説明

身体洗浄剤用添加剤および身体洗浄剤

【課題】 汚れの分散性に優れ、かつ、高いCaイオン捕捉能を有し、分散剤としてもキレート剤としても機能することのできる身体洗浄剤用途に最適な添加剤を見出す。また、このような添加剤を見出すことで、硬水下であっても豊かに泡立ち、洗浄性に優れた身体洗浄剤を提供する。
【解決手段】 本発明の身体洗浄剤用添加剤は、不飽和モノカルボン酸(塩)単量体由来の構成単位(a)と、不飽和ジカルボン酸(塩)単量体由来の構成単位(b)とを有する重量平均分子量が3000〜30000のカルボン酸系共重合体であり、かつ、このカルボン酸系共重合体のCaイオン捕捉能が300mgCaCO3/g以上であるところに特徴を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャンプー、ボディソープ、ハンドソープ、石鹸等の身体洗浄剤のための添加剤であって、水中に含まれるCaイオンを捕捉し、かつ、汚れの分散性にも優れた身体洗浄剤用添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
身体洗浄剤には、水中のCaイオンを捕捉するためにキレート剤が添加されることが多い。水中のCaイオンは洗浄成分である界面活性剤と結合して水に溶けないCa塩化合物を生成し、洗浄時や洗浄後の髪のきしみや肌のごわつき感の原因となって髪や肌を痛める上に、キレート化した界面活性剤は泡立ち作用や洗浄作用が低下してしまうため、界面活性剤とCaイオンとが結合するのを防ぐことのできるキレート剤を添加するのである。
【0003】
従来から、キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびその塩がよく用いられているが、このEDTAはCaイオンを捕捉する能力を有するにとどまり、汚れを落とす洗浄効果そのものや、落とした汚れを分散させて再付着を防止する効果はもちろん有していない。また、EDTAのような低分子キレート剤の中には、毒性の点で懸念される化合物もある。
【0004】
ところで、身体洗浄剤には、界面活性剤で包まれた汚れ成分を水中に安定に分散させることで再付着を防止し、汚れ成分を水と共に洗い流す役割を担う分散剤が配合されている。例えば、特許文献1には、アクリル酸と2−メタクリルアミド−2−プロパンスルホン酸からなる重合体のようなアニオン性分散剤を用いるシャンプー組成物が開示されている。この特許文献1では、さらに、キレート剤として、EDTA−ナトリウム塩等を加えている。
【特許文献1】特開2001−106616号公報(たとえば[0040]、[0045]等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術では、分散剤とキレート剤とを別々に添加しているが、もし、分散剤としてもキレート剤としても機能し得る添加剤を見出すことができれば、配合工程が1工程で済み、また原料低減という点でも低コスト化につながり好ましい。そこで、本発明では、汚れの分散性に優れ、かつ、高いCaイオン捕捉能を有し、分散剤としてもキレート剤としても機能することのできる身体洗浄剤用途に最適な添加剤を見出すことを課題として掲げた。また、このような添加剤を見出すことで、硬水下であっても豊かに泡立ち、洗浄性に優れた身体洗浄剤を提供することも課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の身体洗浄剤用添加剤は、不飽和モノカルボン酸(塩またはその塩の意味:以下同じ)単量体由来の構成単位(a)と、不飽和ジカルボン酸(塩)単量体由来の構成単位(b)とを有する重量平均分子量が3000〜30000のカルボン酸系共重合体であり、かつ、このカルボン酸系共重合体のCaイオン捕捉能が300mgCaCO3/g以上であるところに特徴を有する。
【0007】
