説明

身体支持装置品表面材

【課題】籐等の植物線条に成る表面材と同等の防滑性や耐火性、吸湿性等の機能性を具備し、特に夏季用身体支持装置に適した表面材をプラスチックモノフィラメント糸を用いて得る。
【解決手段】単繊維繊度200dtex以上のプラスチックモノフィラメントに成る軸糸11が、布帛の縦横各2cmとなる寸法をもって規定される単位区画内(4cm2 )に現れる織編密度をもって織編込まれている織編布帛によって身体支持装置品表面材10を構成する。その単位区画内に現れる少なくとも一部の軸糸11を、単繊維繊度20dtex以下の繊維によって表面が構成されている多繊糸条12によって被覆しておく。その軸糸11が多繊糸条12によって被覆されている多繊被覆糸条13を、前記単位区画内に露出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枕、クッション、座布団、腰掛け、背凭れ、椅子、座椅子、座席、ソファー、ベット、折畳式ソファーベット、ハンモック、担架等の肢体や身体を載せて支えるために使用される身体支持装置品(以下、単に "身体支持装置品”と言う。)の表面材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
身体支持装置品には、その使用中に蒸れ感を与えない程度の通気性と吸湿性が求められる。このため、夏季用身体支持装置品の表面材には、蔦、籐、藺草、芭蕉葉軸、サイザル麻葉軸、パイナップル葉軸その他の植物の葉茎に成る繊維質植物線条を経糸や緯糸に用いた織編布帛が好んで使用される。しかし、植物線条は、腐蝕し易く、不衛生で耐久性を欠き、気候条件によってコストが変動し、供給が安定せず、それがプラスチックモノフィラメント糸のように長く連続していないので効率的に織編することが出来ず、身体支持装置品の表面材の量産には不向きである。このため、ポリプロピレン繊維やポリエステル繊維が植物線条に代用されることが多い(例えば、特許文献1参照)。強度的に安定した繊維糸条としては、ポリエーテルエステル系エラストマー弾性糸が公知である(例えば、特許文献2、3、4参照)。
【特許文献1】特許第3612461号公報
【特許文献2】特開2003−113551号公報
【特許文献3】特開2003−113552号公報
【特許文献4】特開2003−113553号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
然るに、ポリプロピレン繊維やポリエステル繊維は、吸湿性を欠き、籐等の植物線条の如き清涼感のある表面材は得られない。そこで、ポリプロピレンやポリエステルに成る太手のプラスチックモノフィラメント糸を用いて織編布帛をメッシュ状に目粗に織編し、通気性を確保することになるが、プラスチックモノフィラメント糸の表面は平滑で滑り易く、それに成る織編布帛を表面材に用いた身体支持装置品では、身体が滑動して安定せず、心地よさを与えない。そして、ポリプロピレン繊維やポリエステル繊維、或いは、ポリエーテルエステル系エラストマー弾性糸は、可燃性物質であり、タバコや蚊取線香等の火気に触れて溶融し破断し易い。
加えて、ポリプロピレン繊維やポリエステル繊維は、非吸温性・疎水性物質であるが故に、籐等の植物線条のように、防滑性塗料や耐火性塗料、吸湿性塗料等の機能性塗料を塗着して機能性を付与することは困難であり、又、塗膜は変色・劣化し易く、特に、表面が平滑なプラスチックモノフィラメント糸では、それに機能性塗料を塗着しても、その塗膜が剥離脱落し易く、機能性を付与することは極めて困難である。
【0004】
そこで本発明は、籐等の植物線条に成る表面材と同等の防滑性や耐火性、吸湿性等の機能性を具備し、特に夏季用身体支持装置に適し、耐光性に優れた表面材をプラスチックモノフィラメント糸を用いて得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る身体支持装置品表面材(以下、単に「表面材」とも言う。)は、(a)
単繊維繊度200dtex以上のプラスチックモノフィラメントに成る軸糸11が、布帛の縦横各2cmとなる寸法をもって規定される単位区画内(4cm2 )に現れる織編密度をもって織編込まれている織編布帛によって構成され、(b) その単位区画内に現れる少なくとも一部の軸糸11が、単繊維繊度20dtex以下の繊維によって表面が構成されている多繊糸条12によって被覆されており、(c) その軸糸11が多繊糸条12によって被覆されている多繊被覆糸条13が、前記単位区画内に露出していることを第1の特徴とする。
【0006】
本発明に係る表面材の第2の特徴は、上記第1の特徴に加えて、(d) 前記織編布帛が、前記単位区画内に空隙14が現れるメッシュ布帛であり、(e) その単位区画内に複数本の軸糸11が織編込まれており、その複数本の中の10%以上の本数の軸糸11が、単繊維繊度20dtex以下の繊維によって表面が構成されている多繊糸条12によって被覆されている点にある。
【0007】
本発明に係る表面材の第3の特徴は、上記第1の特徴に加えて、(d) 前記織編布帛が、前記単位区画内に空隙14が現れるメッシュ布帛であり、(f) その単位区画内に複数本の軸糸11が織編込まれており、その複数本の中の50%以上の本数の軸糸11が、単繊維繊度20dtex以下の繊維によって表面が構成されている多繊糸条12によって被覆されている点にある。
【0008】
本発明に係る表面材の第4の特徴は、上記第1、第2および第3の何れかの特徴に加えて、(d) 前記織編布帛が、前記単位区画内に空隙14が現れるメッシュ布帛であり、(g) 前記空隙14の面積(V)が前記単位区画の面積(4cm2 )に占める空隙占有面積比率(γ%=100×V/4cm2 )が20〜95%である点にある。
【0009】
本発明に係る表面材の第5の特徴は、上記第1、第2、第3および第4の何れかの特徴に加えて、(h) 前記多繊被覆糸条13が、前記軸糸11を前記多繊糸条が部分的に被覆しており、前記軸糸11が部分的に露出している部分被覆糸であり、(i) 前記軸糸11の表面積(T)に対して前記多繊糸条12が部分的に被覆して占める被覆面積(S)の被覆面積比率(δ%=100×S/T)が20〜80%である点にある。
【0010】
本発明に係る表面材の第6の特徴は、上記第1、第2、第3、第4および第5の何れかの特徴に加えて、(j) 前記軸糸を構成するモノフィラメントが芯鞘複合繊維であり、その芯成分の融点が鞘成分の融点よりも高く、鞘成分が熱融着性を有する点にある。
【0011】
本発明に係る表面材の第7の特徴は、上記第1、第2、第3、第4、第5および第6の何れかの特徴に加えて、(k) 前記織編布帛が、地糸15によって編成されるベース編地16のコース方向Cとウェール方向Wの何れか一方または双方にニットループとシンカーループを形成することなく前記多繊被覆糸条13が一直線状に編み込まれている緯糸挿入経編地、経糸挿入経編地、緯糸挿入緯編地、緯糸連鎖経編地(本発明では、これらの経編地を経・緯直線挿入編地と総称する。)の何れかの編地である点にある。
【0012】
本発明に係る表面材の第8の特徴は、上記第1、第2、第3、第4、第5および第6の何れかの特徴に加えて、(l) 前記織編布帛が、搦み織組織によって編成された搦み織物であり、その搦み織物の緯糸に前記多繊被覆糸条13が適用されている点にある。
【0013】
本発明に係る表面材の第9の特徴は、上記第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7および第8の何れかの特徴に加えて、(m) 前記軸糸11が、繊度500dtex以上のモノフィラメント単糸であり、(n) そのモノフィラメント単糸の引張強さが2cN/dtex以上であり、(o) 前記軸糸11が、織編工程における布帛の長さ方向(W)と幅方向(C)の何れか一方または双方の全長にわたって途切れることなく連続、又は、布帛の長さ方向(W)と幅方向(C)の何れか一方または双方の全長にわたって間欠的に途切れ途切れに連続しており、(p) その軸糸11の連続方向(C、W)における前記織編布帛の10%伸長時の応力が150(N/5cm)以上である点にある。
【0014】
本発明に係る表面材の第10の特徴は、上記第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8および第9の何れかの特徴に加えて、(q) 前記織編布帛に、見掛け太さが前記軸糸11よりも太く、表面が単繊維繊度20dtex以下の繊維によって構成されている嵩高糸17が織編込まれている点にある。
