説明

距離測定装置

【目的】 位置検出素子(PSD)を有し、その出力を正規化して物体までの距離を得るようにした距離測定装置において、割算器を用いることなく信号処理を行えるようにすること。
【構成】 PSD4の出力をI/V変換器5,6によって電圧信号に変換する。そしてその出力を切換スイッチ12,13に与え、クロック発振器11の第1のクロック信号CK1によって交互に接地するように切換える。そしてその出力とサンプルホールドした出力とを比較器16によって比較することによって、割算器と等価な処理を行い、設定距離までの判別信号を出力するようにしている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は光を物体検知領域に照射し三角測量法によって物体までの距離や変位を測定するための距離測定装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の距離測定装置は光ビームを物体検知領域に照射し、それと一定距離隔てて配置された位置検出素子、例えばポジションセンシティブディバイス(PSD)に得られる反射光の受光位置に基づいて物体までの距離を検知するようにしている。図6は従来の距離測定装置の構成を示すブロック図である。本図において投光素子のドライブ回路1より投光素子2を駆動して集束レンズ3を介して物体検知領域に光ビームを照射しており、これと所定角度隔てた位置に位置検出素子PSD4を配置する。このとき光ビームの照射方向に物体があれば反射光が得られるが、物体の位置によってPSDの受光位置が変化し、その両端の電流出力も変化する。従ってPSD4の両端に得られる光電流出力をI/V変換器5及び6によって電圧信号に変換し、その出力を加算器7,減算器8によって加算及び減算を行う。そしてこれらの出力の比を割算器9によって算出することによって、物体までの位置信号を出力している。こうすれば物体の表面に反射率や受光量の総和にかかわらず受光信号を正規化して、物体までの距離に対応する信号が得られる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながらこのような従来の距離測定装置では、対象物の反射率に左右されることなく変位出力を得るためには、割算器9が必要となる。この割算器9の出力Xは、I/V変換器5,6の出力を夫々VA ,VB とすると、次式で示される。
X=A(VA −VB )/(VA +VB )+BここでXは変位、A,Bは変換係数である。このように従来の距離測定装置は割算器を用いる必要がある。従って回路構成が複雑で高価となる。又割算器の分母の入力レベルに制限があるため、ダイナミックレンジにも一定の限界があるという欠点があった。更に割算器の温度特性を向上させることが難しく、距離測定装置の総合的な温度特性を向上させることが難しいという欠点があった。
【0004】本発明はこのような従来の割算器を用いた距離測定装置の問題点に鑑みてなされたものであって、割算器を用いることなく設定した距離内に物体が存在するかどうかを判別できるようにすることを技術的課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は投光素子を有し測定用光を検出領域に向かって投射する投光部と、投光部の光軸より一定角度をもって交差するように配置され、物体からの反射光を受光し照射位置によってその両端に異なった電流出力を与える位置検出素子を有する受光部と、を具備し、位置検出素子の受光出力に基づいて物体までの距離を検出する距離測定装置であって、位置検出素子の両端に得られる電流出力を電圧に変換する一対のI/V変換器と、周期的に投光素子を駆動すると共にその投光タイミングに合わせて第1,第2のクロック信号を交互に出力するクロック発生器と、I/V変換器の出力が夫々一方の切換接点に与えられ、他方の切換接点が接地され第1のクロック信号によって交互に接地側に接続される一対の切換スイッチと、切換スイッチの共通接続端に両端が接続され、測定距離に対応する分圧比を設定する可変抵抗器と、一方の切換スイッチの出力が与えられ、第1のクロック信号によって入力信号をサンプリングするサンプルホールド回路と、サンプルホールド回路の出力と可変抵抗器の中点の出力を比較する比較器と、比較器の出力を第2のクロック信号によって保持する保持回路と、を具備することを特徴とするものである。
【0006】
【作用】このような特徴を有する本願の請求項1の発明によれば、クロック発振器によって断続的に投光素子を駆動し、そのクロック信号とタイミングを合わせて第1のクロック信号によって一対の切換スイッチを切換えることによって可変抵抗器の分圧比とPSDの入力信号に対応した信号が得られる。この信号をサンプルホールド回路によってホールドすることにより、比較器の一方の入力には常に一定の信号が得られる。又可変抵抗器の出力は常にクロック信号によって切換えられているため、第2のクロック信号のタイミングでは、他方のI/V変換器の出力が得られる。従ってこれを比較することによって可変抵抗器で設定された距離までに物体が存在するか否かを判別することができる。そして比較出力が得られる瞬間の可変抵抗器の出力を保持することによって、割算器を用いることなく物体までの位置信号を得るようにしている。又本願の請求項2の発明によれば、一方のI/V変換器の入力側に可変抵抗器を設け、その抵抗値を前述のように設定することにより可変抵抗器の分割比に対する設定距離を直線的に変化できるようにしている。