上記カルボン酸系共重合体中の構成単位100モル%中、上記構成単位(a)と上記構成単位(b)との合計は80モル%以上であることが好ましく、上記構成単位(a)と上記構成単位(b)との合計を100モル%としたときには、上記構成単位(b)が25〜60モル%であることが好ましい。また、添加剤が、不飽和モノカルボン酸(塩)単量体がアクリル酸であり、不飽和ジカルボン酸(塩)単量体がマレイン酸である共重合体であることは、本発明の最も好ましい実施態様である。なお、本発明には、上記身体洗浄剤用添加剤を含む身体洗浄剤も包含される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の上記カルボン酸系共重合体は、身体洗浄剤における分散剤としても、また、Caイオン捕捉剤としても、良好な性能を発揮する。よって、汚れ成分を髪や肌に再付着させることなく、優れた洗浄力を発揮し、泡立ち性がよく、髪のきしみや肌のごわつき感のない身体洗浄剤を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の身体洗浄剤用添加剤はカルボン酸系共重合体であって、不飽和モノカルボン酸(塩)単量体由来の構成単位(a)と不飽和ジカルボン酸(塩)単量体由来の構成単位(b)とを主たる構成単位とする共重合体である。このカルボン酸系共重合体は、不飽和モノカルボン酸(塩)単量体由来の構成単位(a)と不飽和ジカルボン酸(塩)単量体由来の構成単位(b)とが、共重合体の全構成単位100モル%中、合計で80モル%以上であることが好ましい。両者の合計量が80モル%より少ないと、カルボン酸系共重合体中におけるカルボキシル基の量が少なくなって、Caイオン捕捉能が300mgCaCO3/g以上とならないおそれがある。構成単位(a)と構成単位(b)との合計量は多い方が好ましく、より好ましい下限は90モル%であり、最も好ましいのは、構成単位(a)と(b)のみからなる共重合体である。
【0010】
本発明でいう不飽和モノカルボン酸(塩)単量体とは、1分子中にエチレン性二重結合(不飽和結合)を1つとカルボキシル基を1つ有するカルボン酸またはその塩を意味する。アクリル酸、メタクリル酸、α−ヒドロキシアクリル酸が好適例として挙げられ、2種以上を混合して用いてもよい。これらの中では、アクリル酸が最も好ましい。
【0011】
本発明でいう不飽和ジカルボン酸(塩)単量体とは、1分子中にエチレン性二重結合(不飽和結合)を1つとカルボキシル基を2つ有するカルボン酸またはその塩であり、無水物であってもよい。具体的には、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸等が挙げられ、2種以上を併用することができる。これらの中では、マレイン酸が最も好ましい。
【0012】
上記カルボン酸系共重合体においては、カルボキシル基はフリーであっても、塩となっていてもよい。カルボキシル基の一部が塩となっている部分塩型でも、全てが塩型でもよいが、本発明の添加剤のCaイオン捕捉能の重要性を考慮すると、CaやMgの塩とするのは好ましくない。よって、塩を形成するのであれば、Na、K等のアルカリ金属を含む化合物、アンモニア、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン等で塩を形成することが好ましい。なお、塩形成は、重合の前、重合中、重合後のいずれの時点で行ってもよい。
【0013】
カルボン酸系共重合体においては、不飽和モノカルボン酸(塩)単量体由来の構成単位(a)と不飽和ジカルボン酸(塩)単量体由来の構成単位(b)との合計量を100モル%としたとき、不飽和ジカルボン酸(塩)単量体由来の構成単位(b)が25〜60モル%であることが好ましい。不飽和ジカルボン酸(塩)単量体由来の構成単位(b)が多い方が、カルボン酸系共重合体単位質量当たりのカルボキシル基量を多くすることができ、Caイオン捕捉能も向上するが、不飽和ジカルボン酸(塩)単量体は重合しにくいため、後述する好適な分子量のカルボン酸系共重合体を得るには、上記範囲に調整することが望ましいのである。より好ましい下限は30モル%、さらに好ましい下限は40モル%であり、より好ましい上限は55モル%である。そして、不飽和モノカルボン酸(塩)単量体由来の構成単位(a)は、上記合計100モル%中、40〜75モル%が好ましい範囲となる。より好ましい下限は45モル%であり、より好ましい上限は70モル%であり、更に好ましい上限は60モル%である。
【0014】
本発明のカルボン酸系共重合体中の構成単位(a)および(b)の量を上記範囲に設定するには、共重合体を合成するときの原料混合物100モル%中、上記不飽和モノカルボン酸(塩)単量体と不飽和ジカルボン酸(塩)単量体の合計量が80モル%以上になるように調整し、かつ、不飽和モノカルボン酸(塩)単量体と不飽和ジカルボン酸(塩)単量体の合計量100モル%中不飽和ジカルボン酸(塩)単量体を25〜60モル%に調整すればよい。
【0015】
