説明

路車間通信システム、路側通信制御装置及び路側通信制御プログラム

【課題】大規模な設備を設けることなく、反射波や隣接するゲートからの電波を誤検知することを回避しようとするものである。
【解決手段】本発明の路車間通信システムは、車両に設けられたものであって、アンテナ手段からの電波を受波すると、少なくとも車載器識別情報を含む電波を送出する複数の車載器と、アンテナ手段により捕捉された電波信号に含まれる車載器識別情報を検出して、当該電波の受信電波強度を測定する受信電波強度測定手段と、受信電波強度測定手段により測定された各車載器識別情報の受信電波強度の測定値に基づいて、各車載器識別情報の受信電波強度の時間的変動パターンを求め、その各車載器識別情報の受信電波強度の時間的変動パターンに基づいて、目的電波を特定する電波特定手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路車間通信システム、路側通信制御装置及び路側通信制御プログラムに関するものである。例えば、本発明は、路側アンテナが配設されたゲートを通過する車両を管理する路車間通信システム、路側通信制御装置及び路側通信制御プログラムに適用し得るものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、セメント工場や採掘所等では、採掘現場で採掘した石灰石等の砕石物を運搬するために、例えばダンプカー等の専用車両が利用されている。砕石物の積み込みや荷下ろしをする現場入口にはゲートがあり、専用車両は、ゲートを通過して、現場に進入したり又は現場から進出したりしている。
【0003】
近年、積載物の積み込みや荷下ろし等の運搬業務において、例えば、進入車両の特定や、積み込む積載物の品種管理や又は荷下ろしをする積載物の品種管理等を行なうゲート管理システムが求められている。
【0004】
このような要求に応えるために、例えば、ITS(高度道路交通ステム)で適用されている狭帯域通信(DSRC:Dedicated Short Range Communications)技術を利用して、専用車両の車載器がゲート付近に設置したDSRCアンテナと通信し、DSRC無線機が車両識別情報を特定してゲート管理を行なうことが提案されている。
【0005】
しかし、例えばゲート設備や車両車体等は金属でできているため、車載器からの電波が反射してDSRCアンテナが反射波を受信してしまうことがある。また、隣接するゲートがある場合には、隣接するゲートを通過する車両の車載器からの電波が侵入してきてDSRCアンテナが受信してしまうこともある。
【0006】
このような場合には、DSRC無線機が車両識別情報の誤検知してしまい、積載物の誤検収や誤納品等の管理ミスにも繋がり、大きな損害を被ることにもなるため、反射波による誤検知は回避されるべきものである。
【0007】
従来、例えば、高速道路や駐車場等で用いられているDSRC技術において、反射波による誤検知を回避する技術として、特許文献1に記載されるものがある。
【0008】
特許文献1の記載技術は、サービスエリアにループコイルを設置し、ループコイルが事前に車両を検知した場合に、DSRCアンテナが電波を放出するというものである。これにより、車両がゲートを通過するときだけ、電波放出が可能となるので、隣接ゲートに反射波が侵入しても、誤検知の発生が低くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−270619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した特許文献1の記載技術は、サービスエリアにループコイルを設置することが必要となる。すなわち、ループコイルを設置するために、道路上に大規模な工事が必要となる。
【0011】
民間企業の工場内や敷地内で、このような大規模な工事を行なうことは、既存設備の改修が必要となり又多額の改修コストもかかるため現実的でない。特に、セメント工場や採掘所等では、工事が車両の動線上で行なわるため、積み込みや荷下ろし運搬業務が止まることは必至となってしまい、特許文献1の記載技術をそのまま適用することは困難である。
【0012】
