説明

路線価算出装置、地域係数決定支援装置及び地域係数決定支援プログラム

【課題】各状況類似地域間の路線価を公平に評価できる路線価算出装置、地域係数決定支援装置及び地域係数決定支援プログラムを提供する。
【解決手段】路線価算出部28は、路線価を算出する対象である対象路線について不動産鑑定士が算出した主要路線価と、上記対象路線が所属する用途地区の比準表と、上記対象路線が所属する状況類似地域の地域係数を取得する。路線価算出部28は、上記対象路線を交差点及び状況類似地域の境界により区分し、各区間毎に、主要路線価、比準率及び地域係数を使用して路線価を算出する。報知部30は、各区間毎の路線価を比較し、その較差が所定の基準値を超えている場合には、地域係数の設定値が不適当である旨報知する。このとき、地域係数候補提示部32が新たな地域係数を提示し、または地域係数候補受付部34が使用者の算出した地域係数の候補を受け付け、これらを新たな地域係数として採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路線価算出装置、地域係数決定支援装置及び地域係数決定支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固定資産評価等を目的として土地の価格評価を行う場合には、現況利用用途が同じである地区、例えば商業地区、住宅地区、工業地区等に区分した用途地区毎に比準表を作成し、比準表に規定された比準率と、用途地区をさらにその状況が相違する地域に区分された地域(状況類似地域)ごとに1箇所設定する標準宅地を不動産鑑定士が算出した鑑定評価額の7割価格(主要路線価)とに基づいて各路線の路線価を算出している。上記比準表を用途地区毎に作成するのは、用途地区毎に土地の価格を構成する要因と影響の度合いが異なるためである。また、比準表には、上記比準率が規定されているが、比準率は上記土地の価格を構成する要因と各要因の影響の度合い(市場要求度等)とに応じて土地の価格の補正係数として決定される。なお、上記要因としては、例えば駅までの距離、人あるいは自動車等の通行量、道路の幅員等が例示できる。
【0003】
ここで、下記特許文献1には、比準表に規定された比準率に基づいて求めた路線価を地図情報に関連付けられた路線図形情報に反映させる路線価評価支援システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−183378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
土地の価格評価をきめ細かく行うためには、上記比準表をなるべく面積の小さな単位毎に作成するのが好ましい。これは、同じ用途地区であっても、土地の価格を構成する要因と各要因の影響の度合いが異なり、また主要路線価にも差異があるからである。そこで、例えば上述した用途地区をさらに区分した状況類似地域毎に比準表を作成するのが好ましい。ここで、状況類似地域としては、例えば用途地区である住宅地区を、区画が整然と整理されている区画整理地区と在来の居住地域である既存集落地域等とに区分した際の各地域が例示される。
【0006】
しかし、比準表の数が多くなると、固定資産評価事務等が煩雑となり、現実的ではなくなるので、現状はおおむね用途地区毎に比準表が作成されている。一方、同じ要因に対する土地価格への影響の程度は、状況類似地域毎に異なるのが一般的であるので、用途地区の中で一つの比準表を使用していると、状況類似地域の境界で土地の価格に大きな較差(価格差)が生じる場合がある。このため、従来は、状況類似地域の境界で隣接する路線の価格を調整し、状況類似地域の境界における土地の較差を小さくするような土地価格評価が行われていた。
【0007】
図8には、従来の方法により算出された状況類似地域毎の路線価の概念図が示される。図8では、状況類似地域A、B、Cが存在しており、二点鎖線により囲まれた領域として示されている。また、それぞれ不動産鑑定士が鑑定する標準宅地が「標」と表示されている(状況類似地域Aでは主要路線価が10万円であり、状況類似地域Bでは主要路線価が8万円であり、状況類似地域Cでは主要路線価が12万円である)。また、各「標」を起点として記載された矢印付きの直線は、主要路線価に対して比準表に規定された比準率を乗じて得た各路線の路線価の推移を表している。状況類似地域Aでは状況類似地域Bとの境界に向かって路線価が下落し、状況類似地域Bでは状況類似地域A及び状況類似地域Cとの境界に向かって路線価が上昇し、状況類似地域Cでは状況類似地域Bとの境界に向かって路線価が下落している。ここで、図8の各状況類似地域A、B、Cは、何れも同じ用途地区に所属しており(例えば住宅地区)、路線価を算出するための比準表は同じものが使用される。
