説明

車両および車両制御プログラム

【課題】自車両の走行を自動で制御しつつ、搭乗者の意思に沿って走行経路を決定できる車両および車両制御プログラムを提供すること。
【解決手段】車両1が、予め設定された走行軌道に沿って自動走行を行っている場合に、搭乗者がジョイスティック13を傾斜操作すると、走行制御装置100は、その傾斜方向(操作角度δ)に基づいて進行すべき道路を選択し、その道路へ進入するための走行軌道を走行軌道メモリ93bに格納する。これにより、搭乗者の意思に基づいて指示された車両1の進行すべき方向に基づいて走行軌道が設定され、その走行軌道に沿って車両1の走行を制御できる。よって、自車両の走行を自動で制御しつつ、搭乗者の意思に沿って走行軌道を決定できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両および車両制御プログラムに関し、特に、自車両の走行を自動で制御しつつ、搭乗者の意思に沿って走行経路を決定できる車両および車両制御プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両に搭載されたコンピュータの制御によって、自車両を自動走行させる技術が知られている(例えば、特許文献1)。従来の車両の自動走行では、搭乗者によって目的地や経由地の位置情報が入力されると、その入力された位置情報に基づいて、コンピュータが目的地までの走行経路を設定する。その後、コンピュータは、その設定された走行経路に沿って車両が走行するように、該車両の走行を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−282530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の技術では、搭乗者が一旦目的地や経由地を設定すると、後はコンピュータが走行経路を設定して自動で走行するため、どこをどのように走るかは全て車両が判断し決定する。これにより、搭乗者が、急遽目的地を変更した場合や、寄り道をしたい場合、又は、渋滞等により進行方向を変更した場合等において、車両を停車させて目的地や経由地を設定し直す必要性が生じる。このように、車両を自動走行させた場合、搭乗者の思いに従って車両を走行させることができないため、本来人が持っている自由に思うまま移動したい、という欲求を満たすことができない、という問題点があった。
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、自車両の走行を自動で制御しつつ、搭乗者の意思に沿って走行経路を決定できる車両および車両制御プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0006】
この目的を達成するために請求項1記載の車両によれば、記憶手段に記憶された情報、即ち、予め設定された走行経路に関する情報に基づいて、走行制御手段が車両の走行を制御する。ここで設定される走行経路の候補は、取得手段により複数取得される。車両には、車両の搭乗者から車両の進行すべき方向の指示を受け付ける受付手段が設けられている。この受付手段において車両の搭乗者から該指示を受け付けると、その指示された車両の進行すべき方向に基づいて、取得手段により取得された複数の走行経路の中から1つ走行経路を選択手段によって選択する。そして、選択された走行経路に関する情報が、設定手段によって記憶手段に記憶され、走行経路が設定される。これにより、搭乗者の意思に基づいて指示された車両の進行すべき方向に基づいて走行経路が設定され、その走行経路に沿って車両の走行を制御できる。よって、自車両の走行を自動で制御しつつ、搭乗者の意思に沿って走行経路を決定できる、という効果がある。
【0007】
なお、請求項4記載の車両制御プログラムにおいても、その車両制御プログラムを車両に設けたコンピュータにて実行させることによって、請求項1記載の車両と同様の作用効果を奏する。
【0008】
ここで、請求項1及び4に記載の「走行経路」には、車両が走行すべき軌道を示すもの
であってもよいし、単に、車両が走行すべき道路を示すものであってもよい。
【0009】
また、請求項1記載の「取得手段」及び請求項4記載の「取得ステップ」は、車両の外部に設けられた装置(サーバや携帯端末等)から、その装置にて生成された複数の走行経路の候補を取得するものの他、自車両内で生成した複数の走行経路の候補を取得するものであってもよい。また、車両の外部と自車両内とから、複数の走行経路の候補を取得するものであってもよい。
【0010】
また、請求項1記載の「受付手段」及び請求項4記載の「受付ステップ」によって受け付けられる「車両の進行すべき方向の指示」は、直接的に車両の進行すべき方向が指示されるものだけでなく、例えば、車両の操舵方向を指示することによって間接的に車両の進行すべき方向を指示するものを含む概念である。
【0011】
請求項2記載の車両によれば、現在位置取得手段により車両の現在位置が取得され、その車両の現在位置が、道路の分岐点手前の位置であるか否かが位置判断手段によって判断される。そして、選択手段は、位置判断手段により車両の現在位置が前記分岐点手前の位置であると判断された場合に、受付手段において受け付けた指示により指示された車両の進行すべき方向に基づいて、取得手段により取得された複数の走行経路の候補の中から1つ走行経路を選択するように構成されている。これにより、選択手段による走行経路の選択を、道路の分岐手前の位置を車両が走行している場合に限り、行うことができるので、走行経路の選択に係る処理の負担増加を抑制できる。一方、道路の分岐点手前を車両が走行している場合、搭乗者が進行したい道路を指示する可能性が高い。請求項2記載の車両によれば、搭乗者より指示された車両の進行すべき方向に基づいて、複数の走行経路の候補の中から走行経路が1つ選択されるので、搭乗者の意思に沿って走行経路を確実に決定できる。よって、請求項1記載の車両の奏する効果に加え、走行経路の選択に係る処理の負担増加を抑制しても、搭乗者の意思に沿った走行経路の決定を問題なく行うことができるという効果がある。
【0012】
請求項3記載の車両によれば、選択手段は、車両が走行中の道路と該道路に接続された他の道路とのなす角度が、受付手段により指示された車両の進行すべき方向と略等しい場合に、その他の道路を走行する走行経路を複数の走行経路の候補の中から選択するように構成されている。これにより、搭乗者は、現在走行している道路から他の道路へ進行した場合、その進行中の道路と進行したい他の道路とのなす角度に沿った方向を進行すべき方向として指示できる。よって、搭乗者はその指示を直感的に行うことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態における車両を模式的に示した模式図である。
【図2】走行制御装置を含む車両の電気的構成を示したブロック図である。
【図3】運転支援処理を示すフローチャートである。
【図4】推定軌道生成処理を示すフローチャートである。
【図5】推奨軌道生成処理が実行する処理の内容を模式的に示した模式図である。
【図6】(a)は、危険ポテンシャルの検出範囲を説明する図であり、(b)は、危険ポテンシャルの生成方法を説明する図である。
【図7】(a)は、車両が直線上の道路を走行する場合の危険ポテンシャルを示す図であり、(b)は、車両が右側に直角に曲がった道路を走行する場合の危険ポテンシャルを示す図である。
【図8】第1軌道選択処理を示すフローチャートである。
【図9】第2軌道選択処理を示すフローチャートである。
【図10】第2実施形態における第1軌道選択処理を示すフローチャートである。
【図11】第3実施形態における第1軌道選択処理を示すフローチャートである。
【図12】第4実施形態における運転支援処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施形態における車両1を模式的に示した模式図である。
【0015】
まず、図1を参照して、車両1の構成について説明する。車両1は、自車両の走行を自動で制御する自動走行をさせつつ、搭乗者の意思に沿って走行経路を決定できるように構成されている。ここで、自動走行とは、搭乗者がアクセルペダル、ブレーキペダルや車両1の操舵を操作しなくても、予め定めた走行軌道に沿って車両1を走行させることである。走行軌道とは、車両1が走行すべき軌道を示したものである。
【0016】
車両1の自動走行は、車両1に設けた走行制御装置100によって行われる。走行制御装置100は、車両1の走行を制御するコンピュータ装置である。走行制御装置100の詳細構成については、図2を参照して後述する。
【0017】
車両1は、また、ジョイスティック13を有している。ジョイスティック13は、車両1の搭乗者から車両1の進行すべき方向の指示を受け付けるものである。ジョイスティック13は、搭乗者によって操作され且つ複数の方向に傾斜可能な操作レバー(図示せず)を有しており、搭乗者は、該操作レバーを車両1の進行すべき方向に向けて傾斜操作することにより、その操作レバーの傾斜方向によって車両1の進行すべき方向を指示できるように構成されている。
【0018】
例えば、搭乗者により、ジョイスティック13の操作レバーが右方向に傾斜させられた場合は、車両1の進行すべき方向を車両1の現在の進行方向から右方向であると判断する。また、搭乗者により、ジョイスティック13の操作レバーが左方向に傾斜させられた場合は、車両1の進行すべき方向を車両1の現在の進行方向から左方向であると判断する。
【0019】
ジョイスティック13は、操作レバーが操作されると、その操作レバーの傾斜方向を表した操作角度δを走行制御装置100へ送信する。走行制御装置100は、そのジョイスティック13から受信した操作レバーの操作角度δに基づいて、搭乗者から指示された車両1の進行すべき方向を判断し、車両1の走行経路を決定する。これにより、搭乗者の意思に沿って走行経路を決定できる。
【0020】
なお、ここで送信される操作角度δは、車両1の進行方向(前方)にジョイスティック13の操作レバーが搭乗者によって傾斜された場合を0°とし、車両1の進行方向(前方)から右側90°にジョイスティック13の操作レバーが傾斜された場合を+90°、車両1の進行方向(前方)から左側90°にジョイスティック13の操作レバーが傾斜された場合を−90°とする。
【0021】
車両1は、走行制御装置100、ジョイスティック13の他に、複数(本実施形態では4輪)の車輪2FL,2FR,2RL,2RRと、それら複数の車輪2FL〜2RRの内の一部(本実施形態では、左右の前輪2FL,2FR)を回転駆動する車輪駆動装置3と、複数の車輪2FL〜2RRの内の一部(本実施形態では、左右の前輪2FL,2FR)を操舵する操舵駆動装置5及びステアリング装置6と、運転支援スイッチ25と、第1〜第4カメラ26a〜26dと、現在位置検出装置27と、VICS(登録商標)受信装置28と、を主に有している。
【0022】
車輪2FL,2FRは、車両1の前方側に配置される左右の前輪であり、車輪駆動装置3によって回転駆動される駆動輪として構成されている。一方、車輪2RL,2RRは、車両1の後方側に配置される左右の後輪であり、車両1の走行に伴って従動する従動輪として構成されている。
【0023】
