説明

車両、特に乗用車用の引出し可能な荷物キャリア

【課題】荷物キャリアの引出し可能な領域における付属部品の持続的な配置を可能にし、かつ腐食の点でも問題がなく、不慣れな人によっても容易に操作できる、自動車用の引出し可能な荷物キャリアを提供する。
【解決手段】ガイド成形体5が内側の成形体を形成していて、長手方向スリットを備えた上側帯材9を有しており、支持成形体6がU字形横断面を有していて、ガイド成形体5に上から被さっており、ガイド成形体5と支持成形体6とが、ガイド成形体5の長手方向スリット10を貫通する緊締装置を介して、上側帯材9もしくはウェブ34で互いに緊締されかつ支持するように結合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両、特に乗用車用の引出し可能な荷物キャリアであって、支持平面に対して平行でかつ互いに間隔をおいて延びる2つのガイド軌道が設けられており、両ガイド軌道がそれぞれ、輪郭を合わせられかつ互いに長手方向摺動可能に、内側及び外側の成形体を有しており、該成形体のうちの一方の成形体が、ボディ側に固定されていて下側帯材と上側帯材とを有するガイド成形体を形成し、他方の成形体が、ガイド成形体に対して引出し可能でかつ固定可能な支持成形体を形成しており、該支持成形体が、ガイド成形体の上側帯材に対応する上側帯材を有している形式のものに関する。
【背景技術】
【0002】
このような形式の荷物キャリアはUS3488077に基づいて公知である。この公知の荷物キャリアは、ピックアップ車両の背面においてバンパ高さでテレスコープ式に引出し可能な、居住用コンテナのための支持装置として形成されており、この場合居住用コンテナは、ピックアップ車両の積載面を超えて後方に向かって突出している後ろのオーバハングで、引き出された支持装置に支持される。
【0003】
車両ボディに対する固定のために、荷物キャリアにはガイド軌道が配属されており、これらのガイド軌道は車両ボディに固定可能なガイド成形体を有しており、これらのガイド成形体には長手方向摺動可能に支持成形体が保持されており、これらの支持成形体はその後方の自由端部に車両のバンパを有していて、ロック装置を介してガイド成形体に、ひいては車両ボディに固定されることができる。
【0004】
外側のガイド成形体を起点として、引出し可能な支持成形体は差込みピン装置を介してロックされることができ、この場合差込みピン装置は、支持成形体に配置された孔列(Lochraster)に係合し、支持成形体は、該支持成形体を取り囲むガイド成形体における案内に基づいて、その引出し可能な長さ区分にわたって、単に引き出された状態においてしか覆われることができず、付属部品を持続的に取り付けるためには利用することができない。
【0005】
以上述べたことの他に、ガイド成形体及び支持成形体は、互いに対して比較的小さな遊びで構成されねばならない。それというのは、さもないと、ロックピンが同時に支持機能を引き受けなくてはならず、このことは、ガイド軌道の側における局部的な高負荷を引き起こすからである。しかしながら、相応に狭い遊びは腐食の点で問題がある。
【特許文献1】US3488077
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ゆえに本発明の課題は、冒頭に述べた形式の引出し可能な荷物キャリアを改良して、荷物キャリアの引出し可能な領域における付属部品の持続的な配置を可能にし、かつ腐食の点でも問題がなく(これは特に、季節的なことに起因してしばしば長時間使用されない乗用車の荷物キャリアの取付けのために重要である。)、しかも必要な場合には不慣れな人によっても何時でも容易に操作できる、自動車用の引出し可能な荷物キャリアを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決するために本発明の構成では、冒頭に述べた形式の荷物キャリアにおいて、ガイド成形体が内側の成形体を形成していて、長手方向スリットを備えた上側帯材を有しており、支持成形体がU字形横断面を有していて、ガイド成形体に上から被さっており、ガイド成形体と支持成形体とが、ガイド成形体の長手方向スリットを貫通する緊締装置を介して、上側帯材もしくはウェブで互いに緊締されかつ支持するように結合されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明のように構成された荷物キャリアでは、ガイド軌道のガイド成形体として内側の成形体が使用され、その結果、車両ボディにガイド形成体を相応に取り付けた場合に、ガイド成形体に対する必要な摺動可能性にもかかわらず、支持成形体を付属部品の取付けのために利用することができ、しかもガイド軌道の間における中間室も同様にこのように利用することが可能であり、従って相応にフラットな構造を実現することができ、このようなフラットな構造は例えば、構造空間や機能に条件付けられて乗用車のリヤ側に引出し可能な自転車キャリアとして荷物キャリアを使用するような場合に望まれている。さらにこのような構成は、腐食や汚染の点でも望まれている十分な遊びが得られるのみならず、ガイド成形体に対する支持成形体のガイド及びロックの有利な可能性を提供し、この場合ガイド成形体と支持成形体との間における必要な係止もしくはロックは、本発明の枠内において、僅かな所要空間しか必要とせず、有利に配置することができ、かつ小さな力で操作することができる、緊締装置によって実現可能である。
