説明

車両、冷却装置、および冷却方法

【課題】自動車を冷却する空気調和装置では、ユーザが乗車してから車内が冷却されるまでに時間がかかる。
【解決手段】車両は、ユーザが乗車する乗車空間と、乗車空間に配置され、圧縮空気を貯蔵可能な第1タンクと、乗車空間に対して第1タンクに貯蔵された圧縮空気を放出させる制御部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの車両の乗車空間を冷却する車両、冷却装置、および冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両は、一般的に、その乗車空間を冷却するために、ユーザが乗車し、ユーザがイグニッションキーを操作してエンジンを起動することにより、冷却動作を開始する空気調和装置を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−168476号公報
【特許文献2】特開2010−216739号公報
【特許文献3】特開2008−296901号公報
【特許文献4】特開2007−168466号公報
【特許文献5】特開2008−183996号公報
【特許文献6】特開2005−238911号公報
【特許文献7】特開2007−297965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の空気調和装置では、ユーザが乗車し、ユーザがイグニッションキーを操作してエンジンを起動することにより冷却サイクルを回し始めるため、実際に乗車空間が冷却され始めるまでに時間遅れが生じる。
特に、車両が炎天下に置かれたような状況では、乗車空間が熱せられており、乗車空間が冷却されるまで、ユーザは、暑い乗車空間に耐えなければならない。
【0005】
特許文献は何れもこのような従来の課題を解決するもので、特許文献1から6は、圧縮した空気を乗車空間に放出する技術を開示する。
特許文献7は、排出ガスの圧力や熱を利用した発電・空気冷却システムを開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ところで、このように圧縮した空気を乗車空間に放出する際に、圧縮の制御により様々な効果が期待できる。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、圧縮空気の適切な充填、放出が可能な空気調和装置を提供することを目的としている。
【0007】
本発明の第1の観点に係る車両は、ユーザが乗車する乗車空間と、乗車空間に配置され、圧縮空気を貯蔵可能な第1タンクと、乗車空間に対して第1タンクに貯蔵された圧縮空気を放出させる制御部と、を有する。
【0008】
好適には、第1タンクへの空気の圧縮は、ユーザの乗車中に実行されてよい。
【0009】
好適には、第1タンクへ空気を圧縮するコンプレッサを有し、コンプレッサは、冷房する場合には、暖房する場合と比べて、ゆっくりと空気を圧縮してよい。
【0010】
好適には、コンプレッサは、乗車空間の空気を吸引して圧縮してよい。
【0011】
好適には、当該車両の乗車空間以外の位置に配置され、圧縮空気を貯蔵可能な第2タンクを有し、暖房する場合には、乗車空間内の第1タンクで空気を圧縮し、冷房する場合には、乗車空間外の第2タンクで空気を圧縮してよい。
【0012】
本発明の第2の観点に係る冷却装置は、ユーザが乗車する車両の乗車空間を冷却する冷却装置であって、乗車空間に配置され、圧縮空気を貯蔵可能なタンクと、乗車空間に対してタンクに貯蔵された圧縮空気を放出させる制御部と、を有する。
【0013】
本発明の第3の観点に係る冷却方法は、ユーザが乗車する車両の乗車空間を冷却する圧縮空気をタンクに貯蔵する冷却装置の冷却方法であって、タンクは、乗車空間に配置され、タンクに圧縮空気を貯蔵し、タンクに貯蔵された圧縮空気を乗車空間へ放出する。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、タンクに蓄積していた圧縮空気を乗車空間へ放出する。