車輪駆動装置3は、左右の前輪2FL,2FRに回転駆動力を付与するものであり、デファレンシャルギヤ(図示せず)及び一対のドライブシャフト31を介して左右の前輪2FL,2FRに接続されている。車輪駆動装置3は、車両1に設けられたアクセルペダル(図示せず)の踏み込み量に応じて、ドライブシャフト31を介して左右の前輪2FL,2FRに回転駆動力を付与する。これにより、車両1は、アクセルペダルの踏み込み量に応じた速度で走行する。
【0024】
なお、車輪駆動装置3は、走行制御装置100から、目標とすべき車両速度を通知する制御信号に基づき、その通知された車両速度となるように、ドライブシャフト31を介して左右の前輪2FL,2FRに回転駆動力を付与するように構成してもよい。この場合、車輪駆動装置3は、走行制御装置100の入出力ポート95(図2参照)に接続され、走行制御装置100に設けられたCPU91(図2参照)から制御信号を受信可能に構成すればよい。
【0025】
操舵駆動装置5は、左右の前輪2FL,2FRを操舵するための装置であり、ステアリング装置6に回転駆動力を付与する電動モータ5a(図2参照)を備えて構成されている。ステアリング装置6は、ステアリングシャフト61と、フックジョイント62と、ステアリングギヤ63と、タイロッド64と、ナックルアーム65とを主に備えて構成されている。なお、ステアリング装置6は、ステアリングギヤ63がピニオン(図示せず)とラック(図示せず)とを備えたラックアンドピニオン機構によって構成されている。
【0026】
操舵駆動装置5は、走行制御装置100からの制御信号によって電動モータ5aを駆動すると、電動モータ5aの回転駆動力がステアリング装置6のステアリングシャフト61に付与される。その回転駆動力は、ステアリングシャフト61を介してフックジョイント62に伝達されると共にフックジョイント62によって角度を変えられ、ステアリングギヤ63のピニオンに回転運動として伝達される。
【0027】
そして、ピニオンに伝達された回転運動はラックの直線運動に変換され、ラックが直線運動することで、ラックの両端に接続されたタイロッド64が移動し、ナックルアーム65を介して前輪2FL,2FRRが操舵される。これにより、車両1は、走行制御装置100から指示された操舵角で、車輪2FL,2FRが操舵される。
【0028】
運転支援スイッチ25は、自動走行により車両1を走行させたい場合に、搭乗者が押下するスイッチである。運転支援スイッチ25が搭乗者により押下され、オン状態にされると、走行制御装置100は、後述する運転支援処理(図3参照)を実行する。これにより、搭乗者の意思に沿って走行経路を決定しながら、車両1において自動走行が行われる。また、運転支援スイッチ25が搭乗者により再び押下され、オフ状態されると、走行制御装置100は運転支援処理を終了し、車両1の自動走行が終了する。
【0029】
第1〜第4カメラ26a〜26dは、いずれも、車両1の周囲を撮像するための撮像装置であり、CCDイメージセンサや、CMOSイメージセンサなどの撮像素子が搭載されたデジタルカメラで構成されている。各第1〜第4カメラ26a〜26dは、撮像した画像を画像データに変換して走行制御装置100へ出力する。
【0030】
第1カメラ26aは、車両1の前方中央に配設され、第2カメラ26bは、車両1の右側面のサイドミラー(非図示)に配設され、第3カメラ26cは、車両1の左側面のサイドミラー(非図示)に配設され、第4カメラ26dは、車両1の後方中央に配設されている。本実施形態では、3つの第1〜第4カメラ26a〜26dにより、車両1を中心として車両1の少なくとも前方方向30m及び後方方向15mと、車両1を中心として車両1の左右方向に少なくとも24mの範囲を撮像可能に構成されている。
【0031】
走行制御装置100は、第1〜第4カメラ26a〜26dより取得した画像データを解析し、車両1の周辺情報を取得する。例えば、歩道や車線、センターラインを判断し、車両1が走行している道路の際(きわ)を判断して、車両1の周辺情報とする。
【0032】
また、画像データの解析結果から、道路上の障害物を判断したり、道路または歩道にいる歩行者、自転車、他の車両(対向車や前後左右にいる車両)の位置を判断して、車両1の周辺情報とする。更に、画像データの解析結果から、道路の状態、例えば、雨や雪により路面が滑りやすい状態にあるか否か等を判断して、車両1の周辺情報とする。
【0033】
詳細については後述するが、走行制御装置100は、自動走行を行う場合に、これらの判断結果に基づいて、走行可能な道路または車線毎に、その道路または車線上の危険ポテンシャルを算出する。危険ポテンシャルとは、道路または車線上のある地点を車両1が走行した場合のその地点における危険度を表す指標である。
【0034】
走行制御装置100は、算出した危険ポテンシャルを基に、最も危険ポテンシャルの小さい地点を車両1が自動走行するように、各道路または車線に対して、走行軌道の候補である推奨軌道を生成する。そして、走行制御装置100は、ジョイスティック13の操作状態から、複数の道路または車線に対して生成された推奨軌道の中から走行軌道を選択し、その走行軌道に沿って車両1を自動で走行させるべく、車両1の走行を制御する。
【0035】
また、走行制御装置100は、第1〜第4カメラ26a〜26dより取得した画像データを解析して、現在車両1が進行している道路に接続された他の道路の有無を判断し、これも周辺情報とする。走行制御装置100は、この道路の有無の判断結果と、走行制御装置100に格納された地図情報データベース(以下「地図情報DB」と称す)92b(図2参照)や、VICS受信装置28で受信した交通規制情報等とに基づいて、走行可能な道路を判断する。そして、走行制御装置100は、走行可能な道路の1つ1つについて推奨軌道を生成し、生成した推奨軌道の中から、ジョイスティック13の操作状態に基づいて、走行軌道を1つ選択する。
【0036】
現在位置検出装置27は、車両1の現在位置(緯度、経度からなる絶対座標値)を検出するためのものである。この現在位置検出装置27は、人工衛星を利用して車両の位置を測定するGPS(Global Positioning System)受信装置、地磁気を検出して車両の方位を求める地磁気センサ、ジャイロセンサ、車速センサの1又は複数が使用される。更には、地図情報DB92bと走行軌道とのマップマッチング或いは地図情報DB92bと第1〜第4カメラ26a〜26dでとらえた構造物や標識等とのマッチングにより現在位置を同定してもよい。
【0037】
現在位置検出装置27で検出した車両1の現在位置は、走行制御装置100へ送信される。走行制御装置100は、現在位置検出装置27より受信した車両1の現在位置に基づいて、車両1が走行軌道を沿って走行するように、車両1の自動走行を制御する。また、走行制御装置100は、その車両1の現在位置に基づいて地図情報データDB92bから、現在車両1が進行している道路に接続された他の道路に関する道路データを取得して、推奨軌道を生成する。
【0038】
VICS受信装置28は、渋滞や交通規制などの道路交通情報を提供するVICS(Vehicle Information and Communication System)より、その道路交通情報を受信する装置である。VICS受信装置28は、受信した道路交通情報を走行制御装置100へ送信する。走行制御装置100は、その道路交通情報に含まれる交通規制情報を基に、車両1が進行している道路に接続された他の道路が走行可能か否かを判断し、走行可能な道路に対して、推奨軌道を生成する。
【0039】
次いで、図2を参照して、走行制御装置100の詳細構成について説明する。図2は、走行制御装置100を含む車両1の電気的構成を示したブロック図である。
【0040】
走行制御装置100は、CPU91、フラッシュメモリ92及びRAM93を有しており、それらがバスライン94を介して入出力ポート95に接続されている。入出力ポート95には、上述した、操舵駆動装置5、ジョイスティック13、運転支援スイッチ25、第1〜第4カメラ26a〜26d、現在位置検出装置27、VICS受信装置、及び、その他の入出力装置99などが接続されている。
【0041】
CPU91は、入出力ポート95に接続されたジョイスティック13、運転支援スイッチ25、第1〜第4カメラ26a〜26d、現在位置検出装置27、VICS受信装置28等から送信された各種の情報に基づいて、操舵駆動装置5等を制御する演算装置である。
【0042】
フラッシュメモリ92は、CPU91によって実行される制御プログラムや固定値データ等を記憶するための書き換え可能な不揮発性のメモリである。このフラッシュメモリ92には、プログラムメモリ92a及び地図情報DB92bが設けられている。
【0043】
プログラムメモリ92aは、CPU91にて実行される各種のプログラムが格納されたフラッシュメモリ92上の領域である。後述する図3のフローチャートに示す運転支援処理、図4のフローチャートに示す推奨軌道生成処理、図8のフローチャートに示す第1軌道選択処理、及び、図9のフローチャートに示す第2軌道選択処理をCPU91にて実行させるための各プログラムは、このプログラムメモリ92aに格納されている。
【0044】
CPU91は、このプログラムメモリ92aに格納された各プログラムに従って各種処理を実行することで、車両1を自動走行させると共に、搭乗者の意思に沿って走行経路を決定する。
【0045】
地図情報DB92bは、地図および道路に関する情報が格納されたデータベースである。この地図情報DB92bでは、各種施設の場所や、各種道路の位置などが、緯度、経度からなる絶対座標値によって示されている。
【0046】
走行制御装置100は、現在位置検出装置27によって検出された車両1の現在位置と、地図情報DB92bに格納された情報とから、車両1が進行している道路に接続された他の道路を判断する。走行制御装置100は、地図情報DB92bより判断した他の道路に、第1〜第4カメラ26a〜26dにて撮像された画像データの解析結果やVICS受信装置28にて受信した道路交通情報を加味して、走行可能な道路を判断する。そして、その走行可能な道路に対して、推奨軌道を生成する。
【0047】
地図情報DB92bには、また、各道路に関する各種道路情報、例えば、その道路に対する進入禁止、車両通行止め等の各種規制情報や、その道路の幅、車線数、交差点間距離(道路の長さ)、及び、その道路における事故履歴、その他注意情報等が各道路に対して対応付けされている。
【0048】
走行制御装置100は、地図情報DB92bにおいて各道路に対応付けられた規制情報に基づいて、その道路が走行可能な道路か否かを判断する。また、走行制御装置100は、地図情報DB92bにおいて各道路に対応付けられた道路の幅や車線数、事故履歴、その他注意情報等に基づいて、各道路または車線に対し危険ポテンシャルを算出する。そして、走行制御装置100は、算出した危険ポテンシャルが最も低い地点を車両1が走行するように、各道路または車線に対し、推奨軌道を生成する。
【0049】
なお、車両1にナビゲーション装置が別途設けられている場合、走行制御装置100は、フラッシュメモリ92に地図情報DB92bを格納することに代えて、そのナビゲーション装置が有する地図情報DBを用いて上記の処理を行うようにしてもよい。この場合、ナビゲーション装置が走行制御装置100の入出力ポート95に接続され、走行制御装置100が入出力ポート95を介してナビゲーション装置より地図情報DBに格納された各種情報を取得するように構成すればよい。
