説明

踏切障害物検知装置、及び障害物検知方法

【課題】踏切事故を効果的に防止し得る低コストの踏切障害物検知装置、及び障害物検知方法を提供する。
【解決手段】 踏切障害物検知装置は、入口側無線通信部11と、出口側無線通信部12と、検知部とを含み、ETC(Electric Toll Collection、登録商標)通信端末装置2を有する人、または車両20を検知する。入口側無線通信部11と出口側無線通信部12は、ETC通信端末装置2と無線通信可能であり、踏切道5の入口と出口にそれぞれ設置されている。検知部は、入口側無線通信部11とETC通信端末装置2の通信に基づいて、人、または車両20の踏切道5への進入を検知し、出口側無線通信部12とETC通信端末装置2の通信に基づいて、人、または車両20の踏切道5からの進出を検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、列車接近時に踏切道内に存在する人、及び自動車などの車両を検知する踏切障害物検知装置、及び障害物検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
踏切障害物検知装置は、遮断中の踏切道内に取り残された人、及び自動車などの車両を検知し、特殊信号発光器を発光させることによって、該踏切に接近中の列車の運転士に危険を通知するものである。
【0003】
踏切障害物検知装置には、光、ループコイル、あるいはレーザーを利用する検知方式がある。光を利用する場合、雨や雪などによる乱反射に起因する誤検知の問題があり、また、ループコイルを利用する場合、磁力の検知感度に限界があるため、自動車などの大型の金属体を検知できても、自転車や車椅子などの小型の金属体を検知できないという問題がある。したがって、これらの方式は、踏切事故を効果的に防止し得る程度には至っていない。
【0004】
さらに、特許文献1に開示されているように、レーザーを利用する場合、送受信のために高価な素子が必要となるため、設備コストが大きな問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−42724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、踏切事故を効果的に防止し得る低コストの踏切障害物検知装置、及び障害物検知方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するため、本発明に係る踏切障害物検知装置は、入口側無線通信部と、出口側無線通信部と、検知部とを含み、ETC(Electric Toll Collection、登録商標、以下略)通信端末装置を有する人、または車両を検知する。
【0008】
前記入口側無線通信部と前記出口側無線通信部は、前記ETC通信端末装置と無線通信可能であり、踏切道の入口と出口にそれぞれ設置されている。
【0009】
前記検知部は、前記入口側無線通信部と前記ETC通信端末装置の通信に基づいて、人、または車両の前記踏切道への進入を検知し、前記出口側無線通信部と前記ETC通信端末装置の通信に基づいて、人、または車両の前記踏切道からの進出を検知する。
【0010】
本発明に係る踏切障害物検知装置は、踏切道の入口と出口のそれぞれに設置した無線通信部により、踏切道の入口と出口において、通過する人、または車両の進入と進出とを検知することができる。この検知は、人、または車両が有するETC通信端末装置と該無線通信部の通信において、例えば、料金徴収機能を除いた所定の認証シーケンスが完了したことによりなされる。
【0011】
このとき、車両は、交通規則に基づき、踏切道の入口において一時停止が義務付けられているため、速度超過による通信のエラーは起こり得ないし、人についても、速度超過による通信のエラーも起こり得ない。一方、踏切道の出口においても、入口で一時停止するのだから、速度超過による通信のエラーは起こり得ない。
【0012】
そして、本発明に係る踏切障害物検知装置は、列車接近が通知されたときに、上記進入の検知結果と、上記進出の検知結果とを比較することによって、踏切道に取り残された人、または車両を確実に検知することができる。このとき、比較にあたっては、ETC通信端末の固有情報である機器番号などを利用することができる。
【0013】
本発明に係る踏切障害物検知装置は、ETC通信端末装置との通信を利用するため、検知にあたって比較的に天候の影響を受けにくく、また、自動車に関して言えば、ETCの利用率は今や85%を超えているため、使用が容易な汎用技術を利用して、安価な装置構成とすることができる。
