説明

路車間通信装置

【課題】 本発明は、設定ルート上のアクセスポイントにおいて必要なデータ通信を確実に行うことができる路車間通信装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 目的地の入力に基づいて走行ルートを探索して最適な走行ルートを設定ルートに設定し、設定ルート上にある路車間通信用のアクセスポイントを検出するアクセスポイント検出手段12と、検出されたアクセスポイントを通過する際にデータ通信が可能な時間帯を算出する通信可能時間帯算出手段14と、検出されたアクセスポイントにおけるデータ通信が可能な時間帯のデータ通信を予約するデータ通信予約手段15と、各アクセスポイントの時刻毎の予約状況を登録した予約状況登録手段23と、データ通信予約手段からの予約があると予約状況登録手段を参照して前記予約が可能か否かを判別し、可能であれば予約を予約状況登録手段に登録して管理する予約管理手段24を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路車間通信装置に係り、特に、車両と路側のアクセスポイント間でデータ通信を行う路車間通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ITS(高度道路交通システム)の実現に不可欠な通信技術としてDSRC(Dedicated Short Range Communication)等の路車間通信技術の開発が進められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、カーナビゲーションシステムの経路情報から次の通信エリアまでの距離を取得し、車速、渋滞情報等から車両が次の通信エリアに到達する時刻を算出し、車両到達時刻までに通信準備を行う路車間通信システムが記載されている。
【特許文献1】特開2002−271829号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、各通信エリアにおける通信の混雑状況が考慮されていない。このため、車両が各通信エリアに到達しても、その通信エリアで他の多くの車両が既にデータ通信を行っているような場合、回線が既に使用されているために、必要なデータ通信を行うことができないおそれがあるという問題があった。
【0005】
これは、無線LANなどの場合、各通信エリアでアクセスポイントに接続可能な車両数に制限があり、アクセスポイントに接続する車両数が増えるとスループットが低下するためである。
【0006】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、設定ルート上のアクセスポイントにおいて必要なデータ通信を確実に行うことができる路車間通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の路車間通信装置は、目的地の入力に基づいて走行ルートを探索して最適な走行ルートを設定ルートに設定し、前記設定ルート上にある路車間通信用のアクセスポイントを検出するアクセスポイント検出手段と、
検出されたアクセスポイントを通過する際にデータ通信が可能な時間帯を算出する通信可能時間帯算出手段と、
前記検出されたアクセスポイントにおける前記データ通信が可能な時間帯のデータ通信を予約するデータ通信予約手段と、
各アクセスポイントの時刻毎の予約状況を登録した予約状況登録手段と、
前記データ通信予約手段からの予約があると前記予約状況登録手段を参照して前記予約が可能か否かを判別し、可能であれば前記予約を前記予約状況登録手段に登録して管理する予約管理手段を有することにより、設定ルート上のアクセスポイントにおいて必要なデータ通信を確実に行うことができる。
【0008】
また、前記路車間通信装置の予約管理手段は、各アクセスポイントの時刻毎の予約回線数を同時接続可能回線数と比較して前記予約が可能か否かを判別する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、設定ルート上のアクセスポイントにおいて必要なデータ通信を確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について説明する。
【0011】
図1は、本発明の路車間通信装置を適用した無線通信システムの第1実施形態のシステム構成図を示す。
【0012】
同図中、車両10には、無線通信部11、カーナビゲーションシステム12、車速計13、AP到達時刻算出部14、AP予約部15、ダウンロード部16が設けられている。
【0013】
無線通信部11は、管理センタ20との間で伝送速度が小さいが通信エリアの広い広域通信を行うと共に、路車間通信用のアクセスポイントAPi(iは1からnまでの整数)との間で伝送速度が大きい無線LAN等の狭域通信を行う。
【0014】
カーナビゲーションシステム12は、目的地が入力されると、目的地までの走行ルートを探索して最適な走行ルートを設定ルートに設定し、設定ルート上にある路車間通信用のアクセスポイントを検出してAP到達時刻算出部14に供給する。
【0015】
