説明

足場装置

【課題】
高架橋等の高欄部に設置され移動機能を有して高欄部の外側面の補修等の各種作業に使用される足場装置について、移動用フレームの長距離の連続的な移動を可能にする。
【解決手段】
高架橋Bの高欄部Bcに上方から挟込み取付けされ高欄部Bcの外側に突出されるレール支持部材1と、レール支持部材1の突出端に支持され高欄部Bcに沿って配設されるレール2と、レール2を転動するローラ31が支持ベース32に取付けられたローラユニット3と、ローラユニット3の支持ベース32に取付けられる移動用フレーム4とを備えている。レール支持部材1には、高欄部Bcへの挟込み取付けの強度を高める締付具12が設けられている

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高架橋等の高欄部に設置され移動(走行)機能を有して高欄部の外側面の補修等の各種作業に使用される足場装置に係る技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
最近、高架橋等の高欄部の外側面の補修等の各種作業に使用される足場は、地上からの構築が困難なことが多いことから、高欄部に吊下げ支持するように設置されるようになってきている。そして、補修等の各種作業の作業性を向上するため、足場の一部を高架橋等の高欄部に沿って移動可能にして、足場に移動機能をもたせるようになってきている。
【0003】
従来、移動機能を有した足場としては、例えば、特許文献1,2に記載のものが知られている。
【0004】
特許文献1,2には、高架橋等の高欄部を移動のための案内であるレールとして利用し、高欄部の内側面,外側面,上端面の3面を転動するローラが取付けられた移動用フレームを備えた足場装置が記載されている。
【0005】
特許文献1,2に係る足場装置は、高架橋等の高欄部の内側面,外側面,上端面を案内面としてローラを転動させることで、移動用フレームを高欄部に沿って移動可能にするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3890500号公報
【特許文献1】特許第3913648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1,2に係る足場装置では、高架橋等の高欄部の内側に電柱,支柱等の構築物がある場合、構築物に高欄部の内側面を転動するローラ(ローラの支持部材)が衝突してしまうため、移動用フレームの長距離の連続的な移動ができないという問題点がある。
【0008】
本発明は、このような問題点を考慮してなされたもので、移動用フレームの長距離の連続的な移動を可能にする足場装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の課題を解決するため、本発明に係る足場装置は、特許請求の範囲の各請求項に記載の手段を採用する。
【0010】
即ち、請求項1では、高架橋等の高欄部に上方から挟込み取付けされ高欄部の外側に突出されるレール支持部材と、レール支持部材の突出端に支持され高欄部に沿って配設されるレールと、レールを転動するローラが支持ベースに取付けられたローラユニットと、ローラユニットの支持ベースに取付けられる移動用フレームとを備えたことを特徴とする。
【0011】
この手段では、移動用フレームが取付けられるローラユニットのローラが高欄部の外側に突出されたレール支持部材に支持されたレールを転動することで、高架橋等の高欄部の内側の電柱,支柱等の構築物への各部の衝突のおそれがなくなる。
【0012】
また、請求項2では、請求項1の足場装置において、レール支持部材は高欄部への挟込み取付けの強度を高める締付具が設けられていることを特徴とする。
【0013】
この手段では、レール支持部材に高欄部への挟込み取付けの強度を高める締付具が設けられることで、高欄部の大きさ(厚さ)に対応して適正な挟込み取付けの強度を構成することができる。
【0014】
また、請求項3では、請求項1または2の足場装置において、レールはローラユニットのローラが内装される箱形に形成され、レール支持部材は突出端にレールを外側から開閉着脱可能な箱形の支持端末具が設けられていることを特徴とする。
【0015】
この手段では、箱形のレールがレール支持部材の箱形の支持端末に外側から開閉着脱可能に支持されることで、レール支持部材へのレールの配設作業が容易,確実になる。
【0016】
また、請求項4では、請求項1〜3のいずれかの足場装置において、レール支持部材は高欄部への挟込みスパンを調整するスパン調整部が設けられていることを特徴とする。
【0017】
この手段では、レール支持部材に高欄部への挟込みスパンを調整するスパン調整部が設けられることで、多様な構造の高欄部への対応が可能になる。