【0009】
緊締装置との関連において設けられた、ガイド成形体の上側帯材における長手方向スリットを備えた構成によって、さらに緊締装置を、ガイド成形体と支持成形体との間における所望の大きな遊びに基づいて支持成形体において場合によっては望まれている横方向支持のためにも、利用することができる。さらにまた単純な部材を有していてかつ僅かな構造的及び製造技術的な費用しかかからない緊締装置を用いて、引き出された荷物キャリアにおいて強度の点で問題になるガイド成形体と支持成形体との間における移行領域を補強することができるようにするために、本発明の有利な構成では、支持成形体のために位置固定のカバープレートが設けられ、かつガイド成形体のためには挿入された対応プレートが設けられていて、このバープレートと対応プレートとは、ガイド成形体の長手方向スリットを貫通する緊締装置の緊締結合装置によって互いに対して緊締されるようになっている。この場合対応プレートを介して横方向安定性も改善することができる。
【0010】
緊締力は本発明の構成では、緊締ピンを介して簡単に伝達することができ、この緊締ピンは同時に緊締軸線をも規定しており、この場合有利には緊締結合装置の相応な緊締錠が、緊締結合装置の、カバープレートに載置された上側部分を形成している。
【0011】
緊締錠のためには、本発明の別の構成では、緊締軸線を中心にして回転可能な緊締円板と、対応部材とを備えた構造が設けられており、この場合緊締円板及び対応部材が、緊締方向において互いに向かって方向付けられていて互いに隙間を埋めるように位置していて緊締錠の非緊締状態では互いに緊締方向においてオーバラップする扇形の押し退けエレメントを備えている。そして有利には、互いに対応する押し退けエレメントは、緊締円板の回転可能性に相応して、緊締軸線に対して中心対称的に配置されている。緊締円板が操作エレメントとして回転可能であるのに対して、対応部材は支持成形体のカバープレートもしくは上側帯材に対して位置固定であり、これらの部分(カバープレートもしくは上側帯材)の相応な構成によって該部分に組み込まれていてもよい。しかしながら本発明の別の有利な構成では、対応部材が別体の構成部材として構成されていて、カバープレートに対して又は直接、支持成形体に対して位置固定に取り付けられている。このように構成されていると、同じに成形された対応部材、多くの場合円板状に構成された対応部材を、緊締軸線を中心にして相応に回転角をずらして配置することによって、それぞれ対応する支持成形体に対して方向付けかつ位置決めすることが可能になり、これによって緊締円板のためにそれぞれ所属の支持成形体に関して同じ旋回範囲が、つまり緊締錠の緊締された位置と弛緩された位置とに関して同じ旋回範囲が、得られる。
【0012】
緊締錠のために有利な別の構成では、緊締円板、又は基本形状において同様に円板状の対応部材が、環状の縁部備えており、このように構成されていると、扇形の押し退けエレメントはいわばハウジングの内部に、これにより保護されて位置することになり、このことによってまた、相応な潤滑グリースの充填が可能になる。
【0013】
緊締錠の簡単かつ安定的な製造可能性に関して有利な構成では、緊締円板及び対応部材に配属された共働する扇形の押し退けエレメントのうち、対応部材に配属された押し退けエレメントが、三次元的に湾曲された押し退け面を備えており、この場合押し退け面はベース平面を起点として上昇しており、これによってベース平面に対して間隔をおいて位置する緊締平面に進入することができる。緊締円板に配属された扇形の押し退けエレメントと対応部材に配属された扇形の押し退けエレメントとの間のオーバラップ領域における、ベース平面と緊締平面との間の間隔は、得ることのできる緊締運動距離に相当し、ひいては緊締錠を介して緊締軸線の方向で得ることのできる緊締運動距離にも相当する。
【0014】
