説明

距離測定装置

【課題】モニタ部が使用するパルス検出のポイントがずれないようにし、トランスポンダが送出するペアパルス信号をこのペアパルス信号の正確な位置において検出することが出来る距離測定装置を提供する。
【解決手段】アンテナ部11、トランスポンダ部13、方向性結合器12a、トランスポンダ部13から擬似質問信号に応答して2つのパルスを含むペアパルス信号でパルス変調された応答信号を入力されるモニタ部14とを備え、モニタ部14は、入力された応答信号を検波し、2つのパルス状のピークを有する波形信号を出力する検波部25aと、検波部25aが出力する波形信号のレベルが所要のスレショルドを越える期間を計測し、計測後、波形信号を所定時間遅延させ、この遅延させた波形信号の波形中のスレショルドを越えた点から期間の半分の期間が経過した点を波形信号の中心位置としてパルスを検出するパルス検出部42とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は距離測定装置(DME:Distance Measuring Equipment)に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機に設けられたインタロゲータは質問信号を地上の距離測定装置に対して送信する。地上に設けられた距離測定装置は、このインタロゲータからの質問信号を受信すると、一定の時間をおいて応答信号を生成してインタロゲータに対して送信する。インタロゲータは、質問信号を送信した時点から応答信号を受信した時点までの時間差を計測することによって自機と地上局との間の距離を計算する(非特許文献1参照)。
【0003】
質問信号と応答信号とはいずれもペアパルス信号により搬送波を変調して得たパルス変調波である。ペアパルス信号はそれぞれ同じパルス幅の2つのシングルパルスを有する。距離測定装置は、質問信号を検波し、復調信号から2つのパルスのペアを検出する。距離測定装置は、2つのパルスのうちの例えば最初のパルスが検出された時点から、システムディレイ時間が経過した後、決められたパルス間隔を有する2つのパルスからなるペアパルス信号を生成し、応答信号を送信する。
【0004】
2つのパルスを検出する方法については、従来、ツインパルスを含む信号を入力し、信号とこの信号をパルス幅で遅延させた遅延信号との乗算結果をパルス検出信号として求め、パルス検出信号とこのパルス検出信号をパルス間隔で遅延させた遅延信号との乗算結果をツインパルス検出信号とするツインパルスの検出方法が知られている(特許文献1参照)。
【0005】
一般に距離測定装置はトランスポンダ部と、このトランスポンダ部について距離測定機能の確認や装置特性を検証するために、動作検証用のモニタ部とを有する。モニタ部はインタロゲータの送信回路と同じ送信回路を有する。モニタ部は、この送信回路が一定時間毎にトランスポンダ部に対して質問パルスを送出し、トランスポンダ部から正しく応答パルスが返ってきているかどうかを検査するようにしている。
【0006】
モニタ部は、トランスポンダ部が送出している応答信号をチェックする。応答信号が質問信号に対して何μsec後に返って来なければいけないということをモニタ部は確認するようにしている。例えばモニタ部は、ペアパルス信号の2つのパルスのパルス幅中心位置間のパルス間隔、システムディレイやパルスレベル等をモニタする。モニタ部は2つのパルスのペアを正確に検出する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−139265号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】EUROCAE(European Organization For Civil Aviation Electronics)ED−54
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、従来技術によるパルスの検出方法では、パルス波形の形状が変化したときにパルス検出タイミングが変わるため、モニタ部はパルスの検出ポイントがずれた状態でパルス検出を行うことがある。パルス波形の正確な位置でパルス信号を検出することができない。
【0010】