【0015】
本発明に係る表面材の第11の特徴は、上記第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9および第10の何れかの特徴に加えて、(r) 前記軸糸11が10%伸長後の弾性回復率が90%以上の弾性糸であり、(s) 前記単位区画内に複数本の軸糸11が軸芯の向きを同じ方向に向けて織編込まれており、(t) その軸芯の向きを同じ方向に向けて織編込まれている複数本の軸糸11の緊張度合いが異なる点にある。
【0016】
本発明に係る表面材の第12の特徴は、上記第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9、第10および第11の何れかの特徴に加えて、(r) 前記軸糸11が10%伸長後の弾性回復率が90%以上の弾性糸であり、(u) 前記単位区画内に前記軸糸11と、10%伸長後の弾性回復率が90%未満の非弾性糸条(17・22)が、軸芯の向きを同じ方向に向けて織編込まれており、(v) その軸芯の向きを同じ方向に向けて織編込まれている軸糸11が、10%伸長後の弾性回復率が90%未満の非弾性糸条(17・22)よりも緊張している点にある。
【0017】
本発明に係る表面材の第13の特徴は、上記第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9、第10、第11および第12の何れかの特徴に加えて、(w) 前記多繊糸条12が、(1) 紡績糸、マルチフイラメント糸、それらの糸条の周側面が起毛されて起毛毛羽が浮き出ている起毛糸、(2) 添糸が芯糸にリング状に絡み付いて周側面に浮き出た凹凸を形成しているリング糸、(3) 添糸が芯糸に紡績スライバー状に絡み付いて周側面に浮き出た凹凸を形成しているスラブ糸,(4) 添糸が芯糸に毛玉状に絡み付いて周側面に浮き出た凹凸を形成しているネップ糸、(5) 鞘糸が芯糸を捲撚被覆して周側面に浮き出ている芯鞘複合糸、(6) マルチフイラメント糸が高いオーバーフィード率をもって混繊され、そのオーバーフィード率が加撚後に残存し、その残存オーバーフィード率に応じて弛み出たフイラメント繊維が周側面に凹凸を形成しているインターレース糸、(7) 花糸片が芯糸に係止されてパイル状に周側面に突き出ているモール糸、(8) 繊維破片を芯糸に静電植毛したフロッキー加工糸、(9) 不織布、人工皮革、天然皮革を含む繊維質シートを裁断して成る紐糸、の何れかの糸条である点にある。
【0018】
本発明に係る表面材の第14の特徴は、上記第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9、第10、第11、第12および第13の何れかの特徴に加えて、(x) 前記多繊糸条12が、防滑剤、吸湿剤、保水剤、難燃剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、消臭剤、抗菌剤、防黴剤、防虫剤、芳香剤、帯電防止剤、光輝顔料、発光顔料、蓄光顔料、箔糸、吸湿性繊維、防滑性繊維、単繊維繊度0.5dtex以下の極細繊維の何れかを有する点にある。
【0019】
本発明に係る表面材の第15の特徴は、上記第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9、第10、第11、第12、第13および第14の何れかの特徴に加えて、(y) 前記軸糸が、ポリエーテルエステル系エラストマー弾性糸である点にある。
【発明の効果】
【0020】
本発明(請求項1)によると、軸糸11が繊度200dtex以上の表面が平滑な繊維によって構成されていても、その表面が繊維間に微細空隙があって吸湿し易く、表面に繊維間の微細凹凸があって防滑性を有する多繊糸条12に覆われているので、軸糸11が直接火気に触れることがなく、吸湿性と耐火性と防滑性を有し、肌触りのよい表面材が得られる。
又、単繊維繊度が200dtexを超える太いプラスチックモノフィラメントの染色捺染は、現実的に見て不可能であるが、単繊維繊度が20dtex以下で染色捺染が可能な繊維に被覆されている多繊被覆糸条ではそれが事実上可能となり、多彩な表面材が得られる。
【0021】
本発明(請求項2)によると、織編布帛が軸糸11の露出し易いメッシュ布帛であっても、その軸糸11を被覆する多繊糸条12に、起毛毛羽が浮き出た起毛糸、表面凹凸を有するリング糸、スラブ糸、ネップ糸、インターレース糸、パイルの突き出ているモール糸やフロッキー加工糸、表面毛羽の多い不織布、人工皮革、天然皮革等の裁断紐糸等を使用する場合、或いは、多繊糸条12がエチレン・酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン・アクリル酸メチル共重合樹脂、エチレン・アクリル酸共重合樹脂、エチレン・アクリル酸エチル共重合樹脂、エチレン・メタクリル酸メチル共重合樹脂、エチレン・メタクリル酸エチル共重合樹脂、エチレン・メタクリル酸メチル・アクリル酸共重合樹脂等の防滑性樹脂を有するものであれば、織編布帛10に占める多繊被覆糸条13の比率が少なくても、その少ない防滑性多繊被覆糸条13によって表面材10を滑り難くすることが出来る。
【0022】
本発明(請求項3)によると、織編布帛が軸糸11の露出し易いメッシュ布帛であっても、その織編布帛を構成する半数(50%)以上の軸糸11を、多繊糸条12、特に、軸糸11の成分ポリマーよりも融点の高い羊毛繊維や絹繊維等の天然繊維、棉繊維や麻繊維等のセルロース系繊維、好ましくは、金属箔糸、炭素繊維、黒鉛繊維、アラミ繊維、ガラス繊維、金属繊維、金属やセラミック等を練り込んだ耐炎性繊維に成る多繊糸条12、或いは、水酸化アルミニウム、ポリリン酸アンモニウム等の難燃剤によって処理された難燃性繊維に成る多繊糸条12によって被覆した多繊被覆糸条13とするときは、誤ってタバコを落としても、それが軸糸11に触れ難い。
又、織編布帛が軸糸11の露出し易いメッシュ布帛であっても、その織編布帛を構成する半数(50%)以上の軸糸11を、多繊糸条12、特に、単繊維繊度0.5dtex以下の極細繊維、麻繊維その他のセルロース系繊維、ヒドラジン系化合物によって架橋処理された吸湿性アクリル繊維、に成る多繊糸条12によって被覆した多繊被覆糸条13とするときは、それによって表面材全体に吸湿性を帯びて蒸れ感を与えない。
そして又、織編布帛が軸糸11の露出し易いメッシュ布帛であっても、その織編布帛を構成する半数(50%)以上の軸糸11を、多繊糸条12、特に、羊毛繊維や絹繊維等の天然繊維、セルロース系繊維、アクリル繊維、ポリエステル繊維、ナイロン等の染色性繊維に成る多繊糸条12によって被覆した多繊被覆糸条13とするときは、表面材10を染色捺染して多彩に彩ることが出来る。
このように本発明によると、防滑性だけではなく、耐タバコ火性、吸湿性、染色捺染性の点でも優れた表面材10が得られる。
【0023】
このため、本発明(請求項4)によると、メッシュ布帛の空隙14の面積(V)が表面材の総面積の20〜95%(γ%=20〜95)とすることによって、吸湿性、耐火性、防滑性、或いは、染色捺染性を有し、通気性に富み、夏季用身体支持装置に適した多彩な表面材10が得られる。
【0024】
本発明(請求項5)によると、軸糸11の表面を被覆している多繊糸条12の被覆面積比率(δ%=100×S/T)が20〜80%であり、多繊被覆糸条13の表面には平滑な軸糸11の表面(26)が所々に露出して煌き、遣り水を打ったかのように視覚的に清涼感を与える表面材10が得られる。
【0025】
本発明(請求項6)の表面材10では、軸糸11の表面が熱融着性ポリマーで構成されているので、多繊被覆糸条13或いは表面材10を加熱処理するときは、多繊糸条12が軸糸11の表面に接着固定され、その多繊糸条12が毛羽立つことがなく、耐摩耗性に優れた表面材10が得られる。
その多繊糸条12による被覆面積比率(δ%=100×S/T)を20〜80%にするときは、織編組織を構成して交絡する多繊被覆糸条相互間13・13や多繊被覆糸条13と他の糸条15・22の間が、その多繊被覆糸条13の露出面26の熱融着性ポリマーを介して接着され、織編組織が確りして安定した形態になる。
このため、表面材を、空隙14の面積(V)が総面積の20〜95%(γ%=20〜95)を占めるメッシュ布帛としても、その空隙14を縁取る織目や編目に目ズレ(組織崩れ)が発生せず、耐久性に富む夏季用身体支持装置に適した表面材10が得られる。