【0050】
RAM93は、書き換え可能な揮発性のメモリであり、CPU91によって実行される制御プログラムの実行時に各種のデータを一時的に記憶するためのメモリである。RAM93には、推奨軌道メモリ93aと、走行軌道メモリ93bとが設けられている。
【0051】
推奨軌道メモリ93aは、走行制御装置100が生成した推奨軌道情報(推奨軌道上に位置する各点の位置情報)を推奨軌道毎に格納するために、RAM93に設けた領域である。走行制御装置100は、車両1が進行している道路(進行している車線)と、その道路に接続された他の道路と、車両1が進行している道路に複数の車線がある場合は、車両1の進行方向が同じ隣の車線と、対向車線とに対して、それらの道路または車線を走行すると仮定した場合に車両1が走行すべき推奨軌道を、各道路および車線に対して生成する。ここで各道路に対して生成された1以上の推奨軌道情報が、推奨軌道毎に推奨軌道メモリ93aに格納される。
【0052】
走行軌道メモリ93bは、これから車両1が走行すべき軌道を示した走行軌道情報(走行軌道上に位置する各点の位置情報)を格納するために、RAM93に設けた領域である。走行制御装置100は、走行軌道メモリ93bに格納された走行軌道情報を取得し、その軌道に沿って車両1が走行するように、車両1の走行を制御する。
【0053】
また、走行制御装置100は、ジョイスティック13の操作状態に基づいて、推奨軌道メモリ93aに格納された1以上の推奨軌道の中から走行軌道を選択し、その軌道情報を走行軌道情報として走行軌道メモリ93bに格納する。
【0054】
例えば、車両1が道路の分岐点手前を走行している場合、走行制御装置100は、ジョイスティック13に設けられた操作レバーの傾斜方向(操作角度δ方向)と略等しい角度で、現在走行している道路から分岐している道路を抽出し、その道路に対して生成された推奨軌道を走行軌道として選択して、その軌道情報を走行軌道メモリ93bに格納する。
【0055】
また、車両1が道路の分岐点手前以外を走行している場合、走行制御装置100は、推奨軌道メモリ93aに格納された推奨軌道の中に、車両1の前方30m以内で且つジョイスティック13に設けられた操作レバーの傾斜方向(操作角度δ方向)にある推奨軌道があるか否かを判断する。そして、走行制御装置100は、推奨軌道メモリ93aに格納された推奨軌道の中に、車両1の前方30m以内で且つジョイスティック13に設けられた操作レバーの傾斜方向(操作角度δ方向)にある推奨軌道があれば、その推奨軌道を走行軌道として選択し、その軌道情報を走行軌道メモリ93bに格納する。
【0056】
次いで、図3〜図9までのフローチャートと、模式図とを参照して、車両1に搭載された走行制御装置100のCPU91により実行される運転支援処理について説明する。図3は、その運転支援処理を示すフローチャートである。運転支援処理は、車両1を自動走行させると共に、搭乗者の搭乗者の意思に沿って走行経路を決定する処理である。
【0057】
運転支援処理は、運転支援スイッチ25が搭乗者によって押下され、オン状態にされると、CPU91によって処理が開始される。運転支援処理では、まず、現在位置検出装置27によって検出された車両1の現在位置を取得する(S1)。そして、推奨軌道生成処理を実行し(S2)、S1にて取得した車両1の現在位置からの走行軌道の候補として、推奨軌道を1以上生成する。この推奨軌道生成処理の詳細は、図4を参照して後述する。
【0058】
次いで、車両1が道路の分岐点手前を走行しているか否かを判断する(S3)。ここで、分岐点は、交差点だけでなく、駐車場等へ出入りするための通路への接続点も含まれる。この分岐点か否かの判断は、S1の処理にて取得された車両1の現在位置と、地図情報DB92bに格納された地図や道路に関する情報とを比較することにより行われる。
【0059】
即ち、S3の処理では、車両1の現在位置から、車両1の前方の所定の距離(例えば、30m)範囲内に、交差点や、駐車場等へ出入りする通路への接続点が存在するか否かを、地図情報DBに格納された情報から判断する。そして、車両1の前方の所定の距離範囲内に、交差点や駐車場等へ出入りする通路への接続点が存在する場合に、車両1が道路の分岐点手前を走行していると判断する。
【0060】
S3の処理において、車両1が道路の分岐点手前を走行していると判断した場合は(S3:Yes)、第1軌道選択処理を実行し(S4)、S8の処理へ移行する。第1軌道選択処理では、車両1が道路の分岐点手前を走行している場合に、ジョイスティック13の傾斜方向に基づいて、S2の推奨軌道生成処理によって生成された1以上の推奨軌道の中から推奨軌道を1つ選択し、それを走行軌道として設定する。第1軌道選択処理の詳細については、図8を参照して後述する。
【0061】
S3の処理において、車両1が道路の分岐点手前以外を走行していると判断した場合は(S3:No)、次いで、ジョイスティック13の操作があるか否かを判断する(S5)。そして、ジョイスティック13の操作がある場合(S5:Yes)、更に、ジョイスティックの傾斜方向が車両1の進行方向と異なっているか否かを判断する(S6)。このS6の判断では、ジョイスティックの傾斜方向(操作角度δ)が車両1の進行方向から所定角度(例えば、30°)以上ずれている場合に、ジョイスティックの傾斜方向が車両1の進行方向と異なると判断する。
【0062】
そして、S6の処理において、ジョイスティックの傾斜方向が車両1の進行方向と異なっていると判断した場合は(S6:Yes)、第2軌道選択処理を実行して(S7)、S8の処理へ移行する。
【0063】
第2軌道選択処理では、車両1が道路の分岐点手前以外を走行しており、且つ、ジョイスティック13が、搭乗者によって車両1の進行方向とは異なる方向に傾斜させられた場合に、そのジョイスティック13の傾斜方向に基づいて、S2の推奨軌道生成処理によって生成された1以上の推奨軌道の中から推奨軌道を1つ選択し、それを走行軌道として設定する。第2軌道選択処理の詳細については、図9を参照して後述する。
【0064】
一方、S5の処理において、ジョイスティック13の操作がないと判断された場合(S5:No)、及び、ジョイスティック13の操作があると判断されても(S5:Yes)、S6の処理において、ジョイスティック13の傾斜方向が進行方向と異ならないと判断された場合は(S6:No)、そのままS8の処理へ移動する。
【0065】
S5の処理にてジョイスティック13の操作がないと判断される場合、搭乗者は、車両1の進行方向を維持したい、との意思を有していると判断できる。運転支援処理では、この場合、そのままS8の処理へ移行することにより、車両1は走行軌道を決定することなく、車両1の走行を制御する。よって、搭乗者の意思を反映した自動走行を行うことができる。
【0066】
また、ジョイスティック13の操作があると判断されても、S6の処理にてジョイスティック13の傾斜方向が進行方向と異ならないと判断された場合は、そのジョイスティック13が搭乗者の意思に反して(例えば、何かがジョイスティック13にぶつかって)操作させたものであるか、又は、搭乗者が誤ってジョイスティック13を操作してしまったものと推定できる。このような場合に、車両1の進行方向を不用意に変更してしまうと、却って危険な走行となる場合が生じる。
【0067】
運転支援処理では、このような場合にも、そのままS8の処理へ移行するので、車両1は走行軌道を決定することなく、車両1の走行を制御する。よって、車両1を安全に走行させることができる。
【0068】
S8の処理では、走行軌道メモリ93bに格納された走行軌道情報に基づいて、車両1がその走行軌道に沿って走行するように、車両1の走行を制御する走行制御処理を実行する。
【0069】
この制御方法は公知のものが多くあるので、詳細については説明を省略するが、例えば、車両1を現在の車両速度Vで走行軌道を走行させた場合に、t秒後(例えば、1秒後。車両1の車両速度に応じて変更してもよい。)における車両1の位置Ptを求める。そして、位置Ptへ移動するために必要なヨーレートγを求め、そのヨーレートγと車両1の車両速度Vとから、次式(1)によって前輪2FL,2FRの操舵角δtを決定する。
【0070】
δt = (1+A×V)×(lw/V)×γ ・・・(1)
ここで、Aは、車両1の操縦安定性の指標であって個々の車両1によって予め決まるスタビリティファクタであり、lwは、前輪2FL,2FRを結ぶ前輪軸と、後輪2RL,2RRを結ぶ後輪軸との距離であるホイールベースである。
【0071】
そして、前輪2FL,2FRの操舵角が式(1)に基づいて決定された操舵角δtとなるように、操舵駆動装置5へ制御信号を送信する。操舵駆動装置5は、制御信号に基づいて、前輪2FL,2FRの操舵角がδtとなるように、電動モータ5aを駆動する。これにより、車両1を走行軌道に沿って自動走行させることができる。
【0072】
なお、車両速度についても走行制御装置100にて自動で制御する場合は、前輪2FL,2FRの操舵角が式(1)に基づいて決定された操舵角δtとなるように、操舵駆動装置5へ制御信号を送信するのとあわせて、車両速度がVとなるように車輪駆動装置3へ制御信号を送信すればよい。これにより、車輪駆動装置3は、制御信号に基づいて、車輪速度がVとなるように電動モータ3によって前輪2FL,2FRに回転駆動力を付与する。
【0073】
S8の処理の後、運転支援スイッチ25が再び押下され、オフ状態となったか否かを判断する(S9)。その結果、運転支援スイッチ26がオン状態のままであれば(S9:No)、S1の処理へ戻り、再びS1〜S9の処理を実行する。これにより、運転支援スイッチ26がオン状態である間は、車両1の自動走行が継続して行われ、また、搭乗者の搭乗者の意思に沿って走行経路が決定される。
【0074】
なお、S1〜S9の処理は、例えば、50ミリ秒単位で実行される。これにより、車両1が走行軌道から外れても、50ミリ秒毎に、走行軌道に沿って車両1が走行されるように走行制御処理にて制御されるので、自動走行を走行軌道に沿って精度よく実行することができる。また、ジョイスティック13が操作された場合、その操作に極めて速く反応して処理することができ、搭乗者の意思を反映した走行経路の決定を遅滞なく行うことができる。
【0075】
一方、S9の処理の結果、運転支援スイッチ26が押下されてオフ状態となったと判断された場合は(S9:Yes)、運転支援処理を終了する。
【0076】
次いで、図4、図5のフローチャート及び模式図を参照して、CPU91により実行される推奨軌道生成処理(S2)の詳細について説明する。図4は、その推奨軌道生成処理を示すフローチャートである。また、図5は、推奨軌道生成処理が実行する処理の内容を模式的に示した模式図である。
【0077】
なお、図5の模式図では、車両1が道路7を走行している場合について例示している。道路7は、車両1が走行している左側車線71と、左側車線71の右側に設置された右側車線72と、対向車線73とによって構成されている。
【0078】
推奨軌道生成処理は、上述した通り、運転支援処理(図3)の一処理(S2)であり、S1にて取得した車両1の現在位置からの走行軌道の候補として、推奨軌道を1以上生成する。
【0079】