また、本発明のカルボン酸系共重合体を合成するときの原料混合物100モル%中、0〜20モル%であれば、不飽和モノカルボン酸(塩)単量体および/または不飽和ジカルボン酸(塩)単量体と共重合可能な他の単量体を使用してもよい。このような他の単量体としては、以下の単量体類が挙げられる。
【0016】
スチレン;スチレンスルホン酸;酢酸ビニル;(メタ)アクリロニトリル;(メタ)アクリルアミド;メチル(メタ)アクリレート;エチル(メタ)アクリレート;ブチル(メタ)アクリレート;2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート;ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート;アリルアルコール;3−メチル−3−ブテン−1−オール;3−メチル−2−ブテン−1−オール;2−メチル−3−ブテン−2−オール;3−(メタ)アクリロキシ−1,2−ジヒドロキシプロパン;3−(メタ)アクリロキシ−1,2−ジ(ポリ)オキシエチレンエーテルプロパン;3−(メタ)アクリロキシ−1,2−ジ(ポリ)オキシプロピレンエーテルプロパン;3−(メタ)アクリロキシ−1,2−ジヒドロキシプロパンホスフェートおよびその塩、または炭素数1〜4のアルキル基のモノもしくはジエステル;3−(メタ)アクリロキシ−1,2−ジヒドロキシプロパンサルフェートおよびその塩、または炭素数1〜4のアルキル基のエステル;3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸およびその塩、または炭素数1〜4のアルキル基のエステル;3−(メタ)アクリロキシ−2−(ポリ)オキシエチレンエーテルプロパンスルホン酸およびその塩、または炭素数1〜4のアルキル基のエステル;3−(メタ)アクリロキシ−2−(ポリ)オキシプロピレンエーテルプロパンスルホン酸およびその塩、または炭素数1〜4のアルキル基のエステル;3−アリルオキシプロパン−1,2−ジオール;3−アリルオキシプロパン−1,2−ジオールホスフェート;3−アリルオキシプロパン−1,2−ジオールスルホネート;3−アリルオキシプロパン−1,2−ジオールサルフェート;3−アリルオキシ1,2−ジ(ポリ)オキシエチレンエーテルプロパン;3−アリルオキシ1,2−ジ(ポリ)オキシエチレンエーテルプロパンホスフェート;3−アリルオキシ1,2−ジ(ポリ)オキシエチレンエーテルプロパンスルホネート;3−アリルオキシ1,2−ジ(ポリ)オキシプロピレンエーテルプロパン;3−アリルオキシ1,2−ジ(ポリ)オキシプロピレンエーテルプロパンホスフェート;3−アリルオキシ1,2−ジ(ポリ)オキシプロピレンエーテルプロパンスルホネート;6−アリルオキシヘキサン−1,2,3,4,5−ペンタオール;6−アリルオキシヘキサン−1,2,3,4,5−ペンタオールホスフェート;6−アリルオキシヘキサン−1,2,3,4,5−ペンタオールスルホネート;6−アリルオキシヘキサン−1,2,3,4,5−ペンタ(ポリ)オキシエチレンエーテルヘキサン;6−アリルオキシヘキサン−1,2,3,4,5−ペンタ(ポリ)オキシプロピレンエーテルヘキサン;3−アリルオキシ2−ヒドロキシプロパンスルホン酸およびその塩、またはこれらの化合物のリン酸エステルもしくは硫酸エステルおよびそれらの塩;3−アリルオキシ2−(ポリ)オキシエチレンプロパンスルホン酸およびその塩、またはこれらの化合物のリン酸エステルもしくは硫酸エステルおよびそれらの塩;3−アリルオキシ2−(ポリ)オキシプロピレンプロパンスルホン酸およびその塩またはこれらの化合物のリン酸エステルもしくは硫酸エステルおよびそれらの塩;などを挙げることができる。
【0017】
ポリアルキレングリコール含有単量体も使用可能である。例えば、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、アリルアルコールポリアルキレンオキシド付加体、3−メチル−3−ブテン−1−オールアルキレンオキシド付加体等が挙げられ、ポリアルキレングリコールまたはアルキレンオキシドとしては、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシドが好ましい。
【0018】
本発明のカルボン酸系共重合体の重量平均分子量(Mw)は、3000〜30000とする。この範囲であれば、身体用洗浄剤に溶解しやすく、汚れ成分の分散効果が充分発揮され、さらに、Caイオン捕捉能も良好である。Mwが3000より小さくても、20000より大きくても、分散効果は低下してしまう。より好ましいMwの下限は4000である。また、より好ましいMwの上限は20000であり、さらに好ましい上限は15000である。重量平均分子量の測定方法は特に限定されないが、本発明では、GPCで測定したポリアクリル酸ナトリウム換算値を採用している。測定法の詳細は後述する。
