説明

路面凍結防止用ブロック及びその製造方法

【課題】車両通過時の荷重によって、路面全体に生成された氷膜を破砕できる機能を備える路面凍結防止用ブロック及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】コンクリート又はアスファルトからなる路面1における車両の進行方向と交差状に設けられた凹部2内に、固定部材である固定ボルト3をもって固定される合成ゴム製のブロック本体11と、このブロック本体11に設けられた外気と遮断された中空部12内に充填される液体である不凍液13とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、路面凍結防止用ブロック及びその製造方法に関するもので、更に詳細には、コンクリート又はアスファルトからなる路面における車両の進行方向と交差状に設けられた凹部内に固定される路面凍結防止用ブロック及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、寒冷地では、通行用のコンクリート又はアスファルトからなる路面等に積もった雪が車両の通行によって踏み固められ、更に日中暖められて氷が融解し、夜間の気温低下によって再度凍って、車両が滑りやすくなる路面凍結が問題となっている。
【0003】
路面凍結の問題を解決する方法として、路面に張り付いた氷や雪に融雪剤を散布する方法が広く採用されているが、融雪剤には無機塩化物が使用されているため、通行車両の腐食を促進し、細かなミストとなって道路の周囲に飛散するため、周辺の環境にも好ましくない。
【0004】
また、雪や氷を融解させる別の方法として、例えば道路の舗装内、遠赤外線素子を混入した樹脂シートの間に伝熱ヒータを挟んで形成したシート状の遠赤外線ヒータ部材を埋設すると共に、遠赤外線ヒータ部材より上側の舗装材に遠赤外線素子を混入することにより、凍結や積雪を効率的に防止する方法開発されている。しかし、この方法では設備やその維持管理にコストが掛かりすぎるため、広い地域に適用することが容易ではない。
【0005】
これら以外の方法としては、路面にピットを形成して、このピット内壁に充填された弾性部材を介して凸部を有するスリップ防止部材を埋め込んで、スリップを防止しながら、局部的に氷膜を破砕する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、石材,砂及びゴムの小片ないし粉末をポリウレタン等の樹脂で結合してなる弾性路面舗装も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
更には、コンクリート又はアスファルトで形成された移動可能な基板の上面にゴムマットを接合した凍結抑制舗装面用部材も開発されている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平9−100505号公報(特許請求の範囲、図1)
【特許文献2】特開平7−259007号公報(特許請求の範囲)
【特許文献1】特開平9−302604号公報(特許請求の範囲、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特開平9−100505号公報,特開平7−259007号公報に記載の技術においては、車両が通過する際の弾性変形の程度が僅かであるため、積雪地域の路面に形成される厚い氷を破砕することが困難である。
【0009】
また、特開平9−302604号公報に記載の凍結抑制舗装面用部材においては、車両の通過によるゴムマットの剥離を防止できるが、路面凍結による氷膜を破砕する機能が十分ではなく、これにおいても、積雪地域の路面に形成される厚い氷を破砕することが困難であるという問題があった。
【0010】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたのもので、車両通過時の荷重によって、路面全体に生成された氷膜を破砕できる機能を備える路面凍結防止用ブロック及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、コンクリート又はアスファルトからなる路面における車両の進行方向と交差状に設けられた凹部内に固定される路面凍結防止用ブロックであって、 外気と遮断された中空部を有すると共に、路面側表面が可撓性を有する合成ゴム製のブロック本体と、 上記中空部内に充填される液体と、を具備することを特徴とする。
【0012】
この発明において、上記ブロック本体を形成する合成ゴムとしては、例えば、自動車タイヤ用として使用されるスチレン,ブタジエンからなる合成ゴムであるSBRが挙げられる。この場合、スチレンとブタジエンの混合比率を変化させることにより、高剛性かつ高反発弾性のブロック本体を形成することができる。
