説明

車両およびその制御方法

【課題】内燃機関の効率の向上を図る。
【解決手段】車速Vとアクセル開度Accとに基づいて変速マップを用いて変速段Sが変更されるよう変速機を制御し、クラッチをオンとしてエンジンのクランクシャフトと動力軸とが接続された状態でバッテリの蓄電割合SOCが充電が許容される範囲の上限として予め定められた閾値Shi以下のときには(S120)、エンジンを効率よく運転する回転数NeおよびトルクTeの制約として予め定められた動作ラインとエンジンの現在の回転数Neとに基づく効率用パワーPefがエンジンから出力されると共に(S130〜S150,S170,S180)、モータの駆動によって効率用パワーPefと走行要求パワーP*とにより得られる偏差ΔPefに相当する電力によるバッテリ50の充電が行なわれるよう(S190)、エンジンやモータを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両としては、エンジンと、エンジンの出力軸と駆動輪に連結された伝動軸との間に配設されたクラッチと、伝動軸に接続されたモータと、を備え、エンジンからの動力とモータからの動力とにより走行可能なハイブリッド型車両が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この車両では、クラッチを係合して走行する際に、アクセル開度に基づいてエンジンのスロットル開度を調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−38305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の車両や、上述の車両の構成に加えてモータやエンジンの動力を変速段の変更を伴って駆動輪に伝達する変速機を備える車両では、エンジンの回転数が車速や変速段によって決まるため、アクセル開度に基づいてエンジンのスロットル開度を調整してトルクを出力すると、エンジンを効率のよい運転ポイントで運転することができずにエンジンの効率が悪化する場合があった。
【0005】
本発明の車両およびその制御方法は、内燃機関の効率の向上を図ることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両およびその制御方法は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の第1の車両は、
内燃機関と、
前記内燃機関のクランクシャフトにクラッチを介して接続された入力軸と駆動輪に連結された出力軸との間の変速段の変更を伴う動力の伝達が可能な変速手段と、
前記変速手段の入力軸に動力を入出力可能な電動機と、
前記電動機と電力のやりとりが可能な蓄電手段と、
前記クラッチにより前記クランクシャフトと前記入力軸とが接続された状態で前記内燃機関から走行に要求される走行用パワーを出力すると前記内燃機関を効率よく運転する回転数およびトルクの制約として予め定められた動作ライン上のトルク未満のトルクが前記内燃機関から出力される少なくとも車速と前記変速段との関係として予め定められた変速マップに基づいて前記変速段が変更されるよう前記変速手段を制御する変速制御手段と、
前記クラッチにより前記クランクシャフトと前記入力軸とが接続された状態で前記蓄電手段の蓄電量が該蓄電手段の充電を許容する範囲の上限として予め定められた所定量以下のときには、前記動作ラインと前記内燃機関の回転数とに基づく効率用パワーが前記内燃機関から出力されると共に前記電動機の駆動によって前記効率用パワーと前記走行用パワーとの差に相当する電力による前記蓄電手段の充電が行なわれながら前記走行用パワーにより走行するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御する駆動制御手段と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明の第1の車両では、クラッチによりクランクシャフトと入力軸とが接続された状態で内燃機関から走行に要求される走行用パワーを出力すると内燃機関を効率よく運転する回転数およびトルクの制約として予め定められた動作ライン上のトルク未満のトルクが内燃機関から出力される少なくとも車速と変速段との関係として予め定められた変速マップに基づいて変速段が変更されるよう変速手段を制御し、クラッチによりクランクシャフトと入力軸とが接続された状態で蓄電手段の蓄電量が蓄電手段の充電を許容する範囲の上限として予め定められた所定量以下のときには、動作ラインと内燃機関の回転数とに基づく効率用パワーが内燃機関から出力されると共に電動機の駆動によって効率用パワーと走行用パワーとの差に相当する電力による蓄電手段の充電が行なわれながら走行用パワーにより走行するよう内燃機関と電動機とを制御する。これにより、内燃機関の効率の向上を図ることができる。
【0009】
本発明の第2の車両は、
内燃機関と、
前記内燃機関のクランクシャフトにクラッチを介して接続された入力軸と駆動輪に連結された出力軸との間の変速段の変更を伴う動力の伝達が可能な変速手段と、
前記変速手段の入力軸に動力を入出力可能な電動機と、
前記電動機と電力のやりとりが可能な蓄電手段と、
少なくとも車速と前記変速段との関係として予め定められた変速マップに基づいて前記変速段が変更されるよう前記変速手段を制御する変速制御手段と、
前記クラッチにより前記クランクシャフトと前記入力軸とが接続された状態で前記蓄電手段の蓄電量が該蓄電手段の充放電を許容する範囲として予め定められた所定範囲内のときには、前記内燃機関を効率よく運転する回転数およびトルクの制約として予め定められた動作ラインと前記内燃機関の回転数とに基づく効率用パワーが前記内燃機関から出力されると共に前記電動機の駆動によって前記効率用パワーと走行に要求される走行用パワーとの差に相当する電力による前記蓄電手段の充放電が行なわれながら前記走行用パワーにより走行するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御する駆動制御手段と、
を備えることを要旨とする。
【0010】
この本発明の第2の車両では、少なくとも車速と変速段との関係として予め定められた変速マップに基づいて変速段が変更されるよう変速手段を制御し、クラッチによりクランクシャフトと入力軸とが接続された状態で蓄電手段の蓄電量が蓄電手段の充放電を許容する範囲として予め定められた所定範囲内のときには、内燃機関を効率よく運転する回転数およびトルクの制約として予め定められた動作ラインと内燃機関の回転数とに基づく効率用パワーが内燃機関から出力されると共に電動機の駆動によって効率用パワーと走行に要求される走行用パワーとの差に相当する電力による蓄電手段の充放電が行なわれながら走行用パワーにより走行するよう内燃機関と電動機とを制御する。これにより、内燃機関の効率の向上を図ることができる。
【0011】