乗車空間は、乗車空間へ放出された圧縮空気により冷却される。
その結果、本発明では、車内を直ちに冷却できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係る冷却装置を用いた、自動車の車体の部分透視の側面図である。
【図2】図2は、図1の自動車に搭載される冷却装置の構成図である。
【図3】図3は、図2のコントローラによる冷却のための制御のフローチャートである。
【図4】図4は、本発明の第2実施形態に係る冷却装置の構成図である。
【図5】図5は、図4の冷却装置での圧縮工程のフローチャートである。
【図6】図6は、本発明の第3実施形態に係る冷却装置を用いた、自動車の車体の部分透視の側面図である。
【図7】図7は、本発明の第4実施形態に係る冷却装置を用いた、自動車の車体の部分透視の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る冷却装置10を用いた、自動車1の部分透視の側面図である。
【0017】
図1の自動車1は、車体2を有する。
車体2の中央部には、ユーザが乗り込む乗車空間3を有する。
乗車空間3内には、ユーザが着座する座席4が2列で設けられている。
車体2の乗車空間3の側面には、ユーザが乗車するために開閉するドアパネル5が設けられている。
ドアパネル5の上部には、ウィンドウガラス6が上下移動可能に設けられている。
ユーザは、ドアパネル5を開閉して乗車して座席4に座ることができる。
ユーザは、ドアパネル5の内面に設けられた開閉スイッチを操作してウィンドウガラス6を開閉することができる。
【0018】
乗車空間3は、ドアパネル5およびウィンドウガラス6を閉じた状態で、外から隔離された空間となる。
このような乗車空間3では、たとえば夏の暑い日射などで室温が大幅に上昇する。また、ハンドル、座席4などの内装品の表面温度も上昇し、ユーザにとって乗車空間3を急激に冷却する必要が生じる。
一般的な自動車1では、乗車したユーザがイグニッションキーを操作してエンジンを始動し、空気調和装置を起動し、これに伴ってコンプレッサを駆動することで空気調和装置の冷却サイクルが始動することにより、乗車空間3の空気が冷却される。
しかしながら、このように空気調和装置を用いて乗車空間3を冷却する場合、熱交換器を利用して乗車空間3の空気を直接に冷却するため、ユーザが乗車してから乗車空間3が冷却されるまでに時間がかかる。
そこで、本実施形態では、乗車しようとするユーザが乗車する前に、圧縮空気を乗車空間へ放出することで乗車空間を急激に冷却する冷却装置10を用いる。
【0019】
図2は、図1の自動車1に搭載される冷却装置10の構成図である。
図2の冷却装置10は、図1の乗車空間3に対して圧縮空気を放出することにより、乗車空間3を冷却するものである。
冷却装置10は、コンプレッサ11、吸気ダクト12、吸気弁13、タンク14、排気ダクト15、排気弁16、およびコントローラ17を有する。
冷却装置10は、タンク14の圧縮空気の圧力を検出する圧力センサ20を有する。
【0020】
コンプレッサ11は、コントローラ17により起動および停止が制御され、起動中に空気を吸引して圧縮して出力する。コントローラ17は、起動中のコンプレッサ11の能力を制御してよい。
コンプレッサ11には、容積型ポンプを使用するとよい。容積型ポンプには、たとえばピストンポンプ、ダイヤフラムポンプ、スクロールポンプ、ロータリポンプ、スライドベーンポンプがある。
車体2の走行中に動作させる場合、車体2での使用実績から、ピストンポンプ、ダイヤフラムポンプ、スクロールポンプなどの信頼性が高い。
数MPa以上の圧力の圧縮空気を生成する場合には、ピストンポンプ、ダイヤフラムポンプが好適である。