また、ゲートを通過する車両を検知する別の方法として、ループコイルに代えてセンサー(例えば超音波センサー等)を利用することも考えられる。しかし、採掘所等では粉塵等の影響を受けてセンサー自体が故障することもあり、DSRC無線機に故障等の問題がないときでも、センサー自体が故障した場合、DSRC無線機に対して電波放出の動作契機を通知することができず、本来の役割も実現できなくなる。
【0013】
さらには、センサーが事前に車両を検知しても、隣接ゲートにおいて、同じタイミングで車両が進入してきた場合には、隣接ゲートとの間で反射波の影響を受ける可能性もある。
【0014】
そのため、大規模な設備を設けることなく、反射波や隣接するゲートからの電波を誤検知することを回避することができる路車間通信システム、路側通信制御装置及び路側通信制御プログラムが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
かかる課題を解決するために、第1の本発明は、(1)アンテナ手段と、(2)車両に設けられたものであって、アンテナ手段からの電波を受波すると、少なくとも車載器識別情報を含む電波を送出する複数の車載器と、(3)アンテナ手段により捕捉された電波信号に含まれる車載器識別情報を検出して、当該電波の受信電波強度を測定する受信電波強度測定手段と、(4)受信電波強度測定手段により測定された各車載器識別情報の受信電波強度の測定値に基づいて、各車載器識別情報の受信電波強度の時間的変動パターンを求め、その各車載器識別情報の受信電波強度の時間的変動パターンに基づいて、目的電波を特定する電波特定手段とを備えることを特徴とする路車間通信システムである。
【0016】
第2の本発明は、車両に設けられた複数の車載器からの電波に基づいて反射波を検知する反射波検知装置であって、(1)アンテナ手段と、(2)アンテナ手段により捕捉された電波信号に含まれる車載器識別情報を検出して、当該電波の受信電波強度を測定する受信電波強度測定手段と、(3)受信電波強度測定手段により測定された各車載器識別情報の受信電波強度の測定値に基づいて、各車載器識別情報の受信電波強度の時間的変動パターンを求め、その各車載器識別情報の受信電波強度の時間的変動パターンに基づいて、目的電波を特定する電波特定手段とを備えることを特徴とする路側通信制御装置である。
【0017】
第3の本発明は、車両に設けられた複数の車載器からの電波に基づいて反射波を検知する反射波検知プログラムであって、コンピュータを、(1)アンテナ手段により捕捉された電波信号に含まれる車載器識別情報を検出して、当該電波の受信電波強度を測定する受信電波強度測定手段、(2)受信電波強度測定手段により測定された各車載器識別情報の受信電波強度の測定値に基づいて、各車載器識別情報の受信電波強度の時間的変動パターンを求め、その各車載器識別情報の受信電波強度の時間的変動パターンに基づいて、目的電波を特定する電波特定手段として機能させることを特徴とする路側通信制御プログラムである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、大規模な設備を設けることなく、反射波や隣接するゲートからの電波を誤検知することを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1の実施形態の路車間通信システムの全体構成及び各構成要素の内部構成を示す構成図である。
【図2】第1の実施形態のゲート管理システムの構成イメージを説明する構成図である。
【図3】実施形態の車両に搭載する車載器の設置例を説明する説明図である。
【図4】実施形態のアンテナ部の通信エリアの電波特性を説明する説明図である。
【図5】第1の実施形態の車載器からの電波の受信電波強度の変動パターンを示す図である。
【図6】第1の実施形態の3台の車載器の電波の受信電波強度の変動パターンを示す図である。
【図7】第1の実施形態の反射波の受信電波強度も含む変動パターンを示す図である。
【図8】第1の実施形態の制御装置における通過車両の検知方法を説明するフローチャートである。
【図9】第2の実施形態のゲート管理システムの構成イメージを説明する構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(A)第1の実施形態
以下では、本発明の路車間通信システム、路側通信制御装置及び路側通信制御プログラムの第1の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0021】