こうした本発明の第2の車両において、前記駆動制御手段は、前記クラッチにより前記クランクシャフトと前記入力軸とが接続された状態で前記蓄電手段の蓄電量が前記所定範囲内のときでも前記効率用パワーと前記走行用パワーとの差に相当する電力が前記蓄電手段の放電側の電力となるときには、前記内燃機関から前記走行用パワーが出力されて走行するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御する手段である、ものとすることもできる。こうすれば、走行用パワーに応じて内燃機関を運転することができる。
【0012】
本発明の第1の車両の制御方法は、
内燃機関と、前記内燃機関のクランクシャフトにクラッチを介して接続された入力軸と駆動輪に連結された出力軸との間の変速段の変更を伴う動力の伝達が可能な変速手段と、前記変速手段の入力軸に動力を入出力可能な電動機と、前記電動機と電力のやりとりが可能な蓄電手段と、を備える車両の制御方法であって、
前記クラッチにより前記クランクシャフトと前記入力軸とが接続された状態で前記内燃機関から走行に要求される走行用パワーを出力すると前記内燃機関を効率よく運転する回転数およびトルクの制約として予め定められた動作ライン上のトルク未満のトルクが前記内燃機関から出力される少なくとも車速と前記変速段との関係として予め定められた変速マップに基づいて前記変速段が変更されるよう前記変速手段を制御し、前記クラッチにより前記クランクシャフトと前記入力軸とが接続された状態で前記蓄電手段の蓄電量が該蓄電手段の充電を許容する範囲の上限として予め定められた所定量以下のときには、前記動作ラインと前記内燃機関の回転数とに基づく効率用パワーが前記内燃機関から出力されると共に前記電動機の駆動によって前記効率用パワーと前記走行用パワーとの差に相当する電力による前記蓄電手段の充電が行なわれながら前記走行用パワーにより走行するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御する、
ことを特徴とする。
【0013】
この本発明の第1の車両の制御方法では、クラッチによりクランクシャフトと入力軸とが接続された状態で内燃機関から走行に要求される走行用パワーを出力すると内燃機関を効率よく運転する回転数およびトルクの制約として予め定められた動作ライン上のトルク未満のトルクが内燃機関から出力される少なくとも車速と変速段との関係として予め定められた変速マップに基づいて変速段が変更されるよう変速手段を制御し、クラッチによりクランクシャフトと入力軸とが接続された状態で蓄電手段の蓄電量が蓄電手段の充電を許容する範囲の上限として予め定められた所定量以下のときには、動作ラインと内燃機関の回転数とに基づく効率用パワーが内燃機関から出力されると共に電動機の駆動によって効率用パワーと走行用パワーとの差に相当する電力による蓄電手段の充電が行なわれながら走行用パワーにより走行するよう内燃機関と電動機とを制御する。これにより、内燃機関の効率の向上を図ることができる。
【0014】
本発明の第2の車両の制御方法は、
内燃機関と、前記内燃機関のクランクシャフトにクラッチを介して接続された入力軸と駆動輪に連結された出力軸との間の変速段の変更を伴う動力の伝達が可能な変速手段と、前記変速手段の入力軸に動力を入出力可能な電動機と、前記電動機と電力のやりとりが可能な蓄電手段と、を備える車両の制御方法であって、
少なくとも車速と前記変速段との関係として予め定められた変速マップに基づいて前記変速段が変更されるよう前記変速手段を制御し、前記クラッチにより前記クランクシャフトと前記入力軸とが接続された状態で前記蓄電手段の蓄電量が該蓄電手段の充放電を許容する範囲として予め定められた所定範囲内のときには、前記内燃機関を効率よく運転する回転数およびトルクの制約として予め定められた動作ラインと前記内燃機関の回転数とに基づく効率用パワーが前記内燃機関から出力されると共に前記電動機の駆動によって前記効率用パワーと走行に要求される走行用パワーとの差に相当する電力による前記蓄電手段の充放電が行なわれながら前記走行用パワーにより走行するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御する、
ことを特徴とする。
【0015】
この本発明の第2の車両の制御方法では、少なくとも車速と変速段との関係として予め定められた変速マップに基づいて変速段が変更されるよう変速手段を制御し、クラッチによりクランクシャフトと入力軸とが接続された状態で蓄電手段の蓄電量が蓄電手段の充放電を許容する範囲として予め定められた所定範囲内のときには、内燃機関を効率よく運転する回転数およびトルクの制約として予め定められた動作ラインと内燃機関の回転数とに基づく効率用パワーが内燃機関から出力されると共に電動機の駆動によって効率用パワーと走行に要求される走行用パワーとの差に相当する電力による蓄電手段の充放電が行なわれながら走行用パワーにより走行するよう内燃機関と電動機とを制御する。これにより、内燃機関の効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施例であるハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】実施例のハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図3】実施例のハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される変速制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図4】変速マップの一例を示す説明図である。
【図5】エンジン22の動作ラインの一例を示す説明図である。
【図6】充放電要求電力設定用マップの一例を示す説明図である。
【図7】要求トルク設定用マップの一例を示す説明図である。
【図8】効率用パワーPefを設定する様子の一例を説明する説明図である。
【図9】充放電目標電力Pb*を設定する様子の一例を説明する説明図である。
【図10】変形例のハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0018】
図1は、本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、エンジン22と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26と動力軸28との接続および接続の解除を行なうクラッチ30と、動力軸28に接続された発電可能なモータMGと、インバータ42を介してモータMGと電力をやりとりするバッテリ50と、エンジン22やモータMGから動力軸28に出力された動力を変速して駆動軸32に出力する変速機60と、車両全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70と、を備える。
【0019】