本発明の枠内においては基本的には、ベース平面と緊締平面との間において斜めに延びる押し退け面を備えた扇形の押し退けエレメントは、緊締円板及び対応部材の両方に設けることができる。しかしながら有利には、対応部材が相応に三次元的に形成された側を有していて、ベース平面からの押し退け平面の上昇が比較的急勾配であると有利であり、このようになっていると、緊締錠の非緊締時に、緊締円板の扇形の押し退けエレメントによるセンタリング作用が得られる。これに対して緊締平面においては、押し退け面はソフトに進入しており、これにより、特に摩擦力結合(Reibschluss)によって、緊締平面において与えられた緊締位置の固定を達成することができる。
【0015】
緊締円板のためには、調節レバーによる操作が有利であり、緊締錠の緊締された位置と弛緩された位置との間における緊締円板のための回転角は、有利には約90°であり、緊締錠の緊締された位置のために有利な緊締レバーの位置では、緊締レバーはそれぞれのガイド軌道と合致して延びている。
【0016】
緊締錠の緊張はばね力に抗して行われ、この場合緊締錠の弛緩された位置においてばねは完全にリバウンドつまり弛緩しており、支持成形体は、その重力に相当する力でガイド成形体に接触している。
【0017】
ガイド成形体と該ガイド成形体に挿入された対応プレートとの間には、支持成形体とガイド成形体との間における長手方向摺動可能性のために十分な遊びが与えられている。緊締錠の緊張によって、この遊びは消滅させられ、圧着力が皿ばねのばね特性線に相応して高められ、そして支持成形体はガイド成形体に対して固定される。
【0018】
緊締装置の弛緩された状態において与えられる荷物キャリアの長手方向摺動可能性との関連において、各終端位置における荷物キャリアの固定は、本発明によれば回転ラッチを用いて行われ、この回転ラッチは錠止位置に向かってばね負荷されており、本発明の有利な構成では、回転ラッチは2腕状のレバーとして形成され、錠止位置に向かって予負荷(Vorspannung)されており、これによって回転ラッチは両方向において、つまり荷物キャリアの引出し可能な部分の引出し方向と押込み方向とにおいて移動させられ、そして荷物キャリアの引出し可能な部分を錠止もしくはロックすることができる。
【0019】
このような配置形式は、高い機能確実性によって傑出しており、かつ構造上も単純な構成を有しており、回転ラッチは有利には、長手方向中心領域においてガイド軌道の間で、リヤ側に引出し可能な荷物キャリアに関して後ろ側の端部領域、つまり荷物キャリアの車両に対して位置固定の部分の後端部領域に、設けられている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に図面を参照しながら本発明の有利な実施形態を説明する。
【0021】
図面には符号Fで、図示されていない車両、特に乗用車の前進走行方向が示されており、この車両には、リヤ側に引出し可能な荷物キャリア1が設けられていて、この荷物キャリア1は互いに間隔をおいて平行に延びているガイド軌道2,3を有しており、両方のガイド軌道2,3は荷物キャリア1のために支持平面4を規定していて、ガイド成形体5と支持成形体6とによって形成されている。
【0022】
ガイド成形体5はガイド軌道2,3の内側の成形体として車両のボディに対して固定されており、この場合車両ボディ7は平行線(図1及び図3参照)によって示されており、ガイド成形体5の領域におけるボディ7に対する固定は、相応な接続板(Lasche)又はこれに類したものによって、場合によってはガイド成形体5に挿入された車両側の支持成形体によっても、下側帯材8の領域において行うことができ、このア下側帯材8には上側帯材9が向かい合って位置しており、この上側帯材9には長手方向に延びるスリット、長手方向スリット10が設けられている。ガイド成形体5の間には端部側に横方向結合部材11,12が設けられており、かつガイド成形体5に沿って支持成形体6が摺動可能であり、これらの支持成形体6は、ガイド成形体5を取り囲んでいて特にU字形成形体として形成されている。支持成形体6は同様に横方向ステー13,14を介して結合されているので、その結果荷物キャリアの引出し可能な部分15のためのキャリッジ状のベースフレームが形成され、このベースフレームは、荷物キャリアの、ボディ側に固定されているボディ固定で位置固定の部分16に対して、テレスコープ式に引出し可能である。荷物キャリア1の引出し可能な部分15の挿入された位置及び引き出された位置は、終端位置(図1には示されていない)として固定され、引出し可能な部分15は位置固定の部分16に対して引き出された位置でさらに緊締装置17を用いて固定されることができる。これについては後で図5を参照しながら述べる。さらに、荷物キャリア1の引出し可能な部分15は、自転車キャリアとして使用するために設けられた付属部品を有しており、これについては図2及び図3を参照しながら説明する。
【0023】
