説明

車上装置

【課題】異常が発生した場合にどこで異常が発生しているかを切り分けて検知することのできる車上装置を提供する。
【解決手段】車上装置1Aは、送信部21A及び受信部22を有する送受信ユニット2Aと、第1変成器31、送受信アンテナ32及び第2変成器33を有する車上子3Aと、送受信ユニット2Aと車上子3Aとの間を接続する送信ケーブル4及び受信ケーブル5と、を含む。また、車上装置1Aは、送信部21Aから出力された信号の信号電圧を検知する第1電圧検知部24と、送信ケーブル4を流れる電流を検知する電流検知部26と、第1電圧検知部24によって検知された電圧及び電流検知部26によって検知された電流に基づいて車上装置1Aにおける異常の有無を診断する異常診断部23と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスポンダを利用して地上装置との間で信号の送受信を行う車上装置に関し、特に車上装置に異常が発生した場合にどこで異常が発生しているかを切り分けて検知することのできる車上装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から車上装置においては当該車上装置の構成要の故障や劣化を含む異常を検知するため、定期的に異常診断が行われている。例えば、特許文献1に記載の車上装置では、送信部から送信信号と照査信号との重畳信号を送信するとともに、受信部において前記重畳信号から前記送信信号及び前記照査信号を抽出、解読することにより、定期的に正常、異常を照査している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−1051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の車上装置は、前記重畳信号の伝送経路の最終端である受信部において抽出された信号に基づいて正常、異常を照査するものであるため、異常の有無を検知することはできるものの、前記伝送経路のどこで異常が発生しているのかを特定することはできない。そのため、異常があると診断された後に、どこで異常が発生しているかを特定する必要があり、復旧に多くの時間がかかってしまうという問題があった。
本発明は、このような実情に着目してなされたものであり、異常が発生した場合にどこで異常が発生しているかを切り分けて検知することのできる車上装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面による車上装置は、送信部及び受信部を有する送受信ユニットと、第1変成器、送受信アンテナ及び第2変成器を有する車上子と、前記送受信ユニットと前記車上子との間を接続する送信ケーブル及び受信ケーブルと、を含み、前記送信部から出力された送信信号を前記送信ケーブル、前記第1変成器及び前記送受信アンテナを介して地上装置へと送信する一方、前記地上装置から送信された信号を前記送受信アンテナによって受信し、この受信信号を前記第2変成器及び前記受信ケーブルを介して前記受信部に入力する。そして、前記車上装置は、前記送信部から出力された信号の信号電圧を検知する電圧検知部と、前記送信ケーブルを流れる電流を検知する電流検知部と、前記電圧検知部によって検知された電圧及び前記電流検知部によって検知された電流に基づいて当該車上装置の異常の有無を診断する異常診断部と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
上記車上装置によれば、異常診断部が送信部から出力された実際の信号電圧及び送信ケーブルを流れる実際の電流に基づいて異常の有無を診断するので、例えば送受信ユニット(送信部)に異常があること、車上子に異常があること、及び、受信ケーブル又は車上子の第1変成器に異常があることなどを切り分けて検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の第1実施形態による車上装置の概略構成を示す図である。
【図2】上記第1実施形態による車上装置における送信部の構成を示すブロック図である。
【図3】上記第1実施形態による車上装置の変形例を示す図である。
【図4】本発明の第2実施形態による車上装置の概略構成を示す図である。
