説明

距離測定装置および距離補正手段

【課題】第1の発受信手段と第2の発受信手段との間で、単一の無線周波数を用いて、時分割で相互間の通信を行い、相互間の距離を高精度で測定できる距離測定装置および距離補正手段を安価に実現する。
【解決手段】第1の発受信手段から少なくとも起点信号を含む無線信号を間欠発信し、第2の発受信手段で前記無線信号を受信すると、受信した無線信号から前記起点信号を復調しするとともに、伝達位相誤差もしくは伝達遅延誤差を検出して補正し、前記補正した起点信号と同期した距離測定信号を含む無線信号を時分割のタイミングで折返し発信し、前記第1の発受信手段において、前記第2の発受信手段から受信した距離測定信号を復調するとともに、伝達位相誤差もしくは伝達遅延誤差を検出して補正し、自局で生成した起点信号を基準として前記補正した距離測定信号の伝達位相もしくは伝達遅延を測定して、相互間の距離を高精度で算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、第1の発受信手段と第2の発受信手段との間で、単一の無線周波数を用いて、時分割で相互間の通信を行うことによって、相互間の距離を高精度で測定できる距離測定装置およびおよび距離補正手段に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の無線通信機の間で相互通信を行ない相互間の距離を測定するための、距離補正手段を有する距離測定装置が提案されている。(例えば、特許文献1参照)
【特許文献1】特開2009−162488号公報
【0003】
図7は、特許文献1に記載されている従来の「無線端末装置およびゲイン調整方法」の実施例である。図7において、信号の送受信を行う無線通信部1と、無線通信部1による送受信信号の信号レベルを増幅する信号増幅・フィルタ部3と、増幅された送受信信号のうち、予め設定された所定の検出閾値よりも大きい信号レベルの信号を送信信号または受信信号として検出するADC4と、ADC4による検出結果に基づく無線通信の信号の往復時間から電波伝播遅延時間を計測して相手無線端末装置との間の距離を求めるとともに、信号増幅・フィルタ部3のゲイン調整を行う測定制御・時間計測部5とを備え、上記往復時間の測定時に、送信信号と受信信号との信号レベルを合わせることで、電波減衰による距離測定精度の低下を防止するよう構成されている。
【0004】
前記のように、従来の距離測定精度の低下を防止するための手段は、複数の無線端末装置間での相互通信によって、無線通信の信号の往復時間から電波伝播遅延時間を計測して相手無線端末装置との間の距離を求める距離測定装置に適用するためのものであり、無線通信の相互間の伝搬位相遅延を計測して相手無線端末装置との間の距離を求める距離測定装置には適用できない問題点があり、更に、電波減衰による距離測定精度の低下は個別の装置によって異なることから、一律に防止するための手段では、個別の装置に対応できない問題点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、第1の発受信手段と第2の発受信手段との間で、単一の無線周波数を用いて、時分割で相互間の通信を行うことにより、相互間の距離を高精度でしかも短時間で測定できる距離測定装置および距離補正手段を安価に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係わる距離測定装置では、前記第1の発受信手段が、起点信号を含む無線信号をバースト信号として、前記第2の発受信手段に向けて間欠発信し、前記第2の発受信手段が、前記第1の発受信手段から発信された起点信号を含む無線信号を受信すると、前記受信した起点信号と高精度で同期した距離測定信号を含む無線信号を前記第1の発受信手段に向けて、時分割のタイミングで発信し、前記第1の発受信手段において、前記第2の発受信手段から発信された無線信号を受信して前記距離測定信号を復調し、前記自局で生成した起点信号と同期したクロック信号を用いて前記復調した距離測定信号の位相を測定して、前記第1の発受信手段と第2の発受信手段との間の距離を高精度で測定するための誤差検出・補正手段を有する。
