説明

足踏み消毒マット

【課題】
足踏み消毒マットにおいて、焼却時に人体に有害な物質を発生させず、製造工程を簡略化し製造時のエネルギー消費を抑制し、製品性の生産性を高めることにより製造コストを低減し、薬液が皮膚の一部に付着した場合でも知らない間にその皮膚の一部が薬傷を引き起こす危険性もなく、焼却廃棄した際に焼却炉の寿命を短くさせず、未使用時の保存管理を容易にすること目的とする。
【解決手段】
5℃で固体の有機酸を三次元網目構造のシートに保持させたこと、少なくとも2以上の前記三次元網目構造のシートに前記固体の有機酸を挟持させてなるマット本体を具備すること、前記三次元網目構造のシート又は前記マット本体の少なくとも側面及び下面を疎水性フィルムで覆うこと、前記マット本体の少なくとも2つの前記三次元網目構造のシートの層の間又は前記三次元網目構造のシートに吸水性樹脂を保持させることなどにより解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家畜施設、住居施設、公共施設などの施設に出入りする場合に、各施設内外にウイルス、細菌、菌類の拡散を防止するために使用する消毒用マットに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトや動物に病気を引き起こす原因となる口蹄疫ウイルス、インフルエンザウイルス、鳥インフルエンザウイルス、O−157ウイルス、ノロウイルス、ロタウイルスなどのウイルス、黄色ブドウ球菌、緑膿菌、病原性大腸菌などの細菌、カビ毒を発生する菌類などは、空気中に飛散しているのみならず地面にも堆積しており、ヒトが家畜施設、住居施設、公共施設などの施設に出入りする際に、それら病原体が履物の裏面などに付着することにより、広い範囲に亘って拡散し、ヒトや動物に感染し発病するリスクが高くなる。
【0003】
このため、各施設の出入り口には、履物の裏面や側面などに付着した前記のウイルス、細菌、菌類などの拡散防止のため、それら病原体を殺菌・消毒する薬剤を塗布した足拭きマットなどが設置されている。
【0004】
このような足拭きマットして、履物の裏面の土や砂を取り除くために用いられる汎用のゴム製足拭きマットに病原体であるウイルス、細菌、菌類などを殺菌するための薬剤を塗布するものが市販されている。
【0005】
また、特許文献1では、不織布などのマット本体にアルカリ性化合物の水溶液を供給した後に乾燥させるアルカリ性化合物含浸工程を経て製造される殺菌マットが公開されている。
【0006】
また、特許文献2では、マット本体とマット本体を収納した台座からなり、マット本体がスポンジ構造体で構成されており、マット本体に消毒液、洗浄液、アルカリ液、酸性液、消臭液、防カビ液などの薬液を含浸した薬液マットが公開されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−168463号公報
【特許文献2】特開平11−128054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の市販されている足拭きマットは、ゴム製のため重量が重く、未使用時の保存管理や運搬に際し、複数枚を持ち運ぶことが困難である。また、ゴム製のため足拭きマットそのものには殺菌剤が浸透せず、薬液が短時間で蒸発し、頻繁に薬液を補充しなければならず手間が掛かり、薬液が皮膚に付着すると薬傷を引き起こす危険性がある。また、焼却廃棄する際にもマットの素材が塩化ビニルの場合やゴムの可塑剤として塩素系化合物が混入されている場合に、人体に有毒であるダイオキシンを発生する恐れがあり、環境面において好ましくない。
【0009】
また、特許文献1に記載の発明では、前述のゴム製の足拭きマットの課題を克服しているようにも思われるが、アルカリ性化合物を一度水に溶解させ、その水溶液をマット本体に含浸させた後に、水を蒸発させる工程を経て製造されるため、水を蒸発させるための熱エネルギーが必要であること、及び水を蒸発させる時間を要し商品の生産性に影響することから、さらなる省エネルギー、低コストで商品を製造するという観点からは十分なものでなかった。
【0010】
また、特許文献1に記載の発明では、殺菌効果を発現する材料としてアルカリ性化合物を使用しており、その水溶液が殺菌力を有していたとしても、サンダルなど皮膚が露出している履物でマット本体を踏んだときにその水溶液を跳ね上げて皮膚の一部に付着することもある。しかし、その場合、アルカリ水溶液による刺激は特に感じないために、知らない間にアルカリ性水溶液が付着した皮膚の一部が溶解するという薬傷の危険性があるため好ましくない。
