説明

距離・速度計および距離・速度計測方法

【課題】自己結合型のレーザ計測器の利点を活かしつつ、測定対象との距離と測定対象の速度を計測する。
【解決手段】距離・速度計は、半導体レーザ1と、半導体レーザ1に、発振波長が連続的に増加する第1の発振期間と発振波長が連続的に減少する第2の発振期間とを交互に繰り返させるレーザドライバ4と、半導体レーザ1の光出力を電気信号に変換するフォトダイオード2と、フォトダイオード2の出力に含まれる、半導体レーザ1の出力光と測定対象11からの戻り光との半導体レーザ1内での干渉に基づくパルスの数を、第1の発振期間と第2の発振期間の各々について数える計数手段5〜8と、半導体レーザ1の最小発振波長と最大発振波長と計数手段の計数結果から測定対象11との距離及び測定対象11の速度を算出する演算手段9とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザの自己結合効果を利用して、測定対象との距離及び測定対象の速度を計測する距離・速度計および距離・速度計測方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザによる光の干渉を利用した距離計測は、非接触測定のため測定対象を乱すことなく、高精度の測定方法として古くから用いられている。最近では、半導体レーザは装置の小型化のため、光計測用光源として利用されようとしている。その代表的な例として、FMヘテロダイン干渉計を利用したものがある。これは、比較的長距離測定が可能で精度もよいが、半導体レーザの外部に干渉計を用いているため、光学系が複雑になるという欠点を有する。
【0003】
これに対して、レーザの出力光と測定対象からの戻り光との半導体レーザ内部での干渉(自己結合効果)を利用した計測器が提案されている(例えば、非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3参照)。このような自己結合型のレーザ計測器によれば、フォトダイオード内蔵の半導体レーザが発光、干渉、受光の各機能を兼ねているため、外部干渉光学系を大幅に簡略化することができる。したがって、センサ部が半導体レーザとレンズのみとなり、従来のものに比べて小型となる。また、三角測量法より距離測定範囲が広いという特徴を有する。
【0004】
FP型(ファブリペロー型)半導体レーザの複合共振器モデルを図20に示す。図20において、101は半導体レーザ、102は半導体結晶の壁開面、103はフォトダイオード、104は測定対象である。測定対象104からの反射光の一部が発振領域内に戻り易い。戻って来たわずかな光は、共振器101内のレーザ光と結合し、動作が不安定となり雑音(複合共振器ノイズまたは戻り光ノイズ)を生じる。戻り光による半導体レーザの特性の変化は、出力光に対する相対的な戻り光量が、極めてわずかであっても顕著に現れる。このような現象は、ファブリペロー型(以下、FP型)半導体レーザに限らず、Vertical Cavity Surface Emitting Laser型(以下、VCSEL型)、Distributed FeedBack laser型(以下、DFBレーザ型)など、他の種類の半導体レーザにおいても同様に現れる。
【0005】
レーザの発振波長をλ、測定対象104に近い方の壁開面102から測定対象104までの距離をLとすると、以下の共振条件を満足するとき、戻り光と共振器101内のレーザ光は強め合い、レーザ出力がわずかに増加する。
L=nλ/2 ・・・(1)
式(1)において、nは整数である。この現象は、測定対象104からの散乱光が極めて微弱であっても、半導体レーザの共振器101内の見かけの反射率が増加することにより、増幅作用が生じ、十分観測できる。
【0006】
半導体レーザは、注入電流の大きさに応じて周波数の異なるレーザ光を放射するので、発振周波数を変調する際に、外部変調器を必要とせず、注入電流によって直接変調が可能である。図21は、半導体レーザの発振波長をある一定の割合で変化させたときの発振波長とフォトダイオード103の出力波形との関係を示す図である。式(1)に示したL=nλ/2を満足したときに、戻り光と共振器101内のレーザ光の位相差が0°(同位相)になって、戻り光と共振器101内のレーザ光とが最も強め合い、L=nλ/2+λ/4のときに、位相差が90°(逆位相)になって、戻り光と共振器101内のレーザ光とが最も弱め合う。そのため、半導体レーザの発振波長を変化させていくと、レーザ出力が強くなるところと弱くなるところとが交互に繰り返し現れ、このときのレーザ出力を共振器101に設けられたフォトダイオード103で検出すると、図21に示すように一定周期の階段状の波形が得られる。このような波形は一般的には干渉縞と呼ばれる。
【0007】
この階段状の波形、すなわち干渉縞の1つ1つをモードポップパルス(以下、MHP)と呼ぶ。MHPは後述のモードホッピング現象とは異なる現象である。例えば、測定対象104までの距離がL1のとき、MHPの数が10個であったとすれば、半分の距離L2では、MHPの数は5個になる。すなわち、ある一定時間において半導体レーザの発振波長を変化させた場合、測定距離に比例してMHPの数は変わる。したがって、MHPをフォトダイオード103で検出し、MHPの周波数を測定すれば、容易に距離計測が可能となる。なお、FP型半導体レーザに特有のモードホッピング現象は、図22に示すように、注入電流の連続的な増減に応じて発振波長に不連続な箇所が生じる現象である。注入電流の増加時と減少時とにおいて僅かにヒステリシスを有する。
【0008】
【非特許文献1】上田正,山田諄,紫藤進,「半導体レーザの自己結合効果を利用した距離計」,1994年度電気関係学会東海支部連合大会講演論文集,1994年
【非特許文献2】山田諄,紫藤進,津田紀生,上田正,「半導体レーザの自己結合効果を利用した小型距離計に関する研究」,愛知工業大学研究報告,第31号B,p.35−42,1996年