【0007】
更に、前記誤差検出・補正手段が、前記第1の発受信手段の第1の受信手段、第1の制御手段、もしくはこれらの両方に設けられ、前記第2の発受信手段の第2の受信手段、第2の制御手段、もしくはこれらの両方に設けられ、あるいは前記第1の発受信手段および第2の発受信手段の両方に設けられ、前記誤差検出・補正手段において補正値および補正係数を設けて距離の補正を行ない、あるいは受信入力を測定するための受信入力測定手段と、前記受信入力測定手段によって制御される移相手段もしくは遅延手段とから構成され、前記受信入力の測定値の変化に従って、前記移相手段の伝達位相もしくは伝達遅延時間を制御し、あるいは前記受信入力測定手段と、前記起点信号もしくは距離測定信号を復調するための信号復調手段の後段に設けられた移相手段とから構成され、前記受信入力の測定値の変化に従って、前記移相手段の伝達位相を制御し、あるいはこれらの組み合わせによって距離の測定誤差を軽減させることによって、高精度の距離測定装置を実現する。
【発明の効果】
【0008】
このように、本発明の距離測定装置では、第1の発受信手段と第2の発受信手段との間で、単一の無線周波数を用いたバースト信号によって相互間の通信を行うことで、安価な装置によって、相互間の距離を短時間でしかも高精度に算出できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施の形態による距離測定装置の構成図
【図2】本発明の第1の実施の形態による制御タイミングチャート
【図3】本発明の第1の実施の形態による受信入力と測定誤差との関係を示す図
【図4】本発明の第1の実施の形態による制御フローチャート
【図5】本発明の第1の実施の形態による発受信手段の構成図
【図6】本発明の第1の実施の形態による発受信手段の他の構成図
【図7】従来の実施例を示す構成図
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
この発明に係わる距離測定装置は、図1〜図6、および請求項1に本発明の第1の実施の形態を示すように、無線信号を用いて第1の発受信手段と第2の発受信手段との間の距離を測定する距離測定装置において、前記第1の発受信手段が、前記無線信号を、時分割のタイミングでバースト信号として発信するための第1の発信手段と、前記無線信号を、時分割のタイミングで受信するための第1の受信手段と、前記第1の発信手段と第1の受信手段とを制御するための第1の制御手段と、前記第1の発信手段と第1の受信手段との間で、アンテナあるいは送受波器を時分割で切替えあるいは共有するための第1のアンテナ切替手段とから構成される。
【0011】
また、前記第2の発受信手段が、前記無線信号を、時分割のタイミングでバースト信号として発信するための第2の発信手段と、前記無線信号を、時分割のタイミングで受信するための第2の受信手段と、前記第2の発信手段と第2の受信手段とを制御するための第2の制御手段と、前記第2の発信手段と第2の受信手段との間で、アンテナあるいは送受波器を時分割で切替えあるいは共有するための第2のアンテナ切替手段とから構成される。
【0012】
また、前記第1の発受信手段が、少なくとも起点信号を含む無線信号を間欠発信し、前記第2の発受信手段が、前記第1の発受信手段から間欠発信された無線信号を受信して前記起点信号を復調し、第2の同期確立・保持手段を設けて、前記起点信号と高精度で同期した距離測定信号を生成するとともに、第2の擬似信号生成手段と第2の誤差検出・補正手段とを設けて、自局に内在する伝達位相誤差もしくは伝達遅延誤差を検出して位相補正を行い、時間補正を行い、あるいはこれらの両方を行い、前記補正後の距離測定信号を含む無線信号を前記第1の発受信手段に向けて時分割のタイミングで折返して発信する。
【0013】
また、前記第1の発受信手段が、前記第2の発受信手段から折返して発信された無線信号を受信して前記距離測定信号を復調するとともに、第1の擬似信号生成手段と第1の誤差検出・補正手段とを設けて、自局に内在する伝達位相誤差を検出して位相補正を行い、時間補正を行い、あるいはこれらの両方を行い、自局から発信した起点信号を基準として前記復調した距離測定信号の位相もしくはタイミングを測定し、前記第2の発受信手段との間の相対的な距離を算出することを特徴とする。
