説明

足関節サポーター

【課題】 左右(内外反)の制動により足関節の安定性を向上して、スポーツ時の着用者の動作を補助することができる足関節サポーターを提供する。
【解決手段】 足関節サポーター10は、脛骨22の外側面に対応する部分から内踝21aに対応する部分を通り第1中足骨25aの外側面に対応する部分に沿って延在する第1の支持部3と、腓骨23の外側面に対応する部分から外踝21bに対応する部分を通り第5中足骨25eの外側面に対応する部分に沿って延在する第2の支持部4と、を備え、第1の支持部3及び第2の支持部4は、筒状編地の長さ方向の伸縮抵抗が周方向Hの伸縮抵抗よりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、着用者の体表に密着して足関節を補助する足関節サポーターに関し、特に、着用者の足関節の安定性を向上して、スポーツ時の着用者の動作を補助し、疲労を軽減することができるテーピング機能を具備する足関節サポーターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のねんざ抑制ソックスは、ふくらはぎ中央、くるぶし上、足の甲の付け根、足指の付け根をリング状に覆う強力なサポート力を持つ部分を地編み部分に一体に織り込み、ふくらはぎ中央、くるぶし上、足の甲の付け根、足指の付け根を通り、内外ふくらはぎを縦断する部分に樹脂などの膜を付着させ非伸縮性部分を作り出す(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、従来の靴下は、靴下の足底部の趾球後方の位置から土踏まず部と踵部の境界を含む位置にかけてウェール方向に締付力を高めた第1締付部を設け、趾球後方の位置においてコース方向に締付力を高めた第2締付部を周設するとともに、足首部にコース方向に締付力を高めた第3締付部を周設し、さらに、土踏まず部と踵部の境界を含む位置から足甲部の付け根の位置にかけてコース方向に締付力を高めた第4締付部を周設した構成とする(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−355101号公報
【特許文献2】特開2001−355101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のねんざ抑制ソックスは、くるぶし上及び足の甲の付け根のリング状の部分が強力なサポート力を持つ生地であるため、足関節の背屈(伸展)を制限することになり、スポーツ時の着用者の動作に支障をきたすという課題がある。
【0006】
また、従来の靴下は、拇趾側の側面における編地と第五趾側の側面における編地とが非対称であり、特に、締付部による内踝を覆う領域の面積と外踝を覆う領域の面積とが異なるため、内踝及び外踝を両側から支持する強さが異なり、足首の左右の振れを抑制することができないという課題がある。
【0007】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、着用者の足関節の安定性を向上して、スポーツ(特に、バスケットボール)時の着用者の動作を補助することができる足関節サポーターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る足関節サポーターにおいては、筒状編地の一端を周回して編成され、着用者の踝近傍の脛骨及び腓骨に対応する部分を周回し、当該着用者の下腿に当該筒状編地を締着させる第1のアンカー部と、筒状編地の他端を周回して編成され、着用者の中足趾節関節近傍の第1中足骨、第2中足骨、第3中足骨、第4中足骨及び第5中足骨に対応する部分を周回し、当該着用者の足甲及び足裏に当該筒状編地を締着させる第2のアンカー