本発明によると、更に、抜触剤を印捺して軸糸11を被覆している多繊糸条12の一部の繊維を溶解除去して表面材10の全面に多繊糸条12の有無による凹凸模様を描出することが出来、そのとき抜触剤に溶解されずに残って凸部を形成する多繊糸条12の破断片が極微細なものであっても、それを熱融着性ポリマーを介して軸糸11の表面に接着固定することが出来、その微細な破断片が脱落することがなく、従って、凹凸模様を先鋭に描出することが出来、立体的で多彩な表面材10が得られる。
多繊糸条12の毛羽立ちを抑えて耐摩耗性を高めるために、多繊糸条12に熱融着性繊維を混用することも出来るが、熱融着性繊維の混用率が多いと、多繊糸条12の繊維間が融着して微細空隙が塞がれ、繊維間の微細空隙や微細凹凸によって平滑表面の軸糸11に吸湿性や防滑性を付与しようとする本発明所期の効果が損なわれる。従って、多繊糸条12に熱融着性繊維を混用するとしても、その混用率は20〜30%を限度する。
【0026】
本発明(請求項7・8)によると、表面材10を経・緯直線挿入編地や搦み織物とすると、その織編み込まれる多繊被覆糸条13が、その軸糸11の単繊維繊度が200dtex以上であって剛直で太く、表面材10は、その織編み込まれて直線状に連続する方向に伸び難くなる。
そのため、その連続方向を身体支持装置の支桿と支桿が向き合う方向に向け、その向き合う支桿と支桿に表面材の両端縁を固定して、身体支持装置品に張設した表面材10に身体を載せるとき、その作用する体重によって表面材10が大きく沈んで窪みに嵌まり込んだかのような底打感を与えることはない。
【0027】
本発明(請求項9)によると、軸糸11が、繊度500dtex以上のモノフィラメント単糸であり、そのモノフィラメント単糸(11)の引張強さが2cN/dtex以上であり、多繊被覆糸条13を含む軸糸11が、織編工程における布帛の長さ方向(W)と幅方向(C)の何れか一方または双方の全長にわたって途切れることなく連続、又は、布帛の長さ方向(W)と幅方向(C)の何れか一方または双方の全長にわたって間欠的に途切れ途切れに連続しており、多繊被覆糸条13を含む軸糸11の連続方向(C、W)における織編布帛の10%伸長時の応力が150(N/5cm)以上であるため、籐を使用した身体支持装置品と同様に表面材の形状が安定した身体支持装置品が得られる。
【0028】
本発明(請求項10)によると、単繊維繊度200dtex以上のプラスチックモノフィラメントに成る剛直な線条の軸糸11によって表面が形成されていても、その一部に、見掛け太さが軸糸11よりも太く、表面が単繊維繊度20dtex以下の繊維によって構成されている嵩高糸17が織編込まれているので温和な感触を与え、又、織編布帛に占める多繊被覆糸条13の比率を少なくしても、多繊糸条12に代わって嵩高糸17が防滑効果を発揮し、所要の防滑性のある表面材が得られる。
又、そのように嵩高糸17の適用によって、織編布帛に占める多繊被覆糸条13の比率を少なくすることが出来るので、多繊被覆糸条13の占める比率に格別拘束されることなく織編布帛の自由な設計が可能になり、多様な表面材10が得られる。
【0029】
本発明(請求項11)によると、体重が作用して表面材が伸び、その体重の作用箇所が窪む(沈む)過程において、先ず、緊張状態にあった多繊被覆糸条13(軸糸11)が伸びて体重の作用箇所が若干窪み、次いで、弛緩状態にあった多繊被覆糸条13(軸糸11)が緊張状態になって体重の作用箇所が若干窪むと言うように、体重の作用箇所が経時的に段階的に窪んで止まる、と言うように、体重の作用箇所が経時的に段階的に徐々に窪み、瞬時急に沈むことはなく、底打感を与えず、心地よいクッション感を与える表面材10が得られる。
【0030】
同様に、表面材に織編込まれている多数の非弾性糸条17・22の緊張状態を規則的に個々に変える場合(請求項12)、体重が作用して表面材が伸び、その体重の作用箇所が窪む(沈む)過程において、先ず、緊張状態にあった非弾性糸条17・22が伸びて体重の作用箇所が若干窪み、次いで、弛緩状態にあった非弾性糸条17・22が緊張状態になって体重の作用箇所が若干窪む、と言うように、体重の作用箇所が経時的に段階的に徐々に窪み、瞬時急に沈むことはなく、底打感を与えず、心地よいクッション感を与える表面材10が得られる。
多繊被覆糸条13(軸糸11)を非弾性糸条17・22と共に軸芯の向きを同じ方向に向けて織編込む場合には、非弾性糸条17・22よりも多繊被覆糸条13(軸糸11)が織編布帛内部において緊張状態になるようにする。
即ち、多繊被覆糸条13(軸糸11)に比して非弾性糸条17・22を、織編布帛内部において、弛緩状態(弛んだ状態)にする。
非弾性糸条(17・22)によって、表面材の体重の作用箇所の窪み一定限度に止めるようにするためには、紡績糸ではなく繊維が長く連続したマルチフィラメント糸やモノフィラメント糸を非弾性糸条(17・22)に使用する。何故なら、短繊維の集合体である紡績糸では、張力の作用するとき繊維間にズレが生じて体重の作用箇所が更に窪み、その繊維間のズレによって弛み皺が表面材に発生するからである。
【0031】
本発明(請求項13)によると、多繊糸条12として使用される(1) 紡績糸、マルチフイラメント糸、それらの糸条の周側面が起毛されて起毛毛羽が浮き出ている起毛糸、(2) 添糸が芯糸にリング状に絡み付いて周側面に浮き出た凹凸を形成しているリング糸、(3) 添糸が芯糸に紡績スライバー状に絡み付いて周側面に浮き出た凹凸を形成しているスラブ糸、(4) 添糸が芯糸に毛玉状に絡み付いて周側面に浮き出た凹凸を形成しているネップ糸、(5) 鞘糸が芯糸を捲撚被覆して周側面に浮き出ている芯鞘複合糸、(6) マルチフイラメント糸が高いオーバーフィード率をもって混繊され、そのオーバーフィード率が加撚後に残存し、その残存オーバーフィード率に応じて弛み出たフイラメント繊維が周側面に凹凸を形成しているインターレース糸、(7) 花糸片が芯糸に係止されてパイル状に周側面に突き出ているモール糸、(8) 繊維破片を芯糸に静電植毛したフロッキー加工糸、および、(9) 不織布、人工皮革、天然皮革を含む繊維質シートを裁断して成る紐糸の表面には、単繊維繊度20dtex以下の繊維による細かい起伏があって温和な感触を与え、又、その細かい起伏によって多繊糸条12による防滑効果が高まり、その結果、織編布帛に占める多繊被覆糸条13の比率を少なくすることが出来るので、多繊被覆糸条13の占める比率に格別拘束されることなく織編布帛の自由な設計が可能になり、感触が柔らかく多様な表面材10を得ることが出来る。
これらの糸条は、多繊被覆糸条13の一部を構成する多繊糸条12としてではなく、軸糸11から独立した見掛け太さの太い嵩高糸17として、織編込むことも出来る。又、数種類の多繊被覆糸条13を用いるときは、その一部の多繊糸条12として、その被覆する軸糸11よりも繊度の太い糸条をもちいることも出来る。
【0032】
本発明(請求項14)によると、単繊維繊度が200dtexを超える太いプラスチックモノフィラメント(軸糸11)には後処理によって機能性を付与することは出来ないが、繊維間に微細な空隙のある多繊糸条12には、その繊維間に微細な空隙を埋め尽くすことなく、その構成する無数の繊維に細かく分散させて防滑剤、吸湿剤、保水剤、難燃剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、防止剤、光輝顔料、発光顔料、蓄光顔料、箔糸、吸湿性繊維、防滑性繊維、単繊維繊度0.5dtex以下の極細繊維等を担持させることが出来、そうすることによって、在来の蔦や籐その他の植物の葉茎に成る繊維質植物線条を使用しては得られなかった機能性に富み、デザイン的にも新規な表面材10が得られる。
そして、防滑剤、吸湿剤、保水剤、難燃剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、防止剤、光輝顔料、発光顔料、蓄光顔料等の機能性化合物を、バインダー樹脂と共に付与するとしても、それらが多繊糸条12の繊維間に微細な空隙に吸着保持され、その塗膜が剥離脱落することはない。
特に、フェノール系や硫黄系の紫外線吸収剤や酸化防止剤、および、ヒンダートアミン系光安定剤の適用によって、又、それらを担持する多繊糸条12に隠蔽されるので、それらの機能性化合物の軸糸11への練り込み紡糸が困難であっても、軸糸11の変色・褪色は防止され、耐光性に優れ、夏季用身体支持装置に適した表面材10が得られる。