【0014】
また、請求項2に示すように、前記誤差検出・補正手段が、前記伝達位相誤差もしくは伝達遅延誤差を、少なくとも補正値と補正係数とを設けて検出し、曲線近似を行い、あるいはこれらの両方を行う。
また、請求項3に示すように、前記誤差検出・補正手段が、前記第1の発受信手段、前記第2の発受信手段、もしくはこれらの両方の出荷試験時、起動時、距離測定時、あるいは必要なタイミングで、前記伝達位相誤差もしくは伝達遅延誤差を検出し、内部メモリに直線近似、曲線近似、もしくはこれらの組み合わせで記憶する。
また、請求項4に示すように、前記誤差検出・補正手段が、前記復調された起点信号もしくは距離測定信号から検出された伝達位相誤差もしくは伝達遅延誤差を補正するために、デジタル制御されあるいはタップにより切り替えられる移相制御手段もしくは遅延制御手段を設ける。
【0015】
また、請求項5に示すように、前記擬似信号生成手段が中間周波信号を生成し、低雑音増幅器、ミキサ、中間周波フイルタ、中間周波信号増幅器、信号復調手段、アナログ回路、もしくはこれらの組み合わせの入力端子に、必要に応じて結合しあるいは注入する。
また、請求項6に示すように、前記擬似信号生成手段が、可変抵抗減衰器、伝達位相等価可変減衰器、伝達遅延時間等価減衰器、あるいはこれらの組み合わせを含み、前記擬似信号生成手段の伝達位相誤差もしくは伝達遅延誤差が、必要な結合量あるいは注入レベルに対して規定値内である。
【0016】
また、請求項7に示すように、前記第1の制御手段、第2の制御手段、あるいはこれらの両方が同期確立・保持手段を有し、前記復調された起点信号もしくは距離測定信号のゼロ交差点を高い周波数のサンプリング信号によって検出し、前記検出されたゼロ交差点のタイミングで、前記サンプリング信号を分周して距離測定信号を生成するためのカウンタをセットしあるいはリセットすることによって同期を確立し・保持させる。
また、請求項8に示すように、前記第1もしくは第2の受信手段に内蔵する擬似信号生成手段と、前記第1もしくは第2の発信手段に内蔵する変調・増幅手段とが、共通の変調・増幅回路、可変減衰回路、あるいはこれらの両方を有する。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態による距離測定装置の構成図である。図1において、101aは第1の発受信手段、101bは第2の発受信手段、11a、11bは制御手段、12a、12bは発信手段、13a、13bは受信手段、14a、14bはアンテナ切替手段、15a、15bはアンテナもしくは送受波器、16は無線の伝搬路である。前記第1の発受信手段101aと第2の発受信手段101bは、単一の周波数の無線信号を用い、時分割同時通信により、伝搬路16を介して双方向通信を行い、相互間の相対距離を測定する過程で、前記受信手段、制御手段、もしくはこれらの両方が、距離補正手段を有し距離測定誤差を補正する。
【0018】
なお、第1の発受信手段、第2の発受信手段、もしくはこれらの両方のアンテナ又は送受波器は、無指向性アンテナあるいは指向性アンテナが用いられ、特に、90°以上の広い指向性ビーム幅を有する円偏波指向性アンテナを用いる場合には、前記第2の発受信手段と第1の発受信手段との間で、指向性の方向が双方向通信の相手方に向けて、お互いに対向して設けることで、距離の測定精度を飛躍的に改善することができる。
【0019】
図2は、本発明の第1の実施の形態による距離測定装置のタイミングチャートである。図2において、21aは第1の発受信手段101aから発信される起点信号、21bは第2の発受信手段101bよって復調される起点信号、22は前記第1の発受信手段から第2の発受信手段に向けて起点信号が伝搬する伝搬経路、23aは前記第2の発受信手段よって復調された起点信号に同期して生成される距離測定信号、23bは前記第1の発受信手段によって復調された距離測定信号、24は前記第2の発受信手段から第1の発受信手段に向けて距離測定信号が伝搬する伝搬経路、25は前記第1の発受信手段の発信のタイミングから第2発受信手段の発信のタイミングまでの時分割の間隔、26は前記第1の発受信手段から発信される起点信号と前記第1の発受信手段によって復調される距離測定信号との位相差、27aは前記第1の発受信手段の発信手段の時間軸、27bは前記第1の発受信手段の受信手段の時間軸、28aは前記第2の発受信手段の受信手段の時間軸、28bは前記第2の発受信手段の発信手段の時間軸である。