【非特許文献3】Guido Giuliani,Michele Norgia,Silvano Donati and Thierry Bosch,「Laser diode self-mixing technique for sensing applications」,JOURNAL OF OPTICS A:PURE AND APPLIED OPTICS,p.283−294,2002年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のように、自己結合型のレーザ計測器では、共振器外部の干渉光学系を大幅に簡略化できるため、装置を小型化することができ、また高速の回路が不要で、外乱光に強いという利点がある。さらに、測定対象からの戻り光が極めて微弱でもよいので、測定対象の反射率に影響されない、すなわち測定対象を選ばないという利点がある。
しかしながら、自己結合型を含め従来の干渉型計測器では、静止した測定対象との距離を計測することはできても、速度を持つ測定対象の距離を計測することはできないという問題点があった。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、静止した測定対象との距離だけでなく、測定対象の速度も計測することができる距離・速度計および距離・速度計測方法を提供することを目的とする。特に、自己結合型のレーザ計測器の利点を活かしつつ、静止した測定対象との距離だけでなく、測定対象の速度も計測することができる距離・速度計および距離・速度計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の距離・速度計は、測定対象にレーザ光を放射する半導体レーザと、発振波長が連続的に単調増加する期間を少なくとも含む第1の発振期間と発振波長が連続的に単調減少する期間を少なくとも含む第2の発振期間とが交互に少なくとも2期間存在するように前記半導体レーザを動作させるレーザドライバと、前記半導体レーザから放射されたレーザ光と前記測定対象からの戻り光とを電気信号に変換する受光器と、この受光器の出力信号に含まれる、前記半導体レーザから放射されたレーザ光と前記測定対象からの戻り光とによって生じる干渉波形の数を、前記第1の発振期間の少なくとも一部と前記第2の発振期間の少なくとも一部の各々について数える計数手段と、この計数手段によって干渉波形の数を数える期間における最小発振波長と最大発振波長と前記計数手段の計数結果とから前記測定対象との距離及び前記測定対象の速度の少なくとも一方を算出する演算手段とを有するものである。
また、本発明の距離・速度計は、測定対象にレーザ光を放射する半導体レーザと、発振波長が連続的に単調増加する期間を少なくとも含む第1の発振期間と発振波長が連続的に単調減少する期間を少なくとも含む第2の発振期間とが交互に少なくとも2期間存在するように前記半導体レーザを動作させるレーザドライバと、前記半導体レーザの光出力を電気信号に変換する受光器と、この受光器の出力信号に含まれる、前記半導体レーザから放射されたレーザ光と前記測定対象からの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形の数を、前記第1の発振期間の少なくとも一部と前記第2の発振期間の少なくとも一部の各々について数える計数手段と、前記半導体レーザの各発振期間における最小発振波長と最大発振波長と前記計数手段の計数結果とから前記測定対象との距離及び前記測定対象の速度の少なくとも一方を算出する演算手段とを有するものである。
また、本発明の距離・速度計の1構成例において、前記演算手段は、前記半導体レーザの最小発振波長と最大発振波長と前記計数手段の計数結果に基づいて前記測定対象との距離の候補値と前記測定対象の速度の候補値とを算出する距離・速度算出部と、この距離・速度算出部で算出された距離の候補値と前回に算出された距離の候補値との差である履歴変位を算出する履歴変位算出部と、前記距離・速度算出部と前記履歴変位算出部の算出結果に基づいて前記測定対象の状態を判定する状態判定部と、この状態判定部の判定結果に基づいて前記測定対象との距離及び前記測定対象の速度の少なくとも一方を確定する距離・速度確定部とからなるものである。
また、本発明の距離・速度計の1構成例において、前記距離・速度算出部と前記履歴変位算出部は、前記測定対象の状態を微小変位状態あるいは前記微小変位状態よりも動きが急な変位状態のいずれかであるとし、前記測定対象が微小変位状態にあると仮定した場合と変位状態にあると仮定した場合の各々について前記距離の候補値と前記速度の候補値と前記履歴変位とを、前記第1の発振期間と前記第2の発振期間とを合わせた周期毎に算出し、前記状態判定部は、前記距離・速度算出部と前記履歴変位算出部の算出結果に基づいて前記測定対象が微小変位状態にあるか変位状態にあるかを前記算出毎に判定すると共に、前記測定対象が等速度運動しているか加速度運動しているかを前記算出毎に判定するものである。
【0012】
また、本発明の距離・速度計の1構成例において、前記状態判定部は、前記測定対象が微小変位状態にあると仮定して算出された前記履歴変位の符号が一定で、かつ前記測定対象が微小変位状態にあると仮定して算出された前記速度の候補値と前記測定対象が微小変位状態にあると仮定して算出された前記履歴変位の絶対値の平均値とが等しい場合、前記測定対象が微小変位状態で等速度運動していると判定するものである。
また、本発明の距離・速度計の1構成例において、前記状態判定部は、前記測定対象が変位状態にあると仮定して算出された前記履歴変位の符号が一定で、かつ前記測定対象が変位状態にあると仮定して算出された前記速度の候補値と前記測定対象が変位状態にあると仮定して算出された前記履歴変位の絶対値の平均値とが等しい場合、前記測定対象が変位状態で等速度運動していると判定するものである。
【0013】
また、本発明の距離・速度計の1構成例において、前記状態判定部は、前記測定対象が微小変位状態にあると仮定して算出された前記履歴変位の符号が前記算出毎に反転し、かつ前記測定対象が微小変位状態にあると仮定して算出された前記速度の候補値と前記測定対象が微小変位状態にあると仮定して算出された前記履歴変位の絶対値の平均値とが一致しない場合、前記測定対象が微小変位状態で加速度運動していると判定するものである。
また、本発明の距離・速度計の1構成例において、前記状態判定部は、前記測定対象が変位状態にあると仮定して算出された前記速度の候補値の絶対値が前記半導体レーザの波長変化率と等しく、かつ前記測定対象が微小変位状態にあると仮定して算出された前記速度の候補値と前記測定対象が微小変位状態にあると仮定して算出された前記履歴変位の絶対値の平均値とが一致しない場合、前記測定対象が微小変位状態で加速度運動していると判定するものである。
