説明

足浴装置

【課題】浴槽部の給排水を容易に行なうことのできる足浴装置を提供する。
【解決手段】足浴装置50は、浴槽本体60と、浴槽本体60の下に取り出し可能に配置されるタンク80とを備える。浴槽本体60は、足浴のための湯を貯留する浴槽部と、この浴槽部の底部に設けられた排水口とを含む。タンク80は、給排水のための給排水口を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、足を湯中に浸してリラックス効果や疲労軽減効果を与える足浴装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
疲労を軽減し、リラックス効果を高める手段として、多くの種類の足浴装置が市場に提供されている。足浴装置は、足を受け入れるための浴槽部を備えている。多くの足浴装置では、浴槽部に湯または水を給水する場合、または浴槽部の湯または水を排水する場合、重くて嵩張りのある浴槽部自体を給水場所または排水場所にまで運搬しなければならない。このような作業は、特にお年寄りにとってはかなりの負担になる。
【0003】
特開平10−52471号公報(特許文献1)は、洗浄水の給水あるいは排水の際の水槽の持運びを容易に行なえるようにするために、水槽とポンプユニットとを別体に構成し、水槽だけを単独で移動可能にした自動洗浄装置を開示している。この公報に開示された装置においても、嵩張りのある水槽を給水場所または排水場所にまで移動させなければならないので、やはりお年寄りにとっては使い勝手の悪いものである。
【0004】
他のリラックス効果を高める手段として、オットマン付き椅子がある。オットマン付き椅子は、例えば、特開平11−299570号公報(特許文献2)や、特開2003−265568号公報(特許文献3)に開示されている。椅子に着座した使用者は、脚を前方に伸ばして足をオットマンの上に載せることによりリラックスできる。
【特許文献1】特開平10−52471号公報
【特許文献2】特開平11−299570号公報
【特許文献3】特開2003−265568号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
足浴装置およびオットマン付き椅子は、共に、使用者に、リラックス状態を提供し、心地良さを与えるものである。使用者からみれば、オットマンによるリラックス効果と、足浴による疲労軽減効果とを発揮し得る装置の開発が望まれる。
【0006】
足浴装置に注目すると、浴槽部への給水および浴槽部からの排水を容易に行なうようにすることが望まれる。
【0007】
本発明の目的は、浴槽部の給排水を容易に行なうことのできる足浴装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に従った足浴装置は、足浴のための湯を貯留する浴槽部を有する浴槽本体と、この浴槽本体の下に取出し可能に配置されるタンクとを備える。浴槽本体は、浴槽部の底部に設けられた排水口を含む。タンクは、給排水のための給排水口を有する。
【0009】
上記構成の足浴装置によれば、浴槽部内の湯を排水する際には、タンクの給排水口を浴槽部の排水口の下に位置させ、排水口を開くだけでよい。湯をタンク内に回収後は、タンクだけを排水場所にまで持っていけばよい。浴槽部内に湯を供給する際には、給水場所でタンク内に湯または水を入れた後、そのタンクを浴槽部にまで持っていき、タンク内の水を浴槽部内に移すだけでよい。このような給排水作業は、非常に楽である。
【0010】
好ましい実施形態では、タンクは、一方端に取っ手を有し、他方端に車輪を有する。このようなタンクであれば、非力な人にとっても、タンクの持運び操作が容易になる。
【0011】
上記の実施形態において、取っ手は、タンクの壁面に沿って引き出し可能に設けられた棒状部材を含むものであってもよい。この実施形態によれば、棒状部材を引き出すことにより、タンクの移動操作をより容易に行なえる。
【0012】
さらに好ましい実施形態では、浴槽本体の底部の一方端には一対の脚部が設けられ、他方端には一対の車輪が回転自在に取り付けられている。このような車輪付き浴槽本体であれば、浴槽本体の移動操作が容易になる。移動操作に便宜を与えるために、好ましくは、浴槽本体は、脚部が設けられた側に位置する外壁面に取っ手を有する。