この推奨軌道生成処理では、まず、車両1の進行方向で最も近い分岐点(交差点や駐車場等へ出入りする通路への接続点)を地図情報DB92bより探索し、その分岐点に関するデータ(分岐点の位置情報)を地図情報DB92bより取得する(S21)。図5(a)に示す例では、車両1の進行方向で最も近い分岐点として分岐点70に関するデータを地図情報DB92bより取得する。
【0080】
次いで、分岐点に接続している道路や駐車場への通路(以下「道路等」と称す)に関するデータ(道路や通路の位置情報)も、地図情報DB92bより取得し(S22)、現在進行中の道路に関するデータも含めてRAM93に一時的に保存する。図5(b)に示す例では、分岐点70に接続されている道路74及び75に関するデータを、地図情報DB92bより取得し、RAM93へ一時的に格納する。
【0081】
続いて、S22の処理でデータを取得した道路等の各々に対して進入可能か否かを、地図情報DB92bの道路情報に含まれる進入禁止や車両通行止め等の規制情報、事故履歴、その他注意情報と、VICS受信装置28にて受信した道路交通情報に含まれている交通規制情報と、を基に判断し、通れない道路については、その道路データをRAM93から削除する(S23)。図5(c)に示す例では、道路75が進入禁止であるため、道路75に関するデータをRAM93から削除している。
【0082】
次いで、第1〜第4カメラ26a〜26dにて撮像した画像データを解析し、車両1の周辺情報を取得する(S24)。そして、取得した周辺情報に基づいて、S22の処理でデータを取得した道路のうち、ゲートが設置されている等して進入できない道路があれば、その道路データをRAM93から削除し、また、新たな道路が設置されている等、S22の処理でデータを取得した道路以外に通行可能な道路があれば、その道路に関するデータをRAM93へ追加して格納する(S25)。
【0083】
図5(c)に示す例では、第1〜第4カメラ26a〜26dにて撮像した画像データの解析によって得られた周辺情報から、通行可能な道路76があったので、その道路76に関するデータをRAM93へ追加して格納している。
【0084】
その後、RAM93にデータが格納された各道路と、車両1の進行方向と同一方向の車線(現在走行している車線を含む。以下、同じ。)、及び、対向車線について、それぞれの道路および車線に対して危険ポテンシャルを生成する(S26)。危険ポテンシャルの生成方法については、図6を参照して後述する。
【0085】
そして、RAM93にデータが格納された各道路、車両1の進行方向と同一方向の車線、及び、対向車線の各々について、危険ポテンシャルの最も低い部分を車両1が走行するための軌道を求め、その軌道を各道路や車線の推奨軌道として、その推奨軌道情報を推奨軌道メモリ93aに格納する(S27)。
【0086】
図5(d)の例では、RAM93にデータが格納されている道路74,76と、現在車両1が走行している左側車線71と、同じ進行方向の右側車線72と、対向車線73と、の各々に対して、まず、危険ポテンシャルを生成し、そして、生成した危険ポテンシャルが最も低い部分を車両1が走行するための軌道を求め、その軌道を推奨軌道74a,76a,71a,72a,73aとして、それらの軌道情報を推奨軌道メモリ93aに格納している。
【0087】
ここで、図6を参照して、道路や車線における危険ポテンシャルの生成方法について説明する。図6(a)は、危険ポテンシャルの検出範囲を説明する図であり、図6(b)は、危険ポテンシャルの生成方法を説明する図である。
【0088】
まず、図6(a)を参照して、危険ポテンシャルの生成範囲について説明する。なお、以下の説明において使用する座標系は、いわゆる車両座標系であり、車両1の後輪軸(2RL,2RRを結んだ直線)をx軸とし、車両1中央の前後軸上をy軸とし、x軸およびy軸の交点を原点Oとしたものを用いる。また、この車両座標系において、x軸は、車両1の進行方向右側を+方向とし、y軸は、車両1の進行方向を+方向とする。
【0089】
ここで、危険ポテンシャルの生成対象となる道路または車線の境界線の座標は、車両1の進行方向右側の境界線が(x,y)〜(x,y)であるものとし、車両1の進行方向左側の境界線が(x,y)〜(x,y)であるものとする。
【0090】
ここで、危険ポテンシャルの生成対象となる道路または車線の境界線の定義について説明する。境界線を堺にある走行可能領域と走行不可能領域を表現するために、図6(a)における車両1の進行方向右側の境界線(x,y)〜(x,y)は(x,y,x,y)と表現する。これは、(x,y)を原点とし、この点から(x,y)への方向をx軸とした座標系において、y座標が正となる領域を走行可能領域、負となる領域を走行不可能領域として定義している。同様に、図6(a)における車両1の進行方向左側の境界線(x,y)〜(x,y)は(x,y,x,y)と表現され、(x,y)を原点とし、この点から(x,y)への方向をx軸とした座標系において、y座標が正となる領域を走行可能領域、負となる領域を走行不可能領域として定義している。従って、図6(a)で、車両1の進行方向右側の境界線が(x,y)〜(x,y)、進行方向左側の境界線が(x,y)〜(x,y)と判断することが可能である。
【0091】
この道路または車線の境界の座標は、地図情報DB92bに格納された道路情報、及び、第1〜第4カメラ26a〜26dの画像データを解析することにより取得した周辺情報に基づいて、設定される。
【0092】
危険ポテンシャルの生成範囲は、図6(a)に示す通り、次のように設定される。即ち、自動走行時の車両1の車両速度をVとした場合に所定時間tが経過する間に車両1が進む距離L(=V×t)を基準として、y軸方向は、x軸から進行方向(+方向)に向かって距離Lまでの範囲を危険ポテンシャルの範囲とし、x軸方向は、y軸から車両1の左右両方向(±方向)に向かって距離Lまでの範囲を危険ポテンシャルの範囲とする。このように危険ポテンシャルの生成範囲を設定することで、車両1が所定時間t(例えば、5秒)の間に進むであろう範囲について、危険ポテンシャルが生成される。
【0093】
危険ポテンシャルの生成では、図6(a)で示したように危険ポテンシャルの生成範囲を設定した後、次いで、その生成範囲と、危険ポテンシャルの生成対象となる道路または車線の境界線との交点の座標を算出する。
【0094】
ここでは、車両1から一定距離先のy座標が“L”における、危険ポテンシャルの生成範囲と車両1の進行方向右側の道路または車線の境界線との交点1の座標(xc1,yc1)、及び、危険ポテンシャルの生成範囲と車両1の進行方向左側の道路または車線の境界線との交点2の座標(xc2,yc2)を、次式(2)〜(7)によって算出する。
【0095】
c1=L ・・・(2)
c1=(y−y)/(x−x) ・・・(3)
c1=(Lc1+Bc1×x−y)/Bc1 ・・・(4)
c2=L ・・・(5)
c2=(y−y)/(x−x) ・・・(6)
c2=(Lc2+Bc2×x−y)/Bc2 ・・・(7)
但し、ここで算出した交点1の座標は、次式(8)、(9)をいずれも満足する必要があり、また、交点2の座標は、次式(10)、(11)をいずれも満足する必要がある。
【0096】
−L ≦ xc1 ≦ L ・・・(8)
(y−L)(y−L) ≦ 0 ・・・(9)
−L ≦ xc2 ≦ L ・・・(10)
(y−L)(y−L) ≦ 0 ・・・(11)
この条件をいずれも満足しない場合は、交点1と交点2とのいずれもが危険ポテンシャルの生成範囲から外れた位置にあることになる。よって、この場合、危険ポテンシャルの生成範囲を広げるか、若しくは、危険ポテンシャルを生成せずに他の方法で推奨軌道を生成する。
【0097】
推奨軌道を生成する他の方法としては、推奨軌道の生成対象となる道路または車線へスムーズに進入または進行できる軌道を算出して、その軌道を推奨軌道とする方法がある。この場合、クロソイド曲線を考慮して、スムーズに進行または進入できる軌道を算出してもよいし、曲率半径が大きくなるようにスムーズに進行または進入できる軌道を算出しても良い。
【0098】
また、推奨軌道を生成する他の方法としては、その生成対象となる道路または車線へ最短距離で進行または進入できる軌道を算出して、その軌道を推奨軌道としてもよい。更に、地図情報DB92bの道路情報に、推奨軌道を含めておき、その道路情報に基づいて、推奨軌道を生成してもよい。
【0099】
さて、交点1,2の座標を、式(2)〜(7)を用いて算出し、算出した交点1,2の座標が式(8)〜(11)を満足していた場合、交点1と交点2を結んだ直線上、即ち、y軸の座標が“L”の直線上の各点に対して、危険ポテンシャルを生成する。その危険ポテンシャルの生成は、図6(b)に示す方法によって行う。
【0100】
まず、交点1(車両1の進行方向右側)を基準とし、その交点1より道路または車線の外側の部分が最も高い危険ポテンシャルを示すものとして、交点1より左側の危険ポテンシャルPを次式(12)によって算出する。
【0101】
= K×e^(−l/w) ・・・(12)
ここで、Kは、ポテンシャル係数であり、lは、車両1の全幅の1/2の長さであり、wは、交点1からの距離である。
【0102】
式(12)により算出した、交点1を基準とした危険ポテンシャルPは、図6(b)の一番上のグラフのようになる。
【0103】
次いで、交点2(車両1の進行方向左側)を基準とし、その交点2より道路または車線の外側の部分が最も高い危険ポテンシャルを示すものとして、交点2より右側の危険ポテンシャルPを算出する。ここで、Pも上記式(12)の右辺と同じ式によって算出する。これにより算出した、交点2を基準とした危険ポテンシャルPは、図6(b)の真ん中のグラフのようになる。
【0104】
そして、これら交点1を基準とした危険ポテンシャルPと交点2を基準とした危険ポテンシャルPとを合成して、車両1から一定距離先のy座標が“L”における危険ポテンシャルPを求める。即ち、危険ポテンシャルPを次式(13)により算出する。
【0105】
P = P+P ・・・(13)
式(13)により算出した危険ポテンシャルPは、図6(b)の一番下のグラフのようになる。
【0106】
なお、交点1と交点2とのいずれかが危険ポテンシャルの生成範囲にある場合は、危険ポテンシャルの生成範囲内にある交点のみ使用して、y軸の座標が“L”である直線上の各点に対して、危険ポテンシャルを生成する。例えば、交点1のみが危険ポテンシャルの生成範囲にある場合は、図6(b)の一番上のグラフに示す危険ポテンシャルPを算出して、これを危険ポテンシャルPとする。また、交点2のみが危険ポテンシャルの生成範囲にある場合は、図6(b)の真ん中のグラフに示す危険ポテンシャルPを算出して、これを危険ポテンシャルPとする。
【0107】
このように、危険ポテンシャルの生成では、まず、常に一定距離先(y座標が“L”の地点)の危険ポテンシャルPを、上記のようにして算出する。また、第1〜第4カメラ26a〜26dにて撮像した画像データの解析結果から、道路上の障害物、道路または歩道にいる歩行者、自転車、他の車両(対向車や前後左右にいる車両)の存在を把握していたり、道路の状態、例えば、雨や雪により路面が滑りやすい状態にあることを把握していた場合は、障害物等の位置や、路面の状態等に基づいて、算出した危険ポテンシャルPを補正する。
【0108】