【0008】
図9には、従来の比準表の例が示される。図9は、路線価に影響を及ぼす要因の一例である道路幅員に関する比準表である。図9において、縦軸に標準宅地の主要路線の幅員が示され、横軸に主要路線価に基づいて路線価を算出する対象である対象路線の幅員が示されている。また、それぞれの交差部には、主要路線の幅員と対象路線の幅員との関係により決定された比準率の調整値αが記載されている。この調整値αは、主要路線の路線価に乗ずる各路線の比準率を決定するものである。ここで、調整値αは%(パーセント)で示されており、主要路線の比準率(1.000)に加減することにより各路線の比準率を求める。例えば、道路幅員2〜3mの主要路線を不動産鑑定士が評価し、その路線価(主要路線価)がx万円であった場合に、対象路線の幅員が2〜3mであれば調整値αは0.0であり、比準率が1.000+0.0=1.000となって、路線価はx×1.000=x万円となる。また、対象路線の幅員が0〜2mであれば調整値αは−2.0(%)であり、比準率が1.000−0.02=0.980となって、路線価はx×0.980=0.98x万円となる。さらに、対象路線の幅員が3〜4mであれば調整値αは2.0(%)であり、比準率が1.020となって、路線価は1.02x万円となる。
【0009】
なお、比準表は図9に示された道路幅員に限らず、道路の種類(国道、県道、市道等)、舗装の有無、勾配の程度その他の街路条件、最寄り駅からの距離、官公庁や学校からの距離、大型店舗までの距離その他の交通・接近条件、及び画地の配置の整然性、宅地の利用度、日照、通風、眺望等の良否その他の環境条件等、路線価に影響を及ぼす要因毎に作成される。
【0010】
通常、比準表に規定された比準率すなわち各要因が路線価に及ぼす影響の度合いは、状況類似地域間で同質(例えば道路幅員が狭くなるほど路線価が下落する)であっても同量ではない(例えば、道路幅員に対する路線価の下落額の程度が異なる)。このため、図8に示されるように、状況類似地域A、B、Cの各境界において路線価に較差が生じる場合がある。この較差は、各状況類似地域における主要路線価が異なることによりさらに大きくなる。従来は、状況類似地域の境界における路線価の較差を小さくするために、較差の大きい路線毎に個別に適宜調整係数を設定し、この調整係数を路線価に乗じて調整していた。しかし、このような路線毎の対応では、当該状況類似地域の特性が反映されず、各状況類似地域間の路線価の公平な評価ができないという問題があった。
【0011】
本発明の目的は、各状況類似地域間の路線価を公平に評価できる路線価算出装置、地域係数決定支援装置及び地域係数決定支援プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、請求項1記載の路線価算出装置の発明は、現況利用用途が同じである用途地区毎に設定された比準率と、前記比準率を前記用途地区より狭い領域毎に調整する地域係数とに基づいて、主要路線の路線価から各路線の路線価を算出する路線価算出手段を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項2記載の地域係数決定支援装置の発明は、現況利用用途が同じである用途地区毎に設定された比準率と、前記比準率を前記用途地区より狭い領域毎に調整する地域係数とに基づいて、主要路線の路線価から各路線の路線価を算出する路線価算出手段と、前記路線価を、連続する隣接路線毎に比較し、前記路線価の較差が所定の基準値を超えた場合に、前記地域係数が不適である旨報知する報知手段と、を備えることを特徴とする。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の地域係数決定支援装置が、さらに前記路線価の較差を所定の基準値以内にするための地域係数の候補を提示する地域係数候補提示手段を備えることを特徴とする。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項2または請求項3記載の地域係数決定支援装置が、さらに前記路線価の較差を所定の基準値以内にするための地域係数の候補を受け付ける地域係数候補受付手段を備えることを特徴とする。
【0016】