【0033】
本発明(請求項15)によると、ポリエーテルエステル系エラストマー弾性糸がポリウレタン弾性糸(スパンデックス)その他の弾性糸に比して伸び難いので、底打ち感を与えず、非弾性繊維糸条と混用する場合でも、伸縮皺の発生しない表面材10が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明の表面材10は、(a) 単繊維繊度200dtex以上のプラスチックモノフィラメントに成る軸糸11が、布帛の縦横各2cmとなる寸法をもって規定される単位区画内(4cm2 )に現れる織編密度をもって織編込まれている織編布帛によって構成され、(b) その単位区画内に現れる少なくとも一部の軸糸11が、単繊維繊度20dtex以下の繊維によって表面が構成されている多繊糸条12によって被覆されており、(c) その軸糸11が多繊糸条12によって被覆されている多繊被覆糸条13が、前記単位区画内に露出していることを特徴とするものであるが、それが籐家具の表面材のように支桿と支桿の間に張設して使用し得るようにするためには、織編過程における長さ方向(W)と幅方向(C)の少なくとも何れか一方向における織編布帛の10%伸長時の応力が150(N/5cm)以上となる物性強度を当然に有するものでなければならない。
そのように、身体支持装置品として所要の物性強度は、織物では経糸密度や緯糸密度、編物ではウェール密度やコース密度、或いは、軸糸11を含む経糸や緯糸の繊度や素材繊維の種類等によって適宜設定される。
表面材には、その使用中に蒸れ感を与えない程度の通気性が要求され、織編布帛の織編密度は粗く、織物では概して経糸密度や緯糸密度を10本/cm以下に、編物では概してウェール密度を10ウェール/cm以下に、コース密度をコース/cm以下に設定するとよい。尚、織編布帛の10%伸長時の応力(単位:N/5cm)は、JIS−L−1096に規定される試験方法によって測定される。
【0035】
織編布帛を単位区画内に空隙14が現れるメッシュ布帛とする場合、単位区画内に露出して占める多繊被覆糸条13の露出面積(A)が、単位区画の面積(4cm2 )から空隙14の占める面積(V)を差し引いた繊維総面積(B=4cm2 −V)に占める多繊被覆糸条占有面積比率(α%=100×A/B)を20%以上にするとよい。
そうすると、織編布帛がメッシュ布帛であり、空隙14の占める面積(V)に相対して繊維の占める総面積(B)が少なくなる場合でも、その繊維の占める総面積(B)の20%以上(α%=100×A/B≧20)を多繊被覆糸条13が占めるので、その被覆する多繊糸条12によって齎される表面材の吸湿性、耐火性、防滑性、或いは、染色捺染性等の効果は損なわれず、夏季用身体支持装置品に適した表面材10が得られる。
【0036】
又、織編布帛を単位区画内に空隙14が現れるメッシュ布帛とする場合、多繊糸条12に被覆されていない非被覆軸糸11が単位区画内に露出して占める非被覆露出面積(C)が、前記単位区画内の繊維総面積(B=4cm2 −V)に占める非被覆軸糸占有面積比率(β%=100×C/B)を20%以下にするとよい。
そうすると、空隙14の占める面積(V)に相対して繊維の占める総面積(B)が少なく、而も、織編布帛に多繊糸条12に被覆されない軸糸11の状態の非被覆軸糸が使用される場合でも、織編布帛の表面の繊維が占める総面積(B)に対して非被覆軸糸11が占める非被覆露出面積(C)の比率(β%=100×C/B)を20%以下にすると、軸糸を被覆する多繊糸条12によって齎される表面材の吸湿性、耐火性、防滑性、或いは、染色捺染性等の効果は、非被覆軸糸11によって損なわれるようなことは起こらない。
即ち、多繊被覆糸条占有面積比率(α)が20%以上、非被覆軸糸占有面積比率(β)が20%以下となる範囲、つまり、非被覆軸糸11の占有面積が、非被覆軸糸11と多繊被覆糸条13の軸糸11と含む全ての軸糸11の占有面積の50%以下となる範囲において、非被覆軸糸11の使用が認められる。
【0037】
本発明において、「織編布帛」とは、織物と編物との双方を意味し、「織編」とは、織機による布帛の織成と編機による布帛の編成との双方を意味する。本発明において、単位区画内に露出して占める多繊被覆糸条13の露出面積(A)と単位区画の面積(4cm2 )から空隙14の占める面積(V)を差し引いた繊維総面積(B=4cm2 −V)との面積比率(α%=100×A/B)が20%以上であると言うことは、その比率(α)が20%未満となる織編布帛の残りの表面部分(100−α<80%)を、多繊被覆糸条以外の糸条15・23によって構成し得ることと、その比率(α)が100%となるように織編布帛の表面を多繊被覆糸条13によってだけで構成し得ることの双方を意味する。
即ち、本発明において「軸糸が織編込まれている」とは、多繊被覆糸条13を含む軸糸11だけを使用した織編布帛と、多繊被覆糸条13を含む軸糸11を一部使用した織編布帛との双方を意味する。ここに「織編布帛の表面」とは、身体支持装置品に取り付けられた状態において、身体支持装置品の外面に現れる織編布帛の表面を意味する。
又、多繊被覆糸条13の露出面積(A)、空隙14の占める面積(V)を差し引いた繊維総面積(B)、或いは、軸糸11が露出して占める非被覆露出面積(C)と言う「面積」とは、織編布帛を表す表面図に描かれる織編布帛を構成している繊維や糸条が、その表面図に占める面積を意味し、このことは、空隙14の面積(V)と言う「面積」の場合も同様である。
【0038】
本発明において、多繊被覆糸条占有面積比率(α)、非被覆軸糸占有面積比率(β)および空隙占有面積比率(γ)を規定する織編布帛の「単位区画」を縦横2cmの矩形区画として設定するのは、多繊被覆糸条13や非被覆軸糸11、或いは、空隙14が、織編布帛の全面に細かく均等に分布しているその分布の状態を規定するためである。従って、表面材10の品質の均一性を高める上では、その「単位区画」を縦横1cmの矩形区画(1cm2 )とし、その「単位区画(1cm2 )」において多繊被覆糸条占有面積比率(α)、非被覆軸糸占有面積比率(β)および空隙占有面積比率(γ)を設定することが望ましい。
尚、本発明において、その「単位区画」を縦横2cmの矩形区画と規定するのは、空隙14の輪郭や形状の種類によって描出されるメッシュ布帛の地模様のように、リピート(繰り返し単位寸法)が1cmを超える地模様や、開口内部寸法が1cmを超える空隙(14)のある織編布帛では、「単位区画」の縦横寸法を1cmとすると、織編密度や多繊被覆糸条占有面積比率(α)、非被覆軸糸占有面積比率(β)、空隙占有面積比率(γ)を特定する上で不都合が生じるためである。
【0039】
多繊被覆糸条占有面積比率(α)が20%以上、非被覆軸糸占有面積比率(β)が20%以下、或いは、空隙占有面積比率(γ)が20〜95%とは、織編布帛の何れの部分においても、即ち、織編布帛の任意の「単位区画」となる部分において計測しても、多繊被覆糸条占有面積比率(α)が20%以上、非被覆軸糸占有面積比率(β)が20%以下、或いは、空隙占有面積比率(γ)が20〜95%となることを意味する。しかし、このことは、織編布帛の何れの部分の多繊被覆糸条占有面積比率(α)、非被覆軸糸占有面積比率(β)および空隙占有面積比率(γ)が同じ値になることを意味せず、それらの計測部分相互間での比率の差異やバラツキは許容される。
【0040】
本発明において、単繊維繊度200dtex以上のプラスチックモノフィラメントに成る糸条を「軸糸」と表現しているが、その理由は、単繊維繊度200dtex以上のプラスチックモノフィラメントが、単繊維繊度20dtex以下の繊維によってマルチフィラメント糸や紡績糸等の一般糸条に比して極めて剛直で棒や軸桿状を成しているためであり、単繊維繊度200dtex以上のプラスチックモノフィラメントに成る糸条を「モノフィラメント糸」と表現しないのは、本発明における「軸糸」が、複数本のプラスチックモノフィラメントに成る糸条をも包含し、それが「モノフィラメント単糸」だけを意味するかの如き誤解を避けるためである。
【0041】
軸糸11としては単繊維繊度が200dtex以上のモノフィラメントが使用されるが、軸糸11は、その単繊維繊度が200dtex以上となる複数本のモノフィラメントによって構成されたものでもよい。しかし、空隙占有面積比率(γ)を多くして織編布帛の通気性を高めるうえでは、軸糸11を、複数本のモノフィラメントによって構成せず、繊度500dtex以上のモノフィラメント単糸によって構成することが望ましく、又、そのように軸糸11を繊度500dtex以上のモノフィラメント単糸とすることによって、相対的に嵩の低い多繊糸条によって軸糸11を被覆して多繊被覆糸条13の嵩を低くし、織編布帛の通気性を高めることが出来る。