【0011】
さらに、特許文献1に記載の発明では、アルカリ性化合物として塩類を使用しており、マットを焼却破棄できるとしても、焼却廃棄後にアルカリ性の塩類が焼却炉に残存する。しかし、マットに含浸されるアルカリ性の塩類が少量だとしても、マットを焼却処分する度に焼却炉には塩類が蓄積されることとなるため焼却炉の内面を当該アルカリ性の塩類が侵食し焼却炉の寿命を短くするため好ましくない。
【0012】
また、特許文献2に記載の発明では、液状の薬液をマット本体に含浸させ、その含浸したマット本体を台座に保持する構成を有しているため、未だ使用せず在庫として倉庫などに保存しておく場合、薬液を漏洩しないように注意する必要がある、又は使用時に初めて薬液をマット本体に含浸させる必要があり、いずれの場合も管理が容易でないことから好ましくはない。
【0013】
そこで、本発明では、前述した課題に対し、焼却時に人体に有害な物質を発生させず、製造工程を簡略化し製造時のエネルギー消費を抑制し、製品性の生産性を高めることにより製造コストを低減し、薬液が皮膚の一部に付着した場合でも知らない間にその皮膚の一部が薬傷を引き起こす危険性もなく、焼却廃棄した際に焼却炉の寿命を短くさせず、未使用時の保存管理を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
すなわち本発明に係る殺菌用マットは、5℃で固体の有機酸を三次元網目構造のシートに保持させたことを特徴する消毒用マットである。
【0015】
このようなものであれば、以下の作用効果を奏する。
【0016】
すわなち、三次元網目構造のシートを使用しているため、足踏みマット全体として軽量となり持ち運びが容易となる。
【0017】
そして、殺菌・消毒効果を発現する薬剤として5℃で固体の有機酸を使用しているため、薬剤を水に溶解させてマットに含浸させる工程を省略し生産性を向上させることができ、水を蒸発させる工程も必要ないことから熱エネルギーを加える必要がなく製造時におけるエネルギー消費量を抑制させることができる。
【0018】
そして、殺菌・消毒効果を発現する薬剤として5℃で固体の有機酸を使用しているため、足踏み消毒マットに水分を供給して湿潤状態で使用する際に前記固体の有機酸の水溶液が皮膚の一部に付着したとしても、安全性が高く人体に影響がなく、また付着した部分に多少の刺激を感じるため薬剤を拭き取る又は水洗するなどの行為により薬傷を未然に防ぐことができる。
【0019】
そして、殺菌効果を発現する薬剤として5℃で固体の有機酸を使用しているため、足踏み消毒マットの焼却時にマットのみならず、前記固体の有機酸も有機化合物により構成されていることから、足踏み消毒マットを完全燃焼するとすべて水と二酸化炭素に分解され塩類などが残存されないため、焼却炉を傷めて焼却炉の寿命を縮めることもない。
【0020】
そして、殺菌効果を発現する薬剤として5℃で固体の有機酸を使用しているため薬液の漏洩などなく、未使用時の保存管理の際に特に注意をする必要がない。
【0021】
なお、本発明の足踏み消毒マットの製造の簡略化及び省エネルギー化並びに未使用時の保存管理を容易にするために、少なくとも2以上の前記三次元網目構造のシートに前記固体の有機酸を挟持させてなるマット本体を具備することが望ましい。
【0022】
足踏み消毒マットに水分を供給して湿潤状態で使用する際にマットから水溶液が流出し、殺菌・消毒効果が低減することを防止するために、前記三次元網目構造のシート又は前記マット本体の少なくとも側面及び下面を疎水性フィルムで覆うことが望ましい。
【0023】
足踏み消毒マットのマット本体に水分を供給して湿潤状態で使用する際にマット本体に含まれる水分の蒸発を低減するために、前記マット本体の少なくとも2つの前記三次元網目構造のシートの層の間又は前記三次元網目構造のシートに吸水性樹脂を保持させることが望ましい。
【0024】
足踏み消毒マットに水分を供給して湿潤状態で使用する際に履物の裏面に付着した油汚れを落とし殺菌・消毒効果を高めるために、前記マット本体の少なくとも2つの層の間又は前記三次元網目構造のシートに界面活性剤を保持させることが望ましい。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように本発明に係る足踏み消毒マットによれば、塩素系化合物を使用していないために足踏み消毒マットを使用した後に焼却廃棄するときダイオキシンなどの人体に有害な物質が発生しない。
【0026】
そして、足踏み消毒マットに前記固有の有機酸を保持した前記三次元網目構造のシート又はそれらと前記固体の有機酸との積層体であるマット本体を使用しているため、足踏みマット全体として軽量となり持ち運びが容易となる。