部と、第1のアンカー部に連結して、着用者の脛骨の外側面に対応する部分から、内踝に対応する部分を通り、第1中足骨の外側面に対応する部分に沿って、第2のアンカー部まで延在する第1の支持部と、第1のアンカー部に連結して、着用者の腓骨の外側面に対応する部分から、外踝に対応する部分を通り、第5中足骨の外側面に対応する部分に沿って、第2のアンカー部まで延在する第2の支持部と、を備え、第1の支持部及び第2の支持部は、筒状編地の長さ方向の伸縮抵抗が筒状編地の周方向の伸縮抵抗よりも大きいものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係る足関節サポーターにおいては、第1の支持部及び第2の支持部が着用者の外踝及び内踝並びに中足骨を足の両側面から挟持すると共に、第1のアンカー部及び第2のアンカー部が第1の支持部及び第2の支持部の位置ずれを防止することにより、第1の支持部及び第2の支持部が、足首の左右の振れを抑制し、着用者の足関節の安定性を向上すると共に、足関節の内反捻挫及び外反捻挫を予防することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)は第1の実施形態に係る足関節サポーターの概略構成を示す正面図であり、(b)は図1(a)に示す足関節サポーターの背面図であり、(c)は図1(a)に示す足関節サポーターの左側面図であり、(d)は図1(a)に示す足関節サポーターの右側面図であり、(e)は図1(a)に示す足関節サポーターの平面図であり、(f)は図1(a)に示す足関節サポーターの底面図である。
【図2】(a)は図1に示す足関節サポーターの見方を変えた正面図であり、(b)は図2(a)に示す足関節サポーターの背面図であり、(c)は図2(a)に示す足関節サポーターの左側面図であり、(d)は図2(a)に示す足関節サポーターの右側面図であり、(e)は図2(a)に示す足関節サポーターの平面図であり、(f)は図2(a)に示す足関節サポーターの底面図である。
【図3】(a)は図1及び図2に示す足関節サポーターを左足に着用した状態を示す左側後方からみた斜視図であり、(b)は図1及び図2に示す足関節サポーターを左足に着用した状態を示す正面図であり、(c)は下腿及び足の骨並びに足の関節を説明するための説明図であり、(d)は図1及び図2に示す第3の支持部及び第4の支持部の作用効果を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本発明の第1の実施形態)
図1乃至図3において、足関節サポーター10は、靴下編機(例えば、株式会社村田製作所製の編み機種「ラムダアンフィニー(針数:144本、シリンダー径:3 1/2インチ、1インチ間の針の本数:36ゲージ)」)により丸編で編み立てられる筒状編地からなり、着用者20の体表に密着して着用者20の足関節を補助するサポーターである。
【0012】
足関節サポーター10は、表糸、裏糸及びゴム糸を編糸とし、平編、リブ編、タック編、浮き編又はパイル編などで編成されてなる伸縮性のある編地であるベース生地に対して、異なる編み立てを施すことで、テーピング機能などの所望の機能性を具備する。
【0013】
また、足関節サポーター10は、大別すると、第1のアンカー部1と、第2のアンカー部2と、第1の支持部3と、第2の支持部4と、正面部5と、踵部6と、アキレス腱部7と、第3の支持部8と、足底部9と、を備える。
【0014】
第1のアンカー部1は、足関節サポーター10の筒状編地の一端(上端10a)を周回して編成され、着用者20の踝21近傍の脛骨22及び腓骨23に対応する部分を周回し、着用者20の下腿に足関節サポーター10を締着させる編地である。
【0015】
また、第2のアンカー部2は、足関節サポーター10の筒状編地の他端(下端10b)を周回して編成され、着用者20の中足趾節関節24近傍の第1中足骨25a、第2中足骨25b、第3中足骨25c、第4中足骨25d及び第5中足骨25eに対応する部分を周回し、着用者20の足甲及び足裏に足関節サポーター10を締着させる編地である。
【0016】