【0020】
前記第1の発受信手段から発信される前記起点信号21aをASin(2πf1t)とすると、前記起点信号21aが、距離L(m)の伝搬経路22を伝搬し、前記第2の発受信手段によって受信され、起点信号21bとして復調されると、BSin{2πf1t+(2πLf1/C)}に位相が変化する。
前記復調された起点信号21bと同期した距離測定信号23aを生成すると、生成された距離測定信号23aは、同じくBSin{2πf1t+(2πLf1/C)}で表される。
【0021】
前記時分割の間隔25の後に、前記生成された距離測定信号23aが、前記第2の発受信手段から発信され、再び、距離L(m)の伝搬経路16を伝搬し、前記第1の発受信手段で復調される距離測定信号23bは、CSin{2πf1t+(4πLf1/C)}で表わされる。ここで、Cは光の速度とする。
そこで、前記第1の発受信手段で生成された起点信号21aと同期しあるいは直交し、周波数が前記起点信号の整数倍のクロック信号を用い、前記復調された距離測定信号23bの位相を測定すると、前記第1の発受信手段で生成された起点信号21aと前記第1の発受信手段で復調された距離測定信号23bとの位相差26が測定され、ΔΦ={4πLf1/C}となることから、L={CΔΦ/4πf1}から、距離L(m)が算出できる。
なお、距離測定の際に、伝搬位相差を測定する代わりに、伝搬遅延時間を測定しても同様な効果が得られる。
【0022】
図3は、本発明の第1の実施の形態による距離測定装置の受信入力と伝達位相および距離の測定誤差との関係を例示する図である。図3において、第1の発受信手段101aと第2発受信手段101bとの間を可変減衰器で接続し、前記可変減衰器の減衰量を変化させた場合の減衰量と測定された距離との関係を示す。
前記第1の発受信手段と第2発受信手段との間の物理的な距離は一定であるのに対して、測定された距離は減衰量の増加とともに大きくなり、内部で生じる距離の測定誤差が、前記減衰量と等価な受信信号強度(RSSI)の増減に応じて変化するものと考えられることから、適切な誤差検出手段と誤差補正手段とを設けることが必要であることを示唆していることがわかる。
【0023】
なお、図3に示す距離測定誤差は発受信手段1台当りのものであり、双方向通信により距離を測定する場合の測定誤差は2倍となるので、無視できない値である。
また、図3に示す距離測定誤差は、前記発受信手段の特に受信手段の内部で大きな増幅度を有する中間周波増幅器の伝達位相誤差、あるいは伝達遅延誤差に起因するものが大部分を占めており、そのうえ、自動利得制御回路(AGC)によって中間周波増幅器の利得を制御しているために、直線ではなく曲線となっており、複雑な距離補正を行う必要がある。
本発明は、図3に示す距離補正曲線を測定して曲線近似を行い、メモリに記憶し、記憶した内容に従て伝達位相あるいは伝達遅延時間の補正を経済的な方法で実施するためになされたものである。
【0024】
図4は、本発明の第1の実施の形態による制御フローチャートである。図4において、31はスタート、32は第1発受信手段の制御ステップ、33は第2発受信手段の制御ステップ、34は第1発受信手段の制御ステップ、35はENDである。
前記第1発受信手段の制御ステップ32では、第1発受信手段で、起点信号を生成し、起点信号を含む無線信号を間欠発信し、前記第2発受信手段の制御ステップ33では、受信した無線信号から起点信号を復調して同期を確立・保持し、内部で生じる伝達位相誤差もしくは伝達遅延誤差を補正して起点信号と同期した距離測定信号を生成し、距離測定信号を含む無線信号を時分割のタイミングで折返し発信する。
