説明

距離測定装置及びプログラム

【課題】異なる波長特性を有する複数の撮像手段を用いて、特定の対象物までの距離を精度よく測定することができるようにする。
【解決手段】各々感度を有する波長帯が異なる第1撮像装置12及び第2撮像装置14によって、各々異なる視点から所定領域を撮像する。対象物抽出部32によって、撮像された撮像画像の各々から、人間の肌についての光の波長帯の各々の反射強度に関する予め定められた条件に基づいて、人間の肌領域を抽出する。位置合わせ部34によって、撮影画像の各々から抽出された人間の肌領域の位置合わせを行って、人間の肌領域における視差量を算出する。距離測定部36によって、算出された視差量に基づいて、人物までの距離を測定し、分光データ生成部38によって、人間の肌領域の分光データを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、距離測定装置及びプログラムに係り、特に、複数の撮像手段によって撮像した画像から、特定の対象物までの距離を測定する距離測定装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複雑な3次元対象の位置・姿勢検出および認識を目的としたシステムが開発されており、例えば、両眼視による濃淡画像から抽出されたエッジを基本要素として対象の3次元形状を復元する3次元ビジョンシステムが知られている(非特許文献1)。この3次元ビジョンシステムでは、視差が出るように配置された2台の同一のカメラにより取得した画像に対してエッジ検出処理を行い、検出されたエッジの類似度を測ることで対象の3次元形状を復元している。
【0003】
また、多くのバンド数を測定可能で、各バンドの分光画像の位置ずれがない分光測定方法が知られている(特許文献1)。この分光測定方法では、基準カメラと参照カメラとを用いて被測定物を撮影し、参照カメラにより作成された参照画像データを、基準カメラの位置から撮影したように射影変換し、画像中の被測定物上の任意の点を示す座標が、基準カメラで撮影された基準画像データの被測定物上の同一点上の座標を示すような変換画像データを作成し、基準カメラで撮影された基準画像データと変換画像データとの座標を共有化して、当該座標上における被測定物上の任意の点の分光データを作成している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】内藤貴志、木村好克、「ステレオビジョンシステムの開発」、豊田中央研究所 R&D レビュー、Vol.31、No.2、1996年6月
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−147507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の非特許文献1に記載の技術では、異なる波長特性を有する2台のカメラを用いた場合、両者のエッジ画像が異なるため、正確に類似度を算出することができなくなり、3次元形状を精度良く求めることができない、という問題がある。これは、感度を有する波長がカメラの間で異なるという理由から、取得する画像に差が出るためであり、輝度を用いて類似度を算出する他のステレオカメラの技術でも同様となる。
【0007】
また、上記で述べたように、異なる波長特性を有するカメラで撮像する場合、それらの画像の位置合わせが困難となるが、上記の特許文献1に記載の技術では、被測定物表面に基準点を投光することで、複数台のカメラの位置合わせを実現している。しかしながら、上記の特許文献1に記載の技術では、投光された基準点を表面に持つ対象物の領域しか位置合わせを行うことができず、投光の範囲外に存在する対象物の領域の位置合わせを行うことは不可能である、という問題がある。
【0008】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、異なる波長特性を有する複数の撮像手段を用いて、特定の対象物までの距離を精度よく測定することができる距離測定装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために本発明に係る距離測定装置は、各々感度を有する光の波長帯が異なり、かつ、各々異なる視点から所定領域を撮像する複数の撮像手段と、前記複数の撮像手段によって撮像された撮像画像の各々から、特定の対象物についての光の波長帯の各々の反射強度に関する予め定められた条件に基づいて、前記特定の対象物を表わす領域を抽出する領域抽出手段と、前記領域抽出手段によって前記撮影画像の各々から抽出された前記領域の位置合わせを行って、前記領域における視差量を算出する視差量算出手段と、前記視差量算出手段によって算出された前記視差量に基づいて、前記特定の対象物までの距離を測定する距離測定手段と、を含んで構成されている。
