説明

路面清掃車の側ブラシ及び路面清掃車

【課題】車両下のスペースが小さくても径の大きな側ブラシを採用可能として清掃性能を向上させる。
【解決手段】回転基台2と、複数のブラシ毛材9を束ねてなるブラシ束8とを備え、回転基台2の周縁に沿って複数のブラシ束8の上端を連結して円錐状のブラシ部3を形成した路面清掃車の側ブラシ1において、ブラシ束8の上端を回転基台2の放射方向へ傾動可能に連結して、回転基台2の回転時には、遠心力によってブラシ束8がそれぞれ放射方向外側へ傾動してブラシ部3の下端径を拡開させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面清掃車に設けられる側ブラシと、その側ブラシを用いた路面清掃車とに関する。
【背景技術】
【0002】
路面清掃車には、車両下のスペースへ格納可能で、使用時には車両の外側へ張り出させて、回転によって路面や路肩に堆積した塵埃等を車両の中央側へ掃き寄せる側ブラシが設けられている。この側ブラシは、例えば特許文献1に示すように、車両側に連結されて回転する回転基台に、短冊状のブラシ毛材を芯線及び帯状体で挟持した円錐状のブラシ部を、回転基台の下面側から取り付けられる固定部材によって挟持する構造が知られている。また、特許文献2には、鋼線保持円盤を構成する扇形片の下面に、半径方向外側に傾斜する取付孔を複数形成し、その取付孔に円筒状の弾性部材を挿入して、各弾性部材に二つ折りにした複数の平鋼線を挿入してなる側ブラシの発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−131386号公報
【特許文献2】特開2004−344536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような側ブラシは、清掃性能を向上させるためには大径として車両の外側へ大きく張り出させるのが望ましい。しかし、近年、路面清掃車は、環境対策上大型の排ガス処理システムを搭載することが多くなっており、そのため、車両下のスペース(格納スペース)が小さくなって径の大きな側ブラシが使用できなくなっている。
一方、側ブラシは、特許文献1,2のようにブラシ毛材や平鋼線が固定されるため、ブラシ部の形態(特に円錐状の外周の角度)の変更が容易にできないという問題もあった。
【0005】
そこで、本発明は、車両下のスペースが小さくても径の大きな側ブラシが使用でき、清掃性能の向上が可能となる一方、ブラシ部の形態の変更も容易に行うことができる路面清掃車の側ブラシ及び路面清掃車を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、回転基台と、複数のブラシ毛材を束ねてなるブラシ束とを備え、回転基台の周縁に沿って複数のブラシ束の上端を連結して円錐状のブラシ部を形成した路面清掃車の側ブラシであって、ブラシ束の上端を、回転基台の放射方向へ傾動可能に連結して、回転基台の回転時には、遠心力によってブラシ束がそれぞれ放射方向外側へ傾動してブラシ部の下端径を拡開させることを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、請求項1の構成において、ブラシ束の上端を連結部材を介して回転基台の周縁へ傾動可能に連結し、回転基台と連結部材との少なくとも一方に、ブラシ束が放射方向外側へ傾動した際に他方と当接してブラシ束の傾動を規制する規制部を設けたことを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明は、請求項2の構成において、規制部を着脱可能に設けたことを特徴とするものである。
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3の構成において、回転基台への連結部材の連結を挿脱可能な軸によって行うと共に、軸を連結位置で固定する抜け止め部材を設けたことを特徴とするものである。
上記目的を達成するために、請求項5に記載の発明は、路面清掃車であって、請求項1乃至4の何れかに記載の路面清掃車の側ブラシを、車両下部の格納位置と、車両から側方へ張り出す張出位置との間で移動可能に設け、張出位置で側ブラシを回転させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1及び5に記載の発明によれば、格納位置ではブラシ部の下端径を小さくして格納できる一方、清掃位置ではブラシ部の下端径を大きくして使用可能となる。よって、排ガス処理システム等の搭載によって車両下のスペースが小さくても支障なく格納でき、汎用性に優れると共に、清掃性能を向上させることもできる。
