説明

路面標示物の除去装置及び路面標示物の除去方法

【課題】大きな振動や騒音、粉塵が生じるハツリ装置を用いることがないため、振動、騒音及び粉塵の発生を抑えることのできる、路面標示物の除去装置及び路面標示物の除去方法を提供する。
【解決手段】移動型の路面標示物の除去装置1であって、路面標示物Bを加熱して軟化又は液化する加熱手段21と、軟化又は液化させた前記路面標示物Bを回収する回収手段31と、を具備することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面標示物の除去装置及び路面標示物の除去方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、騒音の大きいハツリ装置を不要とする路面標示物の除去装置及び路面標示物の除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
路面標示物(以下、「路面標示塗料」ともいうことがある)とは、例えば、横断歩道の白線や「とまれ」等というような歩行者や車の運転者等に注意を促すため、路面や道路に施された標示物である。
【0003】
路面標示物の一般的な組成として、石油樹脂等の樹脂、ガラスビーズ等の反射材、黄鉛等の着色顔料、炭酸カルシウム等の体質顔料、アルキド樹脂等の可塑剤などから構成されている。このような路面標示物の除去には、通常、抹消刃等を用いて路面を削る等のハツリ装置を備えた除去装置が用いられている(例えば、特許文献1)。
【0004】
また、例えば、アスファルト等の路面を切削して除去するアスファルト路面切削装置が知られている(特許文献2)。特許文献2に記載の装置は、界面活性剤を含有する水を散布した後、マイクロ波でアスファルト路面を加熱して切削することで、路面の標示物を除去できるとしている。また、例えば、回転するカッターを使用して路面標示物を除去する路面表示塗料消去用の研削機も知られている(特許文献3)。特許文献3の研削機では、回転するカッターを高さ調節することで路面の表示塗料を研削して消去できるとしている。
【特許文献1】特開2001-152412号公報
【特許文献2】特開平9-189008号公報
【特許文献3】特開2000-314106号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1から3に記載の装置のように、従来の路面標示物の除去装置は、大きな振動や騒音、さらには路面標示物の除去の際に多量の粉塵が生じるハツリ装置を使用する必要があるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであって、大きな振動や騒音、粉塵が生じるハツリ装置を用いることがないため、振動、騒音及び粉塵の発生を抑えることのできる、新しい路面標示物の除去装置及び路面標示物の除去方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決する手段として、第1には、路面標示物を除去する移動型の装置であって、路面標示物を加熱して軟化又は液化させる加熱手段と、軟化又は液化させた前記路面標示物を回収する回収手段と、を具備することを特徴とする。
【0008】
第2には、前記加熱手段が、バーナー又はヒーターであることを特徴とし、第3には、前記加熱手段による加熱温度が、75℃から200℃の範囲であることを特徴とする。
【0009】
また、第4には、前記回収手段が、回転式ブラシであり、そして、第5には、軟化又は液化させた路面標示物を剥離する剥離手段を具備する、第6には、前記剥離手段が、ウォータージェットであることを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明は、第7には、路面標示物を除去する方法であって、路面標示物を軟化又は液化させる加熱工程と、軟化又は液化させた前記路面標示物を回収する回収工程と、を有することを特徴とする。第8には、加熱工程における加熱温度が、75℃から200℃の範囲であることを特徴とし、第9には、加熱工程により軟化又は液化させた路面標示物を剥離する剥離工程をさらに有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上詳しく説明したとおり、本発明によれば、振動、騒音及び粉塵の発生を抑えることができるため、例えば、閑静な住宅街や病院、宿泊施設付近などでの路面標示物の除去工事による振動や騒音、粉塵問題の解決をも図ることのできる、新しい路面標示物の除去装置及び路面標示物の除去方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下に、添付した図面に沿って、本願発明の実施形態について詳細かつ具体的に説明する。
【0013】