【0007】
【実施例】図1は本発明の一実施例による距離測定装置の全体構成を示すブロック図である。本図において前述した従来例と同一部分は同一符号を付して詳細な説明を省略する。本実施例においてクロック発振器11はドライブ回路1に投光クロック信号CK0を与えると共に、そのクロック信号と同一のタイミングで交互に第1,第2のクロック信号CK1,CK2を出力するものである。そしてI/V変換器5及び6は演算増幅器5a,5bによって構成され、その出力は夫々切換スイッチ12,13の一方の切換接点に接続される。切換スイッチ12,13の他方の切換接点は夫々接地されており、その共通接続点間には可変抵抗器14が接続される。可変抵抗器14は物体までの距離を設定するためのものであって、その分割比kは適宜設定されている。ここで可変抵抗器14の両端の抵抗に対してその中点までの抵抗係数をk(0≦k≦1)とする。そして可変抵抗器14の中点はサンプルホールド回路15及び比較器16の一方の入力端に接続される。
【0008】さて切換スイッチ12及び13は、クロック発振器11の第1のクロック信号CK1によって交互に接地側、及びI/V変換器5,6側に切換えるものである。又この第1のクロック信号CK1はサンプルホールド回路15の入力スイッチにも与えられている。サンプルホールド回路15はI/V変換器5の出力が可変抵抗器14によって分割されたレベルの信号を常に保持するものであり、その出力は比較器16の他方の入力端に与えられる。比較器16はこれらの入力信号を比較するものであって、その出力はラッチ回路17に与えられる。ラッチ回路17は第2のクロック信号CK2によって入力信号を保持し、物体までの距離に対応したデジタル信号を出力するものである。
【0009】次に本実施例の動作について図2のタイムチャートを参照しつつ説明する。図2(a)はクロック発振器11の投光素子駆動用の投光クロック信号CK0を示しており、(b),(c)は夫々これと同一のタイミングで交互に出力される第1,第2のクロック信号CK1,CK2を示している。クロック信号CK0によってドライブ回路1より投光素子2が駆動される。そうすれば物体までの距離に対応してPSD4に受光信号が得られる。この両端の電流出力IA ,IB は物体までの距離に対応して変化する信号である。この信号は夫々I/V変換器5,6によって電圧信号にVA ,VBに変換され、切換スイッチ12,13に与えられる。ここで検出距離に対応して可変抵抗器14の分割比kを適宜設定しておくものとする。
【0010】さて時刻t1以降に第1のクロック信号CK1がHレベルとなるタイミングでは、切換スイッチ12,13は図示のような位置にあり、切換スイッチ12の共通接点がI/V変換器5の出力側に、切換スイッチ13の共通接点が接地側に接続されるものとする。このとき可変抵抗器14の中点より(1−k)VA の信号が得られる。このタイミングではサンプルホールド回路15の入力スイッチが閉成されるため、(1−k)VA の信号がサンプリングされる。そして図2(b)に示す第1のクロック信号CK1がLレベルとなる間には、サンプルホールド回路15によってその出力がホールドされる。又切換スイッチ12の共通接点が接地され、切換スイッチ13の共通接点がI/V変換器6の出力側に接続される。このときには可変抵抗器14の中点よりkVB の信号が出力される。従って図2(d)に示すように可変抵抗器(VR)14より(1−k)VA とkVB の信号が交互に得られることとなる。
【0011】又図2(d)に示すようにサンプルホールド回路15は常に(1−k)VA の信号を出力する。比較器16ではこのサンプルホールド回路15の出力と可変抵抗器14の出力とを比較する。この比較器は第2のクロック信号CK2がHのタイミングでのみ(1−k)VA とkVB の比較を行う。なぜならば第1のクロック信号CK1がHのタイミングでは、2つの入力信号は常に同一となるからである。ここで比較器16はkとVA /(VA +VB )の比較を行っていることとなる。なぜならば仮に今、kVB <(1−k)VA とすれば、これはk(VA +VB )<VA 、即ちk<VA /(VA +VB
であって、この割算をしていることと等価となっている。ここで距離に対する変位出力VA /(VA +VB )は図3(a)に示すように変化し、一義に定まる。従って分割比kが0〜1のいずれかの間に比較器16の値が反転する値が存在する。従って設定した値k、即ち設定距離に対して比較器16より物体までの距離が近いか遠いかを判別することができる。この出力は第2のクロック信号CK2によって図2(g)に示すようにラッチ回路17によりラッチされる。
【0012】さて時刻t2で物体までの位置が変化したものとすると、それに対応して可変抵抗器14の出力レベルが変化する。従って次の第1のクロック信号CK1のタイミングでは図2(e),(f)に示すようにサンプルホールド回路15の出力が低下し、それによって比較器16の出力も反転する。従って図2(g)に示すように、次の第2のクロック信号CK2のタイミングでその出力がラッチ回路17によって保持され、出力されることとなる。