図2及び図3に示されているように、荷物キャリア1の引出し可能な部分15の装備は、自転車キャリアとして、互いに間隔をおいて配置された2つの横方向ガイド18,19を有しており、両横方向ガイド18,19は支持成形体6に対して位置固定であり、それぞれ、横方向において互いに逆側に向かって引出し可能なアーム20,21のためのガイド通路を形成しており、これらのアーム20,21はその自由端部の領域に、走行方向Fに対して横方向に取り付けられる自転車の車輪のための支持部22を有している。車輪で受容部もしくは支持部22に設置される図示されていない自転車それぞれのために、さらに横方向ガイド18,19の側部で両横方向ガイド18,19の間に位置する中間室には、フレーム支持23,24が設けられている。フレーム支持23,24はそれぞれ、1つの支持成形体6に横方向において旋回可能に枢着されていて、垂直に立てられた支持位置(図3)と収納位置との間において旋回可能であり、収納位置においてフレーム支持23,24は互いに向かって内方旋回させられて横方向ガイド18,19の間に位置している。フレーム支持23,24にはそれぞれ、相応に旋回可能でかつ起立可能な支持ステー25,26が配属されている。本発明の枠内においてこれらの支持ステーはトグル装置として形成されていてもよく、これらのトグル装置は、延伸位置において死点位置又はオーバ死点位置(Uebertotpuktlage)を占め、かつ収納されて折り畳まれている。
【0024】
走行方向Fで見て自転車キャリアの引出し可能な部分15の前側の端部に向かって、支持成形体6の間における空間の、横方向ガイド19に接続した部分は、引出し状の挿入ボックス27によって満たされており、この挿入ボックス27は、外に設けられた縁部条片28を介して支持成形体6に支持され、かつ縁部条片29を介して横方向ステー13に支持されており、そして引出し可能な部分15の位置固定の構成部分を形成しており、この場合挿入ボックス27は枠のように取り囲むために有利には接着されている。
【0025】
走行方向Fで見て引出し可能な部分15の前側の端部領域には、ガイド成形体5に対する支持成形体6の結合部に設けられた緊締装置17が配置されている。
【0026】
支持成形体6の反対側に位置する端部において、支持成形体6の側部は、車両の背側に配置される照明装置32のための差込み受容部31が設けられており、これらの照明装置32は、図2に示されているように、荷物キャリア1を運ぶためには、取り外されて挿入された不使用位置にもたらされ、そして挿入ボックス27内に収納される。
【0027】
図2に示されているように荷物キャリア1の挿入された位置において、従って荷物キャリア1は極めてコンパクトなユニットを形成し、この場合緊締装置17に配属された調節レバー33も同様に横方向位置を占めている。緊締装置17の開放位置に相当するこの横方向位置から、調節レバー33は緊締装置17を緊張させるために、それぞれのガイド軌道2,3に対して平行な位置(図3参照)へと旋回可能であり、この位置において調節レバー33は横方向ガイド19に向かって、ひいては走行方向Fとは逆方向に延びており、場合によっては相応な固定装置を用いてロックされている。
【0028】
長手方向スリット10を除いて閉鎖されているガイド成形体5と、このガイド成形体5を取り囲んでいるU字形の支持成形体6とを結合する緊締装置17は、有利には図5に示されている構造を有しており、この図5に示された構造では、ガイド成形体5と支持成形体6とは緊締軸線30の方向で互いに向かって緊締されており、この場合ガイド成形体5は上側帯材9で、横断面U字形の支持成形体6のウェブ34に対して接触している。支持成形体6の上側帯材であるウェブ34は、緊締装置17の領域においてカバープレート35によって覆われており、このカバープレート35はほぼ、走行方向Fに延びる支持成形体6の端部領域を超えて延びていて、有利にはウェブ34を補強及び硬化する支持部としてウェブ34と堅固に、例えば溶接によって結合されている。カバープレート35には、ガイド成形体5の内部に位置していて該ガイド成形体5に沿って摺動可能な対応プレート36が対応配置されており、この対応プレート36は有利には滑子の働きをもって、ガイド成形体5の両側壁37の間において長手方向摺動可能に案内されており、対応プレート36はさらに、カバープレート35の方向で、長手方向スリット10に向かって延びる上側帯材9の脚にオーバラップして位置している。
【0029】