エンジン22は、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関であり、エンジン22の運転状態を検出する各種センサから信号を入力するエンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24により燃料噴射制御や点火制御,吸入空気量調節制御などの運転制御を受けている。エンジンECU24は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、エンジンECU24は、クランクシャフト26に取り付けられた図示しないクランクポジションセンサからの信号に基づいてクランクシャフト26の回転数、即ちエンジン22の回転数Neも演算している。
【0020】
モータMGは、発電機として駆動することができると共に電動機として駆動できる周知の同期発電電動機として構成されており、モータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40により駆動制御されている。モータECU40には、モータMGを駆動制御するために必要な信号、例えばモータMGの回転子の回転位置を検出する図示しない回転位置検出センサからの信号や図示しない電流センサにより検出されるモータMGに印加される相電流などが入力されており、モータECU40からは、インバータ42へのスイッチング制御信号が出力されている。モータECU40は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってモータMGを駆動制御すると共に必要に応じてモータMGの運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、モータECU40は、回転位置検出センサからの信号に基づいてモータMGの回転数Nmも演算している。
【0021】
バッテリ50は、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池などの二次電池として構成されており、バッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52によって管理されている。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ50の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧,バッテリ50の出力端子に接続された電力ラインに取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流,バッテリ50に取り付けられた図示しない温度センサからの電池温度Tbなどが入力されており、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。また、バッテリECU52は、バッテリ50を管理するために電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいてバッテリ50に蓄えられている蓄電量の全容量(蓄電容量)に対する割合である蓄電割合SOCを演算したり、演算した蓄電割合SOCと電池温度Tbとに基づいてバッテリ50を充放電してもよい最大許容電力である入出力制限Win,Woutを演算している。なお、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、電池温度Tbに基づいて入出力制限Win,Woutの基本値を設定し、バッテリ50の蓄電割合SOCに基づいて出力制限用補正係数と入力制限用補正係数とを設定し、設定した入出力制限Win,Woutの基本値に補正係数を乗じることにより設定することができる。
【0022】
変速機60は、エンジン22やモータMGからの動力が出力される動力軸28とデファレンシャルギヤ34を介して駆動輪36a,36bに連結された駆動軸32とにそれぞれ入力軸と出力軸とが接続され、図示しないブレーキやクラッチを有し、動力軸28と駆動軸32との接続および接続の解除を行なうと共に動力軸28から入力した動力をその回転数を4段に変速して駆動軸32に伝達できるように構成されている。変速機60は、トルクコンバータ62と共にオートマチックトランスミッション用電子制御ユニット(以下、ATECUという)64により制御されている。ATECU64は、トルクコンバータ62の図示しないロックアップクラッチを駆動制御したり、変速機60の変速段Sを変更したりする。ATECU64は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの信号に基づいて変速機60の変速段Sを変更する変速制御を実行すると共に必要に応じて変速機60やトルクコンバータ62の状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。
【0023】
ハイブリッド用電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッド用電子制御ユニット70には、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバーの操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダルの踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からは、クラッチ30の図示しない油圧式のアクチュエータへの駆動信号などが出力ポートを介して出力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70は、前述したように、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52,ATECU64と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52,ATECU64と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
【0024】
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、運転者によるアクセルペダルの踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸32に出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力が駆動軸32に出力されるように、エンジン22とモータMGとが運転制御される。エンジン22とモータMGの運転制御としては、クラッチ30をオンとしてクランクシャフト26と動力軸28とを接続した状態で要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部がモータMGによりトルク変換されて要求動力が変速機60を介して駆動軸32に出力されるようモータMGを駆動制御するエンジン運転モードや、クラッチ30をオフとしてクランクシャフト26と動力軸28との接続を解除した状態でエンジン22の運転を停止してモータMGからの要求動力に見合う動力が変速機60を介して駆動軸32に出力されるよう運転制御するモータ運転モードなどがある。
【0025】