【0018】
また、請求項5では、請求項1〜3のいずれかの足場装置において、移動用フレームは少なくとも高欄部の側方方向の大きさが可変される伸縮構造を有していることを特徴とする。
【0019】
この手段では、移動用フレームが少なくとも高欄部の側方方向の大きさが可変される伸縮構造を有していることで、設置作業の際に高架橋等の高欄部の外側への突出が低減される。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る足場装置は、移動用フレームが取付けられるローラユニットのローラが高欄部の外側に突出されたレール支持部材に支持されたレールを転動することで、高架橋等の高欄部の内側の電柱,支柱等の構築物への各部の衝突のおそれがなくなるため、移動用フレームの長距離の連続的な移動が可能になる効果がある。
【0021】
さらに、請求項2として、レール支持部材に高欄部への挟込み取付けの強度を高める締付具が設けられることで、高欄部の大きさ(厚さ)に対応して適正な挟込み取付けの強度を構成することができるため、レールの配設ラインを正確にして、移動用フレームの移動を円滑にすることができる効果がある。
【0022】
さらに、請求項3として、箱形のレールがレール支持部材の箱形の支持端末に外側から開閉着脱可能に支持されることで、レール支持部材へのレールの配設作業が容易,確実になるため、高架橋等の高欄部の外側の空間での設置の作業性が良好になる効果がある。
【0023】
さらに、請求項4として、レール支持部材に高欄部への挟込みスパンを調整するスパン調整部が設けられることで、多様な構造の高欄部への対応が可能になるため、汎用性が高くなる効果がある。
【0024】
さらに、請求項5として、移動用フレームが少なくとも高欄部の側方方向の大きさが可変される伸縮構造を有していることで、設置作業の際に高架橋等の高欄部の外側への突出が低減されるため、高架橋等の高欄部の外側の空間での設置の作業性が良好になる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る足場装置を実施するための形態の第1例の側面図である。
【図2】図1の正面図である。
【図3】図1の要部の拡大斜視図であり、(A),(B)に異なる動作状態が示されている。
【図4】第1図の設置作業の最初の工程図である。
【図5】図4に続く工程図である。
【図6】図5に続く工程図である。
【図7】図6に続く工程図である。
【図8】図7に続く工程図である。
【図9】図8に続く工程図である。
【図10】図9に続く工程図である。
【図11】本発明に係る足場装置を実施するための形態の第2例の側面断面図である。
【図12】本発明に係る足場装置を実施するための形態の第3例の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る足場装置を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
図1〜図10は、本発明に係る足場装置を実施するための形態の第1例を示すものである。
【0028】
第1例では、新幹線等の鉄道の高架橋に適用されるものを示してある。
【0029】
即ち、第1例の適用対象とする高架橋Bは、床版Baの側端部に立上げられた側壁Bbの上にPCパネル等の防音壁Bcが設けられている。この防音壁Bcが第1例の設置箇所である高欄部となる。
【0030】
第1例は、図1,図2に示すように、レール支持部材1,レール2,ローラユニット3,移動用フレーム4の各部で構成されている。
【0031】
レール支持部材1は、図3に詳細に示されるように、本体部11の一端部に締付具12が設けられ他端部に支持端末具13が設けられ中途部の下部に挟持板14,ブレース15が設けられている。本体部11は、耐荷重性,耐捻性のある角筒形に形成され、高架橋Bの防音壁Bcの内側から外側へ突出する軸長を有している。締付具12は、本体部11の高架橋Bの防音壁Bcの内側に位置することになる端部に固定され本体部11の軸線に直交して下方へ延びたベース板12aと、ベース板12aに螺合された締付ボルト12bと、締付ボルト12bの先端部に固定され防音壁Bcの外側面に圧接されるパッド12cとからなる。支持端末具13は、本体部11の高架橋Bの防音壁Bcの外側に位置することになる端部に固定されたL字形の固定片13aと、固定片13aの上端部に連結されたヒンジ13bと、ヒンジ13に連結され回動によって固定片13aとの間で開閉可能な箱形を形成するコ字形の可動片13cと、固定片13a,可動片13cの当接部分に穿孔されたボルト孔13dと、ボルト孔13に挿通固定されるボルトナット13eとからなる。挟持板14は、本体部11の高架橋Bの防音壁Bcの外側に位置することになる中途部に固定され、締付具12のベース板12aと平行に下方へ延びて防音壁Bcの外側面に当接される。ブレース15は、三角形状に形成されて、挟持板14の外側面(防音壁Bcに当接する面の反対側面)と本体部11の下面とに固定されている。
