説明

車両、冷却装置、および冷却方法

【課題】自動車を冷却する空気調和装置では、ユーザが乗車してから車内が冷却されるまでに時間がかかる。
【解決手段】車両は、ユーザが乗車する乗車空間と、圧縮空気を貯蔵可能なタンクと、乗車空間に対してタンクに貯蔵された圧縮空気を放出させる制御部と、を有する。タンクに貯蔵されている圧縮空気は、前回の乗車中に、所定圧力を超えると貯蔵を終了するようにして貯蔵されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの車両の乗車空間を冷却する車両、冷却装置、および冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両は、一般的に、その乗車空間を冷却するために、ユーザが乗車し、ユーザがイグニッションキーを操作してエンジンを起動することにより、冷却動作を開始する空気調和装置を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−168476号公報
【特許文献2】特開2010−216739号公報
【特許文献3】特開2008−296901号公報
【特許文献4】特開2007−168466号公報
【特許文献5】特開2008−183996号公報
【特許文献6】特開2005−238911号公報
【特許文献7】特開2007−297965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の空気調和装置では、ユーザが乗車し、ユーザがイグニッションキーを操作してエンジンを起動することにより冷却サイクルを回し始めるため、実際に乗車空間が冷却され始めるまでに時間遅れが生じる。
特に、車両が炎天下に置かれたような状況では、乗車空間が熱せられており、乗車空間が冷却されるまで、ユーザは、暑い乗車空間に耐えなければならない。
【0005】
特許文献は何れもこのような従来の課題を解決するもので、特許文献1から6は、圧縮した空気を乗車空間に放出する技術を開示する。
特許文献7は、排出ガスの圧力や熱を利用した発電・空気冷却システムを開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ところで、このように圧縮した空気を乗車空間に放出する際には、従前の空気調和装置と協調させることで得られる効果が存在する。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、空気調和装置と適切な協調が可能な冷却装置を提供することを目的としている。
【0007】
本発明の第1の観点に係る車両は、ユーザが乗車する乗車空間と、圧縮空気を貯蔵可能なタンクと、乗車空間に対してタンクに貯蔵された圧縮空気を放出させる制御部と、を有する。そして、タンクに貯蔵されている圧縮空気は、空気調和装置の吹き出し口から乗車空間へ放出される。
【0008】
好適には、空気調和装置は、吹き出し口を有するダクトと、ダクトに収容されるエバポレータと、を有し、タンクに貯蔵されている圧縮空気は、エバポレータと吹き出し口との間においてダクトへ供給されてよい。
【0009】
好適には、空気調和装置は、吹き出し口を有するダクトに接続されるエアーフィルタユニットと、エアーフィルタユニットとエバポレータとの間においてダクトに収容される送風機と、を有し、送風機は、圧縮空気が乗車空間へ放出される際に停止してよい。
【0010】
好適には、空気調和装置は、エバポレータと吹き出し口との間のダクトに収容されたヒータと、ヒータとエバポレータとの間に設けられ、ヒータへの送風を切り替えるエアミックスドアと、を有し、タンクに貯蔵されている圧縮空気は、ヒータと吹き出し口との間においてダクトへ供給されてよい。
【0011】
好適には、ダクトは、複数の吹き出し口を有してよい。
【0012】
本発明の第2の観点に係る冷却装置は、ユーザが乗車する車両の乗車空間を冷却する冷却装置であって、圧縮空気を貯蔵可能なタンクと、乗車空間に対してタンクに貯蔵された圧縮空気を放出させる制御部と、を有する。そして、タンクに貯蔵されている圧縮空気は、空気調和装置の吹き出し口から乗車空間へ放出される。
【0013】