カバープレート35は対応プレート36に対して、緊締装置17を緊締軸線30に沿って貫通する緊締ピン38を介して緊締することができ、この場合には緊締錠39が用いられ、この緊締錠39は緊締円板40と、該緊締円板40に対応する円板状の対応部材41とを有しており、この対応部材41に対して、緊締円板40は緊締軸線30を中心にした回動時に緊締軸線30の方向で移動させられる。円板状の対応部材41はカバープレート35に対して位置固定であり、緊締ピン38は一方では緊締円板40に支持されていて、対応プレート26に対してねじ結合を介して弾発的に緊締されており、そのために皿ばね42が設けられており、この皿ばね42は対応プレート36とは逆方向においてセンタリング円板43に支持されており、このセンタリング円板43自体は、緊締ピン38のために固定された緊締ナット44に支持されている。皿ばね42のばね運動距離と、引出し可能な部分15の移動のために必要な、対応プレート36とガイド成形体5との間における遊びとによって、緊締運動距離が所定され、この緊締運動距離は、緊締のために、対応プレート41に対する緊締円板40の回動による緊締錠39の閉鎖時に使用される。図5に符号45で示されたこの緊締運動距離は、図示の実施例では、円板状の対応部材41のベース平面46と、緊締軸線30の方向で該ベース平面46に対してずらされた緊締平面47(図10)との間における間隔に相当している。
【0030】
図示の実施形態では緊締円板40は、緊締軸線30を中心にして直径方向で対向して位置している2つの扇形の押し退けエレメント48を有しており、両押し退けエレメント48は円板平面49に対して隆起しており、対応部材41に対する緊締円板40のオーバラップ位置において対応部材41に向かって延びており、対応部材41は、緊締されていない緊締錠39に関して扇形の押し退けエレメント48に対応する扇形の凹設部50を有しており、これらの凹設部50はベース平面46にまで延びていて、周方向においては、緊締平面47に向かって上昇する押し退け面52によって画成されている。対応部材41の側に設けられた押し退けエレメント53の画成部である押し退け面52は、緊締平面47へと延びて移行しており、その結果、対応部材41に対する緊締円板40の所定の回動位置、つまり緊締円板40の側に設けられた押し退けエレメント48の端面が緊締平面47において押し退けエレメント53に乗り上げられた回動位置において、死点位置(Totlage)に比較可能な緊締錠の緊締位置が、緊締円板40及び対応部材41の回動位置の摩擦結合式(reibschluessig)の固定をもって生ぜしめられる。そのための回転角は、図2及び図3において調節レバー33の位置によって示されているように、90°である。
【0031】
横方向平面に対する緊締装置17の対称的な配置形式において横方向平面に対して幾分逆向きに傾けられた緊締レバー33の設定位置(図2参照)において、対称的に形成された対応部材41との共働を可能にするために、対応部材41は、該対応部材41を支持する支持成形体6の長手方向に対して幾分回動されて配置されており、この場合これに関連した角度ずれは図9に示されたねじ孔54の位置から分かり、ねじ孔54は、カバープレート35に対する対応部材41のねじ結合のために設けられていて、対称軸線55に対する横方向平面56に対して逆方向にずらされている。
【0032】
図示の実施例では緊締円板40は、環状の縁部57を備えており、この縁部57の内径はほぼ、対応部材41を形成するプレートの直径に相当しており、その結果緊締錠39は、外方に向かって緊締円板40によってほぼ縁部を取り囲まれたユニットとして形成される。縁部57からはまた調節レバー33が延びており、緊締ピン38はそのヘッド部分が凹部58に係合するように配置されており、これによって緊締錠39のためには調節レバー33を含めて極めてフラットな構造が生ぜしめられ、このフラットな構造は、荷物キャリア1全体の構造高さの枠内に位置している。
【0033】
さらに本発明によれば、緊締装置を、特にまた緊締錠の基本的に同じ構造において、調節駆動装置を用いて負荷することも可能であり、これによってまた遠隔操作も可能になり、この遠隔操作は場合によっては、荷物キャリア1の軸方向調節のための相応な駆動装置と組み合わせられることもでき、このようにすると、荷物キャリア1のための操作をさらに簡単化することができる。
【0034】
このような構成とは無関係に本発明の別の有利な構成では、荷物キャリア1のために、可能な終端位置、つまり引き出された終端位置又は押し込まれた終端位置が、機械式の錠止によって固定されるようになっており、このような機械式の錠止は本発明の有利な構成では、各終端位置への到達に関連して自動的に生ぜしめられるようになっている。そのために本発明によれば、ガイド成形体5に、走行方向Fとは逆向きの背側部分の領域に、回転ラッチ装置(Drehfallenanordnung)が配属もしくは対応配置されており(図11参照)、この回転ラッチ装置59は図1に関して言えば横方向結合部材12に支持されており、この横方向結合部材12は回転ラッチ61のために、中央の軸受孔62を有している。横方向結合部材12は荷物キャリア1の引出し可能な部分15の走入・走出方向において開放するガイド開口63,64を備えており、これらのガイド開口63,64には、荷物キャリア1の走出可能な部分15の側に、回転ラッチ61に対応する係止部材65,66が配属もしくは対応配置されている。これらの係止部材65,66は図示の実施例では、横方向ステー13,14の下側に設けられた係止ピンによって形成され、これらの係止ピンは高さ方向において、ガイド開口63,64に対するオーバラップ運動経路に位置している。
