車両および車両用強化部材
本発明は車両構造に固定され、好ましくは車両のフロントガラスに近接し、フロントガラスの幅方向の外縁同士の間に延びる少なくとも1つの強化部材を備える路上走行車両を提供する。強化部材は、運転者が両眼を用い、頭部を移動させなくても、フロントガラスから少なくとも2メートル離間して位置する物体を視認することを妨げないような寸法を有する。本発明はさらに、第1の格納位置において後退しており、第2の延伸位置において車両構造同士の間に延伸する、少なくとも1つの強化部材と、強化部材を第1の位置から第2の位置に移動させる操作手段とを備える。強化部材が延伸位置においてフロントガラスに近接して延伸すると、強化部材により運転者は第2の位置に位置するフロントガラスを介して視認することができる。強化部材の1つは、車両の前部構造から延びる少なくとも2つの第1の直線状張構造体ユニットと、少なくとも2つの第1の直線状延伸ユニットと連結するとともに、非水平状態にある第2の直線状延伸構造体ユニットとからなる。強化部材の第1の直線状延伸構造体ユニットは、水平面において65mm以下の幅を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路上走行車両などの車両における脆弱領域の構造補強に関する。
【背景技術】
【0002】
路上走行車両の事故の中でも、毎年多数の死亡事故が発生している。これらの死亡事故の一部はAピラーなどの車両の構造体により視野を妨げられることにより生起される「視線を向けたが、視認していない」ことに起因したり、最も危険な事故形態ではあるが、転覆によるルーフ圧壊またはフロントガラスを介する衝撃によったりしている。
【0003】
これらの事故の影響を低減させるべく、今までに多くのシステムが採用されてきた。例えば、特許文献1,2において、フロントガラスはフロンドガラスの周囲に衝撃抵抗バリアを配置することによりルーフ圧壊から保護されている。この強化法はフロントガラスに対して延びるので、フロントガラアスを介する周辺視界に影響を与えるという問題がある。
【0004】
自動車レースの分野においては、特別な強化部材を溶接することにより車両を特別生産することは周知のことである。しかし、その強化部材は視界を妨げ、車両を運転する人にとって危険な可能性すらあるので、これらは通常の車両には適切ではない。それらは車両内部を塞ぎ、かつ視界の障害となり得る。
【0005】
スポーツユーティリティビークル(SUV)は転覆事故の際に垂直方向に保護することを意図してロールバーを備えることが通常であるが、フロントガラスの衝撃に対しては保護することはできない。例えば衝撃センサを稼動させることなどにより、衝撃時に車両のボンネットを上昇させる多くのシステムが提供されてきた。しかし充分な保護効果が得られず、さらに、運転者は上昇したボンネットを介して視認することができないので、これはきわめて危険である。これは背の低い運転者やシートが低い場合には特に問題である。
【0006】
特許文献3は、車両シートの後方に配置され、特にルーフがソフトトップ車両においては、衝撃の際に運転者の頭部の後方において跳ね上がるポップアップロールバーを開示している。しかし、これらは前方からのフロントガラスへの衝撃に対しては保護することができず、ルーフ圧壊に対する保護は限定的となる。
【特許文献1】米国特許第5653497号明細書
【特許文献2】米国特許第5860689号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第1186483号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、転覆時のルーフ圧壊およびフロントガラスを介した物体の侵入から車両の運転者または同乗者を保護する、車両のための強化部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様において、本発明は車両の構造体に固定され、運転者位置の前方に延伸する少なくとも1つの強化部材を備える路上走行車両を提供する。強化部材は、運転者が両眼を用い、かつ運転者の頭部を移動することを要することなくフロントガラスから少なくとも2m離間した位置に存在する物体を視認することを妨げない寸法である。
【0009】
運転者とフロントガラスとの間に何の構造部品もない場合に最良の視界が得られるとの
従来の見解は正確ではないことを、本発明は明確にした。また本発明は、視界に対する影響を最小限とし、車両強度、特に前方からの衝撃およびルーフ圧壊に対する耐性を大きく向上させるように強化部材を設計することが可能であることを明確にした。
【0010】
本発明の第1の態様はまた、路上走行車両に用い、車両の構造体を固定し、運転者位置の前方に延伸する強化部材を提供する。この強化部材は、使用時においては、運転者が両眼を用い、運転者の頭部を移動することを要することなくフロントガラスから少なくとも2m離間した位置に存在する物体を視認することを妨げない寸法である。
【0011】
従来の路上走行車両においては、本発明は、車両の前部構造体とフロントガラスの頂部フレームとの間に延伸する少なくとも1つの強化部材を付与することが好ましい。
【0012】
本発明の強化部材はまた、例えば、フォミュラレーシングカーまたは現在テスト中である従来技術とは異なる省エネルギー車両などの、通常の路上走行車両と同様には構成されていない車両に適用することができる。多くのこれらの車両は運転者および/または同乗者の周囲に延びる大きく湾曲したフロントガラスを有する。通常の車両であれ通常の車両ではないものであれ、車両はフロントガラスがあるので、強化部材は車両の構造体に固定され、フロントガラスに近接し、フロントガラスの幅方向外側縁同士の間に延伸することが好ましい。フロントガラスを備えない一レーシングカーにおいて、強化部材は運転者位置の前方に延伸する。
【0013】
「運転者の前方」とは、強化部材は側面から見ると、車両の前後方向の軸線に沿って運転者位置の上方に配置されていることを意味する。強化部材は必ずしも運転者位置の前方に直接配置されているとは限らない。多くの車両は想定上の中央線を有するように設計されている。運転者位置は、通常はその中央線の一方の側面に配置されている。強化部材は中央線上、中央線の運転者位置と同一側面上、または他側面上に配置されるが、強化部材はほぼ中央線に配置されるのが好ましい。
【0014】
本発明はまた、運転者が前方に真っ直ぐに視線を向けるときには運転者にとっては殆ど視認できない格納位置から、車両の構造部材間に延びる補強位置に移動することができる可動強化部材を備え得ることを明確にした。本発明のこの態様において、強化部材は車両を通常使用時には殆どまたは完全に視認されず、事故の場合にのみ適切な位置に配置される。
【0015】
第2の態様において、本発明は、第1の格納位置においては後退しており、第2の延伸位置においては車両の構造体間に延伸している少なくとも1つの強化部材と、強化部材を第1の位置から第2の位置に移動させる操作手段とを備え、強化部材が延伸位置においてフロントガラスに近接して延伸する場合、運転者はフロントガラスの少なくとも一部分を介して視認することが可能である車両を提供する。
【0016】
本発明の第2の態様は、車両内に装着するための強化構造体をさらに提供する。強化構造体は強化部材と、強化部材を第1の格納位置から第2の延伸位置に移動させる操作手段とを備え、操作手段と強化部材とは車両の構造体に係合するように構成されている。
【0017】
本発明の第1の態様において使用される強化部材の設計の一実施態様は、新規性を有すると判断される。本発明の第3の態様は、車両内装着用の強化部材を提供する。強化部材は、車両の前部構造体から延びる少なくとも2つの第1の直線状延伸構造体ユニットと、少なくとも2つの第1の直線状延伸ユニットと連結し、非水平状態にある第2の直線状延伸構造体ユニットとからなる。強化部材の第1の直線状延伸構造体ユニットは水平面において65mm以下、好ましくは50mm以下の幅を有する。
【0018】
水平面は強化部材が適切な位置にあるときの水平方向の面である。
【0019】
本発明の第3の態様において、少なくとも3つの直線状延伸構造体ユニットが備えられることが好ましい。
【0020】
第2の態様および第3の態様において車両は路上走行車両であることが好ましい。しかし本発明は、路上、レーストラック、空中、宇宙、または海上に静止しているか移動しているかを問わず、車両または船体の占有者用のあらゆる居住スペースに適用できる。
【0021】
第1、第2、および第3の態様において、車両は乗員運搬用路上走行車両であることが好ましい。
【0022】
本発明の第1、第2、および第3の態様の好ましい特徴を以下に詳述する。
【0023】
本明細書の説明において通常の乗用車に関して言及する。通常の乗用車はルーフ圧壊耐性に影響すると思われる8つの部品を有する。それらは、外部Aピラー、外部Bピラー、サイドパネル、内部後部リンフォースヒンジピラー、下部リンフォースヒンジピラー、Bピラー、内部Aピラー、ルーフサイドフレーム、およびルーフサイドパネルである。必要に応じてこれらの構造体に関して言及する。
【0024】
1.第1の態様−固定された強化部材
上記のように、車両はフロントガラスを備え、強化部材は車両のフロントガラスに近接して、フロントガラスの幅方向外縁部同士の間に延伸することが好ましい。
【0025】
「フロントガラスに近接して延伸する」とは、強化部材がフロントガラスの前方、または運転者とフロントガラスとの間に配置されることを意味する。強化部材は、以下にさらに説明するように、フロントガラスに当接したり、フロントガラスから、例えば、2〜20cmのような短距離だけ離間して配置されたりしていることが好ましい。
【0026】
強化部材は車両の乗員用区画の内部に配置されることが特に好ましい。これにより、以下にさらに詳述するように、衝突の際にフロントガラスを抑止することができるので、特に利点が大きい。強化部材はまた、車道の右側の視界を妨げることのない位置に配置されている。
【0027】
強化部材は車両の少なくとも1つの構造体に固定されねばならない。それは、車両の前部構造体またはフロントグラスの頂部フレームである。前述のように、通常の車両においては、強化部材は車両の前部構造体とフロントガラスの頂部フレームとの間に延び、かつ車両の前部構造体とフロントガラスの頂部フレームとに固定されていることが好ましい。これにより強力な構造体が付与され、転覆の場合の高度な圧壊耐性が付与される。
【0028】
強化部材は、手動により着脱可能であることは任意である。強化部材はその後、例えば迅速固定ボルトシステムまたは摺動部材により各路上走行車またはスポーツカーの設計に適合して(コンバーチブルのルーフを固定する機構と類似のイージークリップ式クイックロックまたはスクリューロック式ボルトシステム)固定される。さらに、強化部材および任意の2つのAピラーを備えるフロントガラスは、例えばコンバーチブル用などのように着脱可能である。
【0029】
強化部材は、フロントガラス、インストルメントパネルビーム、または車両の前部外部構造体のうちの1つと一体に形成されてもよい。
【0030】
多くの車両において、フロントグラスは垂直から大きな角度をなして後退していることに留意されたい。これは、フロントグラスの頂部およびフロントグラスの頂部フレームは運転者の頭部の高さと近接して位置することを意味する。強化部材をフロントグラスの頂
部フレームに近接して付与することにより、転覆した場合に良好な支持が得られる。強化部材を付加する場合に関しては、さらに以下に検討する。
【0031】
強化部材はフロントガラスの長手の一部分だけに延伸させることができる。しかし、強化部材はフロントガラスの長さのうちの少なくとも75%延伸することが好ましい。
【0032】
強化部材は構造体からなり、かつ屈曲できる安全特性を備えるとともに、バックミラーの典型的な位置の前方または下方の領域に開口または部分的な開口を備える。
【0033】
強化部材は車両の前後の軸線方向に延伸することが適切である。しかし、適切な場合には、上面図で見たときに、前後方向の軸線に対して僅かな角度をなしていてもよい。
【0034】
付加的な強化部材は、フロントガラスの頂部フレームからルーフ構造体に沿ってリヤウィンドウの頂部フレームに延伸したり、リヤウィンドウの頂部フレームから車両の後部構造体に延伸したりするように付与される。これらは、フロントガラスに近接して配置されている強化部材と連続して形成されてもよい。これらは個別の部品から形成され、その後相互に隣接して配置されてもよい。これらは例えば、付着、溶接、接着、または機械的な固定などの任意の適切な方法により連結される。
【0035】
本発明は、本発明の第1の態様におけるアーチ形状をなす強化部材を提供する。これは滑らかに湾曲したアーチである。「滑らかに湾曲した」とは、アーチの少なくとも一端は、曲面の半径が5mm未満、好ましくは10mm以上、最も好ましくは20mm以上の弧を有していないことを意味する。
【0036】
強化部材は単一の構造部材から形成されてもよいし、相互に組み合わせられた複数の構造部材から形成されてもよい。
【0037】
強化部材は少なくとも1つの構造部材からなり、その構造部材の断面は乗員用区画に面する面は滑らかな湾曲した形状である。
【0038】
強化部材はその断面が中実または中空である構造部材からなる。
【0039】
強化部材をフロントガラスに近接して配置するためには、強化部材の三次元構成を以下のように設計することが好ましい。
【0040】
該部材は車両の前方に向けて狭くなる。運転者から最も離間した構造体の部分は運転者の視界を妨げる可能性が最も高いので、この部分を可能な限り小さく製造することが好ましい。
【0041】
構造体は頂部から底部に向けて車両の幅方向に狭くなる。これにより、運転者の視界を妨げる可能性が最も高いフロントガラスの基部に近接した部分は小さくなるが、その頂部において車両の他の部分と強く係合する。これは前方から見ると、強化部材をV字型またはY字型とすることにより達成される。側面からみると、強化部材は底部から頂部に向けて狭くなり、堅固なストラットのような構造体を構成する。それに代えて、車両の前後方向に、頂部から底部に向けて、運転者の視界を妨げない範囲の長さにすることができる。
【0042】
強化部材は側面から見ると、多くの車両のフロントガラスの構成と同様に、底部から頂部にかけて後方に延びている。
【0043】
一実施態様において、強化部材は直角をなす平面に裁断された三角柱の形状、または面取りされた三角錐の形状を有する。
【0044】
すべての実施態様において、強化部材は中実ではなく、視野妨害をさらに低減することが好ましい。強化部材は穿孔を備える材料または空隙を環囲する中実材料を編んだ物からなっていてよい。それに代えて、相互に結合された直線状に延びる複数の構造体ユニット
により視野妨害を最小限とする強固な構造体からなることもできる。
【0045】
強化部材は、車両の前部構造体からフロントガラスの頂部フレームに延びる少なくとも2つの第1の直線状延伸構造体ユニットと、少なくとも2つの第1の直線状延伸構造体ユニットに連結する第2の直線状延伸構造体ユニットとから形成される。この場合、第2の構造体ユニットは非水平状態に装着されていることが好ましい。これにより運転者の視野の一部を妨げる傾向をさらに低減する。3つの第1の直線状延伸構造体ユニットを備えることができ、夫々は第2の構造体ユニットにより他の2つと連結される。3つの第1の直線状延伸構造体ユニットは三角形に配置されてもよい。
【0046】
強化部材は1枚のシートを切断および折曲することにより最終的な形状に形成され得る。必要に応じてレーザー切断、ハイドロフォーム、溶接、または任意の製造技術を用いることができる。
【0047】
任意の性質を有するハニカムサンドイッチ構造体複合材料が用いられる。例えば、スチール/チタン/炭素繊維/ケブラー(商標)/プレキシガラス(商標)/繊維強化ポリアミド66/ガラス繊維強化PP、または任意の新規合金などである。
【0048】
視界の妨害を一層低減するため、強化部材は前部構造体ユニットと後部構造体ユニットとにより形成され、前部構造体ユニットと後部構造体ユニットとは運転者が運転するための通常の位置とほぼ同一線上に配置される。これにより、強度を付与する2つの構造部材が存在するにもかかわらず、運転者からは一方の目で見ると1つのユニットのみが視認され、両眼で見ると視野の妨害は最小限である。
【0049】
強化部材の第1の直線状延伸構造体ユニットは、視界の妨害を最小限にするためには水平面における幅は65mm以下、好ましくは5cm以下、最も好ましくは3.5cm以下である。強化部材の第1の直線状延伸構造体ユニットは、運転者の両眼間の距離を越えない幅を有することが好ましい。多くの運転者の両眼間の距離は5.5〜6.5cmである。構造体ユニットの幅はこの距離未満であることが好ましく、通常の両眼間の距離の65%未満であることが好ましい。水平面とは、強化部材が車両の通常の正立位置において配置されたときに、水平である面を指す。
【0050】
第2の構造体ユニットは水平面における幅は65mm未満、好ましくは50mm未満である。第2の構造体ユニットは非水平状態に配置されることが好ましい。
【0051】
第1の直線状延伸構造体ユニット同士の水平面における距離は、少なくとも65mmであることが好ましい。
【0052】
構造体ユニットの最大幅が運転者の両眼間の距離の50%である場合、運転者は、少なくとも一方の目を用いて、運転者から構造体ユニットまでの距離と等しい距離にある、構造体ユニットから離間した任意の物体を視認することが可能である。運転者から強化部材までの通常の距離は1m未満であるので、運転者は強化部材から1m以上離間した物体を視認することが可能である。
【0053】
強化部材がフロントガラスに近接して、例えば中央に配置されている場合、強化部材は通常用いられるフロントAピラーの種類よりも少ない視界妨害を呈することに留意されたい。この強化部材は通常中実の、視界を妨害し得る材料により構成され、運転者の両眼間の距離よりも水平面において幅広く構成されている。
【0054】
実際には、強化部材により6°以下の視野が妨害される場合には、運転者の視界としては許容範囲にある。
【0055】
強化部材は、強化部材の全長がフロントガラスに接触しないように装着されることが好ましい。強化部材はフロントガラスとその全長の50%未満、好ましくは40%未満、さらに好ましくは20%未満か接触することが好ましい。強化部材が接触するフロントガラス部分は、例えば、中央に装着されているバックミラーの領域などのフロントガラスの上部に限定されていることが好ましい。これにより、さらに視界妨害を低減する。
【0056】
強化部材によりフロントガラスの下部の堅固さを増大させるだけではなく、衝撃を吸収する能力を向上させる。特に、フロントガラスへの多くの種類の衝突、例えば自転車または歩行者との衝突において、自転車乗員または歩行者はしばしばフロントガラスの下部と接触する。実際には頭部が先ず接触して多くの死亡者を生じる。強化部材とフロントガラス下部との間に間隙を設けることにより、フロンタガラス下部は僅かに撓曲することができ、衝突エネルギーの一部を吸収する。一方、フロントガラスはそれ以上後方に移動する前に、強化部材に捕捉され、フロントガラスまたは物体が運転者を打撃することを防止する。
【0057】
強化部材自体をエネルギー吸収特性を有するように設計することができる。特に、強化部材のうちの運転者から最も離間した部分は、衝撃を吸収するように撓曲したり、屈曲したりするように製造することができる。これは特に、強化部材を前部から後部に向けて幅を増大させ、前部は比較的軽量に構成するように設計する場合である。強化部材を前方からの衝突、または転覆する場合に約10〜20cm、好ましくは10〜12cm屈曲するように設計することが好ましい。しかし、運転者に危険が及ぶほどには移動しないようにすることが好ましい。
【0058】
本発明における強化部材は鋳造、プレス、鍛造、構造体の組み立てにより製造することができる。
【0059】
本発明における強化部材は車内に組み付けされる。強化部材は乗員用区画に対向し、例えば車両のインテリアの内装材と同様なエラストマー材料またはパッドなどの衝撃吸収材料からなり、車両構造に関する法規制に合致している。
【0060】
本発明における強化部材は、車両のパネルまたは窓に隣接する少なくとも1つの固定された構造体、例えば窓フレームから延びる。これにより堅固な固定位置が付与される。強化部材はパネルまたは車両の対向する外縁に配置された車両の構造体間に延び、これらの構造体間に高強度のブリッジを形成することが好ましい。これにより、車両の構造強度を増強する。
【0061】
付加的な強化部材も設けてよい。少なくとも1つの強化部材は車両のルーフと接触して付与されてもよい。これは特にハードトップ車またはカブリオーレ車に適用できる。強化部材はルーフ全体にわたり連続することができ、中央部のルーフライン/カバーに沿って後方に延びる形状が、付加的な支持を得るためのピラー同士の間のルーフの幅方向の形状と連結するようにできる。強化部材は上部リヤウィンドウフレームと接触することが好ましい。
【0062】
強化部材は、その全長にわたってリヤウィンドウ領域の下部と接触することが好ましい。
【0063】
強化部材がルーフに近接して設置されると、これにより例えばルーフボックスの荷重を支持するなどの付加的な補強が付与される。強化部材により、ルーフ上の他の荷物運搬装置を一層堅固に装着するための中央の前後方向のルーフレールを設ける可能性が生じる。
【0064】
強化部材はフロントガラス、ルーフ、またはリヤウィンドウに対する衝撃に対する耐性を付与する。構造体は現存する車両構造と一体化し、全体組み上げによる全体的な強度を
向上させることができる。強化部材とリヤウィンドウまたはルーフとの連結は、例えば接着剤または機械的な連結などの任意の適切な手段によることができる。前後方向の強化部材は、例えばフロントガラス、ルーフ、またはリヤウィンドウの幅方向の外縁部に沿った付加的な延伸をしてもよい。幅方向強化部材は、Aピラー、Bピラー、またはCピラーからフロントガラス、ルーフ、またはリヤウィンドウに近接して取り付けられた強化部材に向けて必要に応じて延びることができる。これは付加的な剛性および強度を付与する。さらに、車両のシャーシからルーフまたはルーフに近接した強化部材に延びる内部強化部材は、車両の圧壊に対する付加的な耐性を付与する。