その点では、多繊被覆糸条13に占める多繊糸条12の比率を30質量%未満にすることが望ましい。即ち、多繊糸条12の総繊度を、軸糸11の総繊度の60%以下にすること、好ましくは25%以下、更に好ましくは10%以下にする。
そのように多繊糸条12の使用比率を少なくすると、多繊被覆糸条13が必要以上に保水性ないし吸湿性を帯びず、雨水に濡れたときや水洗後の表面材10の乾きも早くなる点で好都合である。
【0042】
多繊糸条12や嵩高糸17には、単繊維繊度が20dtex以下のマルチフィラメント糸や紡績糸が使用されるが、その糸条の表面が単繊維繊度が20dtex以下の繊維によって構成されているものであれば、シェニール糸やパイル繊維を静電植毛したフロッキー糸、不織布や皮革(天然皮革、人工皮革)等の繊維質シートを細幅に裁断して成る紐糸等も使用することが出来る。
その場合、多繊糸条12や嵩高糸17を構成することになる繊維質シートは、少なくとも一部の素材として単繊維繊度20dtex以下の繊維が使用されているものとする。軸糸11の総繊度の25%以下となる少ない繊糸条12の使用比率をもって軸糸11を充分に被覆するには、その多繊糸条12に単繊維繊度0.5dtex未満の極細繊維を使用するとよい。
【0043】
多繊被覆糸条13は、回転するエアーボックスに軸糸11を通過させる過程において多繊糸条12をエアーボックスに供給し、多繊糸条12を軸糸11に絡み付かせて調製することが出来る。
図1に示す多繊被覆糸条13のように、軸糸11の表面積(T)に対して多繊糸条12が部分的に被覆して占める被覆面積(S)の被覆面積比率(δ%=100×S/T)を20〜80%にするには、多繊糸条12が巻き取られて回転するコーンの中空軸芯に軸糸11を通過させる過程において、そのコーンから多繊糸条12を軸糸11へと供給して巻き付かせるとよく、その際、コーンの回転速度と軸糸がコーンを通過する速度によって被覆面積比率(δ)を加減することが出来る。
図2に示す多繊被覆糸条13のように、結束糸18が巻き取られて回転するコーンの中空軸芯に軸糸11と多繊糸条12を引き揃えて通過させる過程において、そのコーンから結束糸18を軸糸11と多繊糸条12へと供給して巻き付かせ、結束糸18によって軸糸11と多繊糸条12を結束することも出来る。
多繊糸条12は、マルチフィラメント糸や紡績糸等の一般糸条のように一定の引張強度を有するものの他に、紡績カードから送り出されるスライバーのように短繊維が引き揃えられているだけで殆ど引張強度を有しないものであってもよい。
【0044】
表面材10に適用される緯糸挿入経編地については、特開平11−279907号公報や実開平3−29320号公報に記載されている。図4は、経編機によって編成されるベース編地16のコース方向Cに軸糸11と多繊被覆糸条13を緯糸として一直線状に挿入して成る緯糸挿入経編地(10)を図示し、図3は、その軸糸11や多繊被覆糸条13が編み込まれるベース編地16を図示している。
表面材10に適用される経糸挿入経編地についても、特開平11−279907号公報と実開平3−29320号公報に開示されている。経糸挿入経編地では、経編機によって編成されるベース編地のウェール方向(W)に経糸(11)を一直線状に挿入して編成される。
表面材10に適用される緯糸挿入緯編地については、特公昭58−7738号公報に記載されている。図6は、横編機によって編成されるベース編地16のコース方向Cに多繊被覆糸条13を緯糸として一直線状に挿入して成る緯糸挿入緯編地を図示し、図5は、その多繊被覆糸条13が編み込まれるベース編地16を図示している。
このように、表面材10に適用される経・緯直線挿入編地は、公知編地においてコース方向(C)やウェール方向(W)に多繊被覆糸条13を一直線状に挿入して編成することが出来る。
【0045】
本発明の表面材10にいて、糸条13(11)が「間欠的に途切れ途切れに連続」とは、図7に示す経編地のように、織編布帛の幅方向(コース方向C)に一定間隔で配置した糸条13を、左右幅方向(コース方向C)に振動しつつジグザグに織編布帛に織編み込み、その左右に振動して折り返される左右の折返点19と折返点20の間で糸条13が一直線状になっていることを意味する。
更に詳しく説明すると、図7において、地糸15が編成してウェール方向Wに真っ直ぐに続いて隣合う鎖編目列21と鎖編目列21を、幅方向(コース方向C)に振動しつつ編み込む挿入糸(13)によって連結して編成される経編地における挿入糸(13)が、「間欠的に途切れ途切れに連続している糸条」に該当する。
本発明では、その鎖編目列間21・21を連結する挿入糸に多繊被覆糸条13を適用することも出来る。その場合、鎖編目列21を構成する地糸15に多繊被覆糸条13を適用することは必ずしも必要とされない。
【0046】
本発明において、「軸糸が織編込まれている織編布帛」、或いは、「多繊被覆糸条の露出面積(A)の占有面積比率(α)が20%以上」とは、表面材10に軸糸11や多繊被覆糸条13の他の糸条を使用し得る余地があることを意味する。
具体的に言えば、経・緯直線挿入編地(図4、図6)におけるベース編地16を構成する地糸15、或いは、鎖編目列間を挿入糸で連結して成る経編地(図7)において鎖編目列21を構成する地糸15、又、多繊被覆糸条13を係止する搦み織物(図2)の芯経糸23aと搦み経糸23bのように織物の経糸と緯糸との一方に軸糸11や多繊被覆糸条13の他の糸条15・23を使用し得ることを意味する。
【0047】
更に、本発明において、「単位区画内に現れる少なくとも一部の軸糸が多繊糸条によって被覆」、或いは、「多繊被覆糸条の露出面積(A)の占有面積比率面積比率(α)が20%以上」とは、そのように経・緯直線挿入編地、経編地、および、織物に多繊被覆糸条13を適用するとしても、その多繊被覆糸条13の使用が予定される織編布帛の一部において多繊被覆糸条13ではなく、多繊被覆糸条(13)以外の糸条を使用し得ることをも意味する。
具体的に言えば、搦み織物(図2)の芯経糸23aと搦み経糸23bに軸糸11や多繊被覆糸条13とは異なる糸条を使用し、緯糸に多繊被覆糸条13を使用して搦み織物を織成する過程において順次緯糸を織り込む場合に、多繊被覆糸条13とそれ以外の糸条17を1本おきに交互に、或いは、その一方の糸条を数本織り込む毎に他方の糸条を織り込むと言うように交互に織り込むことも意味する。
このことは、編地の場合も同様であり、例えば、図1と図7に図示する編地のように、多繊被覆糸条13を順次編み込む場合に、多繊被覆糸条13の編み込みが予定される一部のコースにおいて、多繊被覆糸条13に代えて細糸22や嵩高糸17を編み込むことも出来る。
【0048】
このように多繊被覆糸条13と交互に織編込む「他の糸条」は、細糸22(図1)、嵩高糸17(図2)、或いは、非被覆軸糸11(図4)であってもよい。本発明において、非被覆軸糸11が単位区画内に露出して占める非被覆露出面積(C)の繊維総面積(B=4cm2 −V)に占める非被覆軸糸占有面積比率(β)を20%以下(β≦20%)とするのは、単位区画内において空隙14の占める面積(V)に相対して繊維の占める総面積(B)が少なくなる場合でも、その繊維の占める総面積(B)の20%以上(α%=100×A/B≧20)を多繊被覆糸条13が占める限り、単位区画内において多繊糸条12に被覆されない軸糸11が20%(β≦20%)程度露出しても、多繊糸条12によって織編布帛(10)に齎される吸湿性、耐火性、防滑性、染色・捺染性が然程損なわれないからである。
【0049】
本発明では、表面材の表面の繊維が占める総面積(B)に対して非被覆軸糸11が占める非被覆露出面積(C)の比率(β%=100×C/B)が20%となる程度の非被覆軸糸11の使用は許容され、又、繊維の占める総面積(B)に対して多繊被覆糸条13が占める多繊被覆糸条占有面積比率(α)を20%程度とし、非被覆軸糸11でも多繊被覆糸条13でもない他の一般糸条の使用が許容されるのは、商品としての織編布帛の織組織や編組織を軸糸11(非被覆軸糸と多繊被覆糸条)によって構成しようとする場合に、それ以外の一般糸条を使用することが必要となる場合が多く、軸糸11(非被覆軸糸と多繊被覆糸条)だけによっては需要に見合った商品設計をすることが難しくなるからである。