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作について説明する。図2はハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートであり、図3はATECU64により実行される変速制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。図2のルーチンは、クラッチ30をオンとしてクランクシャフト26と動力軸28とが接続されているエンジン運転モードのときに所定時間毎(例えば数msec毎)に繰り返し実行され、図3のルーチンは、所定時間毎(例えば数msec毎)に繰り返し実行される。説明の都合上、先に変速制御について説明し、その後に駆動制御について説明する。
【0026】
図3の変速制御ルーチンが実行されると、ATECU64の図示しないCPUは、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accや車速センサ88からの車速V,変速機60の変速段Sなど制御に必要なデータを入力し(ステップS300)、入力した車速Vとアクセル開度Accと変速マップとに基づいて目標変速段S*を設定する(ステップS310)。変速マップの一例を図4に示す。そして、設定した目標変速段S*と入力した変速機60の変速段Sとを比較し(ステップS320)、目標変速段S*と変速段Sとが同一であるときには、変速機60の変速段を変更する必要はないと判断して変速制御ルーチンを終了し、目標変速段S*と変速段Sとが異なるときには、変速機60の変速段を変更する必要があると判断して変速機60の変速段を目標変速段S*に変更して(ステップS330)、変速制御ルーチンを終了する。変速機60の変速段の変更は、図示しない油圧式のアクチュエータの駆動により変速機60のクラッチやブレーキに対して作用させる油圧を調節することにより行なわれる。実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22が低回転数高トルクの効率のよい運転領域で運転されやすくなるように変速機60の変速段が変更されるものとし、エンジン22から要求トルクに対応する要求動力(後述の走行要求パワーP*)を出力したときにエンジン22を効率よく動作させる回転数およびトルクの制約として予め定められた動作ライン(例えば、燃費最適動作ラインなど)上のトルク未満のトルクがエンジン22から出力されるよう図4に例示した変速マップが予め実験などにより定められているものとした。エンジン22の動作ラインの一例を図5に示す。以上、変速制御について説明した。
【0027】
図2の駆動制御ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accや車速センサ88からの車速V,エンジン22の回転数Ne,モータMGの回転数Nm,バッテリ50の蓄電割合SOC,入出力制限Win,Wout,充放電要求電力Pbrなど制御に必要なデータを入力する処理を実行する(ステップS100)。ここで、エンジン22の回転数Neはクランクポジションセンサからの信号に基づいて演算されたものをエンジンECU24から通信により入力するものとした。また、モータMGの回転数Nmは、回転位置検出センサにより検出されたモータMGの回転子の回転位置に基づいて演算されたものをモータECU40から通信により入力するものとした。さらに、バッテリ50の蓄電割合SOCは電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいて演算されたものを、バッテリ50の入出力制限Win,Woutはバッテリ50の電池温度Tbとバッテリ50の蓄電割合SOCとに基づいて設定されたものを、バッテリ50の充放電要求電力Pbrはバッテリ50の蓄電割合SOCに基づいて設定されたものを、それぞれバッテリECU52から通信により入力するものとした。バッテリ50の充放電要求電力設定用マップの一例を図6に示す。図示するように、バッテリ50の充放電要求電力Pbrは、バッテリ50の蓄電割合SOCがバッテリ50の充電が許容される範囲の上限として予め実験などにより定められた閾値Shi(例えば、70%や75%など)よりも大きいときには放電用電力Pbrd(放電側の正の値)が設定され、バッテリ50の蓄電割合SOCがバッテリ50の蓄電割合SOCの低下が許容される範囲の下限として予め実験などにより定められた閾値Slow(例えば、50%や45%など)よりも小さいときには充電用電力Pbrc(充電側の負の値)が設定され、バッテリ50の蓄電割合SOCが閾値Slow以上で閾値Shi以下のときには値0が設定される。
【0028】
こうしてデータを入力すると、入力したアクセル開度Accと車速Vとに基づいて車両の走行に要求されるトルクとして駆動輪36a,36bに連結された駆動軸32に出力すべき要求トルクTd*と車両の走行に要求される走行要求パワーP*とを設定する(ステップS110)。要求トルクTd*は、実施例では、アクセル開度Accと車速Vと要求トルクTd*との関係を予め定めて要求トルク設定用マップとしてROM74に記憶しておき、アクセル開度Accと車速Vとが与えられると記憶したマップから対応する要求トルクTd*を導出して設定するものとした。図7に要求トルク設定用マップの一例を示す。走行要求パワーP*は、設定した要求トルクTd*に駆動軸32の回転数Ndを乗じたものとして計算することができる。なお、駆動軸32の回転数Ndは、車速Vに換算係数kvを乗じること(Nd=kv・V)によって求めたものや、駆動軸32に取り付けられた図示しない回転数センサにより検出されたものなどを用いることができる。
【0029】
続いて、バッテリ50の蓄電割合SOCと前述の閾値Shiとを比較し(ステップS120)、バッテリ50の蓄電割合SOCが閾値Shiよりも大きいときには、バッテリ50の充電が許容されないと判断し、バッテリ50を充放電すべき充放電目標電力Pb*にバッテリ50の充放電要求電力Pbr(いまは、放電用電力Pbrd)をそのまま設定し(ステップS160)、走行要求パワーP*からバッテリ50の充放電目標電力Pb*を減じたものに損失としてのロスLossを加えたものをエンジン22に要求される要求パワーPe*として設定し(ステップS170)、設定した要求パワーPe*をエンジン22の回転数Neで割ったものをエンジン22から出力すべき目標トルクTe*に設定する(ステップS180)。
【0030】
続いて、走行要求パワーP*からエンジン22の要求パワーPe*を減じたものをモータMGの回転数Nmで割ることによりモータMGから出力すべきトルクの仮の値である仮トルクTmtmpを設定し(ステップS190)、バッテリ50の入出力制限Win,WoutをモータMGの回転数Nmで割ることによりモータMGから出力してもよいトルクの上下限としてのトルク制限Tmin,Tmaxを計算すると共に(ステップS200)、設定した仮トルクTmtmpをトルク制限Tmin,Tmaxで制限してモータMGのトルク指令Tm*を設定する(ステップS210)。
【0031】
