説明

車両におけるスライドドア装置

【課題】側突時に、車体内部の車室における何らかの物体がスライドドアに衝突したとき、ドアが車体の外側方に向かって大きく移動することを効果的に防止して、車体の側壁のドア開口とドアとの間に大きな隙間が発生することを防止する。
【解決手段】センターレール14は、横断面視で側壁9の外面に沿って延びる内側板22と、内側板22の上、下端縁部から車体2の外側方に向かって延出する上、下板23,24と、上、下板23,24のいずれか一方の板の延出端縁部から内側板22に対面するよう延出する外側板25とを有する。上下方向に延び、上、下板23,24の各前端部を互いに結合する補強基板44と、一方の板の外面に沿うよう補強基板44から後方に向けて延出する第1補強板45と、外側板25の外面に沿うよう第1補強板45から延出する第2補強板46と、第2補強板46から延出して補強基板44に結合される第3補強板47とが設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の側壁の外面に取り付けられ、スライドドアを前後方向に案内するセンターレールを備え、このセンターレールを補強するようにした車両におけるスライドドア装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記車両におけるスライドドア装置には、従来、下記特許文献1に示されるものがある。この公報のものによれば、スライドドア装置は、車体の側壁に形成されたドア開口を開閉可能に閉じるスライドドアと、車体の前後方向に延びて上記側壁の外面に取り付けられるセンターレールと、上記レール内をその前端部から後方に向かって往、復移動するよう案内され、上記ドアと共に移動するローラとを備えている。
【0003】
また、上記レールは、その横断面視で上記側壁の外面に沿って延びる内側板と、この内側板の上、下端縁部から車体の外側方に向かって延出する上、下板と、これら上、下板のうちの上板の延出端縁部から上記内側板に対面するよう下方に向かって延出する外側板とを有し、上記レールの各板で囲まれた内部空間に上記ローラが嵌入されている。
【0004】
そして、上記ドア開口がドアにより閉じられている上記状態から、上記ドアに外力を与えることにより、上記レール内をその前端部から後方に向かって上記ローラを往移動させれば、これと共に上記ドアが後方移動して上記ドア開口が開けられる。また、この状態から、上記ドアに外力を与えることにより、上記レール内を上記ローラを復移動させれば、これと共に上記ドアが前方移動して上記ドア開口が元の状態のように閉じられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平6−74440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記ドア開口がドアで閉じられた車両の通常走行時に、側突の発生により、車体内部の車室における何らかの物体が上記ドアに衝突したとする。そして、このドアに与えられる衝撃力に因り、このドアが車体の外側方に向かい移動して上記ローラが上記レールの前端部における外側板に圧接したとする。この場合、このレールの外側板は上記ローラからの圧接力に対抗して、上記ドアが車体の外側方に移動することを防止する。
【0007】
しかし、上記したドアへの衝突の衝撃力が大きくて、上記レールの外側板に対しての上記ローラからの圧接力が大きい場合には、上記レールの外側板が車体の外側方に向かって屈曲変形したり、上記上、下板が互いに離反するよう変形したりするおそれがある。そして、このような変形がレールの前端部に生じると、このレールの前端部内から上記ローラが脱落しがちとなり、この場合、上記ドア開口とドアとの間に大きな隙間が発生するおそれを生じる。
【0008】
そこで、上記レールの板厚を大きくしてこのレールの強度を向上させ、これにより、前記した衝撃力によるレールの前端部の種々の変形を防止することが考えられる。しかし、このようにすると、このスライドドア装置の形成が煩雑かつ高価になると共に、スライドドア装置の質量が無用に大きくなるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、側突時に、車体内部の車室における何らかの物体がスライドドアに衝突したとき、その衝撃力に因り上記ドアが車体の外側方に向かって大きく移動することを効果的に防止して、車体の側壁のドア開口とこのドア開口を閉じるドアとの間に大きな隙間が発生することを防止することである。