そこで、本発明は、モニタ部が使用するパルス検出のポイントがずれないようにし、トランスポンダが送出するペアパルス信号をこのペアパルス信号の正確な位置において検出することが出来る距離測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような課題を解決するため、本発明の一態様によれば、無線信号を送受信するアンテナ部と、このアンテナ部を介して航空機から質問信号を受信し、この質問信号に応答して応答信号をこの航空機に対して送信するトランスポンダ部と、このトランスポンダ部に接続された方向性結合器と、この方向性結合器を介して、擬似質問信号を前記トランスポンダ部に出力し、前記トランスポンダ部からこの擬似質問信号に応答して、2つのパルスを含むペアパルス信号によりパルス変調された応答信号を入力され、前記トランスポンダ部の動作を監視するモニタ部と、を備え、このモニタ部は、入力された前記応答信号を検波し、2つのパルス状のピークを有する波形信号を出力する検波部と、この検波部が出力する前記波形信号のレベルが所要のスレショルドを越える期間を計測し、計測後、前記波形信号を所定時間遅延させ、この遅延させた波形信号の波形中の前記スレショルドを越えた点から前記期間の半分の期間が経過した点を前記波形信号の中心位置として少なくとも1つのパルスを検出するパルス検出部とを備えたことを特徴とする距離測定装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、モニタ部が使用するパルス検出のポイントがずれないようにしてパルス検出を行うことができ、トランスポンダ部が送出する応答信号をこの応答信号に含まれるペアパルス信号の位置において正確に検出できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る距離測定装置のブロック図である。
【図2】モニタ部のブロック図である。
【図3】パルス検出部のブロック図である。
【図4】パルスモニタによるペアパルス検出を説明するためのタイミングチャートを示す図である。
【図5】パルスのペアのうちの一方の波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係る距離測定装置について、図1乃至図5を参照しながら説明する。尚、各図において同一箇所については同一の符号を付すとともに、重複した説明は省略する。
【0015】
図1は本発明の一実施形態に係る距離測定装置のブロック図である。距離測定装置10は、無線信号を送受信するアンテナ部11と、このアンテナ部11に接続されたスイッチ回路12と、それぞれ航空機からの質問信号を受信しこの質問信号に応答して応答信号をこの航空機に対して送信する2つのトランスポンダ部13と、それぞれ各トランスポンダ部13の動作を監視する2つのモニタ部14と、距離測定装置10全体の制御を司るコントロール部15と、管制を行う側に設けられモニタ部14が出力する計測値やアラームを監視し、このコントロール部15との間で制御信号を収受するリモート装置17とを備えている。
【0016】
距離測定装置10は、2つのトランスポンダ部13のうちの一方を運用系又は1系として運転状態で稼動させており、他方を予備系又は2系として待機させている。距離測定装置10は、2つのモニタ部14のうちの一方を運用系として稼動させ、他方を予備系として待機させている。コントロール部15は、モニタ部14からのアラームを受信する系切替ステータスモニタ16を有する。リモート装置17からコントロール部15に指令を与えると、コントロール部15が2つのトランスポンダ部13と、2つのモニタ部14とに対して切替制御信号を通知することにより、各トランスポンダ部13、各モニタ部14はそれぞれ切り替えられるようになっている。
【0017】
アンテナ部11には電子走査アンテナが用いられる。アンテナ部11は、航空機のインタロゲータからの質問信号を補足し、この質問信号に対する応答信号を送信する。
【0018】
スイッチ回路12は方向性結合器12a、終端抵抗器12b及びサーキュレータ12cからなり、無線信号を隔離、分離及び結合する。サーキュレータ12cは、第1端子に入力された信号を第2端子に出力し第2端子に入力された信号を第3端子に出力し、第3端子に入力された信号を第1端子に出力するという電気的特性を有する。このサーキュレータ12cの第1端子は送信回路20の出力端子に接続され、その第2端子は方向性結合器12aの第1端子に接続され、第3端子は受信回路18の入力端子に接続されている。方向性結合器12aの第1端子はサーキュレータ12cの第2端子に接続され、第2端子はアンテナ部11の入力端子に接続されている。第3端子は第1端子と、例えば結合度30dBで結合され、第4端子は第2端子と同様に結合度30dBで結合されている。第4端子には終端抵抗器12bが接続されている。
【0019】
