説明

踵骨の骨折の関節固定再建術のための固定釘システム

【課題】人間の踵骨の粉砕骨折を再建し、骨を距骨へと固定するシステムを提供する。
【解決手段】釘1、複数の踵骨‐距骨ねじ、ガイド、ガイドチューブ、ビット、深さゲージ、カニューレ式のねじ回し、ダイアペイズン・インパクタ、リミッタ付きビット、および基準案内ピンで構成されている踵骨の骨折の関節固定再建術のための固定釘システムであって、人間の踵骨の深刻な粉砕骨折を再建し、主たる形態を再建した後、関節の固定または距骨との癒合を達成するためにこの骨を距骨へと固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は踵骨の骨折の関節固定再建術のための固定釘システムに関し、その主たる目的は、人間の踵骨の深刻な粉砕骨折を再建し、主たる形態を再建した後、関節固定または距骨との癒着のためにこの骨を距骨へと固定することである。
【背景技術】
【0002】
慢性的な痛みの残存が、踵骨の粉砕距骨骨折の後の最も一般的な後遺症である。この問題の原因として、コンパートメント症候群、反射性交感神経性ジストロフィー、足底クッション症候群、足根骨および腓骨の管症候群、ならびに距骨下関節炎など、多くの原因が考えられる。また、これらの骨折に対する現行の治療の大部分において、長期的結果が良くないのは、この後者の原因によることが分かっている。
【0003】
距骨の骨折は、特には外側足底神経枝の足根管症候群の8〜10%を占め、腓骨神経絞扼(外果下痛)の78%を占める。これらの深刻な骨折の70%において、外傷の後で通常は強直する後距骨下関節によって引き起こされる慢性の痛みが存在している。
【0004】
最新の刊行物は、踵骨骨折の観血的整復術および内固定の結果を支持しているが、整形外科的処置にも、依然として支持者が多数いる。他の場合においては、最初は保守的な考え方の採用が選択され、後遺症が現れたら処置するものとしている。BarnardやOdegardと同様、我々は距骨下関節の完全な修復が不可能であると考えている。
【0005】
外傷後の距骨下関節炎の治療のために、人工的置換を含む多数の関節固定術が開示されている。他の場合には、足の生体力学を改善するとともに、隣接の関節の劣化を防止するために、分離距骨下癒合よりも、三関節固定術が推奨されている。病院において行われた種々の検査によれば、距骨下関節の分離関節固定術は、多数の年月の進展の後でも、隣接の関節の劣化を引き起こさない。
【0006】
この経験が、StulzおよびNobleの古い仮定が未だ解決されていない骨折への鍵をもたらすことができるという意見につながっている。距骨下関節は、多くの深刻な骨折においては外科的に再建することが不可能であり、常に劣化するので、後の進展段階で現れる身体に障害を引き起こす後遺症を防止するために、急性期に速やかに関節固定するという解決策が考えられる。
【0007】
しかしながら、損傷した関節の癒着に加え、コンパートメント症候群、反射性交感神経性ジストロフィー、足底クッション症候群、足根骨および腓骨の管症候群などといった合併症を回避するために、足関節の形態を可能な限り再建するように試みなければならず、これにより骨折整復が明らかに有効になると考えられる。
【0008】
特許番号ES 2164543号のスペイン特許が、2本のねじによって固定される釘を提示している。この釘は、矩形のくさび形の形状ゆえ、骨への挿入に問題があり、遠位領域における断面がきわめて小さいため、抵抗の問題が存在するとともに、下側のねじの固定を制限している。
【発明の開示】
【0009】
上述の問題を軽減するため、この新規な固定釘システムが、本発明の特許の目的である踵骨の骨折の関節固定再建術のために提示される。
【0010】
このシステムは、2つの安定化フィンと、先細りの先端と、ねじ山付きの2つの穴とを備え、距骨の大結節へと挿入される円柱形の釘を配置して構成される。さらに、釘の穴へとねじ込まれる2つのカニューレ式のねじで構成され、それらが釘に固定されるまで距骨に挿入され、アセンブリ全体を安定にして、剛性および加わる負荷への耐性を向上させる。
【0011】