【0014】
また、本発明に係る障害物検知方法は、ETC(Electric Toll Collection)通信端末装置を有し、踏切道内に存在する人、または車両を検知する方法である。
【0015】
まず、前記ETC通信端末装置と無線通信可能な無線通信装置を、前記踏切道の入口と出口のそれぞれに設置しておく。
【0016】
そして、前記入口側の前記無線通信装置と前記ETC通信端末装置の通信に基づいて、人、または車両の前記踏切道への進入を検知するとともに、前記出口側の前記無線通信装置と前記ETC通信端末装置の通信に基づいて、人、または車両の前記踏切道からの進出を検知する。
【0017】
本発明に係る障害物検知方法は、実質的に、上述した本発明に係る踏切障害物検知装置と同様の構成を備えるため、これと同様の作用効果を奏する。
【発明の効果】
【0018】
以上述べたように、本発明によれば、踏切事故を効果的に防止し得る低コストの踏切障害物検知装置、及び障害物検知方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る踏切障害物検知装置を適用した踏切の外観を、列車進行方向から見て概略的に表した図である。
【図2】本発明に係る踏切障害物検知装置の構成図である。
【図3】ETC通信端末装置の認証シーケンスを表したラダーチャートである。
【図4】進入検知部、及び進出検知部の処理を表すフローチャートである。
【図5】障害物検知部の処理を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明に係る踏切障害物検知装置を適用した踏切の外観を、列車の往来方向から見て概略的に表した図である。本発明に係る踏切障害物検知装置は、入口側無線通信部11と、出口側無線通信部12と、検知部とを含み、ETC通信端末装置2を有する人、または車両2を検知する。なお、検知部は、図1に示されていないが、例えば、当該踏切の近傍に設置された器具箱の中に設けられているものとする。
【0021】
ETC通信端末装置2は、具体的には、自動車、及びバイクに搭載されるETC車載器である。本実施形態では、自動車、及びバイクなどの車両20を対象とした代表的な適用例を挙げているが、本発明は、これに限定されず、ETC通信端末装置2、あるいは、これと同等の機能を備える携帯型端末装置(携帯電話機など)を所持した人、あるいは、自転車や車いす(電動車いす含む)などにも適用可能である。もっとも、ETC通信端末装置2による無線通信は指向性が高いため、この場合、無線通信部11,12として、駅の改札に利用されているようなタッチセンサ装置を、踏切道5の入口、及び出口に設けるとよい。
【0022】
踏切障害物検知装置は、既存のETC技術を利用し、無線通信部11,12によるETC通信端末装置2の認証によって、踏切道5の入口におけるチェックイン処理と出口におけるチェックアウト処理を実行することによって踏切事故を防止する。
【0023】
入口側無線通信部11は、踏切道5の入口ゲート41の上部に設けられ、出口側無線通信部12は、踏切道5の出口ゲート42の上部に設けられている。これらの無線通信部11,12は、いわゆる路側器に対応するものであって、ETC通信端末装置2を、無線通信により認証することができる。
【0024】
係る無線通信は、標準規格「ARIB STD−T75」により規定される5.8GHz DSR(Dedicated Short-Range Communication:専用狭域通信)方式に基づいて行われる。このため、無線通信部11,12は、広く普及した技術の恩恵によって、低コストに構成することができる。
【0025】
踏切障害物検知は、この技術による、踏切道5の入口、及び出口における2回の認証に基づいて行われる。すなわち、検知部は、入口側無線通信部11とETC通信端末装置2の通信に基づいて、人、または車両20の踏切道5への進入を検知し、出口側無線通信部12とETC通信端末装置2の通信に基づいて、人、または車両20の踏切道5からの進出を検知する。そして、踏切障害物検知装置は、列車の接近が通知されたときに、検知部が、踏切道5への進入を検知した人、または車両について、踏切道5からの進出を検知していない場合、障害物検知信号を出力する。
【0026】