また、本実施形態の冷却装置10は、圧縮した空気を直接に乗車空間3へ放出する。乗車空間3の汚染を抑制するため、コンプレッサ11には、オイルレスタイプのものを使用するのが望ましい。冷却装置10の圧縮空気をそのまま乗車空間3へ放出するのではなく、圧縮空気の冷気を熱交換器によりたとえば外気などの別の空気に伝えて乗車空間3へ供給してよい。
【0021】
コンプレッサ11の吸気口18は、乗車空間3に設けられても、自動車1の外(乗車空間3外)に設けられてもよい。
本実施形態では、吸気口18は、乗車空間3外のエンジンルームに設けられている。
乗車空間3外の外気を吸引する場合、コンプレッサ11は、走行速度に応じて吸引能力を調整しても、停車中に吸引するようにしてもよい。外気の気圧の変動などにより、コンプレッサ11に過度な負荷が作用し難くなる。
乗車空間3内の内気を吸引する場合、乗車空間3の気圧が下がる。このため、たとえば自動車1に搭載された空気調和装置を外気導入モードに設定した状態で、コンプレッサ11が吸引すればよい。内気は、一般的に空気調和装置により温度および湿度が調整される。内気は、外気よりも、タンク14に貯蔵する空気中の湿気を抑制し、当該空気を乗車空間3へ再放出した後の冷却効果および湿度上昇の抑制効果を期待できる。
【0022】
コンプレッサ11は、車体2に搭載されるエンジン7の回転駆動力を動力源として利用できる。このため、図1に示すように、コンプレッサ11は、エンジンルームに設けるとよい。この場合、エンジン7の出力軸とコンプレッサ11の入力軸との間に、電磁クラッチ21を設ける。電磁クラッチ21を切ることにより、エンジン7の動作中にコンプレッサ11を停止できる。この他にもたとえば、コンプレッサ11は、車体2に搭載されるバッテリ若しくは太陽光パネルの電源又は家庭用電源、走行中に生じる上下動などの車体2の振動を動力源として利用してよい。
また、冷却装置10のコンプレッサ11は、車両に搭載されている空気調和装置のコンプレッサと一体化してもよい。
【0023】
吸気ダクト12は、コンプレッサ11とタンク14とを接続する。
コンプレッサ11により圧縮された空気は、吸気ダクト12を通じてタンク14へ供給される。
【0024】
吸気弁13は、吸気ダクト12に設けられる。吸気弁13は、コントローラ17により開閉制御される。
吸気弁13が開状態である場合、コンプレッサ11により圧縮された空気はタンク14へ供給される。
吸気弁13が閉状態である場合、吸気ダクト12が遮断され、コンプレッサ11からタンク14への圧縮空気の供給が停止する。タンク14側からコンプレッサ11へ圧縮空気が逆流しない。
【0025】
タンク14は、圧縮空気を貯蔵する。
タンク14は、たとえばステンレスなどの金属製、強化プラスチック製でよい。これらの素材によるタンク14は、高い圧力で圧縮空気を貯蔵できる。
例えば乗車空間の容積が4000Lの車両に対し、40Lのタンクに100気圧で圧縮空気を保存し、制御部が乗車空間に室温より低い乗車空間の容積に等しい程度の圧縮空気を放出することで、乗車空間内の高い室温の空気を車室外に押し出し、膨張することで冷却された圧縮空気が乗車空間の空気と入れ替わることで乗車空間の室温を下げることができる。そのため、タンク14の容量および形状に特段の制限はないが、好適にはタンクの容量は乗車空間の容積と同じかそれ以上としてよい。また、乗車空間の空気と膨張した圧縮空気が入れ替わるのではなく、乗車空間の容積よりも少ない圧縮空気を乗車空間に放出することで乗車空間の高い室温を低減してもよい。タンク14の容量が大きいほど、大量の圧縮空気を蓄積できる。
タンク14は、自動車1または冷却装置10に固定されても、着脱可能でもよい。タンク14が着脱可能である場合、タンク14を交換できる。予め圧縮空気を封入したタンク14を取り付けることにより、コンプレッサ11を用いることなく、圧縮空気を乗車空間3へ放出することが可能になる。タンク14に圧縮空気とともにアロマオイルや芳香剤を同時封入することにより、車内の消臭効果を期待できる。
【0026】
タンク14の設置場所には、特に制限はない。
