説明

躯体取付部保護具及び建材

【課題】 躯体取付部を炎熱から保護する躯体取付部保護具及びこれを備える建材を提供する。
【解決手段】 躯体取付部保護具は、保護材と、カバーとを備え、保護材は、躯体にネジ止めしてあって、躯体開口部に取り付けた開口部建材の躯体取付部を前側から覆う被覆部を有しており、カバーは、躯体取付部と保護材とを前側から覆うものである。また、保護材は、耐火材を備え、耐火材は、火災時に熱によって発泡して躯体取付部を覆うものである。さらに、保護材とカバーが、保護具取付用ネジによって躯体にネジ止めしてある。そして、建材は、枠と、上記の躯体取付部保護具とを備え、枠は、躯体に取り付けてあり、躯体取付部保護具が枠の躯体取付部を前側から覆っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口部建材の躯体取付部の防火対応に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の開口部にシャッターなどの開口部建材を取り付ける際には、開口部建材の枠を躯体にネジ止めするのが一般的である。この躯体取付部の構造には種々のものがあるが、図9に示すように、アルミの押出形材からなる枠108に躯体取付片181が形成してあって、この躯体取付片181を躯体103の前面に当接させ、躯体取付片181に形成したネジ孔に枠取付用ネジ182を通して躯体103にネジ止めするものが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、火災時においてこのような開口部建材の躯体取付部が炎熱にさらされると、枠取付用ネジは鉄製で溶解しないが、アルミ製の躯体取付片が変形したり溶解したりして、躯体から開口部建材が脱落したり、隙間が開いて屋内側に火がまわったりするおそれがあった。
【0004】
本発明は、上記事情を鑑みたものであり、躯体取付部を炎熱から保護する躯体取付部保護具及びこれを備える建材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のうち請求項1の発明は、保護材と、カバーとを備え、保護材は、躯体にネジ止めしてあって、躯体開口部に取り付けた開口部建材の躯体取付部を前側から覆う被覆部を有しており、カバーは、躯体取付部と保護材とを前側から覆うものであることを特徴とする。なお、躯体取付部とは、開口部建材を躯体にネジ止めしてある部分など、開口部建材において、何らかの手段で躯体に係合している部分のことである。
【0006】
本発明のうち請求項2の発明は、保護材は、耐火材を備え、耐火材は、火災時に熱によって発泡して躯体取付部を覆うものであることを特徴とする。
【0007】
本発明のうち請求項3の発明は、保護材とカバーが、保護具取付用ネジによって躯体にネジ止めしてあることを特徴とする。なお、保護具取付用ネジとは、枠を躯体に取り付けるためのネジなどとは別の、保護具を取り付けるための専用のネジである。
【0008】
本発明のうち請求項4の発明は、枠と、請求項1、2又は3記載の躯体取付部保護具とを備え、枠は、躯体に取り付けてあり、躯体取付部保護具が枠の躯体取付部を前側から覆っていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のうち請求項1の発明によれば、保護材の被覆部が開口部建材の躯体取付部を覆っているので、火災時において躯体取付部を炎熱から保護して、躯体から開口部建材が脱落したり、隙間が開いて屋内側に火がまわったりすることを防ぐ。
【0010】
本発明のうち請求項2の発明によれば、火災時において耐火材が発泡して躯体取付部を覆うので、躯体取付部を炎熱からより確実に保護することができる。
【0011】
本発明のうち請求項3の発明によれば、保護材を専用のネジによって取り付けるので、保護材の被覆部を、躯体取付部の前側に離隔して位置させることができる。そして被覆部に、躯体取付部に前側から対向して耐火材を取り付けることができるので、火災時にはより確実に耐火材が躯体取付部を覆って炎熱から保護する。また、専用のネジによって取り付けるので、既設の開口部建材に後付けすることも容易である。
【0012】
本発明のうち請求項4の発明によれば、上記のような特徴を有する躯体取付部保護具を備えることにより、火災時において躯体から脱落したり、隙間が開いて屋内側に火がまわったりすることを防いだ建材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】躯体取付部保護具の第一実施形態の説明図である(開口部建材の上枠に取り付ける場合)。
【図2】躯体取付部保護具の第一実施形態の説明図である(開口部建材の下枠に取り付ける場合)。
【図3】躯体取付部保護具の第一実施形態の説明図である(開口部建材の竪枠に取り付ける場合)。
【図4】開口部建材の縦断面図である。