更に、前記第1発受信手段の制御ステップ34では、受信した無線信号から距離測定信号を復調して同期を確立・保持し、内部で生じる伝達位相誤差もしくは伝達遅延誤差を検出・補正し、最初に発信した起点信号を基準として補正した距離測定信号の位相もしくは遅延時間を測定して距離を算出する。
【0025】
図5は本発明の第1の実施の形態による第1の発受信手段の構成図である。図5において、101aは第1の発受信手段、11aは第1の制御手段、12aは第1の発信手段、13aは第2の受信手段、14aは第1のアンテナ切替手段、41は前記第1のアンテナ切替手段の入出力端子、42は前記第1の受信手段への入力端子、43は低雑音増幅器、44はミキサ、45は局発信号発振器、46は中間周波フイルタ、47は中間周波増幅・復調手段、48は受信信号強度測定手段(RSSI)、49は疑似信号生成手段、50a〜50eは接続端子、51は第1の同期確立・保持手段、52は第1の誤差検出・補正手段、53は距離算出手段、54は起点信号生成手段、55は変調・増幅手段、56はロールオフフイルタ、57はミキサ、58は電力増幅器、59は前記第1の発信手段の出力端子である。
【0026】
前記第1の制御手段11aの起点信号生成手段54が間欠的に起動されて識別信号と起点信号が生成され、接続端子50dを介して変調・増幅手段55に入力され、変調されたのち規定の出力に増幅され、ロールオフフイルタ56によって帯域が制限され、ミキサ57によって局部発振器45の出力と混合され、電力増幅器58によって規定の電力まで増幅され、アンテナ切替手段14aによって切替えられてアンテナ15aから空間に放射される。
【0027】
一方、前記第2の発受信手段11bから空間へ放射され、アンテナ15aによって受信され、アンテナ切替手段14aによって切替えられて接続端子42に入力されると、低雑音増幅器42によって増幅され、ミキサ44によって局発信号発振器45の出力と混合されて中間周波信号に変換され、中間周波フイルタ46によって選択された後、増幅・復調手段47によって増幅されて前記距離測定信号が復調され、接続端子50aを介して第1の制御手段11aの同期確立・保持手段51によって前記距離測定信号との同期を確立して保持し、受信信号入力測定手段48によって測定した受信信号強度に対応し、前記誤差検出・補正手段によって検出された伝達位相誤差もしくは伝達遅延誤差を補正し、前記補正された距離測定信号の位相あるいは遅延時間を、前記起点信号生成手段54によって生成された起点信号を基準として前記距離測定手段53によって測定し、前記第2の発受信手段101との距離を高精度で測定し、測定結果を接続端子60を介して外部の表示装置(記載せず)に転送する。
【0028】
なお、前記第1の発受信手段の出荷試験時、起動時、距離測定時、あるいは必要なタイミングで、前記疑似信号生成手段49によって誤差検出信号を生成し、前記第1の受信手段13a内の低雑音増幅器43、ミキサ44、フイルタ46、増幅・復調手段47、あるいはその他の適当な入力端子に結合して前記誤差検出・補正手段52によって伝達位相誤差あるいは伝達遅延誤差を測定し、メモリに記憶しておく必要がある。
また、前記誤差検出・補正手段が、前記伝達位相誤差もしくは伝達遅延誤差を、少なくとも補正値と補正係数とを設けて検出し、曲線近似を行い、あるいはこれらの両方を行う。
【0029】
また、前記構成により、前記誤差検出・補正手段52が、前記第1の受信手段の少なくとも低雑音増幅器、ミキサー、中間周波信号増幅器、信号復調手段、アナログ回路、もしくはこれらの組み合わせの伝達位相誤差もしくは伝達遅延誤差を検出し、補正し、あるいはこれらの両方を行うものとする。
また、前記疑似信号生成手段49が、前記起点信号もしくは距離測定信号により変調された誤差検出信号を生成し、前記受信手段の所定の位置に所定の入力値で結合される。
また、前記疑似信号生成手段49の信号出力の調整が、可変抵抗減衰器、伝達位相等価可変減衰器(伝達位相が一定である可変減衰器)、伝達遅延時間等価可変減衰器(伝達遅延時間が一定である可変減衰器)、あるいはこれらの組み合わせを含み、伝達位相誤差もしくは伝達遅延誤差が、必要な結合量あるいは注入レベルに対して規定値内であるものとする。
