説明

距離測定装置及びスキッタ発生方法

【課題】簡単な装置構成で容易に自装置に送信されたパルスを検出する。
【解決手段】航空機が送信した質問パルスを受信し、当該質問パルスに応答する応答パルスを送信するとともに、応答パルスを所定期間送信しないタイミングで、質問パルスと同一フォーマットのスキッタパルスを送信するアンテナ10と、応答パルスを所定期間送信しないタイミングで所定の送信パターンのスキッタパルスを送信させる送信タイミングを発生するとともに、質問パルスを受信したタイミングでスキッタパルスの送信パターンを更新するスキッタ発生器17と、質問パルスを受信したタイミング又はスキッタ発生器で発生された送信タイミングで送信するパルスを発生するパルス発生器20とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機が位置を把握するために航空機との間でスキッタを送受信する距離測定装置及びスキッタ発生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機は様々な方法で位置を特定しながら飛行を行うが、飛行位置の特定に距離測定装置(DME:Distance Measuring Equipment)を利用する方法がある。距離測定装置(DME)は、地上に設置され、航空機から送信される質問パルスを受信すると、受信した質問パルスに応答する応答パルスを航空機に送信する。航空機では、距離測定装置とのパルスの送受信を利用して飛行位置を特定する。
【0003】
航空機は、図3に示す一例のように、質問パルスP1を送信する。航空機から送信された質問パルスP1を受信した距離測定装置は、質問パルスP1を受信してから決められた時間(Td)の経過後、航空機に対して質問パルスP1に応答する応答パルスP2を送信する。航空機は、距離測定装置から送信された応答パルスP2を受信すると、質問パルスP1の送信時刻t1及び応答パルスP2の受信時刻t2とから求められる応答時刻Tと、電波(信号)の伝送速度とに基づいて、距離測定装置から航空機までの距離を測定している。
【0004】
ここで送受信される質問パルスP1及び応答パルスP2は、ツインパルスであり、国際的に運用モード毎のパルス間隔や遅延間隔等が規定されている(例えば、非特許文献1参照)。例えば、DME/Nモードの場合、質問パルスP1及び応答パルスP2のパルス幅は3.5μsで、パルス間隔は12μsである。
【0005】
また、距離測定装置は応答パルスP2を送信する他、応答パルスP2の送信レートが低い場合に、応答パルスP2の代わりにランダムにスキッタパルスを送信するように義務付けられている(例えば、特許文献1参照)。このとき、航空機(側)でスキッタパルスが応答パルスP2であると判断されることがないように、距離測定装置1はスキッタパルスをランダムなタイミングで送信する必要がある。
【0006】
スキッタパルスの送信をランダムにするため、従来の距離測定装置は、アナログ回路で発生する熱雑音を用いてスキッタを発生していた。しかしながら、アナログ回路で発生する熱雑音を利用した場合、外来ノイズの影響を受けやすかったり、スキッタパルスの送信タイミングのパターンに再現性がない問題があった。例えば、スキッタパルスの送信パターンに再現性がない場合、距離測定装置の試験等に利用しにくくなる。
【0007】
これに対し、特許文献1に記載の技術では、ディジタル回路であるシフトレジスタを利用してスキッタパルスの送信タイミングを決定している。この特許文献1に記載されているようにディジタル回路を利用してスキッタパルスの送信パターンを決定した場合、外来ノイズを受けにくくするとともに、スキッタパルスの送信パターンに再現性をもたせることが可能になる。
【0008】
しかしながら、同一のシフトレジスタを利用する距離測定装置が近接するときには、同一の送信パターンのスキッタパルスであるためハーモニック(倍音)として干渉するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−298596号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】“Aeronautical Telecommunications,ANNEX10,VOLUMEI”,1996年7月,27-40頁,ICAO
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したように、アナログ回路で発生する熱雑音を利用してスキッタパルスを発生する方法では外来ノイズの影響を受けやすいとともに試験評価が困難であり、ディジタル回路であるシフトレジスタを利用してスキッタパルスを発生する方法では実運用時に干渉の恐れがあり、設置前の試験時又は設置後の運用時に問題が生じるおそれがあった。
【0012】