この第1のアンカー部1及び第2のアンカー部2は、足関節サポーター10の周方向Hにおける伸縮抵抗が、足関節サポーター10の周方向Hにおける足部11(靴下の爪先を除く足部に相当)及び身部12(靴下の身部に相当)の伸縮抵抗より大きく編成されている。すなわち、素材に伸長を与えない状態から一定の伸長を与えた場合の張力をFとして、足関節サポーター10の周方向Hにおける足部11の張力をFH11とし、足関節サポーター10の周方向Hにおける身部12の張力をFH12とし、足関節サポーター10の周方向Hにおける第1のアンカー部1の張力をFH1とし、足関節サポーター10の周方向Hにおける第2のアンカー部2の張力をFH2とした場合に、第1のアンカー部1及び第2のアンカー部2が足部11及び身部12と比較して、足関節サポーター10の周方向Hに強い締付力を持つような、FH1=FH2>FH11、FH1=FH2>FH12という大小関係を有する。
【0017】
具体的な編地として、第1のアンカー部1は、リブ編により編成してなる編地(以下、リブ編地と称す)を、足関節サポーター10の上端10aで足関節サポーター10の内側に折り返して身部12との境界で他の糸(例えば、ウーリーナイロン糸)で縫製した二重のリブ編地(以下、二重リブ編地と称す)にすることにより、後述する編地の足部11及び身部12に対して、足関節サポーター10の周方向Hにおける伸縮抵抗を大きくすることができる。また、第2のアンカー部2は、足関節サポーター10の下端10bで足関節サポーター10の内側にリブ編地を折り返して足部11との境界で他の糸(例えば、ウーリーナイロン糸)で縫製した二重のリブ編地(二重リブ編地)にすることにより、後述する編地の足部11及び身部12に対して、足関節サポーター10の周方向Hにおける伸縮抵抗を大きくすることができる。
【0018】
ここで、リブ編地とは、たて方向に表目のウェールと裏目のウェールとが交互に並ぶ編み目で、本実施形態においては、3ウェール毎に表目と裏目とを配列した3×1の編地である。
【0019】
このように、第1のアンカー部1は、着用者20の下腿を周回して編成され、足関節サポーター10の周方向Hにおける伸縮抵抗が、足関節サポーター10の周方向Hにおける足部11及び身部12の伸縮抵抗より大きいことにより、着用者20の下腿に足関節サポーター10を固定し、足関節の背屈時における足関節サポーター10の上端10aのずり下がりを抑制することができる。また、第1のアンカー部1は、第1の支持部3及び第2の支持部4が連結され、この第1の支持部3及び第2の支持部4のアンカーとしても機能する。
【0020】
また、第2のアンカー部2は、着用者20の足甲及び足裏を周回して編成され、足関節サポーター10の周方向Hにおける伸縮抵抗が、足関節サポーター10の周方向Hにおける足部11及び身部12の伸縮抵抗より大きいことにより、着用者20の足甲及び足裏に足関節サポーター10を固定し、足関節の背屈時における足関節サポーター10の下端10bのずり上がりを抑制することができる。また、第2のアンカー部2は、第1の支持部3及び第2の支持部4が連結され、この第1の支持部3及び第2の支持部4のアンカーとしても機能する。
【0021】
第1の支持部3は、第1のアンカー部1に連結して、着用者20の脛骨22の外側面に対応する部分から、内踝21aに対応する部分を通り、第1中足骨25aの外側面に対応する部分に沿って、第2のアンカー部2まで延在する編地である。
【0022】
第2の支持部4は、第1のアンカー部1に連結して、着用者20の腓骨23の外側面に対応する部分から、外踝21bに対応する部分を通り、第5中足骨25eの外側面に対応する部分に沿って、第2のアンカー部2まで延在する編地である。
【0023】
また、第1の支持部3及び第2の支持部4は、着用者20の下腿側における第1のアンカー部1で係止されており、着用者20の爪先側における第2のアンカー部2で係止されている。
【0024】
この第1の支持部3及び第2の支持部4は、足関節サポーター10の長さ方向Lにおける伸縮抵抗が、足関節サポーター10の周方向Hにおける伸縮抵抗より大きく編成されている。すなわち、足関節サポーター10の長さ方向Lにおける第1の支持部3の張力をFL3とし、足関節サポーター10の周方向Hにおける第1の支持部3の張力をFH3とした場合に、足関節サポーター10の長さ方向Lに強い締付力を持つような、FL3>FH3という大小関係を有する。また、足関節サポーター10の長さ方向Lにおける第2の支持部4の張力をFL4とし、足関節サポーター10の周方向Hにおける第2の支持部4の張力をFH4とした場合に、足関節サポーター10の長さ方向Lに強い締付力を持つような、FL4>FH4という大小関係を有する。