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加えて、規制部によって拡開したブラシ部の形状が安定する。
請求項3に記載の発明によれば、請求項2の効果に加えて、規制部の着脱の選択によってブラシ部の下端径が簡単に変更可能となる。
請求項4に記載の発明によれば、請求項2又は3の効果に加えて、ブラシ束の交換作業が容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】形態1の側ブラシの平面図である。
【図2】図1のX−X線断面図である(非回転状態)。
【図3】図1のX−X線断面図である(回転状態)。
【図4】(A)は図2のA部拡大図、(B)は図3のB部拡大図である。
【図5】図2のC矢視図である。
【図6】路面清掃車の説明図である。
【図7】形態2の側ブラシの平面図である。
【図8】図7のY−Y線断面図である。
【図9】規制部材の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[形態1]
図1〜4に側ブラシの一例を示す。この側ブラシ1は、円盤状の回転基台2と、その回転基台2に連結される円錐状のブラシ部3とを備えてなる。
まず回転基台2は、上面中央に、後述する路面清掃車30に設けたアーム36と連結されて回転伝達される連結軸4を突設し、外周に接線方向の面取部5,5・・を12辺形成した12角形の板状体で、各面取部5の中央には、支持突起6が放射状に突設されて端部を面取部5よりも外側へ突出させている。各支持突起6の端部には、面取部5と平行な透孔7がそれぞれ穿設されている。
【0010】
一方、ブラシ部3は、合成樹脂や金属製の複数のブラシ毛材9,9・・の上端を連結部材10に植設した12束のブラシ束8,8・・からなる。連結部材10の上面には、図5にも示すように、それぞれ透孔12を穿設した一対の連結板11,11が立設されており、この連結板11,11で支持突起6を挟んで透孔7,12を貫通する軸となるピン13で連結することで、各ブラシ束8は支持突起6へ軸着されて回転基台2の放射方向へ傾動可能となる。14,14は、連結板11,11の外側でピン13の端部に挿着されてピン13を固定する抜け止め部材としての割りピンであるが、松葉ピン等も使用できる。
【0011】
ここで、各ブラシ束8において、連結板11,11の上端には、回転基台2の周縁に近接するL字状の切欠部15が形成され、切欠部15の下側には、図2及び図4(A)に示すように、回転基台2に対する所定の傾斜角度で回転基台2の下面に当接する下規制面16が形成されている。これにより、側ブラシ1が回転しない状態では、自重によってピン13を中心に下方へ傾動する各ブラシ束8は、下規制面16が回転基台2の下面に当接することでそれ以上の傾動が規制されて当該傾斜姿勢が維持される。この傾斜姿勢の各ブラシ束8により、円錐状となるブラシ部3の下端径D1が決定されることになる。
【0012】
また、切欠部15の上側には、面取部5より上方外側で面取部5に対向する規制部としての上規制面17が形成されている。
この上規制面17は、前述のように下規制面16が回転基台2の下面に係止する際には、図2及び図4(A)に示すように面取部5の外側に離れ、回転基台2が回転して遠心力によってブラシ束8がピン13を中心に放射方向外側へ傾動した際に、図3及び図4(B)に示すように面取部5に当接してそれ以上の傾動規制を行うものである。これにより側ブラシ1の回転状態では、上規制面17が面取部5に当接することで各ブラシ束8の傾斜姿勢が維持されて、ブラシ部3の下端径が決定されることになる。この下端径D2は、側ブラシ1が回転しない状態での下端径D1よりも大きくなっている。
【0013】
以上の如く構成された側ブラシ1においては、例えば図6に示すような路面清掃車30に設けられる。この路面清掃車30は、車両の中央下部に、ブロア32からの送風路33が接続されたピックアップヘッド31を上下動可能に備え、路面への密着状態で、ピックアップヘッド31内に集められた塵埃等をブロア32からの送風によって路面から吹き上げ、ダクト34を介して車両後部に搭載されたホッパ35に回収するものである。
【0014】
側ブラシ1は、車両の左右に一対配置されて、ピックアップヘッド31の前方で車両の下部に備えたアーム36に連結軸4が連結されている。このアーム36の旋回及び上下動作により、側ブラシ1は、車両下部で路面より上方に収まる格納位置(図6の二点鎖線位置)と、車両の側方へ張り出して下端を路面に接触させる清掃位置(図6の実線位置)との間を移動可能となっている。この清掃位置でアーム36からの回転伝達によって側ブラシ1が回転することで、塵埃等を車両の下部中央へ掃き寄せて、実線で示す路面上のピックアップヘッド31へ導くものとなる。