【0065】
付加的な強化部材は、本発明の強化部材と同様の方法により構成される。例えば、軽量化のためには、軽量材料により構成されることが好ましい。それらの構造体中に軽量化空隙を備えて構成されることが好ましい。付加的な強化部材は複数の直線状延伸構造体ユニットからなることが好ましい。
【0066】
特に好ましい実施態様において、本発明の強化部材の構造設計は、Aピラー、Bピラー、またはCピラーを含む車両の通常のピラー構造に適用できる。このようにして側方への運転者の視界妨害は向上される。
【0067】
特に、車両のこれらの部品は、運転者が両眼を用い、運転者の頭部を移動させる必要がなく視認する際には、運転者が車両の夫々の構造体から少なくとも2m離間した位置にある物体、好ましくは車両の夫々の構造体から少なくとも1m離間した位置にある物体を視認することを妨げないように構成されることが好ましい。
【0068】
一層視界妨害を低減するため、Aピラー、Bピラー、またはCピラーは中実ではないことが好ましい。これらは穿孔された材料、または空隙を環囲する中実材料の編物により形成され得る。これらは相互に組み合わせられた直線状延伸構造体ユニットからなり、視界妨害が最小である強度を有する構造体を付与する。これらは少なくとも2つの第1の直線状延伸構造体ユニット、および少なくとも2つの直線状延伸構造体ユニットと連結する他の直線状延伸構造体ユニットから形成される。この場合、第2の構造体ユニットは非水平状態に装着されることが好ましい。Aピラーの構造体ユニットは65mm以下の幅、好ましくは50mm以下の幅、最も好ましくは35mm以下の幅を有し、それにより視界妨害を最小にする。少なくともAピラーは、Aピラーの全長にわたってフロントガラスに近接するように装着され、AピラーはAピラーの全長の50%未満、好ましくは40%未満、さらに好ましくは20%未満がフロントガラスと接触することが好ましい。
【0069】
1つの好ましい実施態様において、本発明におけるフロントガラス、Aピラー、Bピラー、および任意によりCピラーに近接する全強化部材は、本発明の強化部材構造の原理に沿って形成される。これらはすべて軽量化空隙を備えて構成され、複数の直線状延伸部材から構成されることが好ましい。
【0070】
これにより車両に隙間の多い「かご様」の構造体が付与され、前方、側方、および任意により後方に対しても高度な視界を保つ。一方、高い耐衝撃強度が付与される。必要に応じて、高強度/軽量材料を用いることができる。
【0071】
Cピラーの方向への視界はあまり重要ではなく、これらの部品は従来方法により中実構造体により構成し、原価を低減できることは留意されるべきである。
【0072】
強化部材がフロントガラスに隣接して設置される場合には、現在の実施方法よりも小体積を有するAピラーを形成することが可能であることは、本発明の利点である。すなわち、Aピラーは小さく製造されたり、内部に空隙を有する構造体により製造されたりし得る。このようにして側方への良好な視界が得られる。
【0073】
年間の多くの死亡事故は車両の側面が物体と衝突することに起因する。本発明における強化部材により付与されるフロントガラスの中央部への付加的な強度により、Aピラーを一層視界妨害の少ないものとし、それによりこの種の事故を低減することができる。
【0074】
フロントガラスはまた通常よりも幅広くすることができる。外部から見ると、ドアのサイドウィンドウに直接隣接するほど幅広くできる。強化部材およびAピラー上にフロントガラスを固定する好ましい方法は、強化部材の外縁部およびAピラーの接着である。これらの部材とフロントガラスとの間隙は、積層フロントガラスに固有の衝撃緩和作用による利点を生かすため、場所を選定して設けられる。
【0075】
運転中の視界をさらに最適にするため、フロントガラスは適切な材料により形成したり被覆したりして、例えば、運転者を強い太陽光および反射から保護するためのITS電光可変スペクトル遮蔽機能などのように、グレアおよびまぶしさを低減することができる。
【0076】
本発明により得られる安全上の利点には、
1)従来設計と比較して、運転者またはパイロットにとって良好な視界がえられること、2)転覆時のルーフ圧壊に対する保護があること、
3)フロントガラスへの衝撃に対して屈曲して保護すること、
4)フロントガラス、ルーフまたはリヤウィンドウを介して乗員用車室に進入してくる(大型の哺乳動物、歩行者などを含めた)外部物体用の物理的防壁を備えること、
5)運転者/同乗者がシートベルトを装着していない場合、衝突時に運転者/同乗者が放出されることを低減すること、
6)押圧力および衝撃による亀裂に対する耐性を向上させるフロントガラス支持、
7)さらに増大する重量の運搬を可能とする、重いルーフ荷重/スキーケースを中央に保持装着することを可能とすること、
8)多様な角度における転覆衝撃を有する衝突時の、物体が衝撃/進入する危険性を大幅に低減するフロントガラス/フレーム/支持構造体の更なる補強、および
9)車両乗員は、頂部からの衝撃から保護されていることに関連して一層強い信頼感を有し、それ故乗員は一層容易にシートベルトを装着すること、
などが挙げられる。
【0077】
好ましい実施態様において、運転席は固定位置に配置されており、強化部材に対する運転者の位置はほぼ固定されている。この場合、車両の制御機器は位置調整可能であることが好ましい。例えば、ハンドル、シート、レバー類、およびペダルは位置調整可能とし、運転者に適切に配置される。このような配置を行うことはセンサおよび電動モータにより自動的に実施され得る。それに加えて、もしくはそれに代えて、中央強化部材の角度は、最適な可視性を得るために運転者の両眼の間の中点と整列するように、例えば、ボルト/ジョイントシステム、手動、または自動により、部材自身の軸線を中心にして回動されてもよい。
【0078】
強化部材(および任意によりAピラー)は、最適な可視性を得るために運転者の両眼に向けて対象性を有して配列される。従ってピラーの角度は、水平面における材料幅は常に確実に運転者の両眼の間の幅よりも大幅に小さく、最も好ましくは40mm未満である。同時にピラーの角度により、構造体ユニットは強度を有する充分な厚さを有することができる。強化部材の構造体ユニット同士の間の間隙は、両目の瞳間の距離は65mm以下であると判断されるので、材料が視線を確実に妨害しないように水平面において65mmまたは65mmより僅かに大きくするべきである。
【0079】
本発明はまた、シャーシ剛性およびねじれ安定性を向上させ、荷重積載時の屈曲した路
上における操縦性を向上させ、風切り音を低減させ、さらに衝突の脅威による緊張感を低減させることにより運転者の警戒感を向上させることを含む付加的な利点を付与する。そのため効率的かつ理性的な認識により、疲労に対する抵抗力を増大させ、知覚を鋭敏にし、協調性を向上させ、さらに反応時間を向上することができる。
【0080】
強化部材により付与される付加的な構造体が車両の重量を過度に増大させないようにし、かつ車両の重心を上昇させないようにするため、強化部材は軽量であるが強度を有する材料により形成することが好ましい。
【0081】
強化部材は、金属、合金(例えばボロン鋼)、例えば、スチール/チタン/アルミニウム/亜鉛/銅/スチール、および/またはケブラー/合成繊維/ハイパーストラクチャなどの複合材料、または合成ポリマー材料を用いた他の複合材料、または木質/ポリマー材料複合材料などの最新の軽量かつ高強度を有する材料を含む任意の適切な材料により形成される。炭素繊維は使用され得る。透明な最新の高強度プラスチックを用い、運転者の位置に対して、それらの材料が運転者の道路に関する知覚を光学的に歪曲せず、太陽光を不適切に反射させないように構造体を配列させてもよい。
【0082】
付加的な強化部材がルーフに近接して取り付けされた場合には、ルーフと接触して補強効果を増大させ、乗員用区画への物理的な侵入を低減させることが好ましい。これにより、乗員の頭部および車両の構造体に関しては衝撃を受ける危険性を減少させる。強化部材は例えば、パッド状の内装または他の弾性を有する表面などのエネルギー吸収材料のような内面に衝撃低減面を備えることができる。
【0083】
強化部材の構造要素は形状に丸みを備え、乗員に対して傷害を惹起させる可能性のある鋭角の端部が存在しないようにすることが適切である。
【0084】
本発明における強化部材は、多目的スポーツ車、多目的乗用車(MPV)、スポーツカー、セダン/ハッチバック車、ステーションワゴン、バス、トラック、ワンボックス車、または任意の他の種類の車両の他、航空機、宇宙船、列車、または船舶を含む任意の適切な種類の車両に付与できる。
【0085】
本発明は、エンジンを収容したり格納空間を付与したりするための前部構造体、および格納空間を付与したりエンジンを収容したりするための後部構造体を有する従来型の車両設計に用いることができる。しかし、本発明は車両の前部構造体が車両フレームの一部を有する従来型ではない車両の設計に適用することができる。例えば、本発明は機械類が前後方向に延びるフレームに搭載され、フレーム上には上部構造物が組み上げられた実験車両にも用いることができる。本発明は、きわめて大きなフロントガラスの後方に付加的な保護を付与するためのそのようなフレーム(車両の前部構造体)の前部から延びる強化部材を備えることが有利にできる。
【0086】
本発明の強化部材は比較的安価に提供される。強化部材は既存車両への付加的な挿入部材として提供される。これに代えて、簡易で効率的な方法により製造の際に車両構造体と一体化されてもよい。
【0087】
本発明の強化部材には、付加的な装置を適切に装着することができる。それらには、
1)フロントガラス上部または中央部に枢動点を有するセンターマウント式フロントワイパー、
2)フロントガラスデフロスター、
3)バックミラー用マウント、
4)小さなハイビームランプおよび/またはハザードランプ用マウント、
5)運転者用の計器または警告ランプ用のマウント。これらはダッシュボードよりも運転
者の視野に接近できる。
6)モニター画面(例えば、シーメンスVDO社などのリヤビューカメラ/死角監視カメラなど)、および
7)様々な機能のセンサ類
などが挙げられる。
【0088】
2.本発明の第3の態様
本発明の第3の態様における強化部材は、本発明の第1の態様における強化部材に関して前記した任意の特徴を有することができる。
【0089】
3.本発明の第2の態様−可動強化部材
上記のように、本発明の第2の態様は2つの位置をとる強化部材を備えた車両を提供する。強化部材は第2の位置においてフロントガラスに近接して配置され、衝撃に抗することが好ましい。
【0090】
車両は路上走行車両であり、乗員運搬用の路上走行車両であることが好ましい。
【0091】
強化部材を第1の位置から第2の位置に移動させる操作手段は、任意の適切な手段により起動される。例えば、操作手段は運転者または自動手段により起動される。自動手段はきわめて迅速な反応時間を備えるように構成させ得るので好ましい。例えば、車両が大型の哺乳動物または自転車などの物体に衝突したか否か、あるいは車両が転覆に繋がりかねない角度に回動し始めているか否かを判定するように、検知手段を備えることができる。これに代えて、物体センサが、車両の前部に配置されて物体を検知することができる。例えば、短距離レーダ検知器または熱検知器は、生体から発生される熱線を検知するように構成されている。これらのセンサを任意に組み合わせることができる。
【0092】
当業者は適切なセンサを入手でき、強化部材を制御された条件のもとで、第1の位置である格納位置から第2の位置に移動させるために、センサを正確な感度に設定することができる。適切なセンサは、ERTICOのプログラムと接続できるように設計されたものである。
【0093】
第1の位置は強化部材を車両の乗員用区画内、または乗員用区画外に格納する。同様に、強化部材は第2の位置において、強化部材を車両の乗員用区画内、または乗員用区画外に配置される。強化部材は第1の位置において乗員用区画内に取り付けされることが好ましい。これは、例えば物体がフロントガラスを打撃するような衝突の場合、強化部材が車両内に配置されていれば、強化部材は反応する時間を持つことができるので有利である。一方、強化部材が車両外にある場合には遅すぎるであろう。しかし、強化部材は運転者/同乗者の移動の領域外に配置されてもさらなる被害を生じることはない。
【0094】
本発明の第1の態様に関連して上記したように、フロントガラスとフロントガラスの後方に配置された強化部材とを組み合わせることにより、車両が歩行者に衝突する場合、歩行者は先ずフロントガラスと接触し、フロントガラスを後方に撓曲させ、歩行者に伝わる衝撃を低減する。フロントガラスおよび歩行者は強化部材により保持される。
【0095】
強化部材は第2の位置において、車両の任意の適切な構造体同士の間に延伸し、それにより強化部材は両端において支持され、強力な構造体を付与するように構成することが好ましい。構造部材としては車両の窓またはパネルを含むが、強化部材は比較的堅固であるフレーム部品同士の間に延伸することが特に好ましい。強化部材はシャーシとルーフとの間、またはリヤウィンドウの頂部構造体と車両の後部との間に延伸する第2の位置に移動するように装着される。これにより圧壊に抗する更なる耐性を付与する。強化部材は例えば車両のシートの後方などの第1の位置に格納される。受承構造体はルーフ内またはリヤ
ウィンドウの頂部構造体に沿って形成され、強化部材を受承する。
【0096】
例えば、強化部材は第1の位置において、運転者または同乗者のシートの後方または内部、および/あるいはシートのヘッドレストに取り付けられ、第2の位置において、ルーフ構造体に形成された強固な支持体に係止される。これは転覆の場合に、同乗者または運転者の頭部を直接的に保護することができる。
【0097】
強化部材を第1の位置から第2の位置に移動させる操作手段は任意の適切な手段でよく、例えば弾性手段を備えることができる。弾性手段は強化部材を第1の位置から第2の位置に付勢することができ、強化部材の移動は上記のように強化部材の移動手段が起動されるまで阻止されている。
【0098】
強化部材の第1の位置から第2の位置への移動のための操作手段は、強化部材をきわめて迅速に第1の位置から第2の位置に移動させることが好ましい。強化部材は1秒未満の時間で、より好ましくは0.5秒未満、さらに好ましくは0.1秒未満で第1の位置から第2の位置に移動されることが適切である。
【0099】
強化部材は第1の位置から第2の位置に、任意の適切な動作により移動されてよい。例えば、強化部材は強化部材の近傍または端部に位置する枢軸を中心にして枢動することができる。
【0100】
例えば少なくとも1つ、好ましくは2つ、さらに好ましくは3つまたは4つの強化部材はフロントガラスに近接して中央において枢動する。少なくとも1つの強化部材、および好ましくは少なくとも2つの強化部材はフロントガラスの夫々の外縁を中心にして枢動するように設置されている。枢軸はフロントガラスの下端または上端に配置される。
【0101】
枢動動作は、枢軸上で作用する駆動部または例えば強化部材の端部などの枢軸からずれて配置された強化部材上の位置に作用する結合部により、駆動される。
【0102】
強化部材はほぼ直線状に延伸することにより、所定の位置に移動される。例えば、強化部材は、第2の部品に対して入れ子式に可動である少なくとも1つの部品を備える入れ子式の構造体からなる。強化部材は第1の部品に沿って可動である第1の部品と第2の部品とからなり、第2の部品の移動は第1の部品および第2の部品のうちの一方に形成された摺動部材の、第1の部品および第2の部品のうちの他方に形成された軌道における移動により案内される。
【0103】
強化部材は、所定位置に摺動させることにより移動される。強化部材は、例えばフロントガラスの幅方向の外縁部から摺動する。強化部材はフロントガラスの頂端部から摺動したり、フロントガラスの底端部から摺動したりする。
【0104】
特許文献3に開示される延伸するロールバーは、本発明に適合して使用され得る。本発明に用いるため、ロールバーは延伸した位置において車両の構造体同士の間に延伸するように構成されねばならない。第1の部品および第2の部品は、第1の位置におけるフロントガラスの頂部に近接して取り付けられたり、第1の位置のフロントガラスの底部に近接して取り付けられたりする。ロールバーは第2の位置に到達するための任意の位置に移動するように構成される。ロールバーは、例えば各部品が第1の位置に配置された隅と対向する隅などの、フロントガラスの隅に移動するように構成されたりする。
【0105】
強化部材は、相互に連結されるとともに、任意の回動、延伸、または摺動の組み合わせにより移動される複数の強化部材ユニットからなることが好ましい。このように、強化機構はフロントガラスの領域の上方に延伸する複数の強化部材ユニットからなる。
【0106】
第2の位置において、強化部材を固定するために係合部材が設けられることが好ましい。
【0107】
例えば、強化部材は第1の位置から移動し、第2の位置において固定された係合部材を係合し、係合部材により所定の位置に保持されるように構成される。強化部材と一体である係止部材は、例えばトグルロックとして付与される。
【0108】
強化部材自体は第2の位置において、運転者の視界を殆ど妨害しないような形状であることが適切である。強化部材は第2の位置において、フロントガラスの下半分の少なくとも一部を介して視認することができるように構成されることが好ましい。これは、運転者が運転席に居て通常見ているフロントガラス部分であり、事故の際に、強化部材か延伸した場合ですら、この部分を介して視認可能であることは重要である。
【0109】
強化部材はフロントガラスから少なくとも2m離間した位置にある物体を運転者が両眼を用い、運転者の頭部を移動させる必要がなく視認することを妨げないような寸法とされていることが好ましい。強度を有するように充分に大きな強化部材を提供するという必要性と、視野に対する妨害を最小限にするという要望との間の調和が求められる。強化部材は運転者に視認される5cm未満の幅を有することが適切である。これは、複数の強化部材または強化部材ユニットが共に供されてフロントガラスに近接して保護部を形成する場合に達成される。
【0110】
好ましい実施態様において、強化部材は運転者が視認可能な材料の編物に装着されるように構成されている。同材料の編物は、強化部材が第2の位置に延伸したときに、フロントガラスの少なくとも一部を横断して存在する。この編物はきわめて危険であるガラス破片などの瓦礫を捕捉するために付与される。編物は、メッシュ、あるいは透明または半透明材料から形成され、それにより運転者の視界を過度に妨げない。編物は、例えば炭素繊維またはケブラーのメッシュなどの任意の適切な材料からなる。
【0111】
本発明の一実施態様において、強化部材はフロントガラスの前方に格納され、かつ運転者には殆ど視認されない第1の位置と、強化部材がフロントガラスの前方においてフロントガラスに近接して延伸した第2の位置との間を移動する。これは、強化部材が第1の位置から第2の位置に移動されることと同時にボンネットを上昇させるシステムと組み合わせて用いることができる。上昇されたボンネットは緩衝効果を呈する。ボンネットが上昇する距離はボンネットが運転者の視界を過度に妨害しないように制御される。ボンネットがこのように上昇する場合には、その前部に枢軸を設けて後部を上昇させ、風の抵抗がボンネットを引き裂かないようにすることが適切である。ボンネットは従来の方法により構成してもよいし、付加的な強化を行ってもよい。付加的な強度を得るためにリブを設けてもよい。これに代えて、ボンネットには穿孔を設けて部分的に透明とし、運転者の視野への影響をさらに低減することができる。ボンネットは一部または全体を透明材料により構成することができる。
【0112】
本発明は、車両のフレームの剛性を向上させることにより、車両の後部に延びるエアロフォイル用のマウントを付与することが可能であることを明確にした。エアロフォイルは車両のバンパー構造体と一体にすることができる。エアロフォイルは空気がエアロフォイルの頂面上と底面上を流動し、車両の後部にダウンフォースを発生させるように構成されることが好ましい。エアロフォイルはロードホールディング性を向上させる必要がある場合に価値がある。例えば、急カーブを切り抜ける場合や急ブレーキを踏む場合などに必要となる。
【0113】
しかし、このように構成されるエアロフォイルは空気抵抗を増大させることになる。従
って、エアロフォイルの頂面上の気流を選択的に閉鎖するために使用できる閉鎖手段を備えることがさらに好ましい。例えば、エアロフォイルの頂面上の気流を妨げない第1の位置と、エアロフォイルの頂面上の気流を閉鎖する第2の位置とを備えるシャッターを設けることができる。第2の位置におけるシャッターは、エアロフォイルの先頭縁部に接触し、空気抵抗を最小限にしつつ滑らかに移行することが適切である。シャッターは摺動または回動をすることができる。
【0114】
回避操作またはコーナリングの際の安定性を最適にするため、シャッターは車両の中央線に沿って分割され、分割された部分が中央線の左右で独立に操作されてもよい。分割エアロフォイルはコーナリングモードにより稼動されて一方が他方と異なるように操作されたり、ブレーキモードにより稼動されて双方が共に操作されたりしてもよい。このように、ダウンフォースはカーブにおいて車両内部に付与されたり、ブレーキ時には両側の荷重を均等にしたりすることができる。
【0115】
閉鎖手段は、運転者により操作される機構、および自動機構のうちのいずれか1つにより稼動される。自動機構は車の動き(急激な旋回、急ブレーキ)を検知する運動センサ、ブレーキペダルの使用やハンドルの急激な移動などを検知するセンサに応答することができる。
【0116】
この構造自体は新規性を有すると判断される。従って、本発明は車両の後部から延びる後部バンパーを備える車両をさらに提供する。後部バンパーは頂面と底面とを有するエアロフォイルのように構成されており、エアロフォイルは少なくとも1つの位置において、気流が頂面の上方を通過することができるように取り付けられている。
【0117】
本発明のこの態様において、シャッター手段は頂面上の気流を妨げるように付与されることが好ましい。
【0118】