このようにして生成した危険ポテンシャルでは、最もポテンシャルの低い場所が危険リスクの最も低い場所であると認識できる。例えば、図7(a)では、車両1が直線上の道路を走行する場合の危険ポテンシャルについて示しているが、この場合、道路の真ん中が最も危険ポテンシャルが低く、危険リスクが最も低いと認識できる。また、図7(b)では、車両1が右側に直角に曲がった道路を走行する場合の危険ポテンシャルについて示しているが、この場合、道路の境界a−bより離れるほど危険ポテンシャルが低くなり、危険リスクが低くなると認識できる。
【0109】
本実施形態では、この危険ポテンシャルの最も低い地点を車両1が自動走行するように、推奨軌道を生成する。上述した通り、車両1の走行軌道は、このようにして生成された1以上の推奨軌道の中から選択される。よって、車両1は、最も安全な地点を自動走行するように、車両1の走行が制御されるので、搭乗者は安心して車両1に自動走行を行わせることができる。
【0110】
次いで、図8を参照して、CPU91により実行される第1軌道選択処理(S4)の詳細について説明する。図8は、その第1軌道選択処理を示すフローチャートである。この第1軌道選択処理は、上述した通り、運転支援処理(図3)の一処理(S4)であり、車両1が道路の分岐点手前を走行している場合に、ジョイスティック13の傾斜方向に基づいて、S2の推奨軌道生成処理によって生成された1以上の推奨軌道の中から推奨軌道を1つ選択し、それを走行軌道として設定するものである。
【0111】
この第1軌道選択処理では、まず、ジョイスティック13の操作レバーが搭乗者により操作されたか否かを判断する(S40)。そして、ジョイスティック13が搭乗者により操作されたと判断される場合は(S40:Yes)、次いで、ジョイスティック13に設けられた操作レバーの傾斜方向を示す操作角度δをジョイスティック13から取得する(S41)。
【0112】
次に、推奨軌道生成処理(S2)によりRAM93に格納された道路データ、即ち、分岐点に接続されている道路データを1つRAM93より取得し(S42)、その道路データを取得した道路と車両1が現在走行している道路とのなす角度θをその道路データから求めて、求めた角度θとS41の処理にて取得したジョイスティック13の操作角度δとを比較する(S43)。
【0113】
そして、分岐点に接続された道路、即ち、推奨軌道生成処理(S2)によりRAM93に格納された道路データがある道路の全てに対して、S43の処理によるチェック(道路のなす角度θとジョイスティック13の操作角度δとの比較)を行ったか否かを判断する(S44)。その結果、全ての道路に対してS43の処理によるチェックを行っていない場合は(S44:No)、S42の処理へ戻る。これにより、分岐点に接続された全ての道路に対して、その道路と車両1が現在走行している道路とのなす角度θが求められ、その角度θとジョイスティック13の操作角度δとが比較される。
【0114】
S44の処理の結果、分岐点に接続された全ての道路に対して、道路のなす角度θとジョイスティック13との操作角度δとの比較が行われたと判断されると(S44:Yes)、S45の処理へ進み、S43の処理の結果、分岐点に接続された道路のうち、その道路と車両1が現在走行している道路とのなす角度θが、最もジョイスティック13の操作角度δに近い道路を抽出し、その道路における角度θが、ジョイスティック13の操作角度δに略等しいものとして、その道路に対して生成された推奨軌道を走行軌道として選択する(S45)。
【0115】
そして、S45の処理により選択された推奨軌道情報を推奨軌道メモリ93aより読み出して、その軌道情報を走行軌道情報として走行軌道メモリ93bに格納し(S46)、第1軌道選択処理を終了する。
【0116】
これにより、走行制御装置100は、S46の処理によって新たに格納された走行軌道情報に従って、車両1の走行を制御する。S43及びS45の処理から分かるとおり、S46の処理によって新たに格納された走行軌道は、搭乗者が操作したジョイスティック13の操作角度δに近い角度で、現在走行している道路から分岐している道路に対して生成された推奨軌道である。よって、この第1軌道選択処理を実行することにより、車両1を自動走行させつつ、搭乗者の意思に沿って走行軌道を選択させることができる。また、予め目的地が設定され、その目的地に対して走行軌道が生成されている場合には、走行軌道を変更させることができる。
【0117】
また、搭乗者は、現在走行している道路から別の道路へ進行させたい場合、その現在走行している道路と進行したい別の道路とのなす角度を、ジョイスティック13の傾斜方向として、ジョイスティック13を操作すればよい。よって、車両1の現在位置から進行したい道路の方向をジョイスティック13の傾斜方向として搭乗者に操作させる場合と比べ、搭乗者はその操作を直感的に行うことができる。よって、搭乗者に対して、ジョイスティック13の操作を容易に行わせることができる。
【0118】
また、この第1軌道選択処理では、現在走行している道路とのなす角度θが、ジョイスティック13の操作角度δと完全に等しい道路がなくても、その操作角度δに最も近い角度θを有する道路を抽出して、その道路に対して生成された推奨軌道を走行軌道として選択する。第1軌道選択処理が実行されるのは、車両1が道路の分岐点手前を走行している場合であるが、この場合に搭乗者からジョイスティックの操作があれば、それは、搭乗者が走行軌道を決定したいという意思を持っている可能性が極めて高い。
【0119】
第1軌道選択処理は、ジョイスティック13の操作角度δが、車両1が走行している道路と搭乗者が進行したい道路とのなす角度θと若干ずれていたとしても、その道路を抽出して、その道路に対して生成された推奨軌道を走行軌道として選択するので、搭乗者の意思を確実に車両1の自動走行に対して反映させることができる。
【0120】
一方、S40の処理の結果、ジョイスティック13が操作されていないと判断される場合は(S40:No)、現在走行中の道路を道なりに進む推奨軌道を走行軌道として選択し(S47)、S46の処理へ移行する。そして、S47の処理により選択された推奨軌道情報を推奨軌道メモリ93aより読み出して、その軌道情報を走行軌道情報として走行軌道メモリ93bに格納し(S46)、第1軌道選択処理を終了する。これにより、道路の分岐点手前で搭乗者がジョイスティック13を操作しなかった場合、搭乗者は、現在走行している道路を道なりに進行したい、との意思を持っていると判断できる。そこで、この場合、現在走行中の道路を道なりに進む推奨軌道を走行軌道として選択することにより、搭乗者の意思に沿って、現在の走行中の道路を道なりに車両1を進行させることができる。
【0121】
なお、S40の処理の結果、ジョイスティック13が操作されていないと判断される場合は(S40:No)、S47の処理に代えて、所定時間ジョイスティック13が操作されなければ、車両1を停止させるようにしてもよい。これにより、搭乗者に対してジョイスティック13の操作を促し、必ず搭乗者によるジョイスティック13の操作に従って走行軌道を決定することができる。
【0122】
また、予め目的地が設定され、その目的地に対して走行軌道が生成されている場合において、S40の処理の結果、ジョイスティック13が操作されていないと判断される場合は(S40:No)、そのまま第1軌道選択処理を終了させてもよい。車両1は、既に走行軌道メモリ93bに格納されている走行軌道情報に基づいて、車両1の走行を制御するので、搭乗者の意思に沿って車両1を現在の走行軌道に従って走行させることができる。
【0123】
次いで、図9を参照して、CPU91により実行される第2軌道選択処理(S7)の詳細について説明する。図9は、その第2軌道選択処理を示すフローチャートである。この第2軌道選択処理は、上述した通り、運転支援処理(図3)の一処理(S7)であり、車両1が道路の分岐点手前以外を走行しており、且つ、ジョイスティック13が、搭乗者によって車両1の進行方向とは異なる方向に傾斜させられた場合に、そのジョイスティック13の傾斜方向に基づいて、S2の推奨軌道生成処理によって生成された1以上の推奨軌道の中から推奨軌道を1つ選択し、それを走行軌道として設定する処理である。
【0124】
この第2軌道選択処理では、まず、ジョイスティック13に設けられた操作レバーの傾斜方向を示す操作角度δをジョイスティック13から取得する(S71)。次いで、前方(車両1の進行方向)30m以内で、且つ、S71の処理により取得したジョイスティック13の操作角度δの方向に推奨軌道があるか否かを、推奨軌道メモリ93aに格納された推奨軌道情報から判断する(S72)。その結果、推奨軌道がある場合は(S72:Yes)、その操作角度δ方向にある推奨軌道を走行軌道として選択し(S73)、選択した推奨軌道情報を推奨軌道メモリ93aから読み出して、それを走行軌道情報として走行軌道メモリ93bに格納する(S74)。そして、第2軌道選択処理を終了する。
【0125】
これにより、走行制御装置100は、S74の処理によって新たに格納された走行軌道情報に従って、車両1の走行を制御する。S72,S73の処理から分かるとおり、S74の処理によって新たに格納された走行軌道は、搭乗者が操作したジョイスティック13の傾斜方向の近辺に存在する推奨軌道である。よって、この第2軌道選択処理を実行することにより、車両1を自動走行させつつ、搭乗者の意思に沿って走行軌道を決定することができる。
【0126】
一方、S72の処理の結果、前方(車両1の進行方向)30m以内で、且つ、S71の処理により取得したジョイスティック13の操作角度δの方向に推奨軌道がないと判断される場合は(S72:No)、そのまま、第2軌道選択処理を終了する。これにより、走行軌道メモリ93bに格納された走行軌道情報が変更されることなく、そのまま維持される。
【0127】
ここで、第2軌道選択処理が実行されるのは、上述した通り、車両1が道路の分岐点手前以外を走行している場合である。この場合に、ジョイスティック13が操作されていても、そのジョイスティック13の傾斜方向(操作角度δ方向)に推奨軌道がなければ、ジョイスティック13が搭乗者の意思に反して(例えば、何かがジョイスティック13にぶつかって)操作させたものであるか、又は、搭乗者が誤ってジョイスティック13を操作してしまったものと推定できる。本実施形態では、このような場合、車両1は走行軌道を決定することなく走行を制御するので、車両1を安全に走行させることができる。
【0128】
以上説明したように、第1実施形態によれば、走行軌道メモリ93bに格納された走行軌道情報に基づいて、車両1の走行が走行制御装置100により制御される。この走行軌道メモリ93bに格納される走行軌道の候補である推奨軌道は、推奨軌道生成処理により1以上生成される。一方、車両1には、ジョイスティック13が設けられており、搭乗者がジョイスティック13を傾斜操作した場合に、その傾斜方向によって、車両1の進行すべき方向が搭乗者から指示される。
【0129】
そして、この搭乗者が、ジョイスティック13を傾斜操作すると、走行制御装置100は、その傾斜方向(操作角度δ)にある推奨軌道、或いは、その操作角度δに近い角度で、現在走行している道路から分岐している道路に対して生成された推奨軌道が、走行軌道として選択され、その軌道情報が走行軌道メモリ93bに格納される。
【0130】
これにより、搭乗者の意思に基づいて指示された車両1の進行すべき方向に基づいて走行軌道が設定され、その走行軌道に沿って車両1の走行を制御できる。よって、自車両の走行を自動で制御しつつ、搭乗者の意思に沿って走行軌道を決定できる。