【0030】
また、前記第1の制御手段、第2の制御手段、あるいはこれらの両方が同期確立・保持手段を有し、前記復調された起点信号もしくは距離測定信号のゼロ交差点を高い周波数のサンプリング信号によって検出し、前記サンプリング信号を分周して距離測定信号を生成するためのカウンタを、前記ゼロ交差点のタイミングでセットしあるいはリセットする。
また、前記第1もしくは第2の受信手段に内蔵する擬似信号生成手段と、前記第1もしくは第2の発信手段に内蔵する変調・増幅手段とが、共通の回路構成を有し、前記共通の回路構成が、少なくとも、変調・増幅回路、可変減衰回路、あるいはこれらの両方であるものとする。
【0031】
図6は本発明の第1の実施の形態による第2の発受信手段の構成図である。図6において、101bは第2の発受信手段、11bは第2の制御手段、12bは第2の発信手段、13bは前記第2の受信手段、14bは第2のアンテナ切替手段、41は前記第2のアンテナ切替手段の入出力端子、42は前記第2の受信手段への入力端子、43は低雑音増幅器、44はミキサ、45は局発信号発振器、46は中間周波フイルタ、47は中間周波増幅・復調手段、48は受信信号強度測定手段(RSSI)、49は疑似信号生成手段、50a〜50eは接続端子、51は第2の同期確立・保持手段、52は第2の誤差検出・補正手段、53は距離算出手段、54は起点信号生成手段、55は変調・増幅手段、56はロールオフフイルタ、57はミキサ、58は電力増幅器、59は前記第2の発信手段の出力端子である。
【0032】
前記第1の発受信手段11aから空間へ放射された起点信号を含む無線信号が、アンテナ15bによって受信され、アンテナ切替手段14bによって切替えられて接続端子42に入力されると、低雑音増幅器42によって増幅され、ミキサ44によって局発信号発振器45の出力と混合されて中間周波信号に変換され、中間周波フイルタ46によって選択された後、増幅・復調手段47によって増幅されて前記起点信号が復調され、接続端子50aを介して第2の制御手段11bの同期確立・保持手段51によって前記起点信号との同期を確立して保持し、受信信号入力測定手段48によって測定した受信信号強度に対応し、前記誤差検出・補正手段によって検出された伝達位相誤差もしくは伝達遅延誤差を補正し、前記補正された起点信号の位相あるいは遅延時間と同期した距離測定信号を、前記距離測定信号生成手段61によって生成し、前記生成された距離測定信号を接続端子50d介して第2の発信手段12bに転送する。
【0033】
前記第2の制御手段11bの距離測定信号生成手段61が時分割のタイミングで起動されて識別信号と距離測定信号が生成され、接続端子50dを介して変調・増幅手段55に入力され、変調されたのち規定の出力に増幅され、ロールオフフイルタ56によって帯域が制限され、ミキサ57によって局部発振器45の出力と混合された後、電力増幅器58によって規定の電力まで増幅され、アンテナ切替手段14ばによって切替えられてアンテナ15ばから空間に放射される。
【0034】
なお、前記第1の発受信手段の出荷試験時、起動時、距離測定時、あるいは必要なタイミングで、前記疑似信号生成手段49によって誤差検出信号を生成し、前記第1の受信手段13a内の低雑音増幅器43、ミキサ44、フイルタ46、増幅・復調手段47、あるいはその他の適当な入力端子に結合して前記誤差検出・補正手段52によって伝達位相誤差あるいは伝達遅延誤差を測定し、メモリに記憶しておく必要がある。
また、前記誤差検出・補正手段が、前記伝達位相誤差もしくは伝達遅延誤差を、少なくとも補正値と補正係数とを設けて検出し、補正し、あるいはこれらの両方を行う。
【0035】
また、前記構成により、前記誤差検出・補正手段52が、前記第1の受信手段の少なくとも低雑音増幅器、ミキサー、中間周波信号増幅器、信号復調手段、アナログ回路、もしくはこれらの組み合わせの伝達位相誤差もしくは伝達遅延誤差を検出し、補正し、あるいはこれらの両方を行うものとする。
また、前記疑似信号生成手段49が、前記起点信号もしくは距離測定信号により変調された誤差検出信号を生成し、前記受信手段の所定の位置に所定の入力値で結合される。