【0015】
ここで、格納位置では側ブラシ1が回転しないため、ブラシ部3は、前述のように各ブラシ束8が下規制面16によって傾斜姿勢が維持されることで図2に示す下端径D1となる。よって、コンパクトな状態で車両下部へ格納できる。
一方、清掃位置で側ブラシ1が回転する際、ブラシ部3は、前述のように各ブラシ束8が上規制面17によって傾斜姿勢が維持されることで、図3に示すように、下端径D1よりも拡開した下端径D2となる。よって、広い面積で路面を清掃することができ、集塵効率が良好となる。
【0016】
そして、ブラシ毛材9の摩耗や損傷等によってブラシ束8を交換する場合、該当するブラシ束8の連結部材10において割りピン14または松葉ピンを抜き取れば、ピン13を透孔7,12から抜き取って当該ブラシ束8のみを回転基台2から取り外すことができるため、交換が容易に行える。
【0017】
このように、上記形態1の側ブラシ1及び路面清掃車30によれば、ブラシ束8の上端を回転基台2の放射方向へ傾動可能に連結して、回転基台2の回転時には、遠心力によってブラシ束8がそれぞれ放射方向外側へ傾動してブラシ部3の下端径を拡開させるようにしたことで、格納位置ではブラシ部3の下端径を小さくして格納できる一方、清掃位置ではブラシ部3の下端径を大きくして使用可能となる。よって、排ガス処理システム等の搭載によって車両下のスペースが小さくても支障なく格納でき、汎用性に優れると共に、清掃性能を向上させることもできる。
【0018】
特にここでは、ブラシ束8の上端を連結部材10を介して回転基台2の周縁へ傾動可能に連結し、連結部材10に、ブラシ束8が放射方向外側へ傾動した際に回転基台2と当接してブラシ束8の傾動を規制する上規制面17を設けたことで、拡開したブラシ部3の形状が安定する。
また、回転基台2への連結部材10の連結を挿脱可能なピン13によって行うと共に、ピン13を連結位置で固定する割りピン14を設けているので、ブラシ束8の交換作業が容易に行える。
【0019】
なお、上記形態1では規制部を連結部材に設けているが、回転基台に設けて連結部材と当接させたり、連結部材と回転基台との双方に設けて互いに当接させたりしても良い。勿論規制部の形態も適宜変更可能である。
【0020】
[形態2]
次に、本発明の他の形態を説明する。但し、形態1と同じ構成部には同じ符号を付して重複する説明は省略する。
図7,8に示す側ブラシ1aは、回転基台2の上面に規制部材20を設けている点が形態1と異なる。この規制部材20は、図9に示すように、回転基台2の面取部5に合わせて周縁に規制部となる12辺の上面取部21,21・・を形成したリング状の板体で、周縁における各上面取部21の中央には、回転基台2の支持突起6との干渉を回避する逃げ凹部22がそれぞれ放射状に形成されている。
【0021】
この規制部材20は、回転基台2との同軸位置でボルト23,23・・によって着脱可能に固定されるが、固定状態では、図8に示すように、上面取部21は回転基台2の面取部5よりも放射方向で外側に位置しており、ブラシ部3が回転する際には、各ブラシ束8の上規制面17が上面取部21に係止するようになっている。すなわち、面取部5よりも外側で上規制面17を当接させて各ブラシ束8の傾斜姿勢を維持することで、規制部材20がない場合よりもブラシ部3の下端径を縮小させるようにしたものである。
【0022】
以上の如く構成された側ブラシ1aも、形態1と同様に路面清掃車30のアーム36に連結して使用される。すなわち、格納位置では側ブラシ1aが回転しないため、ブラシ部3は各ブラシ束8が下規制面16によって傾斜姿勢が維持されることで下端径D1となり、コンパクトな状態で車両下部へ格納できる。
一方、清掃位置で側ブラシ1が回転すると、ブラシ部3は各ブラシ束8が上規制面17によって傾斜姿勢が維持されることで下端径D1よりも拡開する(但し、上規制面17が先に規制部材20の上面取部21に当接するため、下端径D2よりも下端径は小さい)。よって、広い面積で路面を清掃することができ、集塵効率が良好となる。
【0023】
このように、上記形態2の側ブラシ1a及び路面清掃車30においても、格納位置ではブラシ部3の下端径を小さくして格納できる一方、清掃位置ではブラシ部3の下端径を大きくして使用可能となる。よって、排ガス処理システム等の搭載によって車両下のスペースが小さくても支障なく格納でき、汎用性に優れると共に、清掃性能を向上させることもできる。また、連結部材10に上規制面17を設けたことによる拡開したブラシ部3の形状安定、連結部材10の連結をピン13及び割りピン14で行うことによるブラシ束8の容易な交換といった効果も形態1と同様に得られる。