【0019】
また、本発明のカルボン酸系共重合体のCaイオン捕捉能は、300mgCaCO3/g以上である。このように高いCaイオン捕捉能を有していれば、キレート剤として優れた性能を発揮することができる。310mgCaCO3/g以上がより好ましく、320mgCaCO3/g以上がさらに好ましく、350mgCaCO3/g以上が特に好ましい。Caイオン捕捉能の測定方法は、詳細は後述するが、所定のCaイオン濃度の水溶液中に、精秤したカルボン酸系共重合体を入れて共重合体にCaイオンを捕捉させ、その後、水溶液中の残存Caイオン濃度を滴定等で求め、減少分を算出することによって求められる。本発明では、Caイオン捕捉能を、共重合体1g(固形分)当たりのCaイオンの捕捉量として、炭酸カルシウム換算のmg数で表した。
【0020】
また、本発明のカルボン酸系共重合体は分散性にも優れている。分散性の目安として、後述する測定法で評価されるクレー分散性を採用すると、本発明のカルボン酸系共重合体のクレー分散性が0.3以上であることが好ましい。クレー分散性は0.4以上がより好ましく、0.5以上がさらに好ましく、0.6以上が特に好ましい。
【0021】
上記カルボン酸系共重合体を重合する方法としては特に限定されず、例えば、従来公知の方法によることができる。具体的には、例えば、水、有機溶剤、あるいは、水可溶性有機溶剤と水との混合溶剤等の溶剤中での重合を挙げることができる。これら重合に用いることができる触媒としては特に限定されないが、例えば、過硫酸塩や過酸化水素等が挙げられ、促進剤(亜硫酸水素塩やアスコルビン酸等)を併用することもできる。その他、アゾ系開始剤や有機過酸化物等も用いることができ、アミン化合物等の促進剤も併用できる。反応を有利に進める点で、過硫酸塩や、過酸化水素とアスコルビン酸を併用した系が好ましい。また、分子量の調整剤として、メルカプトエタノール、メルカプトプロピオン酸、次亜リン酸ナトリウム等の連鎖移動剤を併用してもよい。
【0022】
上記カルボン酸系共重合体は身体洗浄剤用添加剤であるので、身体洗浄剤に添加されて使用される。この本発明の身体洗浄剤用添加剤(カルボン酸系共重合体)が添加された身体洗浄剤も本発明に包含される。
【0023】
身体洗浄剤の主成分は界面活性剤であり、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤のいずれか1種以上を用いることができる。
【0024】
アニオン系界面活性剤の具体例としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルまたはアルケニルエーテル硫酸塩、アルキルまたはアルケニル硫酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸またはエステル塩、アルカンスルホン酸塩、飽和または不飽和脂肪酸塩、アルキルまたはアルケニルエーテルカルボン酸塩、アミノ酸型界面活性剤、N−アシルアミノ酸型界面活性剤、アルキルまたはアルケニルリン酸エステルまたはその塩等を挙げることができる。これらのアニオン系界面活性剤のアルキル鎖、アルケニル鎖は、メチル基等の付加的アルキル基で分岐されていてもよい。
【0025】
ノニオン系界面活性剤の具体例としては、ポリオキシアルキレンアルキルまたはアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、高級脂肪酸アルカノールアミドまたはそのアルキレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグリコキシド、脂肪酸グリセリンモノエステル、アルキルアミンオキサイド等を挙げることができる。これらのノニオン系界面活性剤のアルキル基、アルケニル基の中間にメチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。
【0026】
カチオン系界面活性剤の具体例としては、第4級アンモニウム塩等を挙げることができる。両性界面活性剤の具体例としては、ベタイン型、グリシン型、アラニン型、スルホベタイン型等の両性界面活性剤等を挙げることができる。これらのカチオン系界面活性剤、両性界面活性剤のアルキル基、アルケニル基の中間にメチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。