【0035】
図11に略示された回転ラッチ装置59は、ダブルレバーとして形成された回転ラッチ61を有しており、この回転ラッチ61は、走行方向Fにおいて、軸受孔62の両側に延びるレバーアーム67,68を有している。両レバーアーム67,68は、走行方向Fに対して横方向に互いに逆側に向かって開放するキャッチ開口69,70を備えており、両キャッチ開口69,70は、回転ラッチ61の錠止位置に関して、走行方向Fに延びるガイド開口63,64と合致して位置しており、両ガイド開口63,64は図11の図示では、図1に示されたガイド開口63,64の相応な合致時には、回転ラッチ装置59のためのカバー74において示されており、このカバー74は横方向結合部材12に固定されていることができる。
【0036】
図11に示されているように、回転ラッチ61が錠止位置を占めている場合、キャッチ開口69,70はガイド開口63,64と合致して、回転ラッチ61によって、該回転ラッチによってそれぞれ把持される係止部材65,66がガイド開口63,64内において固定されるようになっている。回転ラッチ61はこの錠止位置に向かってばね弾性的に予負荷されており、これは図11に示された実施例では板ばね装置71,72によって示されており、かつ逆方向には、係止部材65,66による押し退け面75,76の負荷によって押し退け可能である。さらに回転ラッチ61はばね負荷された錠止位置とは逆に、例えばボーデンケーブル結合装置のような遠隔操作(図示せず)によって、解錠位置へと旋回可能であり、その結果、荷物キャリア1の走出可能な部分15の各終端位置における自動的な錠止のみならず、アクセスが不都合な状態においても、解錠を簡単に行うことができ、他方においてしかしながら、例えば権限を有していない者による外からの解錠は、困難を伴ってしか可能でない。
【0037】
特に、引出し可能な荷物キャリア部分15が走入された場合における荷物キャリア1のための上に述べた解錠可能性との関連において、有利な構成では、引出し可能な荷物キャリア部分15が引出し方向においてエジェクタ73によってばね負荷されており、その結果、回転ラッチ装置59によって固定された走入された終端位置の解離時に、引出し可能な荷物キャリア部分15は開放方向においてある程度シフトされ、これによって、引出し可能な荷物キャリア部分15がその押し込まれた位置において場合によってはカバーによって、特に目隠し(Sichtblende)によってアクセスを防止されているような場合でも、引出し可能な荷物キャリア部分15に対する良好なアクセスが可能になる。エジェクタ73は図1においてコイルばねとして象徴的に示されているが、しかしながらまた、引出し又はこれに類したもののために汎用のように、屈曲された板ばね(図3及び図4)又はこれに類したものとして形成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】荷物キャリアの車両に対して位置固定のキャリア部分と該位置固定のキャリア部分に対してテレスコープ式に引出し可能なキャリア部分とを備えた、本発明による引出し可能な荷物キャリアを、キャリアのベース構造体に限定して分解して示す斜視図である。
【図2】本発明による引出し可能な荷物キャリアをその主要な構成部材と共に、押し縮められた状態で示す平面図である。
【図3】図2に示された荷物キャリアを引き出された状態で示す平面図である。
【図4】図3に示された荷物キャリアを、図3の矢印IVの方向から見た図である。
【図5】図3に示された荷物キャリアを、図3のV−V線に沿って断面して示す図であって、断面平面に位置している緊締装置のうちの1つの緊締装置を分解して概略的に示すである。
【図6】緊締装置との関連において設けられた緊締錠の緊締円板を示す平面図である。
【図7】図6に示された緊締円板を、図6のVII−VII線に沿って断面した図である。
【図8】図6に示された緊締円板を、図6のVIII−VIII線に沿って断面した図である。
【図9】緊締装置との関連において設けられた緊締錠の対応部材を示す平面図である。
【図10】図9に示された対応部材を、図9のX−X線に沿って断面した図である。
【図11】荷物キャリアの引出し可能な部分をその引き出された位置と押し込まれた位置とにおいて錠止することができる回転ラッチ装置を示す図である。