【図5】開口部建材の横断面図である。
【図6】開口部建材の屋外側正面図である。
【図7】躯体取付部保護具の第二実施形態の説明図である。
【図8】躯体取付部保護具の第三実施形態の説明図である。
【図9】従来の開口部建材の躯体取付部の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下において、左右とは図5における左右を示し、前側は屋外側、後側は屋内側(躯体側)を示す。本発明における開口部建材には、戸や窓など種々のものが含まれるが、ここではシャッターの場合を示す。このシャッターは、図4〜図6に示すように、躯体開口部31の周囲の躯体3に、アルミの押出形材からなる枠8(上枠8a、下枠8b及び左右の竪枠8c)をネジ止めしてあり、上枠8aには箱形のケース8dを取り付けてあって、ケース8dの中にシャッタースラット10の巻取装置20を収めてある。そして、竪枠8cの前側にはガイド枠30をネジ止めしてある。シャッタースラット10は、ガイド枠30によって上下動自在にガイドされており、巻取装置20によって巻き取ると上昇し、繰り出すと下降する。そしてシャッタースラット10を閉鎖すると、その下端は下枠8bに当接する。そして、それぞれの枠8の躯体取付部5に、躯体取付部保護具9を取り付けてある。
【0015】
次に、躯体取付部5と、躯体取付部保護具9の第一実施形態について詳述する。図1〜図3に示すように、上枠8a、下枠8b及び竪枠8cに取り付けた躯体取付部保護具9は、何れも略同じ形状であり、合わせて説明する。まず、何れの枠8も、後側端部に、開口部建材4の外周側に延びる躯体取付片81を有している。そして、この躯体取付片81を躯体3の前面に当接させ、躯体取付片81に形成したネジ孔に枠取付用ネジ82を通して躯体3にネジ止めしてある。よって、躯体取付片81のうち、このネジ止め部分が躯体取付部5となり、躯体取付部保護具9は枠取付用ネジ82の近傍部分を保護する形になる。
【0016】
躯体取付部保護具9は、保護材1と、カバー2からなる。保護材1は、鋼板を折り曲げて形成したもので、躯体3に当接する基部12と、基部12の内周側端から前側に延びる立設部13と、立設部13の前側端から内周側に延びる被覆部11からなる。保護材1は、枠8の外周側に位置していて、基部12に形成したネジ孔に保護具取付用ネジ7を通して躯体3にネジ止めしてある。このように取り付けると、被覆部11は躯体取付部5の前側に離隔して位置し、躯体取付部5を前側から覆う。そして、カバー2は、樹脂からなるもので、前側に開口する凹部21と、凹部21の内周側の開口縁部から内周側に延びる内周側片22と、外周側の開口縁部から外周側に延びる外周側片23とを有し、さらに別体の蓋部24を有する。カバー2は、凹部21の底面を保護材1の基部12の前側面に当接させ、保護具取付用ネジ7によって保護材1と合わせて躯体3にネジ止めしてある。このように取り付けると、カバー2の内周側片22が保護材1の被覆部11の前側に位置し、カバー2が、躯体取付部5と保護材1とを前側から覆う。また、保護具取付用ネジ7の頭部はカバー2の凹部21の内側に収まり、凹部21に蓋部24を被せて保護具取付用ネジ7を前側から覆っている。
【0017】
そして、被覆部11の後側面及び立設部13の内周側面には、耐火材6を取り付けてある。耐火材6はエポキシ系の素材からなるもので、火災時に熱により発泡して厚さ方向(取付面に対して垂直方向)に膨張するものである。火災時には、この耐火材6が発泡して躯体取付部5を覆う。
【0018】
このように構成した躯体取付部保護具によれば、保護材の被覆部が開口部建材の躯体取付部を覆っており、さらに保護材には耐火材を取り付けてあるので、火災時において耐火材が発泡して躯体取付部を覆い、躯体取付部を炎熱から確実に保護して、躯体から開口部建材が脱落したり、隙間が開いて屋内側に火がまわったりすることを防ぐ。また、枠を取り付ける枠取付用ネジとは別の保護具取付用ネジによって取り付けることで、保護材の被覆部を、躯体取付部の前側に離隔して位置させてある。これにより、被覆部に、躯体取付部に前側から対向して耐火材を取り付けることができるので、火災時にはより確実に耐火材が躯体取付部を覆って炎熱から保護する。さらに、この躯体取付部保護具は、枠取付用ネジとは別の保護具取付用ネジによって取り付けるので、既設の開口部建材に後付けすることも容易である。
【0019】
そして、図4〜図6に示すように、本発明の建材は、躯体開口部31に取り付けるものであって、枠8と、上記の躯体取付部保護具9と備え、枠8は枠取付用ネジ82によって躯体3にネジ止めしてあり、躯体取付部保護具9が躯体取付部5を前側から覆っている。これにより、火災時において躯体から脱落したり、隙間が開いて屋内側に火がまわったりすることを防いだ建材を提供できる。
【0020】