まず、本発明の路面標示物の除去装置の構成について説明する。図1は、本発明の路面標示物の除去装置において、本体部と回収部とを分解した状態を模式的に例示した側面図であり、(A)は本体部を示した図であり、(B)は回収部を示した図である。また、図2は、図1(A)について模式的に例示した平面図であり、図3は、図1(B)について模式的に例示した平面図である。
【0014】
図1に例示したように、本発明の路面標示物の除去装置1は、路面Aに固着された路面標示物Bを除去する移動型の装置である。この路面標示物の除去装置1には、少なくとも、高温加熱によって路面標示物Bを軟化又は液化させる加熱手段21、並びに、軟化又は液化させた前記路面標示物B(以下、「残渣」ということがある)を回収する回収手段31及び前記残渣を収納する残渣回収容器32、を具備することを特徴としている。また、この図1では、加熱手段21を有する本体部2と、回収手段31を有する回収部3とから構成された、回収部3が脱着式の路面標示物の除去装置1を例示している。
【0015】
さらに説明すると、図1(A)及び図2に例示したように、本体部2には、加熱手段21に加えて、加熱手段21の位置調整のための制御部22、この制御部22を操作するための把手23、加熱手段21の動力源である加熱手段用電源24、その動力を伝える伝導線24、路面標示物の除去装置1(本体部2)の移動のための車輪26、路面標示物の除去装置1(本体部2)取り回しのための手摺27、そして、回収部3を設置するための設置空間28及び棒状の支持部29を備えた構成としている。なお、加熱手段21の操作性を向上させるという観点から、例えば、前記把手23や前記手摺27等に、加熱温度を調節するためのスイッチ類を設けてあってもよい。また、路面標示物の除去装置1の移動性を向上するために車輪26と連結せしめた駆動装置(図示せず)を設けてもよく、その場合には、前記手摺27等にアクセルやブレーキといった駆動装置を制御するスイッチ類を設けてもよい。
【0016】
本発明の路面標示物の除去装置1は、前記加熱手段21がバーナー又はヒーターであることが好ましい。バーナーの場合には、本体部2に搭載できる程度の小型ガスタンクを設置することで簡便に使用することができ、バーナーを利用することで、炎を直接路面標示物Bに効率よく当てて加熱させることができ、路面標示物Bの軟化又は液化を迅速に行うことができる。一方、電熱線等からなるヒーターの場合は、広範囲の路面標示物Bを加熱させることができる。なお、図1、図2及び後述の図4では、加熱手段21としてヒーターを使用した例を示している。
【0017】
多くの路面標示物Bは、通常、石油樹脂等の樹脂、ガラスビーズ等の反射材、黄鉛等の着色顔料、炭酸カルシウム等の体質顔料、アルキド樹脂等の可塑剤など、種々の成分を含有している。本発明者らは、このような路面標示物Bを加熱することで、まず軟化し、さらに加熱することで液化することを見出したことにより、本発明に至った。
【0018】
したがって、路面標示物Bに対する加熱温度は、75℃から200℃の範囲が好ましい。75℃を下回ると路面標示物Bは軟化しないし、200℃を超えると路面(例えば、アスファルト)が溶解する等の影響が生じる。また、発明者らは、路面標示物Bは80℃で軟化し、150℃で液化することを見出し、この点を考慮すると、加熱温度は、80℃から150℃の範囲が特に好ましい。
【0019】
一方、図1(B)及び図3に例示したように、回収部3については、回収手段31と残渣回収容器32とに加えて、回収手段31の動力源である回収手段用電源33、回収手段31を駆動させる駆動装置34、前記駆動装置34による動力を回収手段31に伝導させる伝導部35、移動のための車輪36、そして、本体部2に回収部3を設置するための係止部37を有した構成としている。図1(B)及び図3では、回収手段31として回転式ブラシ(ローラーブラシ)を使用した例を示しており、伝導部35としてベルト部材を使用している。この回転式ブラシの材質は、特に制限されるものではないが、前記加熱手段21で軟化又は液化した路面標示物Bを効率的に回収するために、一定の剛性と弾性を兼ね備えた材質が好ましく、例えば、椰子繊維などが挙げられる。なお、回収部3は、図1の矢印に示したように、本体部2の支持部29に回収部3の係止部37を係止することで、安定に設置することができる。
【0020】
本発明の路面標示物の除去装置においては、図には示していないが、上記の例の他に、回収手段は吸引装置を使用することもできる。吸引装置の場合には、軟化又は液化させた路面標示物を吸引装置によって吸引して、この吸引装置と連通して配設した密閉型の残渣回収容器へと回収される。ここで、残渣回収容器の形状については、特に制限されるものではないが、例えば、回転式ブラシの場合には皿型のものが好ましく、吸引装置の場合には密閉型のものが好ましい。
【0021】
