説明

路面標示用塗料組成物

【課題】排水性舗装の標示のスリッタ施工に適用した場合、塗料の使用量の増大を抑制できると共に、ガラスビーズとの固着性も確保できる路面標示用塗料組成物を提供すること。
【解決手段】熱可塑性結合材、体質材、可塑剤及びガラスビーズを必須成分とする路面標示用の塗料組成物。ベントナイトに酸化ポリエチレンワックスを併用して揺変性付与剤として配合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面の標示(マーキング)に使用する塗料組成物に関する。特に、排水性舗装路面に好適な路面標示用塗料組成物に係る発明である。
【0002】
ここでは、主として排水性舗装路面(歩道等における透水性舗装路面も含む。)に適用する場合を例に採り説明するが、これに限られるものではない。すなわち、本発明の塗料組成物は、テーマパーク、トラック、工場内等における排水性・非排水性の路面にも適用できる。
【0003】
以下の説明で、配合単位を示す「%」は、特に断らない限り、「質量%」を意味する。
【背景技術】
【0004】
昨今、車両走行や歩行の安全・快適性の見地から、路面舗装は排水性舗装が主流になりつつある。
【0005】
そして、路面標示用塗料組成物としては、溶剤を用いない溶融施工型と溶剤を用いるペイント型の2タイプがあるが、近年は、作業環境の観点から溶融施工型の塗料組成物が主流となりつつある。
【0006】
溶融施工型の塗料組成物の一例としては、本願特許出願人からの出願に係る下記構成の路面標示用塗料組成物が存在する(特許文献1参照)。
【0007】
「熱可塑性結合材、体質材、可塑剤及びガラスビーズを必須成分とする路面標示用の塗料組成物において、
前記熱可塑性結合材が、200℃における粘度が1〜2.6dPasの高粘性率熱可塑性結合材と、200℃における粘度が0.25〜0.55dPasの低粘性率熱可塑性結合材との混合物であって、両者の質量混合比が前者/後者=5/1〜4/3とされて、
前記路面標示用塗料組成物の粘度が、180℃において、50〜61dPasの範囲にあることとを特徴とする。」
しかし、上記塗料組成物を加熱溶融して、排水性舗装路面の路面標示のスリッタ式塗布装置を用いてスリッタ施工した場合には、排水性路面に塗料が滲入して、塗料使用量が非排水性路面に比して増大する(場合によっては3倍近い。)。
【0008】
なお、スリッタ式塗布装置とは、図1(a)、(b)に示すように、路面を摺り走行可能な塗料充填容器12の底部開口部に開閉プレート14を備え、塗料充填容器12の背面壁12aが該開閉プレート14の下側位置で切り欠かれて塗布幅Lおよび塗布厚tを規制するスリット16が形成されている。そして、塗料充填容器12に加熱溶融させた塗料を充填して開閉プレート14を開いて、塗料充填容器12を白矢印方向に路面を走行させる。すると、路面にスリット16から、塗料が流出することにより、所要の幅・厚みの標示施工が路面に可能となる。この際、スリット16から流出する塗料は、揺変性を有する場合、上方充填塗料の落差圧(荷重)を受けながら引き伸ばされるため、剪断力を受けて粘性率が低下して流動性が増大する。
【0009】
なお、本発明の特許性に影響を与えるものではないが、本発明と同様に、排水性舗装の空隙への塗料の入りこみを抑えるために、揺変性付与剤を添加する路面標示用塗料に係る発明が特許文献2に記載されている。
【0010】
また、酸基導入PEワックスを他の溶融粘性率調整剤と組み合わせて使用する路面標示用塗料に係る発明が特許文献3に記載されている。
【特許文献1】特許第3407070号公報(要約等参照)
【特許文献2】特開2005−8834公報(要約等参照)
【特許文献3】特開2004−277475公報(要約等参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記にかんがみて、排水性舗装の標示のスリッタ施工に適用した場合、塗料の使用量の増大を抑制できると共に、ガラスビーズとの固着性も確保できる新規な路面標示用塗料組成物を提供することを目的(課題)とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意、開発に努力をする過程で、ベントナイトに酸化PEワックスを組み合わせれば、塗料組成物の揺変性を少量のベントナイトで改善できることを見出して下記構成の路面標示用塗料組成物に想到した。
【0013】
