説明

路面構成体、これを用いた横断歩道および道路

【課題】段差が生じず、平滑で安定した路面を長期間にわたって維持することができる路面構成体、これを用いた横断歩道および道路を提供する。
【解決手段】路面構成体8は、路盤5に敷設された合繊不織布10と、複数個の凍結スリップ防止用ブロック11とを備えている。凍結スリップ防止用ブロック11は、RCブロック12と、このRCブロック12の上面を覆う金属製プレート13と、この金属製プレート13の上面に被覆形成された路面形成シート14とで構成されている。RCブロック12の側面には隣り合うRCブロック12と連結する連結用の凹部17と凸部18が形成されている。金属製プレート13は、ボルトとナット16によって該RCブロック12の上面に固定されている。路面形成シート14は、低硬度ゴムシート層20と、高強度ゴムシート層21とで構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積雪寒冷地域の横断歩道区域、橋、トンネルの出入口、下り坂カーブなどの路面に敷設して好適な路面構成体、これを用いた横断歩道および道路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
横断歩道は、歩行者が道路を安全に横断することができるように路面に定めた道路区域であって(道路交通法第2条第1項第4号)、一般に歩行者と、自動車、二輪車、バス等(以下、車輌という)の運転手から見易いように白色の縞模様からなる区画線によって標示されている。
【0003】
ところで、寒冷積雪地域では、横断歩道の路面に降り積もった雪が融けて氷結すると、歩行者が滑って転倒事故を起こしたり、車輌がスリップ事故を起こす原因となるため、このような事故を防止する技術が、例えば特許文献1、2、3に記載されている。同様に、橋上、トンネルの出入口、下り坂カーブなどの路面においても凍結による車輌のスリップ事故が起き易いため、運転に細心の注意が要求されている。
【0004】
特許文献1に記載されている技術は、撓み系路面舗装技術を採用したもので、横断歩道となる道路上に板状体を敷設し、止め金具とアンカーボルトによって路面に固定することにより、横断歩道用スリップ防止機構としている。当該板状体は、弾性物質によって一体的に形成されることにより、上面が平面状の板部と、複数個の凸部および凹部を有し前記板部の下面に形成された変形部とで構成されている。このような板状体は、車輌や歩行者によって踏みつけられると、その荷重によって変形部が圧縮されて弾性変形し板部の表面が撓むことにより、板状体の上面に凍結している氷層が破砕され、これにより車輌のスリップ事故や歩行者の転倒事故を防止するようにしている。
【0005】
特許文献2に記載されている技術は、コンクリート製基体の上面に貼着したウレタンゴム製の再帰反射性白色路面板からなる白色路面敷設ブロックと、他のコンクリート製基体の上面に貼着したウレタンゴム製の防滑性黒色路面板からなる黒色路面敷設ブロックとで横断歩道路面構成体を構成し、当該横断歩道路面構成体を車道の幅員方向に敷設している。再帰反射性白色路面板は、酸化チタン等の白色無機顔料によって全体を白色にしてあり、表面側にガラスビーズを混入している。一方、防滑性黒色路面板はカーボンブラック等の黒色顔料によって全体を黒色にしてあり、表面側に硅砂を混入している。
【0006】
特許文献3に記載されている技術は、第1の色からなる複数枚の第1のライナープレートを連結基布によって折曲自在に連結した第1の防滑ライナーと、同じく第2の色からなる複数枚の第2のライナープレートを連結基布によって折曲自在に連結した第2の防滑ライナーとで横断歩道用防滑ライナーを構成し、当該ライナーを路面の幅員方向に敷設することにより、横断歩道として標示している。第1、第2のライナープレートは、それぞれ金属製のベースプレート上にクッション層を形成するとともに、互いに隣り合うクッション層間に連結基布を埋設し、さらにこのクッション層の上にゴム製表層を積層することにより形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−218306号公報
【特許文献2】実用新案登録第3020579号公報