請求項5記載の発明は、請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の地域係数決定支援装置において、前記地域係数が、前記用途地区内を状況が類似した領域毎に区分して設けられた状況類似地域毎に設定されることを特徴とする。
【0017】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の地域係数決定支援装置において、前記報知手段が、前記状況類似地域の境界で前記路線価を比較し、前記路線価の較差が所定の基準値を超えた場合に、前記地域係数が不適である旨報知することを特徴とする。
【0018】
請求項7記載の地域係数決定支援プログラムの発明は、コンピュータを、現況利用用途が同じである用途地区毎に設定された比準率と、前記比準率を前記用途地区より狭い領域毎に調整する地域係数とに基づいて、主要路線の路線価から各路線の路線価を算出する路線価算出手段、前記路線価を、連続する隣接路線毎に比較し、前記路線価の較差が所定の基準値を超えた場合に、前記地域係数が不適である旨報知する報知手段、として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1記載の発明によれば、路線価を公平に算出することができる。
【0020】
請求項2及び請求項7記載の発明によれば、路線価を公平に評価することができる。
【0021】
請求項3及び請求項4記載の発明によれば、路線価を公平に評価するための地域係数を採用することができる。
【0022】
請求項5及び請求項6記載の発明によれば、各状況類似地域間路線価を公平に評価するための地域係数を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態にかかる地域係数決定支援装置を構成するコンピュータのハードウェア構成の例を示す図である。
【図2】本実施形態にかかる地域係数決定支援装置の一実施形態の機能ブロック図である。
【図3】本実施形態にかかる比準表の例を示す図である。
【図4】用途地区としての住宅地区を区分した状況類似地域の状況の例を示す図である。
【図5】路線価の計算結果の例を示す図である。
【図6】図5に示された路線価の算出結果の例の概念図である。
【図7】本実施形態にかかる地域係数決定支援装置の動作例のフロー図である。
【図8】従来の方法により算出された状況類似地域毎の路線価の概念図である。
【図9】従来の比準表の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0025】
図1には、本実施形態にかかる地域係数決定支援装置を構成するコンピュータのハードウェア構成の例が示される。図1において、地域係数決定支援装置は、中央処理装置(例えばマイクロプロセッサ等のCPUを使用することができる)10、ランダムアクセスメモリ(RAM)12、読み出し専用メモリ(ROM)14、入力装置16、表示装置18、通信装置20及び記憶装置22を含んで構成されており、これらの構成要素は、バス24により互いに接続されている。また、入力装置16、表示装置18、通信装置20及び記憶装置22は、それぞれ各入出力インターフェース26を介してバス24に接続されている。
【0026】
CPU10は、RAM12またはROM14に格納されている制御プログラムに基づいて、後述する各部の動作を制御する。RAM12は主としてCPU10の作業領域として機能し、ROM14にはBIOS等の制御プログラムその他のCPU10が使用するデータが格納されている。
【0027】
また、入力装置16は、キーボード、ポインティングデバイス等により構成され、使用者が地域係数の候補、動作指示等を入力するために使用する。
【0028】
また、表示装置18は、液晶ディスプレイ等により構成され、路線価の算出対象地域の地図、後述する比準表、路線価の算出結果、地域係数の候補等を表示する。
【0029】
また、通信装置20は、USB(ユニバーサルシリアルバス)ポート、ネットワークポートその他の適宜なインターフェースにより構成され、CPU10がネットワーク等の通信手段を介して外部の装置とデータをやり取りするために使用する。
【0030】
また、記憶装置22は、ハードディスク等の磁気記憶装置であり、後述する処理に必要となる種々のデータを記憶する。なお、記憶装置22としては、ハードディスクの代わりに、EEPROM等の不揮発性記憶装置を使用してもよい。
【0031】