【0032】
レール2は、下部に開口21が設けられ開口21の両側に走行面22が設けられてレール支持部材1の支持端末具13に外側から開閉着脱される箱形に形成されている。なお、レール支持部材1の支持端末具13の固定片13a,可動片13cは、下部の開口21を閉塞しない構造になっている。
【0033】
ローラユニット3は、レール2に内装されてレール2の走行面22を転動する双輪構造のローラ31と、少なくとも3個(6輪)のローラ31を回転可能に支持してレール2の開口21から下方へ延びる支持ベース32とからなる。
【0034】
移動用フレーム4は、軽量なアルミニウム系の金属材フレームで高架橋Bの防音壁Bcの側方方向の大きさが可変される伸縮構造を有して少なくとも1人の作業員Mが立てる大きさの直方体に形成された枠体41と、枠体41の少なくとも下半部の高架橋Bの防音壁Bcの外側面に対面する面を除く3面に張設されたネット42と、枠体41の防音壁Bc側の上部に固定されローラユニット3の支持ベース32に当接される取付板43と、ローラユニット3の支持ベース32と取付板43と固定するボルトナット44と、枠体41の防音壁Bc側の中途部に支持され防音壁Bcの外側面を転動して移動用フレーム4の傾倒を防止するサブローラ45とからなる。
【0035】
第1例の設置作業では、図4に示すように、レール支持部材1の支持端末具13の可動片13cを回動させて支持端末具13を開放させた状態として高架橋Bの防音壁Bcの上方から落込む。
【0036】
次ぎに、図5に示すように、レール支持部材1の挟持板14を全体を高架橋Bの防音壁Bcの外側面に当接させ、レール支持部材1の締付具12の締付ボルト12bを締付ける。このとき、レール支持部材1の締付具12のパッド12cが高架橋Bの防音壁Bcに圧接されるため、締付ボルト12bで防音壁Bcの内側面を損傷することがない。この結果、高架橋Bの防音壁Bcの上方から挟込み取付けされて防音壁Bcに強固に固定され、レール支持部材1の本体部11の大部分と支持端末具13とが防音壁Bcの外側に突出されることになる。なお、レール支持部材1は、高架橋Bの防音壁Bcに沿って一定間隔で取付けられる。
【0037】
次ぎに、図6に示すように、レール支持部材1の開放された支持端末具13の固定片13aにレール2を載せるようにして、レール2を長尺に配設する。このとき、レール支持部材1の締付具12が高架橋Bの防音壁Bcの大きさ(厚さ)に対応して適正な挟込み取付けの強度を構成することができるため、レール2の配設ラインが正確になる。なお、レール2の継目については、例えば、コ字形の中継材等を嵌合させることで接続される。
【0038】
次ぎに、図7に示すように、レール支持部材1の支持端末具13の可動片13cを回動させて支持端末具13を閉鎖する。
【0039】
次ぎに、図8に示すように、レール支持部材1の支持端末具13の固定片13a,可動片13cをボルトナット13eで固定する。この結果、レール2がレール支持部材1の支持端末具13に確実に保持される。即ち、レール支持部材1の支持端末具13は、レール2の配設作業を容易,確実にする。
【0040】
次ぎに、図9に示すように、レール2の開放されている長さ方向の端口から内部にローラユニット3のローラ31を挿入し、ローラ31を走行面22に載せ支持ベース32を開口21から突出させる。
【0041】
次ぎに、図10に示すように、移動用フレーム4を枠体41を収縮させた状態で吊下ろす。
【0042】
この後、移動用フレーム4の取付板43をローラユニット3の支持ベース32に当接させボルトナット44で固定することになる。このとき、ローラユニット3がレール2に組付けられて上下方向の位置決めがなされているため、移動用フレーム4の取付板43のローラユニット3の支持ベース32への当接,固定が容易である。また、移動用フレーム4を枠体41が収縮され、設置作業の際に高架橋Bの防音壁Bcの外側への突出が低減されるため、防音壁Bcの危険な外側へ大きく乗出すような作業が不要になって、防音壁Bcの外側の空間での設置の作業性が良好になる。
【0043】
さらに、この後、移動用フレーム4を枠体41を直方体形に展開させることになる。
【0044】
第1例を使用すると、レール2が高架橋Bの防音壁Bcの外側に突出されて配設されているため、防音壁Bcの内側の電柱,支柱等の構築物への各部の衝突のおそれがなくなるため、移動用フレーム4の長距離の連続的な移動が可能になる。また、レール支持部材1が締付具12,挟持板14で確実に高架橋Bの防音壁Bcに固定されブレース15でかなりの耐荷重性も備えられるため、移動用フレーム4の安全な移動が保障される。また、ローラユニット3のローラ31が少なくとも3個(6輪)設けられているため、レール2の内部でのローラユニット3の傾倒が防止されるため、移動用フレーム4の安定した姿勢での走行が保障される。