方向性結合器12aにおいて、第1端子から入力された無線信号は第3端子には例えば−30dBで出力され残りはほとんど減衰なく第2端子に出力される。第2端子から入力された信号は第4端子に例えば−30dBで伝送され終端抵抗器12bにより減衰させられ他はほとんど減衰なく第1端子に出力される。第3端子から入力された信号は第1端子に−30dBで出力される。サーキュレータ12cの第2端子から出力され方向性結合器12aの第1端子に入力された信号は方向性結合器12aの第2端子にそのまま出力されるが、方向性結合器12aの第3端子には−30dBで信号が出力されるようになっている。
【0020】
トランスポンダ部13は、スイッチ回路12からの信号を受信して検波する受信回路18と、受信回路18の検波出力を解析して応答信号及び擬似応答信号を生成する応答回路19と、応答回路19が生成した応答信号をスイッチ回路12に送信する送信回路20と、応答回路19による解析結果に基いて送信タイミングを送信回路20に与える送信切替回路21とを備えている。
【0021】
応答回路19は、航空機から距離測定装置10に対する信号であるかどうかを判定し、航空機から距離測定装置10への信号であると判定した場合、検波出力された信号に50μsecのシステムディレイ時間を付与し、再度符号化し、符号化した信号を応答信号として生成するようにしている。システムディレイ時間とは、距離測定装置10が擬似質問信号を生成した後、応答信号を受信するまでに要する時間を指す。
【0022】
2つのトランスポンダ部13は同じ構成を有する。運用系のトランスポンダ部13はスイッチ回路12から入力された受信信号に対して応答処理を行うとともに、予備系のトランスポンダ部13は同じ受信信号に対する応答処理を行わないよう動作制御を受けている。
【0023】
モニタ部14は方向性結合器12aを介して、擬似質問信号をトランスポンダ部13に出力し、トランスポンダ部13から、この擬似質問信号に応答した応答信号を入力されるようになっている。
【0024】
モニタ部14は、トランスポンダ部13の機能監視及び動作監視のためのペアパルス信号を発生させるトランスポンダチェック用パルス発生回路22と、このトランスポンダチェック用パルス発生回路22からのペアパルス信号により搬送波を変調して擬似質問信号を生成する送信回路23と、例えば3端子のサーキュレータ24と、アンテナ部11からの応答信号及びサーキュレータ24を介して入力される擬似応答信号を検波する受信回路25と、受信回路25から検波出力されるペアパルス信号に含まれる2つのパルスの各パルス幅、各パルスレベル及びパルス間のパルス間隔を用いてトランスポンダ部13が正常に機能していることを監視するパルスモニタ26とを備える。
【0025】
図2はモニタ部14のブロック図である。同図中、上述した符号と同じ符号を有する要素はそれらと同じ要素を表す。
【0026】
トランスポンダチェック用パルス発生回路22は、予め設定された送信レート値で決まるタイミング毎にタイミング信号を生成して出力するパルスタイミング生成部39と、リカバリ処理の要否を予め設定され、パルスノイズを送信信号に重畳するためのパルスノイズオン/オフ処理部38と、第1のパルス信号のパルス幅の中心及び第2のパルス信号のパルス幅の中心間の間隔が、予め設定されるパルスのペアの間隔値になるようにこれらの2つのパルス信号のパルス位置を調整するパルスペア間隔制御部37と、予め設定されるパルス立上り時間の値によってパルスペア間隔制御部37から出力される2つのパルス信号の各パルス立上り時間を制御するパルス立上り時間制御部36とを有する。
【0027】
更にトランスポンダチェック用パルス発生回路22は、パルス立上り時間制御部36から出力される2つのパルス信号のパルスレベルを調整するパルスレベル調整部35と、このパルスレベル調整部35から出力される2つのパルス信号の各立下りエッジを遅延させることによってこれらのパルス信号のパルス幅を調整するパルス遅延処理部34と、このパルス遅延処理部34から出力される2つのパルス信号のパルス論理値を反転させるパルス反転部33とを備える。トランスポンダチェック用パルス発生回路22は、予めオン又はオフを設定され、電波伝搬路において干渉を受ける複数のマルチパス波のうち、除去対象とするマルチパス波を選択するためのマルチパス選択部32と、パルス立上り時間制御部36から出力されるペアパルス信号とマルチパス選択部32からの出力とを乗算して出力する乗算器31とを備える。
【0028】
加えてトランスポンダチェック用パルス発生回路22は、予め設定入力されるパルスレベル値、及び過負荷制御のオン又はオフの設定値に基いてペアパルス信号のパルスレベルを決定しパルスレベル情報を出力するパルスレベル生成部40も有する。過負荷制御のオン、オフとは例えばスキッタパルスの送出レートを変えてトランスポンダ部13からの送信レートを適正値に維持させるための制御を指す。
【0029】