【符号の説明】
【0039】
1 荷物キャリア、 2,3 ガイド軌道、 4 支持平面、 5 ガイド成形体、 6 支持成形体、 7 車両ボディ、 8 下側帯材、 9 上側帯材、 10 長手方向スリット、 11,12 横方向結合部材、 13,14 横方向ステー、 15 引出し可能な部分、 16 位置固定の部分、 17 緊締装置、 18,19 横方向ガイド、 20,21 アーム、 22 支持部、 23,24 フレーム支持、 25,26 支持ステー、 27 挿入ボックス、 28,29 縁部条片、 30 緊締軸線、 31 差込み受容部、 32 照明装置、 33 調節レバー、 34 ウェブ、 35 カバープレート、 36 対応プレート、 38 緊締ピン、 39 緊締錠、 40 緊締円板、 41 対応部材、 42 皿ばね、 43 センタリング円板、 44 緊締ナット、 45 緊締運動距離、 46 ベース平面、 47 緊締平面、 48 押し退けエレメント、 49 円板平面、 50 凹設部、 52 押し退け面、 53 押し退けエレメント、 54 ねじ孔、 55 対称軸線、 56 横方向平面、 57 縁部、 58 凹部、 59 回転ラッチ装置、 61 回転ラッチ、 62 軸受孔、 63,64 ガイド開口、 65,66 係止部材、 67,68 レバーアーム、 69,70 キャッチ開口、 71,72 板ばね装置、 73 エジェクタ、 75,76 押し退け面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両、特に乗用車用の引出し可能な荷物キャリアであって、支持平面に対して平行でかつ互いに間隔をおいて延びる2つのガイド軌道が設けられており、両ガイド軌道がそれぞれ、輪郭を合わせられかつ互いに長手方向摺動可能に、内側及び外側の成形体を有しており、該成形体のうちの一方の成形体が、ボディ側に固定されていて下側帯材と上側帯材とを有するガイド成形体を形成し、他方の成形体が、ガイド成形体に対して引出し可能でかつ固定可能な支持成形体を形成しており、該支持成形体が、ガイド成形体の上側帯材に対応する上側帯材を有している形式のものにおいて、
ガイド成形体(5)が内側の成形体を形成していて、長手方向スリットを備えた上側帯材(9)を有しており、支持成形体(6)がU字形横断面を有していて、ガイド成形体(5)に上から被さっており、ガイド成形体(5)と支持成形体(6)とが、ガイド成形体(5)の長手方向スリット(10)を貫通する緊締装置を介して、上側帯材(9;ウェブ34)で互いに緊締されかつ支持するように結合されていることを特徴とする、車両、特に乗用車用の引出し可能な荷物キャリア。
【請求項2】
支持成形体(6)が緊締装置(17)を介してガイド成形体(5)に対して横方向において案内されている、請求項1記載の引出し可能な荷物キャリア。
【請求項3】
緊締装置(17)が、ガイド成形体(5)に挿入された対応プレート(36)を有していて、該対応プレート(36)が支持成形体(6)の上側帯材(ウェブ34)に対して、長手方向スリット(10)を貫通する緊締結合装置を介して支持されている、請求項1又は2記載の引出し可能な荷物キャリア。
【請求項4】
支持成形体(6)の上側帯材(ウェブ34)の側において、対応プレート(36)に、補強作用を有するカバープレート(35)が対応配置もしくは配属されている、請求項3記載の引出し可能な荷物キャリア。
【請求項5】
緊締結合装置(17)が、長手方向スリット(10)を貫通していて緊締軸線(30)を規定する緊締ピン(38)を有しており、該緊締ピン(38)が、緊締錠(39)のためのガイドを形成している、請求項2から4までのいずれか1項記載の引出し可能な荷物キャリア。
【請求項6】
緊締錠(39)が、緊締軸線(30)を中心にして回転可能な緊締円板(40)と、対応部材(41)とを有しており、緊締円板(40)及び対応部材(41)が、緊締方向において互いに向かって方向付けられていて互いに隙間を埋めるように位置していて緊締錠(39)の非緊締状態では互いに緊締方向においてオーバラップする扇形の押し退けエレメント(48;53)を備えている、請求項5記載の引出し可能な荷物キャリア。
【請求項7】
互いに対応する押し退けエレメント(48;53)が、緊締軸線(30)に対して中心対称的に設けられている、請求項6記載の引出し可能な荷物キャリア。
【請求項8】
緊締円板(40)及び/又は対応部材(41)の扇形の押し退けエレメント(48;53)が、非緊締状態の緊締錠(39)における出発位置に相当している緊締軸線(30)に対して垂直なベース平面(46)を起点として、少なくとも片側に、ベース平面(46)に対して間隔をおいて位置する緊締平面(47)へと延びるように移行する押し退け面(52)を有している、請求項6又は7記載の引出し可能な荷物キャリア。