【0013】
このように構成することにより、この発明に係る路面凍結防止用ブロックが設置された路面に氷膜が生成しても、車両のタイヤがブロックの表面を押すことによって、ブロック本体の路面側表面が窪んで、表面の上部に形成された氷膜が破砕されると同時に、中空部内に充填された液体に静水圧がかかり、車両のタイヤによって押さえられていない部分のブロック本体の表面全体が滑らかに盛り上がって、上部に形成された氷膜が破砕される。
【0014】
また、この発明において、上記液体は、−20℃において凝固しない不凍液である方が好ましい(請求項2)。このような不凍液として、例えば、水とエチレングリコール(HOCH2CH2OH)との混合物、いわゆる不凍液が挙げられる。エチレングリコールはその凝固点が−13℃であるため、単体では不凍液として使用できないが、水とエチレングリコールとの混合物は、その混合割合にもよるが、凝固点が低く−20℃以下であっても凝固しない。
【0015】
ここで、中空部内に充填される液体を、−20℃において凝固しない不凍液とした理由は、路面凍結によって自動車事故の多発する地域では、冬場の気温が−15℃を下回ることが珍しくないため、このような気温が低下しても、路面凍結防止用ブロックがその氷膜破砕機構を発揮するためには、中空部内に充填される液体の凝固点が−20℃以下であることが望ましいからである。
【0016】
また、この発明において、上記液体は、−20℃において凝固しない無機塩化物を溶解した水溶液であってもよい(請求項3)。無機塩化物としては、例えば塩化カルシウム(CaCl2),塩化ナトリウム(NaCl)等が挙げられる。これら無機塩化物の水溶液は、凝固点降下によって、凝固点を−20℃以下とすることが可能である。これら無機塩化物はそれぞれ単体で水に溶解して水溶液としてもよいが、無機塩化物の混合物を水に溶解して水溶液としてもよい。また、安価な原料である海水をベースとして、これに更に塩化カルシウムや塩化ナトリウム等の無機塩化物を溶解し、凝固点を−20℃以下とした水溶液であってもよい。
【0017】
また、請求項4記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の路面凍結防止用ブロックにおいて、上記ブロック本体の路面側表面に凹凸部を設けると共に、この凹凸部の底部に上記中空部を延在してなる、ことを特徴とする。
【0018】
このように構成することにより、車両のタイヤがブロック本体の路面側表面の凸部を押すことにより、より確実に凸部が窪んで中空部に充填された液体が加圧され、同時に中空部全体に静水圧がかかる。発生した静水圧によって、それまで表面凹部となっていた箇所が瞬時に飛び出して表面凸部となり、上記箇所の上部に形成されていた氷膜を破砕することができる。また、別の車両が路面凍結防止用ブロックを通過する際には、車両のタイヤが先程新たに表面凸部となった部分を押すことにより、より確実に表面凸部が窪んで中空部に充填された液体が加圧され、同時に中空部全体に静水圧がかかる。発生した静水圧によって、先程新たに表面凹部となった箇所が瞬時に表面側に飛び出して再度表面凸部となり、上記箇所の上部に新たに形成されていた氷膜を破砕することができる。このように、車両のタイヤの軌跡は必ずしも同一ではなく多少異なることを利用して、車両の通過のたびに表面の凹凸変動を繰り返し起こして、路面に形成される氷膜の形成を未然に防止し、氷膜の早期破砕を確実に行うことができる。
【0019】
また、請求項5記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の路面凍結防止用ブロックにおいて、上記ブロック本体の路面側表面に、直線状の水切り溝を更に設けた、ことを特徴とする。
【0020】
このように構成することにより、破砕された氷が日中溶けて水になるが、このような場合でもブロック上に溜まった水は、水切り溝によって排出される。
【0021】
また、請求項6記載の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の路面凍結防止用ブロックにおいて、上記ブロック本体は、ゴムを母材としてカーボンブラックを添加した複合材である、ことを特徴とする。
【0022】
このように構成することにより、ブロックに耐摩耗性を付与することができる。更に、ブロックの色を黒色とすることができるので、日中に太陽光線(特に赤外線)を吸収して光エネルギを熱エネルギに変換することができる。
【0023】