また、送信回路23は、RF信号である搬送波を出力するPLLクロックシンセサイザ29と、ディジタル/アナログ変換を行うD/A変換器30と、PLLクロックシンセサイザ29から出力される搬送波を、このD/A変換器30から出力されるペアパルス信号によって変調してパルス変調波を出力する変調器28と、この変調器28からのパルス変調波の波形レベルを、トランスポンダチェック用パルス発生回路22からのパルスレベル値に調節するレベル値変更機能付きのアッテネータ27とを備える。このアッテネータ27から疑似質問信号がサーキュレータ24の第1端子へ出力されるようになっている。
【0030】
また、受信回路25は、サーキュレータ24からの信号波を検波する検波部25aと、アナログ/ディジタル変換を行うA/D変換器41とを備える。検波部25aは、応答信号を検波し、2つのパルス状のピークを有する波形信号を出力するものである。この検波部25aは、送信回路23内のPLLクロックシンセサイザ29に接続されこのPLLクロックシンセサイザ29からの出力を移相させる図示しない移相器と、この移相器及びサーキュレータ24の第3端子に接続され、移相器から出力される搬送波信号と受信信号とを乗算する復調器と、この復調器の出力をフィルタリングし狭帯域信号を出力するフィルタとを備える。
【0031】
また、パルスモニタ26は、本実施形態に係る距離測定装置10が実行するパルス検出方法によって応答信号からペアパルス信号を検出するペアパルス検出部42(パルス検出部)と、6種類の監視機能を実行するチェック部43、44、45、46、47及び48とを備える。ペアパルス検出部42のパルス検出方法が従来例と異なる。このペアパルス検出部42がパルス検出部として機能する。
【0032】
ペアパルス検出部42は、検波出力された波形信号のレベルが所要のスレショルドを越える期間を計測し、計測後、この波形信号を所定時間遅延させ、この遅延させた波形信号の波形中のスレショルドを越えた点からこの期間の半分の期間が経過した点を波形信号の中心位置として2つのパルスを検出するものである。ペアパルス検出部42の機能は例えば図3に示すロジック回路によって実現される。
【0033】
図3はペアパルス検出部42のブロック図である。ペアパルス検出部42は、検波部25aからのディジタル波形信号を記憶するパルスディレイメモリ51(記憶部)と、このパルスディレイメモリ51の波形信号のレベルがスレショルドを越える時点およびこのレベルがスレショルドを下回る時点を検出するスレショルド検出部49(タイミング検出部)と、検出されたこれらの2つの時点の間隔をカウントアップし、得られたカウンタ値例えばNの1/2の値N/2を出力するスレショルド間隔カウンタ50(第1のカウンタ部)とを備える。
【0034】
パルスディレイメモリ51が記憶する波形信号データは、波形信号がスレショルドを越える波形中の2箇所の点の間の時間を計測する処理と、この波形信号を遅延させた後、波形中心位置を検出する処理との2系統の処理に用いられるようにされている。
【0035】
スレショルド検出部49が用いるスレショルドの値は、ペアパルス検出部42よりも受信系後段に設けられている送信電力チェック回路によってアラームが報知されない程度の大きさを有し、例えば送信電力の半分を超える程度の大きさに予め設定される。
【0036】
スレショルド間隔カウンタ50のカウントアップクロックは、ペアパルス信号の2つのパルス波形をサンプリングしたときに波形の十分な再現性が得られる程度のクロック速度を有する。スレショルド間隔とは、略ガウス分布形状を有するパルス状の波形がスレショルドを越える時点と、このスレショルドを下回る時点との間の時間を、カウントアップクロックによって計測して表した間隔を指す。
【0037】
更にペアパルス検出部42は、パルスディレイメモリ51の波形信号のレベルがスレショルドを越える時点を検出する別のスレショルド検出部52と、スレショルド間隔カウンタ50が出力した値N/2を数え上げ、カウントアップが満了したときに検出フラグを生成出力する中心検出カウンタ53(第2のカウンタ部)とを備える。
【0038】
この中心検出カウンタ53の後段側に、ペアパルス検出部42は、中心検出カウンタ53からの検出フラグを通知されると第1のパルスを検出した旨のシングルパルス検出信号を出力するシングルパルス検出部54と、このシングルパルス検出信号を受けた時点から予め決められた値のカウントアップクロックを数え上げるパルスペア間隔カウンタ55と、このパルスペア間隔カウンタ55がカウントアップを終了したときに第2のパルスが存在している場合、2番目のパルスも検出しパルスのペアを検出した旨のペアパルス検出信号を出力するパルスペア検出部56とを備える。