【0025】
また、第1の支持部3及び第2の支持部4は、足関節サポーター10の長さ方向Lにおける伸縮抵抗が、足関節サポーター10の長さ方向Lにおける正面部5の伸縮抵抗より大きく編成されている。すなわち、足関節サポーター10の長さ方向Lにおける正面部5の張力をFL5とした場合に、第1の支持部3及び第2の支持部4が正面部5と比較して、足関節サポーター10の長さ方向Lに強い締付力を持つような、FL3=FL4>FL5という大小関係を有する。
具体的には、第1の支持部3及び第2の支持部4を、1×1のタック編と添え糸編とを併用した編地(以下、タック編・添え糸編地と称す)としている。
【0026】
ここで、タック編地とは、生地を編成するときに、一時ある編み目を作らないで、次のコースを編むときに一緒に編み目を作る編地である。なお、本実施形態においては、添え糸編による編地模様が明瞭に表れるように、第1の支持部3及び第2の支持部4の編地としてタックする回数を1回としているが、所望の伸縮抵抗の違いが得られるのであれば、この回数に限られるものではなく、例えば、後述する第3の支持部8及び第4の支持部9bのタック数と同じにしてもよい。
【0027】
また、タック編・添え糸編地では、タック編の地編糸である表糸を飛ばして(表糸の替わりに)他の編糸(例えば、ウーリーナイロン糸)を添えて給糸することで、足関節サポーター10の長さ方向Lにおける第1の支持部3及び第2の支持部4の伸縮を適度に抑えている。すなわち、タック編・添え糸編地では、足関節サポーター10の長さ方向Lの伸びが周方向Hの伸びと比較して小さく編成されている。また、タック編・添え糸編地では、第1の支持部3及び第2の支持部4と他の領域(正面部5、第3の支持部8、足底部9)との境界において他の編糸をカットしている(カットボス)。
【0028】
このように、第1の支持部3及び第2の支持部4をタック編・添え糸編地とすることにより、コース方向の伸びを無くし、後述する編地の正面部5に対して、足関節サポーター10の長さ方向Lにおける伸縮抵抗を大きくすることができる。このため、第1の支持部
3及び第2の支持部4は、着用者20の内踝21a及び外踝21b並びに中足骨25(第1中足骨25a、第2中足骨25b、第3中足骨25c、第4中足骨25d、第5中足骨25e)を両側面から支持し、足首の左右の振れを抑制して、足関節の内反捻挫及び外反捻挫を予防することができると共に、足関節の背屈を制限することなく、スポーツ時の着用者20の動作を補助することができる。
【0029】
正面部5は、第1のアンカー部1、第2のアンカー部2、第1の支持部3及び第2の支持部4に包囲される編地のうち足甲側の編地であり、本実施形態においては、平編により編成してなる編地(以下、平編地と称す)であるベース生地部5aと、後述する補助部5b及び薄編部5cとからなる。
【0030】
補助部5bは、足関節サポーター10の屈曲部分(着用者20の足首の正面側)近傍に、リブ編により編成してなる編地(リブ編地)である。この補助部5bは、正面部5が平編地のベース生地部5aでは、足関節サポーター10の周方向Hにおける足部11の締付力が十分に得られず、後述する土踏まず部9aの作用を十分に発揮させることができない恐れがある。このため、補助部5bは、平編地と比較して足関節サポーター10の周方向Hに強い締付力を有し、足関節の背屈を制限しない程度の締付力を有する編地であるリブ編地としている。
【0031】
なお、足関節サポーター10の屈曲部分においては、補助部5bがリブ編地であっても、円滑に屈曲せずに、しわが発生すると共に、足関節の背屈を制限する恐れがある。このため、足関節サポーター10の屈曲部分におけるしわを逃し、足関節の背屈の動きを阻害しないように、足関節サポーター10の正面側における足部11と身部12との境界近傍では、足関節サポーター10の周方向Hに延在する領域であり、補助部5bにおける編地の厚みに対して、厚みを薄くした編地である薄編部5cが編成される。