また、請求項7記載の発明は、請求項1ないし6のいずれかに記載の路面凍結防止用ブロックにおいて、上記ブロック本体の裏面側内部にアルミニウム合金製補強板を埋設してなる、ことを特徴とする。この場合、補強板は高剛性を有するアルミニウム合金例えばAl−Mg合金が好ましい。
【0024】
このように構成することにより、合成ゴム製のブロックに強度をもたせることができると共に、ブロックの裏面側の形状を平坦に保つことができる。
【0025】
また、請求項8記載の発明は、請求項1ないし7のいずれかに記載の路面凍結防止用ブロックにおいて、上記ブロック本体の路面側表面を路面より下方に位置させる、ことを特徴とする。
【0026】
このように構成することにより、路面に積もった雪を除雪する際に、除雪車のシャベル,プラウ等の除雪装置がブロックに当たりにくくすることができ、また、車両のスピードを落とす機能を有することができる。
【0027】
また、請求項9記載の発明は、請求項1ないし8のいずれかに記載の路面凍結防止用ブロックにおいて、上記ブロック本体の路面側表面に、車両進行方向の一端側から他端側に向かって下り勾配面を形成してなる、ことを特徴とする。
【0028】
このように構成することにより、ブロック本体の路面側表面に、車両進行方向の一端側から他端側に向かって下り勾配面が形成されるので、溶けた水の排出を行うことができる。
【0029】
また、請求項10記載の発明は、請求項1ないし9のいずれかに記載の路面凍結防止用ブロックにおいて、上記ブロック本体の路面側表面における中空部側内面に高分子繊維層を介してゴムシートを積層してなる、ことを特徴とする。
【0030】
このように構成することにより、ブロックの路面側表面に強度をもたせることができる。
【0031】
また、請求項11記載の発明は、請求項1ないし10のいずれかに記載の路面凍結防止用ブロックにおいて、上記ブロック本体の路面側表面における中空部側内面にスチール繊維層を介してゴムシートを積層してなる、ことを特徴とする。
【0032】
このように構成することにより、請求項10記載の発明と同様に、ブロックの路面側表面に強度をもたせることができる。
【0033】
また、請求項12記載の発明は、請求項1ないし11のいずれかに記載の路面凍結防止用ブロックにおいて、上記ブロック本体を路面に設けられた凹部の上面に固定部材で固定してなる、ことを特徴とする。
【0034】
このように構成することにより、ブロック本体を路面に設けられた凹部内に確実に嵌装固定することができる。
【0035】
また、請求項13記載の発明は、コンクリート又はアスファルトからなる路面における車両の進行方向と交差状に設けられた凹部内に固定され、外気と遮断された中空部を有すると共に、路面側表面が可撓性を有する合成ゴム製のブロック本体と、上記中空部内に充填される液体と、を具備する路面凍結防止用ブロックの製造方法であって、 上記ブロック本体の路面側表面と上記中空部を形成する凹状部を有するブロック上部半体を、凹状部を上方にしてプレス下型にセットする工程と、 上記ブロック上部半体の凹状部内に液体を注入する工程と、 上記ブロック本体の裏面側を構成するブロック下部半体を保持するプレス上型と、上記プレス下型とを相対的に近接移動して、上記ブロック上部半体とブロック下部半体の少なくともいずれか一方の接合面に塗布された接着剤を介してブロック上部半体とブロック下部半体とを接着する工程と、を有することを特徴とする。
【0036】
このように構成することにより、路面全体に生成された氷膜を破砕できる機能を備えるべく外気と遮断された中空部内に液体を充填してなる路面凍結防止用ブロックを、容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0037】
この発明によれば、次のような優れた効果が得られる。
【0038】
(1)請求項1,2,3記載の発明によれば、車両の通過時の荷重によって、ブロック本体の路面側表面が窪んで、表面の上部に形成された氷膜が破砕されると同時に、中空部内に充填された液体にかかる静水圧によって、ブロックの上部に形成された氷膜を破砕することができるので、路面全体に生成された氷膜を確実に破砕して路面の凍結を防止することができる。
【0039】
(2)請求項4記載の発明によれば、上記(1)に加えて、更に車両の通過のたびに表面の凹凸変動を繰り返し起こして、路面に形成される氷膜の形成を未然に防止し、氷膜の早期破砕を確実に行うことができる。
【0040】
(3)請求項5記載の発明によれば、破砕された氷が溶けてブロック上に溜まった水を水切り溝を介して排出することができるので、上記(1),(2)に加えて、更に溶けた水による再凍結を防止することができる。
【0041】