自動車1等に要求される安全基準などに基づいて、適切な箇所に設置すればよい。
図1では、タンク14は、乗車空間3に設けられている。
乗車空間3に設置する場合、タンク14は、直射日光が当たらない箇所または高温となり難い箇所に設置するとよい。たとえば、グローブボックス内に設置すれば、グローブボックスをタンク14とユーザとの隔壁として利用しつつ、助手席においてタンク14を容易に交換である。
タンク14は、車体2のカーゴスペース、またはエンジンルームに設置してよい。
なお、冷却装置10は、複数個のタンク14を有してよい。複数個のタンク14は、それらが独立して圧縮空気を蓄積し乗車空間3へ供給するものでも、一方のタンク14から他方のタンク14へ圧縮空気を供給するものでもよい。
【0027】
排気ダクト15は、タンク14と乗車空間3とを接続する。
タンク14から排気された圧縮空気は、排気ダクト15を通じて自動車1の乗車空間3へ供給される。
排気ダクト15の排気口19は、乗車空間3に設けられる。排気口19は、ノズル形状でよい。排気口19をノズル形状とすることで、排気ダクト15内で圧力を保ったまま圧縮空気を乗車空間3へ吐出できる。
排気口19の配置、向き、個数には特段の制限はない。空気調和装置の排気口を利用してよい。
ただし、圧縮された空気には、それが膨張することにより気温を下げる効果があるだけでなく、それを吹き付けた物体の表面温度を下げる効果がある。このため、シート、ハンドル、ダッシュボードなどの高温となる箇所またはユーザが直接接触する箇所に対して、圧縮空気を直接吹き付けることができる位置、向きで、排気口19を設けるとよい。たとえばピラー、ルーフなどに下向きに排気口19を設ければよい。
図1では、複数の排気口19の一部は、ルーフに下向きに設けられ、圧縮空気を座席4に吹き付けるように配置されている。また、複数の排気口19の残部は、座席4内に上向きに設けられ、圧縮空気を座席4から乗車空間3に吹き出すように配置されている。
【0028】
排気弁16は、排気ダクト15に設けられる。排気弁16は、コントローラ17により開閉制御される。
排気弁16が閉状態である場合、排気ダクト15が遮断され、タンク14内の圧縮空気はタンク14内に留まり貯蔵される。コンプレッサ11の動作中に排気弁16を閉じることにより、タンク14内の空気圧が高まる。
排気弁16が開状態である場合、タンク14に貯蔵された圧縮空気は、乗車空間3へ放出される。
【0029】
コントローラ17は、コンプレッサ11、吸気弁13、排気弁16、圧力センサ20などの冷却装置10の各部に接続される。コントローラ17は、冷却装置10を制御する。
冷却装置10は、コンプレッサ11で空気を圧縮し、圧縮した空気をタンク14に貯蔵し、タンク14に貯蔵した圧縮空気を乗車空間3へ放出する。乗車空間3へ放出された圧縮空気は、乗車空間3で膨張し、この膨張の際の吸熱効果により、乗車空間3内の空気を冷却する。また、圧縮空気が吹き付けられた箇所は、冷却される。
なお、コントローラ17は、圧縮空気を貯蔵するタンク14をヒータにより加熱したり又はサーミスタにより冷却したりしてよい。これにより、圧縮空気の放出前温度を調整し、圧縮空気を放出した後の乗車空間3の室温を調整するができる。
コントローラ17は、制御プログラムを記憶するメモリと、制御プログラムを実行する中央処理装置とを有する。コントローラ17は、独立したコントローラ17でよいが、自動車1のエンジン7を制御するECU(Engine Control Unit)の一部として実現されても、空気調和装置のコントローラに実現されてもよい。
コントローラ17には、制御の処理または判断に使用する各種の情報を得るために、車両の走行制御信号、各種の検出信号が入力される。このような信号としては、たとえば、イグニッションキーの状態の検出信号、エンジン7の起動信号若しくは停止信号、速度パルス信号、ブレーキの操作信号、リモートコントロール開閉キーの検出信号、ドアパネル5のロック開錠信号若しくは施錠信号がある。この他にも、たとえば、外気温センサ、内気温センサ若しくは日照センサの検出信号がある。
