説明

身分証真偽鑑別方法及びシステム

【課題】印刷面上にフィルムが張られた身分証の真偽鑑別をより正確に行うこと。
【解決手段】前記身分証の印刷面上に張られたフィルムの配向度の判定結果により身分証の真偽を鑑別する。フィルムの配向度は、フィルムによる偏光赤外線吸収の強弱を用いて判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旅券真偽自動判定機等身分証を扱う自動機の、身分証真偽鑑別方法及びそのシステムであり、旅券、運転免許証、身分証等、紙葉、カード上に印刷され、その上にフィルムが張られることによって価値を持たせられた身分証の、真偽鑑別及びそのシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の技術としては、例えば、赤外線による吸収の有無を用いてフィルムの材質を判定し真偽を鑑別する方法、共焦点光学系を用いてフィルムの厚さを測定し真偽を鑑別する方法がある(例えば特許文献1を参照)。
【特許文献1】特願2004−247717
【0003】
これは偽造・変造された身分証のフィルムには、真券とは異なる材質・厚さのものが使用されているケースが多いからである。
【0004】
このように、身分証の真偽を鑑別するときは、フィルムの材質や厚さを確認している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した真偽鑑別方法では、フィルムの材質や厚さを確認し、それが真券と一致するか否かにより真偽が判断されている。
【0006】
しかし、材質・厚さ以外に新たに真偽を判定する方法が加われば、真偽の判定精度がより高まると考えられ、偽変造行為が技術的・経済的により困難になると考えられる。
【0007】
本発明は、上記の目的を達成するために成されたものであり、その目的は身分証の真偽鑑別をさらに精度よく行い、偽変造行為を技術的・経済的にさらに困難にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要は下記のとおりである。
【0009】
印刷面上にフィルムが張られた身分証の真偽鑑別方法において、前記身分証の印刷面上に張られたフィルムの配向度を検査し、その結果を真券と比較することにより身分証の真偽を鑑別する。
【0010】
フィルムの配向度は、特定の波長の、偏光方向が90度異なる2種類の赤外線を試料に照射し、フィルムによる赤外線の吸収の強弱が、赤外線の偏光方向によって異なることを用いて測定する。
【0011】
赤外線により身分証の印刷面上に張られたフィルムの配向度を測定する手段と、その計測結果を基に真偽鑑別の判定を行う鑑別判定処理手段と、各種身分証に関する情報を蓄えたデータベースと、鑑別中の身分証に関する情報を入力する入力手段と、鑑別結果を表示する表示手段とを備えた、身分証真偽鑑別システムを作成する。
【発明の効果】
【0012】
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、下記のとおりである。
【0013】
フィルムの配向度の測定を身分証の真偽判定を加えることにより、身分証の真偽の鑑別をより精度よく行うことが可能となる。
【0014】
新たな真偽判定基準が加わることで、偽変造者は真正身分証と同じ特徴を持ったフィルムを入手することがより困難になり、偽変造に対する抑止効果の向上が期待される。
【0015】
さらに真正旅券に、市販品には存在しないような配向分布を持つフィルムを用いれば、偽変造行為はより難しいものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、本発明の身分証の真偽鑑別を行うシステムの実施形態として、旅券の真偽鑑別を行う旅券真偽自動判定機の構成を示す図である。
【0017】
本実施形態の旅券真偽自動判定機1は図1に示すように、試料を載せる試料台2と、旅券の印刷面上に張られたフィルムの配向度を測定するユニット3と検査対象旅券の国籍を入力する入力部4と、各国の旅券に関するデータが蓄積されたデータベース5と、測定ユニットにより測定されたデータとデータベースから送られてきたデータを基に真偽を鑑別する旅券鑑別部6と、真偽の判定結果を表示する表示部7からなる。なお、本発明と直接関係のない各部の制御部等は図示していない。
【0018】
次に、本実施形態の配向度測定ユニットについて説明する。図2は、本実施形態における配向度測定ユニット3を説明するための図である。
【0019】
図1に示すように、試料台上に置かれた旅券は、配向度測定ユニット3によりデータが採取される構成をとる。
【0020】
偽造品だけでなく変造品をも鑑別するために、配向度測定ユニット3は顔写真近傍のフィルムのデータを採取する構成をとる。
【0021】
配向度測定ユニット3は、図2に示すように、2つの異なる波長の赤外線光源31、32を備える。シャッター33とミラー34により試料に照射される赤外線の波長を切り替えることができる。光源から放射された赤外線は、ビームスプリッター35によって旅券に張られたフィルムに対して垂直に入射し、旅券からの反射光は偏光子36を通過した後に検出器37で検出される。
【0022】
偏光子36は、試料に対して平行な平面内で回転することができ、任意の回転角度で停止することができる。
【0023】
照射する赤外線の波長と偏光子の回転角度を変化させながら検出器に入射する光量を測定し、そのデータを旅券鑑別部に送る。
【0024】
赤外線光源の数は必ずしも2つである必要はなく、必要に応じて増やすこともある。
【0025】
次に、本実施形態の旅券真偽自動判定機1の処理について説明する。図3は、本実施形態の旅券真偽自動判定機1の処理を説明するためのフローチャートである。
【0026】
本実施形態の旅券真偽自動判定機は、試料台2の上に鑑別対象の旅券が置かれる。
【0027】
旅券真偽鑑別処理部では、偏光赤外線を利用したフィルムの配向度測定が行われ、測定結果が旅券鑑別部に送られる。
【0028】
一方、入力された国籍データに基づく旅券の情報が旅券鑑別部に送られる。
【0029】
そして、測定結果をデータベースのデータと比較し旅券の鑑別を行う。
【0030】
鑑別の結果は、判定結果表示に送られ、機器使用者に判定結果を知らせる。
【0031】
以上、本発明者によってなされた発明を、前記実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態にかかる旅券の真偽鑑別を行う旅券真偽自動判定機の構成を示す図である。
【図2】本実施形態における旅券真偽自動判定機の配向度測定ユニット3を説明するための図である。
【図3】本実施形態の旅券真偽自動判定機1の処理を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0033】
1…旅券真偽自動判定機、2…試料台、3…配向度測定ユニット、31…赤外線源1、32…赤外線源2、33…シャッター、34…ミラー、35…ビームスプリッター、36…偏光子、37…検出器、4…国籍入力部、5…データベース、6…旅券鑑別部、7…判定結果表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷面上にフィルムが張られた身分証の真偽鑑別方法において、フィルムによる赤外線吸収の強弱が赤外線の偏光方向によって異なることを用いて、身分証の真偽を判定することを特徴とする身分証真偽鑑別方法。
【請求項2】
偏光された赤外線により身分証の印刷面上に張られたフィルムの配向度の判定を行う第1の真偽鑑別手段と、前記各真偽鑑別手段による計測結果を基に真偽鑑別の判定を行う鑑別判定処理手段と、各種身分証に関する情報を蓄えたデータベースと、鑑別中の身分証に関する情報を入力する入力手段と、鑑別結果を表示する表示手段とを備えたことを特徴とする身分証真偽鑑別システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−130799(P2006−130799A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−323056(P2004−323056)
【出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【出願人】(592083915)警察庁科学警察研究所長 (23)
【Fターム(参考)】