(4)請求項6記載の発明によれば、ブロックに耐摩耗性を付与することができる。更に、ブロックの色を黒色とすることにより、日中に太陽光線(特に赤外線)を吸収して光エネルギを熱エネルギに変換することができるので、上記(1)〜(3)に加えて、更にブロック上に生成された氷膜の融解を促進することができる。
【0042】
(5)請求項7記載の発明によれば、合成ゴム製のブロックに強度をもたせることができると共に、ブロックの裏面側の形状を平坦に保つことができるので、上記(1)〜(4)に加えて、更にブロックの寿命の向上が図れると共に、路面に設けられた凹部への嵌装を容易にすることができる。
【0043】
(6)請求項8記載の発明によれば、上記(1)〜(5)に加えて、更に路面に積もった雪を除雪する際に、除雪車のシャベル,プラウ等の除雪装置がブロックに当たりにくくすることができ、また、車両のスピードを落とす機能を有することができる。
【0044】
(7)請求項9記載の発明によれば、ブロック本体の路面側表面に、車両進行方向の一端側から他端側に向かって下り勾配面を形成することにより、溶けた水の排出を行うことができるので、上記(1)〜(6)に加えて、更に再凍結を更に確実に防止することができる。
【0045】
(8)請求項10,11記載の発明によれば、上記(1)〜(7)に加えて、更にブロックの路面側表面に強度をもたせることができるので、更にブロックの寿命の増大が図れる。
【0046】
(9)請求項12記載の発明によれば、上記(1)〜(8)に加えて、更にブロック本体を路面に設けられた凹部内に確実に嵌装固定することができる。
【0047】
(10)請求項13記載の発明によれば、路面全体に生成された氷膜を破砕できる機能を備えるべく外気と遮断された中空部内に液体を充填してなる路面凍結防止用ブロックを、容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
以下に、この発明の最良の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0049】
<第1実施形態>
図1は、この発明に係る路面凍結防止用ブロック(以下に、凍結防止ブロックという)の第1実施形態の使用状態を示す断面斜視図、図2は、凍結防止ブロックの取付状態を示す要部断面図(a)及び(a)のI部拡大断面図(b)、図3は、凍結防止ブロックの一部を断面で示す斜視図である。
【0050】
上記凍結防止ブロック10は、コンクリート又はアスファルトからなる路面1における車両の進行方向と交差状に設けられた凹部2内に、後述する固定部材例えば固定ボルト3をもって固定される合成ゴム製のブロック本体11と、このブロック本体11に設けられた外気と遮断された中空部12内に充填される液体である不凍液13とで主に構成されている。なお、この場合、車両の進行方向におけるブロック本体11の幅B1は約1000mm、路面1の幅B2は約500〜600mmに形成されている。また、ブロック本体11の道路幅方向の長さは約1000mmに形成されており、道路の幅に合わせて繋ぎ合わされている。
【0051】
ブロック本体11は、路面側表面が可撓性を有する例えばSBR(スチレン・ブタジエン・ゴム)にて形成されている。この場合、ブロック本体11は、図2(b)に示すように、ゴムを母材11aとしてカーボンブラック11bを添加した複合材によって形成されている。
【0052】
ここで、カーボンブラック11bは、高温の炉内において、原料油が熱分解され、10万〜10億個の炭素原子からなるほぼ球形の単位粒子となり、これが互いに融合して凝集体となっているものをいう。この場合、合成ゴム100重量部あたり、カーボンブラック11bを20〜80重量部配合することが望ましい。20重量部未満であると耐摩耗性が劣り、80重量部を超えると弾力性が損なわれるからである。また、カーボンブラック11bの粒径は、0.03〜0.1μmが望ましい。0.03μm未満であると十分な分散状態が得られず、0.1μmを超えると耐摩耗性が劣るからである。
【0053】
なお、カーボンブラック11b以外に、ブロセスオイル、その他例えば亜鉛華,ステアリン酸,酸化防止剤,加硫促進剤等の添加剤を配合してもよい。
【0054】
これらの原料は、高温・高圧下ミキサーで混合・混練され、更にゴムの塊はロールに通されゴムシートとなる。
【0055】
このように形成することにより、ブロック本体11の色を黒色とすることができ、日中に太陽光線(特に赤外線)を吸収して光エネルギを熱エネルギに変換することができるので、凍結防止ブロック10上に生成された氷膜5の融解を促進することができる。
【0056】
また、上記ブロック本体11の路面側表面には、略半球状の凹部14aと凸部14bとが適宜間隔をおいて散点状に配列してなる凹凸部14が設けられており、この凹凸部14すなわち各凹部14a、凸部14bの底部に中空部12が延在されている。