【0045】
図11は、本発明に係る足場装置を実施するための形態の第2例を示すものである。
【0046】
第2例は、レール支持部材1の本体部11を嵌合された内筒11a,外筒11bのスライド構造として、内筒11a,外筒11bのスライド位置を固定するロックボルト11cを設けている。
【0047】
また、レール支持部材1の締付具12を高架橋Bの防音壁Bcの内側に立設された点検歩道の支柱Bdからなる高欄部を締付けるように構成している。即ち、第2例の締付具12は、長孔12dを有してボルトナット12eで上下方向に位置調整可能に本体部11の内筒11aに固定され高架橋Bの支柱Bdの上部のH型鋼のフランジに係止されるL字形の掛板12fと、掛板12fを支柱Bdの上部のH型鋼のフランジに締付けるパット付きの締付ボルト12gとからなる。
【0048】
第2例によると、レール支持部材1に高架橋Bの防音壁Bc,支柱Bdへの挟込みスパンを調整するスパン調整部(内筒11a,外筒11b,ロックボルト11c)が設けられることになって、多様な構造の高欄部への対応が可能になる。この結果、汎用性が高くなる。また、第2例の締付具12が高架橋Bの支柱Bdへの締付けを可能にしているため、さらに多様な構造の高欄部への対応が可能になって、汎用性がより高くなる。
【0049】
図12は、本発明に係る足場装置を実施するための形態の第3例を示すものである。
【0050】
第3例は、移動用フレーム4の枠体41の側部(移動方向の)に連結ブラケット46が取付けられている。
【0051】
第3例によると、連結ブラケット46を利用して移動用フレーム4を2台以上連結させることができ、多数の作業員Mが必要な複雑な保守作業等の便宜に供することができる。
【0052】
以上、図示した各例の外に、ローラユニット3のローラ31をモータで駆動するようにすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明に係る足場装置は、鉄道以外の広範な高架橋等にも適用が可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 レール支持部材
11 本体部
11a 内筒(スパン調整部)
11b 外筒(スパン調整部)
11c ロックボルト(スパン調整部)
12 締付具
13 支持端末具
2 レール
3 ローラユニット
31 ローラ
32 支持ベース
4 移動用フレーム
B 高架橋
Bc 高欄部(防音壁Bc,支柱Bd)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高架橋等の高欄部に上方から挟込み取付けされ高欄部の外側に突出されるレール支持部材と、レール支持部材の突出端に支持され高欄部に沿って配設されるレールと、レールを転動するローラが支持ベースに取付けられたローラユニットと、ローラユニットの支持ベースに取付けられる移動用フレームとを備えたことを特徴とする足場装置。
【請求項2】
請求項1の足場装置において、レール支持部材は高欄部への挟込み取付けの強度を高める締付具が設けられていることを特徴とする足場装置。
【請求項3】
請求項1または2の足場装置において、レールはローラユニットのローラが内装される箱形に形成され、レール支持部材は突出端にレールを外側から開閉着脱可能な箱形の支持端末具が設けられていることを特徴とする足場装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかの足場装置において、レール支持部材は高欄部への挟込みスパンを調整するスパン調整部が設けられていることを特徴とする足場装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかの足場装置において、移動用フレームは少なくとも高欄部の側方方向の大きさが可変される伸縮構造を有していることを特徴とする足場装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−41723(P2012−41723A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183558(P2010−183558)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(510225177)東誠工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】