図2には、本実施形態にかかる地域係数決定支援装置の一実施形態の機能ブロック図が示される。図2において、地域係数決定支援装置は、路線価算出部28、報知部30、地域係数候補提示部32、地域係数候補受付部34及び通信部36を含んで構成されており、これらの機能は例えばCPU10とCPU10の処理動作を制御するプログラムとにより実現される。
【0032】
路線価算出部28は、現況利用用途が同じである用途地区毎に設定された比準率と、この比準率を用途地区より狭い領域毎に調整する地域係数とに基づいて、主要路線の路線価から各路線の路線価を算出する。上記比準率は、路線価を算出する土地の価格を構成する要因と各要因の影響の度合いとに応じて土地の価格を補正するための補正係数であり、例えば用途地区毎に設定される。また、上記用途地区は、前述したように、商業地区、住宅地区、工業地区等を例示できる。また、用途地区より狭い領域としては、例えば用途地区内を状況が類似した領域に区分して設けられた状況類似地域を例示できる。また、地域係数は、上記用途地区より狭い領域毎及び土地の価格を構成する要因毎に設定され、当該領域が所属する用途地区に設定された比準率に乗じることにより、当該領域毎に比準率を適正値に調整する。これにより、比準表の数を増加させずにきめ細かく土地の価格評価(路線価の決定)を行うことができる。なお、路線価算出部28は、比準率を調整する上記地域係数に基づいて、主要路線の路線価から各路線の路線価を算出する路線価算出装置としても機能する。
【0033】
報知部30は、上記路線価算出部28が算出した路線価を交差点及び状況類似地域の境界において連続する隣接路線毎に比較し、路線価の較差が所定の基準値を超えた場合に、地域係数が不適である旨報知する。この比較処理は、例えば状況類似地域の境界で上記路線価を比較する等の処理であり、詳細は後述する。
【0034】
地域係数候補提示部32は、上記路線価の較差を所定の基準値以内にするための地域係数の候補を提示する。この地域係数の候補は、例えば地域係数候補提示部32が算出する。
【0035】
地域係数候補受付部34は、上記路線価の較差を所定の基準値以内にするための地域係数の候補を受け付ける。この場合の地域係数の候補は、例えば使用者が路線価の較差に基づいて適宜決定した値を入力装置16から入力する。なお、地域係数候補提示部32及び地域係数候補受付部34は、少なくともいずれか一方が備えられていれば、他方はなくてもよい。
【0036】
通信部36は、路線価、比準表等の情報を外部のサーバ等から通信装置20を介して取得する。なお、上記情報は、予め地域係数決定支援装置の記憶装置22に記憶させておく場合には、通信部36を介して取得しなくてもよい。
【0037】
図3には、本実施形態にかかる比準表の例が示される。図3は、所定用途地区内における所定状況類似地域に対して設定された、図9と同様に路線価に影響を及ぼす要因の一例である道路幅員に関する比準表である。図3において、縦軸に主要路線の幅員が示され、横軸に主要路線価に基づいて路線価を算出する対象である対象路線の幅員が示されている。また、それぞれの交差部には、主要路線の幅員と対象路線の幅員との関係により決定された比準率の調整値αが記載されている。さらに、各比準率に対して状況類似地域の特性を反映した地域係数βが記載されている。この地域係数βは、状況類似地域毎に設定される。ここで、各状況類似地域の特性とは、路線価に影響を及ぼす要因が有する影響の程度・大きさの地域較差である。例えば、上記道路幅員が狭くなるほど路線価が下落するが、その際の道路幅員に対する路線価の下落額の程度は状況類似地域毎に異なる。この場合の下落額の程度の相違が地域係数βに反映される。なお、図9でも説明したように、比準表は道路幅員に限らず、道路の種類、舗装の有無、勾配の程度その他の街路条件、最寄り駅からの距離、官公庁や学校からの距離、大型店舗までの距離その他の交通・接近条件、画地の配置の整然性、宅地の利用度、日照、通風、眺望等の良否その他の環境条件等、路線価に影響を及ぼす要因毎に作成される。また、図3の例では、地域係数βが1.1となっているが、これに限定されるものではなく、状況類似地域の特性に応じて適宜決定される。なお、本実施形態では地域係数βを比準表に含めているが、別表とすることも可能である。
【0038】
ここで、図3に示された比準表に規定されている比準率(調整値αにより決定する)及び地域係数βに基づいて各路線の路線価を求める方法を説明する。
【0039】