次に、躯体取付部保護具9aの第二実施形態について、図7に基づき説明する。第二実施形態は、第一実施形態と比較して、保護材及びカバーの形状が異なっている。カバー2aは、凹部21aと蓋部24aからなり、第一実施形態のような内周側片や外周側片は有しておらず、カバー2aの底面が枠8の躯体取付片81に当接している。そして保護材1aは、カバー2aの凹部21aの内側に収まっており、凹部21aの底面に当接する被覆部11aと、被覆部11aの内周側端及び外周側端から前側に延びる立設部13aからなる。保護材1aとカバー2aとは、枠取付用ネジ82によって枠8と合わせて躯体3にネジ止めしてある。なお、この場合でも、被覆部11aは、躯体取付部5(躯体取付片81の、枠取付用ネジ82の近傍部分)を前側から覆っている。さらに、カバー2aの凹部21aに蓋部24aを被せて枠取付用ネジ82の頭部及び保護材1aを前側から覆っている。そして、保護材1aの立設部13aには、耐火材6を取り付けてある。耐火材6は、内周側の立設部13aの外周側面と、外周側の立設部13aの内周側面に取り付けてあり、火災時に発泡して躯体取付部5を覆う。この第二実施形態でも、保護材の被覆部が開口部建材の躯体取付部を覆っており、さらに保護材には耐火材を取り付けてあるので、火災時において耐火材が発泡して躯体取付部を覆い、躯体取付部を炎熱から確実に保護して、躯体から開口部建材が脱落したり、隙間が開いて屋内側に火がまわったりすることを防ぐ。
【0021】
次に、躯体取付部保護具9bの第三実施形態について、図8に基づき説明する。第三実施形態は、第一実施形態と比較して、保護材の形状が異なっている。保護材1bは、躯体3に当接する基部12bと、基部12bの内周側端から前側に延びる立設部13bと、立設部13bの前側端から内周側に延びる被覆部11bと、被覆部11bの内周側端から後側に延びる折返部14bからなる。保護材1bは、枠8の外周側に位置していて、基部12bに形成したネジ孔に保護具取付用ネジ7を通して躯体3にネジ止めしてある。そして、第一実施形態と異なり、耐火材は有していない。このように取り付けると、被覆部11bは躯体取付部5の前側に離隔して位置し、躯体取付部5を前側から覆い、さらに折返部14bが躯体取付片81の直前まで延びていて、立設部13bと、被覆部11bと、折返部14bとで躯体取付部5を取り囲んでいる。また、カバー2bは、第一実施形態と同様の形状であり、保護具取付用ネジ7によって保護材1bと合わせて躯体3にネジ止めしてあって、躯体取付部5と保護材1bとを前側から覆っている。この第三実施形態は、耐火材を有していないが、立設部と、被覆部と、折返部とで開口部建材の躯体取付部を取り囲んでいるので、火災時において躯体取付部を炎熱から保護して、躯体から開口部建材が脱落したり、隙間が開いて屋内側に火がまわったりすることを防ぐ。
【0022】
本発明は、上記の実施形態に限定されない。たとえば、保護材は、躯体取付部を前側から覆う被覆部を有するものであれば、どのような形状であってもよいし、耐火材は、発泡して躯体取付部を覆うようになっていれば、保護材のどの場所に取り付けてもよい。また、カバーも、躯体取付部と保護材とを前側から覆うものであれば、どのような形状であってもよい。なお、開口部建材はシャッターに限られず、戸や窓などであってもよい。
【符号の説明】
【0023】
1 保護材
2 カバー
3 躯体
4 開口部建材
5 躯体取付部
6 耐火材
7 保護具取付用ネジ
8 枠
9 躯体取付部保護具
11 被覆部
31 躯体開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護材と、カバーとを備え、保護材は、躯体にネジ止めしてあって、躯体開口部に取り付けた開口部建材の躯体取付部を前側から覆う被覆部を有しており、カバーは、躯体取付部と保護材とを前側から覆うものであることを特徴とする躯体取付部保護具。
【請求項2】
保護材は、耐火材を備え、耐火材は、火災時に熱によって発泡して躯体取付部を覆うものであることを特徴とする請求項1記載の躯体取付部保護具。
【請求項3】
保護材とカバーが、保護具取付用ネジによって躯体にネジ止めしてあることを特徴とする請求項1又は2記載の躯体取付部保護具。
【請求項4】
枠と、請求項1、2又は3記載の躯体取付部保護具とを備え、枠は、躯体に取り付けてあり、躯体取付部保護具が枠の躯体取付部を前側から覆っていることを特徴とする建材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−67996(P2013−67996A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207298(P2011−207298)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000175560)三協立山株式会社 (529)
【Fターム(参考)】