【0010】
本発明に係るプログラムは、コンピュータを、各々感度を有する光の波長帯が異なり、かつ、各々異なる視点から所定領域を撮像する複数の撮像手段によって撮像された撮像画像の各々から、特定の対象物についての光の波長帯の各々の反射強度に関する予め定められた条件に基づいて、前記特定の対象物を表わす領域を抽出する領域抽出手段、前記領域抽出手段によって前記撮影画像の各々から抽出された前記領域の位置合わせを行って、前記領域における視差量を算出する視差量算出手段、及び前記視差量算出手段によって算出された前記視差量に基づいて、前記特定の対象物までの距離を測定する距離測定手段として機能させるためのプログラムである。
【0011】
本発明によれば、複数の撮像手段によって、各々異なる視点から所定領域を撮像する。領域抽出手段によって、前記複数の撮像手段によって撮像された撮像画像の各々から、特定の対象物についての光の波長帯の各々の反射強度に関する予め定められた条件に基づいて、前記特定の対象物を表わす領域を抽出する。
【0012】
そして、視差量算出手段によって、前記領域抽出手段によって前記撮影画像の各々から抽出された前記領域の位置合わせを行って、前記領域における視差量を算出する。距離測定手段によって、前記視差量算出手段によって算出された前記視差量に基づいて、前記特定の対象物までの距離を測定する。
【0013】
このように、特定の対象物についての光の波長帯の各々の反射強度に関する条件に基づいて、撮像画像の各々から特定の対象物を表わす領域を抽出し、当該領域の位置合わせを行って、視差量を算出することにより、異なる波長特性を有する複数の撮像手段を用いて、特定の対象物までの距離を精度よく測定することができる。
【0014】
本発明に係る距離測定装置は、前記領域抽出手段によって前記撮影画像の各々から抽出された前記領域に基づいて、前記特定の対象物を表わす領域における、光の波長帯の各々の反射強度を表わす分光データを生成する分光データ生成手段を更に含むようにすることができる。
【0015】
本発明に係る撮像手段の各々は、複数の光の波長帯に感度を有するようにすることができる。
【0016】
本発明に係る視差量算出手段は、前記領域抽出手段によって前記撮影画像の各々から抽出された前記領域を重ね合わせたときの重なる面積が最大となるように、前記領域の位置合わせを行い、前記領域の位置合わせ結果に基づいて、前記領域における視差量を算出するようにすることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明の距離測定装置及びプログラムによれば、特定の対象物についての光の波長帯の各々の反射強度に関する条件に基づいて、撮像画像の各々から特定の対象物を表わす領域を抽出し、当該領域の位置合わせを行って、視差量を算出することにより、異なる波長特性を有する複数の撮像手段を用いて、特定の対象物までの距離を精度よく測定することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る距離測定装置の構成を示す概略図である。
【図2】撮像装置の構成を示す図である。
【図3】第1撮像装置が感度を有する波長帯を示す図である。
【図4】第2撮像装置が感度を有する波長帯を示す図である。
【図5】第1撮像装置及び第2撮像装置を配置した様子を示す図である。
【図6】可視光画像の例を示す図である。
【図7】近赤外画像の例を示す図である。
【図8】可視光画像から人間の肌領域を抽出した結果を示す図である。
【図9】近赤外画像から人間の肌領域を抽出した結果を示す図である。
【図10】可視光画像から検出されるエッジ情報を示す図である。
【図11】近赤外画像から検出されるエッジ情報を示す図である。
【図12】可視光画像から抽出された人間の肌領域と、近赤外画像から抽出された人間の肌領域とを重ね合わせた結果を示す図である。
【図13】画像の並行移動量と、重ね合わされた人間の肌領域との関係を示すグラフである。
【図14】可視光画像から抽出された人間の肌領域と、近赤外画像から抽出された人間の肌領域とを位置合わせした結果における重ね合わせ領域を示す図である。
【図15】(A)人間の肌の分光反射特性を示すグラフ、及び(B)分光データを示すグラフである。
【図16】本発明の第1の実施の形態に係る距離測定装置のコンピュータにおける距離測定処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、車両に搭載され、対象物としての人物までの距離を測定すると共に、人間の肌領域の分光データを出力する距離測定装置に本発明を適用した場合を例に説明する。
【0020】