距骨下関節の関節固定術にカニューレ式のねじを使用することは、この種の骨折の治療に一番よい結果を提供する公知かつ植え付けられた技法である。本発明の特許の目的である踵骨の骨折の関節固定再建術のための固定釘システムは、上記ねじの支持および固定の両者を行い、システムをより安定かつ安全にし、ねじの移動に伴う不具合を防止できる釘の挿入ゆえに、このように習慣的に使用される技法に著しい改善を提供する。このやり方で、足がその自然の構造を回復し、踵骨と距骨との間の関係が補修されて、生体力学的機能が回復する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
この説明を完全にするとともに、本発明の特徴のさらなる理解に貢献する目的で、本明細書に、本明細書の一部を構成する一連の図面が付随している。これらの図面は、説明のためのものであって、本発明を限定する性質のものではない。
【0013】
添付の図面に見て取ることができるように、踵骨の骨折の関節固定再建術のための固定釘システムが、以下の構成部品、すなわち釘(1)、ねじ(2)、踵骨‐距骨ガイド(3)、ガイドチューブ、ビット、深さゲージ、カニューレ式のねじ回し、ダイアペイズン・インパクタ(diapason impactor)、リミッタ付きビット、および基準案内ピンで構成されている。
【0014】
釘(1)は、挿入を容易にするための先細りの先端を有する円柱形の部品である。尖っていない方の端部が、挿入ガイド(33)を組み合わせるために、ねじ穴(12)および凹部(13)を有している。さらに、釘(1)は、このインプラントを安定させるとともに回転を防止するため、2つの横フィン(14)を有している。釘(1)は、ねじ(2)によって距骨下関節を関節固定するために、部分的にねじ山が設けられて水平軸に対して10°の角度に設定された2つの貫通穴(15および16)を有している。
【0015】
踵骨‐距骨ねじ(2)は、ガイドチューブと一緒に挿入するために、カニューレ式(22)とされている。距骨の海綿骨への固定のため、遠位端にねじ山(21)が設けられている。先端は、最適なトルクによる挿入を容易にするため、自ら穴をあけ、自らねじ山を切りつつ進むようにされている。頭部が、釘(1)への固定のための金属製のねじ山を有しており、より効率的な回転作用を保証するため六角型の接続部を有している。ねじ(2)の好ましい長さは、60mm以上かつ90mm以下である。
【0016】
ガイド(3)は、システムの種々の構成部品を現場で配置するために使用される器具であって、上部に案内穴(32)を有する主支持部(31)を具備しており、案内穴(32)は、アプリケーターガイド(33)によって釘(1)を導入できるように、釘(1)の外形を有しており、アプリケーターガイド(33)は、回転運動を防止して固定を保証するよう、端部に釘(1)の凹部(13)へと嵌り込む突起(34)を有している。さらに、アプリケーターガイド(33)は、釘(1)を案内穴(32)を通って良好な角度で踵骨内に配置されるようする縦方向コッタ(35)を有している。
【0017】
ガイド(3)の下部には、ねじ(2)を踵骨‐距骨に配置されるようにするカニューレや器具のシステム全体を通すため、水平軸に対して10°の角度で配置された2つの穴(36)を有するワッド(wad)が設けられている。
【0018】
ガイド(3)は把持部(38)を有しており、把持部(38)は、把持部として機能するほかに、距骨に前もって配置されたピンに取り付けられ、把持部(38)の端部にあるハンドル(39)によって釘(1)の位置を調節するための基準軸および支持部として機能するあご部(37)に接続されている。
【0019】
複数のガイドチューブは、トロカールの先端を除いてまったく同じに具現化されていなければならず、これにより土台の準備やねじ(2)の配置に使用される種々の器具の適切な案内および方向付けが可能になる。土台の準備に使用される器具として、案内ピン、ねじ(2)の中心部分に対応する直径を有するカニューレ式ビット、およびねじ(2)そのものである。したがって、直径およびトロカールの先端の異なる3つのガイドチューブが必要である。このシステムによって使用される他の部材は、ねじ(2)の長さを決定するための深さゲージ、ねじ(2)を挿入するためのカニューレ式のねじ回し、釘(1)を打ち込むためのダイアペイズン・インパクタ、釘(1)の土台を加工するためのリミッタ付きビット、およびガイド支持部(3)用の基準ピンである。