なお、コントローラ17は、時刻や時間を計測するタイマ、携帯電話機などと通信する無線通信部などを備えてよい。
【0030】
次に、図2の冷却装置10の動作を説明する。
図3は、図2の冷却装置10の冷却プロセスの全体を示すフローチャートである。
【0031】
図3の全体制御において、冷却装置10のコントローラ17は、まず、空気の圧縮工程を実行する(ステップST1)。
コントローラ17は、たとえばユーザが乗車し、エンジン7が起動されている、ユーザの乗車期間中に、空気の圧縮工程を実行する(ステップST1)。
なお、コンプレッサ11がバッテリにより駆動される場合、コントローラ17は、たとえばユーザが降車する時、または降車した後に、空気の圧縮工程を実行することもできる。
圧縮工程において、コントローラ17は、吸気弁13を開き、排気弁16を閉じた状態で、コンプレッサ11を動作させて、タンク14へ圧縮した空気を供給する。コントローラ17は、電磁クラッチ21を閉じる。
コントローラ17は、タンク14の圧力を検出する圧力センサ20の検出信号や、メモリに記憶されている冷却装置10のサイクルを示すフラグに基づいて、タンク14の圧縮空気の有無を判断し、圧縮空気が貯蔵されていない場合にコンプレッサ11を動作させるようにしてよい。
【0032】
圧力センサ20の圧力が所定の基準値以上になると、コントローラ17は、コンプレッサ11を停止し、吸気弁13を閉じる。コントローラ17は、電磁クラッチ21を開く。
これにより、吸気弁13および排気弁16がともに閉じた状態になり、タンク14には、基準値以上の略一定の圧力の圧縮空気が貯蔵される(貯蔵工程、ステップST2)。
なお、タンク14への圧縮空気の貯蔵を停止する所定の基準圧力は、大気圧より高ければよく、たとえば数Mpaである。
ところで、空気は圧縮されることにより発熱する。
タンク14に収容された圧縮空気は、圧縮完了後にタンク14とともに冷却される。
たとえばタンク14が断熱構造でない場合、圧縮空気の温度は、タンク14の外気温と同じ温度まで冷却される。
タンク14が乗車空間3に設置されているので、貯蔵工程での冷却により、タンク14の圧縮空気も乗車空間3の温度になる。
よって、このタンク14に圧縮空気を供給した後の貯蔵工程において、タンク14内の圧縮空気の温度は、たとえば常温に冷却される。
【0033】
次に、コントローラ17は、放出工程を実行する(ステップST3)。
コントローラ17は、たとえばユーザが乗車する時、乗車した後、または乗車しそうな直前に、放出工程を実行する。
放出工程において、コントローラ17は、吸気弁13を閉じたまま、排気弁16を開く。
これにより、タンク14に蓄積されていた圧縮空気は、排気ノズルを通じて乗車空間3へ排気される。
圧縮空気は、乗車空間3内で膨張し、膨張に伴う吸熱反応により乗車空間3の室温を低下させる。
なお、この放出工程において、乗車空間3の圧力上昇を抑制するために、コントローラ17は、ウィンドウガラス6を開ける制御を併せて実行してよい。あるいは、コントローラ17は、空気調和装置を外気導入モードに併せて制御してよい。コントローラ17は、このように乗車空間3に通気口が設けられた状態で圧縮空気の放出を開始すればよい。コントローラ17は、ウィンドウガラス6やドアパネル5が開けられたことを検出して、圧縮空気の放出を開始してよい。
【0034】
以上のように、コントローラ17は、圧縮空気を乗車空間3に放出するために、圧縮工程、貯蔵工程および放出工程を1回の冷却サイクルとして実行する。
これにより、放出後の乗車空間3の室温は、放出前と比べて低下する。
冷却装置10は、乗車空間3を冷却できる。
コントローラ17が冷却サイクルを繰り返し実行することにより、乗車空間3を複数回にわたって冷却できる。