【0131】
次いで、図10を参照して、第2実施形態について説明する。第1実施形態では、運転支援処理(図3)の中で車両1が道路の分岐点手前を走行している場合に実行される第1軌道選択処理(S4)において、搭乗者が操作したジョイスティック13の操作角度δに近い角度で、現在走行している道路から分岐している道路に対して生成された推奨軌道を走行軌道として選択する場合について説明した。これに対し、第2実施形態では、該第1軌道選択処理(S4)において、ジョイスティック13の操作角度δからt秒後の車両位置を予測し、その予測した車両位置に最も近い推奨軌道を走行軌道として選択する。
【0132】
なお、第2実施形態において、車両1及び走行制御装置100の構成は、第1実施形態と同じものである。また、走行制御装置100のCPU91によって実行される運転支援処理は、第1軌道選択処理(S4)を除いて同一である。よって、第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付して、その図示と説明を省略する。
【0133】
図10は、第2実施形態における車両1に搭載された走行制御装置100のCPU91によって実行される第1軌道選択処理(S4)を示すフローチャートである。この第1軌道選択処理は、第1実施形態と同様に、運転支援処理(図3)の一処理(S4)であり、車両1が道路の分岐点手前を走行している場合に、ジョイスティック13の傾斜方向に基づいて、S2の推奨軌道生成処理によって生成された1以上の推奨軌道の中から推奨軌道を1つ選択し、それを走行軌道として設定するものである。
【0134】
この第2実施形態における第1軌道選択処理では、第1実施形態と同様に、まず、S40,S41の処理を実行する。即ち、ジョイスティック13の操作レバーが搭乗者により操作されたか否かを判断し(S40)、ジョイスティック13が操作されていない場合は(S40:No)、第1実施形態と同様にS47の処理を実行した後に、後述するS145の処理へ移行する一方、ジョイスティック13が搭乗者により操作されたと判断される場合は(S40:Yes)、ジョイスティック13に設けられた操作レバーの傾斜方向を示す操作角度δをジョイスティック13から取得する(S41)。
【0135】
そして、第2実施形態における第1軌道選択処理では、S41の処理の後、そのS41の処理にて取得したジョイスティック13の操作角度δと、車両1の現在の車両速度とから、ジョイスティック13の操作角度δの方向へ車両1を進行させた場合のt秒後(例えば、1秒後)の車両位置を予測する(S142)。
【0136】
それから、S142の処理にて予測した車両位置と、推奨軌道生成処理(S2)により生成され且つ推奨軌道メモリ92aに軌道情報が格納されている全ての推奨軌道との距離を算出する(S143)。そして、S143の処理の結果から、S142の処理にて予測した車両位置に最も距離の近い推奨軌道を走行軌道として選択する(S144)。
【0137】
その後、S144の処理またはS47の処理により選択された推奨軌道情報を推奨軌道メモリ93aより読み出して、その軌道情報を走行軌道情報として走行軌道メモリ93bに格納し(S145)、第1軌道選択処理を終了する。
【0138】
これにより、走行制御装置100は、S145の処理によって新たに格納された走行軌道情報に従って、車両1の走行を制御する。S142〜S144の処理から分かるとおり、S145の処理によって新たに格納された走行軌道は、搭乗者が操作したジョイスティック13の傾斜方向(操作角度δの方向)の近辺に存在する推奨軌道である。よって、第2実施形態によれば、この第1軌道選択処理を実行することにより、車両1を自動走行させつつ、搭乗者の意思に沿って走行軌道を選択させることができる。また、予め目的地が設定され、その目的地に対して走行軌道が生成されている場合には、走行軌道を変更させることができる。
【0139】
また、第2実施形態における第1軌道選択処理では、ジョイスティック13の操作角度δ方向に推奨軌道がなくても、その操作角度δ方向の近辺にある推奨軌道を選択する。上述した通り、第1軌道選択処理が実行されるのは、車両1が道路の分岐点手前を走行している場合であり、搭乗者からジョイスティックの操作があれば、それは、搭乗者が走行軌道を決定したいという意思を持っている可能性が極めて高い。第1軌道選択処理は、ジョイスティック13の操作角度δ方向の近辺にある推奨軌道を選択するので、搭乗者によるジョイスティック13の操作が、実際に進行したい方向と若干ずれていたとしても、搭乗者の意思を確実に車両1の自動走行に対して反映させることができる。
【0140】
なお、S144の処理において、S142の処理にて予測した車両位置に最も距離の近い推奨軌道を走行軌道として選択する場合、ジョイスティックの傾斜方向(操作角度δ)を加味して選択を行ってもよい。例えば、予測した車両位置に最も距離の近い推奨軌道が2つある場合は、ジョイスティックの傾斜方向に、より近い推奨軌道を走行軌道として選択してもよい。
【0141】
次いで、図11を参照して、第3実施形態について説明する。第1及び第2実施形態では、運転支援処理(図3)の中で車両1が道路の分岐点手前を走行している場合に実行される第1軌道選択処理(S4)において、ジョイスティックの傾斜方向(操作角度δ)を考慮して、推奨軌道生成処理(S2)にて生成された1以上の推奨軌道の中から走行軌道を選択する場合について説明した。一方、第3実施形態では、ジョイスティック13が傾斜操作された場合、その操作角度δの方向に前輪2FL、2FRの操舵角を付与するように、走行制御処理(S8)にて操舵駆動装置5を制御する。更に、第1軌道選択処理(S4)では、車両1の現在位置に最も近い推奨軌道を走行軌道として選択する。
【0142】
なお、第3実施形態において、車両1及び走行制御装置100の構成は、第1実施形態と同じものである。また、走行制御装置100のCPU91によって実行される運転支援処理は、第1軌道選択処理(S4)及び走行制御処理(S8)を除いて同一である。よって、第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付して、その図示と説明を省略する。
【0143】
第3実施形態における走行制御処理は、運転支援処理(図3)の一処理(S8)であり、その処理内容は、走行軌道メモリ93bに格納された走行軌道情報に基づいて、車両1がその走行軌道に沿って走行するように、車両1の走行を制御すると共に、上述した通り、ジョイスティック13が傾斜操作された場合は、その操作角度δの方向に前輪2FL、2FRの操舵角を付与するように、走行制御処理(S8)にて操舵駆動装置5を制御する。
【0144】
一方、第3実施形態における第1軌道選択処理(S4)は、図11に示すフローチャートに従って処理を実行する。ここで、図11は、第3実施形態における車両1に搭載された走行制御装置100のCPU91によって実行される第1軌道選択処理(S4)を示すフローチャートである。
【0145】
この第1軌道選択処理は、第1実施形態と同様に、運転支援処理(図3)の一処理(S4)である。但し、第1実施形態とは異なり、第3実施形態における第1軌道選択処理では、ジョイスティック13の傾斜方向を直接的には考慮せず、車両1の現在位置に基づいて、S2の推奨軌道生成処理によって生成された1以上の推奨軌道の中から推奨軌道を1つ選択し、それを走行軌道として設定する。
【0146】
第3実施形態における第1軌道選択処理では、まず、運転支援処理(図3)のS1の処理によって取得した車両1の現在位置と、推奨軌道生成処理(S2)により生成され且つ推奨軌道メモリ92aに軌道情報が格納されている全ての推奨軌道との距離を算出する(S241)。そして、S241の処理の結果から、車両1の現在位置に最も距離の近い推奨軌道を走行軌道として選択する(S242)。
【0147】
その後、S242の処理により選択された推奨軌道情報を推奨軌道メモリ93aより読み出して、その軌道情報を走行軌道情報として走行軌道メモリ93bに格納し(S243)、第1軌道選択処理を終了する。
【0148】
上述した通り、第3実施形態における車両1は、ジョイスティック13が搭乗者により傾斜操作されると、走行制御処理(S8)によって、その操作角度δの方向に前輪2FL、2FRの操舵角が付与されるので、車両1は、そのジョイスティック13の傾斜方向に進むことになる。そして、車両1が、そのジョイスティック13の傾斜方向に進み始めると、その後、第1軌道選択処理(S4)では、そのジョイスティック13の傾斜方向に進み始めた車両1の現在位置を基準として、その現在位置に最も近い推奨軌道を走行軌道として選択することになる。
【0149】
よって、結果として、第3実施形態においても、間接的にではあるが、第1実施形態や第2実施形態と同様に、ジョイスティック13の傾斜方向が考慮されて走行軌道が決定される。従って、第3実施形態によれば、車両1を自動走行させつつ、搭乗者の意思に沿って走行軌道を選択させることができる。また、予め目的地が設定され、その目的地に対して走行軌道が生成されている場合には、走行軌道を変更させることができる。
【0150】
なお、S242の処理において、車両1の現在位置に最も距離の近い推奨軌道を走行軌道として選択する場合、第2実施形態のS144の処理と同様に、ジョイスティックの傾斜方向(操作角度δ)を加味して選択を行ってもよい。例えば、車両1の現在位置に最も距離の近い推奨軌道が2つある場合は、ジョイスティックの傾斜方向に、より近い推奨軌道を走行軌道として選択してもよい。
【0151】
また、S241の処理の前に、現在の車両位置と車両1の現在の車両速度とジョイスティック13の操作角度δとから、そのジョイスティック13の操作角度δの方向へ車両1を進行させた場合のt秒後(例えば、0.5秒後)の車両位置を予測しておき、S241〜S243の処理では、その予測した車両位置に最も距離の近い推奨軌道を走行軌道として選択して、その軌道情報を走行軌道メモリ93bに格納してもよい。この場合、車両1がジョイスティック13の傾斜方向に進み始めると、第1軌道選択処理(S4)によって、そのジョイスティック13の傾斜方向に進み始めた車両1の車両位置に基づき予測されたt秒後の車両位置を基準として、その予測車両位置に最も近い推奨軌道が走行軌道として選択される。よって、この場合においても、ジョイスティック13の傾斜方向が考慮されて走行軌道を決定することができる。
【0152】
次いで、図12を参照して、第4実施形態について説明する。第1〜第3実施形態では、運転支援スイッチがオン状態の場合に走行制御装置100のCPU91にて実行される運転支援処理において、先に1以上の推奨軌道を生成しておき、その1以上の推奨軌道の中から、搭乗者により操作されたジョイスティック13の傾斜方向を考慮して、走行軌道を選択する場合について説明した。
【0153】
これに対し、第4実施形態では、該運転支援処理において、車両1が走行している道路と、その道路に接続されている他の道路の中から、搭乗者により操作されたジョイスティック13の傾斜方向を考慮して、進行すべき道路を1つ選択し、その選択した道路に対して、走行軌道を生成する。
【0154】