したがって本発明は、簡単な装置構成で設置前の試験時及び設置後の運用時に適切なスキッタパルスを発生する距離測定装置及びスキッタ発生方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る距離測定装置装置は、航空機が送信した質問パルスを受信すると、当該質問パルスに応答する応答パルスを送信するとともに、応答パルスを所定期間送信しないタイミングで、前記質問パルスと同一フォーマットのスキッタパルスを送信する距離測定装置であって、応答パルスを前記所定期間送信しないタイミングで所定の送信パターンのスキッタパルスを送信させる送信タイミングを発生するとともに、質問パルスを受信したタイミングでスキッタパルスの送信パターンを更新するスキッタ発生器と、質問パルスを受信したタイミング又は前記スキッタ発生器で発生された送信タイミングで送信するパルスを発生するパルス発生器とを備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、簡単な装置構成で試験評価時及び運用時に適切なスキッタパルスを発生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の最良の実施形態に係る距離測定装置について説明する図である。
【図2】図1の距離測定装置のスキッタ発生器について説明する図である。
【図3】航空機と距離測定装置で送受信されるパルスについて説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1を用いて本発明の最良の実施形態に係る距離測定装置(DME)1について説明する。この距離測定装置1は、地上局に設置され、航空機に備えられるトランスポンダから送信される所定のパルスペアの質問パルスP1を検出し、この質問パルスP1に応答する応答パルスP2を送信する。ここで距離測定装置1が送信する応答パルスP2も、質問パルスP1と同一のパルス波形(パルスペア)の信号である。質問パルスP1を送信した航空機は、パルスペアの信号を受信すると、自機の質問パルスP1送信からパルスペアの受信までの間隔と相関により、自機に対する応答パルスP2であるか否かを判断する。
【0017】
具体的には、距離測定装置1は、図1に示すように、アンテナ10と、サーキュレータ11と、サーキュレータ11を介してアンテナ10で受信する信号(RF信号)を入力して増幅するRFアンプ12と、発振器14から出力される所定の周波数のRF信号と受信信号とをミキシングして中間周波数のIF信号にするミキサ13と、ミキサ13でミキシングされた受信信号から信号レベルを検波する検波器15と、検波器15で検波された信号レベルから質問パルスP1であるパルスペアを検出する検出器16と、応答パルスP2を送信するタイミングで信号を発生する応答発生器19と、応答発生器19から出力された信号に応じてパルスペアを発生するパルス発生器20と、パルス発生器20から出力されるパルスペアの信号と発信器22から出力される所定の周波数のRF信号とミキシングしてRF信号に変換するミキサ21と、ミキサ21でミキシングされた信号を増幅し、サーキュレータ11及びアンテナ10を介して送信するRFアンプ23とを備えている。
【0018】
また、距離測定装置1は、応答パルスP2の送信レートが所定以下の場合、応答パルスP2とは別に所定の送信レート(例えば、1000pps)を満たすようにランダムな送信パターンで、応答パルスP2と同じパルス波形のスキッタパルスを送信する。そのため、距離測定装置1は、スキッタ発生器17とOR回路18を備えている。
【0019】
スキッタ発生器17は、検出器16から質問パルスP1を検出したタイミングでRXトリガ(RXTr)を入力する。また、スキッタ発生器17は、応答パルスP2を所定レートで送信しない場合、すなわち質問パルスP1を所定期間受信しない場合にスキッタパルスを送信させるタイミングを求めてスキッタトリガ(STr)を出力する。
【0020】
OR回路18は、応答パルスP2又はスキッタパルスを送信するタイミングを入力して出力する。具体的には、OR回路18は、質問パルスP1を受信したタイミング、すなわち応答パルスP2を送信するタイミングで検出器16からRXトリガを入力し、スキッタパルスを送信するタイミングでスキッタトリガを入力する。したがって、OR回路18は、RXトリガ又はスキッタトリガのいずれかを入力すると、パルスの送信タイミングを特定するTXトリガ(TXTr)を出力する。これにより、応答発生器19は、応答パルスP2又はスキッタパルスを送信させることができる。
【0021】
スキッタ発生器17は、図2に示すように、OR回路171、タイマ172、乱数発生器173及び分周器174を有している。タイマ172は、OR回路18から入力するTXトリガによりクリアされ、応答パルスP2の送信レートに基づいて定められた所定時間後にタイムアウトとなって信号を出力する。OR回路171は、検出器16から入力するRXトリガとタイマ172から入力する信号との演算結果を乱数発生器173と分周器174に出力する。
【0022】
乱数発生器173は、LFSR(linear feedback shift register:線形帰還シフトレジスタ)等のシフトレジスタであって、RXトリガ又はタイマ172からの信号を入力するとクロックを進めて乱数を求め、この乱数をスキッタパルスの送信タイミング(パルス分布)として出力する。例えば、質問パルスP1を受信しない場合にはタイマ172から所定時間毎に信号が出力されて乱数発生器173のクロックが進められてスキッタパルスの送信タイミングが特定される。
【0023】
したがって、距離測定装置1が質問パルスP1の受信がない間は、乱数発生器173が出力するスキッタパルスの送信タイミングはLFSR固有の既知のパターンの繰り返しとなる。これに対し、距離測定装置1が質問パルスP1を受信した場合にはRXトリガが入力されて乱数発生器173のクロックが変化するため、スキッタパルスの送信タイミングも変化するため、既知のパターンとは異なったものとなる。なお、このとき、乱数発生器173に利用するシフトレジスタには、系列が検証済みで周期の十分長い(例えば、16bit以上の最長周期を持つもの)LFSRを利用する。