【特許文献3】特開2007−39944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記した特許文献1に記載されている横断歩道用スリップ防止機構は、弾性物質からなる板状体を舗装路面または路盤に敷設し、止め金具とアンカーボルトによって板状体の車輌走行方向の前縁および後縁を固定しているだけであるため、路盤の安定化処理後に板状体を敷設したとしても、車輌通行の繰り返しで短期間に板状体相互間に段差が生じるという問題があった。段差が生じる主たる原因は、走行車輌の重量によって板状体が繰り返し上下動すると、隣接する板状体間の目地を通って路盤に浸透した雨水に対してポンプのような働きをするため、砂粒が路面に押し上げられて流動化現象を起こし、床面が不均整になるためである。
【0009】
上記した特許文献2に記載されている横断歩道路面構成体も、白色路面敷設ブロックと黒色路面敷設ブロックを単に路面に交互に敷設しているだけであるため、上記した引用文献1に記載の横断歩道用スリップ防止機構と同様に、走行車輌の重量によって敷設ブロックが上下動し、段差が生じるという問題があった。
【0010】
上記した特許文献3に記載されている横断歩道用防滑ライナーも、隣り合う防滑ライナーどうしを単に連結基布によって折曲自在に連結しているだけであるため、特許文献1、2と同様にライナープレートに段差が生じ、未だ改良の余地があった。
【0011】
本発明は上記した従来の問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、凍結スリップを防止するとともに、車輌走行によるブロックの上下動を軽減防止し段差が生じず平滑で安定した路面を長期間にわたって維持することができる路面構成体、これを用いた横断歩道および道路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために第1の発明に係る路面構成体は、合繊不織布と、この合繊不織布の上に敷設される凍結スリップ防止用ブロックとを備え、前記凍結スリップ防止用ブロックは、コンクリートブロックと、このコンクリートブロックの上面を覆う金属製プレートと、この金属製プレートの上面に被覆形成された路面形成シートとからなり、前記コンクリートブロックは、内部にナットを備えた補強部材が埋設され、側面には隣り合うコンクリートブロックと連結する連結部が形成され、前記金属製プレートは、前記ナットに螺合するボルトによって前記コンクリートブロックの上面に固定され、前記路面形成シートは、低硬度ゴムシート層と、この低硬度ゴムシート層の上に積層形成された高強度ゴムシート層とで構成され、前記高強度ゴムシート層の表面にスリップ防止用の凹凸を形成したものである。
【0013】
また、第2の発明に係る路面構成体は、上記発明において、前記金属製プレートの下面に防食ゴムライニング層を被覆形成したものである。
【0014】
また、第3の発明に係る路面構成体は、上記発明において、前記ボルトが前記金属製プレートおよび前記路面形成シートに形成したボルト用孔を貫通して前記ナットに螺合され、前記ボルトの頭部には保護キャップが被冠され、前記保護キャップの上面にはスリップ防止用の凹凸が形成されているものである。
【0015】
また、第4の発明に係る路面構成体は、上記発明において、前記高強度ゴムシート層が並列配置された白色ゴムシートおよび黒色ゴムシートとからなり、さらに前記白色ゴムシートと前記黒色ゴムシートを仕切るブレードガードを備えているものである。
【0016】
また、第5の発明に係る横断歩道は、道路を横断する歩行者のために歩行範囲を定めた道路区域の路面を掘削して路盤を露呈させ、この路盤に上記第4の発明に係る路面構成体を複数個敷設してなるものである。
【0017】
さらに、第6の発明に係る道路は、橋上、トンネルの出入口または下り坂カーブの路面に、上記第1〜第3の発明のうちのいずれか1つの発明に係る路面構成体を複数個敷設してなるものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明において、合繊不織布は、凍結スリップ防止用ブロックに加わる車輌の荷重を吸収緩和し、ブロックの上下動を抑える。また、ブロックの目地から浸入した雨水を分散させるとともに、ブロックの上下動により砂粒が押し上げられてブロックの目地から路面に吹き出すのを防止する。したがって、砂粒の流動化現象を防止することができる。さらに、合繊不織布は、耐腐食性に優れ長期使用することができる。
【0019】
凍結スリップ防止用ブロックは、隣り合うコンクリートブロックどうしを連結部によって互いに連結することにより、一枚の広い面積を有する凍結スリップ防止用ブロックを形成する。金属製プレートは、補強部材とともにコンクリートブロックを補強し、引張強度および剪断強度を高める。したがって、凍結スリップ防止用ブロックは走行車輌の重量によって上下に動かず、長期にわたって段差が生じない平坦な横断歩道や道路を提供することができる。