図1に示すように、第1の実施の形態に係る距離測定装置10は、車両(図示省略)に取り付けられ、かつ、車両の前方を撮像して画像を生成する第1撮像装置12及び第2撮像装置14と、第1撮像装置12及び第2撮像装置14の各々から得られる撮像画像に基づいて、人物までの距離を測定すると共に、人物の領域の分光データを出力するコンピュータ16と、コンピュータ16での処理結果を出力する出力装置18とを備えている。
【0021】
第1撮像装置12及び第2撮像装置14の各々は、異なる視点から、車両前方の対象領域を撮像するように設置されている。図2に示すように、第1撮像装置12及び第2撮像装置14の各々は、レンズ20を透過した入射光をプリズム22で分光する。プリズム22には狭帯域のバンドパスフィルタ24A、24B、24Cが蒸着されており、所定の波長の光がバンドパスフィルタ24A、24B、24Cを透過して3つの高感度撮像部26A、26B、26Cに入射する。つまり、3つの高感度撮像部26A、26B、26Cは、同一の光軸の画像を取得可能である。
【0022】
高感度撮像部26A、26B、26Cの各々は、画素を構成する撮像素子が配列されて構成されており、画像信号を生成する。
【0023】
第1撮像装置12のバンドパスフィルタ24A、24B、24Cは、図3に示すような可視領域の3波長帯R,G,Bを透過するように構成され、第1撮像装置12は、可視領域の3波長帯R,G,Bの画像信号から生成される撮像画像(可視光画像)を出力する。
【0024】
第2撮像装置14のバンドパスフィルタ24A、24B、24Cは、図4に示すような近赤外領域の3波長帯IR1、IR2、IR3(IR1<IR2<IR3)を透過するように構成され、第2撮像装置14は、近赤外領域の3波長帯IR1、IR2、IR3の画像信号から生成される撮像画像(近赤外画像)を出力する。
【0025】
また、第1撮像装置12及び第2撮像装置14の各々は、更に、高感度撮像部26A、26B、26Cで生成されたアナログ信号である画像信号をデジタル信号に変換するA/D変換部(図示省略)、及びA/D変換された画像信号を一時的に格納するための画像メモリ(図示省略)を備えている。
【0026】
図5に示すように、第1撮像装置12及び第2撮像装置14は横に並行に設置され、可視光画像及び近赤外画像が同時に取得される。例えば、第1撮像装置12によって、図6に示すような可視光画像が取得され、第2撮像装置14によって、図7に示すような近赤外画像が取得される。なお、図7の近赤外画像では、IR1フィルタをB成分、IR2フィルタをG成分、IR3フィルタをR成分として、擬似カラーを用いて表現している。
【0027】
コンピュータ16は、距離測定装置10全体の制御を司るCPU、後述する距離測定処理ルーチンのプログラム等を記憶した記憶媒体としてのROM、ワークエリアとしてデータを一時格納するRAM、及びこれらを接続するバスを含んで構成されている。このような構成の場合には、各構成要素の機能を実現するためのプログラムをROMに記憶しておき、これをCPUが実行することによって、各機能が実現されるようにする。
【0028】
このコンピュータ16をハードウエアとソフトウエアとに基づいて定まる機能実現手段毎に分割した機能ブロックで説明すると、上記図1に示すように、第1撮像装置12によって撮像された可視光画像及び第2撮像装置14によって撮像された近赤外画像を取得する画像取得部30と、可視光画像及び近赤外画像の各々から人間の肌を表わす領域を抽出する対象物抽出部32と、抽出された肌領域の位置合わせを行って、肌領域における視差量を算出する位置合わせ部34と、視差量に基づいて、人物までの距離を測定する距離測定部36と、肌領域の分光データを生成する分光データ生成部38とを備えている。なお、対象物抽出部32は、領域抽出手段の一例であり、位置合わせ部34は、視差量算出手段の一例である。
【0029】
対象物抽出部32は、取得した可視光画像から、肌色領域を抽出する手法を用いて、以下の(1)式に示す条件式に従って、YCrCb色空間における肌色空間の画素を抜き出して、図8に示すように人間の肌領域を抽出する。なお、図8では、白色の領域が人間の肌として判定された領域としている。
【0030】
【数1】

【0031】
なお、Rは、対象画素のR成分であり、Gは、対象画素のG成分であり、Bは、対象画素のB成分である。
【0032】
また、対象物抽出部32は、取得した近赤外画像から、人間の肌が970nmの光を吸収する特性を用いて、以下の(2)式に示す条件式に従って、870nmおよび1050nmの光に対して970nmの光の反射強度が小さい画素を抜き出して、図9に示すように人間の肌領域を抽出する。なお、図9では白色の領域が人間の肌として判定された領域としている。
【0033】
【数2】

【0034】
ただし、IR1は、対象画素のIR1成分であり、IR2は、対象画素のIR2成分であり、IR3は、対象画素のIR3成分である。
【0035】
次に、領域の位置合わせを行う原理について説明する。