【0013】
好ましい実施形態では、タンクは、所定の幅寸法と所定の厚み寸法とを持つ扁平な形態である。タンクの幅寸法は、浴槽本体の一対の脚部の間隔および一対の車輪の間隔よりも小さい。さらに、タンクの厚み寸法は、浴槽本体の脚部の高さよりも小さい。また、好ましくは、タンクの長さ寸法は、浴槽本体の長さ寸法とほぼ同じである。このような形状のタンクであれば、浴槽本体の下の空間にタンクを収納できるので、足浴装置の全体の嵩張りを小さくできるし、外観上の美感も損なわない。
【0014】
一つの実施形態では、足浴装置は、オットマンとして使用される。そのために、足浴装置は、浴槽本体の上部開口を塞ぐように配置される上部蓋を備える。上部蓋は、足を載せるための足載せパッドを有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1および図2は、この発明の一実施形態であるオットマン付き椅子1を示している。オットマン50は、足浴装置として機能する。
【0016】
オットマン付き椅子1は、座席本体10と、オットマン(足浴装置)50とを備える。座席本体10は、座部11と、座部11を所定高さに維持する脚部(前方縦フレーム部21、後方縦フレーム部22)と、座部11の後方端から上方に立ち上がって延びる背もたれ部12とを有する。椅子1は、図1に示す状態では、背もたれ部12が前方に向かって起こされた椅子状の形態となっている。他方、椅子1は、図2に示す状態では、背もたれ部12が後方に向かって寝かされ、かつ、座部11が前方に移動したベッド状の形態となっている。
【0017】
足浴装置としても機能するオットマン50は、上部に開口を有する浴槽本体60と、浴槽本体60の上部開口を塞ぐように配置された上部蓋70とを備える。上部蓋70は、着座者の足を載せるための足載せパッドを含む。図1に示す椅子状の形態では、オットマン50は、座部11の下の空間に収納される。他方、図2に示すベッド状の形態では、オットマン50は、座部11の下方空間から前方に引出される。座席本体10に着座した着座者は、脚を前方に伸ばし足をオットマン50の上に載せることにより、楽な姿勢でリラックスできる。
【0018】
オットマン50を座部11の下の空間に収納できるようにするために、好ましくは、オットマン50の高さを、座部11の裏面の高さよりも小さくする。
【0019】
座席本体10の具体的な構造を説明する。座席本体10は、剛性のある部材からなる座席フレーム20を備える。この座席フレーム20は、固定側要素として、脚部を形成するように上下方向に延びる前方縦フレーム部21および後方縦フレーム部22と、座部11に沿って前後方向に延びる上方水平フレーム部23と、床面に沿って前後方向に延びる下方水平フレーム部24と、上方水平フレーム部23の後方端から上方に屈曲し上方の位置で前後方向に延びる手摺フレーム部25とを備える。さらに、座席フレーム部20は、移動側要素として、上方水平フレーム部23に沿って前後方向に移動可能な座部フレーム部13と、その下方端が座部フレーム部13の後方端に回動可能に連結された背もたれフレーム部14とを備える。
【0020】
手摺フレーム部25、上方水平フレーム部23、前方縦フレーム部21および下方水平フレーム部24は、幅方向の両側面において、それぞれS字状に連続的に連なって延びている。上方水平フレーム部23には、モータを収納しているモータ保持部27および筒状部材26が固定して取付けられている。また、左右に位置する一対の手摺フレーム部25間には、固定軸28が取付けられている。
【0021】
移動側要素としての座部フレーム部13は、筒状部材26内にスライド可能に受入れられた挿入棒部分13aを含む。さらに、座部フレーム部13には、回転自在の複数のローラ15を保持するプレート部材16が固定して取付けられている。複数のローラ15は、上方水平フレーム部23を上下に挟むように配置されている。プレート部材16は、モータ保持部27に収納されたモータによって、前後方向に移動するように制御される。座部フレーム部13の前後方向の移動を安定させるために、座部フレーム部13を下から支えるローラを上方水平フレーム部23に回転自在に取付けるようにしてもよい。