なお、第4実施形態において、車両1及び走行制御装置100の構成は、運転支援処理が異なる点と、推奨軌道メモリ92aが不要である点とを除いて、第1実施形態と同じものである。よって、第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付して、その図示と説明を省略する。
【0155】
図12は、第4実施形態における車両1に搭載された走行制御装置100のCPU91によって実行される運転支援処理を示すフローチャートである。この運転支援処理は、第1〜第3実施形態と同様に、運転支援スイッチ25が搭乗者によって押下され、オン状態にされると、CPU91によって処理が開始される。
【0156】
第4実施形態の運転支援処理では、まず、現在位置検出装置27によって検出された車両1の現在位置を取得し(S301)、次いで、道路マップ生成処理を実行する(S302)。この道路マップ生成処理では、車両1が現在走行している道路に接続され且つ進入可能な道路を駐車場等への通路および現在走行中の道路を含めて抽出し、その道路に関するデータを一時的にRAM93へ格納する。具体的には、第1実施形態における推奨軌道生成処理(S2)のS21〜S25の処理(図4参照)と同一の処理が、道路マップ生成処理にて行われる。
【0157】
次いで、運転支援処理では、車両1が道路の分岐点手前を走行しているか否かを判断する(S303)。ここで、分岐点は、第1実施形態の運転支援処理のS3と同様に、交差点だけでなく、駐車場等へ出入りするための通路への接続点も含まれる。この分岐点か否かの判断は、S301の処理にて取得された車両1の現在位置と、地図情報DB92bに格納された各種情報とを比較することにより、第1実施形態のS3の処理と同様の方法で行われる。
【0158】
即ち、S303の処理では、車両1の現在位置から、車両1の前方の所定の距離(例えば、30m)範囲内に、交差点や、駐車場等へ出入りする通路への接続点が存在するか否かを、地図情報DBに格納された地図情報や道路情報から判断する。そして、車両1の前方の所定の距離範囲内に、交差点や駐車場等へ出入りする通路への接続点が存在する場合に、車両1が道路の分岐点手前を走行していると判断する。
【0159】
S303の処理において、車両1が道路の分岐点手前を走行していると判断した場合は(S303:Yes)、道路選択処理を実行し(S304)、S305の処理へ移行する。道路選択処理では、車両1が道路の分岐点手前を走行している場合に、ジョイスティック13の傾斜方向に基づいて、S302の道路マップ生成処理によって抽出された道路および現在進行中の道路の中から、進入すべき道路を1つ選択する。
【0160】
この道路選択処理の具体的な処理としては、例えば、第1実施形態における第1軌道選択処理(図8)のS40〜S45の処理と同様の処理を実行する。但し、道路選択処理では、S45の処理において、分岐点に接続された道路(現在進行中の道路を含む)のうち、その道路と車両1が現在走行している道路とのなす角度θが、最もジョイスティック13の操作角度δに近い道路を選択する。これにより、搭乗者が操作したジョイスティック13の操作角度δに近い角度で、現在走行している道路から分岐している道路が選択される。
【0161】
また、道路選択処理の具体的な処理として、第2実施形態における第1軌道選択処理(図10)のS40,S41,S142〜S144の処理と同様の処理を実行してもよい。但し、道路選択処理では、S143の処理において、S142の処理にて予測した車両位置と、道路マップ生成処理(S302)によりRAM93に一時的に格納された全ての道路(即ち、車両1が現在走行している道路を含めて、その道路に接続され且つ進入可能な道路の全て)との距離を、道路毎に算出する。そして、S144の処理において、S143の処理の結果から、S142の処理にて予測した車両位置に最も距離の近い道路を選択する(S144)。これにより、搭乗者が操作したジョイスティック13の傾斜方向(操作角度δの方向)の近辺に存在する道路が選択される。
【0162】
なお、S144の処理において、S142の処理にて予測した車両位置に最も距離の近い道路を選択する場合は、第2実施形態と同様に、ジョイスティックの傾斜方向(操作角度δ)を加味して選択を行ってもよい。例えば、予測した車両位置に最も距離の近い道路が2つある場合は、ジョイスティックの傾斜方向に、より近い道路を選択してもよい。
【0163】
また、道路選択処理の具体的な処理として、第3実施形態における第1軌道選択処理(図11)のS241,S242の処理と同様の処理を実行してもよい。但し、この場合、後述する走行制御処理(S306)において、第3実施形態における走行制御処理と同様に、車両1が走行軌道に沿って走行するように車両1の走行を制御すると共に、ジョイスティック13が傾斜操作された場合は、その操作角度δの方向に前輪2FL、2FRの操舵角を付与するように操舵駆動装置5を制御する必要がある。
【0164】
また、道路選択処理では、S241の処理において、S301の処理にて取得した車両1の現在位置と、道路マップ生成処理(S302)によりRAM93に一時的に格納された全ての道路(即ち、車両1が現在走行している道路を含めて、その道路に接続され且つ進入可能な道路の全て)との距離を、道路毎に算出する。そして、S242の処理において、車両1の現在位置に最も距離の近い道路を選択する(S242)。
【0165】
この場合、車両1は、第3実施形態と同様に、走行制御処理(S306)によってジョイスティック13の傾斜方向に進むことになる。そして、車両1が、そのジョイスティック13の傾斜方向に進み始めると、その後、道路選択処理(S304)では、そのジョイスティック13の傾斜方向に進み始めた車両1の現在位置を基準として、その現在位置に最も近い道路が選択されることになる。
【0166】
なお、S242の処理において、車両1の現在位置に最も距離の近い道路を選択する場合は、第3実施形態と同様に、ジョイスティックの傾斜方向(操作角度δ)を加味して選択を行ってもよい。例えば、車両1の現在位置に最も距離の近い道路が2つある場合は、ジョイスティックの傾斜方向に、より近い道路を選択してもよい。
【0167】
このように、道路選択処理(S304)では、ジョイスティック13の傾斜方向が考慮されて、進入すべき道路が1つ選択される。
【0168】
そして、道路選択処理(S304)の完了後、次いで、走行軌道生成処理を実行し(S305)、S304にて選択した道路へ進入するための走行軌道を生成する。この、走行軌道生成処理の具体的な処理としては、第1実施形態の推奨軌道生成処理(図4)のS26,S27と同様の処理を実行する。
【0169】
但し、道路選択処理では、S26の処理において、S304にて選択された道路に対して危険ポテンシャルを生成し、S27の処理において、危険ポテンシャルの最も低い部分を車両1が走行するように走行軌道を生成して、その軌道情報を走行軌道メモリ93bに格納する。なお、危険ポテンシャルの具体的な生成方法としては、第1実施形態と同一の方法(図5〜図7)で行われる。
【0170】
そして、走行軌道生成処理(S305)の完了後、走行制御処理を実行する(S306)。この走行制御処理は、走行軌道メモリ93bに格納された走行軌道情報に基づいて、車両1がその走行軌道に沿って走行するように、車両1の走行を制御する処理で、具体的には、第1実施形態の走行制御処理(図3のS8)と同一の処理を行う。
【0171】
このように、第4実施形態では、道路の分岐点手前で搭乗者によりジョイスティック13が操作されると、そのジョイスティック13の傾斜方向に基づいて、進入すべき道路が選択され、その選択された道路へ進入するための走行軌道が生成される。そして、この生成された走行軌道に沿って車両1が自動走行されるように、車両1の走行を制御する。よって、車両1の自動走行を行いつつ、搭乗者の意思に沿って走行軌道を選択させることができる。また、予め目的地が設定され、その目的地に対して走行軌道が生成されている場合には、走行軌道を変更させることができる。
【0172】
一方、S303の処理の結果、車両1が道路の分岐点手前以外を走行していると判断した場合(S303:No)、S304,S305の処理をスキップして、走行制御処理を実行する(S306)。これにより、車両1が道路の分岐点手前以外を走行している場合は、既に走行軌道メモリ93bに格納されている走行軌道情報に基づいて、車両1の走行が制御される。
【0173】
これにより、車両1が道路の分岐点手前以外を走行している場合は、ジョイスティック13が操作されても走行軌道を決定することなく、車両1が走行している走行軌道に沿って、車両1を自動走行させることができる。
【0174】
なお、この第4実施形態では、搭乗者によるジョイスティック13の傾斜方向に基づいて、先に進入すべき道路を選択し、その後にその道路へ進入するための走行軌道を生成するため、道路の分岐点手前以外のところでの進路変更やUターン等へ対応することはできないが、車両1が道路の分岐点手前を走行している場合に限り、搭乗者の意思に沿って走行軌道を選択する処理を行うので、走行軌道の選択に係る処理の負担増加を抑制できる。一方、少なくとも、搭乗者が進路を決定したいという思いが最も生じる道路の分岐点手前においては、S304,S305の処理によって、搭乗者の意思に沿って走行軌道を確実に決定できる。従って、走行軌道の選択に係る処理の負担増加を抑制しても、搭乗者の意思に沿った走行軌道の決定を問題なく行うことができる。
【0175】
S306の処理の後は、運転支援スイッチ25が再び押下されてオフ状態となったか否かを判断する(S307)。その結果、運転支援スイッチ26がオン状態のままであれば(S307:No)、S301の処理へ戻り、再びS301〜S307の処理を実行する。これにより、運転支援スイッチ26がオン状態である間は、車両1の自動走行が継続して行われ、また、搭乗者の搭乗者の意思に沿って走行経路が決定される。
【0176】
なお、S301〜S307の処理も、第1実施形態のS1〜S9の処理と同様に、例えば、50ミリ秒単位で実行される。これにより、車両1が走行軌道を外れても、50ミリ秒毎に、走行軌道に沿って車両1が走行されるように走行制御処理にて制御されるので、自動走行を走行軌道に沿って精度よく実行することができる。また、ジョイスティック13が操作された場合、その操作に極めて速く反応して処理することができ、搭乗者の意思を反映した走行経路の決定を遅滞なく行うことができる。
【0177】
一方、S307の処理の結果、運転支援スイッチ26が押下されてオフ状態となったと判断された場合は(S307:Yes)、運転支援処理を終了する。
【0178】
なお、請求項1記載の「走行経路」としては第1〜第3実施形態の「走行軌道」および第4実施形態の「道路」が該当し、請求項1記載の「走行経路に関する情報」としては、各実施形態の「走行軌道情報」が該当する。
【0179】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0180】
上記各実施形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。例えば、第1〜第3実施形態における第2軌道選択処理のS72の処理において、前方(車両1の進行方向)30m以内で、且つ、S71の処理により取得したジョイスティック13の操作角度δの方向に、推奨軌道があるか否かを判断したが、ジョイスティック13の操作角度δの方向に推奨軌道があるか否かの判断が行われる範囲は、任意に設定されてもよい。