【図5】上記第2実施形態による車上装置における送信部の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態による車上装置1Aの概略構成を示している。本実施形態による車上装置1Aは、送受信ユニット2Aと、トランスポンダ車上子(以下単に「車上子」という)3Aと、送受信ユニット2Aと車上子3Aとの間を接続する送信ケーブル4及び受信ケーブル5と、を含む。
そして、車上装置1Aを搭載した列車が、図示省略した地上装置を構成するトランスポンダ地上子(以下単に「地上子」という)に近づき、車上子3Aと前記地上子とが接近することによって、車上装置1A(車上子3A)と地上装置(地上子)との間で信号(情報波)の送受信が行われる。
なお、以下の説明においては、車上装置1Aから地上装置へと送信される信号を「送信信号」といい、地上装置から車上装置1Aへと送信される信号、すなわち、車上装置1Aによって受信される信号を「受信信号」という。
【0009】
送受信ユニット2Aは、信号を発生して送信ケーブル4へと送出する送信部21Aと、受信ケーブル5を介して伝送された信号を入力して処理する受信部22と、車上装置1Aの異常の有無を診断する異常診断部23と、送信部21Aから出力された信号電圧を検知する第1電圧検知部24と、受信部22に入力される信号電圧を検知する第2電圧検知部25と、送信ケーブル4(さらに言えば、送信部21Aから車上子3Aに至る信号伝送経路)を流れる電流を検知する電流検知部26と、を含む。
本実施形態において、第1電圧検知部24は、送信部21Aから送信ケーブル4の入力端に至る送受信ユニット2A内の伝送路(以下「送信経路」という)にて電圧を検知し、第2電圧検知部25は、受信ケーブル5の出力端から受信部22に至る送受信ユニット2A内の伝送路(以下「受信経路」という)にて電圧を検知している。また、電流検知部26は、前記送信経路にて電流を検知している。
【0010】
送信部21Aは、図2に示すように、前記送信信号を発生する送信信号発生部211と、診断用の疑似受信信号を発生する疑似受信信号発生部212と、前記送信信号又は前記疑似受信信号を選択する信号選択部213Aと、を有する。
前記送信信号は、前記列車のブレーキ性能などの情報を含み、また、前記疑似受信信号は、前記地上装置から送信される受信信号を正常に受信できるか否かを確認するための信号である。
詳細な説明は省略するが、送信信号発生部211,疑似受信信号発生部212は、それぞれ発振回路、増幅回路、変調回路などを適宜有して構成される。また、信号選択部213Aとしては、例えば切替えスイッチを用いることができる。信号選択部213Aは、通常、前記送信信号を選択するようになっており、例えば、異常診断部23から要求があったときに前記擬似受信信号を選択する。
【0011】
受信部22は、受信ケーブル5を介して伝送された前記受信信号を入力すると、入力された前記受信信号を処理して制限速度情報や信号現示情報などを抽出する。抽出された情報は、例えば、図示省略した列車制御部に出力され、列車のブレーキ制御などに用いられる。
【0012】
異常診断部23は、第1電圧検知部24、第2電圧検知部25及び電流検知部26のそれぞれに接続されており、これらの検知結果に基づいて定期的に車上装置1Aの異常診断を行う。なお、異常診断部23による車上装置1Aの異常診断については後述する。
【0013】
車上子3Aは、第1変成器(送信トランス)31と、アンテナ部(送受信アンテナ)32と、第2変成器(受信トランス)33と、を有する。第1変成器31の一次側は、送信ケーブル4の出力側に接続され、第1変成器31の二次側は、アンテナ部32に接続されている。第2変成器33の一次側は、アンテナ部32に接続され、第2変成器33の二次側は、受信ケーブル5の入力側に接続されている。
車上子3Aは、送受信ユニット2A(送信部21A)から送信ケーブル4に送出された前記送信信号を、第1変成器31を介して入力し、アンテナ部32によって前記地上装置の地上子へと送信するとともに、この地上子から送信(返信)された信号をアンテナ部32によって受信し、この受信された信号(受信信号)を、第2変成器24を介して受信ケーブル5へと送出する。また、車上子3Aは、送受信ユニット2(送信部21)から送信ケーブル4に送出された前記疑似受信信号を、第1変成器31、アンテナ部32、第2変成器33を介して受信ケーブル5へと送出する。
【0014】
ここで、異常診断部23による車上装置1Aの異常診断について説明する。