【0050】
特に、繊度や材質(繊維素材)等の仕様によって限定された数少ない数種類の軸糸11(非被覆軸糸と多繊被覆糸条)によって表面材を設計しようとする場合には、軸糸11(非被覆軸糸と多繊被覆糸条)の繊度や材質(繊維素材)等の仕様を補足するうえで、他の一般糸条の使用が必要となる。
図1に図示する平行に配列された緯糸13を地糸15の鎖編目列21で繋いだ緯糸連鎖経編地、図2に図示する搦み織物、図4に図示する緯糸挿入経編地、図6に図示する緯糸挿入緯編地等は、その好例である。
それらの表面材では、全面に配列された緯糸が織編布帛の主体を成し、地糸15(ベース編地16)や経糸23は、その緯糸として全面に配列された軸糸11(非被覆軸糸と多繊被覆糸条)の配列状態を保つ補助的手段を成している。
【0051】
即ち、それらの表面材では、その主体を成す軸糸11(非被覆軸糸と多繊被覆糸条)は、繊度が500dtex以上であって曲折し難く剛直な棒や軸桿の形態を成すとしても、それが曲折することなく一直線状に連続した剛直な棒や軸桿の状態で織編込まれる故に、織編布帛に容易に適用することが出来る。
しかし、それらの表面材のベース編地16や鎖編目列21は、地糸15が曲折したニードルループ24とシンカーループ25によって形成され、又、織物では、綜絖に曲折駆動されて開口を形成する経糸23によって緯糸(11・13)が係止されるので、それらの地糸15や経糸23には、単繊維繊度が200dtex未満の可撓な糸条が使用され、繊度が500dtex以上であって曲折し難く剛直な棒や軸桿の形態を成す軸糸11(非被覆軸糸と多繊被覆糸条)は使用し難い。
従って、織組織や編組織を形成し、軸糸(非被覆軸糸と多繊被覆糸条)の配列状態を保つ補助的手段として、単繊維繊度が20dtex以下の繊維になる可撓な糸条の使用が必要となる。
【0052】
又、繊度や材質(繊維素材)等の仕様によって限定された数少ない数種類の軸糸11(非被覆軸糸と多繊被覆糸条)によっては、需要に応じた表面材の緯糸密度を設定し得ない場合も生じ、軸糸11(非被覆軸糸と多繊被覆糸条)による表面材の物性品質を補完するうえで他の一般糸条(17、22)の使用が必要となる場合もある。
例えば、表面材の防滑性を確保するために、多繊被覆糸条よりも防滑性に優れたシェニール糸やテープ状に不織布や皮革等を裁断して得られる繊維質テープ糸等の嵩高糸17(図2)が必要とされ、又、表面材の10%伸長時の応力が必要以上に、例えば5000(N/5cm)以上になるときは、多繊被覆糸条よりも引張強度の一般糸条が疑似軸糸として必要とされる場合もある。
又、織編布帛の織編密度を粗く、織物では経糸密度と緯糸密度を10本/cm以下に、編物ではウェール密度を10ウェール/cm以下に、コース密度をコース/cm以下に設定するとしても、蔦、籐、藺草、芭蕉葉軸、サイザル麻葉軸、パイナップル葉軸その他の植物の葉茎に成る繊維質植物線条に似た繊度1000dtex以上の太い軸糸11を使用する場合には、表面材の通気性を確保するうえで、多繊被覆糸条13よりも繊度の細い細糸22(図1)の使用が必要となる場合もある。
このように多繊被覆糸条13と交互に織編込む「他の糸条」は、細糸22(図1)、嵩高糸17(図2)、或いは、非被覆軸糸11(図4)であってもよい。
更に、多繊被覆糸条13と交互に織編込む「他の糸条」は、単繊維繊度200dtex以上のプラスチックモノフィラメントに成る軸糸に、単繊維繊度20dtex以上の繊維によって表面が構成されている多繊糸条、或いは、不織布、人工皮革、天然皮革を含む繊維質シートを裁断して成る繊度200dtex以上の偏平断面のテープ状紐糸、繊度200dtex以上の偏平断面モノフィラメント糸(所謂テープヤーン)、繊度200dtex以上の偏平断面箔糸であってもよい。
【0053】
このように多繊被覆糸条13の補完手段として嵩高糸17や細糸22その他の一般糸条を適用する場合には、その多繊被覆糸条13との外観上の差異からしてストライプ(縞)模様が描出されるように、所要のリピート(繰り返し)をもって一般糸条(17、22)と多繊被覆糸条13、或いは、非被覆軸糸11を規則的に交互に織編込むことが推奨される。
軸糸11としては、ポリプロピレン繊維とポリエチレン繊維の他に、ナイロン、塩化ビニル繊維、ポリエーテルエステル繊維、トリメチレンテレフタレート繊維、トリブチレンテレフタレート繊維等の引張強度が2.0cN/dtex以上で弾性のある疎水性繊維を使用するとよい。
好ましい軸糸11は、特開平11−350297号公報、特開2000−160453号公報および特開2000−248450号公報に開示された高融点ポリエーテルエステル系エラストマーを芯成分とし、低融点ポリエーテルエステル系エラストマーを鞘成分とする熱融着性芯鞘複合ポリエーテルエステル系エラストマー弾性糸である。
しかし、ポリウレタン繊維(スパンデックス)は伸び易く、引張強度が2.0cN/dtex未満であり、それを軸糸に使用した織編布帛は、その上に肢体を載せると大きく沈み、肢体の支持状態が不安定になるので、軸糸11としては好ましくない。
【0054】
好ましい表面材は、使用時に支える体重によって適度に伸びてクッション感を与え、伸び率が小さく、底打感を与えず、使用後には収縮して原形を回復し、伸び皺が残らない織編布帛である。その点では、アクリル繊維やビニロン繊維等と同等の引張強度を有するポリエーテルエステル弾性繊維、特に、熱融着性ポリマーを鞘成分とする芯鞘複合ポリエーテルエステル弾性繊維を軸糸に使用することが望ましい。
その場合、多繊被覆糸条13は、多繊糸条12が軸糸11を部分的に被覆し、軸糸が部分的に露出し、軸糸の表面積(T)に対して多繊糸条12が部分的に被覆して占める被覆面積(S)の被覆面積比率(δ%=100×S/T)が20〜80%となる部分被覆糸(図1と図2)とし、その場合、軸糸11を繊度500dtex以上のモノフィラメント単糸とし、そのモノフィラメント単糸(11)の引張強さを2cN/dtex以上とし、それが織編工程における布帛の長さ方向(W)と幅方向(C)の何れか一方または双方の全長にわたって途切れることなく連続、又は、布帛の長さ方向(W)と幅方向(C)の何れか一方または双方の全長にわたって間欠的に途切れ途切れに連続し、その軸糸11の連続方向(C、W)における織編布帛の10%伸長時の応力が150(N/5cm)以上になるようにし、多繊糸条12に被覆されない軸糸11の露出面26において軸糸11が他の糸条15・23に接着させると、形状安定性に優れ、クッション性のある表面材10が得られる。
【0055】
表面材が使用時に作用する体重によって適度に伸びて程よいクッション感を与えるようにするためには、表面材を織物または経・緯直線挿入編地(緯糸挿入経編地、経糸挿入経編地、緯糸挿入緯編地、緯糸連鎖経編地)とし、一直線状に繰り返し順次織編み込まれる複数本の多繊被覆糸条13a,13b,13c,13d,13e/13a,13b,13c,13d,13e/13a,13b,13c,13d,13e/………………に作用する張力(テンション)を変え、織編された織編布帛の所定の領域(寸法)に織編み込まれている多繊被覆糸条13a,13b,13c,13d,13eの長さ(寸法)を変えるとよい。
言い換えれば、織編布帛の所定の領域(寸法)に織編み込まれている多繊被覆糸条13a,13b,13c,13d,13eの弛緩の度合いを変えると言うことである。
具体的に言えば、織編布帛の所定の領域(寸法)に織編み込まれている多繊被覆糸条13aと13bの長さをAcmとするとき、多繊被覆糸条13cと13dの長さが(A−ε)cmに、多繊被覆糸条13eの長さが(A−2ε)cmになると言うようにする。
【0056】
つまり、織編布帛の所定の領域(寸法)において、多繊被覆糸条13eは緊張状態にあり、多繊被覆糸条13cと13dは稍々緊張状態にあり、多繊被覆糸条13aと13bは弛緩状態にあると言うように弛緩の度合いを変える。
そうすると、体重が作用して表面材が伸び、その体重の作用箇所が窪む(沈む)過程において、先ず、緊張状態にあった多繊被覆糸条13eが伸びて体重の作用箇所が若干窪み、次いで、稍々緊張状態にあった多繊被覆糸条13cと13dが緊張状態になって伸び、体重の作用箇所が更に窪み、次いで、弛緩状態にあった多繊被覆糸条13aと13bが緊張状態になって伸び、体重の作用箇所が更に窪むい言うように、経時的に段階的に複数本の多繊被覆糸条13a,13b,13c,13d,13eが順次伸び、体重の作用箇所が瞬時急激に沈んで底打感を与えるようなことはなく、体重の作用箇所が経時的に段階的に徐々に窪むことになるので、心地よいクッション感を与える。