第1の実施形態は、例えばDSRC技術を採用するゲート管理システムであって、車載器が放出した電波が車体やゲート等に反射した反射波を誤検知するシステムに、本発明を適用する場合を例示する。
【0022】
(A−1)第1の実施形態の構成
図1は、第1の実施形態の路車間通信システムの全体構成及び各構成要素の内部構成を示す構成図である。
【0023】
図1において、第1の実施形態の路車間通信システム1は、アンテナ部11、無線機12、制御装置13、ネットワークスイッチ14、車両51に搭載された複数台(図1では3台)の車載器21(21−1〜21−3)を有する。なお、以下では、車載器の共通構成を説明する場合には、車載器を車載器21と表記して説明する。
【0024】
車両51は、例えば、砕石物を積載することができる車両である。車両51は、複数の車載器21−1〜21−3を搭載するものである。
【0025】
ここで、車載器21−1〜21−3の設置方法について図3を参照しながら説明する。図3は、車両51における車載器21−1〜21−3の設置例を説明する説明図である。
【0026】
図3に例示するように、複数の車載器21−1〜21−3は、車両51の進行方向に沿って間隔をあけて設置される。すなわち、車載器21−1〜21−3のそれぞれが放出する電波をアンテナ部11が時間差を持って受信できるように間隔をあけて配置される。なお、設置間隔は、特に限定されるものではなく、運用に応じて決定するようにしてもよいし、任意の間隔としてもよい。
【0027】
車載器21−1〜21−3は、ゲート付近に設けられたアンテナ部11との間で通信を行なうものであり、固有の車載器識別情報を保持するものである。
【0028】
車載器21−1〜21−3は、例えば、既存のETC車載器やDSRC技術対応の車載器を適用することができ、アンテナ部と車載器本体とを有して構成されるものである。
【0029】
また、車載器21−1〜21−3は、図1に示すように、送受信部211、車両情報記憶部212を有する。なお、車載器21−1〜21−3は、いずれも同じ構成であってもよい。
【0030】
車両情報記憶部212は、例えば、車両識別情報(例えばナンバープレート等)、車両区分(例えば一般車両、専用車両等)を示す車両区分情報等を記憶するものである。なお、車両情報記憶部212は、車載器21に内蔵されているメモリ等であってもよいし、又はいわゆるETCカードのような車両情報を格納しているICカードであってもよい。
【0031】
送受信部211は、アンテナ部11が放出する電波を受信すると、固有の車載器識別情報と、車両情報記憶部212に記憶される車両識別情報等とを含む電波信号を送出するものである。
【0032】
アンテナ部11は、車載器21との間で通信を行なう路側アンテナ部である。例えば、アンテナ部11は、ARIB STD−T75DSRCシステム標準化規格により規格化技術に基づくアンテナ技術を適用することができる。
【0033】
アンテナ部11は、ケーブル15(例えば同軸ケーブル等)により無線機12と接続しており、無線機12の制御を受けて、常時又は所定周期で、電波を放出するものである。
【0034】
アンテナ部11は、非常に高い指向性を有しており、車載器11を検知するために道路に向けて電波を放出するものである。例えば、アンテナ部11は、数ms秒間隔で、所定周波数の電波を放出する。アンテナ部11は、放出電波を受信した車載器21が送出した電波を受波し、その受波した信号を無線機12に与える。
【0035】
また、アンテナ部11は、ゲートを通過する車両51を検知するために、ゲート付近に設置されるものである。
【0036】
図2は、路車間通信システム1の全体的な構成イメージを説明する説明図である。図2の例において、道路53は、例えばセメント工場等の現場に通じており、車両51は、道路53上を走行することで現場に進入することができる。また、現場入口付近において、ゲート52は道路53上に設けられている。
【0037】
図2において、アンテナ部11は、ゲート52を通過する車両51を検知するために、ゲート52の上方部に設けられており、道路53に向けて電波を放出できるように設置されている。
【0038】