本実施形態の踏切障害物検知装置は、さらに、踏切の遮断かん30が通常遮断状態にあることを前提として、列車接近時を除き、上記の認証が行われるごとに該遮断状態の解除制御する。具体的に述べると、踏切道5を通過しようとする車両20は、まず、入口で一時停止し、このとき、入口側無線通信部11によりETC通信端末装置2が認証される。そして、該認証が完了すると、入口側遮断機31は遮断かん30を上昇させる(符号30が示す点線を参照)。入口側遮断機31は、光センサなどの検知手段33により車両20の通過を検知すると、遮断かん30を下降させる。
【0027】
遮断かん30の上昇後、車両20は、踏切道5に進入して、出口まで低速で前進(符号Dの矢印を参照)して一時停止し(または、低速運転を維持し)、このとき、出口側無線通信部12によりETC通信端末装置2が認証される。そして、該認証が完了すると、出口側遮断機32は遮断かん30を上昇させ(符号30が示す点線を参照)、これにより、車両20は踏切道5から進出する。出口側遮断機32は、光センサなどの検知手段34により車両20の通過を検知すると、遮断かん30を下降させる。
【0028】
このように、本実施形態の踏切障害物検知装置は、ETC通信端末装置2の認証を条件として、踏切道5の入口の遮断状態を解除制御するから、車両20の踏切道5への不用意な進入を防止することができる。さらに、踏切道5が双方向通行路であり、かつ、遮断機31,32が入口と出口の区別なく運用されている場合、双方の出入口について同様の利点が得られることになる。
【0029】
次に、図2を参照して、踏切障害物検知装置の構成を述べる。検知部10は、進入検知部14と、進出検知部15と、障害物検知部16と、第1及び第2記録部171,172とを含む。検知部10は、ソフトウェアとハードウェアの何れで構成してもよい。
【0030】
進入検知部14は、電気ケーブルを介して入口側無線通信部11と接続され、車両20の踏切道5への進入を検知する。入口側無線通信部11は、ETC通信端末装置2の認証シーケンス(符号C11参照)が完了すると、ETC通信端末装置2の固有情報である機器番号を進入検知部14に出力する(符号C12参照)。
【0031】
図3は、ETC通信端末装置2の認証シーケンスを表したラダーチャートである。まず、無線通信部11は、ポーリング信号として、FCMC(Frame Control Message Channel)データを送信する。ETC通信端末装置2は、FCMCデータに応答して、ACTC(Activation Channel)データを無線通信部11に送信する(符号SEQ1参照)。これにより、無線通信部11とETC通信端末装置2の間でリンクが確立される。
【0032】
次に、無線通信部11は、該ETC通信端末装置2に、BST(Beacon Service Table)を送信する。ETC通信端末装置2は、BSTに応答して、VST(Vehicle Service Table)を無線通信部11に送信する(符号SEQ2参照)。これにより、無線通信部11と該ETC通信端末装置2の間で所定のデータ交換が完了する。
【0033】
次に、無線通信部11は、該ETC通信端末装置2に、機器番号を要求する要求信号REQを送信する。該ETC通信端末装置2は、要求信号REQに応答して、機器番号が含まれた応答信号RESを無線通信部11に送信する(符号SEQ3参照)。これにより、無線通信部11は、応答信号RESから、該ETC通信端末装置2に対応する機器番号を得る。
【0034】
最後に、無線通信部11は、該ETC通信端末装置2に、リリース信号を送信する(符号SEQ4参照)。これにより、無線通信部11と該ETC通信端末装置2の間のリンクは切断され、認証シーケンスが完了する。認証シーケンスが完了すると、無線通信部11は、上述したように、機器番号を進入検知部14に出力する。
【0035】
本実施形態の認証シーケンスでは、高速道路で行われるような料金徴収の処理は行なわれないが、仮に踏切道5の通過を有料とする場合、認証シーケンスに料金徴収処理を組み込んでもよい。また、本実施形態の認証シーケンスでは、個々のETC通信端末装置2の固有情報として機器番号を取得するようにしているが、これに限定されず、例えば、電源投入時にランダムに決定されるリンクアドレス(LID)、あるいは、WCN(Wiress Call Number)を取得するようにしてもよい。リンクアドレス(LID)を利用する場合、これはVSTに含まれる情報であるため(符号SEQ2参照)、図3の符号SEQ3の処理は不要となる。
【0036】
図4には、進入検知部14の処理が示されている。進入検知部14は、認証シーケンスの完了後(ステップSt1)、車両20が踏切道5に進入したものと認識して、機器番号を第1記録部171に記録する(ステップSt2、図2の符号C13参照)。なお、機器番号の出力は、応答信号RESの受信段階(図3の符号SEQ3参照)において行われてもよい。