本発明の第3の観点に係る冷却方法は、ユーザが乗車する車両の乗車空間を冷却する圧縮空気をタンクに貯蔵する冷却装置の冷却方法であって、タンクに圧縮空気を貯蔵し、タンクに貯蔵された圧縮空気を、空気調和装置の吹き出し口から乗車空間へ放出する。
冷却方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、タンクに蓄積していた圧縮空気を乗車空間へ放出する。
乗車空間は、乗車空間へ放出された圧縮空気により冷却される。
その結果、本発明では、車内を直ちに冷却できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る冷却装置を用いた、自動車の車体の部分透視の側面図である。
【図2】図2は、図1の自動車に搭載される冷却装置の構成図である。
【図3】図3は、図2のコントローラによる冷却のための制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る冷却装置を用いた、自動車1の部分透視の側面図である。
【0017】
図1の自動車1は、車体2を有する。
車体2の中央部には、ユーザが乗り込む乗車空間3を有する。
乗車空間3内には、ユーザが着座する座席4が2列で設けられている。
車体2の乗車空間3の側面には、ユーザが乗車するために開閉するドアパネル5が設けられている。
ドアパネル5の上部には、ウィンドウガラス6が上下移動可能に設けられている。
ユーザは、ドアパネル5を開閉して乗車して座席4に座ることができる。
ユーザは、ドアパネル5の内面に設けられた開閉スイッチを操作してウィンドウガラス6を開閉することができる。
【0018】
乗車空間3は、ドアパネル5およびウィンドウガラス6を閉じた状態で、外から隔離された空間となる。
このような乗車空間3では、たとえば夏の暑い日射などで室温が大幅に上昇する。また、ハンドル、座席4などの内装品の表面温度も上昇し、ユーザにとって乗車空間3を急激に冷却する必要が生じる。
一般的な自動車1では、乗車したユーザがイグニッションキーを操作してエンジンを始動し、空気調和装置を起動し、これに伴ってコンプレッサを駆動することで空気調和装置の冷却サイクルが始動することにより、乗車空間3の空気が冷却される。
しかしながら、このように空気調和装置を用いて乗車空間3を冷却する場合、熱交換器を利用して乗車空間3の空気を直接に冷却するため、ユーザが乗車してから乗車空間3が冷却されるまでに時間がかかる。
そこで、本実施形態では、乗車しようとするユーザが乗車する前に、圧縮空気を乗車空間へ放出することで乗車空間を急激に冷却する冷却装置10を用いる。
【0019】
図2は、図1の自動車1に搭載される空気調和装置31と、冷却装置10との構成図である。
【0020】
空気調和装置31は、エアクリーナユニット32、空調ダクト33、送風機34、エバポレータ35、ヒータ36、エアミックスドア37を有する。
【0021】
空調ダクト33は、外気導入口41と、内気導入口42と、複数の吹き出し口43とを有する。外気導入口41と内気導入口42との内側には、インテークドア44が設けられる。このインテークドア44を切り替えることで、外気導入モードと内気循環モードとに切り替わる。
複数の吹き出し口43は、たとえば乗車空間3のダッシュボートと一体化される。複数の吹き出し口43は、たとえばダッシュボートの両端および中央に設けられればよい。一部の吹き出し口43は、この他にも、乗車空間3の床(前列の座席4の下)、サイドピラーに設けられてよい。
【0022】
エアクリーナユニット32は、空調ダクト33の外気導入口41に接続される。
エアクリーナユニット32は、たとえば乾式である。エアクリーナユニット32は、外気に含まれる粉塵などのごみを吸着する。エアクリーナユニット32は、湿式でもよい。
【0023】
送風機34は、空調ダクト33において、外気導入口41側に設けられる。
送風機34は、空気調和装置31の図示外のコントローラにより動作および停止が制御される。送風機34は、エアクリーナユニット32から外気を吸引し、または内気導入口42から内気を吸引する。吸引された空気は、空調ダクト33を通じて吹き出し口43から排気される。吹き出し口43から排気された空気は、乗車空間3へ供給される。
【0024】
