用が可能となる。また、磁石114を備えた駆動輪7を用いることにより、鍔部103の不連続部においても、駆動輪7を吸着したまま走行することができる。さらに、足場本体2は構造がシンプル・堅牢であるため、足場本体2のメンテナンス性に優れる。また、仮設式でありながら常設足場と同様に耐久性を備え、休止時には橋梁101に長期間係留・保管することができる。さらに、橋梁101上などの現場での組立作業が無いため、設置を迅速に行うことができる。
【0035】
このように本実施例では、請求項1に対応して、作業用の足場本体2と、この足場本体2に設けられ該足場本体2を橋梁101の鍔部103に吊下支持して移動する移動支持装置3とを備えた足場装置であって、移動支持装置3は、鍔部103上を移動する複数の上回転移動手段たる従動輪6.6と、鍔部103下に押し付けられる又は吸着する下回転移動手段たる駆動輪7と、従動輪6を鍔部103上の移動位置と非移動位置とに切替える切替え手段26とを備え、それら従動輪6及び駆動輪7により鍔部103を挟んだ状態で前記駆動輪7の回転力により足場本体2を移動するから、橋梁101の鍔部103を受動輪6と駆動輪7とにより挟んで足場本体2を吊り下げ、駆動輪7の回転力により移動する。そして、橋桁接合部の添接板105やボルト106、あるいは橋桁に横桁が連結された箇所などでは、移動を停止し、従動輪6を非移動位置に切り替えて、前記箇所を通過した後、従動輪6を移動位置に切り替えて移動することができる。また、駆動輪7は鍔部102に押し付けられ又は吸着するから、その駆動輪7により確実に足場本体2を移動することができる。
【0036】
そして、橋梁101の鍔部103では、その上側は添接板105以外に横桁の連結箇所やウエブの添接板などがあるのに対して、下側は添接板105はあるが、上側に比べて、走行の妨げとなる箇所が少なく、その鍔部101の下に押し当て又は吸着する駆動輪7を回転して移動するから、足場本体2をスムーズに移動させることができる。また、足場本体2を駆動輪7の回転力により移動するように構成したことにより、従動輪6に、回転駆動手段などを組み込む必要がないから、従動輪6を軽量化することができ、これにより従動輪6の位置を変える切替え手段26も簡易なもので済む。
【0037】
したがって、橋梁に専用レールなどを設ける必要がなく、接合箇所や横桁連結箇所などがある橋桁102の鍔部103を用いて足場本体2を連続的に移動することができる。
【0038】
また、実施例上の効果として、移動支持装置3には、複数の本体フレーム4,4を設け、この本体フレーム4に駆動輪6及び従動輪7を設け、その本体フレーム4,4がフレーム駆動機構5により、足場本体2の左右方向(長さ方向)に移動可能に構成したから、橋梁101に鍔部103,103の間隔に対応して、本体フレーム4,4の間隔を調整でき、汎用性に優れたものとなる。また、下回転移動手段が、鍔部103に吸着する磁石114を有する駆動輪7であるから、その駆動輪7は磁石114の磁力により鍔部103に吸着する。
【実施例2】
【0039】
図12は、本発明の実施例2を示し、上記実施例1と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述すると、同図は、橋梁101の橋桁102Aの他の例を示し、この橋桁102Aは、鋼材を角形に形成したコラムなどからなり、その下部左右には前記鍔部103が橋桁102Aの長さ方向に連続して設けられている。
【実施例3】
【0040】
図13〜図20は、本発明の実施例3を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述すると、この例は、前記足場本体2を固定足場本体2Aと可動足場本体2Bに分割して構成しており、固定足場本体2Aは実施例1の足場本体2と同一構成であり、前記移動支持装置3が設けられ、可動足場本体2Bは前記固定足場本体2A内に挿入可能とするため、固定足場本体2Aより前後幅が狭く、かつ低く形成されており、前記固定足場本体2Aの左右方向両側から外側に向ってスライド可能に設けられている。
【0041】