本発明の第1、第2、および第3の態様は車両内において組み合わせることができる。車両は本発明の第1の態様または第2の態様として明記された強化部材、および本発明の第2の態様における構造体を備える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0119】
本発明に関して、付属の図面を参照しつつさらに説明する。
【0120】
図1,2には、強化部材の第1の実施態様、および本発明における強化部材が乗員用区画内に装着された車両を図示する。強化構造体1は本発明における強化部材2を備え、強化部材2はアセンブルされると、車両のフロントガラス3に近接して延びる。強化部材2は、相互にほぼ平行であるとともに、車両内であり、かつ車両のルーフ構造体5と接触する一対のリブ4を有する第2の強化部材と連結される。2つのリブ4は集合し、その位置において、使用時には車両のリヤウィンドウ7と接触する第3の強化部材6と接触する。従って、図2に示す車両はフロントガラス3、ルーフ構造体5、およびリヤウィンドウ7のための付加的な支持部材を備える。支持部材は構造体の外縁同士の間に配置され、外縁と内部において直接接触している。これにより充分な支持が得られる。強化部材2は、例えば図1の第1の部分2に図示する番号8などの軽減孔を有する複数の編物からなり、構造体を軽量化するとともに、運転者の視野への妨害を最小限にしている。しかし、ガーダー、ビーム、および他の強化部材の設計においては周知である的確な設計により、軽減孔は設計強度に対しては殆ど影響しない。
【0121】
図中、部分2,3,6は相互に連結されて図示されている。これらは適切な手段により相互に連結され得る。
【0122】
さらに、強化部材の各部2,3,6は使用に際してはダッシュボードに隣接した前部構造体部分、フロントガラスの頂部フレーム、リヤウィンドウの頂部フレーム、およびリヤ
ウィンドウに隣接した後部構造体部分を含む車両の構造体部分に堅固に固定される。これらは接着剤を用いて固定することができる。
【0123】
図3には、大型の物体と衝突したときに、強化部材1が付加的な保護を付与する方法を図示する。フロントガラスに衝撃するほどの高さまたは大きさを有する物体との衝突は、たとえ通常速度であっても、車両に対する甚大な損害と乗員に対する危険とをもたらす。例えば、ルーフ全体が車両から剥離され得る。この種の危険は、例えば図3の場合にはヘラジカであるが、大型の哺乳動物により、森林の多い地域または隔絶された地域においては生じ得る。衝突の際には動物はフロントガラスと接触するが、車両に対する損害および乗員に対する危険は、強化部材によりフロントガラスに付与される付加的な強度により最小限となる。
【0124】
図4〜7には強化部材1の様々な実施態様を図示する。図4は図1に示すものとほぼ同様な強化部材を示す。図5は同様な構造体ではあるが、Y字の上部は2つの分離アームよりも強固である。
【0125】
強化部材2の主要部分が充分な強度を有するのであれば、2つの分離アームを備える必要はなく、1つのリブ8が図6に示すように使用できる。これに代えて、一対のほぼ平行なリブ12が図11に示すように使用できる。同様な構造体は、第3の部分6に適用できる。
【0126】
これに代えて、図7に示すように、一対のほぼ平行なリブ9を用いることができる。同様の構造体を第3の部分に適用することができる。
【0127】
フロントガラスのフレーム全体は、任意の複合材料により一体として製造できる。その一体構造には任意の強化部材、ピラー、およびインストルメントパネルビーム(IPビーム)を含むことができる。これにより、インストルメントパネルおよびダッシュボードはパッド状をなす内装仕上げをすることにより、衝撃吸収に関する指示事項または仕上がり設計に関する嗜好に適合することができる。
【0128】
このような一体生産は複合材料の均衡のとれた混合を実行することにより可能と判断される。例えば、一体設計は強度を向上させ、さらにアセンブリ時間、材料消費、および物流を効率化するので、量産の観点からするとコスト効率を良好にする。
【0129】
図8には図1に示したものとほぼ類似の強化部材を図示するが、強化部材2,3,6は別体として形成され、その後相互に連結されることが異なる。これらは例えば、ボルトやジョイントなどの機械的な連結、接着剤、または溶接などの任意の適切な手段により連結される。
【0130】
図9〜14は、本発明の強化部材の様々な実施態様が多様な種類の車両に付与され得ることを図示する。
【0131】
図10〜14はまた、付加的な圧壊耐性のための車両のシャーシからルーフ構造体に延びる任意の付加的な強化部材を示す。
【0132】
図9は、フロントガラスに近接した強化部材10のみを備えるソフトトップ車両を図示する。図10〜14に示す全ての他の車両はハードトップを備え、前部構造体から後部構造体に連続的に延び、フロントガラス、ルーフ構造、およびリヤウィンドウの全てを支持する強化部材を備える。
【0133】
図15には、本発明における強化部材を装着した車両における運転者の視野を図示する。図示する車両は左ハンドル車である。視野は運転者の右側にきわめて広いことが分かる
。事実、運転者からの角度αは車両のAピラーにより制約され、角度βよりも小さい。
【0134】
図16において、強化部材12は透明の中実な長繊維材料からなる。その先端面13に沿ってフロントガラス15には直接当接してはおらず、頂部の部分14においてフロントガラス15と当接し、フロントガラスに直接的な支持を付与している。使用時には、通常の強力な接着剤を用いてフロントガラスに接着することが好ましい。下端面16はダッシュボードの下に位置する構造体に固定される。
【0135】
図17は強化部材17の別の実施態様を示す。強化部材17は後方に突出してダッシュボードに接する付加的なストラット18を備える。
【0136】
図18は同様な設計の強化部材19を示し、強化部材19は構造体の強度を殆ど低下させない位置に軽減孔20を備える。
【0137】
図19は異なる設計を示し、細い長繊維21がフロントガラスの頂部に配置されて支持を付与し、同時にほぼ垂直な部分22はルーフに向けて上方に延伸することにより、転覆によるルーフ圧壊に対して強力な付加的な支持を付与する。
【0138】
図17には中実構造体23に複数の軽減孔26を備えた実施態様を図示する。図18は軽減孔25が異なる形状である別の実施態様26を図示する。
【0139】
図22は、車両のフロントガラスに近接して使用するための強化部材27の特に好ましい実施態様の概略等角図である。
【0140】
図22はまた本発明の第3の態様における強化部材の実施態様である。
【0141】
この強化部材は第1の前後方向延伸部材28からなっており、この部材は装着される車両のフロントガラスの角度に対応する角度で後退している。第2の前後方向延伸ユニット29,30は、第1の部材28の角度と同一の角度またはほぼ同一の角度で後退している。ユニット29,30は底部のストラット31および頂部近傍のストラット32により第1の部材と連結される。ストラット31,32は非水平状態にあり、これにより視界妨害を最小限にする。前後方向進行部材28,29,30は、フロントガラスの上方(またはフロントガラスの頂部)の車両構造体、およびフロントガラスの下方の車両構造体と夫々係合するための一対のV字型装着部材33,34と連結する。V字型部材34の頂面には斜線が施され、車両の頂部構造体と接合するように接着剤が適用される領域を示す。これに代えて、ねじおよびボルトなどの機械的な連結が用いられる。同様の連結手段が下部V字型部品33に用いられる。
【0142】
部材28,29,30はこれらの間に65mmを超える空隙を有する。部材28,29,30は運転者の位置から見て、水平面において65mmよりも狭く、好ましくは55mm、または50mmよりも狭く、さらに好ましくは40mm未満である。ストラット31,32は最も狭い部分において65mmよりも狭く、50mmよりも狭いことが好ましい。
【0143】
格子状の設計は1枚のシート材料を最終的な形状に切断および折曲することができる。レーザー切断、ハイドロフォーム、溶接、または任意の製造技術を用いることができる。
【0144】
強度要件/原価要件に応じて任意の性質を有するハニカムサンドイッチ構造体複合材料が用いられる。(例えば、スチール/チタン/ケブラー/ケブラー/プレキシガラス/繊維強化ポリアミド66/ガラス繊維強化PP、または任意の新規合金などである。)
前後方向進行部材28,29,30およびストラット32,31の幅は、運転者の通常の両眼間の最小距離の50%を超えないので、約3cm以上である。全ての部材は傾斜しているので、水平方向に延びる物体を視認することへの妨害とはならない。路上の多くの物体は自転車の乗員、車両の側面、路上設備のように、一般には垂直に延びるか、例えば
多くの車両の上部構造のように水平に延びるかしている。図23は図22の構造体により運転者の視野への妨害が最小となることを示している。
【0145】
構造体27は、運転者から約1m離間した位置に配置されたフロントガラス36に近接して配置されている。運転者に見える前後方向延伸部材の構造体27の幅Wは3cm未満である。従って、運転者37のいずれの眼にも見えない斜線を施した領域は最小限とされている。運転者から見えない領域は該構造体から約1mの間に延びている。この距離は通常の車両のフロントバンパーまでの距離未満であるので、路上のいかなる物体も視認を妨害されないことは明瞭である。
【0146】
図23はまた、Aピラー38は図22に図示されたものと同様の構造体を用いて構成することにより、Aピラーによる視界妨害は同様に最小限となる。
【0147】
Aピラー38は第1の前後方向延伸部材からなり、同部材は装着される車両のフロントガラスの角度と対応する角度で後退することが最も好ましい。第1の部材28と同一の角度またはほぼ同一の角度で後退する1つまたは2つの第2の前後方向延伸ユニットを備えることができる。これらは底部および頂部近傍においてストラットにより第1の部材と連結される。ストラットは非水平状態にある。
【0148】
前後方向延伸部材同士の間には65mmを超える間隙を備える。前後方向延伸部材は、運転者の位置から見たときに水平面において65mmよりも狭く、好ましくは50mmより狭く、さらに好ましくは40mm未満である。
【0149】
強化部材27に関しては、Aピラーは1枚のシート材料を最終的な形状に切断および折曲することができる。レーザー切断、ハイドロフォーム、溶接、または任意の製造技術を用いることができる。
【0150】
Aピラーにより決まる運転者の全視野は番号39により示し、それは図22の設計を用いることにより実際には運転者が見える薄く斜線を施した中央領域40を含む。この中央領域は、従来型のAピラーを用いた場合には見えない。濃く斜線を施した領域は見えないがきわめて小さいことは明らかであり、かつAピラーの先に大きく延びてはいない。
【0151】
図23から分かるように、Aピラーおよび強化部材の直線状延伸構造体ユニットは、視野中に少なくとも2つが列をなすように位置調整され、それにより運転者の視野に対する妨害を最小限とする。その結果、構成は非対象である。
【0152】
強化部材27の構造体ユニットおよびAピラー38は、車両の中央線に対して対象に配列される。それによりそれらは運転者の視野に対する妨害を最小とする。
【0153】
外部から見るとフロントガラス36はドアのサイドウィンドウに近接するほど広い(2005年に製造された最も標準的な車よりも広い)。
【0154】
車両の右側に位置する部材38および車両の左側に位置する部材38は、フロントガラスに接着され、例えば歩行者との衝突の場合に、積層フロントガラス固有の衝撃吸収特性を活かすために、部材27はフロントガラスに対して一定の間隙を残している。
【0155】
Aピラー38において、1つまたは2つの前後方向延伸部材は、フロントガラスに接着され、他は衝撃吸収能力を付与するようにフロントガラスから離間される。
【0156】
図24は複数の強化部材を備える車両の側面概略図である。フロントガラスに近接した本発明における強化部材41、およびルーフに近接した付加的な強化部材42を示す。
【0157】
Aピラー43は図22に示すように内部に空隙を有して構成され、上記のように前方お
よび側方の視界を向上させる。Bピラー45、Cピラー44、および後部構造体46は従来の方法により形成される。しかし、全てのこれらの構造体は空隙を有する軽量材料からなることにより、図25に示すように四方にわたって視界を向上させることができる。ここではフロントガラスに近接した本発明における強化部材47、ルーフに近接した強化部材48、リヤウィンドウに近接した強化部材49、Aピラー、Bピラー、およびCピラーを形成する穿孔を設けられた構造体50,51,52が備えられている。これにより、空隙の多い「かご」を形成し、運転者はこれを介して四方の明瞭な視界を得る。
【0158】
図26A,26Bには、図22における強化部材、および図22に示す構造体と同一な原理に基づくAピラーを組み込んだ車両を図示する。
【0159】
図27,28はさらに後部装着エアロフォイル53を組み込んだ。図24,25に相当する車両の図である。
【0160】
後部装着エアロフォイル53はまたリヤバンパー構造体を形成する。リヤバンパー構造体用の通常の材料を使用できる。しかし、後部装着エアロフォイルの上面53Aは車両の表面53Bから離間するように構成されて気流の流路を形成する。この気流の流路は車両下方の気流が後部装着エアロフォイルの頂面の上方に屈曲するように構成される。流路は、車両の後部を路面に一層堅固に押圧するように、ダウンフォースが発生するように形成される。これは操縦性および制動性に有効である。
【0161】
破線53Cはシャッターの延伸する位置を示す。シャッターは例えば車両の後輪の後方などの格納時の第1の位置(図示せず)と、表面53A,53Bの間に形成される気流の流路用の開口に延びる第2の位置とを有する。このようにして、エアロフォイルの頂面上の気流が妨げられる。これにより、車両の後部への更なるダウンフォースが必要とされない場合に、エアロフォイルにより発生される抗力を最小にすることができる。
【0162】
シャッターは車両の中央線に沿って左右部分に分割されてもよい。第1のモードにおいて、制動性を向上させるように左右部分が共に操作される。第2の制御モードにおいて、左右部分は独立に稼動され、コーナリング時にカーブの内側にある車両の一方の荷重を高めるように操作し、ロードホールディング特性を向上させることができる。
【0163】
図29A〜29Cは、可動強化部材56を移動するための操作手段が起動するときの、本発明の第2の態様における強化部材が車両のルーフ54に近接する第1の格納位置から、車両のフロントガラス55の内部の位置に移動する方法を図示する。図31〜34にはさらに細部を示しており、強化部材56が、ルーフに近接した強化部材57に近接した格納位置から、フロントガラス55の後方に位置するとともにフロントガラスの下方の車両の前部構造体とフロントガラスの上方の車両の前部構造体との間の第2の位置まで、長い湾曲した経路を摺動する方法を示す。これにより、フロントガラスの後方に、堅固に固定された補強をすることができる。
【0164】
図29A,29Bはまた本発明の第1の態様における静的な強化部材を図示する。この場合には、中央のアルファピラーがフロントガラスの上部フレームから、フロントガラスの下部フレーム/ダッシュボード/インストルメントパネルピラーまでの全体には連結していない。強化部材は構造体をなすとともに屈曲による安全特性を備え、同時にバックミラーの通常の位置の前方または下方の一定領域において開口または部分的な開口を有する。
【0165】
図30は、内部に固定された係合構造体58が、第2の位置において、位置59において強化部材の底部と係合し、強力かつ弾性を有する構造体が提供される方法を図示する。例えば、強化部材は係合構造体に当接したり、係合構造体に係止されたりする。
【0166】
図35〜37は本発明の第2の態様の一実施態様を示す。ヘラジカ59などの大型物体が車両に搭載されたセンサ60により検知され、以下に説明する移動手段が起動される。検知は例えば短距離レーダまたは哺乳動物が放出する赤外線を特定することができるように構成された熱検知システムにより実施される。検知器は通常の体温である哺乳動物のものと比較して高温である例えば排気パイプから放出される赤外線を識別するように構成されている。
【0167】
物体59が検知されると、車のボンネット61は上昇し、偏向構造体を付与する。ボンネットは運転者の視線を妨害する程高くは上昇しない。フロントガラスは保護されていなければならない。この場合、フロントガラスは、格納位置においてボンネット61の下方に格納され、かつ物体が検知されると移動手段により図36に図示する位置に移動される強化部材62により保護される。
【0168】
図37に示す上面図は、強化部材62が車の進行方向に平行である格子状の前後方向部材、および車の進行方向と交差する水平部材63を備えることを示す。これにより、フロントガラス全体を衝撃から保護するためのフロントガラス幅一杯の格子が形成される。本発明の第1の態様におけるものであって車両の前部から車両の後部に延びる強化部材64は、強化部材62が係合することができる更なる支持部材を備える。
【0169】
図38A〜38Cには本発明の第2の態様における強化部材の別の実施態様を図示する。転覆は不可避である旨をセンサが検知した、図38Aの臨界位置からの転覆をする車両を図示する。この条件が検知されると、ばね(図示せず)である操作手段が起動され、複数の強化部材ユニット66からなる強化部材65を、車両のピラーおよびルーフに近接して部品が格納されている格納位置から移動させる。図38Bは強化部材ユニット66の移動の際の中間的な位置を示し、図38Cは最終位置にある強化部材を図示する。
【0170】
強化部材65が最終位置にあって所定位置に係止すると、係合部材は、強化部材65に係合するように構成された例えばルーフ構造体上の位置67、およびフロントガラスの前方の構造体の位置68に付与される。これは簡潔な構成であって、これにより、強化部材の一部が係合部材と物理的に係合し、係合部材に対する衝撃方向における強化部材の移動が簡易な防止具により防止される。
【0171】
図38A〜Cに図示する強化部材は入れ子状中央強化部材ユニット70が格納された固定構造体69を備える。これがフロントガラスの頂部にあるので、運転者の通常の視界を妨げることはない。
【0172】
図39は類似の設計であるが、中央の入れ子状部材ユニット70がない。
【0173】
図40A〜40C、41A〜41C、42A〜42C、43A〜43C、44A〜44C、45A〜45C、46A〜46C、47A〜47C、48A〜48C、49A〜49C、50A〜50C、51A〜51C、52A〜52C、53A〜53C、54A〜54Cには、本発明の第2の態様における強化部材の実施態様を図示する。夫々の場合において、Aと称する図は、センサが転覆は不可避であることを検知する角度に車両がおかれていることを示す。この段階において、モータ、ばね駆動、または任意の他の手段による操作手段(図示せず)が強化部材を移動させる。Cと称する図に示された位置において、強化部材は詳細には説明されてはいない係合部材に近接した位置に係止され、強固な支持を提供する。
【0174】
図40Cにおいて強化部材は堅固なバー71を備える。バー71はフロントガラスを覆う可撓性を有するシースルーメッシュ72を牽引し、運転者はメッシュを介して視認する
ことができるとともに、運転者を打撃する可能性がある割れたガラスおよび他の破片を捕捉する。
【0175】
図41Cにおいて強化部材は強化部材ユニットからなり、強化部材ユニットはフロントガラスの外縁部に近接した格納位置から、同ユニットがフロントガラスの後方において係止する、図41Cに示す第2の位置に移動する摺動ピボット74により連結された形状である。摺動ピボット74はトグルロックを形成し、強化部材73は図41Cに示す位置に堅固に保持される。
【0176】
図42Cにおいて強化部材は、フロントガラスに近接する格納位置から摺動し、フロントガラスの一部に延伸するとともに運転者が視認することができる格子を形成する強化部材ユニットからなる。同様に図43Cにおいて、強化部材は
所定位置に延伸、摺動、または枢動を行う複数のユニットからなる。他の実施態様についても同様な説明がなされる。
【0177】
図55〜57にはさらに別の種類の強化部材を図示する。
【0178】
図58は、複数の強化部材ユニット75が、フロントガラスの下端に近接する格納位置からフロントガラスに近接する第2の位置に向けて上方に枢動する方法を図示する。
【0179】
図59には、本発明の第2の態様における強化部材を詳細に図示する。強化部材は複数の強化部材ユニットからなる。入れ子状マウント77に取り付けられた2つの延伸強化部材ユニット76が備えられている。格納位置(図示せず)において、強化部材ユニット76はフロントガラスの下端を越えることはなく、かつ運転者には見えない。衝撃、接近する物体、または転覆条件が検知されると、強化部材が解放され、さらにばねの影響を受けてフロントガラスの隅に固定される第2の位置に移動される。強化部材は、フロントガラスが保持されているフレームの一部と係合し、延伸した強化部材ユニットの車両内への移動は防止される。
【0180】
さらに、3部品からなる入れ子状延伸ユニットからなる強化部材ユニット78が備えられている。格納位置(図示せず)において、強化部材はばね装着格納手段79に取り付けられている。衝撃、接近する物体、または転覆条件が検知されると、強化部材ユニット78は解放され、さらにばねの影響を受けて上方に延伸し構造体79に係合して保持する。それにより乗員用区画への逆移動が防止される。このようにして、強力な構造体がフロントガラス全体にわたって確立される。
【0181】
図60には2つの強化部材ユニット80からなる強化部材を示す。各強化部材ユニット80は中央部分のヒンジ83において蝶番状に移動する2つのアーム部分81,82からなるアームを備える。アーム82の自由端はフロントガラスの下端近傍の番号84において枢動する。他のアーム81の自由端は摺動部材86に取り付けされている。摺動部材はばね86により駆動される。ばねは底部88を中心にして枢動するばねハウジング87内に保持される。格納位置(図示せず)において、摺動部材85はユニット87の基底部近傍に保持され、それによりばね86は強く押圧されている。この位置において、アーム82はフロントガラスの下端に近接して固定されるが、運転者からは見えない。衝撃、接近する物体、または転覆条件が検知されると、アクチュエータは摺動部材85を解放する。それにより、摺動部材はユニット87に沿ってきわめて迅速に頂部に移動し、アーム82,81を上昇させる。それにより衝撃に抗するための緊張状態にある構造体がフロントガラスの近傍に形成される。第2の位置において、アーム82の頂部はアームを保持する係合手段89に固定される。それにより車両の前後方向の移動が抵抗を受ける。