エバポレータ35は、空調ダクト33において、送風機34と吹き出し口43との間に設けられる。
エバポレータ35は、空気調和装置31のコントローラの制御の下、エンジン7で駆動されるコンプレッサを備えた冷却ユニット46により冷却される。送風機34により送風される空気は、エバポレータ35を通過する際に冷却される。
【0025】
ヒータ36は、空調ダクト33において、エバポレータ35と吹き出し口43との間に設けられる。
ヒータ36は、空気調和装置31のコントローラの制御の下、エンジン7の冷却系ユニット47により加熱される。送風機34により送風される空気は、ヒータ36を通過する際に加熱される。
【0026】
エアミックスドア37は、空調ダクト33において、エバポレータ35とヒータ36との間に設けられる。
エアミックスドア37は、空気調和装置31のコントローラにより制御される。空気を暖める場合、エアミックスドア37は、ヒータ36へ空気を供給する位置へ制御される。空気を冷却する場合、エアミックスドア37は、ヒータ36への空気供給を遮断する位置へ制御される。
【0027】
一般的な自動車1では、乗車したユーザがイグニッションキーを操作してエンジン7を始動する。空気調和装置31は、エンジン7の始動により、エバポレータ35が冷却され、ヒータ36が加熱される。エバポレータ35が冷却された状態で送風機34を始動することにより、乗車空間3の空気を冷却する。
これにより、乗車空間3を冷却できる。
しかしながら、このように空気調和装置31を用いて乗車空間3を冷却する場合、エンジン7が始動しなければ冷却できないので、ユーザが乗車してから乗車空間3が冷却されるまでに時間がかかる。
また、エバポレータ35を利用して乗車空間3の空気を直接に冷却するため、ユーザが乗車してから乗車空間3が冷却されるまでに時間がかかる。
そこで、本実施形態では、空気調和装置31とともに、冷却装置10を用いる。
【0028】
図2の冷却装置10は、図1の乗車空間3に対して圧縮空気を放出することにより、乗車空間3を冷却するものである。
冷却装置10は、コンプレッサ11、吸気ダクト12、吸気弁13、タンク14、排気ダクト15、排気弁16、およびコントローラ17を有する。
冷却装置10は、タンク14の圧縮空気の圧力を検出する圧力センサ20を有する。
【0029】
コンプレッサ11は、コントローラ17により起動および停止が制御され、起動中に空気を吸引して圧縮して出力する。コントローラ17は、起動中のコンプレッサ11の能力を制御してよい。
コンプレッサ11には、たとえば容積型ポンプを使用できる。容積型ポンプは、吸気口18から空気などの流体を吸引し、吸引した流体の容積を減らす動作をすることにより流体を圧縮する。容積型ポンプには、たとえばギアポンプ、ダイヤフラムポンプ、ピストンポンプ、プランジャーポンプがある。ギアポンプは、回転運動により流体を圧縮する。ダイヤフラムポンプ、ピストンポンプ、プランジャーポンプは、往復運動により流体を圧縮する。
本実施形態の冷却装置10は、圧縮した空気をそのまま乗車空間3へ放出する。乗車空間3の汚染を抑制するため、コンプレッサ11には、オイルレスタイプのものを使用するのが望ましい。冷却装置10の圧縮空気をそのまま乗車空間3へ放出するのではなく、圧縮空気の冷気を熱交換器によりたとえば外気などの別の空気に伝えて乗車空間3へ供給してよい。
コンプレッサ11の吸気口18は、乗車空間3に設けられても、自動車1の外(乗車空間3外)に設けられてもよい。乗車空間3外の外気を吸引する場合、コンプレッサ11は、走行速度に応じて吸引能力を調整しても、停車中に吸引するようにしてもよい。外気の気圧の変動などにより、コンプレッサ11に過度な負荷が作用し難くなる。乗車空間3内の内気を吸引する場合、乗車空間3の気圧が下がる。このため、たとえば自動車1に搭載された空気調和装置31を外気導入モードに設定した状態で、コンプレッサ11が吸引すればよい。内気は、一般的に空気調和装置31により温度および湿度が調整される。内気は、外気よりも、タンク14に貯蔵する空気中の湿気を抑制し、当該空気を乗車空間3へ再放出した後の冷却効果および湿度上昇の抑制効果を期待できる。
【0030】