【0020】
路面形成シートは、低硬度ゴムシート層と、高強度ゴムシート層からなり、歩行者に踏みつけられたり、車輌が通過するとき、その荷重によって低硬度ゴムシート層が大きく圧縮されて高強度ゴムシート層が撓み、その上面に凍結している氷層を破砕するため、歩行者の転倒事故や車輌のスリップ事故を未然に防止する。また、スリップ防止用凹凸は、変形することで一層滑り止め効果および氷層の破砕、剥がし効果を高める。さらに、路面形成シートが摩耗したり破損してその機能が低下したときは、ボルトを外して金属製プレートをコンクリートブロックから取り外し、新しい金属製プレートと交換するだけでよいので、路面形成シートの交換作業も容易で経済的である。
【0021】
また、本発明においては、金属製プレートの下面に防食ゴムライニング層を形成し、ボルトにキャップを被冠しているので、融雪剤等に含まれている金属腐食物質による金属製プレートやボルトやナットの腐食を防止することができる。
【0022】
また、本発明においては、路面形成シートの白色ゴムシートが白線を表示し、黒色ゴムシートが路面を表示して白線の縞模様を見易くし、横断歩道を標示する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る路面構成体による横断歩道の平面図である。
【図2】図1のII−II線拡大断面図である。
【図3】コンクリートブロックの平面図である。
【図4】図3のIV−IV線拡大断面図である。
【図5】補強部材の平面図である。
【図6】補助ブロックの平面図である。
【図7】ブレードガードの要部側面図である。
【図8】路面形成シートの摩耗交換箇所を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を図面に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1および図2は、本発明に係る路面構成体を横断歩道に適用した一実施の形態を示す。図中、1は道路(車道)、2は歩道、3はセンターライン、4はアスファルト舗装、5は路盤(砂礫層)、6は道路1を横断する歩行者のためにその歩行範囲を定めた道路区域、7は道路区域6に標示された横断歩道、8は横断歩道7を標示する路面構成体、9は道路1と横断歩道7を仕切る固定縁石である。
【0025】
図1〜図5において、前記路面構成体8は、前記道路区域6内のアスファルト舗装4の掘削により露呈した路盤5上に敷設された合繊不織布10と、この合繊不織布10の上に規則的に敷設された複数個の凍結スリップ防止用ブロック11とで構成されている。
【0026】
前記合繊不織布10は、例えば厚さが5〜10mm程度のビニロン、ナイロン等からなり、道路区域6の路盤5の路床面を填圧安定化処理した後、路盤5の表面全体に敷設されることにより、車輌荷重を吸収緩和するクッション材として機能する。また、合繊不織布10は、車輌走行により凍結スリップ防止用ブロック11が上下動してポンプ作用をしたとき、路盤5中の砂粒が押し上げられてブロックの目地から路面に吹き出し流動化現象を起こすのを抑制防止する。合繊不織布10の敷設に際しては、予め道路区域6の路盤面積に応じた大きさの合繊不織布を用意する。
【0027】
前記凍結スリップ防止用ブロック11は、コンクリートブロック12と、このコンクリートブロック12の上面を覆う金属製プレート13と、この金属製プレート13の上面に被覆形成された路面形成シート14等で構成されている。
【0028】
この場合、本実施の形態における路面構成体8は、図1に示すように凍結スリップ防止用ブロック11を道路1の歩行者通行方向(幅員方向)に10列、車輌進行方向に4列、合計40個敷設して横断歩道7を標示した例を示している。
【0029】
前記コンクリートブロック12は、内部に補強部材として立体構造の鉄筋15(15a〜15c)を埋設した鉄筋コンクリートブロック(以下、RCブロックという)が用いられることにより、大型トラック等の重量に対して十分に耐え得る引張強度、剪断強度および座屈強度を有している。鉄筋15は、直径が15mmφ程度の複数本の鉄筋15a、15bを上下二段に格子状に重ね合わせて溶接し、さらにこれらの鉄筋15a、15bを垂直な鉄筋15cによって連結することにより形成され、また上側水平鉄筋15aもしくは垂直鉄筋15cの上端には、所定の間隔をおいて歩行者通行方向に3列、車輌進行方向に4列、合計12個のナット16が溶接によって固定されている。ナット16の上端は、RCブロック12の上面に露呈している。なお、コンクリートブロック12の補強部材としては、鉄筋15に限らず金属製のプレートを用いてもよい。