また、本発明の距離・速度計の1構成例において、前記状態判定部は、前記測定対象が変位状態にあると仮定して算出された前記履歴変位の符号が前記算出毎に反転し、かつ前記測定対象が変位状態にあると仮定して算出された前記速度の候補値と前記測定対象が変位状態にあると仮定して算出された前記履歴変位の絶対値の平均値とが一致しない場合、前記測定対象が変位状態で加速度運動していると判定するものである。
また、本発明の距離・速度計の1構成例において、前記状態判定部は、前記測定対象が微小変位状態にあると仮定して算出された前記速度の候補値の絶対値が前記半導体レーザの波長変化率と等しく、かつ前記測定対象が変位状態にあると仮定して算出された前記速度の候補値と前記測定対象が変位状態にあると仮定して算出された前記履歴変位の絶対値の平均値とが一致しない場合、前記測定対象が変位状態で加速度運動していると判定するものである。
また、本発明の距離・速度計の1構成例において、前記演算手段は、前記測定対象が微小な変位を有する運動状態にある場合、前記算出の結果の代わりに、前記変位の積分結果を前記測定対象との距離の変化とするものである。
また、本発明の距離・速度計測方法は、波長変調した波を測定対象に放射し、測定対象に反射して戻る波と前記放射した波との間で発生する干渉を検出し、この干渉に関する情報に基づいて、測定対象との距離および測定対象との速度の候補値をそれぞれ算出すると共にこれらの候補値の中から該当する速度および距離の値をそれぞれ1つずつ選択するようにしたものである。
また、本発明は、半導体レーザを用いて測定対象にレーザ光を放射する距離・速度計測方法において、発振波長が連続的に単調増加する期間を少なくとも含む第1の発振期間と発振波長が連続的に単調減少する期間を少なくとも含む第2の発振期間とが交互に少なくとも2期間存在するように前記半導体レーザを動作させる発振手順と、前記半導体レーザの光出力を電気信号に変換する受光器の出力信号に含まれる、前記半導体レーザから放射されたレーザ光と前記測定対象からの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形の数を、前記第1の発振期間の少なくとも一部と前記第2の発振期間の少なくとも一部の各々について数える計数手順と、この計数手順によって干渉波形の数を数える期間における最小発振波長と最大発振波長と前記計数手順の計数結果とから前記測定対象との距離及び前記測定対象の速度の少なくとも一方を算出する演算手順とを備えるものである。
また、本発明の距離・速度計測方法の1構成例において、前記演算手順は、前記測定対象が微小な変位を有する運動状態にある場合、前記算出の結果の代わりに、前記変位の積分結果を前記測定対象との距離の変化とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、測定対象との距離だけでなく、測定対象の速度(大きさ、方向)も計測することができる。また、本発明によれば、レーザ計測器の最小発振波長と最大発振波長と計数手段の計数結果とから、測定対象が等速度運動しているか加速度運動しているかを判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、波長変調を用いたセンシングにおいて出射した波と対象物で反射した波の干渉信号をもとに距離と速度を同時に算出する手法である。したがって、自己結合以外の光学式の干渉計、光以外の干渉計にも適用できる。半導体レーザの自己結合を用いる場合について、より具体的に説明すると、半導体レーザから測定対象にレーザ光を照射しつつ、レーザの発振波長を変化させると、発振波長が最小発振波長から最大発振波長まで変化する間(あるいは最大発振波長から最小発振波長まで変化する間)における測定対象の変位は、MHPの数に反映される。したがって、発振波長を変化させたときのMHPの数を調べることで測定対象の状態を検出することができる。以上が、本発明の基本的な原理である。
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態となる距離・速度計の構成を示すブロック図である。図1の距離・速度計は、測定対象にレーザ光を放射する半導体レーザ1と、半導体レーザ1の光出力を電気信号に変換するフォトダイオード2と、半導体レーザ1からの光を集光して測定対象12に照射すると共に、測定対象12からの戻り光を集光して半導体レーザ1に入射させるレンズ3と、半導体レーザ1に発振波長が連続的に増加する第1の発振期間と発振波長が連続的に減少する第2の発振期間とを交互に繰り返させるレーザドライバ4と、フォトダイオード2の出力電流を電圧に変換して増幅する電流−電圧変換増幅器5と、電流−電圧変換増幅器5の出力電圧を2回微分する信号抽出回路11と、信号抽出回路11の出力電圧に含まれるMHPの数を数える計数回路8と、測定対象12との距離及び測定対象12の速度を算出する演算装置9と、演算装置9の算出結果を表示する表示装置10とを有する。電流−電圧変換増幅器5と信号抽出回路11と計数回路8とは、計数手段を構成している。
【0017】
以下、説明容易にするために、半導体レーザ1には、前述のモードホッピング現象を持たない型(VCSEL型、DFBレーザ型)のものが用いられているものと想定する。そして、モードホッピング現象を持つ型(FP型)の半導体レーザ1を用いた場合については、その旨を特記する。
【0018】
例えば、レーザドライバ4は、時間に関して一定の変化率で増減を繰り返す三角波駆動電流を注入電流として半導体レーザ1に供給する。これにより、半導体レーザ1は、注入電流の大きさに比例して発振波長が一定の変化率で連続的に増加する第1の発振期間と発振波長が一定の変化率で連続的に減少する第2の発振期間とを交互に繰り返す。図2は、半導体レーザ1の発振波長の時間変化を示す図である。図2において、t−1はt−1番目の発振期間、tはt番目の発振期間、λaは各期間における発振波長の最小値、λbは各期間における発振波長の最大値である。この実施例では、発振波長の最大値λb及び発振波長の最小値λaはそれぞれ常に一定になされており、それらの差λb−λaも常に一定になされている。なお、駆動電流が、第1の発振期間と第2の発振期間とが交互に少なくとも3期間連続する波形を持つ駆動電流であって、第1の発振期間においては発振波長が連続的に単調増加する期間を少なくとも含み、第2の発振期間においては発振波長が連続的に単調減少する期間を少なくとも含む波形を持つ駆動電流であれば、例示した三角波以外の波形(例えば正弦波)を有するものを用いることができる。例えば、消費電流を抑制するために、2山毎(すなわち4期間毎)に休止期間を置いた間歇的な波形の駆動電流を用いることができる(図3)。