【0182】
図61は本発明の第2の態様における強化部材の別の実施態様を図示する。この場合枢
動強化部材90は第1の位置から第2の位置に上方に移動される。第1の位置はフロントガラスの前方に近接し、かつフロントガラスの下方である。第2の位置は共通ばね91の形状をなす操作手段による補強位置である。
【0183】
図62は、枢動強化部材93の枢動位置92が、図61に示すよりも大きく離間している別の設計を図示する。
【0184】
図63〜74はレーシングカーに装着された本発明の第1の態様における強化部材の様々な実施態様である。いずれの場合にも、固定された強化部材は運転者の前方に取り付けられ、運転者の視野を殆ど妨害しないように構成されている。さらに、強化部材は車両の後部において、エンジン/クーラー用の取り入れ口への気流を殆ど妨害しない。
【0185】
図63,64,65は第1の実施態様の図である。強化部材の前部の幅狭い前後方向延伸編物は運転者を物体からの前部への衝撃から保護する。強化部材は幅方向部材95により後部において支持される。
【0186】
図66,67,68は、レーシングカーに適用される、本発明の第1の態様における強化部材の第2の実施態様の各方向から見た図である。強化部材は車両の前部から後部に延びる直立強化部材96からなる。軽減孔97が底部に形成されて重量を低減させ、同時に強いアーチをなす構造体が形成されている。
【0187】
図69,70は、図63〜65に示すものと類似の強化部材97のさらに別の実施態様を図示する。同様に、図71,72は図63〜65に示すものと類似の強化部材98の第4の実施態様を示す。
【0188】
図63〜68は、本発明の第1の態様によるとともに、これら図面に示すように静的に製造されたり、本発明の第2の態様におけるポップアップする動的なシステムとして製造されたりしてよい。それらはプリテンションを備えたり、他の手段により起動されたりする。それらは図29から図62に示すシステムと類似のITSマイクロチップセンサシステムにより起動されてもよい。
【0189】
図73,74は、2つの前方に取り付けられ、その後部において幅方向アーチ部材100に連結された強化部材ユニット99からなる強化部材を示す。
【0190】
上記の強化部材および強化構造体は、車両内の任意の適切な構成をなすように組み合わされてもよい。
【0191】
例えば、40A,40B,40Cに図示した動的にポップアップする保護カーテンは、図26A,26Bの強化部材と組み合わせて使用されてもよい。これらはフロントガラスの外部および/または内部のエアバッグを組み合わせて使用されてもよい。
【0192】
本発明に関しては、例示することにより説明してきた。種々の改変は上記した特徴と等価であるものにまで及ぶ本発明内においてなされ得る。本発明はまた、本明細書に説明されていたり、暗示されていたり、図面中に図示されていたり、暗示されていたりする個々の特徴、あるいはこのような特徴の組み合わせたもの、あるいはこれらの特徴や組み合わせを任意に一般化したりすることをも包含する。
【図面の簡単な説明】
【0193】
【図1】本発明の第1の態様における強化部材の等角概略図。
【図2】車両に装着された図1の強化部材の概略図。
【図3】本発明の強化部材が大型哺乳動物との衝突に対してフロントガラスを保護する方法を示す概略図。
【図4】本発明における強化部材の一実施態様を備えたフロントガラスまたはリヤウィンドウの概略図。
【図5】本発明における強化部材の一実施態様を備えたフロントガラスまたはリヤウィンドウの概略図。
【図6】本発明における強化部材の一実施態様を備えたフロントガラスまたはリヤウィンドウの概略図。
【図7】本発明における強化部材の一実施態様を備えたフロントガラスまたはリヤウィンドウの概略図。
【図8】3つの部品により構成される図1の強化部材の概略等角図。
【図9】本発明における強化部材、および任意の付加的な内部強化部材を備える車両の概略断面図。
【図10】本発明における強化部材、および任意の付加的な内部強化部材を備える車両の概略断面図。
【図11】本発明における強化部材、および任意の付加的な内部強化部材を備える車両の概略断面図。
【図12】本発明における強化部材、および任意の付加的な内部強化部材を備える車両の概略断面図。
【図13】本発明における強化部材、および任意の付加的な内部強化部材を備える車両の概略断面図。
【図14】本発明における強化部材、および任意の付加的な内部強化部材を備える車両の概略断面図。
【図15】運転者の視野に関する本発明の強化部材の効果を示す概略図。
【図16】フロントガラスに近接して配置される強化部材の一実施態様の概略図。
【図17】フロントガラスに近接して配置される強化部材の一実施態様の概略図。
【図18】フロントガラスに近接して配置される強化部材の一実施態様の概略図。
【図19】フロントガラスに近接して配置される強化部材の一実施態様の概略図。
【図20】フロントガラスに近接して配置される強化部材の一実施態様の概略図。
【図21】フロントガラスに近接して配置される強化部材の一実施態様の概略図。
【図22】本発明の第3の態様における、フロントガラスに近接して配置するための別の実施態様の強化部材を示す概略等角図。
【図23】図22の強化部材の、運転者の視野に対する影響を示す概略図。
【図24】本発明の強化部材を車両に組み込んだ実施態様を示す側面概略図。
【図25】本発明の強化部材を車両に組み込んだ実施態様を示す側面概略図。
【図26A】図22の強化部材と車両のピラーの新規な設計との関係を示す概略図。
【図26B】図22の強化部材と車両のピラーの新規な設計との関係を示す概略図。
【図27】バンパーを形成する後部装着エアロフォイルを組み込んだ車両の実施態様を示す側面概略図。
【図28】バンパーを形成する後部装着エアロフォイルを組み込んだ車両の実施態様を示す側面概略図。
【図29A】本発明の第2の態様における強化部材の、本発明における第1の位置から第2の位置への移動を示す概略図。
【図29B】本発明の第2の態様における強化部材の、本発明における第1の位置から第2の位置への移動を示す概略図。
【図29C】本発明の第2の態様における強化部材の、本発明における第1の位置から第2の位置への移動を示す概略図。
【図30】車両に組み込まれる別の強化部材を示す一部断面概略図。
【図31】本発明における強化部材の第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図32】本発明における強化部材の第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図33】本発明における強化部材の第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図34】本発明における強化部材の第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図35】車両のボンネットに組み込まれた強化部材の実施態様を示す概略図。
【図36】車両のボンネットに組み込まれた強化部材の実施態様を示す概略図。
【図37】車両のボンネットに組み込まれた強化部材の実施態様を示す上面概略図。
【図38A】本発明における強化部材の別の実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図38B】本発明における強化部材の別の実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図38C】本発明における強化部材の別の実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図39】強化部材の別の実施態様を示す概略図。
【図40A】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図40B】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図40C】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図41A】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図41B】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図41C】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図42A】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図42B】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図42C】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図43A】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図43B】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図43C】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図44A】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図44B】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図44C】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図45A】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図45B】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図45C】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図46A】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図46B】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図46C】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図47A】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図47B】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図47C】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図48A】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図48B】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図48C】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図49A】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図49B】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図49C】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図50A】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図50B】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図50C】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図51A】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図51B】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図51C】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図52A】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図52B】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図52C】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図53A】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図53B】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図53C】本発明における一実施態様の強化部材の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図54A】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図54B】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図54C】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図55】本発明の第2の態様における強化部材の一実施態様を示す概略図。
【図56】本発明の第2の態様における強化部材の一実施態様を示す概略図。
【図57】本発明の第2の態様における強化部材の一実施態様を示す概略図。
【図58】本発明の第2の態様における強化部材の一実施態様を示す概略図。
【図59】本発明の第2の態様における強化部材の一実施態様を示す概略図。
【図60】本発明の第2の態様における強化部材の一実施態様を示す概略図。
【図61】本発明の第2の態様における枢動する強化部材の一実施態様を示す概略図。
【図62】本発明の第2の態様における枢動する強化部材の一実施態様を示す概略図。
【図63】レーシングカーに装着された本発明の第1の態様における強化部材の一実施態様を示す概略図。
【図64】レーシングカーに装着された本発明の第1の態様における強化部材の一実施態様を示す概略図。
【図65】レーシングカーに装着された本発明の第1の態様における強化部材の一実施態様を示す概略図。
【図66】レーシングカーに装着された本発明の第1の態様における強化部材の一実施態様を示す概略図。
【図67】レーシングカーに装着された本発明の第1の態様における強化部材の一実施態様を示す概略図。
【図68】レーシングカーに装着された本発明の第1の態様における強化部材の一実施態様を示す概略図。
【図69】レーシングカーに装着された本発明の第1の態様における強化部材の一実施態様を示す概略図。
【図70】レーシングカーに装着された本発明の第1の態様における強化部材の一実施態様を示す概略図。
【図71】レーシングカーに装着された本発明の第1の態様における強化部材の一実施態様を示す概略図。
【図72】レーシングカーに装着された本発明の第1の態様における強化部材の一実施態様を示す概略図。
【図73】レーシングカーに装着された本発明の第1の態様における強化部材の一実施態様を示す概略図。
【図74】レーシングカーに装着された本発明の第1の態様における強化部材の一実施態様を示す概略図。
【技術分野】
【0001】
本発明は、路上走行車両などの車両における脆弱領域の構造補強に関する。
【背景技術】
【0002】
路上走行車両の事故の中でも、毎年多数の死亡事故が発生している。これらの死亡事故の一部はAピラーなどの車両の構造体により視野を妨げられることにより生起される「視線を向けたが、視認していない」ことに起因したり、最も危険な事故形態ではあるが、転覆によるルーフ圧壊またはフロントガラスを介する衝撃によったりしている。
【0003】
これらの事故の影響を低減させるべく、今までに多くのシステムが採用されてきた。例えば、特許文献1,2において、フロントガラスはフロンドガラスの周囲に衝撃抵抗バリアを配置することによりルーフ圧壊から保護されている。この強化法はフロントガラスに対して延びるので、フロントガラアスを介する周辺視界に影響を与えるという問題がある。
【0004】
自動車レースの分野においては、特別な強化部材を溶接することにより車両を特別生産することは周知のことである。しかし、その強化部材は視界を妨げ、車両を運転する人にとって危険な可能性すらあるので、これらは通常の車両には適切ではない。それらは車両内部を塞ぎ、かつ視界の障害となり得る。
【0005】
スポーツユーティリティビークル(SUV)は転覆事故の際に垂直方向に保護することを意図してロールバーを備えることが通常であるが、フロントガラスの衝撃に対しては保護することはできない。例えば衝撃センサを稼動させることなどにより、衝撃時に車両のボンネットを上昇させる多くのシステムが提供されてきた。しかし充分な保護効果が得られず、さらに、運転者は上昇したボンネットを介して視認することができないので、これはきわめて危険である。これは背の低い運転者やシートが低い場合には特に問題である。
【0006】
特許文献3は、車両シートの後方に配置され、特にルーフがソフトトップ車両においては、衝撃の際に運転者の頭部の後方において跳ね上がるポップアップロールバーを開示している。しかし、これらは前方からのフロントガラスへの衝撃に対しては保護することができず、ルーフ圧壊に対する保護は限定的となる。
【特許文献1】米国特許第5653497号明細書
【特許文献2】米国特許第5860689号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第1186483号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、転覆時のルーフ圧壊およびフロントガラスを介した物体の侵入から車両の運転者または同乗者を保護する、車両のための強化部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様において、本発明は車両の構造体に固定され、運転者位置の前方に延伸する少なくとも1つの強化部材を備える路上走行車両を提供する。強化部材は、運転者が両眼を用い、かつ運転者の頭部を移動することを要することなくフロントガラスから少なくとも2m離間した位置に存在する物体を視認することを妨げない寸法である。
【0009】
運転者とフロントガラスとの間に何の構造部品もない場合に最良の視界が得られるとの
従来の見解は正確ではないことを、本発明は明確にした。また本発明は、視界に対する影響を最小限とし、車両強度、特に前方からの衝撃およびルーフ圧壊に対する耐性を大きく向上させるように強化部材を設計することが可能であることを明確にした。
【0010】
本発明の第1の態様はまた、路上走行車両に用い、車両の構造体を固定し、運転者位置の前方に延伸する強化部材を提供する。この強化部材は、使用時においては、運転者が両眼を用い、運転者の頭部を移動することを要することなくフロントガラスから少なくとも2m離間した位置に存在する物体を視認することを妨げない寸法である。
【0011】
従来の路上走行車両においては、本発明は、車両の前部構造体とフロントガラスの頂部フレームとの間に延伸する少なくとも1つの強化部材を付与することが好ましい。
【0012】
本発明の強化部材はまた、例えば、フォミュラレーシングカーまたは現在テスト中である従来技術とは異なる省エネルギー車両などの、通常の路上走行車両と同様には構成されていない車両に適用することができる。多くのこれらの車両は運転者および/または同乗者の周囲に延びる大きく湾曲したフロントガラスを有する。通常の車両であれ通常の車両ではないものであれ、車両はフロントガラスがあるので、強化部材は車両の構造体に固定され、フロントガラスに近接し、フロントガラスの幅方向外側縁同士の間に延伸することが好ましい。フロントガラスを備えない一レーシングカーにおいて、強化部材は運転者位置の前方に延伸する。
【0013】
「運転者の前方」とは、強化部材は側面から見ると、車両の前後方向の軸線に沿って運転者位置の上方に配置されていることを意味する。強化部材は必ずしも運転者位置の前方に直接配置されているとは限らない。多くの車両は想定上の中央線を有するように設計されている。運転者位置は、通常はその中央線の一方の側面に配置されている。強化部材は中央線上、中央線の運転者位置と同一側面上、または他側面上に配置されるが、強化部材はほぼ中央線に配置されるのが好ましい。
【0014】
本発明はまた、運転者が前方に真っ直ぐに視線を向けるときには運転者にとっては殆ど視認できない格納位置から、車両の構造部材間に延びる補強位置に移動することができる可動強化部材を備え得ることを明確にした。本発明のこの態様において、強化部材は車両を通常使用時には殆どまたは完全に視認されず、事故の場合にのみ適切な位置に配置される。
【0015】
第2の態様において、本発明は、第1の格納位置においては後退しており、第2の延伸位置においては車両の構造体間に延伸している少なくとも1つの強化部材と、強化部材を第1の位置から第2の位置に移動させる操作手段とを備え、強化部材が延伸位置においてフロントガラスに近接して延伸する場合、運転者はフロントガラスの少なくとも一部分を介して視認することが可能である車両を提供する。
【0016】
本発明の第2の態様は、車両内に装着するための強化構造体をさらに提供する。強化構造体は強化部材と、強化部材を第1の格納位置から第2の延伸位置に移動させる操作手段とを備え、操作手段と強化部材とは車両の構造体に係合するように構成されている。