図13〜図17に示すように、可動足場本体2Bはスライド駆動手段61により固定足場本体2Aに対してスライド駆動する。そのスライド駆動手段61は、固定足場本体2Aの前後方向両側下部に支持ローラ62,62を回動自在に設け、これら支持ローラ62,62は、可動足場本体2Bの下枠部11の底部を支持して回動し、また、可動足場本体2Bの前後方向両側に規制ローラ63,63を設け、これら規制ローラ63,63は固定足場本体2Aの下枠部11の規制溝64,64内を移動し、これにより固定足場本体2Aに対して可動足場本体2Bの高さ位置が規制されている。さらに、スライド駆動手段61は、前記可動足場本体2Bの下枠部11の下面に、ラック65を設け、このラック65は可動足場本体2Bの前後方向中央で左右方向に設けられ、そのラック65に歯合するギヤ66,66Aが前記固定足場本体2Aに設けられており、一方のギヤ66を駆動する駆動手段たるモータ67を前記固定足場本体2Aに設け、一方のギヤ66の軸66Gにはスプロケット68を設け、このスプロケット68の回転をチェーン69により伝達するスプロケット68Aを、他方のギヤ66Aの軸68Gに設けている。尚、図中70は、前記ギヤ66A及びスプロケット67Aの軸68Gを固定足場本体2Aに回転可能に取り付ける取付部材70であり、螺子棒とナットとからなる位置調整部70Aにより、チェーン69が所定の張力になるように前記軸68Gを固定することができる。
【0042】
したがって、モータ67を駆動すると、ギヤ66,66Aが同一方向に回動し、これらギヤ66,66Aに歯合するラック65を備えた可動足場本体2Bが、固定足場本体2Aに対してスライド移動する。
【0043】
また、前記固定足場本体2Aの左右方向一側には、その下枠部11の底部前後に張出杆71,71を設けており、この張出杆71の部分には、手摺枠部12はなく、下枠部11が設けられている。
【0044】
次に、前記構成につき、その作用を説明すると、足場本体2を縮めた状態、即ち固定足場本体2Aに移動足場本体2Bを収めた状態とし、この足場本体2を、トラックなどの運搬車両81に搭載して、橋梁101の現場まで搬送し、可動足場本体2Bを張出杆71側にスライドして伸ばし、この状態では可動及び固定足場本体2A,2Bが左右方向中央で部分的に重複している。そして、図19に示すように、伸ばした状態の足場本体2の中央側をクレーン72などの汎用機械を用いて吊上げる。この場合、クレーン72に設けた吊上げ用の索条73を、張出杆71の先端側と、これと足場本体2の重心を挟んで対象位置の固定足場本体2Aの箇所とに係止することにより、足場本体2を安定して吊上げることができる。すなわち、張出杆71により可動足場本体2B側が支持され、固定足場本体2Aと移動足場本体2Bの重複部分に、吊上げ時に無理な力が加わることがない。
【0045】
そして、吊り下しの際には、長さ方向を橋梁101の長さ方向に合わせて足場本体2を橋桁102の下まで吊り下し、略90度旋回させる(図19)。同図に示すように、可動足場本体2Bを張出すことにより、該可動足場本体2Bがウェイトとして作用し、固定足場本体2Aを橋桁102の下方に位置させ、移動支持装置3を鍔部103にセットすることができる。また、図20に示すように、足場本体2を移動支持装置3により鍔部103に吊下げた後、可動足場本体2Bを、長さ方向内側に移動し、さらに逆側の外側に移動し、固定足場本体2Bの他側から張出させる。このように可動足場本体2Bを他側にスライドさせることにより、橋梁101の下部の広い範囲でメンテナンスを行うことができる。
【0046】
尚、図19に示すように、移動支持装置3の左右の本体フレーム4,4の間隔が、橋脚102,102の間隔より広くなるようにしておき、図19の高さ位置から、足場本体2の高さを、鍔部103が従動輪6と駆動輪7の間にくる位置まで吊上げ、この状態で、フレーム駆動機構5,5により左右の本体フレーム4,4を中央側に移動し、それら従動輪6と駆動輪7との間に鍔部103を挟むようにして、図20に示すように、足場本体2を橋梁101に吊り下げる。
【0047】
そして、橋梁101の左右方向(幅方向)に移動可能な従動輪6及び駆動輪7と、可動足場本体2Bがスライドする構成により、橋上から橋下に吊り込み設置が可能で、その際、可動足場本体2Bをカウンターウェイトとして利用し、専用のカウンターウェイトが不要又は少なく済む。
【0048】
このように本実施例では、請求項2に対応して、足場本体2は、固定足場本体2Aと、この固定足場本体2Aの長さ方向にスライド可能な可動足場本体2Bと、この可動足場本体2Bを固定足場本体2Aに対してスライド駆動する駆動手段たるモータ67とを備えるから、可動足場本体2Bを外側にスライドさせて足場本体2を伸ばした状態で、該足場本体2の中央側の重心位置を吊上げる。このように張出した可動足場本体2Bがバランスウェイトの作用をするため、構造的に無駄のない足場装置を得ることができる。
【0049】
この場合、吊上げた足場本体2の高さを、鍔部103が従動輪6と駆動輪7の間にくるように吊上げ、この状態で、左右の本体フレーム4,4を足場本体2の長さ方向に移動し、それぞれの従動輪6と駆動輪7との間に鍔部103を挟むようにして足場本体2を橋梁101に吊り下げる。
