説明

足首インピーダンスの測定装置

【課題】正確に足首インピーダンス(弾性係数と粘性係数)を求めることができる、新規な測定装置を得る。
【解決手段】本発明に係る測定装置は、座位姿勢における被験者2の足首インピーダンスを測定する装置である。この測定装置は、被験者2が着座したときに、被験者2の臀部2aを受け止める着座板11と、水平に配された回転軸18まわりに揺動回転可能に構成されて、被験者2の足先2bが載せられるフットプレート12と、回転軸18を介して、フットプレート12に駆動回転力を付与する駆動源と、揺動回転時にフットプレート12に加わるトルクを検出するためのトルク検出手段と、揺動回転時のフットプレート12の傾斜角度を検出するための角度検出手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足首のインピーダンス(足首の粘弾性係数)を測定するための測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に係る測定装置は、足首の弾性係数および粘性係数などのインピーダンスを測定することを目的とするが、足首の弾性係数を測定する装置自体は、非特許文献1、2などに開示されており、公知である。
【0003】
非特許文献1に記載の測定装置では、倒立振り子に連結されて、水平軸まわりに揺動可能に構成されたフットプレート上に被験者を立たせたうえで、被験者に所定のトルクの発生を求め、さらに倒立振り子を所定角度に倒すように求める。そして、測定されたトルクと角度から足首の弾性係数を算出している。
【0004】
非特許文献2に記載の測定装置では、サーボモータに連結されて、水平軸まわりに揺動可能に構成されたフットプレート上に被験者を立たせたうえで、所定角度範囲(−0.5°〜+0.5°)で被験者の足先が上下動するようにフットプレートを駆動揺動させる。つまり、非特許文献2に記載の装置では、上記角度範囲に対応した短周期(1秒)のパルスをサーボモータに与えて、被験者の足先にパルス刺激を与えており、測定後の床反力(フットプレートに対する反力)の加わる圧の中心位置(COP)と足首との距離を測定し、COPの位置からトルクを算出し、さらに足首の弾性係数を算出している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Loram.D and LakieM,"Direct measurement of human ankle stiffness during quiet standing:The intrinsic mechanical stiffness is insufficient for stability.",Journal of Physiology,545.3,pp.1041-1053(2002)
【非特許文献2】Casadio M,Morasso P and Sanguineti V,"Direct measurement of ankle stiffness during quiet standing: implications for control modering and clinical application",Gait&posture,21pp.410-424(2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これら非特許文献1、2に開示された測定装置では、静止立位姿勢の身体動揺は、倒立振り子の運動と同等であるという見解に基づき、フットプレート上に立たせた被験者に対して測定を行い、その測定結果から足首の弾性係数を求めている。しかし、このように被験者を立位姿勢としたうえで測定を行う方法では、足首により全身の体重が受け止められた状態で測定を行うため、得られた弾性係数が全身の関節等による力の影響を受けて、真に純粋な足首を中心とした弾性係数を得ることは不可能であった。すなわち、非特許文献1、2に開示された測定装置では、得られた弾性係数の値が、被験者の体重、或いは平衡を保つための被験者の全身の関節や筋力を使った体重移動など、種々の要因により左右されやすく、正確に足首の弾性係数の値を得ることは困難であった。
【0007】
加えて、足首を含む人間の骨格筋は、非常に大きな力を発生させることが可能なアクチュエータと考えることができ、しかも単に力を発生させるだけではなく、バネ、ダンパのような粘弾性も併せ持っている。このことは、骨格筋を活動させると筋は硬くなり、逆に力を抜いてリラックスすると柔らかくなることからも明らかである。従って、例えば立位姿勢時における身体平衡維持のメカニズム解明には、足首の弾性係数のみならず、足首の粘性係数についても勘案することが必要であるが、上記非特許文献1では、弾性係数のみを測定しており、粘性係数の測定には至っておらず、その点にも改良の余地があった。また、上記非特許文献2においても、粘性に着目はしているものの立位において測定しており上体の影響を考慮しておらず、その点に改良の余地があった。