【0057】
そのためには、軸糸11には10%伸長後の弾性回復率が95%以上で略100%となる弾性糸を使用すること、特に、緊張状態にあって最も伸長されることになる多繊被覆糸条13eの軸糸11には、織編過程で伸長され、織編後に織編布帛内で緊張状態におかれる弾性糸、更に好ましくは、織編後に織編布帛を加熱して一層強い緊張状態におくことの出来る熱収縮性弾性糸を使用することが望まれる。
しかし、弛緩状態にあって格別大きく伸長されることにはならない多繊被覆糸条13aと13bの軸糸11には、緊張状態にあって最も伸長されることになる多繊被覆糸条13eの軸糸11に比して引張強度が大きく伸び難い糸条を使用することが望まれる。
又、特に、緊張状態にあって最も伸長されることになる多繊被覆糸条13eの軸糸11では、その軸糸11の伸縮性を妨げることがないようにする上でも、多繊被覆糸条13に占める多繊糸条12の比率を30質量%未満にすることが望ましい。
即ち、多繊糸条12の総繊度を、軸糸11の総繊度の60%以下にすること、好ましくは25%以下、更に好ましくは10%以下にする。
【0058】
表面材は、大きく窪むことがないように身体支持装置品の支桿と支桿の間に充分に緊張して張設されており、体重が作用して窪む(沈む)としても、多繊被覆糸条13が大きく伸びることはなく、その伸び率は5%未満である。
従って、一直線状に繰り返し順次織編み込まれる複数本の多繊被覆糸条13a,13b,13c,13d,13eの長さ(寸法)を変えるとしても、それらの長さの差(φ%=100×ε/A)は、5%未満で概して3%前後となる程度であってもよい。
【0059】
図1、図2および図3に図示する織物や経・緯直線挿入編地のように、多繊被覆糸条13の他に軸糸11や嵩高条17、細糸22その他の単繊維繊度が200dtex未満の繊維になる可撓な一般糸条を一直線状に繰り返し順次織編み込む場合には、その一般糸条17の長さをAcmとするとき、他の一般糸条22の長さが(A−ε)cmに、軸糸11と多繊被覆糸条13の長さが(A−2ε)cmになると言うようにする。
即ち、織編布帛の所定の領域(寸法)において、軸糸11と多繊被覆糸条13は緊張状態にあり、一般糸条22は稍々緊張状態にあり、他の一般糸条17は弛緩状態にあると言うように弛緩の度合いを変える。従って、本発明を効果的に実施する上では、それぞれ織編布帛内において軸芯を同じ方向に向けられることになる軸糸(11・13)や一般糸条(17・22)には少なくとも伸縮弾性と熱収縮性との何れかにおいて異なる数種類の糸条を用い、織編後の織編布帛内において緊張と弛緩の度合いが異なる数種類の糸条が、それらの軸芯を同じ方向に向けて介在するようにする。
更に好ましくは、織編後の織編布帛内において緊張状態におかれる度合いに応じて、伸縮弾性と熱収縮性の双方において異なる数種類の糸条を軸糸11に用いる。
【0060】
軸糸11(多繊被覆糸条13)には弾性糸を使用し、一般糸条17・22には非弾性糸、特に、非弾性捲縮繊維に成る紡績糸やマルチフィラメント糸、好ましくは、マルチフィラメント捲縮加工糸を使用するとよい。織編過程に受けるテンションによって生じた伸長歪みが織編後に弾性的に解消して収縮する弾性軸糸11(多繊被覆糸条13)に相対して織編過程において格別伸長されることがない一般糸条17・22に弛みが生じるからである。
その場合、一般糸条17・22の総繊度(所謂トータルデニール)を弾性軸糸11(多繊被覆糸条13)よりも太くし、体重が作用して表面材が伸び、その体重の作用箇所が窪む(沈む)過程において、先ず、緊張状態にあった弾性軸糸11(多繊被覆糸条13)が伸び、次いで、何れかの一般糸条17が伸び、最も弛緩状態にあった他の一般糸条22が緊張状態になって弾性軸糸11(多繊被覆糸条13)の伸びを抑え、必要以上に体重の作用箇所が窪まないようにする。
【0061】
多繊糸条12には、水酸化アルミニウム、ポリリン酸アンモニウムその他の難燃剤、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン・アクリル酸メチル共重合樹脂、エチレン・アクリル酸共重合樹脂、エチレン・アクリル酸エチル共重合樹脂、エチレン・メタクリル酸メチル共重合樹脂、エチレン・メタクリル酸エチル共重合樹脂、エチレン・メタクリル酸メチル・アクリル酸共重合樹脂等の防滑性樹脂を主材とする防滑剤、ゼラチン、パルプ、木粉、セルロース系粉末その他の保水剤、シリカゲルその他の吸湿剤、活性炭、含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物、アミドホスファゼン化合物、ヒドラジド化合物、亜鉛化合物、金属フタロシアニンその他の消臭剤、キトサン、亜鉛合金、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼントニウム、2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテル、ポリリジン化合物その他の抗菌剤乃至防黴剤、ピレスロイド、イソシンコメロン酸ジノルマルプロピル、2−ハイドロキシエチルオクチルサルファイド、ジエチルトルアミド、フタル酸ジメチル、イソプロピル−2−[エトキシ(イソプロピルアミノ)チオホスホリルオキシ]ベンゾアート、その他の防虫剤、天然香料、ジフェニルオキサイド、ジャスモン、ヘリオトロピン、バニリン、クマリンその他の芳香剤、パール顔料、金属粉、雲母、箔粉、ガラスビーズその他の光輝顔料、発光顔料、蓄光顔料、金属箔、金属蒸着フイルム、ホトグラフィックフイルム等の光輝性シートを粉砕した光輝性グリッター、帯電防止剤等の機能性物質が付与される。
【0062】
多繊糸条12には、単繊維繊度0.5dtex以下の極細繊維、金属箔、金属蒸着フイルム、ホトグラフィックフイルム等の光輝性シートを裁断した箔糸、セルロース系繊維、ヒドラジン系化合物によって架橋処理された吸湿性アクリル繊維、炭素繊維、黒鉛繊維、アラミ繊維、ガラス繊維等の耐炎性繊維、麻繊維や金属繊維、金属やセラミック等の熱伝導性粉末を練り込んだ高熱伝導性繊維等の機能性繊維を混用するとよい。
【0063】
本発明は、蔦、籐、藺草、芭蕉葉軸、サイザル麻葉軸、パイナップル葉軸その他の植物の葉茎に成る繊維質植物線条に代えてプラスチックモノフィラメント糸を使用しようとするものであり、軸糸11としては、円形断面形状のものではなく、それらの繊維質植物線条に似た偏平円形断面形状を成し、繊度1000dtexを超える太手のモノフィラメントが好んで使用される。
そのように繊度1000dtexを超える太手の偏平モノフィラメントの表面は平滑であるが、本発明では、軸糸11に多繊糸条12を適用することとしたので、籐等の植物線条に成る表面材と同等の防滑性や耐火性、吸湿性、耐光性等の機能性を具備し、耐久性に優れた表面材を得ることが出来る。
特に、繊度2000dtexを超える軸糸11を使用する場合には、それを緯糸に使用し、緯糸挿入経編地(図1,図4)、緯糸挿入緯編地(図2)、或いは、搦み織物(図1)として、表面材10を構成するとよい。
【0064】
かくして本発明によると、通気性を有し、蒸れ感を与えないと言うだけではなく、適度の吸湿性を有し、素肌に馴染み易く、肌触りがよく、タバコの火に触れて直に溶融破断しない程度の耐火性を有し、防滑性を有し、滑り難く、使用時において肢体が安定し、疲労感を与えず、染色・捺染性があって多彩に仕上げることが出来、消臭性、抗菌性、防黴性、防虫性、芳香性、帯電防止、光輝性、発光・蓄光性等々の機能性に富み、デザイン的にも新規で、特に、夏季用支持装置品の表面材に最適の織編布帛が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明に係る表面材の拡大表面図である。
【図2】本発明に係る表面材の拡大表面図である。
【図3】本発明に係る表面材のベース編地の拡大表面図である。
【図4】本発明に係る表面材の拡大表面図である。
【図5】本発明に係る表面材のベース編地の拡大表面図である。
【図6】本発明に係る表面材の拡大表面図である。
【図7】本発明に係る表面材の拡大表面図である。
【符号の説明】
【0066】
10:表面材
11:軸糸(非被覆軸糸・緯糸)
12:多繊糸条
13:多繊被覆糸条(緯糸)
14:空隙
15:地糸(糸条)
16:ベース編地
17:嵩高糸(緯糸)
18:結束糸