【0022】
背もたれフレーム部14には、固定軸28を受入れる案内枠17が固定されている。背もたれフレーム部14は、固定軸28によって背面側から支えられることによって、その後傾角度が決められている。案内枠17は、固定軸28を常に背もたれフレーム部14に当接させるように作用する。
【0023】
図1に示す状態から、モータによってプレート部材16を前方に移動させると、座部11を支持する座部フレーム部13および挿入棒部分13aが前方に移動し、それに連動して背もたれフレーム部14の下方端も前方に移動する。その結果、背もたれフレーム部14は、図2に示すように、後方により大きく傾斜するようになる。図2に示すベッド状の形態から図1に示す椅子状の形態に変更する場合には、モータを逆方向に回転させてプレート部材16を後方に移動させればよい。
【0024】
次に図3〜図9を参照しながら、足浴装置としての機能も有するオットマン50について詳しく説明する。特に足浴装置としての機能に注目して説明するので、以下の説明では、オットマン50という用語に代えて、足浴装置50という用語を用いることがある。
【0025】
足浴装置50は、浴槽本体60と、タンク80とを別体として備える。浴槽本体60は、足浴のための湯を貯留する浴槽部と、この浴槽部の底部に設けられた排水口67(図6参照)とを含む。足浴装置50の使用状態では、図5に示すように、浴槽部には、通水孔66を有する足置きプレート65が配置される。
【0026】
浴槽本体60の底部の前方側端部には、一対の脚部61が設けられ、後方側端部には、一対の車輪62が回転自在に取付けられている。また、浴槽本体60は、脚部61が設けられた前方側外壁面に取っ手63を有する。足浴装置50の使用状態では、脚部61が床面に接しているので、浴槽本体60の移動が禁止される。浴槽本体60を移動させる場合には、取っ手63を持って前方側端部を床面から浮かせれば、脚部61が床面から離れて車輪62のみが接することになるので、移動操作を楽に行なうことができる。取っ手63の下に位置する操作レバー64は、排水口67用の弁を開閉操作するためのものである。
【0027】
図示した実施形態の足浴装置50は、オットマンとしての機能も兼ね備えるものであるので、足を載せるための足載せパッドを含む上部蓋70を備える。上部蓋70は、浴槽本体60の上部開口を塞ぐように配置される。
【0028】
タンク80は、浴槽本体60の下に取り出し可能に配置されるものである、タンク80は、給排水のための給排水口と、この給排水口を閉じるキャップ81(図7参照)とを有する。
【0029】
タンク80を浴槽本体60の下に収納可能とするように、タンク80の形態および寸法が選ばれている。具体的には、タンク80は、所定の幅寸法と所定の厚み寸法とを持つ扁平な形態である。タンク80の幅寸法は、浴槽本体60の一対の脚部61の間隔および一対の車輪62の間隔よりも小さく、タンク80の厚み寸法は、浴槽本体60の脚部61の高さよりも小さい。このようなタンク80の形態および寸法であれば、タンク80を浴槽本体60の下の空間内に上手く収納することができるので、足浴装置50の全体の嵩張りを小さくできるし、外観上の美感も損なわない。好ましくは、タンク80の長さ寸法は、浴槽本体60の長さ寸法とほぼ同じである。
【0030】
タンク80内に湯または水を満杯に入れた場合には、タンク80はかなり重くなり、お年寄りのような非力の人にとっては持運びが困難になる。そこで、図7〜図9に示すように、好ましい実施形態では、タンク80は、一方端に取っ手82を有し、他方端に一対の車輪83を有する。取っ手82を床面から離れるように持上げれば、タンク80の車輪83のみが床面に接することになるので、タンク80の移動操作を楽に行なうことができる。
【0031】
タンク80の移動操作をより楽に行なうことができるようにするために、タンク80の裏面には、タンクの壁面に沿ってスライド式に引出し可能に設けられた棒状部材を含むスライド取っ手84が取付けられている。スライド取っ手84を最大限に引出せば、腰をかがめることなくタンク80を移動操作することが可能になる。
【0032】