【0010】
また、本発明の他の目的は、上記したように側突時にドア開口とドアとの間に大きな隙間が発生することを防止した場合でも、このスライドドア装置の形成が容易かつ安価にできると共に、スライドドア装置の質量が無用に大きくならないようにすることである。
【0011】
請求項1の発明は、車体2の側壁9に形成されたドア開口10を開閉可能に閉じるスライドドア11と、車体2の前後方向に延びて上記側壁9の外面に取り付けられるセンターレール14と、上記レール14内をその前端部から後方に向かって往、復移動A,Bするよう案内され、上記ドア11と共に移動するローラ17とを備え、上記レール14が、その横断面視(図4)で上記側壁9の外面に沿って延びる内側板22と、この内側板22の上、下端縁部から車体2の外側方に向かって延出する上、下板23,24と、これら上、下板23,24の少なくともいずれか一方の板の延出端縁部から上記内側板22に対面するよう延出する外側板25とを有した車両におけるスライドドア装置において、
上下方向に延び、上記上、下板23,24の各前端部を互いに結合する補強基板44と、上記一方の板の外面に沿うよう上記補強基板44から後方に向けて延出する第1補強板45と、上記外側板25の外面に沿うよう上記第1補強板45から延出する第2補強板46と、この第2補強板46から延出して上記補強基板44に結合される第3補強板47とを設けたことを特徴とする車両におけるスライドドア装置である。
【0012】
なお、この項において、上記各用語に付記した符号や図面番号は、本発明の技術的範囲を後述の「実施例」の項や図面の内容に限定解釈するものではない。
【発明の効果】
【0013】
本発明による効果は、次の如くである。
【0014】
請求項1の発明は、車体の側壁に形成されたドア開口を開閉可能に閉じるスライドドアと、車体の前後方向に延びて上記側壁の外面に取り付けられるセンターレールと、上記レール内をその前端部から後方に向かって往、復移動するよう案内され、上記ドアと共に移動するローラとを備え、上記レールが、その横断面視で上記側壁の外面に沿って延びる内側板と、この内側板の上、下端縁部から車体の外側方に向かって延出する上、下板と、これら上、下板の少なくともいずれか一方の板の延出端縁部から上記内側板に対面するよう延出する外側板とを有した車両におけるスライドドア装置において、
上下方向に延び、上記上、下板の各前端部を互いに結合する補強基板と、上記一方の板の外面に沿うよう上記補強基板から後方に向けて延出する第1補強板と、上記外側板の外面に沿うよう上記第1補強板から延出する第2補強板と、この第2補強板から延出して上記補強基板に結合される第3補強板とを設けており、次の効果が生じる。
【0015】
即ち、上記ドア開口がドアで閉じられた車両の通常走行時に、側突の発生により、車体内部の車室における乗員など何らかの物体が上記ドアに衝突した場合には、このドアに与えられる衝撃力により、このドアは車体の外側方に向かい移動して上記センターレール内のローラは上記センターレールの前端部における外側板に圧接する。
【0016】
ここで、上記発明によれば、上記外側板は、上記第1補強板とこの第1補強板から延出する第2補強板とにより補強され、かつ、上記センターレールの上、下板の各前端部に結合された上記補強基板に対し上記第2補強板が第3補強板を介し連結されることによっても補強される。
【0017】
このため、上記ドアへの衝突の衝撃力が大きくて、上記センターレールの外側板に対しての上記ローラからの圧接力が大きいとしても、上記外側板が車体の外側方に向かって屈曲変形することは、上記した補強基板と第1〜第3補強板とによる補強によって防止される。
【0018】
また、上記センターレールの外側板に対しての上記ローラからの圧接力が大きくて、上記上、下板が互いに離反しようとしても、これは、上記した上、下板の各前端部を結合する上記補強基板によって防止される。
【0019】
よって、上記したドアへの衝突の衝撃力が大きくて、上記センターレールの外側板に対しての上記ローラからの圧接力が大きいとしても、上記センターレールの前端部の各種変形は防止されて、このレール内から上記ローラが脱落しがちとなることは防止される。この結果、側突時の上記衝撃力により、上記ドアが車体の外側方に向かって大きく移動することは効果的に防止され、このため、上記側壁のドア開口とドアとの間に大きな隙間が発生することは防止される。