図4には、用途地区としての住宅地区を区分した状況類似地域A、B、Cの状況の例が示される。図4では、状況類似地域A、B、Cがそれぞれ二点鎖線で囲まれた領域として示されている。状況類似地域Aは駅aの周辺領域であり、状況類似地域Cは駅bの周辺領域であり、状況類似地域Bは状況類似地域A及びCに挟まれた領域である。なお、路線価は上記状況類似地域内の全ての路線が算出対象となるが、図4の例では、道路R上の区間I〜区間VIIIの路線価を算出する例を説明する。ここで、路線価の算出対象となる区間は、道路が交差点で挟まれている区間毎、及び状況類似地域の境界を含む区間では交差点と状況類似地域の境界とで挟まれている区間毎に設定される。
【0040】
図4において、区間I、区間V及び区間VIIIは、不動産鑑定士の鑑定評価価格を基に主要路線価を算出した区間である。それらの主要路線価を、それぞれxI、xV、xVIIIとする。また、上記比準表には、各区間の比準率αI〜αVIIIが規定されている。この比準率は、図3に示された例では道路幅員について設定されているが、他の要因について設定されていてもよい。
【0041】
状況類似地域Aにおいて路線価を算出する場合には、路線価算出部28が、上記主要路線価xIに、比準表に規定された比準率を乗じて路線価とする。図5には、路線価の計算結果の例が示される。図5では、状況類似地域A、B、C毎に路線価が算出されている。図5において、「要因」は路線価に影響を及ぼす要因であり、図3に例示された道路幅員の他、最寄り駅からの距離等が含まれる。また、要因毎に図3に例示された比準表が作成されており、状況類似地域毎に設定された地域係数が各比準率に乗じられる。地域係数は、上述したように、各状況類似地域の特性に応じて適宜決定される。なお、地域係数は、全ての要因について設定してもよいが、他の状況類似地域における要因と路線価に対する影響が異なる、すなわち比準率を補正しないと路線価の較差が大きくなると判断される要因についてだけ設定してもよい。
【0042】
また、調整後比準率は、上記比準率と地域係数との積をさらに全てかけ算した結果である。各区間の路線価は、主要路線価にこの調整後比準率を乗じて算出する。なお、区間I、区間V及び区間VIIIは、それぞれ状況類似地域A、B、Cの主要路線価を算出した主要路線であるので、地域係数及び調整後比準率は空欄となっている(1に設定してもよい)。また、図5に示された各調整後比準率は例示であって、要因毎の比準率と地域係数とによってその値が変動する。
【0043】
図5に示されるように、状況類似地域Aでは、区間Iが主要路線であり、主要路線価xIが10万円となっている。また、区間IIは、調整後比準率が0.980で路線価が9万8千円となっている。また、区間IIIは、調整後比準率が0.960で路線価が9万6千円となっている。状況類似地域Bでは、区間Vが主要路線であり、主要路線価xVが8万円となっている。また、区間IVは、調整後比準率が1.200で路線価が9万6千円となっている。また、区間VIは、調整後比準率が1.250で路線価が10万円となっている。状況類似地域Cでは、区間VIIIが主要路線であり、主要路線価xVIIIが12万円となっている。また、区間VIIは、調整後比準率が0.900で路線価が10万8千円となっている。
【0044】
図6には、図5に示された路線価の算出結果の例の概念図が示される。図6では、実線が図8に示された従来の方法で算出された路線価の推移の概念図である。また、破線が図5に例示された路線価の推移の概念図である。また、「標」は不動産鑑定士の鑑定評価額の7割である主要路線価であり、図4における区間I、区間V及び区間VIIIの路線価である。
【0045】
図6において、状況類似地域A、B、Cが二点鎖線により囲まれた領域として示されており、状況類似地域Aでは状況類似地域Bとの境界に向かって路線価が下落し、状況類似地域Bでは状況類似地域A及び状況類似地域Cとの境界に向かって路線価が上昇し、状況類似地域Cでは状況類似地域Bとの境界に向かって路線価が下落している。ここで、実線で示された従来の路線価の推移では、状況類似地域の境界で大きな路線価の較差が生じている。これに対して、破線で示された本実施形態にかかる路線価では、各状況類似地域内における路線価の推移が修正され、その結果状況類似地域の境界における路線価の較差が解消または縮小している。これは、各状況類似地域A、B、Cの特性を反映した地域係数により、比準表に規定された比準率が状況類似地域毎に適宜補正されているからである。
【0046】