コンプレッサ11は、車体2に搭載されるエンジン7の回転駆動力を動力源として利用できる。このため、図1に示すように、コンプレッサ11は、エンジンルームに設けるとよい。この場合、エンジン7の出力軸とコンプレッサ11の入力軸との間に、電磁クラッチ21を設ける。電磁クラッチ21を切ることにより、エンジン7の動作中にコンプレッサ11を停止できる。この他にもたとえば、コンプレッサ11は、車体2に搭載されるバッテリ若しくは太陽光パネルの電源又は家庭用電源、走行中に生じる上下動などの車体2の振動を動力源として利用してよい。
また、冷却装置10のコンプレッサ11は、車両に搭載されている冷却ユニット46のコンプレッサと一体化してもよい。
【0031】
吸気ダクト12は、コンプレッサ11とタンク14とを接続する。
コンプレッサ11により圧縮された空気は、吸気ダクト12を通じてタンク14へ供給される。
【0032】
吸気弁13は、吸気ダクト12に設けられる。吸気弁13は、コントローラ17により開閉制御される。
吸気弁13が開状態である場合、コンプレッサ11により圧縮された空気はタンク14へ供給される。
吸気弁13が閉状態である場合、吸気ダクト12が遮断され、コンプレッサ11からタンク14への圧縮空気の供給が停止する。タンク14側からコンプレッサ11へ圧縮空気が逆流しない。
【0033】
タンク14は、圧縮空気を貯蔵する。タンク14は、たとえばステンレスなどの金属製、強化プラスチック製でよい。これらの素材によるタンク14は、高い圧力で圧縮空気を貯蔵できる。
例えば乗車空間の容積が4000Lの車両に対し、40Lのタンクに100気圧で圧縮空気を保存し、制御部が乗車空間に室温より低い乗車空間の容積に等しい程度の圧縮空気を放出することで、乗車空間内の高い室温の空気を車室外に押し出し、膨張することで冷却された圧縮空気が乗車空間の空気と入れ替わることで乗車空間の室温を下げることができる。そのため、タンク14の容量および形状に特段の制限はないが、好適にはタンクの容量は乗車空間の容積と同じかそれ以上としてよい。また、乗車空間の空気と膨張した圧縮空気が入れ替わるのではなく、乗車空間の容積よりも少ない圧縮空気を乗車空間に放出することで乗車空間の高い室温を低減してもよい。タンク14の容量が大きいほど、大量の圧縮空気を蓄積できる。
タンク14は、自動車1または冷却装置10に固定されても、着脱可能でもよい。タンク14が着脱可能である場合、タンク14を交換できる。予め圧縮空気を封入したタンク14を取り付けることにより、コンプレッサ11を用いることなく、圧縮空気を乗車空間3へ放出することが可能になる。タンク14に圧縮空気とともにアロマオイルや芳香剤を同時封入することにより、車内の消臭効果を期待できる。
タンク14の設置場所には、特に制限はない。自動車1等に要求される安全基準などに基づいて、適切な箇所に設置すればよい。図1では、タンク14は、エンジンルームに設けられている。タンク14は、カーゴスペース、または乗車空間3に設置してよい。乗車空間3に設置する場合、タンク14は、直射日光が当たらない箇所または高温となり難い箇所に設置するとよい。
なお、冷却装置10は、複数個のタンク14を有してよい。複数個のタンク14は、それらが独立して圧縮空気を蓄積し乗車空間3へ供給するものでも、一方のタンク14から他方のタンク14へ圧縮空気を供給するものでもよい。
【0034】
排気ダクト15は、タンク14と乗車空間3とを接続する。
タンク14から排気された圧縮空気は、排気ダクト15を通じて自動車1の乗車空間3へ供給される。
本実施形態では、排気ダクト15は、空調ダクト33において、ヒータ36と吹き出し口43との間に接続される。
排気ダクト15の排気口19は、ノズル形状でよい。排気口19をノズル形状とすることで、排気ダクト15内で圧力を保ったまま圧縮空気を、空調ダクト33へ吐出できる。
【0035】
排気弁16は、排気ダクト15に設けられる。排気弁16は、コントローラ17により開閉制御される。
排気弁16が閉状態である場合、排気ダクト15が遮断され、タンク14内の圧縮空気はタンク14内に留まり貯蔵される。コンプレッサ11の動作中に排気弁16を閉じることにより、タンク14内の空気圧が高まる。
排気弁16が開状態である場合、タンク14に貯蔵された圧縮空気は、乗車空間3へ放出される。
【0036】