なお、アンテナ部11の設置位置は、車両51を検知するために、車両51の車載器21との間で通信ができる位置であればよく、例えば、ゲート52の柱部やアンテナ部11を設置する専用のアームや柱部等に設けられるようにしてもよい。
【0039】
無線機12は、ケーブル15を介してアンテナ部11を制御するものであり、変復調処理、信号処理等を行なうものである。無線機12は、例えばARIB STD−T75DSRCシステム標準化規格により規格化された通信処理を適用することができる。
【0040】
また、無線機12は、アンテナ部11が受波した電波信号に基づいて、車載器識別情報を解析し、その電波の受信電波強度を車載器識別情報毎に測定するものである。また、無線機12は、各車載器識別情報の受信電波強度の測定値を、ネットワークスイッチ14を介して制御装置13に与えるものである。
【0041】
また、無線機12は、所定時間間隔当たりに受信した電波受信数を車載器識別情報毎に求めて、その各車載器識別情報の電波受信数を制御装置13に与えるものである。
【0042】
図1に示すように、無線機12は、送受信部121、受信強度測定部122、情報検知部123、検知情報送信部124を有する。なお、無線機12は、既存の無線機と同様に、例えば、通信回路、CPU、記憶部(例えば、ROM、RAM等)、入出力インタフェースを有する装置であり、CPU121が、ROMに格納されている処理プログラムを実行して無線機12の各種機能を実現するものである。
【0043】
送受信部121は、車載器21に送信する送信信号をアンテナ部11に与えたり、又は車載器21からの受信信号をアンテナ部11から受信したりするものである。送受信部121による送受信処理は、ARIB STD−T75DSRCシステム標準化規格で規格化された処理を行なうものである。
【0044】
受信強度測定部122は、送受信部121からの受信信号に含まれている車載器識別情報を検出し、受信した電波の受信電波強度を車載器識別情報毎に測定するものである。
【0045】
ここで、受信強度測定部122は、アンテナ部11が受波した電波の受信電波強度を測定する。つまり、受信強度測定部122は、ゲートを通過する車両51の車載器21からの電波の受信電波強度だけでなく、ゲートや車体等に反射して、アンテナ部11が受波した反射波の受信電波強度も測定することになる。この場合でも、受信強度測定部122は、反射波の車載器識別情報を解析して、車載器識別情報毎の受信電波強度の測定値を検知情報として制御装置13に与えることになる。
【0046】
情報検知部123は、送受信部121により受信された受信信号に含まれている車両識別情報を検出し、その検出した車両識別情報を検知情報送信部124に与えるものである。
【0047】
検知情報送信部124は、受信強度測定部122により測定された車載器識別情報毎の受信電波強度の測定値と、情報検知部123により検出された車両識別情報を制御装置13に与えるものである。
【0048】
制御装置13は、例えばパーソナルコンピュータ等の端末装置であり、無線機12からの検知情報に基づいて、ゲート管理制御を行なうものである。
【0049】
図1に示すように、制御装置13は、その主な機能として、検知情報取得部131、受信強度変動分析部132、車両識別情報特定部133、ゲート管理制御部134を有する。なお、制御装置13は、例えば、CPU、記憶部(例えば、ROM、RAM等)、入出力インタフェース等を有するものである。制御装置13の各種機能は、アプリケーションの実行により実現されるものであり、例えば、CPUが、ROMに格納される処理プログラムを実行することにより実現されるものである。
【0050】
検知情報取得部131は、ネットワークスイッチ14を介して、無線機12により検知された検知情報を取得するものである。
【0051】
受信強度変動分析部132は、無線機12から取得した各車載識別情報の受信電波強度の測定値の時間的な変動パターンに基づいて、通過する車両51の車載器21のものであるか否かを分析するものである。
【0052】
ここで、車両51には、それぞれ距離を置いて複数の車載器21が配置されている。そのため、車両51がゲートを通過する際、車両51の前方部に配置されている車載器21が他の車載器21よりも早くアンテナ部11と通信を開始することになり、その後車両51の走行により、順次、他の車載器21がアンテナ部11と通信を開始することになる。