AP到達時刻算出部14は、カーナビゲーションシステム12から得られる車両の現在地から設定ルート上の各アクセスポイントまでの距離、車速計13から得られる現在の車速、目的地までの設定ルートにおける予測車速に基づいて、車両10が各アクセスポイントの無線エリアに到達する到達時刻及び滞在時間を算出する。なお、設定ルートにおける予測車速としては、各ルートの渋滞状況をカーナビゲーションシステム12と接続されたVICS(道路交通情報通信システム)等から入手して利用する。
【0016】
AP予約部15は、無線通信部11を介し管理センタ20に対して各アクセスポイントの到達時刻及び滞在時間を予約時間帯とするデータ通信の予約を行い、この予約に対する予約結果を受信して、ナビゲーション表示画面に表示する。
【0017】
ダウンロード部16は、車両10が各アクセスポイントの無線エリアにいるときに、無線通信部11を介しアクセスポイントからコンテンツデータ等のダウンロードを行う。
【0018】
管理センタ20には、通信部21、接続状況管理部22、予約データベース23、予約管理部24、無線通信部25が設けられている。
【0019】
通信部21は、アクセスポイントAP1〜APnとの間で通信を行う。接続状況管理部22は、通信部21を介し各アクセスポイントにおける接続状況を収集し、収集した接続状況を予約管理部24に通知する。ここで、接続状況とは通信速度と、現時点で車両と無線接続している回線数(予約無しも含む)である。
【0020】
予約管理部24は、各アクセスポイントにおける時刻毎の予約状況(予約車両の車両ID、予約回線数、通信速度)と同時接続可能回線数を、予約データベース23を用いて管理している。
【0021】
予約管理部24は、無線通信部25を介し各車両からデータ通信の予約を受けると、予約データベース23を参照して、予約に含まれる各アクセスポイントにおける予約時間帯に空きがあり予約可能であるか、すなわち、各アクセスポイントにおける予約時間帯の予約回線数と現時点で予約無しで接続している回線数の加算値が同時接続可能回線数未満であるか否かを判定する。
【0022】
そして、予約可能であれば当該予約を受付け(予約データベース23に予約を登録)、予約の可否及び予約されたアクセスポイントにおける通信データ量(予約時間帯×通信速度)を、予約を行った車両に対し応答する。更に、受付けた予約に該当するアクセスポイントに対し、通信部21から受付けた予約(予約車両の車両IDと予約時間帯)を通知する。
【0023】
各アクセスポイントAP1〜APnそれぞれは、車両10が各アクセスポイントの無線エリア内に存在するとき、車両10の無線通信部11と無線LANで接続し、車両10にコンテンツデータを送信する。
【0024】
また、各アクセスポイントAP1〜APnは、予約管理部24から通知される予約及び予約時間帯を予約リストに登録すると共に、それぞれにおける接続状況を管理センタ20の通信部21に送信する。
【0025】
図2は、車両が実行する予約処理の一実施形態のフローチャートを示す。この処理は車両10で目的地を設定する際に実行される。同図中、ステップS10で車両10の乗員はカーナビゲーションシステム12に目的地を設定する。これによって、ステップS11でカーナビゲーションシステム12は目的地までの最適な走行ルートを検索して設定ルートに設定する。
【0026】
ステップS12でカーナビゲーションシステム12は設定ルート上にある複数のアクセスポイントを検出する。なお、設定ルート上に1つのアクセスポイントしかない場合もあり得る。
【0027】
次に、ステップS13でAP到達時刻算出部14は車両10が設定ルート上の各アクセスポイントに到達する到達時刻及び滞在時間を算出する。ここでは、カーナビゲーションシステム12から得られる車両10の現在地から各アクセスポイントまでの距離、車速計13から得られる現在の車速、目的地までの設定ルートにおける予測車速に基づいて、車両が各アクセスポイントに到達する時刻及び滞在時間を算出する。
【0028】
ステップS14でAP到達時刻算出部14はカーナビゲーションシステム12から得られる各アクセスポイントの無線エリアと予測車速から各アクセスポイントの無線エリア内に車両10がいる滞在時間を算出する。
【0029】
次に、ステップS15でAP予約部15は無線通信部11を介し管理センタ20に対して各アクセスポイントの到達時刻及び滞在時間を予約時間帯とするデータ通信の予約を行う。なお、この予約には車両10の車両IDを含める。
【0030】
そして、ステップS16でAP予約部15はデータ通信の予約に対する管理センタ20の応答、つまり予約結果を受信して、各アクセスポイントで予約されたデータ通信量及び目的地までの全てのアクセスポイントで予約されたデータ通信量の総和をカーナビゲーションシステム12に供給してナビゲーション表示画面に表示させる。
【0031】
なお、車両10がルート変更を行って、設定ルートから外れた場合には、上記図2の予約処理を最初からやり直す。
【0032】
図3は、予約されたデータ通信量を表示したナビゲーション表示画面の一例を示す。同図中、三角マークは現在地を表わし、目的地を「G」で表わしている。また、「AP1」,「AP2」,「AP3」それぞれがアクセスポイントを表わし、アクセスポイントの側に表示された「20KB」、「10KB」、「5KB」それぞれが各アクセスポイントで予約されたデータ通信量(単位はbps)である。また、画面下部には、予約されたデータ通信量の総和が表示されている。