【0008】
本発明は、以上のような従来の測定装置の抱える問題を解決するためになされたものであり、より正確に弾性係数および粘性係数(以下、これら粘弾性係数をインピーダンスと記す)を求めることができる、新規な足首インピーダンスの測定装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、被験者を座位姿勢としたうえで測定を行えば、より正確に足首のトルクの測定が可能であり、加えて、測定された足首のトルクに基づいて、より正確に足首の弾性係数のみならず、粘性係数の計測が可能となることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、足首インピーダンスの測定装置を対象とする。この測定装置は、被験者2が着座したときに、該被験者2の臀部2aを受け止める着座板11と、水平に配された回転軸18まわりに揺動回転可能に構成されて、被験者2の足先2bが載せられるフットプレート12と、前記回転軸18を介して、前記フットプレート12に駆動回転力を付与する駆動源31と、揺動回転時に前記フットプレート12に加わるトルクを検出するためのトルク検出手段33と、揺動回転時の前記フットプレート12の傾斜角度を検出するための角度検出手段23と、着座姿勢における被験者2の下腿部2cを固定するための下腿固定具25と、前記フットプレート12上に載せられた被験者2の足先2bを固定するための足先固定具20とを備える。そして、前記下腿固定具25および前記足先固定具20を使って、被験者2の踝2dが前記回転軸18の軸心上に位置するように被験者2の脚部を固定し、かかる脚部の固定状態で、前記駆動源31を駆動して前記フットプレート12を前記回転軸18まわりに揺動回転駆動して、足先2bを踝2dまわりに上下方向に強制的に姿勢変位させ、かかる足先2bを上下方向に姿勢変位させた際の前記トルク検出手段33による検出値と、前記角度検出手段23による検出値に基づいて、足首の粘弾性係数を算出することを特徴とする。
【0011】
前記フットプレート12には、足先2bを該フットプレート12に載せたとき、被験者2の踵を受け止めるための緩衝材28が配されている構成を採ることができる。
【0012】
前記フットプレート12の前記回転軸18まわりの揺動回転限界を規制するための規制機構40を備える構成を採ることができる。
【0013】
前記測定装置には、着座板11の上下方向の位置調整機構、および/又はフットプレート12の上下方向および/又は前後方向の位置調整機構を設けることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、下肢筋が力を発揮していない座位状態で足首のインピーダンスを計測することができるので、従来の非特許文献1、2に記載の計測装置に比べて、より正確に足首のトルクを計測し、加えて、該トルクから足首の粘弾性係数を得ることができる。すなわち、人は立位状態で姿勢を維持しようとすると、脚部だけでなく、身体全体を用いてバランスを取ろうとする。その為、非特許文献1、2に記載の計測装置のように、立位姿勢で足首のトルクを測定するものでは、得られた値は、他の関節、特に上半身の関節の影響を受けた値となることが避けられない。これに対して、本発明のように被験者を座位姿勢としたうえで計測を行うようにしていると、上半身による姿勢を維持しようとする要因を完全に排除することができるため、より正確に足首の粘弾性係数を計測することができる。
【0015】
被験者2の踝2dが、足先2bが載せられるフットプレート12の回転軸18の軸心とずれていると、フットプレート12の回転に伴って、足の踵の位置が前後にずれる。このため、被験者2の下腿部2cが前後に動くことが避けられず、下腿部2cの筋力が足先2bを介してフットプレート12に加わり(下肢筋が力を発揮し)、正確に足首の粘弾性係数を測定することが困難となる。これに対して、本発明のように、被験者2の踝2dを、足先2bが載せられるフットプレート12の回転軸18の軸心上に位置させていると、フットプレート12の回転に伴って被験者2の下腿部2cが動くことは無く、該下腿部2cの筋力(下肢筋の筋力)の影響を排除して、より正確に足首の粘弾性係数を測定することができる。
【0016】