【0036】
2台のカメラの画像に表された対象物の位置を合わせて対象物までの距離データを得る方法をステレオマッチング技術と呼び、通常それぞれの画像の輝度やエッジ情報の類似度を算出して2台のカメラ中の対象物の対応を求める。しかしながら、本実施の形態に係る撮像装置の構成では、それぞれの撮像装置において感度を有する光の波長帯が異なるため、上記図6および図7のように輝度の異なる画像が取得される。このような輝度の異なる画像において、輝度を用いて類似度を求めることは困難である。また、上記図6および図7に示す画像からエッジ情報を抜き出した画像を図10および図11に示す。こちらも、輝度の場合と同様に、2台の撮像装置において異なるエッジ情報が取得されるため、エッジ情報を用いても類似度を算出することは困難である。
【0037】
そこで、本実施の形態では、対象物抽出部32によって、得られた可視光画像及び近赤外画像に対して、分光スペクトル特性(波長に対する反射強度の特性)を利用した材質判定技術を適用して、人間の肌領域を抽出し、位置合わせ部34によって、対象物抽出部32により抽出された人間の肌領域の重ね合わせ領域が最大となる位置に、可視光画像及び近赤外画像のそれぞれを移動させることで、取得した可視光画像及び近赤外画像における肌領域の位置合わせを行う。
【0038】
ここで、上記図8および図9における画像から人間の肌と抽出された領域を重ね合わせた画像を図12に示す。2台の撮像装置は並行に設置されているため、撮像装置の光軸が異なっており、上記図12に示すように正しく人間の肌の領域として重ね合わせて表現することはできない。しかしながら、事前に2台の撮像装置のキャリブレーションを行い、水平方向に片方の画像を移動させるのみで画像中の対象物の位置合わせが可能な状態にしてある場合、水平方向に数画素移動させることで、いずれかの位置で、重ね合わせた画像においても正しく人間の肌の領域を表現することができる。
【0039】
本実施の形態では、正しい重ね合わせの位置であると判断するために、重ね合わせ画像における人間の肌の重ね合わせ領域の面積を用いる。水平方向への画像移動量と重ね合わせ画像における人間の肌の重ね合わせ領域の面積の関係を表したグラフを図13に示す。
【0040】
上記図13に示すように、人間の肌の重ね合わせ領域の面積が最大となる位置が最良の重ね合わせ位置となる。つまり、水平方向へ対象画像をずらしながら、人間の肌の重ね合わせ領域の面積を解析することで、画像中の対象物(人物)の位置合わせが可能となる。
【0041】
上記図8および図9に示す人間の肌領域を重ね合わせた領域の面積が最大となる位置において、画像を重ね合わせた結果を、図14に示す。
【0042】
以上説明したように、位置合わせ部34は、対象物抽出部32によって抽出された人間の肌領域を重ね合わせた領域が最大となる位置に、可視光画像及び近赤外画像を並行移動させて、位置合わせを行ない、位置合わせを行なった結果に基づいて、人間の肌領域における視差量を算出する。
【0043】
距離測定部36は、算出された人間の肌領域における視差量dに基づいて、以下の(3)式に従って、人物までの距離Zpを算出し、距離の測定結果として、出力装置18によって出力させる。
【0044】
【数3】

【0045】
ただし、Bは、第1撮像装置12及び第2撮像装置14間の距離(ベース長さ)であり、fは、第1撮像装置12及び第2撮像装置14の焦点距離である。
【0046】
分光データ生成部38は、算出された視差量と、可視光画像及び近赤外画像の各々から抽出された人間の肌領域とに基づいて、重ね合わされた人間の肌領域における分光データを生成する。例えば、図15(A)に示すような分光反射特性をもっている人間の肌に対して、図15(B)に示すような分光データが生成される。なお、分光データとは、対象物の分光反射特性を表すデータであり、上記図15(B)の各点は、各波長帯における反射強度を示している。
【0047】
また、分光データ生成部38は、生成した分光データを、出力装置18によって出力させる。
【0048】
次に、本実施の形態に係る距離測定装置10の作用について説明する。距離測定装置10を搭載した車両の走行中に、第1撮像装置12及び第2撮像装置14によって車両の前方の所定領域が撮像されると、コンピュータ16において、図16に示す距離測定処理ルーチンが実行される。
【0049】
ステップ100で、第1撮像装置12で撮像された可視光画像及び第2撮像装置14で撮像された近赤外画像を取得する。次のステップ102において、上記ステップ100で取得した可視光画像から、上記(1)式の条件を満たす画素を抜き出して、人間の肌領域を抽出し、ステップ104において、上記ステップ100で取得した近赤外画像から、上記(2)式の条件を満たす画素を抜き出して、人間の肌領域を抽出する。
【0050】