【0032】
なお、図1乃至図3においては、4つの薄編部5cを長さ方向Lに並設した場合を示しているが、足関節サポーター10の屈曲部分におけるしわの発生防止や足関節の背屈を制限しないようにできるのであれば、この数に限られるものではない。
【0033】
また、本実施形態に係る薄編部5cは、通気性のよい編組織であるメッシュ編で編成された編地(以下、メッシュ編地と称す)にすることにより、リブ編地の補助部5bに対して、足関節サポーター10の長さ方向Lにおける伸縮抵抗を小さくすることができる。このメッシュ編地とは、生地を編成するときに、一時ある編み目を作らないで、次のコースを編むときに一緒に編み目を作り、メッシュ形態の編みでよく伸びる編地である。
【0034】
特に、薄編部5cは、足関節サポーター10の長さ方向Lにおける補助部5bの張力をFL5bとし、足関節サポーター10の長さ方向Lにおける薄編部5cの張力をFL5cとした場合に、薄編部5cが補助部5bと比較して、足関節サポーター10の長さ方向Lに弱い締付力を持つような、FL5b>FL5cという大小関係を有する。
【0035】
踵部6は、着用者20の踵に対応するかかと成形部分であり、平編により編成してなる編地(平編地)である。
【0036】
アキレス腱部7は、第1のアンカー部1及び踵部6に連結し、着用者20のアキレス腱に対応する編地である。
【0037】
このアキレス腱部7は、足関節サポーター10の長さ方向Lにおける第1の支持部3及び第2の支持部4の伸縮抵抗より小さく編成されている。すなわち、足関節サポーター10の長さ方向Lにおけるアキレス腱部7の張力をFL7とした場合に、アキレス腱部7が第
1の支持部3及び第2の支持部4と比較して、足関節サポーター10の長さ方向Lに弱い締付力を持つような、FL3=FL4>FL7という大小関係を有する。
具体的には、アキレス腱部7を、リブ編により編成してなる編地(リブ編地)としている。
【0038】
このように、アキレス腱部7をリブ編地とすることにより、リブ編地の畝(凹凸)が着用者20のアキレス腱に対応する部分のクッション性を高め、着用者20のアキレス腱を保護することができる。
【0039】
第3の支持部8は、第1のアンカー部1、第1の支持部3、踵部6及びアキレス腱部7に包囲される編地、並びに、第1のアンカー部1、第2の支持部4、踵部6及びアキレス腱部7に包囲される編地からなる。
【0040】
この第3の支持部8は、足関節サポーター10の長さ方向Lにおける伸縮抵抗が、足関節サポーター10の周方向Hにおける伸縮抵抗より大きく編成されている。すなわち、足関節サポーター10の長さ方向Lにおける第3の支持部8の張力をFL8とし、足関節サポーター10の周方向Hにおける第3の支持部8の張力をFH8とした場合に、足関節サポーター10の長さ方向Lに強い締付力を持つような、FL8>FH8という大小関係を有する。
【0041】
また、第3の支持部8は、足関節サポーター10の長さ方向Lにおける伸縮抵抗が、足関節サポーター10の長さ方向Lにおける第1の支持部3及び第2の支持部4の伸縮抵抗より大きく編成されている。すなわち、第3の支持部8が第1の支持部3及び第2の支持部4と比較して、足関節サポーター10の長さ方向Lに強い締付力を持つような、FL8>FL3=FL4という大小関係を有する。
具体的には、第3の支持部8を、2×2のタック編により編成してなる編地(以下、2タック編地と称す)としている。
【0042】
なお、本実施形態においては、度目とのバランスを考慮して、第3の支持部8の編地としてタックする回数を2回としているが、所望の伸縮抵抗の違いが得られるのであれば、この回数に限られるものではない。
【0043】
このように、第3の支持部8を2タック編地とすることにより、コース方向の伸びを無くし、平編地(リブ編地、メッシュ編地)の正面部5並びにタック編・添え糸編地の第1の支持部3及び第2の支持部4に対して、足関節サポーター10の長さ方向Lにおける伸縮抵抗を大きくすることができる。このため、第3の支持部8は、着用者20の内踝21a及び外踝21bを背面から支持し、第1の支持部3及び第2の支持部4と一体として、図3(d)に示すように、第1の支持部3及び第2の支持部4の捩れを防止し、足首の左右の振れを抑制することができる。