【0024】
分周器174は、乱数発生器173から入力するタイミングを所定の応答パルスP2の送信レートに応じて定められる分周比で分周し、スキッタトリガとして出力する。この分周器174でも、RXトリガ又はタイマ172からの信号を入力するとクロックを進める。すなわち、距離測定装置1が質問パルスP1の受信がない間は、LRSRはタイマ119でタイムアウトとされる所定期間毎に変化するが、質問パルスP1を受信した場合にはRXトリガを入力によりLRSRが変化する。
【0025】
乱数発生器173の出力は、1/2の確率で1(又は0)なので、1000ppsを目標レートとした場合、例えば、タイマを250μs(1/4000秒)とし、分周比を2とすることができる。すなわち、250μs×(2+2)=1000μs=1/1000で、1000ppsとなる。
【0026】
また、分周器で1/2にすると合わせて4倍となる。したがって、タイマを125μs(1/8000秒)とし、分周比を4とすることもできる。すなわち、125μs×(4×2)=1000μs=1/1000で、ほぼ1000ppsになる。
【0027】
このように、本発明に係る距離測定装置1では、スキッタ発生器17によって、質問パルスを受信しない場合(RXトリガを入力しない場合)には純粋な乱数発生器173のシフトレジスタによって定められる送信パターンでスキッタパルスを発生し、このスキッタパルスのパルス分布や出現確率(送信パターン)は既知のものとすることができる。したがって、距離測定装置1を地上局に設置前等の試験環境等においてはRXトリガを抑制することにより、スキッタパルスの発生状況や距離測定装置1の動作を確実に試験し、モニタすることができる。
【0028】
また、距離測定装置1を地上局に設置後の運用時には、質問パルスP1の受信によりRXトリガが入力されて乱数発生器173のクロックが進められるため、発生するビット列すなわちスキッタパルスの送信パターンが変化するため、近隣に同じ型の距離測定装置が存在している場合であっても、干渉する可能性はきわめて低くなる。
【0029】
したがって、上述した距離測定装置1は、地上局に設置前の試験環境であっても、地上局に設置後の運用時であっても適切なスキッタパルスを送信することができる。
【符号の説明】
【0030】
1…距離測定装置
10…アンテナ
11…サーキュレータ
12…RFアンプ
13…ミキサ
14…発振器
15…検波器
16…検出器
17…スキッタ発生器
171…OR回路
172…タイマ
173…乱数発生器
174…分周器
18…OR回路
19…応答発生器
20…パルス発生器
21…ミキサ
22…発信器
23…RFアンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機が送信した質問パルスを受信すると、当該質問パルスに応答する応答パルスを送信するとともに、応答パルスを所定期間送信しないタイミングで、前記質問パルスと同一フォーマットのスキッタパルスを送信する距離測定装置であって、
応答パルスを前記所定期間送信しないタイミングで所定の送信パターンのスキッタパルスを送信させる送信タイミングを発生するとともに、質問パルスを受信したタイミングでスキッタパルスの送信パターンを更新するスキッタ発生器と、
質問パルスを受信したタイミング又は前記スキッタ発生器で発生された送信タイミングで送信するパルスを発生するパルス発生器と、
を備えることを特徴とする距離測定装置。
【請求項2】
前記パルス発生器は、
応答パルス又はスキッタパルスを送信後所定期間経過したか否かのタイミングを判定するタイマと、
質問パルスを受信したタイミング又は前記タイマによって応答パルス又はスキッタを送信後所定期間経過したと判定されたタイミングで、スキッタパルスの送信パターンを特定する乱数を発生する乱数発生手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の距離測定装置。
【請求項3】
前記パルス発生器は、前記乱数発生手段で特定された乱数を分周してスキッタパルスの送信タイミングを求める分周器を備えることを特徴とする請求項2に記載の距離測定装置。
【請求項4】
航空機が送信した質問パルスを受信すると、当該質問パルスに応答する応答パルスを送信するとともに、応答パルスを所定期間送信しないタイミングで、前記質問パルスと同一フォーマットのスキッタパルスを送信する距離測定装置で利用されるパルス発生方法であって、
応答パルスを前記所定期間送信しないタイミングで所定の送信パターンのスキッタパルスを送信させる送信タイミングを発生するステップと、
質問パルスを受信したタイミングでスキッタパルスの送信パターンを更新するステップと、
質問パルスを受信したタイミング又は前記スキッタパルスの送信タイミングで送信するパルスを発生するステップと、
を備えることを特徴とするスキッタ発生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−185658(P2011−185658A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49375(P2010−49375)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】