【0037】
さらに、進入検知部14は、入口側遮断機31に踏切道5の入口の遮断状態を解除するための制御信号を出力する(ステップSt3、図2の符号C14参照)。なお、ステップSt2の処理とステップSt3の処理は、何れが先に実行されてもかまわない。
【0038】
入口側遮断機31は、制御信号が入力されると、遮断かん30を上昇させる。入口側遮断機31は、既に述べたように、検知手段33によって車両20の通過を検知すると遮断かん30を下降させるが、当該検知信号を遮断機31から進入検知部14に出力することによって、進入検知部14が進入検知し、機器番号を第1記録部171に記録するようにしてもよい。
【0039】
ここまで述べた進入検知部14の処理は、進出検知部15についても同様に行われる。すなわち、出口側無線通信部12は、電気ケーブルを介して進出検知部15と接続され、図3に示される認証シーケンスを実行することによってETC通信端末装置2を認証して進出を検知し(図2の符号C21参照)、応答信号RESから取得した機器番号を進出検知部15に出力する(図2の符号C22参照)。そして、進出検知部15は、図4に示されるように、認証シーケンスの完了後(ステップSt1)、該機器番号を第2記録部172に記録し(ステップSt2、図2の符号C23参照)、出口側遮断機32に踏切道5の入口の遮断状態を解除するための制御信号を出力する(ステップSt3、図2の符号C24参照)。
【0040】
ここで、機器番号の記録処理に関し(ステップ3)、進入検知部14と進出検知部15は、便宜上、機器番号を別々の記録部171,172に記録するようにしているが、これらの記録部171,172は、単一のメモリデバイスや単一のハードディスク装置などによって構成しうることは言うまでもない。
【0041】
次に、列車接近時の処理について説明する。列車が、踏切から所定距離だけ手前に設置された始動点を通過すると、図2に示されるように、列車接近を通知するための接近通知信号S1が、電気ケーブルを介して検知部10に入力される。入力された接近通知信号S1は、進入検知部14と障害物検知部16とにおいて受信処理される。
【0042】
進入検知部14は、接近通知信号S1を受信すると、車両20の進入を許容しないように、図4に示された進入検知処理を即時停止する。なお、列車接近時に車両20の進出を妨げると事故につながるため、進出検知部15は、進入検知部14とは異なり、進出検知処理を中断することはない。
【0043】
また、無線通信部11は、ポーリングによって認証シーケンスを繰り返して行うことができ、列車通過後にETC通信端末装置2を認証できるから、接近通知信号S1の入力時に認証処理を停止する必要はないが、より迅速な進入検知処理の停止、あるいは処理のより確実な中断のために、進入検知部14から無線通信部11に停止信号を出力することによって、これを停止させてもよい。
【0044】
一方、障害物検知部16は、接近通知信号S1の受信を契機として、図5に示されるような障害物の検知処理を行なう。障害物検知部16は、接近通知信号S1の受信すると(ステップSt11)、まず、第1記録部171と第2記録部171とから全ての機器番号を読み出す(ステップSt12,St13、図2の符号C15,C25参照)。ここで、ステップSt12の処理とSt13の処理は、何れが先に実行されてもかまわないものである。
【0045】
そして、障害物検知部16は、第1記録部171から取得した機器番号と、第2記録部172から取得した機器番号とを比較処理する(ステップSt14)。該比較処理の結果、不一致の機器番号の存在が検出された場合、すなわち、第1記録部171には記録されているが、第2記録部172には記録されていない機器番号の存在が検出された場合、障害物検知部16は、踏切道5内に取り残されている車両20、つまり障害物が存在するものと認識して、障害物検知信号S2(図2参照)を出力する(ステップSt15)。言い換えれば、障害物検知部16は、列車の接近が通知されたときに、進入検知部14により踏切道5への進入を検知した車両20について、進出検知部15により踏切道5からの進出を検知していない場合、障害物検知信号S2を出力するのである。
【0046】
障害物検知信号S2は、電気ケーブルを介して、踏切の手前に設置された特殊信号発光器に出力され、これを受けた特殊信号発光器が発光することにより接近中の列車に危険が通知される。もっとも、接近通知信号S1の受信の直後には、踏切道5内に残留する車両20が存在することが考えられるため、図5に示された障害物検知処理は、例えば遅延時間を設けることにより、適切なタイミングで実行される必要がある。