【0039】
また、図2のパルスモニタ26によるモニタ機能について述べると、パルスモニタ26が有する6つのチェック部43、44、45、46、47及び48はいずれも応答信号から、パルス間隔やシステムディレイなどの値を計測すること、計測値がシステム規定値の範囲内であるかどうかを検証すること、及び検証結果が否定的である場合、アラームを出力することを行うようにしている。チェック部43〜48は、ペアパルス検出部42が2つのパルスからなるペアパルス信号を検出した後、このペアパルス信号を元に計測等を行う。
【0040】
パルス間隔チェック部43は、ペアパルス信号の2つのパルスの間のパルス間隔の値を測定し、測定値が正常であることをチェックする。システムディレイチェック部44は、送信回路23から疑似質問信号が送出されてから受信回路25がその応答信号を受信するまでのシステムディレイ時間を測定し、測定値が正常であることをチェックする。応答効率チェック部45は、トランスポンダ部13が例えば1000発のペアパルスを送出したときに600発の応答が返って来ているかどうかといった応答効率を測定し、測定値が正常であることをチェックする。
【0041】
更にペアパルスレートチェック部46は、例えば1000発のペアパルスがトランスポンダ部13から送信されているかどうかなどの送信パルスレートの上限値を測定し、この値をチェックする。距離測定装置10を利用する航空機の数が増加すると、各航空機のインタロゲータからの質問信号の数が増加する。それに伴い距離測定装置10が各質問信号に応答するための送信パルスレートが増加する。送信パルスレートが高い状況下で1機の航空機とこの距離測定装置10とが通信する回数は、送信パルスレートが低い状況下で同じ航空機と距離測定装置10とが通信する回数よりも少ない。距離測定装置10に近い航空機による質問信号の送出回数は距離測定装置10から遠い航空機による質問信号の送出回数よりも多い。地上局に近い航空機が十分な応答率を確保することが可能なように、パルスのペアを送信するレートには上限が設けられている。ペアパルスレートチェック部46はこのレートをチェックする。
【0042】
また、送信電力チェック部47は、ペアパルス信号のパルス部分の電力値を測定し、パルス部分の電力値が予め規定された送信電力値以上であるかどうかをチェックする。送信IDチェック部48は、距離測定装置10が設置される地上局のIDが送出されているかどうかをチェックする。これらの6種類のチェック機能を全てパルスモニタ26が実行することによって、距離測定装置10がパルスペアを正常に検出していることが検証されるようになっている。
【0043】
上述の構成を有する本実施形態に係る距離測定装置10において、通常の運用時には、図1のトランスポンダ部13は、航空機に搭載されているインタロゲータからの質問信号を受信していないときでも、1秒当りの送出回数を規定した条件下でランダムな時間間隔でパルスのペアにより変調されたランダムパルス信号を順次送信している。トランスポンダ部13は、航空機からの質問信号を受信すると、ランダムパルス信号の代わりに応答信号を送信する。通常の運用状態において、トランスポンダ部13は、ランダムパルス信号と応答信号とを含めて、1000〜4000pps(Pulse pairs PerSecond)のパルス信号を常時送信している。
【0044】
一方、インタロゲータは、ランダムな時間間隔で質問信号を発射している。トランスポンダ部13は、インタロゲータから発射される質問信号を受信し、復調し、この質問信号をデコードする。この後、トランスポンダ部13は、例えば50.0μsec等システムディレイ時間を付与して再度符号化処理を行い送信系から応答信号を航空機に対して送信する。インタロゲータは、応答信号を受信し、復調し、質問信号と応答信号との経過時間を計測し、所定の計算式により距離測定装置10から自機までの距離情報を算出する。
【0045】
図4にパルスモニタ26によるペアパルス検出を説明するためのタイミングチャートを示す。図4(a)には2つのパルスを有するペアパルス信号が示されており、図4(b)には図4(a)のペアパルス信号を所定時間遅延させた同じペアパルス信号が示されている。図4(a)の左側の最初に受信される第1のパルスと、図4(b)の同じ第1のパルスとに着目して述べる。
【0046】
図4(a)の入力パルス信号は、パルスディレイメモリ51に記憶された受信波形の波形データをアナログ的に表示した波形を表す。同図のスレショルド検出パルスは、第1のスレショルド検出部49の出力を表す。スレショルド間隔カウンタ値はスレショルド間隔カウンタ50のカウンタ値を表す。パルス中心位置カウンタ値は、中心検出カウンタ53へ渡されるべきカウンタ値を表す。このパルス中心位置カウンタ値として、スレショルド間隔カウンタ50のカウンタ値Nが得られたときのそのNを2分した値が示されている。