【0019】
半導体レーザ1から出射したレーザ光は、レンズ3によって集光され、測定対象12に入射する。測定対象12で反射された光は、レンズ3によって集光され、半導体レーザ1に入射する。ただし、レンズ3による集光は必須ではない。フォトダイオード2は、半導体レーザ1の光出力を電流に変換する。電流−電圧変換増幅器5は、フォトダイオード2の出力電流を電圧に変換して増幅する。信号抽出回路11は、変調波から重畳信号を抽出する機能を有するものであり、例えば二つの微分回路6,7が用いられる。微分回路6は、電流−電圧変換増幅器5の出力電圧を微分し、微分回路7は、微分回路6の出力電圧を微分する。図4(A)は電流−電圧変換増幅器5の出力電圧波形を模式的に示す図、図4(B)は微分回路6の出力電圧波形を模式的に示す図、図4(C)は微分回路7の出力電圧波形を模式的に示す図である。これらは、フォトダイオード103の出力である図4(A)の波形(変調波)から、図2の半導体レーザ1の発振波形(搬送波)を除去して、図4(C)のMHP波形(重畳波)を抽出する過程を表している。
【0020】
計数回路8は、微分回路7の出力電圧に含まれるMHPの数を第1の発振期間t−1と第2の発振期間tの各々について数える。以下、第1の発振期間t−1におけるMHPの数をMHPt−1(t−1の部分は変数MHPの添え字である。以下同様)、第2の発振期間tにおけるMHPの数をMHPtとする。計数回路8としては、論理ゲートからなるカウンタを利用したものでもよい。また、半導体レーザを動作させるために、一定の変化率で増減を繰り返す波形の駆動電流を用いた場合には、Fast Fourier Transform(以下、FFT)を利用してMHPの周波数(すなわち単位時間あたりのMHPの数)を計測してもよい。
【0021】
演算装置9は、半導体レーザ1の最小発振波長λaと最大発振波長λbと発振期間t−1におけるMHPの数MHPt−1と発振期間tにおけるMHPの数MHPtに基づいて、測定対象12との距離及び測定対象12の速度を算出する。なお、上述の通り、最大発振波長λbと最小発振波長λaとの差であるλb−λaの値が常に一定となるように半導体レーザ1を動作させることが一般的であるが、もしλb−λaの値が必ずしも一定とならないように半導体レーザ1を動作させる場合は、速度の算出に先立ち、対象となる期間におけるλb−λaの値によってMPHの数を正規化しておく必要がある。
【0022】
図5は演算装置9の構成の1例を示すブロック図、図6は演算装置9の動作を示すフローチャートである。演算装置9は、半導体レーザ1の最小発振波長λaと最大発振波長λbと1の発振期間t−1におけるMHPの数MHPt−1と第2の発振期間tにおけるMHPの数MHPtに基づいて測定対象12との距離の候補値と測定対象12の速度の候補値とを算出する距離・速度算出部91と、距離・速度算出部91で算出された距離の候補値と1周期前に算出された距離の候補値との差である履歴変位を算出する履歴変位算出部92と、距離・速度算出部91と履歴変位算出部92の算出結果を記憶する記憶部93と、距離・速度算出部91と履歴変位算出部92の算出結果に基づいて測定対象12の状態を判定する状態判定部94と、状態判定部94の判定結果に基づいて測定対象12との距離及び測定対象12の速度を確定する距離・速度確定部95とから構成される。
【0023】
ここで、期間tの始点を時刻tとする。測定対象12の状態を所定の条件を満たす微小変位状態、あるいは微小変位状態よりも動きが大きい変位状態のいずれかであるとする。発振期間t−1と発振期間tの1期間あたりの測定対象12の平均変位をVとしたとき、微小変位状態とは(λb−λa)/λb>V/Lbを満たす状態であり(ただし、Lbは時刻tのときの距離)、変位状態とは(λb−λa)/λb≦V/Lbを満たす状態である。なお、期間t−1と期間tとを合わせた時間によって変位Vを正規化すれば測定対象12の速度を得ることができる。
【0024】
まず、演算装置9の距離・速度算出部91は、現時刻tにおける距離の候補値Lα(t),Lβ(t)と変位の候補値Vα(t),Vβ(t)を次式のように算出して、記憶部93に格納する(図6ステップS1)。
Lα(t)=λa×λb×(’MHPt−1’+’MHPt’)
/{4×(λb−λa)} ・・・(2)
Lβ(t)=λa×λb×(|’MHPt−1’−’MHPt’|)
/{4×(λb−λa)} ・・・(3)
Vα(t)=(’MHPt−1’−’MHPt’)×λ/4 ・・・(4)
Vβ(t)=(’MHPt−1’+’MHPt’)×λ/4 ・・・(5)
なお、式の中のクォーテーション記号 ’はMHPの添え字と演算子とを区別するために付したものである(以下同様)。式(4)、式(5)におけるλは、現時刻tに対して1周期前の時刻t−1における波長である。例えば図2の例では、波長λはλaとなる。また、現時刻が図2の時刻t+1である場合は、波長λはλbとなる。
なお、上述の式(2)及び(3)は、半導体レーザ1にモードホッピング現象を持たない型のものを用いる場合を想定したものである。もし、半導体レーザ1にモードホッピング現象を持つ型のものを用いる場合は、上記の式(2)及び(3)に代えて下記の式(2A)及び(3A)を用いる必要がある。
Lα(t)=λa×λb×(’MHPt−1’+’MHPt’)
/{4×(λb−λa−Σλmp)} ・・・(2A)
Lβ(t)=λa×λb×(|’MHPt−1’−’MHPt’|)
/{4×(λb−λa−Σλmp)} ・・・(3A)
ここでλmpは、モードホッピング現象によって不連続となった周波数の幅の大きさを表す(図22)。ひとつの期間tの中で複数のモードホッピング現象が生じる場合、いずれのλmpもほぼ同じ大きさを示す。Σλmpは、ひとつの期間tの中で生じたモードホッピング現象による周波数の不連続幅の大きさλmpを全て加算した値である。
【0025】