【0044】
足底部9は、着用者20の足裏に対応する足底であり、第2のアンカー部2、第1の支持部3、第2の支持部4及び踵部6に包囲される編地である。なお、本実施形態に係る足底部9は、着用者20の足の土踏まずに対応する土踏まず部9aと、土踏まず部9aを除く足底における編地である第4の支持部9bとからなる。
【0045】
土踏まず部9aは、平編をなす地編糸に他の編糸(ウーリーナイロン糸)を添えて給糸し、地編糸を表面に、ウーリーナイロン糸を裏面に現すように地編糸とともにウーリーナイロン糸を編み込んだ編地(以下、平編・パイル風クッション編地と称す)であり、ウーリーナイロンを波型に交互に編み上げている。
【0046】
この土踏まず部9aは、着用者20の土踏まずを横切るアーチの形成をサポートし、足
底のクッション性を高め、安定した走りを行ないやすくすると共に、ジャンプ着地動作における衝撃を吸収して、荷重を分散させるスプリングとしての役割を果すことができる。また、土踏まず部9aは、波型に交互に編み上げて、地編糸の平編部分から隆起して形成されることから、着用者20の土踏まず部分の凹部を確実に当接支持し、着用感を向上させると共に、足の疲れを未然に防止することができる。特に、土踏まず部9aは、着用者20の足底筋膜に強い緊張が生じることを防止して、炎症(足底筋膜炎)の発生を抑制することができる。
【0047】
第4の支持部9bは、第3の支持部8と同様に、2タック編地であり、着用者20の中足骨25を足裏から支持し、第1の支持部3、第2の支持部4及び第3の支持部8と一体として、図3(d)に示すように、第1の支持部3及び第2の支持部4の捩れを防止し、足首の左右の振れを抑制することができる。
【0048】
なお、本実施形態においては、平編、タック編、リブ編及びメッシュ編に用いられる地編糸として、糸の番手が30/1であり、編み本数が2本からなり、綿50%及びポリエステル50%の表糸と、糸の番手が30/75であり、ポリウレタン弾性糸(ポリウレタン9%)を軸に長繊維(ポリエステル91%)をカバーリングした加工糸(FTY:Filament Twisted Yarn)である裏糸と、ポリウレタン76%の芯糸にポリエステル24%の巻き糸を巻きつけたカバーリング・ヤーン(例えば、オペロンテックス株式会社製「ST6700」)であるゴム糸とを用いているが、この材質に限られるものではない。
【0049】
例えば、表糸としては、綿、毛(カシミヤ、ラム、アンゴラなど)、絹若しくは麻などの天然繊維、アクリルなどの化学繊維、又は吸汗、速乾若しくは体温調整機能を持つ素材などを、足関節サポーター10のコスト又は着用者20のニーズに合わせて選択することが好ましい。また、裏糸としては、エステル若しくはカバーリング・ヤーン(DCY:double covered yarn)、又は抗菌、防臭若しくは消臭素材を、足関節サポーター10のコスト又は着用者20のニーズに合わせて選択することが好ましい。
【0050】
また、二重リブ編地(第1のアンカー部1、第2のアンカー部2)、タック編・添え糸編地(第1の支持部3、第2の支持部4)及び平編・パイル風クッション編地(土踏まず部9a)におけるウーリーナイロン糸(柄糸)は、糸の番手が100/2であり、ウーリーナイロンのフェラメント数が24Fであるナイロン100%の編糸を用いているが、この材質に限られるものではない。
【0051】
以上のように、足関節サポーター10は、左右(内外反)の制動により足関節の安定性を向上して、スポーツ(特に、バスケットボール)時の着用者20の動作を補助することができるという作用効果を奏する。
【符号の説明】
【0052】
1 第1のアンカー部
2 第2のアンカー部
3 第1の支持部
4 第2の支持部
5 正面部
5a ベース生地部
5b 補助部
5c 薄編部
6 踵部
7 第3の支持部
7 アキレス腱部
8 第3の支持部