【0057】
また、ブロック本体11の路面側表面には、車両の走行方向及び該走行方向と直交状に交差する方向に沿う互いに平行な複数の直線状の水切り溝19が設けられている(図1,図3参照)。
【0058】
また、ブロック本体11の裏面側内部にアルミニウム合金例えばAl−Mg合金製の補強板15が埋設されている。このように、ブロック本体11の裏面側内部にアルミニウム合金製の補強板15を埋設することにより、合成ゴム製のブロック本体11に強度をもたせることができると共に、ブロック本体11の裏面側の形状を平坦に保つことができ、かつ、路面1に設けられた凹部2への凍結防止ブロック10の固定を強固にすることができる。
【0059】
この場合、ブロック本体11の路面側表面は、段差16例えば約5〜10mmをもって路面1の下方に位置されている。このように、ブロック本体11の路面側表面と路面1との間に段差16を設けてブロック本体11の路面側表面を路面1より下方に位置させることにより、路面1に積もった雪を除雪する際に、除雪車のシャベル,プラウ等の除雪装置が凍結防止ブロック10に当たりにくくすることができ、除雪装置の衝撃による凍結防止ブロック10の損傷を抑制することができ、また、車両のスピードを落とす機能を有することができる。
【0060】
また、ブロック本体11の路面側表面には、車両進行方向の一端側から他端側に向かって下り勾配面17が形成されている。路面1が下り坂以外の場合においては、車両進行方向の前方側から後方側に向かって下り勾配面17が形成される。例えば、ブロック本体11の車両前方側端部の厚みを約50mm、後方側端部の厚みを約45mmに形成し、路面1と車両前方側端部との段差16aを約5mm、路面1と車両後方側端部との段差16bを約10mmとすることにより、溶けた水を後方側端部に排出することができる。
【0061】
なお、路面が下り坂の場合には、ブロック本体11の配置を逆、すなわち車両進行方向の後方側から前方側に向かって下り勾配面17を形成する。このように構成することによって、下り坂においても溶けた水を前方側端部に排出することができる。
【0062】
なお、上記ブロック本体11及び補強板15の道路幅方向の端部には、路面側表面部が大径孔18aの取付孔18が設けられている。この取付孔18を貫通する固定部材である固定ボルト3を、凹部2の底部に埋設されたアンカ部材(ナット)4に締結することによって、凍結防止ブロック10が凹部2内に嵌装固定される。
【0063】
一方、上記不凍液13は、−20℃において凝固しない不凍液であって、例えば、水とエチレングリコール(HOCH2CH2OH)との混合物(混合液)にて形成されている。なお、不凍液13を、−20℃において凝固しない、例えば塩化カルシウム(CaCl2),塩化ナトリウム(NaCl)等無機塩化物を溶解した水溶液にて形成してもよい。なお、この場合、安価な原料である海水をベースとして、これに更に塩化カルシウムや塩化ナトリウム等の無機塩化物を溶解し、凝固点を−20℃以下とした水溶液であってもよい。
【0064】
上記のように構成される凍結防止ブロック10において、図4に示すように、凍結防止ブロック10の路面側表面に氷膜5が生成された無負荷状態から、図5に示すように、車両のタイヤ6がブロック本体11の路面側表面の凸部14bを押すことにより、凸部14bが窪んで中空部12に充填された不凍液13が加圧され、同時に中空部全体に静水圧がかかる。すると、発生した静水圧によって、それまで表面凹部14aとなっていた箇所が瞬時に飛び出して表面凸部14bとなり、この箇所の上部に形成されていた氷膜5を破砕することができる。また、別の車両が凍結防止ブロック10を通過する際には、車両のタイヤ6が先程新たに表面凸部14bとなった部分を押すことにより、より確実に表面凸部14bが窪んで中空部12に充填された不凍液13が加圧され、同時に中空部全体に静水圧がかかる。発生した静水圧によって、先程新たに表面凹部14aとなった箇所が瞬時に表面側に飛び出して再度表面凸部14bとなり、この箇所の上部に新たに形成されていた氷膜5を破砕することができる。このように、車両のタイヤ6の軌跡は必ずしも同一ではなく多少異なることを利用して、車両の通過のたびに表面の凹凸変動を繰り返し起こして、路面1に形成される氷膜5の形成を未然に防止し、氷膜の早期破砕を確実に行うことができる。
【0065】
<凍結防止ブロックの製造>
図6は、上記凍結防止ブロック10の製造方法の工程を示す概略断面図である。
【0066】