【0027】
本発明の身体洗浄剤に含まれる界面活性剤の配合割合は、身体洗浄剤中0.1〜50質量%が好ましい。より好ましくは1〜45質量%、さらに好ましくは10〜40質量%である。界面活性剤の配合割合が0.1質量%未満であると、洗浄力が不充分となるおそれがあるが、50質量%を超えると、経済性が低下する。
【0028】
身体洗浄剤用添加剤は、身体洗浄剤中、0.1〜40質量%が好ましい。この範囲であれば、Caイオン捕捉能と分散剤としての機能を過不足なく発揮できるからである。より好ましくは0.3〜20質量%、特に好ましくは0.4〜15質量%であり、最も好ましくは0.5〜10質量%である。
【0029】
上記身体洗浄剤は、本発明の添加剤と上記界面活性剤以外に、通常、水が含まれる。また、シャンプー、ボディソープ、ハンドソープ、石鹸等の身体洗浄剤分野において公知のあらゆる他の成分を含んでいてもよい。ただし、本発明の上記身体洗浄剤用添加剤は、分散剤およびキレート剤として機能するため、別途、分散剤やキレート剤を添加する必要はないが、少量の添加を排除するものではない。
【0030】
身体洗浄剤に添加してもよい他の成分としては、カチオン性(共)重合体、ポリプロピレングリコール等の保湿剤、糖類、粘度調整剤、抗菌剤、pH調節のためのアルカリ性物質、香料、可溶化剤、着色剤、紫外線吸収剤、ふけ防止剤、溶媒等である。
【実施例】
【0031】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、「%」は「質量%」を示す。
【0032】
<重量平均分子量(Mw)の測定方法>
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定した。測定に用いたカラムはG−3000PWXL(東ソー製)であり、移動相には、リン酸水素二ナトリウム12水和物34.5gと、リン酸二水素ナトリウム2水和物46.2g(何れも試薬特級、以下の測定に用いる試薬は全て特級を使用)に純水を加えて全量を5000gとし、その後0.45μmのメンブランフィルターで濾過した水溶液を用いた。ポンプはL−7110(日立社製)を使用し、移動相の流量を0.5ml/minに設定して、検出器としてはRI(昭和電工社製:「SHODEX SE−61」)とした。その際、カラム温度は35℃と一定にした。検量線は、ポリアクリル酸ナトリウム標準サンプル(創和科学製)を用いて作製し、カルボン酸系共重合体の重量平均分子量(Mw)を算出した。
【0033】
<カルシウムイオン捕捉能の測定方法>
まず、検量線用カルシウムイオン標準液を作成した。Caイオン源としては塩化カルシウム二水和物を用いた。0.01モル/リットル、0.001モル/リットル、0.0001モル/リットルの各濃度の水溶液を50gずつ作製して、4.8%NaOH水溶液でpH9〜11の範囲に調整した。この水溶液に、さらに、4モル/リットルの塩化カリウム水溶液(以下4M−KCl水溶液と略す)を1ml添加し、マグネチックスターラーを用いて充分に撹拌して、検量線用サンプル液とした。滴定装置(平沼産業社製;型番「COMTITE−550」)にCaイオン電極(オリオン社製;「93−20」)と比較電極(オリオン社製;「90−01」)をセットし、検量線用のサンプル液の滴定を行い、検量線を作製した。
【0034】
一方、試験用Caイオン標準液として、同じく塩化カルシウム二水和物を用いて、0.001モル/lの水溶液を必要量(1サンプルにつき50g)調製した。次いで、カルボン酸系共重合体試料を固形分換算で10mg秤量したものと、上記の試験用Caイオン標準液50gを100ccビーカーに入れ、マグネチックスターラーを用いて充分に撹拌した。4.8%NaOH水溶液を添加してpH9に調整し、4M−KCl水溶液を1ml添加してさらに撹拌し、試験液とした。カルボン酸系共重合体試料と試験用Caイオン標準液をビーカーに入れてから約3分経過した後に、前記と同様にして、滴定装置で試験液中のCaイオンの定量を行った。
【0035】
検量線から上記試験液中のCaイオン濃度がわかるので、初期値(0.001モル/リットル)との差を計算により求め、共重合体固形分1gあたりの捕捉量を算出した。この値を炭酸カルシウム換算のmg数で表してCaイオン捕捉能値とした。
【0036】
<クレー分散性>