【0030】
RCブロック12は、大きさが、例えば、長さ(幅員方向の長さ)=900mm、幅(車輌進行方向の長さ)=900mm、厚さ=130mmの平面視正方形のブロックで、側面に隣り合うRCブロック12との連結部を構成する台形の連結用凹部17と連結用凸部18とを有し、路盤5への敷設に際して隣り合うブロックどうしの連結用凹部17と連結用凸部18を互いに嵌合させて連結することにより、広い面積を有する一枚の凍結スリップ防止用ブロックを形成するようにしている。
【0031】
このようなRCブロック12は、工場においてプレキャスト(PC)工法によって生産され、上面に路面形成シート14を一体に備えた金属製プレート13が取付けられることにより、凍結スリップ防止用ブロック11が完成し、所定の設置現場に搬送される。
【0032】
前記金属製プレート13は、幅が450mmからこの複数倍の900mmまたは1350mmで、長さにおいては900mmまたはこれの複数倍の1800mm、2700mmで、厚さが3.2mm〜12.0mm程度の大きさのものが用意され、RCブロック12と同じ大きさ(900×900mm)のものが選択使用される。金属製プレート13の材質としては、錆びにくい鋼板が用いられ、さらに腐食を防止するために下面および側面に防食ゴムライニング層19が被覆形成されている。
【0033】
図4において、前記路面形成シート14は、金属製プレート13の全面を研磨洗浄し、プライマー処理した後、上面に未加硫ゴムシートを被覆形成し、プレス加硫成形を行なうことにより、下層の低硬度ゴムシート層20と、上層の高強度ゴムシート層21とで構成されている。
【0034】
低硬度ゴムシート層20は、圧縮変形による圧雪粉砕効果を高めるために設けられるもので、例えば厚さが10mm程度の低硬度、高反撥のゴム材料で形成されている。
【0035】
高強度ゴムシート層21は、同じく厚さが10mm程度で、低硬度ゴムシート層20よりも高強度、高物理特性と耐候性のゴム材料によって形成され、上面には歩行者への配慮(スリップ防止)と、緊急時の車輌制動に対して有効に働く設計とするために、複数のスリップ防止用凹凸23が形成されている。スリップ防止用凹凸23は、様々な履き物と排水性を考慮したノンスリップパターンとすることが望ましい。
【0036】
防食ゴムライニング層19、低硬度ゴムシート層20および高強度ゴムシート層21の諸特性を表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
上記表1の数値は、本発明に係る路面構成体8に要求される基準値であり、これを大幅に越える必要はないが、低下すると機能性、耐久性等に大きく影響を与えるので、数値設定には注意を要する。なお、老化試験後の変化率は、老化試験を70±1℃で168時間行なった値である。
【0039】
また、高強度ゴムシート層21は、金属製プレート13の中央においてブレードガード24により幅員方向に仕切られて並設された白色ゴムシート21Aと黒色ゴムシート21Bとで構成され、白色ゴムシート21Aが横断歩道7の白線を標示し、黒色ゴムシート21Bが路面を標示している。
【0040】
このような路面形成シート14を一体に備えた金属製プレート13は、ボルト26によってRCブロック12の上面に固定されている。ボルト26は、六角穴付きボルトが用いられ、路面形成シート14および金属製プレート13に貫通して形成したボルト用孔25(図4)に挿通され、前記ナット16に螺合されている。ボルト26の頭部26Aには、保護キャップ27が被冠されており、これによりボルト用孔25の上面開口部を覆っている。保護キャップ27の上面は、ボルト用孔25の上面開口部に臨み、スリップ防止用の凹凸28が形成されている。
【0041】
前記ブレードガード24は、除雪車プラウによる高強度ゴムシート層21の削り取り、損傷等を防止するために設けられており、金属製プレート13の上面で幅員方向の中央と、幅員方向の一側縁に溶接29(図4)によってそれぞれ固定されている。ブレードガード24としては、900mm×10mm×20mm程度の鋼板が用いられ、両端に除雪車プラウの衝突による通過障害を防止するために、図7に示すように円弧状の面取り部24aが形成されている。
【0042】
次に、上記構造からなる路面構成体8の敷設について説明する。