異常診断部23は、前記送信信号の信号電圧に相当する第1参照電圧、前記疑似受信信号の信号電圧に相当する第2参照電圧、送信部21Aから前記送信信号が出力されたときに前記送信経路を流れる電流値に相当する参照電流、第1変成器31の一次側のインピーダンス、及び、第2変成器33の二次側を除く車上子3のインピーダンス(以下単に「車上子3のインピーダンス」という)をあらかじめ記憶している。
なお、異常診断部23は、前記第1参照電圧及び前記第2参照電圧をあらかじめ記憶しておくことに代えて、送信部21Aから当該送信部21Aが出力する信号又はその信号電圧に相当する情報を入力するようにしてもよい。
【0015】
異常診断部23は、定期的に車上装置1Aの正常、異常を診断する。具体的には、異常診断部23は、第1電圧検知部24によって検知された電圧及び電流検知部26によって検知された電流を入力し、入力された電圧が前記第1参照電圧であるか否か、及び、入力された電流が前記参照電流であるか否かを確認する。また、異常診断部23は、送信部21A(信号選択部213A)に対して前記疑似受信信号を出力するように要求し、送信部21Aから前記疑似受信信号が出力されたときに第2電圧検知部25によって検知された電圧を入力し、入力された信号電圧が前記第2参照電圧であるか否かを確認する。
【0016】
そして、異常診断部23は、送信部21Aから前記送信信号が出力されているときに第1電圧検知部24によって検知された電圧が前記第1参照電圧であり、電流検知部26によって検知された電流が前記参照電流であり、かつ、送信部21Aから前記疑似受信信号が出力されたときに第2電圧検知部25によって検知された電圧が前記第2参照電圧である場合に車上装置1Aが正常であると診断し、それ以外の場合には、車上装置1Aに異常があると診断して所定の故障信号を図示省略した外部装置に出力する。これにより、車上装置1Aに異常がある場合に、その旨を列車の運転者などに報知することができる。
また、異常診断部23は、特に以下に示す場合には、異常が発生している可能性がある箇所を特定する情報を前記故障信号に含ませた上で前記外部装置に出力する。
【0017】
(1)第1電圧検知部24によって電圧が検知されず、かつ、電流検知部26によって電流が検知されない場合
この場合は、送信部21Aから前記送信信号が出力されていないと考えられるので、異常診断部23は、送受信ユニット2A(さらに言えば、送信部21A)に異常(送信停止)がある旨の情報を含む前記故障信号を前記外部装置へと出力する。
【0018】
(2)第1電圧検知部24によって検知された電圧が前記第1参照電圧よりも高く、かつ、電流検知部26によって検知された電流が前記参照電流よりも大きい場合
この場合、送信部21Aが前記送信信号を信号電圧が過剰に高い状態で出力していると考えられるので、異常診断部23は、送受信ユニット2A(さらに言えば、送信部21A)に異常(送信信号大)がある旨の情報を含む前記故障信号を前記外部装置に出力する。
【0019】
(3)第1電圧検知部24によって検知された電圧が前記1参照電圧であるが、電流検知部26によって電流が検知されない場合
この場合、送信ケーブル4、及び/又は、第1変成器31の一次側で断線が発生していると考えられるので、異常診断部23は、車上子3・送信ケーブル4に異常(断線)がある旨の情報を含む前記故障信号を前記外部装置へと出力する。なお、第1変成器31の故障率は、送信ケーブル4の故障率に比べて低いと考えられるので、異常診断部23が送信ケーブル4に異常(断線)がある旨の情報を含む前記故障信号を前記外部装置へと出力するようにしてもよい。
【0020】
(4)前記第2電圧検知部25によって検知された電圧が前記第2参照電圧とは異なる場合であって、第1電圧検知部24によって検知された電圧を電流検知部26によって検知された電流で除算した値が車上子3のインピーダンスに相当する場合
この場合、第2変成器33の二次側、及び/又は、受信ケーブル5で断線が発生していると考えられるので、異常診断部23は、車上子3・受信ケーブル5に異常(断線)が有る旨の情報を含む前記故障信号を前記外部装置へと出力する。なお、上記(3)の場合と同様に、第2変成器33の故障率は、受信ケーブル5の故障率に比べて低いと考えられるので、異常診断部23が受信ケーブル5に異常(断線)がある旨の情報を含む前記故障信号を前記外部装置へと出力するようにしてもよい。
【0021】