グリシン67.56g、塩化ナトリウム52.6g、NaOH2.4gに純水を加え、600gとした(これをバッファー(1)とする)。バッファー(1)60gに塩化カルシウム二水和物0.0817gを加え、さらに純水を加えて1000gとした(これをバッファー(2)とする)。カルボン酸系共重合体試料の0.1%水溶液4g(固形分質量換算)に、バッファー(2)を36g加えて撹拌し、クレー分散性測定用試験液とした。
【0037】
試験管(IWAKI GLASS製:直径18mm、高さ180mm)にクレー(社団法人日本粉体工業技術協会製;JIS Z8901の試験用粉体1の11種タイプ)を0.3gを入れた後、上記の分散能測定用試験液を30g加えて密封し、よく振り混ぜて、クレーを均一に分散させた。その後、試験管を暗所に20時間静置した。20時間後、試験液の上澄みを5cc取り、UV分光器(島津製作所;「UV−1200」;1cmセル、波長380nm)で吸光度を測定した。この吸光度がそのままクレー分散性となる。
【0038】
<相溶性>
ポリオキシエチレンラウリル硫酸カリウム(アニオン性界面活性剤)10g、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン(両性界面活性剤)5g、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド(両性界面活性剤)3.0g、プロピレングリコール(保湿剤、分散剤)2.5gおよび表1に示した各キレート剤1.0gに水を加えて100gとした。よく撹拌し、気泡を除いた後、25℃で、濁度計(日本電色社製;「NDH2000」)により、カオリン濁度(mg/リットル)を測定した。カオリン濁度が200mg/リットル以下の場合を○とし、200mg/リットルを超える場合を×として、評価した。
【0039】
実施例1
アクリル酸/マレイン酸がモル比で50/50のカルボン酸系共重合体を合成した。温度計、撹拌機および還流冷却器を備えた容量1リットルのSUS製セパラブルフラスコに、脱イオン水385.0g、48%NaOH水溶液333.3g、無水マレイン酸196gを仕込み、撹拌下で、フラスコ内の水溶液を沸点還流状態まで昇温した。次いで、撹拌下で還流状態を維持しながら、別々の滴下ノズルを用いて、60%アクリル酸水溶液240gと35%過酸化水素水溶液45.7gと15%過硫酸ナトリウム水溶液53.3gのフラスコ内への滴下を開始した。なお、60%アクリル酸水溶液は150分間、35%過酸化水素水溶液は120分間、15%過硫酸ナトリウム水溶液は160分間にわたって、連続的に均一速度で全量を滴下した。全ての滴下が終了した後も、30分間に亘って沸点還流状態を維持した後に、48%NaOH水溶液91.7gを加え、重合を完了した。カルボン酸系共重合体No.1が得られた。Mwは5000であり、固形分は37%であった。
【0040】
実施例2
アクリル酸/マレイン酸がモル比で50/50のカルボン酸系共重合体を合成した。温度計、撹拌機および還流冷却器を備えた容量2.5リットルのSUS製セパラブルフラスコに純水132.8g、48%NaOH水溶液400g、無水マレイン酸235.2gを仕込み、撹拌下で、フラスコ内の水溶液を沸点還流状態まで昇温した。次いで、撹拌下で還流状態を維持しながら、別々の滴下ノズルを用いて、80%アクリル酸水溶液216gと35%過酸化水素水溶液57.6gのフラスコ内への滴下を開始した。なお、80%アクリル酸水溶液は180分間、35%過酸化水素水溶液は90分間かけて、連続的に均一速度で全量を滴下した。これらの滴下開始後90分経過してから、15%過硫酸ナトリウム水溶液96gと、純水130gを、滴下開始90分後から190分後まで100分間に亘って、それぞれ別々の滴下ノズルから連続的に均一速度で滴下した。全ての滴下が終了した後も、30分間に亘って沸点還流状態を維持した後に、48%NaOH水溶液110.0gを加え、重合を完了した。カルボン酸系共重合体No.2が得られた。Mwは10000であり、固形分は45%であった。
【0041】
比較例1
ポリアクリル酸を合成した。温度計、撹拌機および還流冷却器を備えた容量2.5リットルのSUS製セパラブルフラスコに純水を560g仕込み、撹拌下で沸点還流状態まで昇温した。次いで、撹拌下、還流状態を維持しながら、別々の滴下ノズルを用いて、80%アクリル酸水溶液360g、48%NaOH水溶液283g、15%過硫酸ナトリウム水溶液56g、純水600gのフラスコ内への滴下を開始した。アクリル酸水溶液とNaOH水溶液は滴下開始から240分に亘って、また、過硫酸ナトリウム水溶液と純水は滴下開始から250分に亘って、連続的に均一速度で滴下した。全ての滴下が終了した後も、30分間に亘って沸点還流状態を維持し、重合を完了した。カルボン酸系共重合体No.3(比較用)が得られた。Mwは5000であった。濃度調整を行って、固形分を45%とした。