こうしてエンジン22の目標トルクTe*とモータMGのトルク指令Tm*を設定すると、エンジン22の目標トルクTe*についてはエンジンECU24に、モータMGのトルク指令Tm*についてはモータECU40にそれぞれ送信し(ステップS220)、駆動制御ルーチンを終了する。目標トルクTe*を受信したエンジンECU24は、エンジン22から目標トルクTe*に相当するトルクが出力されるようにエンジン22における吸入空気量制御や燃料噴射制御,点火制御などの制御を行なう。また、トルク指令Tm*を受信したモータECU40は、トルク指令Tm*でモータMGが駆動されるようインバータ42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。こうした制御により、バッテリ50の蓄電割合SOCが閾値Shiよりも大きいときには、バッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で、走行要求パワーP*からバッテリ50の放電用電力Pbrdを減じて得られるパワーをエンジン22から出力すると共にモータMGの駆動によってバッテリ50を放電用電力Pbrdにより放電しながら駆動軸32に走行要求パワーP*即ち要求トルクTd*を出力して走行することができる。これにより、バッテリ50の過充電を抑制することができる。
【0032】
ステップS120でバッテリ50の蓄電割合SOCが閾値Shi以下のときには、バッテリ50の充電が許容されると判断し、エンジン22の回転数Neに基づいてエンジン22を効率よく運転するためにエンジン22から出力すべき効率用パワーPefを設定し(ステップS130)、設定した効率用パワーPefから走行要求パワーP*とロスLossとを減じたものを偏差ΔPefとして計算する(ステップS140)。効率用パワーPefは、実施例では、エンジン22を効率よく動作させる前述の動作ライン(例えば、燃費最適動作ラインなど)とエンジン22の回転数Neとに基づいて行なわれる。エンジン22の動作ラインを用いて効率用パワーPefを設定する様子を図8に示す。図示するように、動作ラインに対して例えばエンジン22の回転数Neとして回転数Ne1を与えることにより回転数Ne1に対応するトルクTe1が決まると共に回転数Ne1とトルクTe1との積としてのパワーPef1が効率用パワーPefとして導出される、即ち、動作ラインに対してある回転数Neを与えると効率用パワーPefが導出される。また、実施例のハイブリッド自動車20では、前述したように、エンジン22から走行要求パワーP*を出力したときにエンジン22を効率よく動作させる動作ライン上のトルク未満のトルクがエンジン22から出力されるよう変速マップが予め実験などにより定められているものとしたから、偏差ΔPefは正の値として計算される。即ち、偏差ΔPefは、エンジン22から効率用パワーPefを出力したときに駆動軸32に走行要求パワーP*が出力されるようモータMGを発電を伴って駆動することによって生じるバッテリ50の充電電力(ここでは充電側が正の値)に相当する。
【0033】
続いて、バッテリ50の充放電要求電力Pbr(いまは、充電用電力Pbrc又は値0)と偏差ΔPefに値−1を乗じたものとのうちの小さい方(バッテリ50の充電電力として大きさが大きい方)をバッテリ50の充放電目標電力Pb*に設定し(ステップS150)、走行要求パワーP*からバッテリ50の充放電目標電力Pb*を減じたものに損失としてのロスLossを加えたものをエンジン22に要求される要求パワーPe*として設定すると共に(ステップS170)、設定した要求パワーPe*をエンジン22の回転数Neで割ったものをエンジン22から出力すべき目標トルクTe*に設定する(ステップS180)。図9に、バッテリ50の充放電目標電力Pb*を設定する様子の一例を示す。図示するように、偏差ΔPefに値−1を乗じたものとして、バッテリ50の充電用電力Pbrcよりも小さな値(−ΔPef2)が得られたときには、値(−ΔPef2)がバッテリ50の充放電目標電力Pb*に設定され、バッテリ50の充電用電力Pbrcよりも大きな値(−ΔPef1)が得られたときには、バッテリ50の蓄電割合SOCが閾値Slow未満の範囲では充電用電力Pbrcがバッテリ50の充放電要求電力Pb*に設定されると共にバッテリ50の蓄電割合SOCが閾値Slow以上で閾値Shi以下の範囲では値(−ΔPef1)がバッテリ50の充放電目標電力Pb*に設定される。
【0034】
こうしてエンジン22の目標トルクTe*を計算すると、走行要求パワーP*からエンジン22の要求パワーPe*を減じたものをモータMGの回転数Nmで割ることによりモータMGから出力すべきトルクの仮の値である仮トルクTmtmpを設定し(ステップS190)、バッテリ50の入出力制限Win,WoutをモータMGの回転数Nmで割ってモータMGから出力してもよいトルクの上下限としてのトルク制限Tmin,Tmaxを計算すると共に(ステップS200)、設定した仮トルクTmtmpをトルク制限Tmin,Tmaxで制限してモータMGのトルク指令Tm*を設定し(ステップS210)、エンジン22の目標トルクTe*についてはエンジンECU24に、モータMGのトルク指令Tm*についてはモータECU40にそれぞれ送信し(ステップS220)、駆動制御ルーチンを終了する。こうした制御により、バッテリ50の蓄電割合SOCが閾値Shi以下のときには、基本的に、バッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で、エンジン22を現在の回転数Neで効率よく運転するための効率用パワーPefをエンジン22から出力すると共にモータMGの駆動によって効率用パワーPefと走行要求パワーP*とにより得られる偏差ΔPefに相当する電力によりバッテリ50を充電しながら駆動軸32に走行要求パワーP*即ち要求トルクTr*を出力して走行することができる。これにより、エンジン22の効率の向上を図ることができる。また、バッテリ50の蓄電割合SOCが閾値Shiより小さな閾値Slow未満のときであって、バッテリ50の充電用電力Pbrcがエンジン22の効率用パワーPefと走行要求パワーP*とにより得られる偏差ΔPefに相当する電力よりも小さい(絶対値としては大きい)ときには、走行要求パワーP*とバッテリ50の充電用電力Pbrcの絶対値との和に相当するパワーをエンジン22から出力すると共にモータMGの駆動によってバッテリ50を充電用電力Pbrcにより充電することができる。これにより、バッテリ50の蓄電割合SOCを閾値Slowよりも大きくしやすくすることができる。
【0035】
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、車速Vとアクセル開度Accとに基づいて変速マップを用いて変速段Sが変更されるよう変速機60を制御し、クラッチ30をオンとしてエンジン22のクランクシャフト26と動力軸28とが接続された状態でバッテリ50の蓄電割合SOCが充電が許容される範囲の上限として予め定められた閾値Shi以下のときには、エンジン22を効率よく運転する回転数NeおよびトルクTeの制約として予め定められた動作ラインとエンジン22の現在の回転数Neとに基づく効率用パワーPefがエンジン22から出力されると共にモータMGの駆動によって効率用パワーPefと走行要求パワーP*とにより得られる偏差ΔPefに相当する電力によるバッテリ50の充電が行なわれるようエンジン22やモータMGを制御するから、エンジン22の効率の向上を図ることができる。