(5)第1電圧検知部24によって検知された電圧が前記第1参照電圧であるが、電流検知部26によって検知された電流が前記参照電流とは異なり、かつ、第1電圧検知部24によって検知された電圧を電流検知部25によって検知された電流で除算した値が第1変成器31の一次側のインピーダンスに相当する場合
この場合、第1変成器31の二次側から第2変成器33の一次側までの間で断線が発生していると考えられるため、異常診断部23は、車上子3に異常(断線)がある旨の情報を含む前記故障信号を前記外部装置へと出力する。
【0022】
このように、本実施形態による車上装置1Aによれば、異常診断部23が定期的に車上装置1Aの異常診断を行い、異常がある場合には異常が発生している箇所の情報を含む故障信号を前記外部装置へと出力する。これにより、異常が発生している箇所を特定するための作業等を低減することができ、車上装置1Aを速やかに復旧させることができる。
【0023】
ここで、上記第1実施形態による車上装置1Aにおいては、二つの電圧検知部(第1電圧検知部24,第2電圧検知部25)を設けているが、図3に示すように、一つの電圧検知部27を、切替えスイッチ28を介して前記送信経路及び前記受信経路に接続させるように構成してもよい。この場合、切替えスイッチ28は、通常、電圧検知部27を前記送信経路に接続させておき、異常診断部23から前記疑似受信信号の出力要求と併せて出力される切替え要求によって作動して電圧検知部27を前記受信経路に接続させるようにすればよい。
【0024】
なお、異常診断部23が、送信部21Aから前記疑似受信信号が出力されたときに前記送信経路を流れる電流値に相当する第2参照電流をさらに記憶しておくことで、例えば次のようにして切替えスイッチ28における異常の有無も診断することができる。
【0025】
例えば、異常診断部23が切替えスイッチ28に切替え要求を出力したときに、電圧検知部27によって検知された電圧が前記第2参照電圧であり、かつ、電流検知部26によって検知された電流が前記第2参照電流である場合には、切替えスイッチ28が電圧検知部27を前記送信経路に接続した状態で固着していると考えられる。
異常診断部23が切替えスイッチ28に切替え要求を出力して電圧検知部27によって検知された電圧が前記第2参照電圧であることを確認し、その後、切替えスイッチ28を通常の状態に戻した場合において、電圧検知部27によって検知された電圧が前記第2参照電圧のままであるときには、切替えスイッチ28が電圧検知部27を前記受信経路に接続した状態で固着したと考えられる。
また、電流検知部26によって検知された電流が前記参照電流であるが、電圧検知部27によって電圧が検知されない場合には、切替えスイッチ28の接触不良が考えられる。
これらの場合、異常診断部23は、送受信ユニット2(切替えスイッチ28)に異常が有る旨の情報を含む前記故障信号を前記外部装置に出力する。
【0026】
次に、本発明の第2実施形態による車上装置1Bについて説明する。
図4は、第2実施形態による車上装置1Bの概略構成を示している。なお、上記第1実施形態による車上装置1Aと同一の構成要素については同一の符号を用いてその説明は省略する。
【0027】
上記第1実施形態による車上装置1Aとの相違点は、第2実施形態による車上装置1Bにおいては、送受信ユニット2Bの送信部21Bが、図5に示すように、前記送信信号を発生する送信信号発生部211及び前記疑似受信信号を発生する疑似受信信号発生部212に加えて、前記送信信号よりも信号電圧の低い診断用の小信号を発生する小信号発生部214を有すること、及び、信号選択部213Bが前送信信号、前記疑似受信信号及び前記小信号のうちのいずれかを選択することである。また、車上子3Bが、第1変成器31とアンテナ部32との間に並列接続されたダイオード(整流素子)34a及び還流ダイオード(還流用整流素子)34bを有していることである。
【0028】
小信号発生部214は、発振回路、増幅回路などを有して構成される。
ダイオード34aは、第1変成器31からアンテナ部32に向かう電流を流し、還流ダイオード34bは、ダイオード34aとは逆向きに設置されている。また、ダイオード34aの順方向電圧は、前記送信信号(及び前記疑似受信信号)の信号電圧よりも低く、かつ、前記小信号の信号電圧よりも高く設定されている。すなわち、ダイオード34aは、前記送信信号又は前記疑似受信信号が入力された場合には、アンテナ部32側へと電流を流すが、前記小信号が入力された場合には、アンテナ部32側へと電流を流さないようになっている。