【0053】
このとき、受信電波強度は、車載器21がアンテナ部11に近づくにつれ徐々に測定値は増大していき、車載器21がアンテナ部11に最も接近したときに受信電波強度の測定値が最大となり、車載器21がアンテナ部11から離れていくと測定値は減衰するという特性がある。
【0054】
従って、車両51がゲートを通過するとき、それぞれの車載器識別情報の受信電波強度の測定値の時間的な変動パターンは、同一又は類似した特性を示すことになる。
【0055】
しかも、複数の車載器21が設けられているため、その測定値の変動パターンは、所定時間おきに連続的かつ定量的になされることになる。さらに、車載器21とアンテナ部11との間には障害物等がなく、アンテナ部11は直進波として受波するため、車載器21からの受信電波強度の測定値の変動パターンは、歪みなどの増減がない。
【0056】
一方、受信強度変動分析部132は、例えば、車両のボンネット等に反射した反射波の受信電波強度の測定値の変動パターンも求める。反射波の受信電波強度の測定値の変動パターンは、外部環境にもよるが、アンテナ部11に受波されるまでに遅延が生じたり、歪みが生じたりするため、通過する車両51の車載器21からのものと異なる。
【0057】
そこで、受信強度変動分析部132は、複数の車載器識別情報の受信電波強度の測定値の連続的かつ定量的に規則性のある変動パターンと、そうでない測定値の変動パターンとを区別することで、通過車両51の車載器21のものか否かを判断する。
【0058】
車両識別情報特定部133は、受信強度変動分析部132により、通過車両51の車載器21の受信電波強度の測定値の変動パターンであると判断されると(すなわち車両51の通過検知がなされると)、当該受信信号に含まれる車両識別情報を特定するものである。
【0059】
ゲート管理制御部134は、車両識別情報特定部133により特定された車両識別情報に基づいて、所定のゲート管理制御を行なうものである。ゲート管理制御部134によりなされるゲート管理制御は、特に限定されるものではなく、種々の管理制御を行なうことができる。例えば、ゲート管理制御部134は、一般車両と専用車両との区分判断であったり、車両51の通過に伴うゲートの開閉処理であったり、積載物の品種管理等を行なうことができる。
【0060】
(A−2)第1の実施形態の動作
次に、第1の実施形態の路車間通信システム1による反射波の誤検知を回避する処理の動作を、図面を参照しながら説明する。
【0061】
図2において、複数の車載器21−1〜21−3が搭載された車両51は、道路53を走行し、現場入口付近に設けられたゲート52に近づく。
【0062】
このとき、無線機12は、通信エリア内に車両51が進入してきたことを検出するために、常時で電波を送出するように、アンテナ部11に対して送信信号を与える。
【0063】
ここで、図4は、アンテナ部11の通信エリアの電波特性を説明する説明図である。図4では、アンテナ部11の無線ゾーンと無線ゾーンでの受信レベルとを示している。図4に示すように、アンテナ部11からの電波は、道路53に向けて放出されており、アンテナ部11に向かって接近するにつれてアンテナ部11が車載器21からの電波を受信する電波強度が強くなるように設定されている。
【0064】
車両51がアンテナ部11の通信エリア内に入ると、車載器21−1〜21−3は、順次、アンテナ部11からの電波を受波する。車載器21−1〜21−3は、アンテナ部11からの電波を受波すると、車載器識別情報及び車両識別情報等を含む電波を送出する。
【0065】
このとき、車両51に搭載されている車載器21−1〜21−3は、進行方向に沿って間隔をあけて配置されているので、車両51の前方に配置されている車載器21−1が、他の車載器21−2及び21−3よりも先に強い強度の電波を受波することになり、電波を送出することになる。
【0066】
その後、車載器21−2及び21−3は、順次、アンテナ部11からの電波を受波することになり、電波を送出することになる。
【0067】
なお、無線機12は、車載器21−1〜21−3との間で通信を開始すると、所定のタイミング(例えば数ms間隔のタイミング)で電波を送出するようにアンテナ部11を制御する。これにより、車載器21−1〜21−3の応答タイミングも一定とすることができる。