熱可塑性結合材、体質材、可塑剤及びガラスビーズを必須成分とする路面標示用の塗料組成物において、
ベントナイトと酸化PEワックスとが併用されて揺変性(チキソトロピー)改善剤として添加されていることを特徴とする。
【0014】
当該構成とすることにより、ベントナイト単独の場合に比して、揺変性が格段に改善され(比較例2と実施例1・8)、路面標示をスリッタ施工する際の施工作業性が格段に改善される。すなわち、スリッタ内で加熱溶融の際に攪拌機等で剪断力を付与すれば、塗料組成物が揺変性(チキソトロピー、シキソトロピー)を有するため一時的に粘性率が低下して、スリッタから塗料流出性が良好となるとともに、塗布後は直ちにゲル化する。このため、排水性路面の排水孔への塗料滲入を抑制でき、結果的に、塗料使用量を低減できる(塗料の使用量の増大を抑制できる。)。
【0015】
上記酸化PEワックスは、分子量(粘度法):1500〜3500、且つ、酸価(KOHmg/g)(JIS K5902):10〜25の範囲から選択することが、本発明の効果(揺変性増大及び塗布作業性)が確保し易くなる。
【0016】
そして、前記ベントナイトの含有率は、0.1〜0.6%で、かつ、前記酸化PEワックスの含有率が0.04〜0.2%の範囲で設定することが望ましい。ベントナイトが過少でも酸化PEワックスが過少でも、低揺変性しか得難い(比較例1・2参照)。また、ベントナイトが過多であると粘性率が上昇し易く、酸化PEワックスが過多であると剪断力を受ける前の状態での粘性率が低下して塗料流動性が高くなりすぎる。
【0017】
さらに望ましくは、ベントナイトの含有率を0.1〜0.5%、よりさらには0.35〜0.5%とする。最適な揺変性及び粘度を得易いためである。
【0018】
上記構成において、熱可塑性結合材は、200℃における粘性率(測定方法B型粘度計(Brookfield type viscometer)による。以下同じ。)が1〜2.6dPasのものとすることが望ましい。
【0019】
そして、塗料組成物の粘性率(200℃)は30〜145dPasとすることが望ましい。粘性率が低過ぎると、排水性舗装に適用した場合、排水性舗装の空隙に塗料が入り込み塗料使用量が増大し、また、体質材、ガラスビーズ等の無機成分が沈降分離して、標示施工が困難となるとともに、ガラスビーズが沈降して塗膜の反射性も確保し難くなる。逆に、粘性率が高すぎると、高揺変性としても塗付可能な流動性を塗料に得難く、標示施工性が低下する。
【0020】
そして、各構成の塗料組成物を使用しての路面標示方法は、200℃前後に加熱溶融して、排水性路面に標示をスリッタ施工する方法となる。
【0021】
また、本発明は、路面標示用塗料組成物の揺変性調節方法にも適用でき、ベントナイトに酸化ポリエチレンワックスを併用して揺変性を調節する方法となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態について説明する。なお、以下の説明で、配合単位は、特に断らない限り、質量単位を意味する。
【0023】
本発明の路面標示用の塗料組成物は、熱可塑性結合材、体質材、可塑剤及びガラスビーズを必須成分とするものに適用することが望ましい。
【0024】
そして、上記熱可塑性結合材は、特に限定されないが、200℃における粘性率が1〜2.6dPasのものを使用することが望ましい。
【0025】
例えば、脂肪族系石油樹脂、ポリブテン等の石油系炭化水素系樹脂;クマロン・インデン樹脂等のクマロン系樹脂;フェノール・ホルムアルデヒド樹脂等のフェノール系樹脂;テルペン・フェノール樹脂、ポリテルペン樹脂等のテルペン系樹脂;合成ポリテルペン樹脂;芳香族系炭化水素樹脂;不飽和炭化水素重合体;イソプレン系樹脂;水素添加炭化水素樹脂;炭化水素系粘着化樹脂;水素添加ロジン、水素添加ロジンのエステル樹脂、重合ロジン、硬化ロジン等のロジン誘導体等が使用可能である。上記熱可塑性結合材のうち、淡色のものを使用することが、後述の着色の見地から好ましく、特に、コスト面や性能の点から、脂肪族系石油樹脂等、石油系炭化水素樹脂を使用することが望ましい。
【0026】
また、熱可塑性結合材の含有率は、10〜25%、さらには13〜23%が望ましい。配合量が過少では、粘性率が高くて良好な流動性が得難く施工性(作業性)が低下し、他方、過多では、耐汚染性が低下したり、溶融時に体質材、ガラスビーズが沈降したりして(ガラスビーズの反射性が低下する。)、綺麗な塗膜を得難い。
【0027】