【0029】
また、本実施形態において、異常診断部23は、前記第1参照電圧、前記参照電流及び前記第2参照電圧に加えて、前記小信号の信号電圧に相当する第3参照電圧を記憶している。もちろん、第1実施形態と同様、第3参照電圧を記憶しておくことに代えて、送信部21Aから当該送信部21Aが出力する信号の信号電圧に相当する情報を入力するようにしてもよい。
【0030】
そして、異常診断部23は、上記第1実施形態と同様、車上装置1Bの異常診断を行うが、上記(1)〜(5)に加えて、さらに次の場合においても異常が発生している箇所を特定する情報を前記故障信号に含ませた上で前記外部装置に出力する。
【0031】
(6)第1電圧検知部24によって検知された電圧が前記第1参照電圧よりも低く、かつ、電流検知部26によって電流が検知された場合
この場合、異常診断部23は、送信部21B(信号選択部213B)に対して、前記送信信号に代えて前記小信号を出力するように要求し、その後、再び第1電圧検知部24及び電流検知部26の検知結果を入力する。
そして、送信部21Bから前記小信号が出力されているときに、第1電圧検知部24によって検知された電圧が前記第3参照電圧よりも低い場合には、送信ケーブル4及び/又は第1変成器31にて短絡又は混触が発生していると考えられるので、異常診断部23は、車上子3・送信ケーブル4に異常(短絡/混触)がある旨の情報を含む前記故障信号を前記外部装置へと出力する。
一方、送信部21Bから前記小信号が出力されているときに、第1電圧検知部24によって検知された電圧が前記第3参照電圧である場合、又は、第1電圧検知部24によって検知された電圧を電流検知部26によって検知された電流で除算した値が第1変成器31の一次側のインピーダンスに相当する場合には、第1変成器31よりも下流側、例えばアンテナ部32や第2変成器33にて混触が発生していると考えられるので、異常診断部23は、車上子3に異常(混触)がある旨の情報を含む前記故障信号を前記外部装置へと出力する。
【0032】
このように、本実施形態による車上装置1Bによれば、上記第1実施形態による車上装置1Aと同様、車上装置1Bに異常がある場合に、異常が発生している箇所の情報を含む故障信号を前記外部装置へと出力するので、異常が発生している箇所を特定するための作業等を低減することができる。特に、異常が短絡や混触である場合に、これらが発生している箇所を特定することができる。
【0033】
なお、第2実施形態による車上装置1Bにおいては、二つの電圧検知部(第1電圧検知部24,第2電圧検知部25)を設けているが、上記第1実施形態による車上装置1Aと同様に、一つの電圧検知部27を、切替えスイッチ28を介して前記送信経路及び前記受信経路に接続させるように構成することができる(図3を参照)。
【0034】
ところで、上記(1)〜(3)、(5)、(6)においては、第2電圧検知部25によって検知された電圧が使用されていない。このため、上記第1,2実施形態による車上装置1A,Bに対して、第2電圧検知部25を有しない構成の車上装置とすることも可能である。この場合、送信部21A,Bは、疑似受信信号発生部212を含まなくてもよく、異常診断部23は、第1電圧検知部24によって検知された電圧及び電流検知部26によって検知された電流に基づいて車上装置における異常の有無を診断する。例えば、異常診断部23は、前記送信信号が出力されているときに、第1電圧検知部24によって検知された電圧が前記第1参照電圧であり、かつ、電流検知部26によって検知された電流が前記参照電流である場合に車上装置が正常であると診断し、それ以外の場合には車上装置に異常があると診断して前記故障信号を前記外部装置に出力する。そして、上記(1)〜(3)、(5)及び(6)の場合には、異常が発生している可能性がある箇所を特定する情報を前記故障信号に含ませた上で前記外部装置に出力する。このようにしても、上記実施形態と同様、異常が発生している箇所を特定するための作業等を低減することができる。但し、疑似受信信号を用いることによって受信機能に関する診断も行える点で、上記第1、2実施形態による車上装置1A,Bの方が好ましい。
【0035】