コントローラ17は、コンプレッサ11、吸気弁13、排気弁16、圧力センサ20などの冷却装置10の各部に接続される。コントローラ17は、冷却装置10を制御する。
冷却装置10は、コンプレッサ11で空気を圧縮し、圧縮した空気をタンク14に貯蔵し、タンク14に貯蔵した圧縮空気を乗車空間3へ放出する。乗車空間3へ放出された圧縮空気は、乗車空間3で膨張し、この膨張の際の吸熱効果により、乗車空間3内の空気を冷却する。また、圧縮空気が吹き付けられた箇所は、冷却される。
なお、コントローラ17は、圧縮空気を貯蔵するタンク14をヒータにより加熱したり又はサーミスタにより冷却したりしてよい。これにより、圧縮空気の放出前温度を調整し、圧縮空気を放出した後の乗車空間3の室温を調整するができる。
コントローラ17は、制御プログラムを記憶するメモリと、制御プログラムを実行する中央処理装置とを有する。コントローラ17は、独立したコントローラ17でよいが、自動車1のエンジン7を制御するECU(Engine Control Unit)の一部として実現されても、空気調和装置31のコントローラに実現されてもよい。
コントローラ17には、制御の処理または判断に使用する各種の情報を得るために、車両の走行制御信号、各種の検出信号が入力される。このような信号としては、たとえば、イグニッションキーの状態の検出信号、エンジン7の起動信号若しくは停止信号、速度パルス信号、ブレーキの操作信号、リモートコントロール開閉キーの検出信号、ドアパネル5のロック開錠信号若しくは施錠信号がある。この他にも、たとえば、外気温センサ、内気温センサ若しくは日照センサの検出信号がある。
なお、コントローラ17は、時刻や時間を計測するタイマ、携帯電話機などと通信する無線通信部などを備えてよい。
【0037】
次に、図2の冷却装置10の動作を説明する。
図3は、図2の冷却装置10の冷却プロセスの全体を示すフローチャートである。
【0038】
図3の全体制御において、冷却装置10のコントローラ17は、まず、空気の圧縮工程を実行する(ステップST1)。
コントローラ17は、たとえばユーザが乗車した時、乗車した後、または乗車しそうな状況にある時、圧縮工程を実行する。
圧縮工程において、コントローラ17は、吸気弁13を開き、排気弁16を閉じた状態で、コンプレッサ11を動作させて、タンク14へ圧縮した空気を供給する。電磁クラッチ21を用いる場合、コントローラ17は、これを接続する。
コントローラ17は、タンク14の圧力を検出する圧力センサ20の検出信号や、メモリに記憶されている冷却装置10のサイクルを示すフラグに基づいて、タンク14の圧縮空気の有無を判断し、圧縮空気が貯蔵されていない場合にコンプレッサ11を動作させるようにしてよい。
【0039】
圧力センサ20の圧力が所定の基準値以上になると、コントローラ17は、コンプレッサ11を停止し、吸気弁13を閉じる。電磁クラッチ21を用いる場合、コントローラ17は、これを遮断する。
これにより、吸気弁13および排気弁16がともに閉じた状態になり、タンク14には、基準値以上の圧力の圧縮空気が貯蔵される(貯蔵工程、ステップST2)。
なお、タンク14への圧縮空気の貯蔵を停止する所定の基準圧力は、大気圧より高ければよく、たとえば数Mpaである。
ところで、空気は圧縮されることにより発熱する。
タンク14に収容された圧縮空気は、圧縮完了後にタンク14とともに冷却される。
たとえばタンク14が断熱構造でない場合、圧縮空気の温度は、タンク14の外気温と同じ温度まで冷却される。
よって、このタンク14に圧縮空気を供給した後の貯蔵工程において、タンク14内の圧縮空気の温度は、たとえば常温に冷却される。
【0040】
次に、コントローラ17は、放出工程を実行する(ステップST3)。
コントローラ17は、たとえばユーザが乗車した時、乗車した後、または乗車しそうな状況にある時、放出工程を開始する。
放出工程において、コントローラ17は、吸気弁13を閉じたまま、排気弁16を開く。
これにより、タンク14に蓄積されていた圧縮空気は、排気ノズルを通じて排気される。
圧縮空気は、空調ダクト33で膨張した後、空調ダクト33の複数の吹き出し口43から乗車空間3へ排気される。
乗車空間3に排気された圧縮空気は、乗車空間3内でさらに膨張し、膨張に伴う吸熱反応により乗車空間3の室温を低下させる。