【0047】
図4(b)の入力パルス信号のディレイ信号は、パルスディレイメモリ51に記憶された同じ受信波形の波形データを、遅延させて出力された波形を表す。遅延時間は、パルス幅3.5μsecよりも長く、パルス間隔12μsecよりも短い所定時間である。この遅延時間の遅延量は変更可能であり、実験、シミュレーション又はフィールドテストによって遅延量の値は決められる。また、同図のスレショルド検出パルスは第2のスレショルド検出部52の出力を表す。パルス中心位置カウンタ値は、中心検出カウンタ53の実カウンタ値を表す。シングルパルス検出値はシングルパルス検出部54の出力を表す。パルスペア間隔カウンタ値はパルスペア間隔カウンタ55の出力を表す。ペアパルス検出値は、パルスペア検出部56の出力を表す。
【0048】
トランスポンダ部13からモニタ部14に入力された応答信号は図3の入力パルス信号として、スレショルド検出部49とパルスディレイメモリ51とに入力される。スレショルド検出部49は、入力パルス信号の波形が、あるスレショルドレベルを超えた場合、検出パルスを出力する。
【0049】
図4(a)の時点Aで示されるように、信号レベルがスレショルドレベルを超えたことが検出されるとスレショルド間隔カウンタ50はスレショルド間隔をカウントし始める。同図のように、カウンタ値は1、2、3…とインクリメントされていく。時点Bで示されるように、信号レベルがスレショルドレベルを下回ったことをスレショルド検出部49が検出すると、スレショルド間隔カウンタ50はカウンタアップを終了しそのときのカウンタ値Nを出力する。
【0050】
波形に着目して述べると、第1のパルス状の波形のうち、この波形とスレショルドとが交差する左右両裾部及びこれらの両裾部の間の部分の波形がサンプリングされる間、スレショルド間隔カウンタ50はカウントアップを続ける。経時的に信号レベル値がサンプリングされていったときに、スレショルドを信号レベルが下回ると、スレショルド間隔カウンタ50はカウントアップ動作を停止する。このときのカウンタ値がNである。16進数表現では、カウンタ値のLSBをとった値がこのカウンタ値の半分の値に相当する。スレショルド間隔カウンタ50は、カウンタアップを終了すると、カウンタ値Nの1/2の値N/2を入力パルスの中心位置を表す指標として出力する。
【0051】
パルスディレイメモリ51では、入力パルス信号の波形の中心位置の値が検出されるまでの間、この入力パルス信号がディレイさせられる。例えばパルス幅3.5よりも長く、パルス間隔得12μsecよりも短い時間が経過した後、スレショルド検出部52及び中心検出カウンタ53は動作を開始する。図4(b)に示すように、スレショルド検出部52は、遅延させておいた入力パルス信号がスレショルドを越えるかどうかを判定し始める。このスレショルド検出部52は時点Cで示されるように、信号レベルがスレショルドレベルを超えたことを検出する。
【0052】
検出されると中心検出カウンタ53はカウント動作を始める。同図のように、中心検出カウンタ53は、1、2、3…とインクリメントしていき、この中心検出カウンタ53のカウンタ値が値N/2と一致したかどうかを見て、一致した場合、カウント動作を終了させる。時点Dで示されるように、中心検出カウンタ53はシングルパルス検出のパルスを出力する。中心検出カウンタ53が行うN/2まで数え上げる処理では、カウントアップクロックはスレショルド間隔カウンタ50が用いるカウントアップクロックと同じである。このように、ディレイされた入力パルス信号のスレショルド検出が行われる。
【0053】
また、シングルパルスが検出されると、パルスペア間隔カウンタ55はカウント動作を開始する。パルスペア間隔カウンタ55のカウンタ値が、DMEで規定されているパルスペア間隔の範囲内である期間に、例えば時点Eにおいて新たなシングルパルスが検出された場合、パルスペア検出部56は時点Fで示されるようにパルスペア検出を出力する。
【0054】
引き続き、時点Dでのフラグパルスにより1つのパルスの山が検知され、更にもう一個のパルスが時点Eにて検知されると、2つのパルスの各パルス幅中心位置どうしの間隔をパルス間隔チェック部43が測定する。
【0055】
また、モニタ部14は自分自身が出力した擬似質問信号の出力タイミングを知っているため、図2のパルスタイミング生成部39から信号が通知されから、新しく入力パルス信号が受信されるまでの時間を計測することにより、システムディレイがチェックされる。
【0056】