【0036】
実施例のハイブリッド自動車20では、クラッチ30をオンとしてクランクシャフト26と動力軸28とが接続された状態でバッテリ50の蓄電割合SOCが充電が許容さる範囲の上限としての閾値Shiより小さな閾値Slow未満のときであってバッテリ50の充電用電力Pbrcがエンジン22の効率用パワーPefと走行要求パワーP*とにより得られる偏差ΔPefに相当する電力よりも絶対値として大きいときには、バッテリ50の充放電目標電力Pb*として充放電要求電力Pbr(即ち、充電用電力Pbrc)を設定するものとしたが、クラッチ30をオンとしてクランクシャフト26と動力軸28とが接続された状態でバッテリ50の蓄電割合SOCが閾値Shi以下のときには、充放用電力Pbrcと偏差ΔPefとの大きさの大小にかかわらず、偏差ΔPefに値−1を乗じたものをバッテリ50の充放電目標電力Pb*に設定するものとしてもよい。
【0037】
実施例のハイブリッド自動車20では、クラッチ30をオンとしてクランクシャフト26と動力軸28とが接続された状態でバッテリ50の蓄電割合SOCが閾値Shiよりも大きいときには、バッテリ50の充放電目標電力Pb*として放電用電力Pbrdを設定して放電用電力Pbrdによるバッテリ50の放電が行なわれるよう制御するものとしたが、これに代えて、例えばモータ運転モードで走行することによりバッテリ50の電力を消費するなどとしてもよい。
【0038】
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22から走行要求パワーP*を出力したときにエンジン22を効率よく動作させる動作ライン上のトルク未満のトルクがエンジン22から出力されるよう予め定められている変速マップを用いて変速機60の変速制御を行なうものとしたが、エンジン22から走行要求パワーP*を出力したときにエンジン22を効率よく動作させる動作ライン上のトルク以上のトルクがエンジン22から出力され得る変速マップを用いて変速機60の変速制御を行なうものとしてもよい。この場合、エンジン22を現在の回転数Neで効率よく運転するために出力する効率用パワーPefから走行要求パワーP*とロスLossとを減じて得られる偏差ΔPefは、正の値(バッテリ50の充電側の値)や負の値(バッテリ50の放電側の値)として計算され得るため、図2の駆動制御ルーチンに代えて、図10の駆動制御ルーチンを実行すればよい。図10のルーチンでは、図2のルーチンのステップS120とステップS150とに代えてステップS300とステップS310との処理を実行する点を除いて、図2のルーチンと同一である。したがって、同一の処理については同一のステップ番号を付し、その図示や詳細な説明は省略する。図10のルーチンでは、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、ステップS110で要求トルクTd*や走行要求パワーP*を設定すると、バッテリ50の蓄電割合SOCが閾値Slow以上かつ閾値Shi以下の許容範囲内であるか否かを判定し(ステップS300)、バッテリ50の蓄電割合SOCがこの許容範囲内でないときには、バッテリ50の充放電目標電力Pb*に充放電要求電力Pbrをそのまま設定する(ステップS160)。ここで、閾値Slow以上かつ閾値Shi以下の範囲は、バッテリ50の充放電が許容される範囲として予め実験などにより定められた許容範囲であり、この許容範囲の下限や上限として閾値Slowや閾値Shiを用いたものであるが、この許容範囲の下限や上限としては閾値Slowや閾値Shiとは異なる値を用いるものとしても構わない。一方、バッテリ50の蓄電割合SOCが閾値Slow以上かつ閾値Shi以下の許容範囲内であるときには、ステップS140でエンジン22の効率用パワーPefから走行要求パワーP*とロスLossとを減じたものとして計算された偏差ΔPefに値−1を乗じたものをバッテリ50の充放電目標電力Pb*として設定する(ステップS310)。これにより、クラッチ30をオンとしてクランクシャフト26と動力軸28とが接続された状態でバッテリ50の蓄電割合SOCがバッテリ50の充放電を許容する範囲として予め定められた許容範囲内のときには、エンジン22を効率よく運転する回転数NeおよびトルクTeの関係として予め定められた動作ラインとエンジン22の現在の回転数Neとに基づく効率用パワーPefがエンジン22から出力されると共にモータMGの駆動によって効率用パワーPefと走行要求パワーP*とにより得られる偏差ΔPefに相当する電力によるバッテリ50の充放電が行なわれながら走行要求パワーP*が駆動軸32に出力されるようエンジン22やモータMGを制御するものとなり、エンジン22の効率の向上を図ることができる。なお、この変形例の図10の駆動制御ルーチンでは、ステップS310で偏差ΔPefの値に拘わらずにバッテリ50の充放電目標電力Pb*として偏差ΔPefに値−1を乗じたものを設定するものとしたが、これに代えて、偏差ΔPefが値0以上のとき即ちバッテリ50の放電側でないときには、エンジン22を効率よく運転するためにバッテリ50を充電してもよいと判断して、バッテリ50の充放電目標電力Pb*として偏差ΔPefに値−1を乗じたものを設定し、偏差ΔPefが値0未満のとき即ちバッテリ50の放電側のときには、エンジン22の効率よりも運転者の要求を優先してエンジン22を運転すると判断して、バッテリ50の充放電目標電力Pb*に値0を設定するものとしてもよい。こうすれば、運転者の要求に対応しつつエンジン22の効率の向上を図ることができる。
【0039】
実施例のハイブリッド自動車20では、車速Vとアクセル開度Accとに基づいて変速機60の目標変速段S*を設定するものとしたが、車速Vとエンジン22のスロットル開度とに基づいて目標変速段S*を設定したり、車速Vとエンジン22の吸入空気量とに基づいて目標変速段S*を設定したり、車速Vのみに基づいて目標変速段S*を設定するものとしてもよい。
【0040】
実施例のハイブリッド自動車20では、変速機60として4段変速のものを用いるものとしたが、2段変速や3段変速,5段変速以上のものを用いるものとしてもよい。