【0020】
踵骨の骨折の関節固定再建術のための固定釘システムの埋め込み、つまりは本発明の目的は、以下のように具現化される。
【0021】
最初に、適切な外科手術の後に、案内ピンが距骨頭の中心に配置される。案内ピンは、釘(1)を差し込むための空間的基準である。案内ピンは足の内側面から挿入されて、放射線手段によって距骨頭の中心に位置決めされる。案内ピンは、足関節インターライン(interline)に対して平行な前額面に位置していなければならず、また足軸に直交する軸平面に位置していなければならない。案内ピンが正しい位置にあることが確認されるまでは、手術を続けてはならない。
【0022】
ガイド(3)は、最初は距骨頭に位置する案内ピンによって支持されており、次いでガイド(3)は、把持部(38)の端部に位置するハンドル(39)を使用して、大結節へと最初に調節される。
【0023】
この位置において、ねじ(2)の方向をシュミレートするためのガイドピンを使用して、このためにガイドアーム(3)に設けられた穴(36)へとガイドピンを挿入することによって、放射線による制御が実行される。これらのガイドピンが、確実なねじ(2)の位置を示す。それらが距骨頭に適切に位置していない場合、ガイド(3)の位置を直さなければならない。
【0024】
この段階で、ガイドは、ハンドル(39)および把持部(38)を使用して踵骨軸をそらすことができ、さらに距骨頭に配置された案内ピンを軸として使用し、ガイド(3)を動かすことによって、屈曲‐伸長の動きを踵骨軸に加えることもできる。次いで、釘(1)を収容するため大結節に穴が設けられる。ガイド(3)が正しい位置にある場合には、大結節に穴を設けることは問題ではない。穴あけは、ビットのリミッタに至るまで続けられなければならない。唯一気を付けなければならないのは、アキレス腱を適切に保護することである。
【0025】
場合によっては、深刻な粉砕骨折では、骨折した骨に穴あけを行うことを意味する。この場合でも、インプラントが適切に機能するのに、骨は無傷である必要はないため、インプラントの挿入に何ら不都合はない。ビットを取り出すときは、穴あけの際に除去された骨を取り出すために、回転させ続けなければならない。穴あけの方向は反転させてはならない。多くの場合、この骨は、距骨下関節固定術での移植用として使える。
【0026】
釘(1)が、ガイド(3)によって保持され、前もってマークされたチャンネルに配置される。釘(1)は、打ち込みによって挿入される。ガイド(3)が、大結節の下方領域に向かって釘を案内し、釘が足底筋膜に挿入される。釘(1)は、アプリケータのリミッタまで完全に挿入されなくてはならず、これによりねじ(2)の穴とこれに適合するガイド(3)とが正確に位置決めされる。
【0027】
ガイドチューブをガイド(3)上に位置させた状態で、医師は、骨へと達する小さな切り込みを設ける。案内ピンが挿入される。ねじ(2)の長さは、深さゲージによって測定される。案内ピンが挿入された後に、4.5mmのカニューレ式ビットが挿入される。次いで、ねじ(2)が配置される。システムが適切な位置にあるときに、釘(1)の穴あけの際に取り出された骨が適用される。
【0028】
本発明の性質ならびに本発明の実際の実施形態を説明したが、形態および材料に関して本発明にいくつかの変更を加えることが、そのような変更が以下の特許請求の範囲に記載される特徴を実質的に変更しない限りにおいて可能であることを、付け加えておく。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】固定釘の図。
【図2】カニューレ式のねじの図。
【図3】釘アプリケーターガイドを含む挿入ガイドの図。
【図4】ねじが挿入された釘の図。