そして、ステップ106において、上記ステップ102、104で抽出された人間の肌領域を重ね合わせた領域が最大となるように、可視光画像及び近赤外画像を並行移動させて、位置合わせを行い、位置合わせの結果に基づいて、人間の肌領域における視差量を算出する。
【0051】
次のステップ108では、上記ステップ106で算出された視差量に基づいて、上記(3)式に従って、測定対象となる人物までの距離を測定する。ステップ110では、上記ステップ106で算出された視差量と、上記ステップ102、104で抽出された人間の肌領域とに基づいて、重ねあわされた人間の肌領域の分光データを生成する。
【0052】
そして、ステップ112において、上記ステップ108で測定された対象の人物までの距離、及び上記ステップ110で生成された分光データを出力装置18により出力して、距離測定処理ルーチンを終了する。
【0053】
以上説明したように、第1の実施の形態に係る距離測定装置によれば、人間の肌についての光の波長帯の各々の反射強度に関する条件に基づいて、異なる視点から撮像された2つの撮像画像の各々から、人間の肌領域を抽出し、人間の肌領域の位置合わせを行って、人間の肌領域における視差量を算出することにより、異なる波長特性を有する複数の撮像装置を用いて、人物までの距離を精度よく測定することができる。
【0054】
また、異なる位置に設置された複数の撮像装置における視差量を算出することで、距離データを取得すると共に、異なる波長帯に感度を有する複数の撮像装置を用いることで、対象の分光データを取得することにより、対象の距離データと分光データを同時に取得できる。
【0055】
また、基準点を用いずに、複数の画像における対象物の位置合わせを実現するため、基準点の投光など、撮像装置以外の追加の装置を伴わずに、対象の距離データと分光データを同時に取得できる。
【0056】
次に、第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0057】
第2の実施の形態では、各撮像装置が、1つの波長帯に感度を有するように構成されている点が、第1の実施の形態と異なっている。
【0058】
第2の実施の形態に係る距離測定装置は、各々異なる1つの波長帯に感度を有する複数の撮像装置を備えている。例えば、複数の撮像装置として、Rの波長帯を透過するバンドパスフィルタを持ち、R成分の画像を撮像する撮像装置と、Gの波長帯を透過するバンドパスフィルタを持ち、G成分の画像を撮像する撮像装置、Bの波長帯を透過するバンドパスフィルタを持ち、G成分の画像を撮像する撮像装置と、IR1の波長帯を透過するバンドパスフィルタを持ち、IR1成分の画像を撮像する撮像装置と、IR2の波長帯を透過するバンドパスフィルタを持ち、IR2成分の画像を撮像する撮像装置と、IR3の波長帯を透過するバンドパスフィルタを持ち、IR3成分の画像を撮像する撮像装置とが設けられている。
【0059】
また、人間の肌はそれぞれのフィルタ領域で取り得る値の範囲が決まっている。そこで、距離測定装置の対象物抽出部32では、各撮像装置によって撮像された画像の各々について、輝度に関する単純な閾値処理を行って、人間の肌領域を抽出する。なお、ホワイトバランスは調整されている事を前提としている。
【0060】
位置合わせ部34は、各撮像画像から抽出された肌領域を重ね合わせて、重ね合わされた領域の面積が最大となるように、各撮像画像を並行移動させて、位置合わせを行い、人間の肌領域について、撮像画像間の視差量を算出する。
【0061】
距離測定部36は、算出された視差量に基づいて、上記(3)式に従って、人物までの距離を測定する。分光データ生成部38は、重ね合わされた肌領域について分光データを生成する。
【0062】
なお、第2の実施の形態に係る距離測定装置の他の構成及び作用については、第1の実施の形態と同様のであるため、説明を省略する。
【0063】
このように、第2の実施の形態に係る距離測定装置によれば、異なる1つの波長帯に感度を有する複数の撮像装置を用いて、人物までの距離を精度よく測定すると共に、人間の肌領域の分光データを取得することができる。
【0064】
なお、上記の第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、人間の肌領域を重ね合わせた領域が最大となる位置まで画像を移動させて視差量を求める場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、人間の肌らしさを一つのエネルギー関数として定義し、そのエネルギー関数の値が最大となる位置まで画像を移動させて視差量を求めるようにしてもよい。ここで、人間の肌には、上記Crの値が高く、Cbの値が低く、さらに、(IR1−IR2)の値と(IR3−IR1)の値とが高い傾向にあることが分かる。そのような傾向から、以下の(4)式に示すようなエネルギー関数Eを定義し、当該エネルギー関数Eが最大となる位置まで画像を移動させて、人間の肌領域における視差量を求めるようにしてもよい。