候補値Lα(t),Vα(t)は測定対象12が微小変位状態にあると仮定して計算した値であり、候補値Lβ(t),Vβ(t)は測定対象12が変位状態にあると仮定して計算した値である。演算装置9は、式(2)〜式(5)の計算を図4に示す各期間の始点の時刻毎に行う。
【0026】
続いて、演算装置9の履歴変位算出部92は、微小変位状態と変位状態の各々について、現時刻tにおける距離の候補値と、記憶部93に格納された1周期前の時刻(t−1)における距離の候補値との差である履歴変位を次式のように算出して、記憶部93に格納する(図6ステップS2)。
Vcalα(t)=Lα(t)−Lα(t−1) ・・・(6)
Vcalβ(t)=Lβ(t)−Lβ(t−1) ・・・(7)
【0027】
履歴変位Vcalα(t)は測定対象12が微小変位状態にあると仮定して計算した値であり、履歴変位Vcalβ(t)は測定対象12が変位状態にあると仮定して計算した値である。演算装置9は、式(6)〜式(7)の計算を始点時刻t毎に行う。なお、式(4)〜式(7)においては、測定対象12が本実施の形態の距離・速度計に近づく方向を正の速度、遠ざかる方向を負の速度と定めている。
次に、演算装置9の状態判定部94は、記憶部93に格納された式(2)〜式(7)の算出結果を用いて、測定対象12の状態を判定する(図6ステップS3)。
【0028】
図7に測定対象12が微小変位状態で移動(等速度運動)している場合の速度の候補値Vα(t),Vβ(t)と履歴変位Vcalα(t),Vcalβ(t)の1例を示す。図7の例では、測定対象12の速度を0.0005m/期間、半導体レーザ1の最小発振波長λaを680nm、最大発振波長λbを681nmとした。図7から分かるように、測定対象12が微小変位状態で移動している場合、測定対象12を微小変位状態と仮定して計算した履歴変位Vcalα(t)の符号は一定で(図7の例では正)、かつ測定対象12を微小変位状態と仮定して計算した速度の候補値Vα(t)と履歴変位Vcalα(t)の絶対値の平均値とが等しくなる。一方、測定対象12を変位状態と仮定して計算した履歴変位Vcalβ(t)の符号は始点時刻t毎に反転する。つまり、第1の発振期間と第2の発振期間ではその符合が異なる。
【0029】
したがって、状態判定部94は、測定対象12が微小変位状態にあると仮定して計算した履歴変位Vcalα(t)の符号が一定で、かつ測定対象12が微小変位状態にあると仮定して計算した速度の候補値Vα(t)と履歴変位Vcalα(t)の絶対値の平均値とが等しい場合、測定対象12が微小変位状態で移動していると判定する。
【0030】
図8に測定対象12が変位状態で移動(等速度運動)している場合の速度の候補値Vα(t),Vβ(t)と履歴変位Vcalα(t),Vcalβ(t)の1例を示す。図8の例では、測定対象12の速度を0.002m/期間、半導体レーザ1の最小発振波長λaを680nm、最大発振波長λbを681nmとした。図8から分かるように、測定対象12が変位状態で移動している場合、測定対象12を変位状態と仮定して計算した履歴変位Vcalβ(t)の符号は一定で(図8の例では正)、かつ測定対象12を変位状態と仮定して計算した速度の候補値Vβ(t)と履歴変位Vcalβ(t)の絶対値の平均値とが等しくなる。一方、測定対象12を微小変位状態と仮定して計算した履歴変位Vcalα(t)の符号は始点時刻t毎に反転する。
【0031】
したがって、状態判定部94は、測定対象12が変位状態にあると仮定して計算した履歴変位Vcalβ(t)の符号が一定で、かつ測定対象12が変位状態にあると仮定して計算した速度の候補値Vβ(t)と履歴変位Vcalβ(t)の絶対値の平均値とが等しい場合、測定対象12が変位状態で移動していると判定する。
【0032】
図9に測定対象12が微小変位状態で、一定位置を中心として振動(加速度運動)している場合の速度の候補値Vα(t),Vβ(t)と履歴変位Vcalα(t),Vcalβ(t)の1例を示す。図9の例では、測定対象12の最大速度を0.000002m/期間、半導体レーザ1の最小発振波長λaを680nm、最大発振波長λbを681nmとした。図9から分かるように、測定対象12が振動している場合、測定対象12を微小変位状態と仮定して計算した速度の候補値Vα(t)と測定対象12を微小変位状態と仮定して計算した履歴変位Vcalα(t)の絶対値の平均値とは一致しない。同様に、測定対象12を変位状態と仮定して計算した速度の候補値Vβ(t)と測定対象12を変位状態と仮定して計算した履歴変位Vcalβ(t)の絶対値の平均値も一致しない。
【0033】
図10に、図9の速度0付近を拡大した図を示す。図10から分かるように、測定対象12を微小変位状態と仮定して計算した履歴変位Vcalα(t)の符号は始点時刻t毎に反転し、測定対象12を変位状態と仮定して計算した履歴変位Vcalβ(t)では符号の変動はあっても、この変動は始点時刻t毎ではない。
【0034】
したがって、状態判定部94は、測定対象12が微小変位状態にあると仮定して計算した履歴変位Vcalα(t)の符号が始点時刻t毎に反転し、かつ測定対象12が微小変位状態にあると仮定して計算した速度の候補値Vα(t)と履歴変位Vcalα(t)の絶対値の平均値とが一致しない場合、測定対象12が微小変位状態で振動していると判定する。
【0035】
なお、図9に示した速度の候補値Vβ(t)に着目すると、Vβ(t)の絶対値は定数となり、この値は半導体レーザ1の波長変化率(λb−λa)/λbと等しい。そこで、状態判定部94は、測定対象12が変位状態にあると仮定して計算した速度の候補値Vβ(t)の絶対値が波長変化率と等しく、かつ測定対象12が微小変位状態にあると仮定して計算した速度の候補値Vα(t)と履歴変位Vcalα(t)の絶対値の平均値とが一致しない場合、測定対象12が微小変位状態で振動していると判定してもよい。
【0036】
図11に測定対象12が変位状態で、一定位置を中心として振動(加速度運動)している場合の履歴変位Vcalα(t),Vcalβ(t)の1例を示す。図11の例では、測定対象12の最大速度を0.01m/期間、半導体レーザ1の最小発振波長λaを680nm、最大発振波長λbを681nmとした。なお、図11では、値が小さいため、速度の候補値Vα(t),Vβ(t)については記載していない。
【0037】