先ず、工場において所要個数のRCブロック12を打設する。RCブロック12の打設に際しては、鉄筋15a〜15およびナット16の溶接によって補強部材としての鉄筋15を製作し、成型用型枠内に装着する。次に、当該成型用型枠内にコンクリートを充填し、養生固化後、出来上がったRCブロック12を成型用型枠から取り出す。
【0043】
また、RCブロック12の打設と並行して金属製プレート13を製作する。金属製プレート13の製作に際しては、プレート素材を所定の大きさに切断して金属製プレート13とし、ボルト用孔25を所定箇所に形成した後、金属製プレート13の上面にブレードガード24を所定の間隔をおいて溶接固定する。さらに、ブレードガード24を固定した後、金属製プレート13の下面および側面に防食ゴムライニング層19を被覆成形し、上面に路面形成シート14を加硫成形する。
【0044】
金属製プレート13の製作が終了した後、当該金属製プレート13をRCブロック12の上に載置し、ボルト26をボルト用孔25に挿通してナット16に螺合することにより、金属製プレート13をRCブロック12の上面に固定する。さらに、ボルト26の頭部26Aに保護キャップ27を被冠し、もって凍結スリップ防止用ブロック11が完成する。
【0045】
保護キャップ27の被冠に際しては、予め当該キャップの内面に常温加硫系ゴムセメントを塗布しておくことが望ましい。また、加硫系ゴムセメントの接合強度を高めるために、保護キャップ27の内面を粗面に形成しておくことが望ましい。なお、保護キャップ27としては、ボルト用孔25が白色ゴムシート21Aと黒色ゴムシート21Bにそれぞれ形成されているため、白色と黒色の2種類のキャップが用意される。
【0046】
凍結スリップ防止用ブロック11の製作が終了した後、当該凍結スリップ防止用ブロック11をトラックに搭載して設置現場に搬送する。また、歩行者のために歩行範囲を定めた道路区画6の路面を所定の深さだけ掘削してアスファルト舗装4を取り除き、路盤5を露呈させ、床面を安定化処理した後、その上に合繊不織布10を敷設する。さらに、その上に所定個数の凍結スリップ防止用ブロック11と固定縁石9を順次敷設し、その上面を道路1の路面と同一高さになるように調整する。
【0047】
凍結スリップ防止用ブロック11の敷設に際しては、車輌走行による動きを極力少なくするために、隣り合うRCブロック12どうしを隙間なく連結して敷設することが望ましい。また、図1に示すように高強度ゴムシート層21の白色ゴムシート21Aと黒色ゴムシート21Bが道路1の幅員方向に交互に隣り合うように凍結スリップ防止用ブロック11の向きを揃えて敷設する。
【0048】
さらに、道路1の幅員寸法とRCブロック12の長さによっては、幅員寸法に応じた適正個数の凍結スリップ防止用ブロック11を敷設することができず、黒線または白線を追加しなければならない場合が生じる。このようなときには、当該道路の敷設計測により、標準の大きさの凍結スリップ防止用ブロック11に加えて図6に示す黒線標示用補助ブロック40または白線標示用補助ブロック41を予め製作しておき、凍結スリップ防止用ブロック11とともに敷設する。黒線標示用補助ブロック40と白線標示用補助ブロック41は、凍結スリップ防止用ブロック11を道路1の幅員方向において2等分したものと同一の大きさ(長さ:450mm)で、そのいずれか一方を追加敷設することにより黒線または白線を追加して道路1の幅員寸法に適合した長さの横断歩道7とする。
【0049】
このように路盤5に合繊不織布10を敷設し、さらにその上に複数個の凍結スリップ防止用ブロック11および必要に応じて黒線標示用補助ブロック40または白線標示用補助ブロック41を敷設し、さらに車輌走行方向の両側に固定縁石9を敷設することにより路面構成体8の敷設作業が終了し、横断歩道7の標示を完了する。
【0050】
このような横断歩道7において、当該横断歩道7上に降り積もった雪は、融けると水になり、周囲温度が低いと凍結して氷層を形成し横断歩道7の上面全体を覆う。このような氷層が形成されている横断歩道7を歩行者が歩行するときは、固定縁石9とブレードガード24を避けて高強度ゴムシート層21の上を歩くことが望ましい。歩行者が高強度ゴムシート層21の上を歩くと、高強度ゴムシート層21および低硬度ゴムシート層20は歩行者の重量により圧縮されて弾性変形する。このとき低硬度ゴムシート層20は、高強度ゴムシート層21より大きく圧縮変形する。このため、高強度ゴムシート層21の上面に凍結している氷層は、ゴムシート層21の圧縮変形に追従できないために破砕されて破片となり、高強度ゴムシート層21のスリップ防止用凹凸23を横断歩道7の路面に露呈させる。これにより歩行者は破砕した氷の破片とスリップ防止用凹凸23を踏んで歩くことになり、滑ったり転倒したりすることが少なく、安全に歩行することができる。