【0065】
【数4】

【0066】
また、特定の対象物が人間の肌である場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、特定の対象物を樹木とした場合には、樹木は青や赤の波長帯よりも緑の波長帯の光の反射強度が強く、赤の波長帯よりも近赤外(800nm程度)の光の反射強度が非常に強いという特徴がある。そのため、第1撮像装置を、青と緑の光に感度を有する撮像装置とし、第2撮像装置を、赤と近赤外の光に感度を有する撮像装置として、ステレオカメラを構築するようにすればよい。また、第1撮像装置の撮像画像から、緑から青の光を引いた強度が大きい画素を抜き出して樹木の領域を抽出し、第2撮像画像の撮像画像から、近赤外から赤の光を引いた強度が非常に大きい画素を抜き出して、特定の対象物である樹木の領域を抽出して、位置合わせを行うようにすればよい。
【0067】
また、特定の対象物が複数存在する場合には、特定の対象物毎に、材質判定技術を適用した領域抽出、および抽出された領域の位置合わせを行うことで、特定の対象物別に距離データと分光データを取得するようにしてもよい。
【0068】
また、本実施の形態の画像信号処理装置の各部をコンピュータで実現した場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、各部の機能を実現する複数のコンピュータ、または1つまたは複数の電子回路で構成するようにしてもよい。
【0069】
なお、本願明細書中において、プログラムが予めインストールされている実施形態として説明したが、当該プログラムをCDROM等の記憶媒体に格納して提供することも可能である。
【符号の説明】
【0070】
10 距離測定装置
12 第1撮像装置
14 第2撮像装置
16 コンピュータ
32 対象物抽出部
34 位置合わせ部
36 距離測定部
38 分光データ生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々感度を有する光の波長帯が異なり、かつ、各々異なる視点から所定領域を撮像する複数の撮像手段と、
前記複数の撮像手段によって撮像された撮像画像の各々から、特定の対象物についての光の波長帯の各々の反射強度に関する予め定められた条件に基づいて、前記特定の対象物を表わす領域を抽出する領域抽出手段と、
前記領域抽出手段によって前記撮影画像の各々から抽出された前記領域の位置合わせを行って、前記領域における視差量を算出する視差量算出手段と、
前記視差量算出手段によって算出された前記視差量に基づいて、前記特定の対象物までの距離を測定する距離測定手段と、
を含む距離測定装置。
【請求項2】
前記領域抽出手段によって前記撮影画像の各々から抽出された前記領域に基づいて、前記特定の対象物を表わす領域における、光の波長帯の各々の反射強度を表わす分光データを生成する分光データ生成手段を更に含む請求項1記載の距離測定装置。
【請求項3】
前記撮像手段の各々は、複数の光の波長帯に感度を有することを特徴とする請求項1又は2記載の距離測定装置。
【請求項4】
前記視差量算出手段は、前記領域抽出手段によって前記撮影画像の各々から抽出された前記領域を重ね合わせたときの重なる面積が最大となるように、前記領域の位置合わせを行い、前記領域の位置合わせ結果に基づいて、前記領域における視差量を算出する請求項1〜請求項3の何れか1項記載の距離測定装置。
【請求項5】
コンピュータを、
各々感度を有する光の波長帯が異なり、かつ、各々異なる視点から所定領域を撮像する複数の撮像手段によって撮像された撮像画像の各々から、特定の対象物についての光の波長帯の各々の反射強度に関する予め定められた条件に基づいて、前記特定の対象物を表わす領域を抽出する領域抽出手段、
前記領域抽出手段によって前記撮影画像の各々から抽出された前記領域の位置合わせを行って、前記領域における視差量を算出する視差量算出手段、及び
前記視差量算出手段によって算出された前記視差量に基づいて、前記特定の対象物までの距離を測定する距離測定手段
として機能させるためのプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図13】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2013−24653(P2013−24653A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158050(P2011−158050)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】