体質材としては、通常、後述する着色顔料の着色性を損なわない、炭酸カルシウム、タルク、硫酸バリウム等の白色系フィラーを好適に使用できる。体質材の配合量は、40〜75%、さらには45〜70%が望ましい。配合量が過少では、耐摩耗性及び耐汚染性において劣りやすく、他方、過多では、耐衝撃性及び接着性に劣りやすい。
【0028】
可塑剤としては、大豆油等の植物油、植物油変性アルキド樹脂、鉱物油、エポキシ化油、液状合成ゴム類等が使用できる。鉱物油としては、例えば、ナフテン系、パラフィン系、オレフィン系のものが使用できる。可塑剤の配合量は、0.5〜5%、さらには1〜3%が望ましい。配合量が過少では、耐衝撃性及び接着性において劣りやすく、他方、過多では、耐汚染性及び乾燥性に劣りやすい。
【0029】
ガラスビーズとしては、粒径100〜900μm、さらには106〜850μmのものを使用することが望ましい。ガラスビーズの配合量は、10〜25%、さらには12〜20%が望ましい。配合量が過少では、経時塗料表面摩耗にともなって夜間の反射性能が低下しやすく、他方過多では、溶融中にガラスビーズが沈降しやすくなって、作業性が悪くなるためである。
【0030】
また、上記各配合成分に加えて、路面標示用に着色するために、着色顔料を配合する。着色顔料としては、通常、酸化チタン、亜鉛華等の白色顔料が好適に使できる。着色顔料の配合量は、1〜15%、さらには2〜10%が望ましい。配合量が過少では、着色力、隠蔽力、視認性及び耐候性に劣りやすく、他方、過多でも、視認性に大差なく実用的でない。
【0031】
さらに、その他の添加剤として、適宜、沈降防止剤、表面改質剤、汚れ防止剤及び流動性付与剤等を配合することができる。具体的には、添加剤として、未変性ポリエチレンワックス、酸変性ポリエチレンワックス(例えば、マレイン酸変性)等が好適に使用できる。
【0032】
ここで、添加剤の配合量は、5%以下、さらには3%以下が望ましい。配合量が過多であると、体質材及びガラスビーズが沈降しやすくなり、耐汚染性が低下し易くなる。
【0033】
そして、本発明においては、揺変性(チキソトロピー)付与剤として、上記基本処方の路面標示用塗料組成物において、ベントナイトと酸化PEワックスとを併用して配合(添加)する。
【0034】
ここで、ベントナイトとしては、市販されている汎用品から、適宜選択して使用できる。
【0035】
酸化PEワックスとは、PEワックス(平均分子量500〜10000)を空気酸化することによって、カルボニル基やカルボキシル基等を含有させて酸価(KOHmg/g)(JIS K5902)(以下同じ。)1.0〜40を示すものを意味する。
【0036】
そして、平均分子量(Mw)が約1000〜3500、さらには1500〜2500で、酸価:約10〜25、さらには約15〜20の範囲が望ましい。
【0037】
具体的には、上記要件を満たす酸化PEワックスとして、具体的には、下記のものが市場から得やすくて望ましい。
【0038】
例えば、三井化学(株)から「三井ハイワックス(酸価タイプ)」の、三洋化成工業(株)から「サンワックス(酸化型)」の、ヤスハラケミカル(株)から「ネオワックス(酸化タイプ)」等の各商品名で上市されている。
【0039】
そして、ベントナイトの含有率は、0.1〜0.6%、さらには0.1〜0.5%、よりさらには0.35〜0.5%が望ましい。ベントナイトが過少では、揺変性を得難く、他方、過多では、塗料の粘性率が高くなりすぎて、塗装に適した流動性を塗料に得難い。
【0040】
また、酸化PEワックスの含有率は、0.04〜0.20%、さらには0.07〜0.16%が望ましい。酸化PEワックスの含有率が過少では、ベントナイトと併用した場合の揺変性増大効果を得難く、他方、過多では、耐汚染性が低下し易くなる。
【0041】
上記塗料組成物は、通常、スリッタ式塗布機を用いて、路面に塗布して路面標示等の施工を行う。このとき、加熱溶融温度は、200℃前後とする。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明する。
【0043】
表1〜3に記載の配合に基づいて、実施例及び比較例の各塗料組成物をそれぞれ調製する。
【0044】
なお、各表における各処方は、従来例の基本処方において、揺変性付与剤の配合量に対応させて体質材の配合量を減量したものである。
【0045】
また、酸化PEワックスは、表1・3では酸価:20、平均分子量(Mw):3200のもの(1)を、表2では、酸価:17、平均分子量:2600のもの(2)を使用した。