【0017】
本発明の第1の態様において使用される強化部材の設計の一実施態様は、新規性を有すると判断される。本発明の第3の態様は、車両内装着用の強化部材を提供する。強化部材は、車両の前部構造体から延びる少なくとも2つの第1の直線状延伸構造体ユニットと、少なくとも2つの第1の直線状延伸ユニットと連結し、非水平状態にある第2の直線状延伸構造体ユニットとからなる。強化部材の第1の直線状延伸構造体ユニットは水平面において65mm以下、好ましくは50mm以下の幅を有する。
【0018】
水平面は強化部材が適切な位置にあるときの水平方向の面である。
【0019】
本発明の第3の態様において、少なくとも3つの直線状延伸構造体ユニットが備えられることが好ましい。
【0020】
第2の態様および第3の態様において車両は路上走行車両であることが好ましい。しかし本発明は、路上、レーストラック、空中、宇宙、または海上に静止しているか移動しているかを問わず、車両または船体の占有者用のあらゆる居住スペースに適用できる。
【0021】
第1、第2、および第3の態様において、車両は乗員運搬用路上走行車両であることが好ましい。
【0022】
本発明の第1、第2、および第3の態様の好ましい特徴を以下に詳述する。
【0023】
本明細書の説明において通常の乗用車に関して言及する。通常の乗用車はルーフ圧壊耐性に影響すると思われる8つの部品を有する。それらは、外部Aピラー、外部Bピラー、サイドパネル、内部後部リンフォースヒンジピラー、下部リンフォースヒンジピラー、Bピラー、内部Aピラー、ルーフサイドフレーム、およびルーフサイドパネルである。必要に応じてこれらの構造体に関して言及する。
【0024】
1.第1の態様−固定された強化部材
上記のように、車両はフロントガラスを備え、強化部材は車両のフロントガラスに近接して、フロントガラスの幅方向外縁部同士の間に延伸することが好ましい。
【0025】
「フロントガラスに近接して延伸する」とは、強化部材がフロントガラスの前方、または運転者とフロントガラスとの間に配置されることを意味する。強化部材は、以下にさらに説明するように、フロントガラスに当接したり、フロントガラスから、例えば、2〜20cmのような短距離だけ離間して配置されたりしていることが好ましい。
【0026】
強化部材は車両の乗員用区画の内部に配置されることが特に好ましい。これにより、以下にさらに詳述するように、衝突の際にフロントガラスを抑止することができるので、特に利点が大きい。強化部材はまた、車道の右側の視界を妨げることのない位置に配置されている。
【0027】
強化部材は車両の少なくとも1つの構造体に固定されねばならない。それは、車両の前部構造体またはフロントグラスの頂部フレームである。前述のように、通常の車両においては、強化部材は車両の前部構造体とフロントガラスの頂部フレームとの間に延び、かつ車両の前部構造体とフロントガラスの頂部フレームとに固定されていることが好ましい。これにより強力な構造体が付与され、転覆の場合の高度な圧壊耐性が付与される。
【0028】
強化部材は、手動により着脱可能であることは任意である。強化部材はその後、例えば迅速固定ボルトシステムまたは摺動部材により各路上走行車またはスポーツカーの設計に適合して(コンバーチブルのルーフを固定する機構と類似のイージークリップ式クイックロックまたはスクリューロック式ボルトシステム)固定される。さらに、強化部材および任意の2つのAピラーを備えるフロントガラスは、例えばコンバーチブル用などのように着脱可能である。
【0029】
強化部材は、フロントガラス、インストルメントパネルビーム、または車両の前部外部構造体のうちの1つと一体に形成されてもよい。
【0030】
多くの車両において、フロントグラスは垂直から大きな角度をなして後退していることに留意されたい。これは、フロントグラスの頂部およびフロントグラスの頂部フレームは運転者の頭部の高さと近接して位置することを意味する。強化部材をフロントグラスの頂
部フレームに近接して付与することにより、転覆した場合に良好な支持が得られる。強化部材を付加する場合に関しては、さらに以下に検討する。
【0031】
強化部材はフロントガラスの長手の一部分だけに延伸させることができる。しかし、強化部材はフロントガラスの長さのうちの少なくとも75%延伸することが好ましい。
【0032】
強化部材は構造体からなり、かつ屈曲できる安全特性を備えるとともに、バックミラーの典型的な位置の前方または下方の領域に開口または部分的な開口を備える。
【0033】
強化部材は車両の前後の軸線方向に延伸することが適切である。しかし、適切な場合には、上面図で見たときに、前後方向の軸線に対して僅かな角度をなしていてもよい。
【0034】
付加的な強化部材は、フロントガラスの頂部フレームからルーフ構造体に沿ってリヤウィンドウの頂部フレームに延伸したり、リヤウィンドウの頂部フレームから車両の後部構造体に延伸したりするように付与される。これらは、フロントガラスに近接して配置されている強化部材と連続して形成されてもよい。これらは個別の部品から形成され、その後相互に隣接して配置されてもよい。これらは例えば、付着、溶接、接着、または機械的な固定などの任意の適切な方法により連結される。
【0035】
本発明は、本発明の第1の態様におけるアーチ形状をなす強化部材を提供する。これは滑らかに湾曲したアーチである。「滑らかに湾曲した」とは、アーチの少なくとも一端は、曲面の半径が5mm未満、好ましくは10mm以上、最も好ましくは20mm以上の弧を有していないことを意味する。
【0036】
強化部材は単一の構造部材から形成されてもよいし、相互に組み合わせられた複数の構造部材から形成されてもよい。
【0037】
強化部材は少なくとも1つの構造部材からなり、その構造部材の断面は乗員用区画に面する面は滑らかな湾曲した形状である。
【0038】
強化部材はその断面が中実または中空である構造部材からなる。
【0039】
強化部材をフロントガラスに近接して配置するためには、強化部材の三次元構成を以下のように設計することが好ましい。
【0040】
該部材は車両の前方に向けて狭くなる。運転者から最も離間した構造体の部分は運転者の視界を妨げる可能性が最も高いので、この部分を可能な限り小さく製造することが好ましい。
【0041】
構造体は頂部から底部に向けて車両の幅方向に狭くなる。これにより、運転者の視界を妨げる可能性が最も高いフロントガラスの基部に近接した部分は小さくなるが、その頂部において車両の他の部分と強く係合する。これは前方から見ると、強化部材をV字型またはY字型とすることにより達成される。側面からみると、強化部材は底部から頂部に向けて狭くなり、堅固なストラットのような構造体を構成する。それに代えて、車両の前後方向に、頂部から底部に向けて、運転者の視界を妨げない範囲の長さにすることができる。
【0042】
強化部材は側面から見ると、多くの車両のフロントガラスの構成と同様に、底部から頂部にかけて後方に延びている。
【0043】
一実施態様において、強化部材は直角をなす平面に裁断された三角柱の形状、または面取りされた三角錐の形状を有する。
【0044】
すべての実施態様において、強化部材は中実ではなく、視野妨害をさらに低減することが好ましい。強化部材は穿孔を備える材料または空隙を環囲する中実材料を編んだ物からなっていてよい。それに代えて、相互に結合された直線状に延びる複数の構造体ユニット
により視野妨害を最小限とする強固な構造体からなることもできる。
【0045】
強化部材は、車両の前部構造体からフロントガラスの頂部フレームに延びる少なくとも2つの第1の直線状延伸構造体ユニットと、少なくとも2つの第1の直線状延伸構造体ユニットに連結する第2の直線状延伸構造体ユニットとから形成される。この場合、第2の構造体ユニットは非水平状態に装着されていることが好ましい。これにより運転者の視野の一部を妨げる傾向をさらに低減する。3つの第1の直線状延伸構造体ユニットを備えることができ、夫々は第2の構造体ユニットにより他の2つと連結される。3つの第1の直線状延伸構造体ユニットは三角形に配置されてもよい。
【0046】
強化部材は1枚のシートを切断および折曲することにより最終的な形状に形成され得る。必要に応じてレーザー切断、ハイドロフォーム、溶接、または任意の製造技術を用いることができる。
【0047】
任意の性質を有するハニカムサンドイッチ構造体複合材料が用いられる。例えば、スチール/チタン/炭素繊維/ケブラー(商標)/プレキシガラス(商標)/繊維強化ポリアミド66/ガラス繊維強化PP、または任意の新規合金などである。
【0048】
視界の妨害を一層低減するため、強化部材は前部構造体ユニットと後部構造体ユニットとにより形成され、前部構造体ユニットと後部構造体ユニットとは運転者が運転するための通常の位置とほぼ同一線上に配置される。これにより、強度を付与する2つの構造部材が存在するにもかかわらず、運転者からは一方の目で見ると1つのユニットのみが視認され、両眼で見ると視野の妨害は最小限である。
【0049】
強化部材の第1の直線状延伸構造体ユニットは、視界の妨害を最小限にするためには水平面における幅は65mm以下、好ましくは5cm以下、最も好ましくは3.5cm以下である。強化部材の第1の直線状延伸構造体ユニットは、運転者の両眼間の距離を越えない幅を有することが好ましい。多くの運転者の両眼間の距離は5.5〜6.5cmである。構造体ユニットの幅はこの距離未満であることが好ましく、通常の両眼間の距離の65%未満であることが好ましい。水平面とは、強化部材が車両の通常の正立位置において配置されたときに、水平である面を指す。
【0050】
第2の構造体ユニットは水平面における幅は65mm未満、好ましくは50mm未満である。第2の構造体ユニットは非水平状態に配置されることが好ましい。
【0051】
第1の直線状延伸構造体ユニット同士の水平面における距離は、少なくとも65mmであることが好ましい。
【0052】
構造体ユニットの最大幅が運転者の両眼間の距離の50%である場合、運転者は、少なくとも一方の目を用いて、運転者から構造体ユニットまでの距離と等しい距離にある、構造体ユニットから離間した任意の物体を視認することが可能である。運転者から強化部材までの通常の距離は1m未満であるので、運転者は強化部材から1m以上離間した物体を視認することが可能である。
【0053】
強化部材がフロントガラスに近接して、例えば中央に配置されている場合、強化部材は通常用いられるフロントAピラーの種類よりも少ない視界妨害を呈することに留意されたい。この強化部材は通常中実の、視界を妨害し得る材料により構成され、運転者の両眼間の距離よりも水平面において幅広く構成されている。
【0054】
実際には、強化部材により6°以下の視野が妨害される場合には、運転者の視界としては許容範囲にある。
【0055】
強化部材は、強化部材の全長がフロントガラスに接触しないように装着されることが好ましい。強化部材はフロントガラスとその全長の50%未満、好ましくは40%未満、さらに好ましくは20%未満か接触することが好ましい。強化部材が接触するフロントガラス部分は、例えば、中央に装着されているバックミラーの領域などのフロントガラスの上部に限定されていることが好ましい。これにより、さらに視界妨害を低減する。
【0056】
強化部材によりフロントガラスの下部の堅固さを増大させるだけではなく、衝撃を吸収する能力を向上させる。特に、フロントガラスへの多くの種類の衝突、例えば自転車または歩行者との衝突において、自転車乗員または歩行者はしばしばフロントガラスの下部と接触する。実際には頭部が先ず接触して多くの死亡者を生じる。強化部材とフロントガラス下部との間に間隙を設けることにより、フロンタガラス下部は僅かに撓曲することができ、衝突エネルギーの一部を吸収する。一方、フロントガラスはそれ以上後方に移動する前に、強化部材に捕捉され、フロントガラスまたは物体が運転者を打撃することを防止する。
【0057】
強化部材自体をエネルギー吸収特性を有するように設計することができる。特に、強化部材のうちの運転者から最も離間した部分は、衝撃を吸収するように撓曲したり、屈曲したりするように製造することができる。これは特に、強化部材を前部から後部に向けて幅を増大させ、前部は比較的軽量に構成するように設計する場合である。強化部材を前方からの衝突、または転覆する場合に約10〜20cm、好ましくは10〜12cm屈曲するように設計することが好ましい。しかし、運転者に危険が及ぶほどには移動しないようにすることが好ましい。
【0058】
本発明における強化部材は鋳造、プレス、鍛造、構造体の組み立てにより製造することができる。
【0059】
本発明における強化部材は車内に組み付けされる。強化部材は乗員用区画に対向し、例えば車両のインテリアの内装材と同様なエラストマー材料またはパッドなどの衝撃吸収材料からなり、車両構造に関する法規制に合致している。
【0060】
本発明における強化部材は、車両のパネルまたは窓に隣接する少なくとも1つの固定された構造体、例えば窓フレームから延びる。これにより堅固な固定位置が付与される。強化部材はパネルまたは車両の対向する外縁に配置された車両の構造体間に延び、これらの構造体間に高強度のブリッジを形成することが好ましい。これにより、車両の構造強度を増強する。
【0061】
付加的な強化部材も設けてよい。少なくとも1つの強化部材は車両のルーフと接触して付与されてもよい。これは特にハードトップ車またはカブリオーレ車に適用できる。強化部材はルーフ全体にわたり連続することができ、中央部のルーフライン/カバーに沿って後方に延びる形状が、付加的な支持を得るためのピラー同士の間のルーフの幅方向の形状と連結するようにできる。強化部材は上部リヤウィンドウフレームと接触することが好ましい。
【0062】
強化部材は、その全長にわたってリヤウィンドウ領域の下部と接触することが好ましい。
【0063】
強化部材がルーフに近接して設置されると、これにより例えばルーフボックスの荷重を支持するなどの付加的な補強が付与される。強化部材により、ルーフ上の他の荷物運搬装置を一層堅固に装着するための中央の前後方向のルーフレールを設ける可能性が生じる。
【0064】
強化部材はフロントガラス、ルーフ、またはリヤウィンドウに対する衝撃に対する耐性を付与する。構造体は現存する車両構造と一体化し、全体組み上げによる全体的な強度を
向上させることができる。強化部材とリヤウィンドウまたはルーフとの連結は、例えば接着剤または機械的な連結などの任意の適切な手段によることができる。前後方向の強化部材は、例えばフロントガラス、ルーフ、またはリヤウィンドウの幅方向の外縁部に沿った付加的な延伸をしてもよい。幅方向強化部材は、Aピラー、Bピラー、またはCピラーからフロントガラス、ルーフ、またはリヤウィンドウに近接して取り付けられた強化部材に向けて必要に応じて延びることができる。これは付加的な剛性および強度を付与する。さらに、車両のシャーシからルーフまたはルーフに近接した強化部材に延びる内部強化部材は、車両の圧壊に対する付加的な耐性を付与する。
【0065】
付加的な強化部材は、本発明の強化部材と同様の方法により構成される。例えば、軽量化のためには、軽量材料により構成されることが好ましい。それらの構造体中に軽量化空隙を備えて構成されることが好ましい。付加的な強化部材は複数の直線状延伸構造体ユニットからなることが好ましい。
【0066】
特に好ましい実施態様において、本発明の強化部材の構造設計は、Aピラー、Bピラー、またはCピラーを含む車両の通常のピラー構造に適用できる。このようにして側方への運転者の視界妨害は向上される。
【0067】
特に、車両のこれらの部品は、運転者が両眼を用い、運転者の頭部を移動させる必要がなく視認する際には、運転者が車両の夫々の構造体から少なくとも2m離間した位置にある物体、好ましくは車両の夫々の構造体から少なくとも1m離間した位置にある物体を視認することを妨げないように構成されることが好ましい。
【0068】
一層視界妨害を低減するため、Aピラー、Bピラー、またはCピラーは中実ではないことが好ましい。これらは穿孔された材料、または空隙を環囲する中実材料の編物により形成され得る。これらは相互に組み合わせられた直線状延伸構造体ユニットからなり、視界妨害が最小である強度を有する構造体を付与する。これらは少なくとも2つの第1の直線状延伸構造体ユニット、および少なくとも2つの直線状延伸構造体ユニットと連結する他の直線状延伸構造体ユニットから形成される。この場合、第2の構造体ユニットは非水平状態に装着されることが好ましい。Aピラーの構造体ユニットは65mm以下の幅、好ましくは50mm以下の幅、最も好ましくは35mm以下の幅を有し、それにより視界妨害を最小にする。少なくともAピラーは、Aピラーの全長にわたってフロントガラスに近接するように装着され、AピラーはAピラーの全長の50%未満、好ましくは40%未満、さらに好ましくは20%未満がフロントガラスと接触することが好ましい。
【0069】
1つの好ましい実施態様において、本発明におけるフロントガラス、Aピラー、Bピラー、および任意によりCピラーに近接する全強化部材は、本発明の強化部材構造の原理に沿って形成される。これらはすべて軽量化空隙を備えて構成され、複数の直線状延伸部材から構成されることが好ましい。
【0070】
これにより車両に隙間の多い「かご様」の構造体が付与され、前方、側方、および任意により後方に対しても高度な視界を保つ。一方、高い耐衝撃強度が付与される。必要に応じて、高強度/軽量材料を用いることができる。
【0071】
Cピラーの方向への視界はあまり重要ではなく、これらの部品は従来方法により中実構造体により構成し、原価を低減できることは留意されるべきである。
【0072】
強化部材がフロントガラスに隣接して設置される場合には、現在の実施方法よりも小体積を有するAピラーを形成することが可能であることは、本発明の利点である。すなわち、Aピラーは小さく製造されたり、内部に空隙を有する構造体により製造されたりし得る。このようにして側方への良好な視界が得られる。
【0073】
年間の多くの死亡事故は車両の側面が物体と衝突することに起因する。本発明における強化部材により付与されるフロントガラスの中央部への付加的な強度により、Aピラーを一層視界妨害の少ないものとし、それによりこの種の事故を低減することができる。
【0074】
フロントガラスはまた通常よりも幅広くすることができる。外部から見ると、ドアのサイドウィンドウに直接隣接するほど幅広くできる。強化部材およびAピラー上にフロントガラスを固定する好ましい方法は、強化部材の外縁部およびAピラーの接着である。これらの部材とフロントガラスとの間隙は、積層フロントガラスに固有の衝撃緩和作用による利点を生かすため、場所を選定して設けられる。
【0075】
運転中の視界をさらに最適にするため、フロントガラスは適切な材料により形成したり被覆したりして、例えば、運転者を強い太陽光および反射から保護するためのITS電光可変スペクトル遮蔽機能などのように、グレアおよびまぶしさを低減することができる。
【0076】
本発明により得られる安全上の利点には、
1)従来設計と比較して、運転者またはパイロットにとって良好な視界がえられること、2)転覆時のルーフ圧壊に対する保護があること、
3)フロントガラスへの衝撃に対して屈曲して保護すること、
4)フロントガラス、ルーフまたはリヤウィンドウを介して乗員用車室に進入してくる(大型の哺乳動物、歩行者などを含めた)外部物体用の物理的防壁を備えること、
5)運転者/同乗者がシートベルトを装着していない場合、衝突時に運転者/同乗者が放出されることを低減すること、
6)押圧力および衝撃による亀裂に対する耐性を向上させるフロントガラス支持、
7)さらに増大する重量の運搬を可能とする、重いルーフ荷重/スキーケースを中央に保持装着することを可能とすること、
8)多様な角度における転覆衝撃を有する衝突時の、物体が衝撃/進入する危険性を大幅に低減するフロントガラス/フレーム/支持構造体の更なる補強、および
9)車両乗員は、頂部からの衝撃から保護されていることに関連して一層強い信頼感を有し、それ故乗員は一層容易にシートベルトを装着すること、
などが挙げられる。
【0077】
好ましい実施態様において、運転席は固定位置に配置されており、強化部材に対する運転者の位置はほぼ固定されている。この場合、車両の制御機器は位置調整可能であることが好ましい。例えば、ハンドル、シート、レバー類、およびペダルは位置調整可能とし、運転者に適切に配置される。このような配置を行うことはセンサおよび電動モータにより自動的に実施され得る。それに加えて、もしくはそれに代えて、中央強化部材の角度は、最適な可視性を得るために運転者の両眼の間の中点と整列するように、例えば、ボルト/ジョイントシステム、手動、または自動により、部材自身の軸線を中心にして回動されてもよい。
【0078】
強化部材(および任意によりAピラー)は、最適な可視性を得るために運転者の両眼に向けて対象性を有して配列される。従ってピラーの角度は、水平面における材料幅は常に確実に運転者の両眼の間の幅よりも大幅に小さく、最も好ましくは40mm未満である。同時にピラーの角度により、構造体ユニットは強度を有する充分な厚さを有することができる。強化部材の構造体ユニット同士の間の間隙は、両目の瞳間の距離は65mm以下であると判断されるので、材料が視線を確実に妨害しないように水平面において65mmまたは65mmより僅かに大きくするべきである。
【0079】
本発明はまた、シャーシ剛性およびねじれ安定性を向上させ、荷重積載時の屈曲した路
上における操縦性を向上させ、風切り音を低減させ、さらに衝突の脅威による緊張感を低減させることにより運転者の警戒感を向上させることを含む付加的な利点を付与する。そのため効率的かつ理性的な認識により、疲労に対する抵抗力を増大させ、知覚を鋭敏にし、協調性を向上させ、さらに反応時間を向上することができる。
【0080】
強化部材により付与される付加的な構造体が車両の重量を過度に増大させないようにし、かつ車両の重心を上昇させないようにするため、強化部材は軽量であるが強度を有する材料により形成することが好ましい。
【0081】
強化部材は、金属、合金(例えばボロン鋼)、例えば、スチール/チタン/アルミニウム/亜鉛/銅/スチール、および/またはケブラー/合成繊維/ハイパーストラクチャなどの複合材料、または合成ポリマー材料を用いた他の複合材料、または木質/ポリマー材料複合材料などの最新の軽量かつ高強度を有する材料を含む任意の適切な材料により形成される。炭素繊維は使用され得る。透明な最新の高強度プラスチックを用い、運転者の位置に対して、それらの材料が運転者の道路に関する知覚を光学的に歪曲せず、太陽光を不適切に反射させないように構造体を配列させてもよい。