なお、この放出工程において、乗車空間3の圧力上昇を抑制するために、コントローラ17は、ウィンドウガラス6を開ける制御を併せて実行してよい。あるいは、コントローラ17は、空気調和装置31を外気導入モードに併せて制御してよい。コントローラ17は、このように乗車空間3に通気口が設けられた状態で圧縮空気の放出を開始すればよい。コントローラ17は、ウィンドウガラス6やドアパネル5が開けられたことを検出して、圧縮空気の放出を開始してよい。
【0041】
圧縮空気の乗車空間3への放出が終了すると、コントローラ17は、排気弁16を閉じる。
その後、エバポレータ35が冷却されると、空気調和装置31のコントローラは、インテークドア44により外気導入モードから内気循環モードに切り替え、送風機34を起動する。
乗車空間3で膨張した空気は、空気調和装置31のエバポレータ35により冷却される。
これにより、乗車空間3は、空気調和装置31だけで乗車空間3を冷却する場合に比べて、確実に短時間で冷却される。
なお、このような冷却装置10と空気調和装置31とによる協働の冷却動作は、これらのコントローラが別々である場合には、たとえば冷却装置10から空気調和装置31へ起動信号を送信することにより実現できる。
コントローラが共通化されている場合には、冷却装置10の制御プログラムから空気調和装置31の制御プログラムに対して、フラグなどによるプログラム間通信により通信させることにより実現できる。
【0042】
以上のように、コントローラ17は、圧縮空気を乗車空間3に放出するために、圧縮工程、貯蔵工程および放出工程を1回の冷却サイクルとして実行する。
これにより、放出後の乗車空間3の室温は、放出前と比べて低下する。
冷却装置10は、乗車空間3を冷却できる。
コントローラ17が冷却サイクルを繰り返し実行することにより、乗車空間3を複数回にわたって冷却できる。
また、本実施形態の冷却装置10では、空気を圧縮したら直ちに乗車空間3へ放出するのではなく、貯蔵工程を経ている。
この貯蔵工程での放熱期間を経ることにより、圧縮空気の温度は、圧縮完了時の温度より低下し、たとえば常温になる。
低温化した圧縮空気を乗車空間3へ放出することにより、圧縮直後の高温の圧縮空気を放出する場合に比べて、より多くの室温低下を期待できる。
【0043】
圧縮空気は、乗車空間3へ直接放出されるのではなく、空調ダクト33を通じて乗車空間3へ放出される。よって、乗車空間3に、空気調和装置31の吹き出し口43の他に、圧縮空気を放出するための排気口を設ける必要がない。乗車空間3の意匠の自由度が向上する。乗車空間3の形状を変えずに、圧縮空気による急冷が可能になる。
圧縮空気は、複数の吹き出し口43から乗車空間3へ供給される前に、空調ダクト33で一次膨張される。よって、乗車空間3へ供給される圧縮空気の圧力を、下げることができる。ユーザに作用する空気の圧力を下げることができる。特に、本実施形態の空気調和装置31は、複数の吹き出し口43を有する。圧縮空気は、分散して乗車空間3へ放出される。圧縮空気を一か所から乗車空間3へ放出する場合に比べて、やさしく放出できる。
圧縮空気は、空調ダクト33において、吹き出し口43とエバポレータ35との間に供給される。よって、圧縮空気により、空気調和装置31のエバポレータ35およびその周りの箇所を冷却できる。空気調和装置31を始動してから冷気が排気されるまでの期間を短縮できる。圧縮空気による冷却効果を、乗車空間3だけでなく、空気調和装置31にも与えることができる。
詳しくは、圧縮空気は、空調ダクト33において、吹き出し口43とヒータ36との間に供給される。よって、空調ダクト33へ圧縮空気を放出しているにもかかわらず、その圧力等により、エアミックスドア37やヒータ36が破損し難くなる。
圧縮空気の放出中、空気調和装置31は、外気導入モードとなり、送風機34を停止している。よって、空調ダクト33を通じて、エアクリーナユニット32に対して内側から高圧の空気を吹き付けることができる。エアクリーナユニット32に詰まった粉塵などを取り除くことができる。
【0044】
以上の実施形態は、本発明の好適な実施形態の例であるが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形または変更が可能である。