【0046】
熱可塑性結合材は、粘性率が約1.5dPas(200℃)で、分子量が約1100〜1400の石油系炭化水素樹脂を使用した。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
【表3】

上記配合に基づいて調製した各実施例及び従来例・比較例の塗料組成物の粘性率、揺変性及び材料使用量について、それぞれ下記項目の試験を行った。
【0050】
<粘性率>
各実施例及び従来例・比較例について、下記方法に従って、200℃における粘性率を測定した。
【0051】
混合物を230℃に加熱溶融して調製した組成物試料を、230℃以上に保温した専用容器(深さ:120mm、直径:80mm)に8分目程度まで入れ、粘性率計(ビスコテスター「T−04」リオン(株)製)のローターを浸して、掻き混ぜながら200℃まで自然放冷させ、該200℃における粘性率を測定する。
【0052】
<揺変性>
各実施例・比較例について、下記方法に従って、揺変性の評価を行った。
【0053】
1)各組成の溶融型塗料を、ガスコンロの火の上に置いた耐熱容器の中に少しずつ加え、局部加熱を起こさないようにステンレススプーンでかき混ぜながら、10〜20分間で180±20℃になるまで加熱して溶融させる。
【0054】
2)この溶融させた塗料を更に加熱して約205℃まで昇温したところで、ガスコンロの火を止め、掻き混ぜながら200℃まで自然放冷する。
【0055】
3)この200℃溶融塗料を、台計りの上に置いたアルミ板(10cm角)の上に、流量一定となるようにして流下させて、円盤状塗膜を形成する。なお、塗料流下量は、65±15g程度とする。
【0056】
4)そして、円盤状塗膜の形状と高さにより、揺変性を「低」・「中」・「高」・「過高」の4段階評価とした(図1参照)。
【0057】
<材料使用量>
実施例1と従来例・比較例1〜3及び参照例について、下記方法に従って、材料使用量を測定した。なお、下記溶融方法・温度降下方法は、上記揺変性評価の試験方法と基本的に同じである。
【0058】
1)予め調製しておいた塗料を専用溶融釜(ガスバーナ付き)に充填し、局部加熱を起こさないように掻き混ぜながら10〜20分間で180℃になるように加熱し溶融する。
【0059】
2)約205℃まで昇温したところで、耐熱容器に移し、掻き混ぜながら200℃まで自然放冷する。
【0060】
3)耐熱容器から施工機(スリッタ式塗布装置;図1において、L=15cm、t=1.5mm)を用い(図1参照)、排水性路面に幅15cm、長さ3mの路面標示を引く(施工する)。
【0061】
4)路面標示を引いた(施工した)前後の重量の差により、1m当たりの材料使用量を算出する。
【0062】
<試験結果・考察>
それらの試験結果を表1〜3に示すとともに、揺変性(実施例8・9を除く。)については、更に、図3にも示す。そして、それらの試験結果から、下記のことが分かる。
【0063】
・ベントナイトに酸化PEワックスを併用すると、格段に揺変性が向上するとともに、ベントナイトの含有率(配合量)が相対的に少なくてすみ、粘性率の増大を抑制できる。
【0064】
・酸化PEワックス0.08%の処方において、ベントナイトを0.2%添加した実施例1は、ベントナイト無添加の比較例1に比して揺変性が高くなっている。
【0065】
・ベントナイト0.4%の処方において、酸化PEワックス0.08%を添加した実施例5・8は、酸化PEワックス無添加の比較例3に比して、揺変性が同等又は高くなるともに、粘性率が有意的に低下する。
【0066】
・ベントナイト0.55%の処方において、酸化PEワックスを添加した実施例6・7は、酸化PEワックス無添加の比較例4に比して揺変性が有意的に高くなっている。
【0067】
・酸化PEワックスのみでは、増量しても揺変性は高くならず「低」のままである(比較例1・2)。
【0068】
・ベントナイト0.1〜0.35%で、かつ、酸化PEワックス0.06〜0.15%の範囲では、ベントナイト及び酸化PEワックスの増量は、揺変性がほとんど変化せず「中」のままである(実施例1〜4参照)。
【0069】
・ベントナイト配合量が0.35%を超えると、揺変性が「中」から「高」に、さらには、0.5%を越えると、揺変性が「高」から「過高」となる。
【0070】
なお、揺変性の各レベルと路面標示施工性との関係は、組成物粘性率も関係するが、相対的に下記のような傾向を示すことを確認している。