【0051】
同じく、車輌が走行するときも、その重量により高強度ゴムシート層21および低硬度ゴムシート層20を圧縮変形させるため、その上面に凍結している氷層が破砕されて飛び散り、スリップ防止用凹凸23が路面に露呈することにより車輌を制動する。したがって、車輌もスリップ事故を起こすことなく走行することができ、運転の安全性を高めることができる。
【0052】
また、本発明は、凍結スリップ防止用ブロック11を工場で生産して現場に搬送し、道路1を掘削してアスファルト舗装4を取り除いた路盤5に合繊不織布10を敷き詰め、複数の凍結スリップ防止用ブロック11をRCブロック12の側面に設けた連結用凹部17と連結用凸部18の嵌合によって互いに連結して前記合繊不織布10上に敷設するようにしているので、既設、新設路面を問わず現場での路面構成体8の敷設作業を短時間に行うことができ、施工性に優れている。また、合繊不織布10は、車輌荷重が凍結スリップ防止用ブロック11に加わると、圧縮されて荷重を吸収緩和し、ブロック11の上下動を抑制する。また、車輌通行の繰り返しによって凍結スリップ防止用ブロック11が上下動しても、路盤中の雨水によって砂粒が押し上げれて流動化現象を起こし、目地を通って路面に吹き出すのを抑制する。したがって、長期間にわたって段差が発生せず、平坦な路面の横断歩道を提供することができ、安全対策上極めて有効である。
【0053】
また、高強度ゴムシート層21が摩耗したときは、その摩耗した路面形成シート14と金属製プレート13のみを新しいものと交換すればよいので、短時間に交換でき、交換に要する経費を低く抑えることができる。
【0054】
一般の横断歩道において、高強度ゴムシート層21のスリップ防止用凹凸23が車輌の走行によって摩滅し、歩行者の歩行や車輌の制動に支障をきたすようになる時期は、敷設から15年以上先と想定されるが、車の日量通行台数により耐久期間に差異を生じる。特に、図8に示すように常に車輌のタイヤ50が通過する部分の路面形成シート14が早く摩耗するので、当該摩耗部位(斜線部)の路面形成シート14を新しいものと交換することで、横断歩道としての機能を回復させることができる。
【0055】
摩滅した路面形成シート14を交換するときは、保護キャップ27をボルト頭部26Aから取り外し、六角レンチでボルト26を回してナット16から外す。全てのボルト26を取り外した後、金属製プレート13をRCブロック12から取り外し、新しい路面形成シート14を一体に備えた別の金属製プレート13をRCブロック12の上に載置し、ボルト26を再びボルト用孔25に差し込んで六角レンチでナット16に締め付けることにより、路面形成シート14の交換作業を終了する。すなわち、路面形成シート14は、金属製プレート13毎交換される。したがって、路面形成シート14の交換作業が簡単で、交換に要する経費も安く抑えることができる。また、交換した金属製プレート13は、摩滅した路面形成シート14を綺麗に取り除くことにより、再利用することができる。
【0056】
さらに、金属製プレート13の下面および側面を防食ゴムライニング層19によって保護し、上面を路面形成シート14によって保護し、ボルト26を保護キャップ27によって保護しているので、路面に散布する融雪剤等に含まれている金属腐食物質(特に塩)によって金属製プレート13やボルト26が腐食せず、耐久性に優れている。
【0057】
一般に、車道上に設けられる横断歩道は、法令により白線を450mm間隔で表示し、アスファルト路面色と白色の縞模様とすることが規定されている。通常白線は、塗料の塗布によって表示されているが、塗料の場合は、車輌通行台数が多いと早く削り取られるため、毎年塗装表示作業を行なっているのが実情である。
【0058】
これに対して、本発明においては、白と黒の未加硫ゴムの加硫成形によって高強度ゴムシート層21を白色ゴムシート21Aと黒色ゴムシート21Bとで構成しているので、白色ゴムシート21Aが多少擦り減っても、色自体は退色することがなく、白の縞模様を長期間にわたって標示することができ、塗装に比べて経済的である。
【0059】