【0047】
本実施形態において、記録部171,172に記録された機器番号の比較処理は、接近通知信号S1の受信を契機として行なわれるが、これに限定されるものではない。障害物検知部16は、接近通知信号S1の受信に先立ち、例えば、常時、一定の時間周期で該比較処理を行なってもよいし、あるいは、進入検知部14により車両20の進入が検知された後、一定時間が経過したことを契機として該比較処理を行なってもよい。
【0048】
また、記録部171,172に記録された機器番号の消去処理は、障害物検知部16により、図5に示された障害物検知処理の終了を契機として行なってもよいし、または一定周期で行ってもよい。あるいは、進出検知部15により、車両20の進出が検知されたことを契機として、随時、該検知に係る機器番号のみが消去されるようにしてもよい。
【0049】
このように、機器番号のような固有情報を記録することの副次的な効果として、特定の踏切道5を通過した車両、あるいは人の特定するための情報として利用できる点が挙げられる。すなわち、記録部171,172の情報は、通信ネットワークを介し、例えば犯罪捜査情報として広く利用することも可能である。
【0050】
本実施形態の障害物検知装置は、踏切道5を同時に複数台の車両20が通過することがありえることを前提としているため、固有情報の認証処理と記録処理とを行うようにしたが、一度に1台の車両20のみが通過することを前提とする場合、これらの処理は不要である。すなわち、この場合は、ETC通信端末装置2の固有情報の取り扱いは不要であるから、図3に示された認証シーケンスについて言えば、リンクの確立(符号SEQ1参照)のみによって進入、及び進出の検知を行なえばよい。さらに、図3の構成について言えば、記録部171,172は不要であり、障害物検知部16は、進入検知部14による進入検知の後、所定の時間内に進出検知部15による進出検知が行われることを監視し、該進出検知がなければ、立ち往生などで動けない車両20が存在するものと認識して、列車接近の有無に関わらず、障害物検知信号S2(図2参照)を出力すればよい。
【0051】
また、本実施形態の障害物検知装置は、進入検知部14、及び進出検知部15による検知を、遮断機31,32の遮断制御に連係させているが、これは必ずしも必要ではない。すなわち、遮断機31,32は、従来のように、遮断かん30を通常上昇させ、接近通知信号S1を受けて、これを下降させればよい。もっとも、この場合、車両20は遮断かん30の下降が完了するまで踏切道5に進入可能であるので、進入検知部14は、例えば接近通知信号S1の受信後に遅延時間を設け、遮断かん30の下降タイミングにあわせて、進入検知処理を停止する必要がある。
【0052】
これまで述べたように、本発明に係る踏切障害物検知装置は、踏切道5の入口と出口のそれぞれに設置した無線通信部11,12により、踏切道5の入口と出口において、通過する人、または車両20の進入と進出とを検知することができる。この検知は、人、または車両20が有するETC通信端末装置2と該無線通信部11,12の通信において、例えば、図3に示されるように、料金徴収機能を除いた認証シーケンスが完了したことによりなされる。
【0053】
このとき、車両20は、交通規則に基づき、踏切道5の入口において一時停止が義務付けられているため、速度超過による通信のエラーは起こり得ないし、人についても、速度超過による通信のエラーも起こり得ない。一方、踏切道の出口においても、入口で一時停止するのだから、速度超過による通信のエラーは起こり得ない。
【0054】
そして、本発明に係る踏切障害物検知装置は、列車接近が通知されたときに、上記進入の検知結果と、上記進出の検知結果とを比較することによって、踏切道5に取り残された人、または車両20を確実に検知することができる。このとき、比較にあたっては、ETC通信端末2の固有情報である機器番号などを利用することができる。
【0055】
また、本発明に係る踏切障害物検知装置は、ETC通信端末装置2との通信を利用するため、検知にあたって比較的に天候の影響を受けにくく、また、自動車に関して言えば、ETCの利用率は今や85%を超えているため、使用が容易な汎用技術を利用して、安価な装置構成とすることができる。
【0056】
次に、本発明に係る障害物検知方法について、図1を参照して説明する。本発明に係る障害物検知方法は、ETC通信端末装置2を有し、踏切道5内に存在する人、または車両20を検知する方法である。