19・20:折返点
21:鎖編目列
22:細糸(緯糸)
23:織物の経糸(糸条)
24:ニードルループ
25:シンカーループ
26:露出面
C:コース方向(幅方向)
W:ウェール方向(長さ方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 単繊維繊度200dtex以上のプラスチックモノフィラメントに成る軸糸(11)が、布帛の縦横各2cmとなる寸法をもって規定される単位区画内(4cm2 )に現れる織編密度をもって織編込まれている織編布帛によって構成され、
(b) その単位区画内に現れる少なくとも一部の軸糸が、単繊維繊度20dtex以下の繊維によって表面が構成されている多繊糸条(12)によって被覆されており、
(c) その軸糸(11)が多繊糸条(12)によって被覆されている多繊被覆糸条(13)が、前記単位区画内に露出していることを特徴とする身体支持装置品表面材。
【請求項2】
(d) 前記織編布帛が、前記単位区画内に空隙(14)が現れるメッシュ布帛であり、
(e) その単位区画内に複数本の軸糸(11)が織編込まれており、その複数本の中の10%以上の本数の軸糸(11)が、単繊維繊度20dtex以下の繊維によって表面が構成されている多繊糸条(12)によって被覆されている前掲請求項1に記載の身体支持装置品表面材。
【請求項3】
(d) 前記織編布帛が、前記単位区画内に空隙(14)が現れるメッシュ布帛であり、
(f) その単位区画内に複数本の軸糸(11)が織編込まれており、その複数本の中の50%以上の本数の軸糸(11)が、単繊維繊度20dtex以下の繊維によって表面が構成されている多繊糸条(12)によって被覆されている前掲請求項1に記載の身体支持装置品表面材。
【請求項4】
(d) 前記織編布帛が、前記単位区画内に空隙(14)が現れるメッシュ布帛であり、
(g) 前記空隙(14)の面積(V)が前記単位区画の面積(4cm2 )に占める空隙占有面積比率(γ%=100×V/4cm2 )が20〜95%である前掲請求項1と請求項2と請求項3の何れかに記載の身体支持装置品表面材。
【請求項5】
(h) 前記多繊被覆糸条(13)が、前記軸糸(11)を前記多繊糸条が部分的に被覆しており、その軸糸(11)が部分的に露出している部分被覆糸であり、
(i) その軸糸(11)の表面積(T)に対して多繊糸条(12)が部分的に被覆して占める被覆面積(S)の被覆面積比率(δ%=100×S/T)が20〜80%である前掲請求項1と請求項2と請求項3と請求項4の何れかに記載の身体支持装置品表面材。
【請求項6】
(j) 前記軸糸を構成するモノフィラメントが芯鞘複合繊維であり、その芯成分の融点が鞘成分の融点よりも高く、鞘成分が熱融着性を有する前掲請求項1と請求項2と請求項3と請求項4と請求項5の何れかに記載の身体支持装置品表面材。
【請求項7】
(k) 前記織編布帛が、地糸(15)によって編成されるベース編地(16)のコース方向(C)とウェール方向(W)の何れか一方または双方にニットループとシンカーループを形成することなく前記多繊被覆糸条(13)が一直線状に編み込まれている経・緯直線挿入編地である前掲請求項1と請求項2と請求項3と請求項4と請求項5と請求項6の何れかに記載の身体支持装置品表面材。
【請求項8】
(l) 前記織編布帛が、搦み織組織によって編成された搦み織物であり、その搦み織物の緯糸に前記多繊被覆糸条が適用されている前掲請求項1と請求項2と請求項3と請求項4と請求項5と請求項6の何れかに記載の身体支持装置品表面材。
【請求項9】
(m) 前記軸糸(11)が、繊度500dtex以上のモノフィラメント単糸であり、
(n) そのモノフィラメント単糸の引張強さが2cN/dtex以上であり、
(o) 前記軸糸(11)が、織編工程における布帛の長さ方向(W)と幅方向(C)の何れか一方または双方の全長にわたって途切れることなく連続、又は、布帛の長さ方向(W)と幅方向(C)の何れか一方または双方の全長にわたって間欠的に途切れ途切れに連続しており、
(p) その軸糸(11)の連続方向(C、W)における前記織編布帛の10%伸長時の応力が150(N/5cm)以上である前掲請求項1と請求項2と請求項3と請求項4と請求項5と請求項6と請求項7と請求項8の何れかに記載の身体支持装置品表面材。
【請求項10】
(q) 前記織編布帛に、見掛け太さが前記軸糸(11)よりも太く、表面が単繊維繊度20dtex以下の繊維によって構成されている嵩高糸(17)が織編込まれている前掲請求項1と請求項2と請求項3と請求項4と請求項5と請求項6と請求項7と請求項8と請求項9の何れかに記載の身体支持装置品表面材。
【請求項11】
(r) 前記軸糸(11)が10%伸長後の弾性回復率が90%以上の弾性糸であり、
(s) 前記単位区画内に複数本の軸糸(11)が軸芯の向きを同じ方向に向けて織編込まれており、
(t) その軸芯の向きを同じ方向に向けて織編込まれている複数本の軸糸(11)の緊張度合いが異なる前掲請求項1と請求項2と請求項3と請求項4と請求項5と請求項6と請求項7と請求項8と請求項9と請求項10の何れかに記載の身体支持装置品表面材。
【請求項12】
(r) 前記軸糸(11)が10%伸長後の弾性回復率が90%以上の弾性糸であり、
(u) 前記単位区画内に前記軸糸(11)と、10%伸長後の弾性回復率が90%未満の非弾性糸条(17・22)が、軸芯の向きを同じ方向に向けて織編込まれており、
(v) その軸芯の向きを同じ方向に向けて織編込まれている軸糸(11)が、10%伸長後の弾性回復率が90%未満の非弾性糸条(17・22)よりも緊張している前掲請求項1と請求項2と請求項3と請求項4と請求項5と請求項6と請求項7と請求項8と請求項9と請求項10と請求項11の何れかに記載の身体支持装置品表面材。
【請求項13】
(w) 前記多繊糸条(12)が、次の何れかの糸条である前掲請求項1と請求項2と請求項3と請求項4と請求項5と請求項6と請求項7と請求項8と請求項9と請求項10と請求項11と請求項12の何れかに記載の身体支持装置品表面材。
(1) 紡績糸、マルチフイラメント糸、それらの糸条の周側面が起毛されて起毛毛羽が浮き出ている起毛糸、
(2) 添糸が芯糸にリング状に絡み付いて周側面に浮き出た凹凸を形成しているリング糸、
(3) 添糸が芯糸に紡績スライバー状に絡み付いて周側面に浮き出た凹凸を形成しているスラブ糸、
(4) 添糸が芯糸に毛玉状に絡み付いて周側面に浮き出た凹凸を形成しているネップ糸、
(5) 鞘糸が芯糸を捲撚被覆して周側面に浮き出ている芯鞘複合糸、
(6) マルチフイラメント糸が高いオーバーフィード率をもって混繊され、そのオーバーフィード率が加撚後に残存し、その残存オーバーフィード率に応じて弛み出たフイラメント繊維が周側面に凹凸を形成しているインターレース糸、
(7) 花糸片が芯糸に係止されてパイル状に周側面に突き出ているモール糸、
(8) 繊維破片を芯糸に静電植毛したフロッキー加工糸、
(9) 不織布、人工皮革、天然皮革を含む繊維質シートを裁断して成る紐糸。
【請求項14】
(x) 前記多繊糸条(12)が、防滑剤、吸湿剤、保水剤、難燃剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、消臭剤、抗菌剤、防黴剤、防虫剤、芳香剤、帯電防止剤、光輝顔料、発光顔料、蓄光顔料、箔糸、吸湿性繊維、防滑性繊維、単繊維繊度0.5dtex以下の極細繊維の何れかを有する前掲請求項1と請求項2と請求項3と請求項4と請求項5と請求項6と請求項7と請求項8と請求項9と請求項10と請求項11と請求項12と請求項13の何れかに記載の身体支持装置品表面材。
【請求項15】
(y) 前記軸糸(11)が、ポリエーテルエステル系エラストマー弾性糸である前掲請求項1と請求項2と請求項3と請求項4と請求項5と請求項6と請求項7と請求項8と請求項9と請求項10と請求項11と請求項12と請求項13と請求項14の何れかに記載の身体支持装置品表面材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−265746(P2006−265746A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−81655(P2005−81655)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【出願人】(399024922)
【Fターム(参考)】