【0082】
付加的な強化部材がルーフに近接して取り付けされた場合には、ルーフと接触して補強効果を増大させ、乗員用区画への物理的な侵入を低減させることが好ましい。これにより、乗員の頭部および車両の構造体に関しては衝撃を受ける危険性を減少させる。強化部材は例えば、パッド状の内装または他の弾性を有する表面などのエネルギー吸収材料のような内面に衝撃低減面を備えることができる。
【0083】
強化部材の構造要素は形状に丸みを備え、乗員に対して傷害を惹起させる可能性のある鋭角の端部が存在しないようにすることが適切である。
【0084】
本発明における強化部材は、多目的スポーツ車、多目的乗用車(MPV)、スポーツカー、セダン/ハッチバック車、ステーションワゴン、バス、トラック、ワンボックス車、または任意の他の種類の車両の他、航空機、宇宙船、列車、または船舶を含む任意の適切な種類の車両に付与できる。
【0085】
本発明は、エンジンを収容したり格納空間を付与したりするための前部構造体、および格納空間を付与したりエンジンを収容したりするための後部構造体を有する従来型の車両設計に用いることができる。しかし、本発明は車両の前部構造体が車両フレームの一部を有する従来型ではない車両の設計に適用することができる。例えば、本発明は機械類が前後方向に延びるフレームに搭載され、フレーム上には上部構造物が組み上げられた実験車両にも用いることができる。本発明は、きわめて大きなフロントガラスの後方に付加的な保護を付与するためのそのようなフレーム(車両の前部構造体)の前部から延びる強化部材を備えることが有利にできる。
【0086】
本発明の強化部材は比較的安価に提供される。強化部材は既存車両への付加的な挿入部材として提供される。これに代えて、簡易で効率的な方法により製造の際に車両構造体と一体化されてもよい。
【0087】
本発明の強化部材には、付加的な装置を適切に装着することができる。それらには、
1)フロントガラス上部または中央部に枢動点を有するセンターマウント式フロントワイパー、
2)フロントガラスデフロスター、
3)バックミラー用マウント、
4)小さなハイビームランプおよび/またはハザードランプ用マウント、
5)運転者用の計器または警告ランプ用のマウント。これらはダッシュボードよりも運転
者の視野に接近できる。
6)モニター画面(例えば、シーメンスVDO社などのリヤビューカメラ/死角監視カメラなど)、および
7)様々な機能のセンサ類
などが挙げられる。
【0088】
2.本発明の第3の態様
本発明の第3の態様における強化部材は、本発明の第1の態様における強化部材に関して前記した任意の特徴を有することができる。
【0089】
3.本発明の第2の態様−可動強化部材
上記のように、本発明の第2の態様は2つの位置をとる強化部材を備えた車両を提供する。強化部材は第2の位置においてフロントガラスに近接して配置され、衝撃に抗することが好ましい。
【0090】
車両は路上走行車両であり、乗員運搬用の路上走行車両であることが好ましい。
【0091】
強化部材を第1の位置から第2の位置に移動させる操作手段は、任意の適切な手段により起動される。例えば、操作手段は運転者または自動手段により起動される。自動手段はきわめて迅速な反応時間を備えるように構成させ得るので好ましい。例えば、車両が大型の哺乳動物または自転車などの物体に衝突したか否か、あるいは車両が転覆に繋がりかねない角度に回動し始めているか否かを判定するように、検知手段を備えることができる。これに代えて、物体センサが、車両の前部に配置されて物体を検知することができる。例えば、短距離レーダ検知器または熱検知器は、生体から発生される熱線を検知するように構成されている。これらのセンサを任意に組み合わせることができる。
【0092】
当業者は適切なセンサを入手でき、強化部材を制御された条件のもとで、第1の位置である格納位置から第2の位置に移動させるために、センサを正確な感度に設定することができる。適切なセンサは、ERTICOのプログラムと接続できるように設計されたものである。
【0093】
第1の位置は強化部材を車両の乗員用区画内、または乗員用区画外に格納する。同様に、強化部材は第2の位置において、強化部材を車両の乗員用区画内、または乗員用区画外に配置される。強化部材は第1の位置において乗員用区画内に取り付けされることが好ましい。これは、例えば物体がフロントガラスを打撃するような衝突の場合、強化部材が車両内に配置されていれば、強化部材は反応する時間を持つことができるので有利である。一方、強化部材が車両外にある場合には遅すぎるであろう。しかし、強化部材は運転者/同乗者の移動の領域外に配置されてもさらなる被害を生じることはない。
【0094】
本発明の第1の態様に関連して上記したように、フロントガラスとフロントガラスの後方に配置された強化部材とを組み合わせることにより、車両が歩行者に衝突する場合、歩行者は先ずフロントガラスと接触し、フロントガラスを後方に撓曲させ、歩行者に伝わる衝撃を低減する。フロントガラスおよび歩行者は強化部材により保持される。
【0095】
強化部材は第2の位置において、車両の任意の適切な構造体同士の間に延伸し、それにより強化部材は両端において支持され、強力な構造体を付与するように構成することが好ましい。構造部材としては車両の窓またはパネルを含むが、強化部材は比較的堅固であるフレーム部品同士の間に延伸することが特に好ましい。強化部材はシャーシとルーフとの間、またはリヤウィンドウの頂部構造体と車両の後部との間に延伸する第2の位置に移動するように装着される。これにより圧壊に抗する更なる耐性を付与する。強化部材は例えば車両のシートの後方などの第1の位置に格納される。受承構造体はルーフ内またはリヤ
ウィンドウの頂部構造体に沿って形成され、強化部材を受承する。
【0096】
例えば、強化部材は第1の位置において、運転者または同乗者のシートの後方または内部、および/あるいはシートのヘッドレストに取り付けられ、第2の位置において、ルーフ構造体に形成された強固な支持体に係止される。これは転覆の場合に、同乗者または運転者の頭部を直接的に保護することができる。
【0097】
強化部材を第1の位置から第2の位置に移動させる操作手段は任意の適切な手段でよく、例えば弾性手段を備えることができる。弾性手段は強化部材を第1の位置から第2の位置に付勢することができ、強化部材の移動は上記のように強化部材の移動手段が起動されるまで阻止されている。
【0098】
強化部材の第1の位置から第2の位置への移動のための操作手段は、強化部材をきわめて迅速に第1の位置から第2の位置に移動させることが好ましい。強化部材は1秒未満の時間で、より好ましくは0.5秒未満、さらに好ましくは0.1秒未満で第1の位置から第2の位置に移動されることが適切である。
【0099】
強化部材は第1の位置から第2の位置に、任意の適切な動作により移動されてよい。例えば、強化部材は強化部材の近傍または端部に位置する枢軸を中心にして枢動することができる。
【0100】
例えば少なくとも1つ、好ましくは2つ、さらに好ましくは3つまたは4つの強化部材はフロントガラスに近接して中央において枢動する。少なくとも1つの強化部材、および好ましくは少なくとも2つの強化部材はフロントガラスの夫々の外縁を中心にして枢動するように設置されている。枢軸はフロントガラスの下端または上端に配置される。
【0101】
枢動動作は、枢軸上で作用する駆動部または例えば強化部材の端部などの枢軸からずれて配置された強化部材上の位置に作用する結合部により、駆動される。
【0102】
強化部材はほぼ直線状に延伸することにより、所定の位置に移動される。例えば、強化部材は、第2の部品に対して入れ子式に可動である少なくとも1つの部品を備える入れ子式の構造体からなる。強化部材は第1の部品に沿って可動である第1の部品と第2の部品とからなり、第2の部品の移動は第1の部品および第2の部品のうちの一方に形成された摺動部材の、第1の部品および第2の部品のうちの他方に形成された軌道における移動により案内される。
【0103】
強化部材は、所定位置に摺動させることにより移動される。強化部材は、例えばフロントガラスの幅方向の外縁部から摺動する。強化部材はフロントガラスの頂端部から摺動したり、フロントガラスの底端部から摺動したりする。
【0104】
特許文献3に開示される延伸するロールバーは、本発明に適合して使用され得る。本発明に用いるため、ロールバーは延伸した位置において車両の構造体同士の間に延伸するように構成されねばならない。第1の部品および第2の部品は、第1の位置におけるフロントガラスの頂部に近接して取り付けられたり、第1の位置のフロントガラスの底部に近接して取り付けられたりする。ロールバーは第2の位置に到達するための任意の位置に移動するように構成される。ロールバーは、例えば各部品が第1の位置に配置された隅と対向する隅などの、フロントガラスの隅に移動するように構成されたりする。
【0105】
強化部材は、相互に連結されるとともに、任意の回動、延伸、または摺動の組み合わせにより移動される複数の強化部材ユニットからなることが好ましい。このように、強化機構はフロントガラスの領域の上方に延伸する複数の強化部材ユニットからなる。
【0106】
第2の位置において、強化部材を固定するために係合部材が設けられることが好ましい。
【0107】
例えば、強化部材は第1の位置から移動し、第2の位置において固定された係合部材を係合し、係合部材により所定の位置に保持されるように構成される。強化部材と一体である係止部材は、例えばトグルロックとして付与される。
【0108】
強化部材自体は第2の位置において、運転者の視界を殆ど妨害しないような形状であることが適切である。強化部材は第2の位置において、フロントガラスの下半分の少なくとも一部を介して視認することができるように構成されることが好ましい。これは、運転者が運転席に居て通常見ているフロントガラス部分であり、事故の際に、強化部材か延伸した場合ですら、この部分を介して視認可能であることは重要である。
【0109】
強化部材はフロントガラスから少なくとも2m離間した位置にある物体を運転者が両眼を用い、運転者の頭部を移動させる必要がなく視認することを妨げないような寸法とされていることが好ましい。強度を有するように充分に大きな強化部材を提供するという必要性と、視野に対する妨害を最小限にするという要望との間の調和が求められる。強化部材は運転者に視認される5cm未満の幅を有することが適切である。これは、複数の強化部材または強化部材ユニットが共に供されてフロントガラスに近接して保護部を形成する場合に達成される。
【0110】
好ましい実施態様において、強化部材は運転者が視認可能な材料の編物に装着されるように構成されている。同材料の編物は、強化部材が第2の位置に延伸したときに、フロントガラスの少なくとも一部を横断して存在する。この編物はきわめて危険であるガラス破片などの瓦礫を捕捉するために付与される。編物は、メッシュ、あるいは透明または半透明材料から形成され、それにより運転者の視界を過度に妨げない。編物は、例えば炭素繊維またはケブラーのメッシュなどの任意の適切な材料からなる。
【0111】
本発明の一実施態様において、強化部材はフロントガラスの前方に格納され、かつ運転者には殆ど視認されない第1の位置と、強化部材がフロントガラスの前方においてフロントガラスに近接して延伸した第2の位置との間を移動する。これは、強化部材が第1の位置から第2の位置に移動されることと同時にボンネットを上昇させるシステムと組み合わせて用いることができる。上昇されたボンネットは緩衝効果を呈する。ボンネットが上昇する距離はボンネットが運転者の視界を過度に妨害しないように制御される。ボンネットがこのように上昇する場合には、その前部に枢軸を設けて後部を上昇させ、風の抵抗がボンネットを引き裂かないようにすることが適切である。ボンネットは従来の方法により構成してもよいし、付加的な強化を行ってもよい。付加的な強度を得るためにリブを設けてもよい。これに代えて、ボンネットには穿孔を設けて部分的に透明とし、運転者の視野への影響をさらに低減することができる。ボンネットは一部または全体を透明材料により構成することができる。
【0112】
本発明は、車両のフレームの剛性を向上させることにより、車両の後部に延びるエアロフォイル用のマウントを付与することが可能であることを明確にした。エアロフォイルは車両のバンパー構造体と一体にすることができる。エアロフォイルは空気がエアロフォイルの頂面上と底面上を流動し、車両の後部にダウンフォースを発生させるように構成されることが好ましい。エアロフォイルはロードホールディング性を向上させる必要がある場合に価値がある。例えば、急カーブを切り抜ける場合や急ブレーキを踏む場合などに必要となる。
【0113】
しかし、このように構成されるエアロフォイルは空気抵抗を増大させることになる。従
って、エアロフォイルの頂面上の気流を選択的に閉鎖するために使用できる閉鎖手段を備えることがさらに好ましい。例えば、エアロフォイルの頂面上の気流を妨げない第1の位置と、エアロフォイルの頂面上の気流を閉鎖する第2の位置とを備えるシャッターを設けることができる。第2の位置におけるシャッターは、エアロフォイルの先頭縁部に接触し、空気抵抗を最小限にしつつ滑らかに移行することが適切である。シャッターは摺動または回動をすることができる。
【0114】
回避操作またはコーナリングの際の安定性を最適にするため、シャッターは車両の中央線に沿って分割され、分割された部分が中央線の左右で独立に操作されてもよい。分割エアロフォイルはコーナリングモードにより稼動されて一方が他方と異なるように操作されたり、ブレーキモードにより稼動されて双方が共に操作されたりしてもよい。このように、ダウンフォースはカーブにおいて車両内部に付与されたり、ブレーキ時には両側の荷重を均等にしたりすることができる。
【0115】
閉鎖手段は、運転者により操作される機構、および自動機構のうちのいずれか1つにより稼動される。自動機構は車の動き(急激な旋回、急ブレーキ)を検知する運動センサ、ブレーキペダルの使用やハンドルの急激な移動などを検知するセンサに応答することができる。
【0116】
この構造自体は新規性を有すると判断される。従って、本発明は車両の後部から延びる後部バンパーを備える車両をさらに提供する。後部バンパーは頂面と底面とを有するエアロフォイルのように構成されており、エアロフォイルは少なくとも1つの位置において、気流が頂面の上方を通過することができるように取り付けられている。
【0117】
本発明のこの態様において、シャッター手段は頂面上の気流を妨げるように付与されることが好ましい。
【0118】
本発明の第1、第2、および第3の態様は車両内において組み合わせることができる。車両は本発明の第1の態様または第2の態様として明記された強化部材、および本発明の第2の態様における構造体を備える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0119】
本発明に関して、付属の図面を参照しつつさらに説明する。
【0120】
図1,2には、強化部材の第1の実施態様、および本発明における強化部材が乗員用区画内に装着された車両を図示する。強化構造体1は本発明における強化部材2を備え、強化部材2はアセンブルされると、車両のフロントガラス3に近接して延びる。強化部材2は、相互にほぼ平行であるとともに、車両内であり、かつ車両のルーフ構造体5と接触する一対のリブ4を有する第2の強化部材と連結される。2つのリブ4は集合し、その位置において、使用時には車両のリヤウィンドウ7と接触する第3の強化部材6と接触する。従って、図2に示す車両はフロントガラス3、ルーフ構造体5、およびリヤウィンドウ7のための付加的な支持部材を備える。支持部材は構造体の外縁同士の間に配置され、外縁と内部において直接接触している。これにより充分な支持が得られる。強化部材2は、例えば図1の第1の部分2に図示する番号8などの軽減孔を有する複数の編物からなり、構造体を軽量化するとともに、運転者の視野への妨害を最小限にしている。しかし、ガーダー、ビーム、および他の強化部材の設計においては周知である的確な設計により、軽減孔は設計強度に対しては殆ど影響しない。
【0121】
図中、部分2,3,6は相互に連結されて図示されている。これらは適切な手段により相互に連結され得る。
【0122】
さらに、強化部材の各部2,3,6は使用に際してはダッシュボードに隣接した前部構造体部分、フロントガラスの頂部フレーム、リヤウィンドウの頂部フレーム、およびリヤ
ウィンドウに隣接した後部構造体部分を含む車両の構造体部分に堅固に固定される。これらは接着剤を用いて固定することができる。
【0123】
図3には、大型の物体と衝突したときに、強化部材1が付加的な保護を付与する方法を図示する。フロントガラスに衝撃するほどの高さまたは大きさを有する物体との衝突は、たとえ通常速度であっても、車両に対する甚大な損害と乗員に対する危険とをもたらす。例えば、ルーフ全体が車両から剥離され得る。この種の危険は、例えば図3の場合にはヘラジカであるが、大型の哺乳動物により、森林の多い地域または隔絶された地域においては生じ得る。衝突の際には動物はフロントガラスと接触するが、車両に対する損害および乗員に対する危険は、強化部材によりフロントガラスに付与される付加的な強度により最小限となる。
【0124】
図4〜7には強化部材1の様々な実施態様を図示する。図4は図1に示すものとほぼ同様な強化部材を示す。図5は同様な構造体ではあるが、Y字の上部は2つの分離アームよりも強固である。
【0125】
強化部材2の主要部分が充分な強度を有するのであれば、2つの分離アームを備える必要はなく、1つのリブ8が図6に示すように使用できる。これに代えて、一対のほぼ平行なリブ12が図11に示すように使用できる。同様な構造体は、第3の部分6に適用できる。
【0126】
これに代えて、図7に示すように、一対のほぼ平行なリブ9を用いることができる。同様の構造体を第3の部分に適用することができる。
【0127】
フロントガラスのフレーム全体は、任意の複合材料により一体として製造できる。その一体構造には任意の強化部材、ピラー、およびインストルメントパネルビーム(IPビーム)を含むことができる。これにより、インストルメントパネルおよびダッシュボードはパッド状をなす内装仕上げをすることにより、衝撃吸収に関する指示事項または仕上がり設計に関する嗜好に適合することができる。
【0128】
このような一体生産は複合材料の均衡のとれた混合を実行することにより可能と判断される。例えば、一体設計は強度を向上させ、さらにアセンブリ時間、材料消費、および物流を効率化するので、量産の観点からするとコスト効率を良好にする。
【0129】
図8には図1に示したものとほぼ類似の強化部材を図示するが、強化部材2,3,6は別体として形成され、その後相互に連結されることが異なる。これらは例えば、ボルトやジョイントなどの機械的な連結、接着剤、または溶接などの任意の適切な手段により連結される。
【0130】
図9〜14は、本発明の強化部材の様々な実施態様が多様な種類の車両に付与され得ることを図示する。
【0131】
図10〜14はまた、付加的な圧壊耐性のための車両のシャーシからルーフ構造体に延びる任意の付加的な強化部材を示す。
【0132】
図9は、フロントガラスに近接した強化部材10のみを備えるソフトトップ車両を図示する。図10〜14に示す全ての他の車両はハードトップを備え、前部構造体から後部構造体に連続的に延び、フロントガラス、ルーフ構造、およびリヤウィンドウの全てを支持する強化部材を備える。
【0133】
図15には、本発明における強化部材を装着した車両における運転者の視野を図示する。図示する車両は左ハンドル車である。視野は運転者の右側にきわめて広いことが分かる
。事実、運転者からの角度αは車両のAピラーにより制約され、角度βよりも小さい。
【0134】
図16において、強化部材12は透明の中実な長繊維材料からなる。その先端面13に沿ってフロントガラス15には直接当接してはおらず、頂部の部分14においてフロントガラス15と当接し、フロントガラスに直接的な支持を付与している。使用時には、通常の強力な接着剤を用いてフロントガラスに接着することが好ましい。下端面16はダッシュボードの下に位置する構造体に固定される。
【0135】
図17は強化部材17の別の実施態様を示す。強化部材17は後方に突出してダッシュボードに接する付加的なストラット18を備える。
【0136】
図18は同様な設計の強化部材19を示し、強化部材19は構造体の強度を殆ど低下させない位置に軽減孔20を備える。
【0137】
図19は異なる設計を示し、細い長繊維21がフロントガラスの頂部に配置されて支持を付与し、同時にほぼ垂直な部分22はルーフに向けて上方に延伸することにより、転覆によるルーフ圧壊に対して強力な付加的な支持を付与する。
【0138】
図17には中実構造体23に複数の軽減孔26を備えた実施態様を図示する。図18は軽減孔25が異なる形状である別の実施態様26を図示する。
【0139】
図22は、車両のフロントガラスに近接して使用するための強化部材27の特に好ましい実施態様の概略等角図である。
【0140】
図22はまた本発明の第3の態様における強化部材の実施態様である。
【0141】
この強化部材は第1の前後方向延伸部材28からなっており、この部材は装着される車両のフロントガラスの角度に対応する角度で後退している。第2の前後方向延伸ユニット29,30は、第1の部材28の角度と同一の角度またはほぼ同一の角度で後退している。ユニット29,30は底部のストラット31および頂部近傍のストラット32により第1の部材と連結される。ストラット31,32は非水平状態にあり、これにより視界妨害を最小限にする。前後方向進行部材28,29,30は、フロントガラスの上方(またはフロントガラスの頂部)の車両構造体、およびフロントガラスの下方の車両構造体と夫々係合するための一対のV字型装着部材33,34と連結する。V字型部材34の頂面には斜線が施され、車両の頂部構造体と接合するように接着剤が適用される領域を示す。これに代えて、ねじおよびボルトなどの機械的な連結が用いられる。同様の連結手段が下部V字型部品33に用いられる。
【0142】