また、例えば100発程度の質問信号をモニタ部14がトランスポンダ部13へ送出しているのに対し、応答信号が100発トランスポンダ部13から返っているかどうかがチェックされる。また、2つのパルスのペアが送出されるレートについても、1000から4000の間で推移していること等が検出される。送信電力チェックについては、検出された2つのパルスの両方のパルスレベルの最大値をチェックすることにより行われる。2つのパルスの間隔によって各質問信号にはIDが割当されているため、IDもチェックされる。
【0057】
このように、本実施形態に係る距離測定装置10では、スレショルド間隔カウンタ50が2つのパルスのうちの1つについてそのパルス波形の正確な中心位置を求めることにより、入力パルス信号の形状が変化したとしても、この形状の変化に左右されずにペアパルス間隔やシステムディレイを求めることが出来るようになる。
【0058】
パルスを検出する方法としては、スレショルドレベルから検出する方法、信号波形の振幅の最大値から検出する方法、パルス状の信号波形の立上りの傾き又は立下りの傾きから検出する方法も存在する。パルスの立上りを検出する方法として、信号レベルがスレショルドを越えたことを検出のトリガとする方法を図5を参照し比較参考例として述べる。
【0059】
図5はパルスのペアのうちの一方の波形を示す図である。パルス信号60はモニタ部が受信検波したトランスポンダからの応答信号の検波出力である。モニタ部の受信回路は、パルス位置検出のタイミング基準点として、パルス信号60の立上り部分の半振幅点を採用している。トランスポンダは応答信号を送信系終段で増幅しサーキュレータへ応答信号を入力する。トランスポンダから送出されるパルス信号60はパワーアンプにより増幅されアンテナから送出される。
【0060】
動作中のパワーアンプはこのパワーアンプの温度上昇や周囲温度の変動によって増幅率が変化するため、応答信号の信号レベルは温度特性を持つ。増幅率の変化によるパワーアンプの入出力特性の非線形性によって、トランスポンダからのパルス信号60の立上り時間が変化する。温度が上昇した状態のパワーアンプを用いてトランスポンダが応答信号を送信した場合、モニタ部の受信回路は、例えばパルス信号61やパルス信号62のような波形の信号を検波出力する。
【0061】
通常時、スレショルドレベル63に対して、受信回路は信号レベルが半振幅であるタイミングt1にパルス信号60を検出する。増幅率が変化した後、モニタ部の受信回路は同じスレショルドレベル63に対し、タイミングt2にパルス信号61を検出する。あるいは受信回路はタイミングt3にパルス信号62を検出する。図5のパルス立上り検出の例では、タイミングt1にてパルスを検出することにより、モニタ部は、システムディレイを例えば50μsecと計測する。タイミングt2やタイミングt2にてモニタ部がパルスを検出した場合、モニタ部によるシステムディレイの計測値は50.2μsecや50.3μsec等と異常発生と判断される可能性を持つ値を示す。
【0062】
これに対して、本実施形態に係る距離測定装置10は、カウンタ値N/2まで数え上げる処理を行っているため、検波出力がたとえ図5のパルス信号60、61、62のいずれであっても、これらのパルス信号60〜62の間で、第1のパルスの中心位置が同じ位置で出てくるようにしてパルス検出を行えるようになる。
【0063】
パルス信号波形を微分することにより、このパルス信号波形の立上りの傾きや、立下りの傾きを求めるパルス検出方法では、パルス波形の形状が変化したときに計算量が増大し、処理に時間を要する。また、伝送回路上での反射の影響を受けてパルスの形状は変わり、製品毎にパルス形状が変わることもあるため、信号波形の振幅の最大値からパルス検出する方法を用いても、モニタ部はパルスの検出ポイントがずれた状態でこのパルスを検出することがある。
【0064】
これに対して、本実施形態に係る距離測定装置10では、モニタ部14が使用するパルス検出のポイントがずれないように検出でき、トランスポンダ部13が送出するペアパルス信号をこのペアパルス信号の正確な位置において検出することが出来る。パルスの立上りや立下りの傾きがパルス信号60〜62間のように異なっていても、あるいは、パルス信号の最大値や最小値が各パルス信号60〜62の間で異なっているような場合であっても、第1のパルスのパルス波形の中心位置で検出するため、正確な検出を行える。
【0065】
従って、ディレイチェック、レベルチェックも正確になり、パルスのフェイントやクリエイトもなくなる。
【0066】