【図5】固定釘システムが挿入された足の図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
釘(1)、複数の踵骨‐距骨ねじ(2)、ガイド(3)、ガイドチューブ、ビット、深さゲージ、カニューレ式のねじ回し、ダイアペイズン・インパクタ、リミッタ付きビット、および基準案内ピンで構成されている踵骨の骨折の関節固定再建術のための固定釘システムであって、
− 釘(1)が、先細りの先端を有する円柱形の部品であり、尖っていない方の端部に、挿入ガイドまたはアプリケーターガイド(33)を受け入れるために、ねじ穴(12)および凹部(13)を有しており、さらに2つの横フィン(14)と、部分的にねじ山が設けられて水平軸に対して10°の角度に設定された2つの貫通穴(15および16)とを有しており、
− 踵骨‐距骨ねじ(2)が、ガイドチューブによって案内されるためにカニューレ式(22)とされており、距骨の海綿骨への固定のため、遠位端にねじ山(21)が設けられており、先端が、自ら穴をあけ、自らねじ山を切りつつ進むようにされていて、頭部が、釘(1)への固定のための金属製のねじ山、および六角型の接続部を有しており、
− ガイド(3)が、上部に案内穴(32)を有する主支持部(31)で構成されており、案内穴(32)が、アプリケーターガイド(33)によって釘(1)を導入するため、釘(1)の外形を有しており、ガイド(3)が、2つの穴(36)を備えるワッドを下部に有しており、さらにガイド(3)は、把持部(38)を有しており、距骨に前もって配置されたピンに取り付けられて、把持部(38)の端部にあるハンドル(39)によって釘(1)の位置を調節するための基準軸および支持部として機能するあご部(37)に接続され、
− ガイドチューブが、トロカール端を除いてまったく同じに具現化されていなければならず、基盤の準備および踵骨‐距骨ねじ(2)の配置に使用される種々の器具の適切な案内および方向付けを可能にし、
− このシステムによって使用される他の要素が、ねじ(2)の長さを決定するための深さゲージ、ねじ(2)を挿入するためのカニューレ式のねじ回し、釘(1)を打ち込むためのダイアペイズン・インパクタ、釘(1)の土台を加工するためのリミッタ付きビット、およびガイド支持具(3)用の案内ピンである
ことを特徴とする踵骨の骨折の関節固定再建術のための固定釘システム。
【請求項2】
フィン(14)が、インプラントを安定にして回転を防止することを特徴とする請求項1に記載の踵骨の骨折の関節固定再建術のための固定釘システム。
【請求項3】
貫通穴(15および16)が、踵骨‐距骨ねじ(2)によって距骨下関節を関節固定できるようにすることを特徴とする請求項1に記載の踵骨の骨折の関節固定再建術のための固定釘システム。
【請求項4】
踵骨‐距骨ねじ(2)の好ましい長さが、60mm以上かつ90mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の踵骨の骨折の関節固定再建術のための固定釘システム。
【請求項5】
アプリケーターガイド(33)が、固定を保証して回転運動を防止するよう、端部に釘(1)の凹部(13)へと嵌り込む突起(34)を有しており、さらに、アプリケーターガイド(33)が、案内穴(32)を通って釘(1)を良好な角度で踵骨内に配置できるよう、縦方向コッタ(35)を有していることを特徴とする請求項1に記載の踵骨の骨折の関節固定再建術のための固定釘システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−313318(P2007−313318A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−136283(P2007−136283)
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【出願人】(507169451)
【氏名又は名称原語表記】Felipe Lopez−Oliva Munoz
【住所又は居所原語表記】Calle Enrique Granados 63 28290 Madrid Spain
【Fターム(参考)】