以上のような本発明に係る計測装置によって計測された足首の粘弾性係数は、例えば、高齢者の転倒事故の防止等に貢献し得る極めて有用な情報であると考える。すなわち、身体の各部位を異なった速さで動かすと、重心の位置は刻一刻と変化するが、それにもかかわらずバランスを崩すことなく立っていられるのは平衡機能の働きによるものである。この平衡機能は、高齢になると平常に働かなくなり、高齢者(総務省で定義されている65歳以上の方を示す)における転倒の主な原因となっている。また、平衡機能は、身体を支える支点となる足圧中心(center of presser:COP)の動きにより管理されており、足首のインピーダンス(粘弾性)特性によって大きな影響を受ける。従って、足首の粘弾性係数を正確に計測することができれば、被験者の平衡機能の低下度合いの推測が可能となり、転倒事故等の発生を未然に防ぐことが可能となる。また、足首の粘弾性係数を正確に計測することができれば、医学的リハビリテーションの現場において、平衡機能の回復具合を定量的に評価することも可能となる。
また、高齢者や治療中の患者に対して、立位姿勢で足首のインピーダンスを測定することは被験者の負担が大きく、そもそも測定自体が困難となるおそれがあるが、本発明に係る装置を用いれば、座位姿勢で測定を行うことができるため被験者の負担は少なく、実用利便性に優れている。
【0017】
フットプレート12に、被験者2の踵を受け止めるための緩衝材28を配していると、フットプレート12内における足先2bの位置調整が容易となる。つまり、フットプレート12内において足先2bを位置調整しながら、しかも、足先固定具20を使って足先2bを確りと固定することが可能となる。このことは、被験者2の足のサイズとは無関係に、フットプレート12内で足先2bを所定位置(踝2dが回転軸18の軸心上に在る位置)に配置させることができることを意味し、装置の測定精度および実用利便性の向上に貢献できる。
【0018】
フットプレート12の回転軸18まわりの揺動回転限界を規制するための規制機構40を設けていると、フットプレート12が過剰に揺動回転することに起因にする測定事故の発生を確実に防ぐことができる。
【0019】
着座板11の上下方向の位置調整機構、および/又はフットプレート12の上下方向および/又は前後方向の位置調整機構を設けていると、被験者2の足の長さやサイズに応じた、踝2dの正確な位置調整、および下腿部2cの正確な姿勢調整が可能となる。すなわち、本発明者等は、立位姿勢における身体平衡維持機能のメカニズム解明には、座位姿勢でありながら、脚部については立位姿勢に近い状態、すなわち、下腿部2cが鉛直姿勢にある状態で足首インピーダンスを測定することが重要であると考えている。従って、着座板11およびフットプレート12の位置調整機構を設けていると、被験者2の身体部位(特に下腿部2c)の長さ寸法の大小とは無関係に、下腿部2cを鉛直姿勢とすることができ、本測定装置を使った足首インピーダンスの測定精度の向上を図ることができる。また、下腿部2cおよび踝2dの正確な位置調整を容易に行うことができるので、測定装置の実用利便性が格段に向上する点でも優れている。位置調整機構の具体例としては、機械式ジャッキ、油圧式ジャッキ、空気式ジャッキ等を挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の足首インピーダンスの測定装置の概略構成図である。
【図2】測定装置の外観斜視図である。
【図3】測定装置の平面図である。
【図4】図3のA−A線断面図である。
【図5】本発明の測定装置を使った測定方法を説明するための図である。
【図6】規制機構を説明するための図である。
【図7】本発明の測定装置の回路構成を説明するためのブロック図である。
【図8】足首インピーダンスの算出方法を模式的に示す図である。
【図9】トルクの設定値、実測角度値、およびトルクメータの実測値の経時的変化を説明するための図である。
【図10】インピーダンス測定モデルを示す図である。
【図11】別の足首インピーダンスの算出方法を模式的に示す図である。
【図12】本発明の足首インピーダンスの測定装置の他の実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(実施例) 本発明に係る足首インピーダンスの測定装置について、図1乃至図7を参照して詳細に説明する。なお、本実施例の説明において、前後、左右、および上下方向は、図1乃至図4に示す矢印と、該矢印に付記された方向の記載に従う。
【0022】
図1に示すように、本実施例に係る測定装置1は、被験者2が座った状態で弾性係数(k)および粘性係数(d)といった、被験者2の足首のインピーダンス(粘弾性係数)を測定するものである。図2に示すように、測定装置1は、左方に配されて被験者2が座る測定部3と、右方に配されてモータ31等が組み付けられた機械部4と、制御部5(図7参照)とからなる。