また、本実施形態の冷却装置10では、空気を圧縮したら直ちに乗車空間3へ放出するのではなく、貯蔵工程を経ている。
この貯蔵工程での放熱期間を経ることにより、圧縮空気の温度は、圧縮完了時の温度より低下し、たとえば常温になる。
低温化した圧縮空気を乗車空間3へ放出することにより、圧縮直後の高温の圧縮空気を放出する場合に比べて、より多くの室温低下を期待できる。
【0035】
本実施形態では、タンク14は、乗車空間3に設置されている。
乗車空間3は、ユーザが乗車する空間であり、高い安全性がある。タンク14を安全な場所に保管できる。
乗車空間3にタンク14を設置しているので、タンク14から各排気口19までの距離を短くできる。排気ダクト15は、短くなる。
乗車空間3にタンク14を設置し、ユーザ乗車中に圧縮工程を実行するので、圧縮された空気の熱により乗車空間3を暖めることができる。
冷却装置10を暖房に利用できる。
乗車空間3にタンク14を設置しているので、たとえば空気調和装置により室温が制御されている環境下で、発熱したタンク14および圧縮空気を冷却できる。次回の放出工程において冷却された圧縮空気を乗車空間3へ放出することにより、乗車空間3を好適に冷却できる。
【0036】
[第2実施形態]
第1実施形態は、圧縮空気を用いて乗車空間3を冷却する冷却装置10の、基本的な構成および動作の例である。
第2実施形態は、第1実施形態の冷却装置10の圧縮工程を改良した例である。
第2実施形態での車両および冷却装置10の構成は、第1実施形態のものと同様である。
【0037】
図4は、本発明の第2実施形態に係る冷却装置10の構成図である。
図4の冷却装置10は、電磁クラッチ21とコンプレッサ11との間に、変速ギア22が設けられる。
変速ギア22は、たとえば高速と低速との二段階に切り替えることができるものであればよい。
変速ギア22が高速である場合、エンジン7の駆動力により、コンプレッサ11を高速で動作させることができる。タンク14への空気の圧縮が早くなる。タンク14の圧縮空気の温度は、短時間で高くなる。
変速ギア22が低速である場合、エンジン7の駆動力により、コンプレッサ11を低速で動作させることができる。タンク14への空気の圧縮が遅くなる。単位時間当たりの圧縮空気の温度上昇は、低速である場合と比べて、抑えられる。
図4に示すこれ以外の構成要素は、第1実施形態のものと同じであり、第1実施形態と同一の符号を使用してその説明を省略する。
【0038】
次に、図4の冷却装置10の動作を説明する。
図4の冷却装置10での、全体動作は、第1実施形態と同じである。
図5は、図4の冷却装置10での圧縮工程のフローチャートである。
図5に示すように、圧縮工程において、コントローラ17は、現在の季節または時期、寒暖を判断する。
コントローラ17は、たとえばユーザの乗車中に、図5の圧縮工程を実行する。
【0039】
具体的には、コントローラ17は、まず、現在の時期が暖房時期、或いは乗員が暖房を所望するか否かを、空調装置の設定、車室内外気温、空調設定履歴、空調使用履歴、カレンダー情報などから判断する(ステップST11)。暖房時期でない場合、コントローラ17は、さらに、現在の時期が冷房時期であるか否かを判断する(ステップST12)。
【0040】
現在が暖房時期、或いは乗員が暖房を所望すると判断する場合、コントローラ17は、変速ギア22を高速に切り替える(ステップST13)。
そのうえで、コントローラ17は、圧縮を実行する(ステップST14)。
これにより、乗車空間3に設けられたタンク14には、空気が高速で圧縮される。圧縮空気の発熱は短時間で大きくなる。この短時間の発熱で、乗車空間3が急速に温められる。
【0041】
現在が冷房時期、或いは乗員が冷房を所望すると判断する場合、コントローラ17は、変速ギア22を低速に切り替える(ステップST15)。
そのうえで、コントローラ17は、圧縮を実行する(ステップST14)。