【0068】
アンテナ部11は、到来した電波を全て受波し、その受波した全ての電波信号を無線機12に与える。
【0069】
このとき、アンテナ部11が受波する電波は、車載器21−1〜21−3が放出した電波だけでなく、例えばゲート表面や車両51の車体に反射し、アンテナ部11は反射波も受波することになり、その反射波の電波信号も無線機12に与える。
【0070】
無線機12は、アンテナ部11から受信信号を受信すると、受信信号に含まれている車載器識別情報を解析し、各車載器からの電波の受信電波強度を測定し、車載器識別情報毎の受信電波強度の測定値を制御装置13に与える。
【0071】
図8は、制御装置13における通過車両の検知方法を説明するフローチャートである。
【0072】
制御装置13において、無線機12から各車載器識別情報の受信電波強度の測定値が取得されると(S101)、制御装置13は、車載器識別情報毎の受信電波強度の測定値を時系列に並べて(S102)、受信電波強度の測定値の変動パターンを車載器識別情報毎に求める(S103)。
【0073】
そして、制御装置13は、各車載識別情報の受信電波強度の測定値の変動パターンに基づいて、所定間隔毎に、同程度の受信電波強度が遷移するものを検知した場合には、車両51がゲートを通過したものと判断し(S104、S105)、そうでない場合には、当該波形は反射波であると判断する(S104、S105)
図5は、ある車載器21からの電波の受信電波強度の変動パターンを示す図である。図5に示すように、制御装置13は、受信電波強度の測定値の検出開始時点を通信エリア進入時とし、測定値の検出終了時点を通信エリア退出時とすることができる。
【0074】
図5において、通信エリア進入後、車載器21がアンテナ部11に近づくにつれて、受信電波強度の測定値は増大する。そして、車載器21がアンテナ部11に最も近づいたときに受信電波強度の測定値は最大となり、その後、車両51がアンテナ部11を通過すると、アンテナ部11の指向性より受信電波強度の測定値は急峻に減少する。
【0075】
図6は、3台の車載器21−1〜21−3の電波の受信電波強度の変動パターンを示す図である。なお、車載器21−1〜21−3は、電波送出強度等の電波送出条件を同じ条件としているものとする。
【0076】
図6において、制御装置13は、車両51の進行方向の最前方に設けられている車載器21−1から電波の受信電波強度の測定値の検出開始時点を通信エリア車両進入時とし、車両51の進行方向の最後方に設けられている車載器21−3からの電波の受信電波強度の測定値の検出終了時点を通信エリア車両退出時とすることができる。
【0077】
図6に示すように、車載器21−1〜21−3からの電波の受信電波強度の測定値の変動パターンは、一定時間の間隔をおいて、それぞれ同じような変動パターンである。
【0078】
このように、制御装置13は、車載器21−1〜21−3の進行方向の設置順に、同程度の受信電波強度の測定値の変動パターンを確認できた場合、当該電波強度の受信遷移は、車両51がゲートを通過したものと判定する。
【0079】
一方、反射波が、アンテナ部11に捕捉されたときには、図7に例示するように、複数の車載器21−1〜21−3の受信電波強度の変動パターンとは異なる変動波形が観測される。
【0080】
ここで、反射波の受信電波強度の波形は、外部環境によって大きく異なる。そこで、制御装置13は、変動パターンの受信電波強度、変動パターンの測定時間、同程度の変動パターンの連続性に基づいて、車両の進行方向の電波を車載器21からの電波であると判定し、それ以外の電波を反射波であると判断する。
【0081】
例えば、図7において車載器21−1の反射波(A)は、車載器21−1の電波の反射波の受信電波強度の波形であるとする。
【0082】
反射波は、車載器21からの電波と異なり、直進波としてアンテナ部11に捕捉されるものではない。反射波は、何らかの反射物に反射してから、アンテナ部11に受信される。そのため、そのため、距離減衰のために、反射波の受信電波強度の測定値は、車載器21−1〜21−3の測定値よりも値が小さく、また、受信電波強度の測定期間も短くなる。
【0083】