【0023】
図1乃至図4に示すように、測定部3は、縦(上下)方向、前後水平方向、および左右水平方向に延びる複数本のフレームで構成されるフレーム体10を基体とするものであり、着座姿勢をとった際に被験者2の臀部2aを受け止める着座板11と、被験者2の足先2bが載せられるフットプレート12とを備える。
【0024】
図2に示すように、測定部3を構成するフレーム体10は、上下方向に走る複数本の縦支柱13と、これら縦支柱の間を繋ぐように、左右水平方向に走る複数本の左右横支柱14と前後水平方向に走る前後横支柱15とで構成される。各支柱13・14・15はアルミニウム製の角管である。
【0025】
詳しくは、縦支柱13は、測定部3の左右端部に配された上下長さ寸法が大きな4本の縦支柱13a・13a・13b・13bと、該縦支柱13a・13bよりも上下長さ寸法の小さな縦支柱13c・13cとで構成される。前後横支柱15は、縦支柱13a・13bの上端どうしを連結する横支柱15aと、縦支柱13a・13bの上下方向の中途部と、縦支柱13cの上端とを連結する横支柱15bと、該横支柱15bよりも下方に配されて、縦支柱13a・13bの中途部どうしを連結する横支柱15cと、縦支柱13a・13b・13cの下端を連結する横支柱15dとで構成される。左右横支柱14は、縦支柱13a・13aの下端どうしを連結する横支柱14aと、縦支柱13c・13cの下端どうしを連結する横支柱14bと、縦支柱13c・13cの上端どうしを連結する横支柱14cと、横支柱15b・15bの前後方向の中途部どうしを連結する横支柱14dとで構成される。横支柱14c・14dは、着座板11を受け止める板受フレームを構成する。図1に示すように、横支柱15aの上端の高さ位置は、被験者2が着座姿勢を取った際に、おおよそ被験者2の肩の高さ位置にくるようになっている。
【0026】
図1および図2に示すように、着座板11の前方には、該着座板11に被験者2が腰を降ろした際に、被験者2の下腿部2cおよび足先2bの挿入を許す測定空間Sが形成されており、該測定空間Sの下方にフットプレート12が配されている。フットプレート12は、左右一対の回転軸18・18により揺動可能に支持されている(図4参照)。図3および図4において、符号19・19は、フレーム体10(15c)に固定されたベアリングブロックを示しており、該ベアリングブロック19・19に回転軸18・18は支持されている。
【0027】
図2乃至図5に示すように、フットプレート12は、被験者2の足裏が接する底壁12aと、底壁12aの後端に立設された後壁12bと、底壁12aの左右端に立設された側壁12c・12cとを備え、上方および前方に開口を有する有底容器状に形成されている。底壁12aには、該底壁12a上に載せられた被験者2の足先2bを固定するための足先固定具20が、左右一対設けられている。各足先固定具20は、底壁12aに装着された左右一対のバンド21・21と、一方のバンド21の下面に配されたウレタン樹脂製の緩衝材22とで構成される。両バンド21・21には、面ファスナーが設けられており、足裏全体を底壁12aに接するように載せたうえで、足の甲側に緩衝材22を押し付ながら、両バンド21・21の面ファスナーどうしを係合させることにより、被験者2の足先2bを遊動不能に固定することができる。両足先固定具20・20の間には、フットプレート12の傾斜角度を検出するための角度センサ(角度検出手段)23が設けられている。
【0028】
図4に示すように、着座板11の前方には、着座姿勢における被験者2の下腿部2cを固定するための下腿固定具25が左右一対設けられている。各下腿固定具25は、左右横支柱14dに装着された左右一対のバンド26・26からなる。両バンド26・26には、面ファスナーが設けられている。各下腿固定具25に対応して左右横支柱14dには、緩衝材27が配されている。緩衝材27は、ウレタン樹脂を素材とする長方体形のブロック体である。緩衝材27にふくらはぎ上部を押し当てながら、下腿固定具25で被験者2の下腿部2cを固定することで、遊動不能に、しかも過度の圧迫感を与えることなく、下腿部2cを固定することができる。
【0029】