図2に示された報知部30は、連続する隣接路線毎に路線価を比較し、路線価の較差が所定の基準値を超えているか否かを判定する。図4の例では、区間Iから区間VIIIの路線価を比較する。路線価の較差が所定の基準値を超えている場合には地域係数が不適である旨報知する。同じ状況類似地域内では、使用する比準表および地域係数が同じであるので、路線価の較差が所定の基準値を超えるのは、通常状況類似地域の境界となる。図4の例では、区間IIIと区間IV、区間VIと区間VIIの路線価に大きな較差が生じる可能性がある。なお、状況類似地域の境界を予め指定し、記憶装置22または外部のサーバ等に記憶させておくことにより、報知部30が状況類似地域の境界について路線価を比較する構成としてもよい。例えば、図5に示された例では、区間VIと区間VIIとの間(状況類似地域BとCとの境界)における路線価の較差が8千円(108000−100000)となっている。報知部30は、この較差が所定の基準値を超えているか否かを判定する。なお、較差が任意の基準値を超えていない場合に地域係数が適である旨の報知をすることも可能である。
【0047】
上記路線価の較差が所定の基準値を超えた場合には、地域係数を補正する必要がある。そこで、地域係数候補提示部32は、路線価の較差を減少させることができる地域係数を算出し、地域係数の候補として表示装置18等を介して提示する。提示された地域係数の候補は、使用者が入力装置16から確認情報を入力したときに地域係数として採用される構成としてもよい。あるいは、地域係数候補受付部34が、使用者が算出した、路線価の較差を減少させることができる値を地域係数の候補として受け付ける構成としてもよい。これらの地域係数の候補は、路線価算出部28が路線価算出の際に地域係数として使用する。
【0048】
図7には、本実施形態にかかる地域係数決定支援装置の動作例のフローが示される。図7において、使用者が入力装置16により入力した指示情報に基づいて、路線価算出部28が路線価を算出する対象である対象路線を決定する(S1)。この場合、対象路線の路線価を算出するために使用する主要路線価も取得する。なお、上記指示情報及び主要路線価は、ネットワーク等の通信手段を介して送信し、通信装置20が受信して路線価算出部28に渡す構成としてもよい。
【0049】
次に、路線価算出部28は、記憶装置22に記憶された比準表の内、S1で決定された対象路線が所属する用途地区の比準表を取得する(S2)。なお、比準表は外部のサーバ等に格納しておき、通信装置20がネットワーク等の通信手段を介して受信する構成としてもよい。
【0050】
また、路線価算出部28は、上記対象路線が所属する状況類似地域の地域係数を取得する(S3)。この地域係数も記憶装置22から取得する構成としてもよいし、外部のサーバから通信装置20が受信する構成としてもよい。また、地域係数は、比準表に含まれる路線価に影響を及ぼす要因の内、影響の程度の大きい一部について取得する構成としてもよい。なお、図3に示されるように、S2で取得した比準表に予め地域係数が含まれている場合には、路線価算出部28が改めて地域計数を取得する必要はない。
【0051】
次に、路線価算出部28は、上記対象路線を交差点及び状況類似地域の境界により区分し、区間毎に、上記主要路線価、比準表に規定された比準率及び地域係数を使用して路線価を算出する(S4)。この場合、交差点及び状況類似地域の境界に関する情報は、路線毎に予め記憶装置22または外部のサーバ等に記憶させておくことにより、路線価算出部28が路線を区分する処理に当該情報を使用することができる。なお、上記区間に関する情報を予め設定しておき、記憶装置22または外部のサーバ等に記憶させておいて、路線価算出部28が路線価を算出する路線の区間に関する情報を取得する構成としてもよい。
【0052】
報知部30は、区間毎の路線価を比較し、その較差が所定の基準値を超えているか否かを判定する(S5)。S5において、路線価の較差が所定の基準値を超えている場合には、地域係数の設定値が不適当であるので、その旨報知する(S6)。また、地域係数候補提示部32が新たな地域係数を算出して地域係数の候補として表示装置18等に提示し、または地域係数候補受付部34が使用者の算出した地域係数の候補を受け付け、これらを新たな地域係数として採用する(S7)。その後、S4のステップから処理を繰り返し、路線価算出部28が再度各区間の路線価を算出する。また、S5において路線価の較差が所定の基準値を超えていない場合には、処理を終了する。なお、S6において、較差が任意の基準値を超えていない場合に地域係数が適である旨を報知してもよい。