【0027】
そして、殺菌効果を発現する薬剤として5℃で固体の有機酸を使用しているため、薬剤を水に溶解させて前記三次元網目構造のシート又はその積層体に含浸させる工程を省略し生産性を向上させることができ、さらには水を蒸発させる工程も必要ないことからエネルギー消費量を抑制させることができる。
【0028】
そして、殺菌効果を発現する薬剤として5℃で固体の有機酸を使用しているため、もしも使用時に有機酸の水溶液が皮膚の一部に付着したとしても、安全性が高く人体に影響がなく、また付着した部分に多少の刺激を感じるため薬剤を拭き取る又は水洗するなどの行為により薬傷を未然に防ぐことができる。
【0029】
そして、殺菌効果を発現する薬剤として5℃で固体の有機酸を使用しているため、本発明の足踏み消毒マットの焼却時に前記三次元網目構造のシートのみならず、有機酸も有機化合物により構成されていることから、足踏み消毒マットを完全燃焼するとすべて水と二酸化炭素に分解されるため塩類は生成せず、焼却炉を傷めて焼却炉の寿命を縮めることもない。
【0030】
そして、殺菌効果を発現する薬剤として5℃で固体の有機酸を使用しているため、本発明の足踏み消毒マットを製造し未使用時に保存管理又は運搬する際、前記三次元網目構造のシートの隙間から前記有機酸が漏洩しない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施例に係る足踏み消毒マットを示す斜視図。
【図2】本発明の図1に示されるA−A断面図。
【図3】本発明の図2に示される断面図の一端部αの拡大図。
【図4】本発明の一実施例に係るpHの経時変化を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係る足踏み消毒マットに関する実施形態について詳しく説明する。
【0033】
本発明に使用される5℃で固体の有機酸は、5℃の温度雰囲気下で固体の性状を有し、水溶液状態で酸性を示す有機化合物で、特に種類は限定しない。
【0034】
例えば、ギ酸、酢酸、ソルビン酸、グルコン酸、ケイ皮酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸、ニコチン酸、没食子酸、メリト酸、ビルビン酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、アコニット酸、グルタル酸、アジピン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリセリン酸などが挙げられる。好ましくは、水溶液が皮膚の一部に付着したい際の安全性が高い食品添加物である酢酸、ソルビン酸、グルコン酸、ケイ皮酸、シュウ酸、コハク酸、安息香酸、ニコチン酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、フマル酸、グルタミン酸が用いられる。また、上記の有機酸は1種類のみ、又は2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0035】
また、上記の有機酸の粒子形状は、特に種類は限定しない。例えば、粒子形状として、球状、楕円球状、平板状、棒状、多面体状などが挙げられる。水を加えたときにすばやく溶解させられることから、好ましくは、球状、楕円球状、多面体状の形状を有する前記固体の有機酸が用いられる。
【0036】
また、前記固体の有機酸の粒子径は、特に限定しない。本発明の足踏み消毒マットを製造し未使用時に保存管理又は運搬する際、前記三次元網目構造のシートの隙間から前記有機酸が漏洩しないようにするために、粒子径0.1〜5.0mmの前記固体の有機酸が用いられ、より好ましくは、粒子径0.2〜2mmの前記固体の有機酸が用いられる。
【0037】
なお、前記の粒子径は、粉粒体を粒子径の差によって分離する操作のときに使用される金網の目開きの大きさによって判断される。
【0038】
また、前記有機酸の使用量は、40〜160g/m、さらに好ましくは70〜130g/m、もっとも好ましくは90〜110g/mである。
【0039】
本発明に使用される三次元網目シートは、スポンジ、編み物、織物、不織布など内部に空隙を有するシートであって、特に種類は限定しない。
【0040】
足踏み消毒マットを使用した後に焼却廃棄する際の利便性から、好ましくは可燃性の不織布を用いられる。素材としては、前記焼却廃棄時にダイオキシンなどの人体に有毒な物質を発生させないために好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂などの合成繊維やパルプ、炭素繊維などが用いられる。