【0181】
上記第1〜第3実施形態では、運転支援処理(図3)において、車両1が道路の分岐点手前を走行している場合だけでなく、分岐点手前以外を走行中においても(S3:No)、S5〜S7の処理を実行し、搭乗者の意思に沿って走行経路を決定できるように構成する場合について説明したが、分岐点手前以外を走行中(S3:No)は、S5〜S7のような処理は行わずに、車両1の走行軌道が決定されないように構成してもよい。この場合、第4実施形態と同様に、車両1が道路の分岐点手前を走行している場合に限り、搭乗者の意思に沿って走行軌道を選択する処理を行うので、走行軌道の選択に係る処理の負担増加を抑制できる。一方、少なくとも、搭乗者が進路を決定したいという思いが最も生じる道路の分岐点手前においては、搭乗者の意思に沿って走行軌道を確実に決定できる。従って、走行軌道の選択に係る処理の負担増加を抑制しても、搭乗者の意思に沿った走行軌道の決定を問題なく行うことができる。
【0182】
上記第1〜第3実施形態では、走行制御装置100にて推奨軌道生成処理を実行し、1以上の推奨軌道を生成する場合について説明したが、必ずしも推奨軌道を走行制御装置100にて生成する必要はなく、外部装置、例えば、外部に設けられたサーバや、携帯端末装置との間で通信を行うインターフェースを走行制御装置100に接続し、その外部装置から1以上の推奨軌道を取得するように構成してもよい。また、走行制御装置100にて推奨軌道を生成する場合であっても、外部装置から更に別の推奨軌道を取得してもよい。また、上記第4実施形態では、走行軌道生成処理を走行制御装置100にて実行し、搭乗者の意思によって選択した道路へ進入するための走行軌道を走行制御装置100にて生成する場合について説明したが、必ずしも走行制御装置100にて走行軌道を生成する必要はなく、選択した道路を外部装置へ送信し、外部装置にて生成された走行軌道を受信して、受信した走行軌道情報を走行軌道メモリ93bに格納してもよい。推奨軌道や走行軌道を外部装置にて生成することにより、種々の方法で生成された推奨軌道や走行軌道を取得することができる。
【0183】
上記第1〜第3実施形態では、推奨軌道生成処理(図4)において、また、上記第4実施形態では、走行軌道生成処理において、危険ポテンシャルを求め、その危険ポテンシャルの低い地点を車両1が走行するように推奨軌道または走行軌道を生成する場合について説明したが、その他の方法により推奨軌道または走行軌道を生成してもよい。例えば、推奨軌道または走行軌道の生成対象となる道路または車線へスムーズに進入または進行できる軌道を算出して、その軌道を推奨軌道または走行軌道としてもよい。この場合、クロソイド曲線を考慮して、スムーズに進行または進入できる軌道を算出してもよいし、曲率半径が大きくなるようにスムーズに進行または進入できる軌道を算出しても良い。また、その生成対象となる道路または車線へ最短距離で進行または進入できる軌道を算出して、その軌道を推奨軌道または走行軌道としてもよい。更に、地図情報DB92bの道路情報に、推奨軌道または走行軌道を含めておき、その道路情報に基づいて、推奨軌道または走行軌道を生成してもよい。
【0184】
上記第1実施形態では、第1軌道選択処理において、分岐点に接続された全ての道路に対して、その道路と車両1が現在走行している道路とのなす角度θを求め、ジョイスティック13の操作角度δに最も近い角度θをなす道路を選択して、その道路に対して生成された推奨軌道を走行軌道として選択する場合について説明した。これに対し、推奨軌道メモリ93aに軌道情報が格納されている全ての推奨軌道に対して、現在走行している走行軌道(走行軌道メモリ93bに軌道情報が格納されている走行軌道)とのなす角度θ’を求め、ジョイスティック13の操作角度δに最も近い角度θ’をなす推奨軌道を走行軌道として選択してもよい。これによっても、車両1を自動走行させつつ、搭乗者の意思に沿って走行軌道を決定することができる。
【0185】
上記各実施形態では、車両1にジョイスティック13を設け、そのジョイスティック13によって、搭乗者から進行すべき方向の指示を受け付ける場合について説明したが、必ずしもその指示の受け付けをジョイスティックにて行う必要はなく、その他の手段によって受け付けてもよい。例えば、ジョイスティックに代えて、ハンドルの操作によって搭乗者から進行すべき方向の指示を受け付けてもよいし、車両1にタッチパネルを設け、タッチパネルの操作によって、搭乗者から進行すべき方向の指示を受け付けてもよい。
【0186】
また、音声入力インターフェースと、その音声入力インターフェースに入力された音声を解析する音声解析装置とを車両1に設け、その音声解析装置を走行制御装置100の入出力ポート95に接続しておき、搭乗者からの音声指示をその音声解析装置によって解析することで、走行制御装置100において、搭乗者から進行すべき方向の指示を受け付けてもよい。また、車両1に車両1内部を撮像するカメラと、そのカメラにて撮像した画像を解析する画像解析装置とを設け、その画像解析装置を走行制御装置100の入出力ポート95に接続しておき、搭乗者からのジェスチャを画像解析装置にて解析することによって、走行制御装置100において、搭乗者から進行すべき方向の指示を受け付けてもよい。更に、脳波を解析して搭乗者の思考を読み取るブレイン・マシン・インターフェースを走行制御装置100の入出力ポートに接続しておき、このブレイン・マシン・インターフェースを介して、搭乗者の思考から進行すべき方向の指示を受け付けてもよい。搭乗者の音声やジェスチャ、思考から、進行すべき方向の指示を受け付けることによって、搭乗者はジョイスティックやハンドルといった操作手段を操作する必要がなくなるため、楽にその指示を行うことができる。
【0187】
上記各実施形態では、第1〜第4カメラ26a〜26dを搭載して、車両1の周辺情報を取得する場合について説明したが、周辺情報を取得する手段として、ステレオカメラを用いてもよいし、ミリ波レーダ、レーザレーダ、UWB(Ultra Wide Band)レーダ等の各種レーダや、ソナーを用いてもよい。また、道路と車両との間の通信である路車間通信や、他車との間の通信による車車間通信によって、他車や障害物の位置情報を取得してもよい。
【0188】
例えば、レーザレーダは、レーザビームを車両1の周囲へ照査し、その反射の有無や反射を検出した方向およびレーザビームを照射してから反射を検出するまでの時間に基づいて、車両1の周辺にある道路や物体の形状等を把握するものである。走行制御装置100は、このレーザレーダを用いることにより、レーザレーダにより照射したレーザビームの反射の検出結果から、車両1の周辺に存在する物体等の形状をマップ化し、パターンマッチング等により、現在走行中の道路の形状や、現在走行中の道路に接続された道路の有無、障害物の存在を把握し、それを周辺情報として、危険ポテンシャルを生成し、また、推奨軌道を生成するように構成してもよい。
【0189】
上記各実施形態では、操舵装置5がラック&ピニオン式のステアリングギヤとして構成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、ボールナット式等の他のステアリングギヤ機構を採用することは当然可能である。
【符号の説明】
【0190】
1 車両
13 ジョイスティック(受付手段の一部)
91 CPU(コンピュータ)
92a プログラムメモリ(車両制御プログラム)
93b 走行軌道メモリ(記憶手段)
S1 (現在位置取得手段)
S2 推奨軌道生成手段(取得手段、取得ステップ)
S3 (位置判断手段)
S4 第1軌道選択処理(選択手段、設定手段、選択ステップ、設定ステップ)
S7 第2軌道選択処理(選択手段、設定手段、選択ステップ、設定ステップ)
S8 走行制御処理(走行制御手段、走行制御ステップ、受付手段の一部、受付ステップ)
S41 (受付手段の一部、受付ステップ)
S71 (受付手段の一部、受付ステップ)
S301 (現在位置取得手段)
S302 道路マップ生成手段(取得手段、取得ステップ)
S303 (位置判断手段)
S304 道路選択処理(選択手段、選択ステップ)
S305 走行軌道生成処理(設定手段、設定ステップ)
S306 走行制御処理(走行制御手段、走行制御ステップ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定された走行経路に関する情報を記憶する記憶手段と、
その記憶手段に記憶された情報に基づいて車両の走行を制御する走行制御手段と、
前記走行経路の候補を複数取得する取得手段と、
車両の搭乗者から車両の進行すべき方向の指示を受け付ける受付手段と、
その受付手段において受け付けた前記指示により指示された車両の進行すべき方向に基づいて、前記取得手段により取得された複数の走行経路の候補の中から1つ走行経路を選択する選択手段と、
その選択手段により選択された走行経路に関する情報を前記記憶手段に記憶させることで、走行経路を設定する設定手段と、を備えることを特徴とする車両。
【請求項2】
車両の現在位置を取得する現在位置取得手段と、
その現在位置取得手段により取得された前記現在位置が、道路の分岐点手前の位置であるか否かを判断する位置判断手段と、を備え、
前記選択手段は、前記位置判断手段により前記現在位置が前記分岐手前の位置であると判断された場合に、前記受付手段において受け付けた前記指示により指示された車両の進行すべき方向に基づいて、前記取得手段により取得された複数の走行経路の候補の中から1つ走行経路を選択することを特徴とする請求項1記載の車両。
【請求項3】
前記選択手段は、前記車両が走行中の道路と該道路に接続された他の道路とのなす角度が、前記受付手段により指示された車両の進行すべき方向と略等しい場合に、前記他の道路を走行する走行経路を前記複数の走行経路の候補の中から選択することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両。
【請求項4】
コンピュータと、そのコンピュータにより用いられ且つ予め設定された走行経路に関する情報を記憶する記憶手段と、を備えた車両の前記コンピュータにより実行される車両制御プログラムであって、
前記コンピュータに、
前記走行経路の候補を複数取得する取得ステップと、
車両の搭乗者から車両の進行すべき方向の指示を受け付ける受付ステップと、
その受付ステップにおいて受け付けた前記指示により指示された車両の進行すべき方向に基づいて、前記取得ステップにより取得された複数の走行経路の候補の中から1つ走行経路を選択する選択ステップと、
その選択ステップにより選択された走行経路に関する情報を前記記憶手段に記憶されて、走行経路を設定する設定ステップと、
その設定ステップによって前記記憶手段に記憶された前記走行経路に関する情報に基づいて、車両の走行を制御する走行制御ステップと、を実行させる車両制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−216069(P2012−216069A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80820(P2011−80820)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】