【0053】
上述した、図7の各ステップを実行するためのプログラムは、記録媒体に格納することも可能であり、また、そのプログラムを通信手段によって提供しても良い。その場合、例えば、上記説明したプログラムについて、「プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体」の発明または「データ信号」の発明として捉えても良い。
【0054】
以上に述べた本実施形態にかかる地域係数決定支援装置では、ある用途地区について作成された1つの比準表に対して、当該用途地区内の各状況類似地域の特性を反映した地域係数が設定されるので、路線価に影響を及ぼす要因の影響の有無及び影響の程度を容易に調整することができる。このため、例えば市区町村が統合され、形式上1つの用途地区内に、特性の大きく異なる状況類似地域が存在している場合にも、当該用途地区に共通の比準表を作成した上で、上記地域係数により路線価を調整することにより、公平な路線価を容易に設定することができる。
【符号の説明】
【0055】
10 CPU、12 RAM、14 ROM、16 入力装置、18 表示装置、20 通信装置、22 記憶装置、24 バス、26 入出力インターフェース、28 路線価算出部、30 報知部、32 地域係数候補提示部、34 地域係数候補受付部、36 通信部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現況利用用途が同じである用途地区毎に設定された比準率と、前記比準率を前記用途地区より狭い領域毎に調整する地域係数とに基づいて、主要路線の路線価から各路線の路線価を算出する路線価算出手段を備えることを特徴とする路線価算出装置。
【請求項2】
現況利用用途が同じである用途地区毎に設定された比準率と、前記比準率を前記用途地区より狭い領域毎に調整する地域係数とに基づいて、主要路線の路線価から各路線の路線価を算出する路線価算出手段と、
前記路線価を、連続する隣接路線毎に比較し、前記路線価の較差が所定の基準値を超えた場合に、前記地域係数が不適である旨を、あるいは基準値を超えていない場合に適である旨を報知する報知手段と、
を備えることを特徴とする地域係数決定支援装置。
【請求項3】
請求項2記載の地域係数決定支援装置において、前記較差が所定の基準値を超えた場合に前記路線価の較差を所定の基準値以内にするための地域係数の候補を提示する地域係数候補提示手段を備えることを特徴とする地域係数決定支援装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3記載の地域係数決定支援装置が、さらに前記路線価の較差を所定の基準値以内にするための地域係数の候補を受け付ける地域係数候補受付手段を備えることを特徴とする地域係数決定支援装置。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の地域係数決定支援装置において、前記地域係数は、前記用途地区内を状況が類似した領域毎に区分して設けられた状況類似地域毎に設定されることを特徴とする地域係数決定支援装置。
【請求項6】
請求項5記載の地域係数決定支援装置において、前記報知手段は、前記状況類似地域の境界で前記路線価を比較し、前記路線価の較差が所定の基準値を超えた場合に、前記地域係数が不適である旨を、あるいは基準値を超えていない場合に適である旨を報知することを特徴とする地域係数決定支援装置。
【請求項7】
コンピュータを、
現況利用用途が同じである用途地区毎に設定された比準率と、前記比準率を前記用途地区より狭い領域毎に調整する地域係数とに基づいて、主要路線の路線価から各路線の路線価を算出する路線価算出手段、
前記路線価を、連続する隣接路線毎に比較し、前記路線価の較差が所定の基準値を超えた場合に、前記地域係数が不適である旨を、あるいは基準値を超えていない場合に適である旨を報知する報知手段、
として機能させることを特徴とする地域係数決定支援プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−238067(P2010−238067A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86720(P2009−86720)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.EEPROM
【出願人】(000135771)株式会社パスコ (102)