また、前記疑似信号生成手段49の信号出力の調整が、可変抵抗減衰器、伝達位相等価可変減衰器、伝達遅延時間等価減衰器、あるいはこれらの組み合わせを含み、伝達位相誤差もしくは伝達遅延誤差が、必要な結合量あるいは注入レベルに対して規定値内であるものとする。
【0036】
また、前記第1の制御手段、第2の制御手段、あるいはこれらの両方が同期確立・保持手段を有し、前記復調された起点信号もしくは距離測定信号のゼロ交差点を高い周波数のサンプリング信号によって検出し、前記サンプリング信号を分周して距離測定信号を生成するためのカウンタを、前記ゼロ交差点のタイミングでセットしあるいはリセットすることによって高精度で同期を確立し保持することができる。
また、前記第1もしくは第2の受信手段に内蔵する擬似信号生成手段と、前記第1もしくは第2の発信手段に内蔵する変調・増幅手段とが、共通の回路構成を有し、前記共通の回路構成が、少なくとも、変調・増幅回路、可変減衰回路、あるいはこれらの両方であるものとする。
【0037】
以上の説明では受信入力信号の変動に対応する伝達位相誤差もしくは伝達遅延誤差に関する距離補正手段について記述されているが、前記発受信手段内に内在する固定的あるいは変動的な伝達位相誤差もしくは伝達遅延誤差についても前記誤差検出・補正手段によって検出し、補正し、あるいは両方を行うことが可能であることは言うまでもない。
また、受信手段に設けられた中間周波フイルタの伝達位相が温度によってドリフトするために生じる伝達位相誤差に対しては、前記フイルタの中心周波数あるいはカットオフ周波数の温度変化に対する補正手段を設けるか、温度変動に対して特性が安定な中間周波フイルタを採用するか、前記誤差の検出を頻繁に行う必要がある。
【0038】
また、前記詳細な説明では、主として電波信号を利用する場合について述べたが、超音波信号あるいは光信号を用いても同様な効果が得られることは言うまでもない。なお、前記超音波信号あるいは光信号を用いる場合には、アンテナの代わりに送受話器を用いるものとする。

【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明によれば、複数の発受信手段の間で、時分割による相互通信を行うことによって、短時間に、高精度で、しかも安価な装置を用いて、相互間の距離を高精度で測定することが可能となる。
例えば、高速道路を走行中の車と車の間の距離と方向が瞬時に高精度で各々の側で算出可能となり、協調運転あるいは衝突防止装置などに応用することができ、あるいは、歩行者あるいはロボットなどの自律移動の誘導あるいは制御と、センターからのリモコンおよび監視などとが、同時に可能となる。
なお、本発明の距離測定技術は基盤技術であり、上記以外に多分野での利用が期待できる。
【符号の説明】
【0040】
1 無線通信部
2 アンテナ
3 信号増幅・フイルタ部
4 ADC
5 測定制御・時間計測部
6 信号分配器
101a 第1の発受信手段
101b 第2の発受信手段
11a、11b 制御手段
12a、12b 発信手段
13a、13b 受信手段
14a、14b アンテナ切替手段
15a、15b アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線信号を用いて第1の発受信手段と第2の発受信手段との間の距離を測定する距離測定装置において、
前記第1の発受信手段が、前記無線信号を、時分割のタイミングでバースト信号として発信するための第1の発信手段と、前記無線信号を、時分割のタイミングで受信するための第1の受信手段と、前記第1の発信手段と第1の受信手段とを制御するための第1の制御手段と、前記第1の発信手段と第1の受信手段との間で、アンテナあるいは送受波器を時分割で切替えあるいは共有するための第1のアンテナ切替手段とから構成され、
前記第2の発受信手段が、前記無線信号を、時分割のタイミングでバースト信号として発信するための第2の発信手段と、前記無線信号を、時分割のタイミングで受信するための第2の受信手段と、前記第2の発信手段と第2の受信手段とを制御するための第2の制御手段と、前記第2の発信手段と第2の受信手段との間で、アンテナあるいは送受波器を時分割で切替えあるいは共有するための第2のアンテナ切替手段とから構成され、