図11では、明記していないが、図9の場合と同様に、測定対象12を微小変位状態と仮定して計算した速度の候補値Vα(t)と測定対象12を微小変位状態と仮定して計算した履歴変位Vcalα(t)の絶対値の平均値とは一致せず、測定対象12を変位状態と仮定して計算した速度の候補値Vβ(t)と測定対象12を変位状態と仮定して計算した履歴変位Vcalβ(t)の絶対値の平均値も一致しない。
【0038】
一方、図11から分かるように、測定対象12を変位状態と仮定して計算した履歴変位Vcalβ(t)の符号は始点時刻t毎に反転し、測定対象12を微小変位状態と仮定して計算した履歴変位Vcalα(t)では符号の変動はあっても、この変動は始点時刻t毎ではない。
【0039】
したがって、状態判定部94は、測定対象12が変位状態にあると仮定して計算した履歴変位Vcalβ(t)の符号が始点時刻t毎に反転し、かつ測定対象12が変位状態にあると仮定して計算した速度の候補値Vβ(t)と履歴変位Vcalβ(t)の絶対値の平均値とが一致しない場合、測定対象12が変位状態で振動していると判定する。
【0040】
図12に、図11の速度0付近を拡大した図を示す。速度の候補値Vα(t)に着目すると、Vα(t)の絶対値は定数となり、この値は半導体レーザ1の波長変化率(λb−λa)/λbと等しい。したがって、状態判定部94は、測定対象12が微小変位状態にあると仮定して計算した速度の候補値Vα(t)の絶対値が波長変化率と等しく、かつ測定対象12が変位状態にあると仮定して計算した速度の候補値Vβ(t)と履歴変位Vcalβ(t)の絶対値の平均値とが一致しない場合、測定対象12が変位状態で振動していると判定してもよい。
【0041】
以上の状態判定部94の判定動作を図13に示す。演算装置9の距離・速度確定部95は、状態判定部94の判定結果に基づいて測定対象12の速度及び測定対象12との距離を確定する(図6ステップS4)。
【0042】
すなわち、距離・速度確定部95は、測定対象12が微小変位状態で移動していると判定された場合、速度の候補値Vα(t)を測定対象12の速度とし、距離の候補値Lα(t)を測定対象12との距離とし、測定対象12が変位状態で移動していると判定された場合、速度の候補値Vβ(t)を測定対象12の速度とし、距離の候補値Lβ(t)を測定対象12との距離とする。
【0043】
また、距離・速度確定部95は、測定対象12が微小変位状態で振動していると判定された場合、速度の候補値Vα(t)を測定対象12の速度とし、距離の候補値Lα(t)を測定対象12との距離とし、測定対象12が変位状態で振動していると判定された場合、速度の候補値Vβ(t)を測定対象12の速度とし、距離の候補値Lβ(t)を測定対象12との距離とする。なお、測定対象12が振動している場合、実際の距離は距離Lβ(t)の平均値となる。
【0044】
演算装置9は、以上のようなステップS1〜S4の処理を例えばユーザから計測終了の指示があるまで(ステップS5においてYES)、始点時刻t毎に行う。
表示装置10は、演算装置9によって算出された測定対象12との距離及び測定対象12の速度を表示する。
【0045】
以上のように、本実施の形態では、半導体レーザ1に発振波長が連続的に増加する第1の発振期間t−1と発振波長が連続的に減少する第2の発振期間tとを交互に繰り返させ、このフォトダイオードの出力信号に含まれるMHPの数を、第1の発振期間t−1と第2の発振期間tの各々について数え、この計数結果と半導体レーザ1の最小発振波長λaと最大発振波長λbとから、測定対象12との距離及び測定対象12の速度を算出することができる。その結果、本実施の形態では、(a)装置を小型化することができ、(b)高速の回路が不要で、(c)外乱光に強く、(d)測定対象を選ばないといった従来の自己結合型のレーザ計測器の利点を活かしつつ、測定対象12との距離だけでなく、測定対象12の速度も計測することができる。また、本実施の形態によれば、測定対象12が等速度運動しているか加速度運動しているかを判定することができる。
【0046】
図7によれば、測定対象12が微小変位状態で移動している場合、測定対象12の速度0.0005m/期間に対し、計測した速度Vα(t)も0.0005m/期間であり、速度の計測結果が真値と一致していることが分かる。図14に、図7の例で計測した距離Lα(t)と距離の真値とを示す。図14によれば、距離の計測結果が真値と一致していることが分かる。
【0047】
図8によれば、測定対象12が変位状態で移動している場合、測定対象12の速度0.002m/期間に対し、計測した速度Vβ(t)も0.002m/期間であり、速度の計測結果が真値と一致していることが分かる。図15に、図8の例で計測した距離Lβ(t)と距離の真値とを示す。図15によれば、距離の計測結果が真値と一致していることが分かる。
【0048】
図16に、測定対象12が微小変位状態で振動している場合の図9の例で計測した速度Vα(t)と速度の真値とを示し、図17に図9の例で計測した距離Lα(t)と距離Lα(t)の平均値と距離の真値とを示す。図16、図17によれば、速度の計測結果が真値と一致し、距離及び距離の平均値の計測結果が真値と一致していることが分かる。
【0049】
図18に、測定対象12が変位状態で振動している場合の図11の例で計測した速度Vβ(t)と速度の真値とを示し、図19に図11の例で計測した距離Lβ(t)と距離Lβ(t)の平均値と距離の真値とを示す。図18、図19によれば、速度の計測結果が真値と一致し、距離の平均値の計測結果が真値と一致していることが分かる。
【0050】
また、本実施の形態における演算装置9は、例えばCPU、記憶装置およびインタフェースを備えたコンピュータとこれらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。このようなコンピュータを演算装置9として動作させるためのプログラムは、フレキシブルディスク、CD−ROM、DVD−ROM、メモリカードなどの記録媒体に記録された状態で提供される。CPUは、読み込んだプログラムを記憶装置に書き込み、このプログラムに従って本実施の形態で説明した処理を実行する。また、本発明の表示装置10には、測定対象の距離(変位)と、測定対象の速度とが、リアルタイムで同時に表示される。
【0051】