図3および図5に示すように、フットプレート12の後壁12bには、各足先固定具20に対応して、被験者2の踵を受け止める緩衝材28が左右一対配されている。各緩衝材28は、ウレタン樹脂を素材とする長方体形のブロック体であり、この緩衝材28に踵を押し当てた際に、該緩衝材28が変形することで、足のサイズ等のとは無関係に、被験者2の足先2bを底壁12aの所望位置に位置させることができる。尤も、後述するように、この測定装置1では、被験者2の踝2dを回転軸18・18の軸心上に位置させることが重要であり、当該位置に踝2dが配されるように、被験者2の足先2bを底壁12a上で位置調整することが重要である。符号28aは、緩衝材28の前面に設けられた上下方向に長い凹溝を示しており、該凹溝28aに踵を合わることで、緩衝材28の過剰な反発力が踵に加わるのを防ぐことができる。なお、図2では、足先固定具20、下腿固定具25、および緩衝材22・27・28の記載を省略している。
【0030】
図2、図3および図4に示すように、機械部4は、長方体形に組まれたフレーム体30を基体とするものであり、該フレーム体30の内部に、フットプレート12の駆動源となるモータ(駆動源)31、減速機構32、トルクメータ(トルク検出手段)33、減速機構32の出力軸32aと回転軸18とを連結する伝動機構34などが組み付けられている。伝動機構34は、伝動軸35と、該伝動軸35の一端(右端)と減速機構32の出力軸32aとを連結する第1カップリング36と、測定部3から突出して機械部4の内部に至る右側の回転軸18と伝動軸35の他端(左端)とを連結する第2カップリング37とで構成される。伝動軸35の中途部には、伝動軸35に作用するトルクを計測するためのトルクメータ(トルク検出手段)33が設けられている。
【0031】
図3および図4に示すように、伝動軸35の中途部には、伝動軸35の回転限界、すなわち、フットプレート12の回転軸18まわりの揺動回転限界を規制するための規制機構40が設けられている。図6に示すように、規制機構40は、伝動軸35の中途部に装着される被規制部材41と、該被規制部材41に接触して、その移動限界を規制する規制部材42とからなる。被規制部材41は、上下一対の長方板状のプレート41a・41aと、両プレート41a・41aを連結するための一対のボルト41b・41bとで構成される。規制部材42は、支持プレート43に固定された前後一対の板体であり、両板体は下拡がりのハ字状の姿勢で支持プレート43に固定されている。図6において仮想線で示すように、伝動軸35の回転に伴って被規制部材41の姿勢角度が水平面に対して所定角度(本実施例では、±30°)に至ると、規制部材42に該被規制部材41が面接触状に接触し、これにて、被規制部材41、伝動軸35、回転軸18、およびフットプレート12の回転限界が規制されるようになっている。これにて、フットプレート12が過剰に揺動回転されることに起因して、被験者2が足首を痛めることを防ぐことができる。
【0032】
図7は、本実施例に係る測定装置1の回路構成を示すブロック図である。同図に示すように、この測定装置1は、装置全体を制御する制御部5からの信号によりモータ31を駆動してフットプレート12を揺動操作する。また、この制御部5には、揺動操作時において角度センサ23により検出されたフットプレート12の傾斜角度に関する検出結果、およびトルクメータ33により検出されたフットプレート12に作用するトルクに関する検出結果が送り込まれる。制御部5は、傾斜角度やトルクの検出結果が表示されるオシロスコープと、傾斜角度やトルクの検出結果に基づいて、足首の粘弾性係数を算出するパーソナルコンピュータと、パーソナルコンピュータからの制御信号をパルス化して、これをモータ31に送出するモーターコントローラなどで構成される。
【0033】
上記に規制機構40以外に、この測定装置1には種々の安全対策が講じられている。まず、モーターコントローラは、モータ31に流れる電流値を管理し、過電流が指定時間以上流れると、直ちにモータ31の回転を停止するようになっている。また、外乱やシステムを要因とした被験者2に危険を及ぼす可能性のあるトルクが伝動軸35に与えられると、機構的にモータ31より先に第1カップリング36が壊れ、トルクフリーとなるように設計されている。また、フレーム体10の上部に非常停止ボタン45を設けて、被験者2が危険を感じたときに該ボタン45を押圧操作すると、モータ31の回転が即時に停止されて、フットプレート12の回転が直ちに停止されるようになっている。
【0034】
次に、上記構成からなる測定装置1を使った足首インピーダンスの測定方法について、図8乃至図10を参照して説明する。かかる足首インピーダンスは、トルク(τ)と角度(θ)の測定(測定工程)と、これらトルク(τ)と角度(θ)のサンプルデータから最小二乗法を使った足首インピーダンス(弾性係数:k、粘性係数:d)の算出(算出工程)に大別できる。
【0035】