前記第1の発受信手段が、少なくとも起点信号を含む無線信号を間欠発信し、
前記第2の発受信手段が、前記第1の発受信手段から間欠発信された無線信号を受信して前記起点信号を復調し、第2の同期確立・保持手段を設けて、前記起点信号と高精度で同期した距離測定信号を生成するとともに、第2の擬似信号生成手段と第2の誤差検出・補正手段とを設けて、自局に内在する伝達位相誤差もしくは伝達遅延誤差を検出して位相補正を行い、時間補正を行い、あるいはこれらの両方を行い、前記補正後の距離測定信号を含む無線信号を前記第1の発受信手段に向けて時分割のタイミングで折返して発信し、
前記第1の発受信手段が、前記第2の発受信手段から折返して発信された無線信号を受信して前記距離測定信号を復調するとともに、第1の擬似信号生成手段と第1の誤差検出・補正手段とを設けて、自局に内在する伝達位相誤差を検出して位相補正を行い、時間補正を行い、あるいはこれらの両方を行い、自局から発信した起点信号を基準として前記復調した距離測定信号の位相もしくはタイミングを測定し、前記第2の発受信手段との間の相対的な距離を算出することを特徴とする距離測定装置および距離補正手段。
【請求項2】
前記請求項第1項において、前記誤差検出・補正手段が、前記伝達位相誤差もしくは伝達遅延誤差を、少なくとも補正値と補正係数とを設けて検出し、曲線近似を行い、あるいはこれらの両方を行うことを特徴とする請求項第1項もしくは第2項に記載する距離測定装置および距離補正手段。
【請求項3】
前記請求項第1項において、前記誤差検出・補正手段が、前記第1の発受信手段、前記第2の発受信手段、もしくはこれらの両方の出荷試験時、起動時、距離測定時、あるいは必要なタイミングで、前記伝達位相誤差もしくは伝達遅延誤差を検出し、内部メモリに記憶することを特徴とする距離測定装置および距離補正手段。
【請求項4】
前記請求項第1項において、前記誤差検出・補正手段が、前記復調された起点信号もしくは距離測定信号から検出された伝達位相誤差もしくは伝達遅延誤差を補正するために、デジタル制御されあるいはタップにより切り替えられる移相制御手段もしくは遅延制御手段を設けることを特徴とする距離測定装置および距離補正手段。
【請求項5】
前記請求項第1項において、前記擬似信号生成手段が中間周波信号を生成し、低雑音増幅器、ミキサ、中間周波フイルタ、中間周波信号増幅器、信号復調手段、アナログ回路、もしくはこれらの組み合わせの入力端子に、必要に応じて結合しあるいは注入することを特徴とする距離測定装置および距離補正手段。
【請求項6】
前記請求項第1項において、前記擬似信号生成手段が、可変抵抗減衰器、伝達位相等価可変減衰器、伝達遅延時間等価減衰器、あるいはこれらの組み合わせを含み、前記擬似信号生成手段の伝達位相誤差もしくは伝達遅延誤差が、必要な結合量あるいは注入レベルに対して規定値内であることを特徴とする距離測定装置および距離補正手段。
【請求項7】
前記請求項第1項において、前記第1の制御手段、第2の制御手段、あるいはこれらの両方が同期確立・保持手段を有し、前記復調された起点信号もしくは距離測定信号のゼロ交差点を高い周波数のサンプリング信号によって検出し、前記検出されたゼロ交差点のタイミングで、前記サンプリング信号を分周して距離測定信号を生成するためのカウンタをセットしあるいはリセットすることによって同期を確立し・保持させることを特徴とする距離測定装置および距離補正手段。
【請求項8】
前記請求項第1項において、前記第1もしくは第2の受信手段に内蔵する擬似信号生成手段と、前記第1もしくは第2の発信手段に内蔵する変調・増幅手段とが、共通の変調・増幅回路、可変減衰回路、あるいはこれらの両方を有することを特徴とする距離測定装置および距離補正手段。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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