【0071】
1)「低」・・・排水性舗装の空隙に塗料が入り込み使用量が多くなる。
【0072】
2)「中」・・・排水性舗装の空隙に塗料が若干入り込む。
【0073】
3)「高」・・・排水性舗装の空隙に塗料がほとんど入り込まず、かつ、表面平滑性も得られ、かつ、ガラスビーズとの固着性も良好である。
【0074】
4)「過高」・・・排水性舗装の空隙には塗料が入り込まないが、塗膜表面の平滑性を得難く、さらには、ガラスビーズとの固着性も低下する。
【0075】
すなわち、本発明によると、ベントナイトと酸化PEワックスとを併用するため、ベントナイトの使用量が少なくても、塗料組成物の揺変性を高めることができる。すなわち、塗料組成物の粘度を余り上昇させずに、塗料組成物の揺変性を高めることができることが分かる。例えば、ベントナイトと酸化PEワックスの合計配合量が、ベントナイト単独使用量より少なくても、同程度の揺変性又はより高い揺変性が得られるとともに、粘性率の上昇率も低い(比較例3と実施例1〜4又は比較例4と実施例5・8・9参照)。
【0076】
なお、本発明者らは、酸化PEワックスの代わりに、マレイン酸等で酸変性した酸変性PEワックスを使用しても同様な効果(揺変性改善効果)が得られないことを確認している。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】スリッタ式塗布装置の概念断面図(a)及び背面図(b)である。
【図2】揺変性試験における評価の判断基準を示す形態を示すモデル図である。
【図3】揺変性とベントナイト/酸化PEワックスの含有率(配合量)との関係を示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0078】
12・・・塗料充填容器
14・・・開閉プレート
16・・・スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性結合材、体質材、可塑剤及びガラスビーズを必須成分とする路面標示用塗料組成物において、
ベントナイトと酸化ポリエチレンワックスとが併用されて揺変性(チキソトロピー)付与剤として添加されていることを特徴とする路面標示用塗料組成物。
【請求項2】
前記酸化ポリエチレンワックスが、分子量(粘度法):1500〜3500、且つ、酸価(KOHmg/g)(JIS K5902):10〜25の範囲から選択されたものであることを特徴とする請求項1記載の路面標示用塗料組成物。
【請求項3】
前記ベントナイトの含有率が0.1〜0.6質量%で、かつ、前記酸化ポリエチレンワックスの含有率が0.04〜0.20質量%であることを特徴とする請求項2記載の路面標示用塗料組成物。
【請求項4】
前記ベントナイトの含有率が0.1〜0.5質量%であることを特徴とする請求項3記載の路面標示用塗料組成物。
【請求項5】
前記ベントナイトの含有率が0.35〜0.5質量%であることを特徴とする請求項4記載の路面標示用塗料組成物。
【請求項6】
前記熱可塑性結合材が、200℃における粘性率(B型粘度計による。以下同じ。)が1〜2.6dPasの熱可塑性結合材であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の路面標示用塗料組成物。
【請求項7】
塗料組成物の粘性率(200℃)が30〜145dPasであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の路面標示用塗料組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の路面標示用塗料組成物を200℃前後に加熱溶融して、排水性路面に標示をスリッタ施工することを特徴とする路面標示の施工方法。
【請求項9】
ベントナイトと酸化ポリエチレンワックスとを併用して揺変性を調節することを特徴とする路面標示用塗料組成物の揺変性調節方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−326993(P2007−326993A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−160777(P2006−160777)
【出願日】平成18年6月9日(2006.6.9)
【出願人】(000159021)株式会社キクテック (42)
【Fターム(参考)】