測定工程においては、被験者2を着座板11の上に座らせてから、下腿固定具25および足先固定具20を使って、被験者2の下腿部2cと足先2bを固定する。このとき、被験者2の踝2dが回転軸18の軸心上に在るように、フットプレート12上における被験者2の足先位置を調整したうえで、被験者2の下腿部2cと足先2bを固定する。また、被験者2の下腿部2cが鉛直姿勢となるように、被験者2の座り位置や足先位置などを調整したうえで、被験者2の下腿部2cと足先2bを固定する。
【0036】
次に、フットプレート12を所定の初期角度姿勢(例えば水平姿勢(傾斜角度=0°))とする。具体的には、角度センサ23からの検出信号を勘案しながら、パーソナルコンピュータからモーターコントローラを介して指示を与えてモータ31を駆動させて、フットプレート12を初期角度姿勢となるまで揺動する。なお、モータ31が駆動されると、減速機構32の出力軸32aが駆動回転し、該出力軸32aの駆動回転力は、伝動機構34および回転軸18を介してフットプレート12に伝わり、これにて、フットプレート12を所定の初期角度姿勢とすることができる。
【0037】
次に、上記の初期角度姿勢から、フットプレート12を所定の角度範囲(例えば±15°)で、所定のトルク(τ1 )を加えながらゆっくりと揺動させ、このときの伝動軸35に作用するトルクの変化をトルクメータ33で計測する。具体的には、例えば、1周期が1秒以上の長周期となるように、所定のトルク(τ1 )を与えてフットプレート12を揺動させる。図9にトルク設定値(τ1 )、実側角度値(θ)、トルクメータ33によるトルク実測値(τ)の時間変化の例を示す。
【0038】
ここでは、フットプレート12が初期角度姿勢から所定の角度範囲(±15°)で揺動されたのちに初期角度姿勢に戻るまでの間(一周期)で、各角度(θ)におけるトルク(τ)を測定する。本測定装置1では、一つの周期において、数回から数千回の測定を行うことができる。また、測定は、数周期〜数十周期に亘って実行される。
【0039】
次の算出工程では、得られた実測角度(θ)とトルク実測値(τ)の値から、最小二乗法を使って弾性係数(k)と粘性係数(d)とを推定する(図8参照)。図10は、本発明装置のインピーダンス測定モデルである。同図からわかるように、伝動軸35には、測定時において、フットプレート12の重量(Mg)に由来する慣性モーメント(I1 )と、被験者2の足の重量(mg)に由来する慣性モーメント(I2 )とが作用する。従って、この測定モデルにおける力学式を示すと、以下の式(1)の如くとなる。
【0040】
【数1】

【0041】
上記式(1)のうち、τはトルクメータ33の実測値、θは角度センサ23の実測値である。フットプレート12の質量(M)、フットプレート12の重心(G)からフットプレート12の回転中心までの距離(L)は、常に変わることの無い既知の値である。本実施例の測定装置1には、被験者2の足の質量(m)、およびCOPである(G2 )の位置を計測するためのフォースプレートを使用していない。これは、フォースプレートの重量による慣性モーメント(I2 )の増加を防ぐ目的、さらに(I2 )の増加に伴う被験者2の足に対する負荷を低減させて安全性を向上させるためである。しかし、被験者2の足の質量(m)は、実質的に下腿部2cと足先2bの質量であるので、当該質量(m)は、足(下腿部2cと足先2b)の被験者2の身体重に占める割合から算出できる。すなわち、人間の身体重に占める足の重量の割合は凡そ決まっているため、足の質量(m)は、被験者2の身長および体重データから推定可能な値である。また、COPである(G2 )の位置は、足のサイズから推定可能である。従って、(G2 )からフットプレート12の回転中心までの距離(L2 )も推定可能な値である。
以上のように、式(1)は、弾性係数(k)、粘性係数(d)の二つの未知の値を含むものとなる。
【0042】
次に、上記式(1)を微分の差分近似により離散化して(θ)のみの式に変換し、当該式に所定のサンプリング間隔毎で得られた実測値(θ)(τ)を当てはめて、n個の角度データおよびトルクデータを取得する。ここで、上記式(1)を微分の差分近似により離散化すると以下の式(2)の如くとなる。式(3)は、式(2)をまとめたものである。
【0043】
【数2】

【0044】
【数3】

【0045】
最後に、疑似逆行例を用いた最小二乗法により、式(3)に含まれる誤差成分を最小にすることで、弾性係数(k)、粘性係数(d)を算出することができる。
【0046】