上記凍結防止ブロック10を作製するには、まず、図6(a)に示すように、ブロック本体11の路面側表面と中空部12を形成する凹状部12aを有するブロック上部半体20を、凹状部12aを上方にしてプレス下型30にセットする(ブロック上部半体セット工程)。この場合、ブロック上部半体20の凹状部12a以外の上端面(接合面)に、接着剤22が塗布されている。
【0067】
次に、図6(b)に示すように、ブロック上部半体20の凹状部12a内に、図示しない不凍液供給源に接続する供給ノズル(図示せず)から不凍液13を注入する(不凍液注入工程)。
【0068】
次に、図6(c)に示すように、ブロック本体11の裏面側を構成すると共に補強板15を埋設したブロック下部半体21を、固定治具(図示せず)をもってプレス上型31に保持する(ブロック下部半体保持工程)。この際、ブロック下部半体21の接合面には接着剤22が塗布されている。また、ブロック下部半体21における中空部12を構成する面に、凹状部12a内に突入する凸状部23を設けてもよい。この状態で、図6(d)に示すように、図示しないプレス装置を駆動して、プレス上型31を下降、すなわちプレス上型31とプレス下型30とを相対的に近接移動して、ブロック上部半体20とブロック下部半体21とを接着剤22を介して接着する(接着工程)。この際、ブロック下部半体21に設けられた凸状部23が、ブロック上部半体20に設けられた凹状部12a内に突入することで、凹状部12a内に注入された不凍液13を中空部12内にできる限り空気を含めることなく充填することができる。
【0069】
なお、上記説明では、ブロック上部半体20とブロック下部半体21の両接合面に接着剤22を塗布する場合について説明したが、ブロック上部半体20とブロック下部半体21の少なくとも一方の接合面に接着剤22を塗布してもよい。また、上記説明では、プレス上型31を下降したが、プレス上型31に対してプレス下型30を上昇させるか、あるいは、プレス上型31とプレス下型30の双方を近接移動してもよい。
【0070】
上記のように、ブロック本体11の路面側表面と中空部12を形成するブロック上部半体20をプレス下型30にセットした後、ブロック上部半体20の凹状部12a内に不凍液13を注入し、次いで、ブロック本体11の裏面側を構成するブロック下部半体21を保持したプレス上型31と、プレス下型30とを相対的に近接移動して、ブロック上部半体20とブロック下部半体21の少なくともいずれか一方の接合面に塗布された接着剤22を介してブロック上部半体20とブロック下部半体21とを接着することにより、外気と遮断された中空部12内に不凍液13を充填してなる凍結防止ブロック10を、容易に製造(作製)することができる。
【0071】
<第2実施形態>
図7は、この発明に係る凍結防止ブロックの第2実施形態の要部を示す拡大断面図である。
【0072】
第2実施形態は、凍結防止ブロック10Aの強度を向上させるようにした場合である。すなわち、ブロック本体11Aの路面側表面における中空部側内面に例えばポリエステル,ナイロン(商品名)及びレーヨン等の高分子繊維層40を介してゴムシート41を積層して、凍結防止ブロック10Aの路面側表面に強度をもたせるようにした場合である。
【0073】
このように、ブロック本体11Aの路面側表面における中空部側内面に高分子繊維層40を介してゴムシート41を積層することにより、ブロック本体11Aの路面側表面に強度をもたせることができ、凍結防止ブロック10A自体に強度をもたせると共に、耐摩耗性の向上を図ることができる。
【0074】
なお、高分子繊維層40は、スチール繊維層であってもよいし、高分子繊維層40とスチール繊維層の両方を介してゴムシート41を積層させてもよい。
【0075】
なお、第2実施形態において、その他の部分は第1実施形態と同じであるので、同一部分には同一符号を付して、説明は省略する。
【0076】
なお、第2実施形態の凍結防止ブロック10Aの製造は、第1実施形態と同様の工程によって製造することができるが、路面側表面を構成するブロック上部半体20をプレス下型30にセットする前又はセットする際に、図8(a)に示すように、ブロック上部半体20の中空部12(凹状部12a)側内面に接着剤22を塗布した後、高分子繊維を被せて高分子繊維層40を形成し、その表面にゴムシート41を積層してブロック上部半体20を作製する(図8(b)参照)。なお、ブロック上部半体20はプレス加工によって作製することができる。
【0077】
上記のようにしてブロック上部半体20を作製した後、第1実施形態と同様の工程によって、ブロック上部半体20とブロック下部半体21を接着して凍結防止ブロック10Aを作製(製造)することができる。
【0078】
<第3実施形態>
図9は、この発明に係ると凍結防止ブロックの第3実施形態の取付状態を示す断面斜視図、図10は、第3実施形態の取付状態の要部を示す断面図である。