部材28,29,30はこれらの間に65mmを超える空隙を有する。部材28,29,30は運転者の位置から見て、水平面において65mmよりも狭く、好ましくは55mm、または50mmよりも狭く、さらに好ましくは40mm未満である。ストラット31,32は最も狭い部分において65mmよりも狭く、50mmよりも狭いことが好ましい。
【0143】
格子状の設計は1枚のシート材料を最終的な形状に切断および折曲することができる。レーザー切断、ハイドロフォーム、溶接、または任意の製造技術を用いることができる。
【0144】
強度要件/原価要件に応じて任意の性質を有するハニカムサンドイッチ構造体複合材料が用いられる。(例えば、スチール/チタン/ケブラー/ケブラー/プレキシガラス/繊維強化ポリアミド66/ガラス繊維強化PP、または任意の新規合金などである。)
前後方向進行部材28,29,30およびストラット32,31の幅は、運転者の通常の両眼間の最小距離の50%を超えないので、約3cm以上である。全ての部材は傾斜しているので、水平方向に延びる物体を視認することへの妨害とはならない。路上の多くの物体は自転車の乗員、車両の側面、路上設備のように、一般には垂直に延びるか、例えば
多くの車両の上部構造のように水平に延びるかしている。図23は図22の構造体により運転者の視野への妨害が最小となることを示している。
【0145】
構造体27は、運転者から約1m離間した位置に配置されたフロントガラス36に近接して配置されている。運転者に見える前後方向延伸部材の構造体27の幅Wは3cm未満である。従って、運転者37のいずれの眼にも見えない斜線を施した領域は最小限とされている。運転者から見えない領域は該構造体から約1mの間に延びている。この距離は通常の車両のフロントバンパーまでの距離未満であるので、路上のいかなる物体も視認を妨害されないことは明瞭である。
【0146】
図23はまた、Aピラー38は図22に図示されたものと同様の構造体を用いて構成することにより、Aピラーによる視界妨害は同様に最小限となる。
【0147】
Aピラー38は第1の前後方向延伸部材からなり、同部材は装着される車両のフロントガラスの角度と対応する角度で後退することが最も好ましい。第1の部材28と同一の角度またはほぼ同一の角度で後退する1つまたは2つの第2の前後方向延伸ユニットを備えることができる。これらは底部および頂部近傍においてストラットにより第1の部材と連結される。ストラットは非水平状態にある。
【0148】
前後方向延伸部材同士の間には65mmを超える間隙を備える。前後方向延伸部材は、運転者の位置から見たときに水平面において65mmよりも狭く、好ましくは50mmより狭く、さらに好ましくは40mm未満である。
【0149】
強化部材27に関しては、Aピラーは1枚のシート材料を最終的な形状に切断および折曲することができる。レーザー切断、ハイドロフォーム、溶接、または任意の製造技術を用いることができる。
【0150】
Aピラーにより決まる運転者の全視野は番号39により示し、それは図22の設計を用いることにより実際には運転者が見える薄く斜線を施した中央領域40を含む。この中央領域は、従来型のAピラーを用いた場合には見えない。濃く斜線を施した領域は見えないがきわめて小さいことは明らかであり、かつAピラーの先に大きく延びてはいない。
【0151】
図23から分かるように、Aピラーおよび強化部材の直線状延伸構造体ユニットは、視野中に少なくとも2つが列をなすように位置調整され、それにより運転者の視野に対する妨害を最小限とする。その結果、構成は非対象である。
【0152】
強化部材27の構造体ユニットおよびAピラー38は、車両の中央線に対して対象に配列される。それによりそれらは運転者の視野に対する妨害を最小とする。
【0153】
外部から見るとフロントガラス36はドアのサイドウィンドウに近接するほど広い(2005年に製造された最も標準的な車よりも広い)。
【0154】
車両の右側に位置する部材38および車両の左側に位置する部材38は、フロントガラスに接着され、例えば歩行者との衝突の場合に、積層フロントガラス固有の衝撃吸収特性を活かすために、部材27はフロントガラスに対して一定の間隙を残している。
【0155】
Aピラー38において、1つまたは2つの前後方向延伸部材は、フロントガラスに接着され、他は衝撃吸収能力を付与するようにフロントガラスから離間される。
【0156】
図24は複数の強化部材を備える車両の側面概略図である。フロントガラスに近接した本発明における強化部材41、およびルーフに近接した付加的な強化部材42を示す。
【0157】
Aピラー43は図22に示すように内部に空隙を有して構成され、上記のように前方お
よび側方の視界を向上させる。Bピラー45、Cピラー44、および後部構造体46は従来の方法により形成される。しかし、全てのこれらの構造体は空隙を有する軽量材料からなることにより、図25に示すように四方にわたって視界を向上させることができる。ここではフロントガラスに近接した本発明における強化部材47、ルーフに近接した強化部材48、リヤウィンドウに近接した強化部材49、Aピラー、Bピラー、およびCピラーを形成する穿孔を設けられた構造体50,51,52が備えられている。これにより、空隙の多い「かご」を形成し、運転者はこれを介して四方の明瞭な視界を得る。
【0158】
図26A,26Bには、図22における強化部材、および図22に示す構造体と同一な原理に基づくAピラーを組み込んだ車両を図示する。
【0159】
図27,28はさらに後部装着エアロフォイル53を組み込んだ。図24,25に相当する車両の図である。
【0160】
後部装着エアロフォイル53はまたリヤバンパー構造体を形成する。リヤバンパー構造体用の通常の材料を使用できる。しかし、後部装着エアロフォイルの上面53Aは車両の表面53Bから離間するように構成されて気流の流路を形成する。この気流の流路は車両下方の気流が後部装着エアロフォイルの頂面の上方に屈曲するように構成される。流路は、車両の後部を路面に一層堅固に押圧するように、ダウンフォースが発生するように形成される。これは操縦性および制動性に有効である。
【0161】
破線53Cはシャッターの延伸する位置を示す。シャッターは例えば車両の後輪の後方などの格納時の第1の位置(図示せず)と、表面53A,53Bの間に形成される気流の流路用の開口に延びる第2の位置とを有する。このようにして、エアロフォイルの頂面上の気流が妨げられる。これにより、車両の後部への更なるダウンフォースが必要とされない場合に、エアロフォイルにより発生される抗力を最小にすることができる。
【0162】
シャッターは車両の中央線に沿って左右部分に分割されてもよい。第1のモードにおいて、制動性を向上させるように左右部分が共に操作される。第2の制御モードにおいて、左右部分は独立に稼動され、コーナリング時にカーブの内側にある車両の一方の荷重を高めるように操作し、ロードホールディング特性を向上させることができる。
【0163】
図29A〜29Cは、可動強化部材56を移動するための操作手段が起動するときの、本発明の第2の態様における強化部材が車両のルーフ54に近接する第1の格納位置から、車両のフロントガラス55の内部の位置に移動する方法を図示する。図31〜34にはさらに細部を示しており、強化部材56が、ルーフに近接した強化部材57に近接した格納位置から、フロントガラス55の後方に位置するとともにフロントガラスの下方の車両の前部構造体とフロントガラスの上方の車両の前部構造体との間の第2の位置まで、長い湾曲した経路を摺動する方法を示す。これにより、フロントガラスの後方に、堅固に固定された補強をすることができる。
【0164】
図29A,29Bはまた本発明の第1の態様における静的な強化部材を図示する。この場合には、中央のアルファピラーがフロントガラスの上部フレームから、フロントガラスの下部フレーム/ダッシュボード/インストルメントパネルピラーまでの全体には連結していない。強化部材は構造体をなすとともに屈曲による安全特性を備え、同時にバックミラーの通常の位置の前方または下方の一定領域において開口または部分的な開口を有する。
【0165】
図30は、内部に固定された係合構造体58が、第2の位置において、位置59において強化部材の底部と係合し、強力かつ弾性を有する構造体が提供される方法を図示する。例えば、強化部材は係合構造体に当接したり、係合構造体に係止されたりする。
【0166】
図35〜37は本発明の第2の態様の一実施態様を示す。ヘラジカ59などの大型物体が車両に搭載されたセンサ60により検知され、以下に説明する移動手段が起動される。検知は例えば短距離レーダまたは哺乳動物が放出する赤外線を特定することができるように構成された熱検知システムにより実施される。検知器は通常の体温である哺乳動物のものと比較して高温である例えば排気パイプから放出される赤外線を識別するように構成されている。
【0167】
物体59が検知されると、車のボンネット61は上昇し、偏向構造体を付与する。ボンネットは運転者の視線を妨害する程高くは上昇しない。フロントガラスは保護されていなければならない。この場合、フロントガラスは、格納位置においてボンネット61の下方に格納され、かつ物体が検知されると移動手段により図36に図示する位置に移動される強化部材62により保護される。
【0168】
図37に示す上面図は、強化部材62が車の進行方向に平行である格子状の前後方向部材、および車の進行方向と交差する水平部材63を備えることを示す。これにより、フロントガラス全体を衝撃から保護するためのフロントガラス幅一杯の格子が形成される。本発明の第1の態様におけるものであって車両の前部から車両の後部に延びる強化部材64は、強化部材62が係合することができる更なる支持部材を備える。
【0169】
図38A〜38Cには本発明の第2の態様における強化部材の別の実施態様を図示する。転覆は不可避である旨をセンサが検知した、図38Aの臨界位置からの転覆をする車両を図示する。この条件が検知されると、ばね(図示せず)である操作手段が起動され、複数の強化部材ユニット66からなる強化部材65を、車両のピラーおよびルーフに近接して部品が格納されている格納位置から移動させる。図38Bは強化部材ユニット66の移動の際の中間的な位置を示し、図38Cは最終位置にある強化部材を図示する。
【0170】
強化部材65が最終位置にあって所定位置に係止すると、係合部材は、強化部材65に係合するように構成された例えばルーフ構造体上の位置67、およびフロントガラスの前方の構造体の位置68に付与される。これは簡潔な構成であって、これにより、強化部材の一部が係合部材と物理的に係合し、係合部材に対する衝撃方向における強化部材の移動が簡易な防止具により防止される。
【0171】
図38A〜Cに図示する強化部材は入れ子状中央強化部材ユニット70が格納された固定構造体69を備える。これがフロントガラスの頂部にあるので、運転者の通常の視界を妨げることはない。
【0172】
図39は類似の設計であるが、中央の入れ子状部材ユニット70がない。
【0173】
図40A〜40C、41A〜41C、42A〜42C、43A〜43C、44A〜44C、45A〜45C、46A〜46C、47A〜47C、48A〜48C、49A〜49C、50A〜50C、51A〜51C、52A〜52C、53A〜53C、54A〜54Cには、本発明の第2の態様における強化部材の実施態様を図示する。夫々の場合において、Aと称する図は、センサが転覆は不可避であることを検知する角度に車両がおかれていることを示す。この段階において、モータ、ばね駆動、または任意の他の手段による操作手段(図示せず)が強化部材を移動させる。Cと称する図に示された位置において、強化部材は詳細には説明されてはいない係合部材に近接した位置に係止され、強固な支持を提供する。
【0174】
図40Cにおいて強化部材は堅固なバー71を備える。バー71はフロントガラスを覆う可撓性を有するシースルーメッシュ72を牽引し、運転者はメッシュを介して視認する
ことができるとともに、運転者を打撃する可能性がある割れたガラスおよび他の破片を捕捉する。
【0175】
図41Cにおいて強化部材は強化部材ユニットからなり、強化部材ユニットはフロントガラスの外縁部に近接した格納位置から、同ユニットがフロントガラスの後方において係止する、図41Cに示す第2の位置に移動する摺動ピボット74により連結された形状である。摺動ピボット74はトグルロックを形成し、強化部材73は図41Cに示す位置に堅固に保持される。
【0176】
図42Cにおいて強化部材は、フロントガラスに近接する格納位置から摺動し、フロントガラスの一部に延伸するとともに運転者が視認することができる格子を形成する強化部材ユニットからなる。同様に図43Cにおいて、強化部材は
所定位置に延伸、摺動、または枢動を行う複数のユニットからなる。他の実施態様についても同様な説明がなされる。
【0177】
図55〜57にはさらに別の種類の強化部材を図示する。
【0178】
図58は、複数の強化部材ユニット75が、フロントガラスの下端に近接する格納位置からフロントガラスに近接する第2の位置に向けて上方に枢動する方法を図示する。
【0179】
図59には、本発明の第2の態様における強化部材を詳細に図示する。強化部材は複数の強化部材ユニットからなる。入れ子状マウント77に取り付けられた2つの延伸強化部材ユニット76が備えられている。格納位置(図示せず)において、強化部材ユニット76はフロントガラスの下端を越えることはなく、かつ運転者には見えない。衝撃、接近する物体、または転覆条件が検知されると、強化部材が解放され、さらにばねの影響を受けてフロントガラスの隅に固定される第2の位置に移動される。強化部材は、フロントガラスが保持されているフレームの一部と係合し、延伸した強化部材ユニットの車両内への移動は防止される。
【0180】
さらに、3部品からなる入れ子状延伸ユニットからなる強化部材ユニット78が備えられている。格納位置(図示せず)において、強化部材はばね装着格納手段79に取り付けられている。衝撃、接近する物体、または転覆条件が検知されると、強化部材ユニット78は解放され、さらにばねの影響を受けて上方に延伸し構造体79に係合して保持する。それにより乗員用区画への逆移動が防止される。このようにして、強力な構造体がフロントガラス全体にわたって確立される。
【0181】
図60には2つの強化部材ユニット80からなる強化部材を示す。各強化部材ユニット80は中央部分のヒンジ83において蝶番状に移動する2つのアーム部分81,82からなるアームを備える。アーム82の自由端はフロントガラスの下端近傍の番号84において枢動する。他のアーム81の自由端は摺動部材86に取り付けされている。摺動部材はばね86により駆動される。ばねは底部88を中心にして枢動するばねハウジング87内に保持される。格納位置(図示せず)において、摺動部材85はユニット87の基底部近傍に保持され、それによりばね86は強く押圧されている。この位置において、アーム82はフロントガラスの下端に近接して固定されるが、運転者からは見えない。衝撃、接近する物体、または転覆条件が検知されると、アクチュエータは摺動部材85を解放する。それにより、摺動部材はユニット87に沿ってきわめて迅速に頂部に移動し、アーム82,81を上昇させる。それにより衝撃に抗するための緊張状態にある構造体がフロントガラスの近傍に形成される。第2の位置において、アーム82の頂部はアームを保持する係合手段89に固定される。それにより車両の前後方向の移動が抵抗を受ける。
【0182】
図61は本発明の第2の態様における強化部材の別の実施態様を図示する。この場合枢
動強化部材90は第1の位置から第2の位置に上方に移動される。第1の位置はフロントガラスの前方に近接し、かつフロントガラスの下方である。第2の位置は共通ばね91の形状をなす操作手段による補強位置である。
【0183】
図62は、枢動強化部材93の枢動位置92が、図61に示すよりも大きく離間している別の設計を図示する。
【0184】
図63〜74はレーシングカーに装着された本発明の第1の態様における強化部材の様々な実施態様である。いずれの場合にも、固定された強化部材は運転者の前方に取り付けられ、運転者の視野を殆ど妨害しないように構成されている。さらに、強化部材は車両の後部において、エンジン/クーラー用の取り入れ口への気流を殆ど妨害しない。
【0185】
図63,64,65は第1の実施態様の図である。強化部材の前部の幅狭い前後方向延伸編物は運転者を物体からの前部への衝撃から保護する。強化部材は幅方向部材95により後部において支持される。
【0186】
図66,67,68は、レーシングカーに適用される、本発明の第1の態様における強化部材の第2の実施態様の各方向から見た図である。強化部材は車両の前部から後部に延びる直立強化部材96からなる。軽減孔97が底部に形成されて重量を低減させ、同時に強いアーチをなす構造体が形成されている。
【0187】
図69,70は、図63〜65に示すものと類似の強化部材97のさらに別の実施態様を図示する。同様に、図71,72は図63〜65に示すものと類似の強化部材98の第4の実施態様を示す。
【0188】
図63〜68は、本発明の第1の態様によるとともに、これら図面に示すように静的に製造されたり、本発明の第2の態様におけるポップアップする動的なシステムとして製造されたりしてよい。それらはプリテンションを備えたり、他の手段により起動されたりする。それらは図29から図62に示すシステムと類似のITSマイクロチップセンサシステムにより起動されてもよい。
【0189】
図73,74は、2つの前方に取り付けられ、その後部において幅方向アーチ部材100に連結された強化部材ユニット99からなる強化部材を示す。
【0190】
上記の強化部材および強化構造体は、車両内の任意の適切な構成をなすように組み合わされてもよい。
【0191】
例えば、40A,40B,40Cに図示した動的にポップアップする保護カーテンは、図26A,26Bの強化部材と組み合わせて使用されてもよい。これらはフロントガラスの外部および/または内部のエアバッグを組み合わせて使用されてもよい。
【0192】
本発明に関しては、例示することにより説明してきた。種々の改変は上記した特徴と等価であるものにまで及ぶ本発明内においてなされ得る。本発明はまた、本明細書に説明されていたり、暗示されていたり、図面中に図示されていたり、暗示されていたりする個々の特徴、あるいはこのような特徴の組み合わせたもの、あるいはこれらの特徴や組み合わせを任意に一般化したりすることをも包含する。
【図面の簡単な説明】
【0193】
【図1】本発明の第1の態様における強化部材の等角概略図。
【図2】車両に装着された図1の強化部材の概略図。
【図3】本発明の強化部材が大型哺乳動物との衝突に対してフロントガラスを保護する方法を示す概略図。
【図4】本発明における強化部材の一実施態様を備えたフロントガラスまたはリヤウィンドウの概略図。
【図5】本発明における強化部材の一実施態様を備えたフロントガラスまたはリヤウィンドウの概略図。
【図6】本発明における強化部材の一実施態様を備えたフロントガラスまたはリヤウィンドウの概略図。
【図7】本発明における強化部材の一実施態様を備えたフロントガラスまたはリヤウィンドウの概略図。
【図8】3つの部品により構成される図1の強化部材の概略等角図。
【図9】本発明における強化部材、および任意の付加的な内部強化部材を備える車両の概略断面図。
【図10】本発明における強化部材、および任意の付加的な内部強化部材を備える車両の概略断面図。
【図11】本発明における強化部材、および任意の付加的な内部強化部材を備える車両の概略断面図。
【図12】本発明における強化部材、および任意の付加的な内部強化部材を備える車両の概略断面図。
【図13】本発明における強化部材、および任意の付加的な内部強化部材を備える車両の概略断面図。
【図14】本発明における強化部材、および任意の付加的な内部強化部材を備える車両の概略断面図。
【図15】運転者の視野に関する本発明の強化部材の効果を示す概略図。
【図16】フロントガラスに近接して配置される強化部材の一実施態様の概略図。
【図17】フロントガラスに近接して配置される強化部材の一実施態様の概略図。
【図18】フロントガラスに近接して配置される強化部材の一実施態様の概略図。
【図19】フロントガラスに近接して配置される強化部材の一実施態様の概略図。
【図20】フロントガラスに近接して配置される強化部材の一実施態様の概略図。
【図21】フロントガラスに近接して配置される強化部材の一実施態様の概略図。
【図22】本発明の第3の態様における、フロントガラスに近接して配置するための別の実施態様の強化部材を示す概略等角図。
【図23】図22の強化部材の、運転者の視野に対する影響を示す概略図。
【図24】本発明の強化部材を車両に組み込んだ実施態様を示す側面概略図。
【図25】本発明の強化部材を車両に組み込んだ実施態様を示す側面概略図。
【図26A】図22の強化部材と車両のピラーの新規な設計との関係を示す概略図。
【図26B】図22の強化部材と車両のピラーの新規な設計との関係を示す概略図。
【図27】バンパーを形成する後部装着エアロフォイルを組み込んだ車両の実施態様を示す側面概略図。
【図28】バンパーを形成する後部装着エアロフォイルを組み込んだ車両の実施態様を示す側面概略図。
【図29A】本発明の第2の態様における強化部材の、本発明における第1の位置から第2の位置への移動を示す概略図。
【図29B】本発明の第2の態様における強化部材の、本発明における第1の位置から第2の位置への移動を示す概略図。
【図29C】本発明の第2の態様における強化部材の、本発明における第1の位置から第2の位置への移動を示す概略図。
【図30】車両に組み込まれる別の強化部材を示す一部断面概略図。
【図31】本発明における強化部材の第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図32】本発明における強化部材の第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図33】本発明における強化部材の第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図34】本発明における強化部材の第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図35】車両のボンネットに組み込まれた強化部材の実施態様を示す概略図。