パルスの形状が若干変化することに加えて、パワーアンプの製造時の特性のばらつき等や、他の回路部品の経年使用による特性変化によってもパルスの立上り時間は変化するものである。従来技術では、復調出力の波形中のパルスを検出するポイントがずれる場合が生じることがあるが、本実施形態に係る距離測定装置10によれば、ポイントずれを生じずに検出動作を行える。
【0067】
尚、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。上記の実施形態では、パルスモニタ26は、パルス立上りによって2つのパルス信号のパルス検出を行っていたが、2つのパルス信号の各パルス立下りによってパルス検出を行ってもよい。この場合、トランスポンダチェック用パルス発生回路22は、パルス立下り時間を制御するようにする。上記実施形態は、パルス間隔が12μsであるDME/Nの運用モードの例の説明であったが、モードの種別は種々変更可能である。
【0068】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0069】
11…アンテナ部、12…スイッチ回路、12a…方向性結合器、12b…終端抵抗器、12c,24…サーキュレータ、13…トランスポンダ部、14…モニタ部、15…コントロール部、16…系切替ステータスモニタ、17…リモート装置、18…受信回路、19…応答回路、20,23…送信回路、21…送信切替回路、22…トランスポンダチェック用パルス発生回路、25…受信回路、25a…検波部、26…パルスモニタ、27…アッテネータ、28…変調器、29…PLLクロックシンセサイザ、30…D/A変換器、31…乗算器、32…マルチパス選択部、33…パルス反転部、34…パルス遅延処理部、35…パルスレベル調整部、36…パルス立上り時間制御部、37…パルスペア間隔制御部、38…パルスノイズオン/オフ処理部、39…パルスタイミング生成部、40…パルスレベル生成部、41…A/D変換器、42…ペアパルス検出部(パルス検出部)、43…パルス間隔チェック部、44…システムディレイチェック部、45…応答効率チェック部、46…ペアパルスレートチェック部、47…送信電力チェック部、48…送信IDチェック部、49…スレショルド検出部(タイミング検出部)、50…スレショルド間隔カウンタ(第1のカウンタ部)、51…パルスディレイメモリ(記憶部)、52…スレショルド検出部、53…中心検出カウンタ(第2のカウンタ部)、54…シングルパルス検出部、55…パルスペア間隔カウンタ、56…パルスペア検出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線信号を送受信するアンテナ部と、
このアンテナ部を介して航空機から質問信号を受信し、この質問信号に応答して応答信号をこの航空機に対して送信するトランスポンダ部と、
このトランスポンダ部に接続された方向性結合器と、
この方向性結合器を介して、擬似質問信号を前記トランスポンダ部に出力し、前記トランスポンダ部からこの擬似質問信号に応答して、2つのパルスを含むペアパルス信号によりパルス変調された応答信号を入力され、前記トランスポンダ部の動作を監視するモニタ部と、を備え、
このモニタ部は、
入力された前記応答信号を検波し、2つのパルス状のピークを有する波形信号を出力する検波部と、
この検波部が出力する前記波形信号のレベルが所要のスレショルドを越える期間を計測し、計測後、前記波形信号を所定時間遅延させ、この遅延させた波形信号の波形中の前記スレショルドを越えた点から前記期間の半分の期間が経過した点を前記波形信号の中心位置として少なくとも1つのパルスを検出するパルス検出部とを備えたことを特徴とする距離測定装置。
【請求項2】
前記パルス検出部は、
前記検波部からの前記波形信号を記憶する記憶部と、
この記憶部の前記波形信号のレベルが前記スレショルドを越える第1の時点、および前記レベルが前記スレショルドを下回る第2の時点を検出するタイミング検出部と、
このタイミング検出部が検出したこれらの第1の時点および前記第2の時点の間隔をカウントアップし、得られたカウンタ値の1/2の値を出力する第1のカウンタ部と、
この第1のカウンタ部が出力した前記1/2の値をカウント動作し、カウントアップが満了したときに前記中心位置を検出したフラグを出力する第2のカウンタ部とを備えたことを特徴とする請求項1記載の距離測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−80893(P2011−80893A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−234197(P2009−234197)
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】