浴槽本体60の浴槽部内に湯または水を供給する場合には、タンク80のキャップ81を取外し、浴槽本体60の上部開口から湯または水を注げばよい。浴槽部内の湯または水を排水する場合には、タンク80のキャップ81を取外し、その給排水口を浴槽本体60の排水口67の下に位置させ、操作レバー64を操作して排水口67を開く。
【0033】
なお、浴槽本体60は、浴槽部内の湯または水を加熱または保温するためのヒータを備えていても良い。また、タンク80は、扁平な形態を有しているので、湯たんぽとして使用することも可能である。
【0034】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
この発明は、浴槽部に対する給排水を容易に行なうことができる足浴装置として有利に利用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】オットマン付き椅子を椅子状の形態で使用している状態を示す側面図である。
【図2】オットマン付き椅子をベッド状の形態で使用している状態を示す側面図である。
【図3】オットマン(足浴装置)を示す側面図である。
【図4】浴槽本体を示す側面図である。
【図5】浴槽本体の平面図である。
【図6】足置きプレートを取外した後の浴槽本体の平面図である。
【図7】タンクを示す斜視図である。
【図8】タンクの裏側を示す斜視図である。
【図9】スライド取っ手を引出した状態のタンクの斜視図である。
【符号の説明】
【0037】
1 オットマン付き椅子、10 座席本体、11 座部、12 背もたれ部、13 座部フレーム部、13a 挿入棒部分、14 背もたれフレーム部、15 ローラ、16 プレート部材、17 案内枠、20 座席フレーム、21 前方縦フレーム部、22 後方縦フレーム部、23 上方水平フレーム部、24 下方水平フレーム部、25 手摺フレーム部、26 筒状部材、27 モータ保持部、28固定軸、50 オットマン(足浴装置)、60 浴槽本体、61 脚部、62 車輪、63 取っ手、64 操作レバー、65 足置きプレート、66 通水孔、67 排水口、70 上部蓋、80 タンク、81 キャップ、82 取っ手、83 車輪、84 スライド取っ手。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
足浴のための湯を貯留する浴槽部、および前記浴槽部の底部に設けられた排水口を含む浴槽本体と、
前記浴槽本体の下に取り出し可能に配置されるものであり、給排水のための給排水口を有するタンクとを備える、足浴装置。
【請求項2】
前記タンクは、一方端に取っ手を有し、他方端に車輪を有する、請求項1に記載の足浴装置。
【請求項3】
前記取っ手は、前記タンクの壁面に沿って引き出し可能に設けられた棒状部材を含む、請求項2に記載の足浴装置。
【請求項4】
前記浴槽本体の底部の一方端には一対の脚部が設けられ、他方端には一対の車輪が回転自在に取り付けられている、請求項1〜3のいずれかに記載の足浴装置。
【請求項5】
前記浴槽本体は、前記脚部が設けられた側に位置する外壁面に取っ手を有する、請求項4に記載の足浴装置。
【請求項6】
前記タンクは、所定の幅寸法と所定の厚み寸法とを持つ扁平な形態であり、
前記タンクの幅寸法は、前記一対の脚部の間隔および前記一対の車輪の間隔よりも小さく、
前記タンクの厚み寸法は、前記脚部の高さよりも小さい、請求項4または5に記載の足浴装置。
【請求項7】
前記タンクの長さ寸法は、前記浴槽本体の長さ寸法とほぼ同じである、請求項6に記載の足浴装置。
【請求項8】
足を載せるための足載せパッドを有し、前記浴槽本体の上部開口を塞ぐように配置される上部蓋をさらに備える、請求項1〜7のいずれかに記載の足浴装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−61826(P2008−61826A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−243078(P2006−243078)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【出願人】(390006231)アップリカ育児研究会アップリカ▲葛▼西株式会社 (97)
【Fターム(参考)】