これにより、乗車空間3に設けられたタンク14には、空気が低速で圧縮される。圧縮空気の単位時間当たりの発熱は小さくなる。空気調和装置で室温が調整される乗車空間3の温度変動を抑えることができる。空気調和装置に負担をかけることなく、空気を圧縮し、かつ、空気調和装置により、発熱した圧縮空気を急速に冷却することができる。
この熱で乗車空間3が温められる。
【0042】
現在が冷房時期でも、暖房時期でもない場合、或いは乗員が暖房、冷房とも所望しないと判断する場合、コントローラ17は、ステップST14の圧縮を実行することなく、図5の処理を終了する。
【0043】
以上のように、本実施形態では、季節に応じて乗車空間3に設けられたタンク14への空気の圧縮速度を、季節に応じて切り替える。
よって、冷房を必要とする夏場での冷却を可能とするだけでなく、冷却装置10を、暖房を必要とする冬場にも利用できる。
このように通年で、冷却装置10を動作させることにより、長期にわたる不動作期間によるコンプレッサ11などの不具合の発生を抑えることができる。
なお、暖房を必要とする冬場においてタンク14に空気を圧縮した場合には、タンク14に貯蔵した圧縮空気の放出は、ユーザが降車している期間に行えばよい。または、タンク14に対して車外へ通じる別のダクトを接続し、コントローラ17の制御によりそのダクトを選択し、圧縮空気を車外へ放出してもよい。
【0044】
[第3実施形態]
図6は、本発明の第3実施形態に係る冷却装置10を用いた、自動車1の車体2の部分透視の側面図である。
第3実施形態に係る冷却装置10は、第1実施形態または第2実施形態のものと同じである。
図6に示すように、冷却装置10のコンプレッサ11の吸気口18は、乗車空間3に設けられる。
これにより、コンプレッサ11は、空気調和装置により温度が調整された空気を吸引し、圧縮することができる。
外気温が高くなる夏において、ユーザ乗車中にコンプレッサ11を動作させたとしても、タンク14に圧縮される空気の温度を抑えることができる。
空気調和装置の負担を減らすことができる。
なお、コントローラ17は、冷房を必要とする夏場において、空気調和装置により乗車空間3の室温が適温に調整された後にたとえば図5の圧縮ステップST14を実行するようにしてもよい。
【0045】
[第4実施形態]
図7は、本発明の第4実施形態に係る冷却装置10を用いた、自動車1の車体2の部分透視の側面図である。
図7に示すように、第4実施形態に係る冷却装置10は、乗車空間3に配置されたタンク14の他に、車体2のエンジンルームに配置されたタンク31を有する。以下、本実施形態において、前者を第1タンク14とし、後者を第2タンク31ともよぶ。
また、第4実施形態に係る冷却装置10は、たとえば図4において、吸気弁13と排気弁16の間のダクトは2本に分割され、一方のダクトに第1タンク14が接続され、他方のダクトに第2タンク31が接続される。
コントローラ17は、吸気弁13および排気弁16での切り替えにより、第1タンク14および第2タンク31の一方を選択できる。
これ以外の第4実施形態に係る冷却装置10は、第1実施形態または第2実施形態のものと同じである。
【0046】
そして、コントローラ17は、冷房を必要とする夏場であれば、第2タンク31を選択し、圧縮工程、貯蔵工程、放出工程を実行する。
暖房を必要とする冬場であれば、コントローラ17は、第1タンク14を選択し、圧縮工程、貯蔵工程、放出工程を実行する。
これにより、冬場は、乗車空間3に配置された第1タンク14を使用して、圧縮空気を圧縮する際に発生する熱で乗車空間3を暖めることができる。
夏場は、乗車空間3外に配置された第2タンク31を使用して、圧縮空気を圧縮する際に発生する熱で乗車空間3の温度が上昇しないようにできる。
【0047】
以上の実施形態は、本発明の好適な実施形態の例であるが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形または変更が可能である。
【0048】
上記実施形態は、冷却装置10は、自動車1に搭載されている。