【0033】
図4は、各アクセスポイントが実行するデータ通信処理の一実施形態のフローチャートを示す。この処理はアクセスポイントに車両10が接近した際に実行される。同図中、ステップS20で車両10がアクセスポイントに接近し、無線エリア内に入る。
【0034】
ステップS21でアクセスポイントは車両10が送信する車両IDを含むデータ通信要求を受信し、ステップS22でアクセスポイントは受信した車両IDが予約リストに登録されており、その予約時間帯に現在時刻が含まれているか否かを判別する。
【0035】
車両IDが予約リストに登録されており、その予約時間帯に現在時刻が含まれている場合には、ステップS23でアクセスポイントは車両10と無線LANで接続し、要求されたデータ通信を行って、要求されたコンテンツ等の通信データを車両10にダウンロードする。
【0036】
図5は、管理センタが実行する予約処理の一実施形態のフローチャートを示す。この処理は管理センタ20が車両10からデータ通信の予約を受け取った際に実行される。同図中、ステップS30で無線通信部21は車両10から送信された予約を受信する。
【0037】
ステップS31で予約管理部24は予約データベース23を参照して、データ通信の予約に含まれる各アクセスポイントにおける予約時間帯に空きがあり予約可能であるか、すなわち、各アクセスポイントにおける予約時間帯の予約回線数と現時点で予約無しで接続している回線数の加算値が同時接続可能回線数未満であるか否かを判定する。
【0038】
予約可能であれば、予約管理部24はステップS32で予約を受付け、上記データ通信の予約を予約データベース23に登録する。そして、予約されたアクセスポイントにおける通信データ量(予約時間帯×通信速度)を、予約を行った車両10に対し応答する。更に、ステップS33で受付けた予約に該当するアクセスポイントに対し、通信部21から受付けた予約(予約車両の車両IDと予約時間帯)を通知する。
【0039】
一方、予約不可であれば、ステップS34で予約を行った車両10に対しその旨の応答を行う。
【0040】
このようにして、車両10は、目的地までの設定ルート上の各アクセスポイントにおいて必要なデータ通信を確実に行うことができる。
【0041】
なお、カーナビゲーションシステム12が請求項記載のアクセスポイント検出手段に相当し、AP到達時刻算出部14が通信可能時間帯算出手段に相当し、AP予約部15がデータ通信予約手段に相当し、予約データベース23が予約状況登録手段に相当し、予約管理部24が予約管理手段に相当する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の路車間通信装置を適用した無線通信システムの第1実施形態のシステム構成図である。
【図2】車両が実行する予約処理の一実施形態のフローチャートである。
【図3】予約されたデータ通信量を表示したナビゲーション表示画面の一例を示す図である。
【図4】各アクセスポイントが実行するデータ通信処理の一実施形態のフローチャートである。
【図5】管理センタが実行する予約処理の一実施形態のフローチャートである。
【符号の説明】
【0043】
10 車両
11 無線通信部
12 カーナビゲーションシステム
13 車速計
14 AP到達時刻算出部
15 AP予約部
16 ダウンロード部
20 管理センタ
21 通信部
22 接続状況管理部
23 予約データベース
24 予約管理部
AP1〜APn アクセスポイント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的地の入力に基づいて走行ルートを探索して最適な走行ルートを設定ルートに設定し、前記設定ルート上にある路車間通信用のアクセスポイントを検出するアクセスポイント検出手段と、
検出されたアクセスポイントを通過する際にデータ通信が可能な時間帯を算出する通信可能時間帯算出手段と、
前記検出されたアクセスポイントにおける前記データ通信が可能な時間帯のデータ通信を予約するデータ通信予約手段と、
各アクセスポイントの時刻毎の予約状況を登録した予約状況登録手段と、
前記データ通信予約手段からの予約があると前記予約状況登録手段を参照して前記予約が可能か否かを判別し、可能であれば前記予約を前記予約状況登録手段に登録して管理する予約管理手段を
有することを特徴とする路車間通信装置。
【請求項2】
請求項1記載の路車間通信装置において、
前記予約管理手段は、各アクセスポイントの時刻毎の予約回線数を同時接続可能回線数と比較して前記予約が可能か否かを判別することを特徴とする路車間通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−303977(P2006−303977A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−123709(P2005−123709)
【出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】