上記の測定方法では、足の質量(m)、および(G2 )からフットプレート12の回転中心までの距離(L2 )は被験者2の身長および体重データから推定したが、式(1)における、弾性係数(k)、粘性係数(d)、および足の質量(m)と距離(L2 )を掛け合わせた数値(L2 m)の三つの未知の値を含むものとして算出しても良い(図11参照)。ここで、(L2 m)を一つの値としたのは、(L2 )または(m)の個々の値のみを用いての計算が式中にないためである。取得した角度データおよびトルクデータから、疑似逆行例を用いた最小二乗法により、式(3)に含まれる誤差成分を最小にすることで、弾性係数(k)、粘性係数(d)および足の質量とフットプレート12の回転中心までの距離を掛け合わせた数値(L2 m)を算出することができる。以上のように、図11に示す測定方法であっても、弾性係数(k)、粘性係数(d)を算出することができる。
【0047】
図12に、本発明の別実施例を示す。図12では、着座板11の下方に機械式のジャッキ(位置調整機構)50を設けて、該ジャッキ50により被験者2の身体寸法に合わせて、着座板11の位置を上下方向に調整できるようにしている。また、フットプレート12の下方にジャッキ(位置調整機構)51を設けて、該ジャッキ51により被験者2の身体寸法に合わせて、フットプレート12の位置を上下方向に調整できるようにしている。また、ジャッキ51は、これを前後方向に移動可能に構成して、フットプレート12の位置を前後方向に調整できるようにしてもよい。この場合には、フットプレート12およびジャッキ51を支持するコ字状の支持体52を配し、この支持体52に左右一対の回転軸18・18を設けて揺動可能に支持するようにする。
【0048】
このように、ジャッキ50・51を配して、着座板11を上下方向に移動可能に構成するとともに、フットプレート12を上下および前後方向に移動可能に構成していると、より正確且つ確実に下腿部2cの位置合わせや、踝2dの位置合わせを行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0049】
1 足首インピーダンスの測定装置
2 被験者
2a 被験者の臀部
2b 被験者の足先
2d 被験者の踝
12 フットプレート
18 回転軸
23 角度検出手段(角度センサ)
28 緩衝材
31 駆動源(モータ)
33 トルク検出手段(トルクメータ)
40 規制機構
50 位置調整機構(ジャッキ)
51 位置調整機構(ジャッキ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者(2)が着座したときに、該被験者(2)の臀部(2a)を受け止める着座板(11)と、
水平に配された回転軸(18)まわりに揺動回転可能に構成されて、被験者(2)の足先(2b)が載せられるフットプレート(12)と、
前記回転軸(18)を介して、前記フットプレート(12)に駆動回転力を付与する駆動源(31)と、
揺動回転時に前記フットプレート(12)に加わるトルクを検出するためのトルク検出手段(33)と、
揺動回転時の前記フットプレート(12)の傾斜角度を検出するための角度検出手段(23)と、
着座姿勢における被験者(2)の下腿部(2c)を固定するための下腿固定具(25)と、
前記フットプレート(12)上に載せられた被験者(2)の足先(2b)を固定するための足先固定具(20)と、
を備え、
前記下腿固定具(25)および前記足先固定具(20)を使って、被験者(2)の踝(2d)が前記回転軸(18)の軸心上に位置するように被験者(2)の脚部を固定し、
かかる脚部の固定状態で、前記駆動源(31)を駆動して前記フットプレート(12)を前記回転軸(18)まわりに揺動回転駆動して、足先(2b)を踝(2d)まわりに上下方向に強制的に姿勢変位させ、
かかる足先(2b)を上下方向に姿勢変位させた際の前記トルク検出手段(33)による検出値と、前記角度検出手段(23)による検出値に基づいて、足首の粘弾性係数を算出することを特徴とする足首インピーダンスの測定装置。
【請求項2】
前記フットプレート(12)には、足先(2b)を該フットプレート(12)に載せたとき、被験者(2)の踵を受け止めるための緩衝材(28)が配されている、請求項1記載の足首インピーダンスの測定装置。
【請求項3】
前記フットプレート(12)の前記回転軸(18)まわりの揺動回転限界を規制するための規制機構(40)を備える、請求項1又は2記載の足首インピーダンスの測定装置。
【請求項4】
前記着座板(11)の上下方向の位置調整機構(50)、および/又は前記フットプレート(12)の上下方向および/又は前後方向の位置調整機構(51)を備える、請求項1乃至3のいずれかに記載の足首インピーダンスの測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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