9 足底部
9a 部
9b 第4の支持部
10 足関節サポーター
10a 上端
10b 下端
11 足部
12 身部
20 着用者
21 踝
21a 内踝
21b 外踝
22 脛骨
23 腓骨
24 中足趾節関節
25 中足骨
25a 第1中足骨
25b 第2中足骨
25c 第3中足骨
25d 第4中足骨
25e 第5中足骨
H 周方向
L 長さ方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
丸編で編み立てられる筒状編地からなり、着用者の体表に密着して足関節を補助する足関節サポーターにおいて、
前記筒状編地の一端を周回して編成され、前記着用者の踝近傍の脛骨及び腓骨に対応する部分を周回し、当該着用者の下腿に当該筒状編地を締着させる第1のアンカー部と、
前記筒状編地の他端を周回して編成され、前記着用者の中足趾節関節近傍の第1中足骨、第2中足骨、第3中足骨、第4中足骨及び第5中足骨に対応する部分を周回し、当該着用者の足甲及び足裏に当該筒状編地を締着させる第2のアンカー部と、
前記第1のアンカー部に連結して、前記着用者の脛骨の外側面に対応する部分から、内踝に対応する部分を通り、前記第1中足骨の外側面に対応する部分に沿って、前記第2のアンカー部まで延在する第1の支持部と、
前記第1のアンカー部に連結して、前記着用者の腓骨の外側面に対応する部分から、外踝に対応する部分を通り、前記第5中足骨の外側面に対応する部分に沿って、前記第2のアンカー部まで延在する第2の支持部と、
を備え、
前記第1の支持部及び第2の支持部は、前記筒状編地の長さ方向の伸縮抵抗が前記筒状編地の周方向の伸縮抵抗よりも大きいことを特徴とする足関節サポーター。
【請求項2】
前記請求項1に記載の足関節サポーターにおいて、
前記第1のアンカー部、第2のアンカー部、第1の支持部及び第2の支持部に包囲される編地のうち足甲側の編地である正面部を備え、
前記筒状編地の長さ方向における前記第1の支持部及び第2の支持部の伸縮抵抗が、前記筒状編地の長さ方向における前記正面部の伸縮抵抗より大きいことを特徴とする足関節サポーター。
【請求項3】
前記請求項2に記載の足関節サポーターにおいて、
前記着用者の踵に対応する踵部と、
前記第2のアンカー部、第1の支持部、第2の支持部及び踵部に包囲される編地からなる足底部と、
を備え、
前記足底部は、前記筒状編地の長さ方向の伸縮抵抗が前記筒状編地の周方向の伸縮抵抗よりも大きく、
前記筒状編地の長さ方向における前記足底部の伸縮抵抗が、前記筒状編地の長さ方向における前記正面部の伸縮抵抗より大きいことを特徴とする足関節サポーター。
【請求項4】
前記請求項2に記載の足関節サポーターにおいて、
前記第1のアンカー部及び踝部に連結し、前記着用者のアキレス腱に対応するアキレス腱部と、
前記第1のアンカー部、第1の支持部、踵部及びアキレス腱部に包囲される編地、並びに、第1のアンカー部、第2の支持部、踵部及びアキレス腱部に包囲される編地からなる第3の支持部と、
を備え、
前記アキレス腱部及び第3の支持部は、前記筒状編地の長さ方向の伸縮抵抗が前記筒状編地の周方向の伸縮抵抗よりも大きく、
前記筒状編地の長さ方向における前記第3の支持部の伸縮抵抗が、前記筒状編地の長さ方向における前記正面部の伸縮抵抗より大きく、
前記筒状編地の長さ方向における前記アキレス腱部の伸縮抵抗が、前記筒状編地の長さ方向における前記第1の支持部、第2の支持部及び第3の支持部の伸縮抵抗より小さいことを特徴とする足関節サポーター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−115526(P2012−115526A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268762(P2010−268762)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(000138244)株式会社モルテン (105)
【出願人】(500294888)株式会社 アドヴァンシング (26)