特にここでは、規制部材20を着脱可能に設けているので、規制部材20の着脱の選択によってブラシ部3の下端径を簡単に変更可能となる。
【0024】
なお、形態2において、規制部材の形状は適宜変更可能で、例えば連結部材との当接位置が異なる複数の規制部を周縁へ段状に形成して回転基台へ位相を変更可能に装着して、規制部材の位相の選択によって使用する規制部を変えるようにしたり、規制部の位置が異なる複数の連結部材を交換することで規制部を変えるようにしたりすることも考えられる。また、リング状でなく、連結部材との規制部のみを放射状に突出させた星形としたりしてもよい。
さらに、規制部の着脱は回転基台側のみに限らず、連結部材においても可能である。例えば上記形態2では、切欠部を含む上端部分を連結部材へ着脱可能として、上規制面の位置が異なる別の切欠部を有する上端部分を装着すれば、ブラシ部の下端径を変更することができる。
【0025】
そして、上記形態1,2に共通した変更例として、連結部材の下規制面を省略し、格納位置では各ブラシ束が回転基台の周縁から垂下するようにしてもよい。さらには上規制面等の規制部も省略することは可能である。
また、連結部材と回転基台との連結も、上記形態と逆に、支持突起を連結部材へ、連結板を回転基台へそれぞれ設けて軸着したり、支持突起をなくして回転基台の周縁に突起を一体に突設して各突起にブラシ束を軸着したり等、適宜変更できる。勿論ブラシ束自体の形態や回転基台に設ける数等も変更して差し支えない。
【0026】
一方、路面清掃車も、ピックアップヘッドで圧縮空気によって吹き上げるタイプに限らず、側ブラシで中央に掃き寄せられた塵埃を主ブラシで掃き上げてコンベヤでホッパまで搬送するような他のタイプであっても本発明の側ブラシは採用可能である。
【符号の説明】
【0027】
1,1a・・側ブラシ、2・・回転基台、3・・ブラシ部、5・・面取部、6・・支持突起、7,12・・透孔、8・・ブラシ束、9・・ブラシ毛材、10・・連結部材、11・・連結板、13・・ピン、14・・割りピン、15・・切欠部、16・・下規制面、17・・上規制面、20・・規制部材、21・・上面取部、22・・逃げ凹部、23・・ボルト、30・・路面清掃車、36・・アーム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転基台と、複数のブラシ毛材を束ねてなるブラシ束とを備え、前記回転基台の周縁に沿って複数の前記ブラシ束の上端を連結して円錐状のブラシ部を形成した路面清掃車の側ブラシであって、
前記ブラシ束の上端を、前記回転基台の放射方向へ傾動可能に連結して、前記回転基台の回転時には、遠心力によって前記ブラシ束がそれぞれ放射方向外側へ傾動して前記ブラシ部の下端径を拡開させることを特徴とする路面清掃車の側ブラシ。
【請求項2】
前記ブラシ束の上端を連結部材を介して前記回転基台の周縁へ傾動可能に連結し、前記回転基台と連結部材と少なくとも一方に、前記ブラシ束が前記放射方向外側へ傾動した際に他方と当接して前記ブラシ束の傾動を規制する規制部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の路面清掃車の側ブラシ。
【請求項3】
前記規制部を着脱可能に設けたことを特徴とする請求項2に記載の路面清掃車の側ブラシ。
【請求項4】
前記回転基台への前記連結部材の連結を挿脱可能な軸によって行うと共に、前記軸を連結位置で固定する抜け止め部材を設けたことを特徴とする請求項2又は3に記載の路面清掃車の側ブラシ。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかに記載の路面清掃車の側ブラシを、車両下部の格納位置と、車両から側方へ張り出す張出位置との間で移動可能に設け、前記張出位置で前記側ブラシを回転させることを特徴とする路面清掃車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−214351(P2011−214351A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−85366(P2010−85366)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(000241588)豊和工業株式会社 (230)
【Fターム(参考)】