【0057】
まず、ETC通信端末装置2と無線通信可能な無線通信装置11,12を、踏切道5の入口と出口のそれぞれに設置しておく。
【0058】
そして、入口側の無線通信装置11とETC通信端末装置2の通信に基づいて、人、または車両20の踏切道5への進入を検知するとともに、出口側の無線通信装置12とETC通信端末装置2の通信に基づいて、人、または車両20の踏切道5からの進出を検知する。このとき、進入、及び進出の検知には、図3に示されるような認証シーケンスが利用できる。また、既に述べたように、進入、及び進出の検知にあわせて、遮断機31,32を制御して、踏切道5の入口、及び出口の遮断状態の解除を行なってもよい。
【0059】
このように、本発明に係る障害物検知方法によれば、図4に示されたような処理によって、列車の接近が通知されたときに、踏切道5への進入を検知した人、または車両20について、踏切道5からの進出を検知していない場合、障害物の存在を検知する。
【0060】
本発明に係る障害物検知方法は、実質的に、上述した本発明に係る踏切障害物検知装置と同様の構成を備えるため、これと同様の作用効果を奏する。
【0061】
以上、好ましい実施例を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種々の変形態様を採り得ることは自明である。
【符号の説明】
【0062】
10 検知部
11 入口側無線通信部
12 出口側無線通信部
2 ETC通信端末装置
20 車両
5 踏切道

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口側無線通信部と、出口側無線通信部と、検知部とを含み、ETC(Electric Toll Collection、登録商標)通信端末装置を有する人、または車両を検知する踏切障害物検知装置であって、
前記入口側無線通信部と前記出口側無線通信部は、前記ETC通信端末装置と無線通信可能であり、踏切道の入口と出口にそれぞれ設置されており、
前記検知部は、前記入口側無線通信部と前記ETC通信端末装置の通信に基づいて、人、または車両の前記踏切道への進入を検知し、前記出口側無線通信部と前記ETC通信端末装置の通信に基づいて、人、または車両の前記踏切道からの進出を検知する、
踏切障害物検知装置。
【請求項2】
請求項1に記載された踏切障害物検知装置であって、
列車の接近が通知されたときに、前記検知部が、前記踏切道への進入を検知した人、または車両について、前記踏切道からの進出を検知していない場合、障害物検知信号を出力する、
踏切障害物検知装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載された踏切障害物検知装置であって、
前記検知部は、前記入口側無線通信部と前記ETC通信端末装置の通信に基づいて、前記踏切道の入口の遮断状態を解除するための制御信号を出力する、
踏切障害物検知装置。
【請求項4】
請求項3に記載された踏切障害物検知装置であって、
前記検知部は、前記出口側無線通信部と前記ETC通信端末装置の通信に基づいて、前記踏切道の出口の遮断状態を解除するための制御信号を出力する、
踏切障害物検知装置。
【請求項5】
ETC(Electric Toll Collection、登録商標)通信端末装置を有し、踏切道内に存在する人、または車両を検知する障害物検知方法であって、
前記ETC通信端末装置と無線通信可能な無線通信装置を、前記踏切道の入口と出口のそれぞれに設置しておき、
前記入口側の前記無線通信装置と前記ETC通信端末装置の通信に基づいて、人、または車両の前記踏切道への進入を検知するとともに、前記出口側の前記無線通信装置と前記ETC通信端末装置の通信に基づいて、人、または車両の前記踏切道からの進出を検知する、
障害物検知方法。
【請求項6】
請求項5に記載された踏切障害物検知方法であって、
列車の接近が通知されたときに、前記踏切道への進入を検知した人、または車両について、前記踏切道からの進出を検知していない場合、障害物の存在を検知する、
踏切障害物検知方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−185600(P2012−185600A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47222(P2011−47222)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】