【0042】
比較例2
アクリル酸/マレイン酸がモル比で70/30のカルボン酸系共重合体を合成した。温度計、撹拌機および還流冷却器を備えた容量2.5リットルのSUS製セパラブルフラスコに純水288.7g、48%NaOH水溶液250g、無水マレイン酸147gを仕込み、撹拌下で、フラスコ内の水溶液を沸点還流状態まで昇温した。次いで、撹拌下で還流状態を維持しながら、別々の滴下ノズルを用い、80%アクリル酸水溶液315g、15%過硫酸ナトリウム水溶液66.7g、純水160gのフラスコ内への滴下を開始した。なお、80%アクリル酸水溶液は120分かけて滴下し、15%過硫酸ナトリウム水溶液と純水は130分かけて滴下した。全ての滴下が終了した後も、30分間に亘って沸点還流状態を維持した後に、48%NaOH水溶液210.4gを加え、重合を完了した。カルボン酸系共重合体No.4が得られた。Mwは70000であり、固形分は40%であった。
【0043】
実験例
上記各実施例および比較例で得られたカルボン酸系共重合体No.1〜No.2(実施例1、2)およびNo.3〜No.4(比較例1、2)を用いて、前記した通り、Caイオン捕捉能と、クレー分散性と、身体洗浄剤との相溶性を評価した。結果を表1に示す。また、従来公知のキレート剤であるエチレンジアミン四酢酸のNa塩(「EDTA・4Na」と表示:比較例3)と、クエン酸Na塩(「クエン酸・3Na」と表示:比較例4)を用いても、同様に評価し、結果を表1に示した。
【0044】
【表1】

【0045】
表1より、本発明のカルボン酸系共重合体No.1およびNo.2は、Caイオン捕捉能、クレー分散性および身体洗浄剤との相溶性に優れていることが確認された。一方、比較例1では、マレイン酸ユニットのないカルボン酸系共重合体No.3を用いているので、Caイオン捕捉能が劣っていた。また比較例2では、マレイン酸ユニットが30モル%のカルボン酸系共重合体No.4を用いたので、Caイオン捕捉能は充分であったが、Mwが大きいため、身体洗浄剤との相溶性の点で劣っていた。また、従来公知のキレート剤は、Caイオン捕捉能はそこそこの値を示したが、クレー分散性に劣り、汚れの再付着を防止する効果がないことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の身体洗浄剤用添加剤(カルボン酸系共重合体)は、Caイオン捕捉効果と汚れ分散効果に優れているので、シャンプー、ボディソープ、ハンドソープ、石鹸等の身体洗浄剤のための添加剤として有用である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和モノカルボン酸(塩)単量体由来の構成単位(a)と、不飽和ジカルボン酸(塩)単量体由来の構成単位(b)とを有する重量平均分子量が3000〜30000のカルボン酸系共重合体であり、かつ、このカルボン酸系共重合体のCaイオン捕捉能が300mgCaCO3/g以上であることを特徴とする身体洗浄剤用添加剤。
【請求項2】
上記カルボン酸系共重合体中の構成単位100モル%中、上記構成単位(a)と上記構成単位(b)との合計が80モル%以上である請求項1に記載の身体洗浄剤用添加剤。
【請求項3】
上記構成単位(a)と上記構成単位(b)との合計を100モル%としたときに、該構成単位(b)が25〜60モル%である請求項1または2に記載の身体洗浄剤用添加剤。
【請求項4】
不飽和モノカルボン酸(塩)単量体がアクリル酸であり、不飽和ジカルボン酸(塩)単量体がマレイン酸である請求項1〜3のいずれかに記載の身体洗浄剤用添加剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の身体洗浄剤用添加剤を含むことを特徴とする身体洗浄剤。

【公開番号】特開2006−241099(P2006−241099A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−61274(P2005−61274)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】