また、電波が反射する反射物(例えば、ゲートの表面、車両のボンネットなど)のように凹凸がある。そのため、反射波の受信電波強度のパターンは、車載器21の受信電波強度の変動パターンに対して歪み等の波形の乱れが生じる。
【0084】
そこで、反射波の受信電波強度の波形は、車載器21の電波の受信電波強度の変動パターンと大きく波形が異なり、制御装置13は、この大きく異なる波形を反射波と判断する。
【0085】
また、図7において、車載器21−3反射波(B)は、車載器21−3の反射波である。例えば、隣接ゲートに対向車両が同時に通過した場合に、車載器21−3が放出した電波が対向車両のボンネット等に反射し、その反射波がアンテナ部11に捕捉される場合もある。この場合、例えば、図7の車載器21−3の反射波(B)に例示するように、突発的な反射波として反射波がアンテナ部11に捕捉され、その測定期間が大幅に短い受信電波強度として観測される。従って、制御装置13は、この測定時間が大きく異なる波形を反射波と判断する。
【0086】
また、制御装置13は、複数の受信電波強度の変動パターンの連続性も考慮して判断する。
【0087】
例えば、図7では、車載器21−2の電波の反射波の受信電波強度が測定されていない場合を例示している。反射波の受信電波強度が測定されない場合としては、例えば、その時点に反射物がなく、電波が反射されなかった場合、反射角度がアンテナ部11の方でなかった場合、反射したが、受信電波強度が弱かった場合等がある。このような場合には、反射波の受信電波強度の測定値が得られず、本来の複数の車載器21の受信電波強度の変動パターンのように、一定時間毎に連続的な変動パターンが得られない。制御装置13は、このように、複数の受信電波強度の変動パターンの連続性も考慮して、反射波を判断する。
【0088】
以上のように、制御装置13は、無線機12からの受信電波強度の測定値に基づいて、各車載器識別情報の受信電波強度の測定値の変動パターンを求める。そして、同程度の受信電波強度の変動パターンが一定時間間隔で出現するものを、ゲートを通過する車両51の車載器21−1〜21−3のものとして特定する。
【0089】
一方、制御装置13は、それ以外の受信電波強度の変動波形を反射波のものと判断する。
【0090】
その後、制御装置13は、受信した無線信号に含まれる車両識別情報を取得し、その車両識別情報を用いて所定のゲート管理制御を行なう。
【0091】
(A−3)第1の実施形態の効果
以上のように、第1の実施形態によれば、隣接ゲートの無線機からの電波を受け取る場合は、指向性から外れた反射波になるため、進行方向からの進入を考慮した電波受信方法で検知判定をすることで、反射波による誤検知を無くす事ができる。
【0092】
また、第1の実施形態によれば、従来の方法とは異なり、別途、ループコイルやセンサー等を設ける必要がなくなるため、運用や精度がセンサーに依存する事もなくなる。
【0093】
さらには、第1の実施形態によれば、設置工事をする必要がなくなり、構築期間の短縮/構築中の運用にも影響を与えない。例えば、セメント工場や採掘所等では、一般道を走るトラック類と異なりサイズも特大であり、構内の専用車両を利用している事も多い。そのため、車載器を複数台設置するスペースも確保できる上、車載器は非常に安価であるため複数台設置する事の抵抗も少ない。
【0094】
(B)第2の実施形態
次に、本発明の路車間通信システム、路側通信制御装置及び路側通信制御プログラムの第2の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0095】
第2の実施形態は、本発明を適用する分野が異なり、第1の実施形態と同じ構成及び動作で実現することができる。
【0096】
図9は、第2の実施形態の路車間通信システムの構成イメージを説明する説明図である。
【0097】
例えば、大規模製造業の工場は、非常に広大で、構内でも信号機の制御や所在管理等を行なう際に、DSRC技術が利用して、車載器からの情報を取得して行なうことがある。
【0098】
従来、構内の道路は、一般道路と同程度の広さであり、片側車線に設置したDSRC技術の電波の反射波が反対車線に侵入する事もある。また、反射波でなくても、道幅が狭ければ、反対車線の電波が進入してくることもある。この場合、電波強度を小さくすることで、反対車線への電波の侵入が回避できるが、電波強度を小さくしすぎることで、本線の検知率が悪くなってしまうことがある。