【0079】
第3実施形態の凍結防止ブロック10Bは、路面1と同一面状の路面側表面を有するブロック本体11Bの路面側表面に、車両の走行方向に沿って平面視が略偏平楕円形状の凹部14cと凸部14dとを交互に配列してなる凹凸部14Bを形成した場合である。
【0080】
また、第3実施形態の凍結防止ブロック10Bにおいては、図10に示すように、隣接する凸部14dと凹部14cを対として中空部12Bが区画形成されている。
【0081】
このように、隣接する凸部14dと凹部14cを対として中空部12Bを独立して設けることにより、車両のタイヤ6がブロック本体11Bの路面側表面の凸部14dを押すことにより、凸部14dが窪んで中空部12Bに充填された不凍液13が加圧され、同時に中空部全体に静水圧がかかる。発生した静水圧によって、凸部14dに隣接する凹部14cの箇所が瞬時に飛び出して表面凸部となり、上記箇所の上部に形成されていた氷膜を破砕することができる。
【0082】
なお、第3実施形態において、その他の部分は第1実施形態と同じであるので、同一部分には同一符号を付して、説明は省略する。
【0083】
また、第3実施形態の凍結防止ブロック10Bは、第1実施形態の凍結防止ブロック10と同様の工程によって作製(製造)することができる。
【0084】
また、第3実施形態におけるブロック本体11Bの路面側表面を、第2実施形態と同様に、ブロック本体11Bの路面側表面における中空部側内面に高分子繊維層40を介してゴムシート41を積層することにより、ブロック本体11Bの路面側表面に強度をもたせることができる。
【0085】
<その他の実施形態>
(1)第1実施形態では、凍結防止ブロック10を路面1に設けられた凹部2内に段差16を設けて嵌装固定する場合について説明したが、段差16を設けずに、ブロック本体11の路面側表面と路面1とを同一面状に配設してもよい。また、第1実施形態では、ブロック本体11の路面側表面に下り勾配面17を形成する場合について説明したが、下り勾配面17を形成せずに平坦状に形成してもよい。
【0086】
(2)第3実施形態では、凍結防止ブロック10Bと路面1とを同一面状に配設した場合について説明したが、第1実施形態と同様に、凍結防止ブロック10Bを路面1に設けられた凹部2内に段差を設けて嵌装固定してもよく、また、ブロック本体11Bの路面側表面に、車両進行方向の一端側から他端側に向かって下り勾配面を形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】この発明に係る路面凍結防止用ブロックの第1実施形態の取付状態を示す断面斜視図である。
【図2】第1実施形態における路面凍結防止用ブロックの取付状態の要部を示す断面図(a)及び(a)のI部拡大断面図(b)である。
【図3】第1実施形態の路面凍結防止用ブロックを示す断面斜視図である。
【図4】第1実施形態の路面凍結防止用ブロックの路面側表面に氷膜が形成された無負荷状態を示す断面図である。
【図5】第1実施形態の路面凍結防止用ブロックに車両の負荷が掛かって氷膜が破砕される状態を示す断面図である。
【図6】上記路面凍結防止用ブロックの製造工程を示す概略断面図である。
【図7】この発明に係る路面凍結防止用ブロックの第2実施形態の要部を示す拡大断面図である。
【図8】第2実施形態における高分子繊維層とゴムシートの積層状態を示す分解断面図(a)及び高分子繊維層とゴムシートの積層状態を示す断面図(b)である。
【図9】この発明に係る路面凍結防止用ブロックの第3実施形態の取付状態を示す断面斜視図である。
【図10】第3実施形態の路面凍結防止用ブロックの取付状態を示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0088】
1 路面
2 凹部
3 固定ボルト(固定部材)
5 氷膜
10,10A,10B 凍結防止ブロック(路面凍結防止用ブロック)
11,11A,11B ブロック本体
11a ゴム母材
11b カーボンブラック
12,12B 中空部
12a 凹状部
13 不凍液
14,14B 凹凸部
14a,14c 凹部
14b,14d 凸部
15 補強板
16,16a,16b 段差
17 下り勾配面
18 取付孔
19 水切り溝
20 ブロック上部半体
21 ブロック下部半体
22 接着剤
30 プレス下型
31 プレス上型
40 高分子繊維層
41 ゴムシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート又はアスファルトからなる路面における車両の進行方向と交差状に設けられた凹部内に固定される路面凍結防止用ブロックであって、