また、図には示していないが、本発明の路面標示物の除去装置においては、前記加熱手段で軟化又は液化した路面標示物を、効率的に剥離することのできる剥離手段をさらに備えることもできる。前記剥離手段としては、例えば、高圧水を利用するウォータージェットも使用することができる。ウォータージェットを使用する場合には、回収部に搭載できる程度の小型の貯水タンク及び水の噴射装置をさらに設置することで、より効率よく水を噴射することができる。このとき、剥離効率を向上させるという点から、ウォータージェットには熱水を用いてもよい。この剥離手段により剥離された路面表示物は、より効率的に、また残余物なく上記回収手段により回収することができる。
【0022】
次に、本発明の路面標示物の除去装置の実施形態例について説明する。
【0023】
図4は、本発明の路面標示物の除去装置の一実施形態を、模式的に例示した側面図である。
【0024】
図4に例示したように、使用者Cが、路面標示物の除去装置1の把手23と手摺27とをそれぞれ持って、路面標示物の除去装置1を操作している。さらに説明すると、把手23は、加熱手段21の制御部22と連結されているため、この把手23によって、上下左右と、加熱手段21の位置調整を自在に行うことができる。この位置調整により、路面Aに設けられた路面標示物Bの軟化又は液化に際して、常に良好な位置を確保して、加熱手段21から発せられる熱Dを効率よく路面標示物Bに当てることができる。そして、矢印に示した方向に回転する回収手段31の回転式ブラシにより、軟化又は液化させた路面標示物Bが巻き上がられて残渣回収容器32に効率よく回収及び収納される。
【0025】
本発明の路面標示物の除去装置1は、以上の例示によって限定されるものではない。例えば、路面標示物の除去装置1は、上記の例のような本体部2と回収部3とが脱着式とする形態だけでなく、一体式の形態としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の路面標示物の除去装置及び路面標示物の除去方法は、ハツリ装置を必要としないため、振動、騒音及び粉塵の発生を抑えることができる。このため、例えば、閑静な住宅街や病院、宿泊施設付近などでの、従来のハツリ装置を備えた路面標示物除去装置による振動や騒音、粉塵問題の解決を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の路面標示物の除去装置において、本体部と回収部とを分解した状態を模式的に例示した側面図である。(A)は本体部を示した図であり、(B)は回収部を示した図である。
【図2】図1(A)について、模式的に例示した平面図である。
【図3】図1(B)について、模式的に例示した平面図である。
【図4】本発明の路面標示物の除去装置の一実施形態を、模式的に例示した側面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 路面標示物の除去装置
2 本体部
21 加熱手段
22 制御部
23 把手
24 加熱手段用電源
25 伝導線
26 車輪
27 手摺
28 設置空間
29 支持部
3 回収部
31 回収手段
32 残渣回収容器
33 回収手段用電源
34 駆動装置
35 伝導部
36 車輪
37 係止部
A 路面
B 路面標示物
C 使用者
D 熱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面標示物を除去する移動型の装置であって、
路面標示物を加熱して軟化又は液化させる加熱手段と、
軟化又は液化させた前記路面標示物を回収する回収手段と、
を具備することを特徴とする路面標示物の除去装置。
【請求項2】
加熱手段が、バーナー又はヒーターである請求項1に記載の路面標示物の除去装置。
【請求項3】
加熱手段による加熱温度が、75℃から200℃の範囲である請求項1又は2に記載の路面標示物の除去装置。
【請求項4】
回収手段が、回転式ブラシである請求項1から3いずれかに記載の路面標示物の除去装置。
【請求項5】
軟化又は液化させた路面標示物を剥離する剥離手段をさらに具備する請求項1から4いずれかに記載の路面標示物の除去装置。
【請求項6】
剥離手段が、ウォータージェットである請求項5に記載の路面標示物の除去装置。
【請求項7】
路面標示物を除去する方法であって、以下の工程を有することを特徴とする路面標示物の除去方法。
路面標示物を軟化又は液化させる加熱工程と、
軟化又は液化させた前記路面標示物を回収する回収工程。
【請求項8】
加熱工程における加熱温度が、75℃から200℃の範囲である請求項7に記載の路面標示物の除去方法。
【請求項9】
加熱工程により軟化又は液化させた路面標示物を剥離する剥離工程をさらに有する請求項7又は8に記載の路面標示物の除去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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