【0099】
これに対して、例えば、反対車線への電波の進入を防止するために、遮蔽板を設置したり、従来技術と同様にセンサーを設けたりすることも考えられるが、その場合の設置コストの増大や運用の影響等が課題になる。
【0100】
そこで、第2の実施形態は、図8に例示すように、車両の進行方向を考慮して検知と判断するため、反対車線の電波の侵入による誤検知も回避する事も可能である。
【0101】
(C)他の実施形態
上述した第1及び第2の実施形態では、ゲート管理システムに本発明を適用した場合を例示したが、ゲート管理システムに限定されるものではなく、路側通信制御装置が、反射波や他の通信で利用される電波を検知せず、目的電波を検知すること必要があるシステムに広く適用することができる。例えば、駐車場の車両入退場システム、高速道路での車両進入検知システム等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0102】
1…路車間通信システム、11…アンテナ部、
12…無線機、
121…送受信部、122…受信強度測定部、123…情報検知部、
124…検知情報送信部、
13…制御装置、
131…検知情報取得部、132…受信強度変動分析部、
133…車両識別情報特定部、134…ゲート管理制御部、
51…車両、21−1〜21−3…車載器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナ手段と、
車両に設けられたものであって、上記アンテナ手段からの電波を受波すると、少なくとも車載器識別情報を含む電波を送出する複数の車載器と、
上記アンテナ手段により捕捉された電波信号に含まれる上記車載器識別情報を検出して、当該電波の受信電波強度を測定する受信電波強度測定手段と、
上記受信電波強度測定手段により測定された各車載器識別情報の受信電波強度の測定値に基づいて、各車載器識別情報の受信電波強度の時間的変動パターンを求め、その各車載器識別情報の受信電波強度の時間的変動パターンに基づいて、目的電波を特定する電波特定手段と
を備えることを特徴とする路車間通信システム。
【請求項2】
上記複数の車載器が、車両の進行方向に沿って配置されているものであって、
上記電波特定手段が、車両の進行に従って、複数の車載器識別情報の受信電波強度の時間的変動パターンが、所定の時間差で、同程度の変化を示す場合、車両に搭載された複数の車載器からの電波であると判断し、それ以外の変動パターンを反射波によるものであると判断する
ことを特徴とする請求項1に記載の路車間通信システム。
【請求項3】
車両に設けられた複数の車載器からの電波に基づいて目的電波を検出する路側通信制御装置であって、
アンテナ手段と、
上記アンテナ手段により捕捉された電波信号に含まれる車載器識別情報を検出して、当該電波の受信電波強度を測定する受信電波強度測定手段と、
上記受信電波強度測定手段により測定された各車載器識別情報の受信電波強度の測定値に基づいて、各車載器識別情報の受信電波強度の時間的変動パターンを求め、その各車載器識別情報の受信電波強度の時間的変動パターンに基づいて、目的電波を特定する電波特定手段と
を備えることを特徴とする路側通信制御装置。
【請求項4】
車両に設けられた複数の車載器からの電波に基づいて目的電波を検出する路側通信制御プログラムであって、
コンピュータが、
アンテナ手段により捕捉された電波信号に含まれる車載器識別情報を検出して、当該電波の受信電波強度を測定する受信電波強度測定手段、
上記受信電波強度測定手段により測定された各車載器識別情報の受信電波強度の測定値に基づいて、各車載器識別情報の受信電波強度の時間的変動パターンを求め、その各車載器識別情報の受信電波強度の時間的変動パターンに基づいて、目的電波を特定する電波特定手段
として機能させることを特徴とする路側通信制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−74412(P2013−74412A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211197(P2011−211197)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】