なお、測定対象12が非常に小さな変位を持つ振動時(例えば最大速度2nm)、実際の距離の変化(振幅)は数nmであるが、距離算出の分解能が変位分解能よりも低いため、誤差が大きくなる。そこで、測定対象が微小な変位を有する運動状態にある場合、算出結果の代わりに、変位(速度)を積分した値を距離の変化とした方が精度が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、測定対象との距離及び測定対象の速度を計測する技術に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施の形態となる距離・速度計の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態における半導体レーザの発振波長の時間変化の1例を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態における半導体レーザの発振波長の時間変化の他の例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態における電流−電圧変換増幅器の出力電圧波形及び微分回路の出力電圧波形を模式的に示す図である。
【図5】本発明の実施の形態における演算装置の構成の1例を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施の形態における演算装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態において測定対象が微小変位状態で移動している場合の速度の候補値と履歴変位の1例を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態において測定対象が変位状態で移動している場合の速度の候補値と履歴変位の1例を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態において測定対象が微小変位状態で振動している場合の速度の候補値と履歴変位の1例を示す図である。
【図10】図9の一部を拡大した図である。
【図11】本発明の実施の形態において測定対象が変位状態で振動している場合の履歴変位の1例を示す図である。
【図12】図11の一部を拡大した図である。
【図13】本発明の実施の形態における演算装置の状態判定部の判定動作を示す図である。
【図14】本発明の実施の形態において測定対象が微小変位状態で移動している場合に計測した距離と距離の真値とを示す図である。
【図15】本発明の実施の形態において測定対象が変位状態で移動している場合に計測した距離と距離の真値とを示す図である。
【図16】本発明の実施の形態において測定対象が微小変位状態で振動している場合に計測した速度と速度の真値とを示す図である。
【図17】本発明の実施の形態において測定対象が微小変位状態で振動している場合に計測した距離と距離の平均値と距離の真値とを示す図である。
【図18】本発明の実施の形態において測定対象が変位状態で振動している場合に計測した速度と速度の真値とを示す図である。
【図19】本発明の実施の形態において測定対象が変位状態で振動している場合に計測した距離と距離の平均値と距離の真値とを示す図である。
【図20】従来のレーザ計測器における半導体レーザの複合共振器モデルを示す図である。
【図21】半導体レーザの発振波長と内蔵フォトダイオードの出力波形との関係を示す図である。
【図22】モードホッピング現象によって不連続となった周波数の幅の大きさを示す図である。
【符号の説明】
【0054】
1…半導体レーザ、2…フォトダイオード、3…レンズ、4…レーザドライバ、5…電流−電圧変換増幅器、6、7…微分回路、8…計数回路、9…演算装置、10…表示装置、11…信号抽出回路、12…測定対象、91…距離・速度算出部、92…履歴変位算出部、93…記憶部、94…状態判定部、95…距離・速度確定部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象にレーザ光を放射する半導体レーザと、
発振波長が連続的に単調増加する期間を少なくとも含む第1の発振期間と発振波長が連続的に単調減少する期間を少なくとも含む第2の発振期間とが交互に少なくとも2期間存在するように前記半導体レーザを動作させるレーザドライバと、
前記半導体レーザから放射されたレーザ光と前記測定対象からの戻り光とを電気信号に変換する受光器と、
この受光器の出力信号に含まれる、前記半導体レーザから放射されたレーザ光と前記測定対象からの戻り光とによって生じる干渉波形の数を、前記第1の発振期間の少なくとも一部と前記第2の発振期間の少なくとも一部の各々について数える計数手段と、
この計数手段によって干渉波形の数を数える期間における最小発振波長と最大発振波長と前記計数手段の計数結果とから前記測定対象との距離及び前記測定対象の速度の少なくとも一方を算出する演算手段とを有することを特徴とする距離・速度計。
【請求項2】
測定対象にレーザ光を放射する半導体レーザと、
発振波長が連続的に単調増加する期間を少なくとも含む第1の発振期間と発振波長が連続的に単調減少する期間を少なくとも含む第2の発振期間とが交互に少なくとも2期間存在するように前記半導体レーザを動作させるレーザドライバと、
前記半導体レーザの光出力を電気信号に変換する受光器と、
この受光器の出力信号に含まれる、前記半導体レーザから放射されたレーザ光と前記測定対象からの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形の数を、前記第1の発振期間の少なくとも一部と前記第2の発振期間の少なくとも一部の各々について数える計数手段と、
前記半導体レーザの各発振期間における最小発振波長と最大発振波長と前記計数手段の計数結果とから前記測定対象との距離及び前記測定対象の速度の少なくとも一方を算出する演算手段とを有することを特徴とする距離・速度計。
【請求項3】
請求項2記載の距離・速度計において、
前記演算手段は、
前記半導体レーザの最小発振波長と最大発振波長と前記計数手段の計数結果に基づいて前記測定対象との距離の候補値と前記測定対象の速度の候補値とを算出する距離・速度算出部と、
この距離・速度算出部で算出された距離の候補値と前回に算出された距離の候補値との差である履歴変位を算出する履歴変位算出部と、