【0013】次に本発明の第2実施例について説明する。図4は第2実施例による距離測定装置の全体構成を示すブロック図、図5はその光学系部分を詳細に示す図である。これらの図において前述した第1実施例と同一部分は同一符号を付して詳細な説明を省略する。さて本実施例ではI/V変換器5の入力抵抗を可変抵抗器22とし、その抵抗値をRaとする。そして演算増幅器5a,6aのフィードバック抵抗をRfとする。こうすればI/V変換器5の出力はaVA となる。以後の動作は第1実施例と同様である。ここでI/V変換器5(又は6)の入力抵抗Raを特開平2−240508号に示されているように、PSD4の受光面の長さを2L,受光レンズ21の中心点を通り投光軸に平行な線からPSD4の受光面に平行に計ったPSD4の中心までの距離をy0 , PSD4の両端間の抵抗をRとすると、これらの間の関係を次式Ra/R=y0 /2L−1/2となるように選択する。こうすれば図3(b)に示すように距離に対する加算出力aVA /(aVA +VB )を直線的に変化させることができ、可変抵抗器14による距離設定を容易に行うことができる。
【0014】尚本実施例はI/V変換器の入力側の入力抵抗を変化させることによってI/V変換器の変換係数を変化させるようにしているが、フィードバック抵抗Rfを変化させても同様の効果が得られる。
【0015】
【発明の効果】以上詳細に説明したように本発明によれば、距離測定装置において必要とされていた割算器を不要として信号処理を行い、距離に対応したデジタル信号を得ることができる。このため回路構成が簡単で安価なものとなるだけでなく、割算器を使用する必要がないため、測定できる対象物の反射率のダイナミックレンジを広くすることができる。又割算器の温度特性を考慮する必要がなく、耐環境性を向上させることができるという効果が得られる。更に本願の請求項2の発明では、これらの効果に加えて検出距離の距離設定を直線的にすることができる。従って可変抵抗器14の距離設定を容易に行うことができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例による距離測定装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】本実施例の動作を示すタイムチャートである。
【図3】(a)は第1実施例による距離に対応するアナログ信号レベルを示すグラフ、(b)は第2実施例の距離に対応するアナログ信号レベルを示すグラフである。
【図4】本発明の第2実施例による距離測定装置の全体構成を示すブロック図である。
【図5】第2実施例の光学系部分を示す説明図である。
【図6】従来の距離測定装置の全体構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 ドライブ回路
2 投光素子
4 PSD
5,6 I/V変換器
11 クロック発振器
12,13 切換スイッチ
14 可変抵抗器
15 サンプルホールド回路
16 比較器
17 ラッチ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】 投光素子を有し測定用光を検出領域に向かって投射する投光部と、前記投光部の光軸より一定角度をもって交差するように配置され、物体からの反射光を受光し照射位置によってその両端に異なった電流出力を与える位置検出素子を有する受光部と、を具備し、前記位置検出素子の受光出力に基づいて物体までの距離を検出する距離測定装置であって、前記位置検出素子の両端に得られる電流出力を電圧に変換する一対のI/V変換器と、周期的に投光素子を駆動すると共にその投光タイミングに合わせて第1,第2のクロック信号を交互に出力するクロック発生器と、前記I/V変換器の出力が夫々一方の切換接点に与えられ、他方の切換接点が接地され前記第1のクロック信号によって交互に接地側に接続される一対の切換スイッチと、前記切換スイッチの共通接続端に両端が接続され、測定距離に対応する分圧比を設定する可変抵抗器と、前記一方の切換スイッチの出力が与えられ、前記第1のクロック信号によって入力信号をサンプリングするサンプルホールド回路と、前記サンプルホールド回路の出力と前記可変抵抗器の中点の出力を比較する比較器と、前記比較器の出力を前記第2のクロック信号によって保持する保持回路と、を具備することを特徴とする距離測定装置。
【請求項2】 前記一方のI/V変換器は、その入力抵抗をRa,位置検出素子の両端の抵抗値をR,位置検出素子の受光面の長さを2L,位置検出素子の前方に配置されるレンズの中心線を通る投光軸に平行な線から位置検出素子の受光面に平行に計ったPSDの中心までの距離をy0 とすると、これらの間に以下の関係式Ra/R=y0 /2L−1/2が成り立つように構成したことを特徴とする請求項1記載の距離測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【公開番号】特開平5−99658
【公開日】平成5年(1993)4月23日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−290707
【出願日】平成3年(1991)10月9日
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)