【0041】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。本発明の第1および第2の車両について、実施例では、エンジン22が「内燃機関」に相当し、動力軸28と駆動軸32とにそれぞれ入力軸と出力軸とが接続された変速機60が「変速手段」に相当し、モータMGが「電動機」に相当し、バッテリ50が「蓄電手段」に相当する。また、本発明の第1の車両について、エンジン22から走行要求パワーP*を出力したときにエンジン22を効率よく動作させる動作ライン上のトルク未満のトルクがエンジン22から出力されるよう予め定められている変速マップに基づいて変速段Sが変更されるよう変速機60を制御する図3の変速制御ルーチンを実行するATECU64が「変速制御手段」に相当し、クラッチ30をオンとしてクランクシャフト26と動力軸28とが接続された状態でバッテリ50の蓄電割合SOCが閾値Shi以下のときには基本的に動作ラインとエンジン22の回転数Neとに基づく効率用パワーPefがエンジン22から出力されるようエンジン22の目標トルクTe*を設定すると共に効率用パワーPefと走行要求パワーP*とにより得られる偏差ΔPefに相当する電力によるバッテリ50の充電が行なわれるようモータMGのトルク指令Tm*を設定して設定値をエンジンECU24やモータECU40に送信する図2の駆動制御ルーチンを実行するハイブリッド用電子制御ユニット70と目標トルクTe*に基づいてエンジン22を制御するエンジンECU24とトルク指令Tm*に基づいてモータMGを制御するモータECU40との組み合わせが「駆動制御手段」に相当する。また、本発明の第2の車両について、エンジン22から走行要求パワーP*を出力したときにエンジン22を効率よく動作させる動作ライン上のトルク以上のトルクがエンジン22から出力され得る変速マップに基づいて変速段Sが変更されるよう変速機60を制御するATECU64が「変速制御手段」に相当し、クラッチ30をオンとしてクランクシャフト26と動力軸28とが接続された状態でバッテリ50の蓄電割合SOCがバッテリ50の充放電を許容する範囲として予め定められた許容範囲内のときには、動作ラインとエンジン22の現在の回転数Neとに基づく効率用パワーPefがエンジン22から出力されるようエンジン22の目標トルクTe*を設定すると共に効率用パワーPefと走行要求パワーP*とにより得られる偏差ΔPefに相当する電力によるバッテリ50の充放電が行なわれるようモータMGのトルク指令Tm*を設定して設定値をエンジンECU24やモータECU40に送信する図10の駆動制御ルーチンを実行するハイブリッド用電子制御ユニット70と目標トルクTe*に基づいてエンジン22を制御するエンジンECU24とトルク指令Tm*に基づいてモータMGを制御するモータECU40との組み合わせが「駆動制御手段」に相当する。
【0042】
ここで、「内燃機関」としては、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関に限定されるものではなく、水素エンジンなど如何なるタイプの内燃機関であっても構わない。「変速手段」としては、動力軸28と駆動軸32とにそれぞれ入力軸と出力軸とが接続された4段変速の変速機60に限定されるものではなく、2段変速や3段変速,5段変速以上のものなど、内燃機関のクランクシャフトにクラッチを介して接続された入力軸と駆動輪に連結された出力軸との間の変速段の変更を伴う動力の伝達が可能なものであれば如何なるものとしても構わない。「電動機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMGに限定されるものではなく、誘導電動機など、変速手段の入力軸に動力を入出力可能なものであれば如何なるタイプの電動機であっても構わない。「蓄電手段」としては、二次電池としてのバッテリ50に限定されるものではなく、キャパシタなど、電動機と電力のやりとりが可能であれば如何なるものとしても構わない。また、本発明の第1の車両の「変速制御手段」としては、エンジン22から走行要求パワーP*を出力したときにエンジン22を効率よく動作させる動作ライン上のトルク未満のトルクがエンジン22から出力されるよう予め定められている変速マップに基づいて変速段Sが変更されるよう変速機60を制御するものに限定されるものではなく、クラッチによりクランクシャフトと入力軸とが接続された状態で内燃機関から走行に要求される走行用パワーを出力すると内燃機関を効率よく運転する回転数およびトルクの制約として予め定められた動作ライン上のトルク未満のトルクが内燃機関から出力される少なくとも車速と変速段との関係として予め定められた変速マップに基づいて変速段が変更されるよう変速手段を制御するものであれば如何なるものとしても構わない。本発明の第1の車両の「駆動制御手段」としては、クラッチ30をオンとしてクランクシャフト26と動力軸28とが接続された状態でバッテリ50の蓄電割合SOCが閾値Shi以下のときには基本的に動作ラインとエンジン22の回転数Neとに基づく効率用パワーPefがエンジン22から出力されるようエンジン22の目標トルクTe*を設定してエンジン22を制御すると共に効率用パワーPefと走行要求パワーP*とにより得られる偏差ΔPefに相当する電力によるバッテリ50の充電が行なわれるようモータMGのトルク指令Tm*を設定してモータMGを制御するものに限定されるものではなく、クラッチによりクランクシャフトと入力軸とが接続された状態で蓄電手段の蓄電量が蓄電手段の充電を許容する範囲の上限として予め定められた所定量以下のときには、動作ラインと内燃機関の回転数とに基づく効率用パワーが内燃機関から出力されると共に電動機の駆動によって効率用パワーと走行用パワーとの差に相当する電力による蓄電手段の充電が行なわれながら走行用パワーにより走行するよう内燃機関と電動機とを制御するものであれば如何なるものとしても構わない。また、本発明の第2の車両の「変速制御手段」としては、エンジン22から走行要求パワーP*を出力したときにエンジン22を効率よく動作させる動作ライン上のトルク以上のトルクがエンジン22から出力され得る変速マップに基づいて変速段Sが変更されるよう変速機60を制御するものに限定されるものではなく、少なくとも車速と前記変速段との関係として予め定められた変速マップに基づいて前記変速段が変更されるよう前記変速手段を制御するものであれば如何なるものとしても構わない。本発明の第2の車両の「駆動制御手段」としては、クラッチ30をオンとしてクランクシャフト26と動力軸28とが接続された状態でバッテリ50の蓄電割合SOCがバッテリ50の充放電を許容する範囲として予め定められた許容範囲内のときには、動作ラインとエンジン22の現在の回転数Neとに基づく効率用パワーPefがエンジン22から出力されるようエンジン22の目標トルクTe*を設定してエンジン22を制御すると共に効率用パワーPefと走行要求パワーP*とにより得られる偏差ΔPefに相当する電力によるバッテリ50の充放電が行なわれるようモータMGのトルク指令Tm*を設定してモータMGを制御するものに限定されるものではなく、クラッチによりクランクシャフトと入力軸とが接続された状態で蓄電手段の蓄電量が蓄電手段の充放電を許容する範囲として予め定められた所定範囲内のときには、内燃機関を効率よく運転する回転数およびトルクの制約として予め定められた動作ラインと内燃機関の回転数とに基づく効率用パワーが内燃機関から出力されると共に電動機の駆動によって効率用パワーと走行に要求される走行用パワーとの差に相当する電力による蓄電手段の充放電が行なわれながら走行用パワーにより走行するよう内燃機関と電動機とを制御するものであれば如何なるものとしても構わない。