外気と遮断された中空部を有すると共に、路面側表面が可撓性を有する合成ゴム製のブロック本体と、
上記中空部内に充填される液体と、を具備することを特徴とする路面凍結防止用ブロック。
【請求項2】
請求項1記載の路面凍結防止用ブロックにおいて、
上記液体は、−20℃において凝固しない不凍液である、ことを特徴とする路面凍結防止用ブロック。
【請求項3】
請求項1記載の路面凍結防止用ブロックにおいて、
上記液体は、−20℃において凝固しない無機塩化物を溶解した水溶液である、ことを特徴とする路面凍結防止用ブロック。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の路面凍結防止用ブロックにおいて、
上記ブロック本体の路面側表面に凹凸部を設けると共に、この凹凸部の底部に上記中空部を延在してなる、ことを特徴とする路面凍結防止用ブロック。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の路面凍結防止用ブロックにおいて、
上記ブロック本体の路面側表面に、直線状の水切り溝を更に設けた、ことを特徴とする路面凍結防止用ブロック。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の路面凍結防止用ブロックにおいて、
上記ブロック本体は、ゴムを母材としてカーボンブラックを添加した複合材である、ことを特徴とする路面凍結防止用ブロック。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の路面凍結防止用ブロックにおいて、
上記ブロック本体の裏面側内部にアルミニウム合金製補強板を埋設してなる、ことを特徴とする路面凍結防止用ブロック。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の路面凍結防止用ブロックにおいて、
上記ブロック本体の路面側表面を路面より下方に位置させる、ことを特徴とする路面凍結防止用ブロック。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の路面凍結防止用ブロックにおいて、
上記ブロック本体の路面側表面に、車両進行方向の一端側から他端側に向かって下り勾配面を形成してなる、ことを特徴とする路面凍結防止用ブロック。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の路面凍結防止用ブロックにおいて、
上記ブロック本体の路面側表面における中空部側内面に高分子繊維層を介してゴムシートを積層してなる、ことを特徴とする路面凍結防止用ブロック。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかに記載の路面凍結防止用ブロックにおいて、
上記ブロック本体の路面側表面における中空部側内面にスチール繊維層を介してゴムシートを積層してなる、ことを特徴とする路面凍結防止用ブロック。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれかに記載の路面凍結防止用ブロックにおいて、
上記ブロック本体を路面に設けられた凹部の上面に固定部材で固定してなる、ことを特徴とする路面凍結防止用ブロック。
【請求項13】
コンクリート又はアスファルトからなる路面における車両の進行方向と交差状に設けられた凹部内に固定され、外気と遮断された中空部を有すると共に、路面側表面が可撓性を有する合成ゴム製のブロック本体と、上記中空部内に充填される液体と、を具備する路面凍結防止用ブロックの製造方法であって、
上記ブロック本体の路面側表面と上記中空部を形成する凹状部を有するブロック上部半体を、凹状部を上方にしてプレス下型にセットする工程と、
上記ブロック上部半体の凹状部内に液体を注入する工程と、
上記ブロック本体の裏面側を構成するブロック下部半体を保持するプレス上型と、上記プレス下型とを相対的に近接移動して、上記ブロック上部半体とブロック下部半体の少なくともいずれか一方の接合面に塗布された接着剤を介してブロック上部半体とブロック下部半体とを接着する工程と、を有することを特徴とする路面凍結防止用ブロックの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−197997(P2007−197997A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−17513(P2006−17513)
【出願日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(000004743)日本軽金属株式会社 (627)
【Fターム(参考)】