この他にもたとえば、冷却装置10は、バス、電車などのその他の車両に搭載されてよい。
冷却装置10は、車両から分離された単独の装置として形成されてよい。
コンプレッサ11の駆動源に電動モータを使用することで、冷却装置10は、エンジン7の駆動力を動力源とすることなく圧縮工程を実施できる。電動コンプレッサを用いる冷却装置10は、車両のバッテリ、太陽光発電パネル、家庭用電源の電力により動作できる。
持ち運び可能な冷却装置10とすることで、複数の車両の冷却に使用できる。非常用の冷却装置10としても利用できる。
【0049】
上記実施形態では、自動車1などの車両の乗車空間3は、冷却装置10により冷却される。
自動車1などの車両は、一般的に、コンプレッサ、コンデンサ、レシーバ、エキスパンションバルブ、エバボレータで冷媒を循環し、ブロアファンにより乗車空間3の空気をエバボレータへ吹き付けて冷却する空気調和装置を有する。
この他にもたとえば、自動車1などの車両の乗車空間3は、冷却装置10および空気調和装置により冷却されてよい。
たとえば冷却装置10で初期冷却した後に、空気調和装置で所望の温度に冷却すればよい。
これにより、乗車空間3は、空気調和装置だけで乗車空間3を冷却する場合に比べて、確実に短時間で冷却される。
なお、このような冷却装置10と空気調和装置とによる協働の冷却動作は、これらのコントローラが別々である場合には、たとえば冷却装置10から空気調和装置へ起動信号を送信することにより実現できる。
コントローラが共通化されている場合には、冷却装置10の制御プログラムから空気調和装置の制御プログラムに対して、フラグなどによるプログラム間通信により通信させることにより実現できる。
【符号の説明】
【0050】
1…自動車(車両)
3…乗車空間
7…エンジン
10…冷却装置
11…コンプレッサ
14…タンク(第1タンク)
17…コントローラ(制御部)
31…第2タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが乗車する乗車空間と、
前記乗車空間に配置され、圧縮空気を貯蔵可能な第1タンクと、
前記乗車空間に対して前記第1タンクに貯蔵された圧縮空気を放出させる制御部と、
を有する車両。
【請求項2】
前記第1タンクへの空気の圧縮は、
ユーザの乗車中に実行される
請求項1記載の車両。
【請求項3】
前記第1タンクへ空気を圧縮するコンプレッサを有し、
前記コンプレッサは、
冷房する場合には、暖房する場合と比べて、ゆっくりと空気を圧縮する
請求項1または2記載の車両。
【請求項4】
前記コンプレッサは、前記乗車空間の空気を吸引して圧縮する
請求項3記載の車両。
【請求項5】
当該車両の前記乗車空間以外の位置に配置され、圧縮空気を貯蔵可能な第2タンクを有し、
暖房する場合には、前記乗車空間内の前記第1タンクで空気を圧縮し、
冷房する場合には、前記乗車空間外の前記第2タンクで空気を圧縮する
請求項1から4のいずれか一項記載の車両。
【請求項6】
ユーザが乗車する車両の乗車空間を冷却する冷却装置であって、
前記乗車空間に配置され、圧縮空気を貯蔵可能なタンクと、
前記乗車空間に対して前記タンクに貯蔵された圧縮空気を放出させる制御部と、
を有する冷却装置。
【請求項7】
ユーザが乗車する車両の乗車空間を冷却する圧縮空気をタンクに貯蔵する冷却装置の冷却方法であって、
前記タンクは、前記乗車空間に配置され、
前記タンクに圧縮空気を貯蔵し、
前記タンクに貯蔵された圧縮空気を前記乗車空間へ放出する
冷却方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−75572(P2013−75572A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215659(P2011−215659)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】