前記距離・速度算出部と前記履歴変位算出部の算出結果に基づいて前記測定対象の状態を判定する状態判定部と、
この状態判定部の判定結果に基づいて前記測定対象との距離及び前記測定対象の速度の少なくとも一方を確定する距離・速度確定部とからなることを特徴とする距離・速度計。
【請求項4】
請求項3記載の距離・速度計において、
前記距離・速度算出部と前記履歴変位算出部は、前記測定対象の状態を微小変位状態あるいは前記微小変位状態よりも動きが急な変位状態のいずれかであるとし、前記測定対象が微小変位状態にあると仮定した場合と変位状態にあると仮定した場合の各々について前記距離の候補値と前記速度の候補値と前記履歴変位とを、前記第1の発振期間と前記第2の発振期間とを合わせた周期毎に算出し、
前記状態判定部は、前記距離・速度算出部と前記履歴変位算出部の算出結果に基づいて前記測定対象が微小変位状態にあるか変位状態にあるかを前記算出毎に判定すると共に、前記測定対象が等速度運動しているか加速度運動しているかを前記算出毎に判定することを特徴とする距離・速度計。
【請求項5】
請求項4記載の距離・速度計において、
前記状態判定部は、前記測定対象が微小変位状態にあると仮定して算出された前記履歴変位の符号が一定で、かつ前記測定対象が微小変位状態にあると仮定して算出された前記速度の候補値と前記測定対象が微小変位状態にあると仮定して算出された前記履歴変位の絶対値の平均値とが等しい場合、前記測定対象が微小変位状態で等速度運動していると判定することを特徴とする距離・速度計。
【請求項6】
請求項4記載の距離・速度計において、
前記状態判定部は、前記測定対象が変位状態にあると仮定して算出された前記履歴変位の符号が一定で、かつ前記測定対象が変位状態にあると仮定して算出された前記速度の候補値と前記測定対象が変位状態にあると仮定して算出された前記履歴変位の絶対値の平均値とが等しい場合、前記測定対象が変位状態で等速度運動していると判定することを特徴とする距離・速度計。
【請求項7】
請求項4記載の距離・速度計において、
前記状態判定部は、前記測定対象が微小変位状態にあると仮定して算出された前記履歴変位の符号が前記算出毎に反転し、かつ前記測定対象が微小変位状態にあると仮定して算出された前記速度の候補値と前記測定対象が微小変位状態にあると仮定して算出された前記履歴変位の絶対値の平均値とが一致しない場合、前記測定対象が微小変位状態で加速度運動していると判定することを特徴とする距離・速度計。
【請求項8】
請求項4記載の距離・速度計において、
前記状態判定部は、前記測定対象が変位状態にあると仮定して算出された前記速度の候補値の絶対値が前記半導体レーザの波長変化率と等しく、かつ前記測定対象が微小変位状態にあると仮定して算出された前記速度の候補値と前記測定対象が微小変位状態にあると仮定して算出された前記履歴変位の絶対値の平均値とが一致しない場合、前記測定対象が微小変位状態で加速度運動していると判定することを特徴とする距離・速度計。
【請求項9】
請求項4記載の距離・速度計において、
前記状態判定部は、前記測定対象が変位状態にあると仮定して算出された前記履歴変位の符号が前記算出毎に反転し、かつ前記測定対象が変位状態にあると仮定して算出された前記速度の候補値と前記測定対象が変位状態にあると仮定して算出された前記履歴変位の絶対値の平均値とが一致しない場合、前記測定対象が変位状態で加速度運動していると判定することを特徴とする距離・速度計。
【請求項10】
請求項4記載の距離・速度計において、
前記状態判定部は、前記測定対象が微小変位状態にあると仮定して算出された前記速度の候補値の絶対値が前記半導体レーザの波長変化率と等しく、かつ前記測定対象が変位状態にあると仮定して算出された前記速度の候補値と前記測定対象が変位状態にあると仮定して算出された前記履歴変位の絶対値の平均値とが一致しない場合、前記測定対象が変位状態で加速度運動していると判定することを特徴とする距離・速度計。
【請求項11】
請求項2記載の距離・速度計において、
前記演算手段は、前記測定対象が微小な変位を有する運動状態にある場合、前記算出の結果の代わりに、前記変位の積分結果を前記測定対象との距離の変化とすることを特徴とする距離・速度計。
【請求項12】
波長変調した波を測定対象に放射し、測定対象に反射して戻る波と前記放射した波との間で発生する干渉を検出し、この干渉に関する情報に基づいて、測定対象との距離および測定対象との速度の候補値をそれぞれ算出すると共にこれらの候補値の中から該当する速度および距離の値をそれぞれ1つずつ選択することを特徴とする距離・速度計測方法。
【請求項13】
半導体レーザを用いて測定対象にレーザ光を放射する距離・速度計測方法において、
発振波長が連続的に単調増加する期間を少なくとも含む第1の発振期間と発振波長が連続的に単調減少する期間を少なくとも含む第2の発振期間とが交互に少なくとも2期間存在するように前記半導体レーザを動作させる発振手順と、
前記半導体レーザの光出力を電気信号に変換する受光器の出力信号に含まれる、前記半導体レーザから放射されたレーザ光と前記測定対象からの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形の数を、前記第1の発振期間の少なくとも一部と前記第2の発振期間の少なくとも一部の各々について数える計数手順と、
この計数手順によって干渉波形の数を数える期間における最小発振波長と最大発振波長と前記計数手順の計数結果とから前記測定対象との距離及び前記測定対象の速度の少なくとも一方を算出する演算手順とを備えることを特徴とする距離・速度計測方法。
【請求項14】
請求項13記載の距離・速度計測方法において、
前記演算手順は、前記測定対象が微小な変位を有する運動状態にある場合、前記算出の結果の代わりに、前記変位の積分結果を前記測定対象との距離の変化とすることを特徴とする距離・速度計測方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2006−313080(P2006−313080A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−134980(P2005−134980)
【出願日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】