【0041】
前記不織布は、所定の方法により製造されたものを用いられるが、本発明の足踏み消毒マットを製造し未使用時に保存管理又は運搬する際、隙間から前記有機酸が漏洩しないようにするために、目付が400〜1000g/m、好ましくは600〜800g/mのものが用いられ、厚みが0.5〜20mm、好ましくは5〜15mmのものが用いられる。
【0042】
また、本発明の足踏み消毒マットの使用時に当該マットの識別性を高めるため任意の色彩に着色することや模様を前記不織布に付することができる。
【0043】
なお、前記三次元網目構造のシートの空隙に前記固体の有機酸を任意の方法で埋め込むなどして、前記固体の有機酸を保持することができる。
【0044】
また、少なくとも2以上の前記三次元網目構造のシートに前記固体の有機酸を挟持させてなるマット本体として、前記固体の有機酸を保持することができる。
【0045】
前記マット本体は、前記三次元網目シートを好ましくは2〜10枚、さらに好ましくは2〜5枚積層させ、任意の層と層との間に前記固体の有機酸を挟持させて構成される。このように積層させることで、本発明の足踏み消毒マットを製造し未使用時に保存管理又は運搬する際、前記三次元網目シートの網目の隙間から前記有機酸が漏洩しないようにすることができる。また、当該足踏み消毒マットのマット本体に水分を供給して湿潤状態で使用する際に水分の蒸発などによる消毒効果の減少を防止するために、前記三次元網目シートの積層枚数を増やすことにより水分の蒸発を低減させることができる。
【0046】
また、前記三次元網目シートを3枚以上積層させたとき、前記固体の有機酸は任意の層と層の間に挟持させることができる。
【0047】
本発明に使用される前記疎水性フィルムは、足踏み消毒マットに水分を供給して湿潤状態で使用する際に、前記三次元網目構造のシート又は前記マット本体の少なくとも側面及び下面を覆い水溶液の漏れを防ぐために使用される水分を透過しにくいフィルムである。このように前記疎水性フィルムを用いることにより、本発明の足踏み消毒マットを製造し未使用時に保存管理又は運搬することも容易になる。
【0048】
前記疎水性フィルムに用いられる素材は、PET樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂などの合成樹脂が用いられる。前述した足踏み消毒マットの保存管理又は運搬を簡便にするために、前記疎水性フィルムの厚さは、50〜300μmが好ましい。
【0049】
前記疎水性フィルムは、前記固体の有機酸を保持した前記三次元網目構造のシート又は前記マット本体と、接着剤により又はゴムを当該フィルムの淵に任意の方法で固定することにより、一体となる構造とすることが好ましい。なお、前記固体の有機酸を保持した前記疎水性シートと前記三次元網目構造のシート又は前記マット本体を一体とするために、前記固体の有機酸を保持した前記三次元網目構造のシート又は前記マット本体の上面の一部を前記疎水性フィルムで覆う構造とすることもできる。
【0050】
本発明で使用される吸水性樹脂は、足踏み消毒マットに水分を供給して湿潤状態で使用する際に水分の蒸発を防ぐために用いられる水分を保持することができる樹脂であり、例えばでん粉系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、アクリル酸系樹脂、アクリルアミド系樹脂などが挙げられる。好ましくは、ポリアクリル酸ソーダなどアクリル酸系樹脂が用いられる。
【0051】
また、前記吸水性樹脂の使用する量は、0.1〜5g/m、さらに好ましくは0.5〜3g/mである。前記吸水性樹脂は1種類のみ、又は2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0052】
また、前記三次元網目シートを3枚以上積層させたとき、前記吸水性樹脂は任意の層と層の間に挟持させることができる。
【0053】
本発明で使用される界面活性剤は、履物の裏面などに付着した油汚れにより消毒効果の減少を防止するために用いられる油分とも水分とも溶解しうる化合物であり、例えば、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン系界面活性剤が挙げられる。
【0054】