また、上記第1,2実施形態による車上装置は、主に有電源地上子との間で信号の送受信を行うものであるが、無電源地上子との間で信号の送受信を行う車上装置としてもよいことはもちろんである。この場合には、送受信ユニットがさらに電波発生部を有するとともに車上子がさらに電波送信用アンテナを有し、送受信ユニット(電波発生部)と車上子(電波送信用アンテナ)との間を電波送信用ケーブルで接続するように構成すればよい。
【0036】
また、上記第1,2実施形態による車上装置においては、電圧検知部、電流検知部及び異常診断部が送受信ユニット内に設けられているが、これに限るものではなく、これらの一部又は全部が送受信ユニット外に設けられもよい。
【0037】
以上、本発明の実施形態及びその変形例について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて更なる変形及び変更が可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0038】
1A,1B…車上装置、2A,2B…送受信ユニット、3A,3B…車上子、4…送信ケーブル、5…受信ケーブル、21A,21B…送信部、22…受信部、23…異常診断部、24…第1電圧検知部、25…第2電圧検知部、26…電流検知部、27…電圧検知部、31…送信トランス(第1変成器)、32…アンテナ部(送受信アンテナ)、33…受信トランス(第2変成器)、34a…ダイオード(整流素子)、34b…還流ダイオード(還流用整流素子)、211…送信信号発生部、212…疑似受信信号発生部、213A,213B…信号選択部、214…小信号発生部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信部及び受信部を有する送受信ユニットと、第1変成器、送受信アンテナ及び第2変成器を有する車上子と、前記送受信ユニットと前記車上子との間を接続する送信ケーブル及び受信ケーブルと、を含み、
前記送信部から出力された送信信号を前記送信ケーブル、前記第1変成器及び前記送受信アンテナを介して地上装置へと送信する一方、前記地上装置から送信された信号を前記送受信アンテナによって受信し、この受信信号を前記第2変成器及び前記受信ケーブルを介して前記受信部に入力する車上装置であって、
前記送信部から出力された信号の信号電圧を検知する第1電圧検知部と、
前記送信ケーブルを流れる電流を検知する電流検知部と、
前記電圧検知部によって検知された電圧及び前記電流検知部によって検知された電流に基づいて当該車上装置における異常の有無を診断する異常診断部と、
を備える、車上装置。
【請求項2】
前記送信部は、前記送信信号を発生する送信信号発生部と、診断用の疑似受信信号を発生する疑似受信信号発生部と、前記送信信号又は前記疑似受信信号を選択する信号選択部と、を有し、
前記受信部に入力される信号の信号電圧を検知する第2電圧検知部をさらに備え、
前記異常診断部は、前記電圧検知部によって検知された電圧、前記電流検知部によって検知された電流、及び、前記第2電圧検知部によって検知された電圧に基づいて当該車上装置における異常の有無を診断する、
請求項1に記載の車上装置。
【請求項3】
前記送信部は、前記送信信号を発生する送信信号発生部と、診断用の疑似受信信号を発生する疑似受信信号発生部と、前記送信信号よりも信号電圧が低い診断用の小信号を発生する小信号発生部と、前記送信信号、前記疑似受信信号又は前記小信号を選択する信号選択部を有し、
前記車上子は、前記第1変成器と前記送受信アンテナとの間に並列接続された整流素子及び還流用整流素子を有し、
前記整流素子は、前記第1変成器から前記送受信アンテナに向かう電流を流すとともにその順方向電圧が前記送信信号の信号電圧よりも低く、かつ、前記小信号の信号電圧よりも高い、
請求項1又は2に記載の車上装置。
【請求項4】
前記第1電圧検知部、前記電流検知部、前記第2電圧検知部及び前記異常診断部が前記送受信ユニット内に設けられている、請求項2又は3に記載の車上装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−228000(P2012−228000A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91139(P2011−91139)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】