【0043】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0044】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、車両の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0046】
20 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、26 クランクシャフト、28 動力軸、30 クラッチ、32 駆動軸、34 デファレンシャルギヤ、36a,36b 駆動輪、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、42 インバータ、50 バッテリ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、60 変速機、62 トルクコンバータ、64 オートマチックトランスミッション用電子制御ユニット(ATECU)、70 ハイブリッド用電子制御ユニット、72 CPU、74 ROM、76 RAM、80 イグニッションスイッチ、82 シフトポジションセンサ、84 アクセルペダルポジションセンサ、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、MG モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、
前記内燃機関のクランクシャフトにクラッチを介して接続された入力軸と駆動輪に連結された出力軸との間の変速段の変更を伴う動力の伝達が可能な変速手段と、
前記変速手段の入力軸に動力を入出力可能な電動機と、
前記電動機と電力のやりとりが可能な蓄電手段と、
前記クラッチにより前記クランクシャフトと前記入力軸とが接続された状態で前記内燃機関から走行に要求される走行用パワーを出力すると前記内燃機関を効率よく運転する回転数およびトルクの制約として予め定められた動作ライン上のトルク未満のトルクが前記内燃機関から出力される少なくとも車速と前記変速段との関係として予め定められた変速マップに基づいて前記変速段が変更されるよう前記変速手段を制御する変速制御手段と、
前記クラッチにより前記クランクシャフトと前記入力軸とが接続された状態で前記蓄電手段の蓄電量が該蓄電手段の充電を許容する範囲の上限として予め定められた所定量以下のときには、前記動作ラインと前記内燃機関の回転数とに基づく効率用パワーが前記内燃機関から出力されると共に前記電動機の駆動によって前記効率用パワーと前記走行用パワーとの差に相当する電力による前記蓄電手段の充電が行なわれながら前記走行用パワーにより走行するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御する駆動制御手段と、
を備える車両。
【請求項2】
内燃機関と、
前記内燃機関のクランクシャフトにクラッチを介して接続された入力軸と駆動輪に連結された出力軸との間の変速段の変更を伴う動力の伝達が可能な変速手段と、
前記変速手段の入力軸に動力を入出力可能な電動機と、
前記電動機と電力のやりとりが可能な蓄電手段と、
少なくとも車速と前記変速段との関係として予め定められた変速マップに基づいて前記変速段が変更されるよう前記変速手段を制御する変速制御手段と、
前記クラッチにより前記クランクシャフトと前記入力軸とが接続された状態で前記蓄電手段の蓄電量が該蓄電手段の充放電を許容する範囲として予め定められた所定範囲内のときには、前記内燃機関を効率よく運転する回転数およびトルクの制約として予め定められた動作ラインと前記内燃機関の回転数とに基づく効率用パワーが前記内燃機関から出力されると共に前記電動機の駆動によって前記効率用パワーと走行に要求される走行用パワーとの差に相当する電力による前記蓄電手段の充放電が行なわれながら前記走行用パワーにより走行するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御する駆動制御手段と、
を備える車両。
【請求項3】
内燃機関と、前記内燃機関のクランクシャフトにクラッチを介して接続された入力軸と駆動輪に連結された出力軸との間の変速段の変更を伴う動力の伝達が可能な変速手段と、前記変速手段の入力軸に動力を入出力可能な電動機と、前記電動機と電力のやりとりが可能な蓄電手段と、を備える車両の制御方法であって、
前記クラッチにより前記クランクシャフトと前記入力軸とが接続された状態で前記内燃機関から走行に要求される走行用パワーを出力すると前記内燃機関を効率よく運転する回転数およびトルクの制約として予め定められた動作ライン上のトルク未満のトルクが前記内燃機関から出力される少なくとも車速と前記変速段との関係として予め定められた変速マップに基づいて前記変速段が変更されるよう前記変速手段を制御し、前記クラッチにより前記クランクシャフトと前記入力軸とが接続された状態で前記蓄電手段の蓄電量が該蓄電手段の充電を許容する範囲の上限として予め定められた所定量以下のときには、前記動作ラインと前記内燃機関の回転数とに基づく効率用パワーが前記内燃機関から出力されると共に前記電動機の駆動によって前記効率用パワーと前記走行用パワーとの差に相当する電力による前記蓄電手段の充電が行なわれながら前記走行用パワーにより走行するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御する、
ことを特徴とする車両の制御方法。
【請求項4】
内燃機関と、前記内燃機関のクランクシャフトにクラッチを介して接続された入力軸と駆動輪に連結された出力軸との間の変速段の変更を伴う動力の伝達が可能な変速手段と、前記変速手段の入力軸に動力を入出力可能な電動機と、前記電動機と電力のやりとりが可能な蓄電手段と、を備える車両の制御方法であって、
少なくとも車速と前記変速段との関係として予め定められた変速マップに基づいて前記変速段が変更されるよう前記変速手段を制御し、前記クラッチにより前記クランクシャフトと前記入力軸とが接続された状態で前記蓄電手段の蓄電量が該蓄電手段の充放電を許容する範囲として予め定められた所定範囲内のときには、前記内燃機関を効率よく運転する回転数およびトルクの制約として予め定められた動作ラインと前記内燃機関の回転数とに基づく効率用パワーが前記内燃機関から出力されると共に前記電動機の駆動によって前記効率用パワーと走行に要求される走行用パワーとの差に相当する電力による前記蓄電手段の充放電が行なわれながら前記走行用パワーにより走行するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御する、
ことを特徴とする車両の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−110996(P2011−110996A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267783(P2009−267783)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】