【0045】
上記実施形態は、冷却装置10は、自動車1に搭載されている。
この他にもたとえば、冷却装置10は、バス、電車などのその他の車両に搭載されてよい。
冷却装置10は、車両から分離された単独の装置として形成されてよい。
コンプレッサ11の駆動源に電動モータを使用することで、冷却装置10は、エンジン7の駆動力を動力源とすることなく圧縮工程を実施できる。電動コンプレッサを用いる冷却装置10は、車両のバッテリ、太陽光発電パネル、家庭用電源の電力により動作できる。
持ち運び可能な冷却装置10とすることで、複数の車両の冷却に使用できる。非常用の冷却装置10としても利用できる。
【0046】
上記実施形態では、冷却装置10は、タンク14の他に、コンプレッサ11を有する。
この他にもたとえば、冷却装置10は、タンク14を交換可能として、コンプレッサ11を持たないものとしてもよい。
この場合、冷却装置10は、圧縮工程を実施しない。また、冷却装置10は、タンク14の残圧を確認したり、または新たなタンク14が装着されたかを確認したりして、冷却工程を実施すればよい。
そして、タンク14を購入して利用する場合、そのタンク14は一般的に常温に冷却されているので、冷却のための貯蔵工程も不要である。
【0047】
上記実施形態では、自動車1などの車両の乗車空間3は、冷却装置10および空気調和装置31により冷却される。
この他にもたとえば、自動車1などの車両の乗車空間3は、冷却装置10により冷却されてよい。
【符号の説明】
【0048】
1…自動車(車両)
3…乗車空間
10…冷却装置
11…コンプレッサ
14…タンク
17…コントローラ(制御部)
31…空気調和装置
32…エアーフィルタユニット
33…空調ダクト(ダクト)
34…送風機
35…エバポレータ
36…ヒータ
37…エアミックスドア
43…吹き出し口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが乗車する乗車空間と、
圧縮空気を貯蔵可能なタンクと、
前記乗車空間に対して前記タンクに貯蔵された圧縮空気を放出させる制御部と、
を有し、
前記タンクに貯蔵されている圧縮空気は、
空気調和装置の吹き出し口から前記乗車空間へ放出される
車両。
【請求項2】
前記空気調和装置は、
前記吹き出し口を有するダクトと、
前記ダクトに収容されるエバポレータと、
を有し、
前記タンクに貯蔵されている圧縮空気は、
前記エバポレータと前記吹き出し口との間において前記ダクトへ供給される
請求項1記載の車両。
【請求項3】
前記空気調和装置は、
前記吹き出し口を有するダクトに接続されるエアーフィルタユニットと、
前記エアーフィルタユニットと前記エバポレータとの間において前記ダクトに収容される送風機と、
を有し、
前記送風機は、
前記圧縮空気が前記乗車空間へ放出される際に停止している
請求項1または2記載の車両。
【請求項4】
前記空気調和装置は、
前記エバポレータと前記吹き出し口との間の前記ダクトに収容されたヒータと、
前記ヒータと前記エバポレータとの間に設けられ、前記ヒータへの送風を切り替えるエアミックスドアと、を有し、
前記タンクに貯蔵されている圧縮空気は、
前記ヒータと前記吹き出し口との間において前記ダクトへ供給される
請求項1から3のいずれか一項記載の車両。
【請求項5】
前記ダクトは、複数の前記吹き出し口を有する
請求項1から4のいずれか一項記載の車両。
【請求項6】
ユーザが乗車する車両の乗車空間を冷却する冷却装置であって、
圧縮空気を貯蔵可能なタンクと、
前記乗車空間に対して前記タンクに貯蔵された圧縮空気を放出させる制御部と、
を有し、
前記タンクに貯蔵されている圧縮空気は、
空気調和装置の吹き出し口から前記乗車空間へ放出される
冷却装置。
【請求項7】
ユーザが乗車する車両の乗車空間を冷却する圧縮空気をタンクに貯蔵する冷却装置の冷却方法であって、
前記タンクに圧縮空気を貯蔵し、
前記タンクに貯蔵された圧縮空気を、空気調和装置の吹き出し口から前記乗車空間へ放出する
冷却方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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