【図36】車両のボンネットに組み込まれた強化部材の実施態様を示す概略図。
【図37】車両のボンネットに組み込まれた強化部材の実施態様を示す上面概略図。
【図38A】本発明における強化部材の別の実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図38B】本発明における強化部材の別の実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図38C】本発明における強化部材の別の実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図39】強化部材の別の実施態様を示す概略図。
【図40A】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図40B】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図40C】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図41A】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図41B】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図41C】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図42A】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図42B】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図42C】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図43A】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図43B】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図43C】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図44A】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図44B】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図44C】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図45A】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図45B】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図45C】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図46A】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図46B】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図46C】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図47A】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図47B】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図47C】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図48A】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図48B】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図48C】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図49A】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図49B】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図49C】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図50A】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図50B】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図50C】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図51A】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図51B】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図51C】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図52A】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図52B】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図52C】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図53A】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図53B】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図53C】本発明における一実施態様の強化部材の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図54A】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図54B】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図54C】本発明における強化部材の一実施態様の、第1の位置から第2の位置への移動の工程を示す概略図。
【図55】本発明の第2の態様における強化部材の一実施態様を示す概略図。
【図56】本発明の第2の態様における強化部材の一実施態様を示す概略図。
【図57】本発明の第2の態様における強化部材の一実施態様を示す概略図。
【図58】本発明の第2の態様における強化部材の一実施態様を示す概略図。
【図59】本発明の第2の態様における強化部材の一実施態様を示す概略図。
【図60】本発明の第2の態様における強化部材の一実施態様を示す概略図。
【図61】本発明の第2の態様における枢動する強化部材の一実施態様を示す概略図。
【図62】本発明の第2の態様における枢動する強化部材の一実施態様を示す概略図。
【図63】レーシングカーに装着された本発明の第1の態様における強化部材の一実施態様を示す概略図。
【図64】レーシングカーに装着された本発明の第1の態様における強化部材の一実施態様を示す概略図。
【図65】レーシングカーに装着された本発明の第1の態様における強化部材の一実施態様を示す概略図。
【図66】レーシングカーに装着された本発明の第1の態様における強化部材の一実施態様を示す概略図。
【図67】レーシングカーに装着された本発明の第1の態様における強化部材の一実施態様を示す概略図。
【図68】レーシングカーに装着された本発明の第1の態様における強化部材の一実施態様を示す概略図。
【図69】レーシングカーに装着された本発明の第1の態様における強化部材の一実施態様を示す概略図。
【図70】レーシングカーに装着された本発明の第1の態様における強化部材の一実施態様を示す概略図。
【図71】レーシングカーに装着された本発明の第1の態様における強化部材の一実施態様を示す概略図。
【図72】レーシングカーに装着された本発明の第1の態様における強化部材の一実施態様を示す概略図。
【図73】レーシングカーに装着された本発明の第1の態様における強化部材の一実施態様を示す概略図。
【図74】レーシングカーに装着された本発明の第1の態様における強化部材の一実施態様を示す概略図。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の構造体に固定され、運転者の位置の前方に延伸する少なくとも1つの強化部材を備える路上走行車両であって、
運転者が両眼を用い、かつ運転者の頭部を移動する必要がなく視認するときに、強化部材は運転者がフロントガラスから少なくとも2m離間した位置にある物体を視認することを妨げない寸法である路上走行車両。
【請求項2】
強化部材は路上走行車両の乗員用区画内に取り付けられる請求項1に記載の路上走行車両。
【請求項3】
強化部材は車両の前部構造体と、フロントガラスの頂部フレームとの間に延伸する請求項1または2に記載の路上走行車両。
【請求項4】
強化部材は垂直面で切断された三角柱または面取りされた三角錐の形状をなす、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の路上走行車両。
【請求項5】
強化部材は、車両の前部構造体からフロントガラスの頂部フレームに延伸する少なくとも2つの第1の直線状延伸構造ユニットと、少なくとも2つの第1の直線状延伸構造ユニットに連結する第2の直線状延伸構造体ユニットとからなる、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の路上走行車両。
【請求項6】
第2の構造体ユニットは非水平状態にある請求項5に記載の路上走行車両。
【請求項7】
強化部材の第1の直線状延伸構造ユニットは、水平面において65mm以下、好ましくは50mm以下の幅を有する請求項5または6に記載の路上走行車両。
【請求項8】
強化部材は、フロントガラスと、同部材の全長にわたる接触をすることはない請求項1乃至7のいずれか一項に記載の路上走行車両。
【請求項9】
第1の格納位置において後退し、第2の延伸位置において車両の構造体同士の間に延伸する少なくとも1つの強化部材と、
強化部材を第1の位置から第2の位置に移動させるための操作手段とを備え、
強化部材が延伸位置においてフロントガラスに近接して延伸しても、強化部材は第2の位置におけるフロントガラスを介して運転者が視認することができるようにする車両。
【請求項10】
乗員輸送用の路上走行車両である請求項9に記載の車両。
【請求項11】
第1の位置および第2の位置に配置された強化部材は車両の乗員用区画内に装着される請求項9または10に記載の路上走行車両。
【請求項12】
操作手段は、車両が物体と衝突したのか、車両は危険な角度に回動し始めているのか、あるいは車両は車両の前方の物体とまさに衝突するところであるのかを検知するための検知手段を備える、請求項9乃至11のいずれか一項に記載の路上走行車両。
【請求項13】
第2の位置において、強化部材はフロントガラスに近接し、かつフロントガラスの後方に延伸する請求項9乃至12に記載の路上走行車両。
【請求項14】
操作手段は強化部材を第1の位置から第2の位置に、1秒未満の時間内に移動させる請求項9乃至13に記載の路上走行車両。
【請求項15】
強化部材は第1の位置から第2の位置に、枢動、摺動、直線方向の延伸のうちのいずれか1つにより移動される請求項9乃至14に記載の路上走行車両。
【請求項16】
車両の構造体に固定され、運転者の位置の前方に延伸する路上走行車両に用いる強化部材であって、
強化部材は使用の際には、運転者が両眼を用い、かつ運転者の頭部を移動する必要がなく視認するときに、運転者がフロントガラスから少なくとも2m離間した位置にある物体を視認することを妨げない寸法である部材。
【請求項17】
車両に取り付けられる強化構造体であって、
強化構造体は強化部材と、強化部材を第1の格納位置から第2の延伸位置に移動させる操作手段とを備え、
操作手段と強化部材とは車両の構造体に係合されるように構成されている構造体。
【請求項18】
車両の前部構造体から延伸する少なくとも2つの第1の直線状延伸構造ユニットと、少なくとも2つの第1の直線状延伸構造ユニットに連結する第2の直線状延伸構造体ユニットから形成されることと、
第2の構造体ユニットは非水平状態あることとを備える車両に取り付けられる強化部材であって、
強化部材の第1の直線状延伸構造ユニットは水平面において65mm以下、好ましくは60mm以下の幅を有する部材。
【請求項1】
車両の構造体に固定され、運転者の位置の前方に延伸する少なくとも1つの強化部材を備える路上走行車両であって、
運転者が両眼を用い、かつ運転者の頭部を移動する必要がなく視認するときに、強化部材は運転者がフロントガラスから少なくとも2m離間した位置にある物体を視認することを妨げない寸法である路上走行車両。
【請求項2】
強化部材は路上走行車両の乗員用区画内に取り付けられる請求項1に記載の路上走行車両。
【請求項3】
強化部材は車両の前部構造体と、フロントガラスの頂部フレームとの間に延伸する請求項1または2に記載の路上走行車両。
【請求項4】
強化部材は垂直面で切断された三角柱または面取りされた三角錐の形状をなす、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の路上走行車両。
【請求項5】
強化部材は、車両の前部構造体からフロントガラスの頂部フレームに延伸する少なくとも2つの第1の直線状延伸構造ユニットと、少なくとも2つの第1の直線状延伸構造ユニットに連結する第2の直線状延伸構造体ユニットとからなる、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の路上走行車両。
【請求項6】
第2の構造体ユニットは非水平状態にある請求項5に記載の路上走行車両。
【請求項7】
強化部材の第1の直線状延伸構造ユニットは、水平面において65mm以下、好ましくは50mm以下の幅を有する請求項5または6に記載の路上走行車両。
【請求項8】
強化部材は、フロントガラスと、同部材の全長にわたる接触をすることはない請求項1乃至7のいずれか一項に記載の路上走行車両。
【請求項9】
第1の格納位置において後退し、第2の延伸位置において車両の構造体同士の間に延伸する少なくとも1つの強化部材と、
強化部材を第1の位置から第2の位置に移動させるための操作手段とを備え、
強化部材が延伸位置においてフロントガラスに近接して延伸しても、強化部材は第2の位置におけるフロントガラスを介して運転者が視認することができるようにする車両。
【請求項10】
乗員輸送用の路上走行車両である請求項9に記載の車両。
【請求項11】
第1の位置および第2の位置に配置された強化部材は車両の乗員用区画内に装着される請求項9または10に記載の路上走行車両。
【請求項12】
操作手段は、車両が物体と衝突したのか、車両は危険な角度に回動し始めているのか、あるいは車両は車両の前方の物体とまさに衝突するところであるのかを検知するための検知手段を備える、請求項9乃至11のいずれか一項に記載の路上走行車両。
【請求項13】
第2の位置において、強化部材はフロントガラスに近接し、かつフロントガラスの後方に延伸する請求項9乃至12に記載の路上走行車両。
【請求項14】
操作手段は強化部材を第1の位置から第2の位置に、1秒未満の時間内に移動させる請求項9乃至13に記載の路上走行車両。
【請求項15】
強化部材は第1の位置から第2の位置に、枢動、摺動、直線方向の延伸のうちのいずれか1つにより移動される請求項9乃至14に記載の路上走行車両。
【請求項16】
車両の構造体に固定され、運転者の位置の前方に延伸する路上走行車両に用いる強化部材であって、
強化部材は使用の際には、運転者が両眼を用い、かつ運転者の頭部を移動する必要がなく視認するときに、運転者がフロントガラスから少なくとも2m離間した位置にある物体を視認することを妨げない寸法である部材。
【請求項17】
車両に取り付けられる強化構造体であって、
強化構造体は強化部材と、強化部材を第1の格納位置から第2の延伸位置に移動させる操作手段とを備え、
操作手段と強化部材とは車両の構造体に係合されるように構成されている構造体。
【請求項18】
車両の前部構造体から延伸する少なくとも2つの第1の直線状延伸構造ユニットと、少なくとも2つの第1の直線状延伸構造ユニットに連結する第2の直線状延伸構造体ユニットから形成されることと、
第2の構造体ユニットは非水平状態あることとを備える車両に取り付けられる強化部材であって、
強化部材の第1の直線状延伸構造ユニットは水平面において65mm以下、好ましくは60mm以下の幅を有する部材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26A】
【図26B】
【図27】
【図28】
【図29A】
【図29B】
【図29C】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38A】
【図38B】
【図38C】
【図39】
【図40A】
【図40B】
【図40C】
【図41A】
【図41B】
【図41C】
【図42A】
【図42B】
【図42C】
【図43A】
【図43B】
【図43C】
【図44A】
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【図46A】
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【図47A】
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【図48A】
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【図49A】
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【図51A】
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【図51C】
【図52A】
【図52B】
【図52C】
【図53A】
【図53B】
【図53C】
【図54A】
【図54B】
【図54C】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【図60】
【図61】
【図62】
【図63】
【図64】
【図65】
【図66】
【図67】
【図68】
【図69】
【図70】
【図71】
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【図73】
【図74】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
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【図26A】
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【図39】
【図40A】
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【図42A】
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【図44A】
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【図45A】
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【図46A】
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【図47A】
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【図48A】
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【図49A】
【図49B】
【図49C】
【図50A】
【図50B】
【図50C】
【図51A】
【図51B】
【図51C】
【図52A】
【図52B】
【図52C】
【図53A】
【図53B】
【図53C】
【図54A】
【図54B】
【図54C】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【図60】
【図61】
【図62】
【図63】
【図64】
【図65】
【図66】
【図67】
【図68】
【図69】
【図70】
【図71】
【図72】
【図73】
【図74】
【公表番号】特表2007−530362(P2007−530362A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−505669(P2007−505669)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【国際出願番号】PCT/IB2005/000985
【国際公開番号】WO2005/092671
【国際公開日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(506329591)
【氏名又は名称原語表記】NYGAARD,Jens Halstein Seeberg
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【国際出願番号】PCT/IB2005/000985
【国際公開番号】WO2005/092671
【国際公開日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(506329591)
【氏名又は名称原語表記】NYGAARD,Jens Halstein Seeberg
【Fターム(参考)】
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