また、24時間日照が期待できない山陰やビル陰の場合、融雪は期待できないが、若干なりとも日照が期待できる場合、路面形成シート14は、アスファルト路面とは異なり、太陽熱の吸収が大きいので、融雪効果が得られ、歩行者のスリップ事故を未然に防止し得る。
【0060】
上記した実施の形態は、道路1を横断する歩行者のための道路区域6に路面構成体8を敷設して横断歩道7を標示した例について説明したが、本発明はこれに何ら特定されるものではなく、橋上、トンネルの出入口、下り坂カーブなどの路面にも適用実施することができる。トンネルの出入口または下り坂カーブの路面に敷設する場合は、横断歩道7と同様に、アスファルト舗装を取り除いて路盤5を露呈させ、その上に凍結スリップ防止用ブロック11と固定縁石9を敷設すればよい。一方、橋上の場合は、通常橋床をコンクリート床版または鋼床版とし、その上にアスファルト舗装を施しているため、アスファルト舗装を取り除いて床版を露呈させ、その上に凍結スリップ防止用ブロック11と固定縁石9を敷設して道路とすればよい。また、横断歩道7以外は、路面形成シート14の上面を白線と黒線の縞模様にする必要がないので、高強度ゴムシート層21を黒色ゴムシート21B(または白色ゴムシート21A)のみで形成すればよい。さらに、ブレードガード24についても、金属製プレート13の上面で幅員方向の一側縁にのみ溶接すればよい。
【符号の説明】
【0061】
1…道路(車道)、2…歩道、3…センターライン、4…アスファルト舗装、5…路盤、6…横断歩道のために定めた道路区域、7…横断歩道、8…路面構成体、9…固定縁石、10…合繊不織布、11…凍結スリップ防止用ブロック、12…RCブロック、13…金属製プレート、14…路面形成シート、15…鉄筋、16…ナット、17…連結用凹部、18…連結用凸部、19…防食ゴムライニング層、20…低硬度ゴムシート層、21…高強度ゴムシート層、21A…白色ゴムシート、21B…黒色ゴムシート、23…スリップ防止用凹凸、24…ブレードガード、25…ボルト用孔、26…ボルト、26A…ボルト頭部、27…保護キャップ、28…スリップ防止用凹凸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合繊不織布と、この合繊不織布の上に敷設される凍結スリップ防止用ブロックとを備え、
前記凍結スリップ防止用ブロックは、コンクリートブロックと、このコンクリートブロックの上面を覆う金属製プレートと、この金属製プレートの上面に被覆形成された路面形成シートとからなり、
前記コンクリートブロックは、内部にナットを備えた補強部材が埋設され、側面には隣り合うコンクリートブロックと連結する連結部が形成され、
前記金属製プレートは、前記ナットに螺合するボルトによって前記コンクリートブロックの上面に固定され、
前記路面形成シートは、低硬度ゴムシート層と、この低硬度ゴムシート層の上に積層形成された高強度ゴムシート層とで構成され、前記高強度ゴムシート層の表面にスリップ防止用の凹凸を形成した路面構成体。
【請求項2】
請求項1記載の路面構成体において、
前記金属製プレートの下面に防食ゴムライニング層を被覆形成した路面構成体。
【請求項3】
請求項1または2記載の路面構成体において、
前記ボルトは、前記金属製プレートおよび前記路面形成シートに形成したボルト用孔を貫通して前記ナットに螺合され、前記ボルトの頭部には保護キャップが被冠され、前記保護キャップの上面にはスリップ防止用の凹凸が形成されている路面構成体。
【請求項4】
請求項1〜3のうちのいずれか一項記載の路面構成体において、
前記高強度ゴムシート層は、並列配置された白色ゴムシートおよび黒色ゴムシートとからなり、さらに前記白色ゴムシートと前記黒色ゴムシートを仕切るブレードガードを備えている路面構成体。
【請求項5】
道路を横断する歩行者のために歩行範囲を定めた道路区域の路面を掘削して路盤を露呈させ、この路盤に請求項4記載の路面構成体を複数個敷設してなる横断歩道。
【請求項6】
橋、トンネルの出入口または下り坂カーブの路面に請求項1〜3のうちのいずれか一項記載の路面構成体を複数個敷設してなる道路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−99292(P2011−99292A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256062(P2009−256062)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【出願人】(391030907)株式会社北海道ゴム工業所 (6)
【Fターム(参考)】