【請求項9】
ベース平面(46)に対して間隔をおいて位置しかつ該ベース平面(46)に押し退け面(52)を介して接続されている緊締平面(47)が、少なくともほぼ、緊締軸線(30)に対して垂直に延びている、請求項8記載の引出し可能な荷物キャリア。
【請求項10】
押し退け面(52)が緊締平面(47)内に延びるように移行している、請求項8又は9記載の引出し可能な荷物キャリア。
【請求項11】
押し退け面(52)が、ベース平面(46)に接続して、該ベース平面(46)に対して急勾配に上昇する経過と、垂線に対して特にフラットに傾けられた経過とを有している、請求項7から10までのいずれか1項記載の引出し可能な荷物キャリア。
【請求項12】
緊締円板(40)又は対応部材(41)の扇形の押し退けエレメント(48;53)が、押し退け面(52)によって形成された側に対応する側に、ベース平面(46)に対して、ほぼ垂直な経過を有している、請求項8から11までのいずれか1項記載の引出し可能な荷物キャリア。
【請求項13】
緊締円板(40)及び対応部材(41)の扇形の押し退けエレメント(48;53)が、緊締錠の非緊締状態において、その側部で、ベース平面(46)の領域において回転角を制限するように互いに当接している、請求項6から12までのいずれか1項記載の引出し可能な荷物キャリア。
【請求項14】
対応部材が対応円板(41)として形成されている、請求項6から12までのいずれか1項記載の引出し可能な荷物キャリア。
【請求項15】
対応部材(41)が支持成形体(6)に対して位置固定である、請求項6から14までのいずれか1項記載の引出し可能な荷物キャリア。
【請求項16】
対応円板として形成された対応部材(41)が、互いに対して回転をずらされた位置において、支持成形体(6)に固定される、請求項5記載の引出し可能な荷物キャリア。
【請求項17】
荷物キャリア(1)の、支持成形体(6)に配属もしくは対応配置された引出し可能な部分(15)が、その押し込まれた位置及び引き出された位置において、回転ラッチ(61)を介して錠止可能であり、該回転ラッチ(61)がその錠止位置に向かってばね負荷されている、請求項1から16までのいずれか1項記載の引出し可能な荷物キャリア。
【請求項18】
回転ラッチ(61)が、ガイド成形体(5)に結合されたボディ固定の荷物キャリア部分(16)に配属されている、請求項17記載の引出し可能な荷物キャリア。
【請求項19】
回転ラッチ(61)が、荷物キャリア(1)のボディ固定の部分(16)の、荷物キャリア(1)の引出し方向で見て前方の端部領域に、設けられており、2腕状のレバーとして形成されていて、荷物キャリア(1)の引出し可能な部分(15)の移動経路に位置しており、引出し可能な部分(15)の互いに向かい合って位置している端部の領域に、回転ラッチ(61)に対応する各1つの係止部材(65,66)が対応配置されている、請求項17又は18記載の引出し可能な荷物キャリア。
【請求項20】
係止部材(65,66)が係止ピンとして形成されている、請求項19記載の引出し可能な荷物キャリア。
【請求項21】
回転ラッチ(61)を形成する2腕状のレバーが、荷物キャリア(1)の引出し方向に延びていて、回転軸線(軸受孔62)を中心にして互いに反対側に位置するレバーアーム(67,68)に、逆側に向かって開放するキャッチ開口(69,70)を備えている、請求項19又は20記載の引出し可能な荷物キャリア。
【請求項22】
回転ラッチ(61)が、各キャッチ開口(69,70)の開口へと移行する押し退け面(75,76)を備えている、請求項21記載の引出し可能な荷物キャリア。
【請求項23】
キャッチ開口(69,70)の開口がフック状に形成されていて、それぞれガイド開口(63,64)と合致して位置している、請求項20から22までのいずれか1項記載の引出し可能な荷物キャリア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−62727(P2007−62727A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−232697(P2006−232697)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【出願人】(506292985)マグナ カー トップ システムズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (31)
【氏名又は名称原語表記】Magna Car Top Systems GmbH
【住所又は居所原語表記】Stuttgarter Strasse 59, D−74321 Bietigheim−Bissingen, Germany
【Fターム(参考)】