【0050】
尚、従動輪6は非移動位置に位置させた状態で、鍔部103の下に駆動輪7を合わせ、従動輪6を移動位置に切り替えて足場本体2を橋梁101に吊り下げるようにしてもよい。
【0051】
また、可動足場本体2Bは、固定足場本体2Aの両側にスライド可能であるから、橋梁に吊下げ後は、図20(B)に示したように、内側にスライドして作業を行うことができる。
【0052】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、上,下回転移動手段は各種のものを用いることができ、例えば、回転する球状のものや、クローラ式のものなどでもよい。また、移動駆動手段も、実施例に示した駆動輪に内蔵するものに限らず、回転操作用のハンドルなどを用いて手動により回転するなどの各種の手段を用いることができる。さらに、実施例では、固定足場本体に1つの可動足場本体を設けたが、可動足場本体を2つ以上にしてもよい。また、実施例では、本体フレームに複数の下回転移動手段を備えるものを示したが、下回転移動手段は、1個でも、3個以上でもよい。さらに、下回転移動手段は、回転時に鍔部と滑りが発生しない程度に鍔部下に押し付けられていればよい。さらに、実施例では、伸縮手段51により磁石の向きを変えたが、磁石の向きを変える手段も適宜選定可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施例1を示す足場装置の側面図である。
【図2】同上、足場装置の正面図である。
【図3】同上、足場本体上部の断面図である。
【図4】同上、移動位置の上回転移動手段及び切替え手段の正面図である。
【図5】同上、非移動位置の上回転移動手段及び切替え手段の正面図である。
【図6】同上、切替え手段周りの平断面図である。
【図7】同上、下回転移動手段周りの側面図である。
【図8】同上、下回転移動手段の側面図である。
【図9】同上、下回転移動手段の断面図である。
【図10】同上、下回転移動手段の不連続部における吸着力の方向を示す説明側面図である。
【図11】同上、下回転移動手段の平坦部における吸着力の方向を示す説明側面図である。
【図12】本発明の実施例2を示す足場装置の正面図である。
【図13】本発明の実施例3を示す足場装置の側面図である。
【図14】同上、足場装置の側面図である。
【図15】同上、可動足場本体をスライド駆動するスライド駆動手段の断面図である。
【図16】同上、スライド駆動手段の要部の平面図である。
【図17】同上、スライド駆動手段の要部の側面図である。
【図18】同上、足場装置の現場搬入を説明する側面図である。
【図19】同上、足場装置の吊り下し作業を説明する側面図である。
【図20】同上、足場装置の吊下げ状態を説明する側面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 足場装置
2 足場本体
3 移動支持装置
4 本体フレーム
5 フレーム駆動機構
6 従動輪(上回転移動手段)
7 駆動輪(下回転移動手段)
26 切替え手段
2A 固定足場本体
2B 可動足場本体
61 スライド駆動手段
101 橋梁
102 橋桁
102A 橋桁
103 鍔部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業用の足場本体と、この足場本体に設けられ該足場本体を橋梁の鍔部に吊下支持して移動する移動支持装置とを備えた足場装置であって、前記移動支持装置は、前記鍔部上を移動する複数の上回転移動手段と、前記鍔部下に押し付けられる又は吸着する下回転移動手段と、前記上回転移動手段を前記鍔部上の移動位置と非移動位置とに切替える切替え手段とを備え、それら上,下回転移動手段により前記鍔部を挟んだ状態で前記下回転移動手段の回転力により前記足場本体を移動することを特徴とする足場装置。
【請求項2】
前記足場本体は、固定足場本体と、この固定足場本体の長さ方向にスライド可能な可動足場本体と、この可動足場本体を前記固定足場本体に対してスライド駆動する駆動手段とを備えることを特徴とする請求項1記載の足場装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2007−51416(P2007−51416A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−235038(P2005−235038)
【出願日】平成17年8月12日(2005.8.12)
【出願人】(594091215)株式会社技術開発研究所 (9)
【Fターム(参考)】