上記の種類の界面活性剤のうち、好ましくはアルキルメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩などのカチオン系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸ソルビタンエステル、脂肪酸グリセリンエステル、脂肪酸ポリグリセリンエステル、アルキルグリセリルエーテルなどの非イオン系界面活性剤が用いられる。
【0055】
また、前記界面活性剤の使用する量は、0.01〜6g/m、さらに好ましくは0.1〜3g/mである。前記界面活性剤は1種類のみ、又は2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0056】
また、前記三次元網目シートを3枚以上積層させたとき、前記界面活性剤が固体の場合には任意の層と層の間に挟持させることができ、液体の場合には任意の層に含浸させることができる。
【0057】
本発明に係る足踏み消毒マットは、使用する際に前記固体の有機酸を保持した前記三次元網目構造のシート又は前記マット本体に水道水、蒸留水などの水分を供給して湿潤状態として、前記有機酸のpHが2.0〜6.0となる水溶液の状態で使用される。このような状態で使用されることで、ヒトが湿潤状態の足踏み消毒マットを履物により踏みしめることにより履物の裏面に前記有機酸の水溶液が付着し、同面に付着したウイルス、細菌、菌類を殺菌・消毒することができる。
【実施例1】
【0058】
以下、本発明の一実施例について図1乃至4を参照し具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0059】
前記三次元網目構造のシート2であるパルプ及びPETを各々50重量%で製造された厚さ10mmで目付740g/mの不織布に、5℃で固体の有機酸1であるクエン酸(扶桑化学製 クエン酸(無水)H)を不織布1m当たり100gとなる量を散布し、さらに散布したクエン酸を挟むように別の不織布を積層し、マット本体3を製造した。
【0060】
さらに、そのマット本体3の上面の一部、側面、下面をPET製の疎水性フィルム4で覆うように一体として足踏み消毒マットを製造した。
【0061】
このようにして製造した足踏み消毒マットに1m当たり5.7Lの水道水を添加し、クエン酸を溶解させた。水道水を添加し1分後のマット本体3の上面のpHは3.6であり、時間の経過に従い継続してpHを測定した。なお、測定条件は、屋内室温17〜26℃、相対湿度55〜72%であった。
【0062】
経時によるpHは、6時間後に3.1、12時間後に3.8、18時間後に3.5、24時間後に3.2、24時間後に3.2、36時間後に3.9、48時間後に3.4、72時間後に4.2、120時間後に4.0、168時間後に4.8、240時間後に5.8となった。このpHの経時変化を図4に示す。
【符号の説明】
【0063】
1・・・・・・・・・・5℃で固体の有機酸
2・・・・・・・・・・三次元網目構造のシート
3・・・・・・・・・・マット本体
4・・・・・・・・・・疎水性フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
5℃で固体の有機酸を三次元網目構造のシートに保持させたことを特徴する消毒用マット。
【請求項2】
少なくとも2以上の前記三次元網目構造のシートに前記固体の有機酸を挟持させてなるマット本体を具備することを特徴とする請求項1に記載の消毒用マット。
【請求項3】
前記三次元網目構造のシート又は前記マット本体の少なくとも側面及び下面を疎水性フィルムで覆ったことを特徴とする請求項1又は2に記載の消毒用マット。
【請求項4】
前記マット本体の少なくとも2つの前記三次元網目構造のシートの層の間又は前記三次元網目構造のシートに吸水性樹脂を保持させたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の消毒用マット。
【請求項5】
前記マット本体の少なくとも2つの層の間又は前記三次元網目構造のシートに界面活性剤を保持させたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の消毒用マット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−5589(P2012−5589A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142782(P2010−142782)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(502281161)株式会社環境機器 (8)
【Fターム(参考)】