【0020】
また、上記したドア開口とドアとの間に大きな隙間が発生することの防止は、コンパクトで単純な形状をなす上記補強基板と第1〜第3補強板との組み合わせ体によって達成されることから、このスライドドア装置の形成は容易かつ安価にできると共に、スライドドア装置の質量が無用に大きくなることは防止される。
【0021】
更に、上記補強基板と第1〜第3補強板との組み合わせ体は、上記センターレールの前端部に対し、面方向が互いに相違する前記一方の板の外面と外側板の外面との少なくとも2つの面に当接した状態で結合されるため、この結合に先立ってなされる上記センターレールの前端部への上記補強材の位置決めは容易にできる。よって、その分、上記センターレールへの補強材の組み付け作業が容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図3の部分拡大詳細図である。
【図2】車両の全体側面図である。
【図3】図2のIII−III線矢視断面図である。
【図4】図1のIV−IV線矢視断面部分破断図である。
【図5】レールの前端部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の車両におけるスライドドア装置に関し、側突時に、車体内部の車室における何らかの物体がスライドドアに衝突したとき、その衝撃力に因り上記ドアが車体の外側方に向かって大きく移動することを効果的に防止して、車体の側壁のドア開口とこのドア開口を閉じるドアとの間に大きな隙間が発生することを防止する、という目的を実現するため、本発明を実施するための形態は、次の如くである。
【0024】
即ち、車両におけるスライドドア装置は、車体の側壁に形成されたドア開口を開閉可能に閉じるスライドドアと、車体の前後方向に延びて上記側壁の外面に取り付けられるセンターレールと、上記レール内をその前端部から後方に向かって往、復移動するよう案内され、上記ドアと共に移動するローラとを備える。上記レールは、その横断面視で上記側壁の外面に沿って延びる内側板と、この内側板の上、下端縁部から車体の外側方に向かって延出する上、下板と、これら上、下板の少なくともいずれか一方の板の延出端縁部から上記内側板に対面するよう延出する外側板とを有している。
【0025】
上下方向に延び、上記上、下板の各前端部を互いに結合する補強基板と、上記一方の板の外面に沿うよう上記補強基板から後方に向けて延出する第1補強板と、上記外側板の外面に沿うよう上記第1補強板から延出する第2補強板と、この第2補強板から延出して上記補強基板に結合される第3補強板とが設けられる。
【実施例】
【0026】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
【0027】
図において、符号1は、自動車で例示される車両であり、図中矢印Frは、この車両1の進行方向の前方を示している。
【0028】
上記車両1は、板金製の車体2と、この車体2に懸架されてこの車体2を走行面3上に支持する前、後車輪4とを備え、上記車体2内部が車室5とされている。
【0029】
上記車体2の側部にスライドドア装置8が設けられる。このスライドドア装置8は、上記車体2の側壁9に形成され、車室5の内外を連通させるドア開口10と、このドア開口10を車体2の外側方から開閉可能に閉じる板金製のドア11と、それぞれ車体2の前後方向に延びて上記側壁9の外面に取り付けられる板金製のアッパレール12、ロアレール13、およびセンターレール14と、上記各レール12〜14内をその各前端部から後方に向かって往、復移動A,Bするよう案内され、上記ドア11と共に移動するローラ15〜17とを備えている。
【0030】
より具体的には、上記アッパレール12は、上記ドア開口10の上部開口縁部である側壁9の外面に不図示の締結具により取り付けられている。また、上記ロアレール13は、上記ドア開口10の下部開口縁部である側壁9の外面に不図示の締結具により取り付けられている。また、上記センターレール14は、上記ドア開口10の後方における側壁9の上下方向の中途部の外面に前後複数の締結具21により取り付けられている。
【0031】
上記センターレール14は、その横断面視(図4)で上記側壁9の外面に沿って延び、この側壁9の外面に上記締結具21により取り付けられる内側板22と、この内側板22の上、下端縁部から車体2の外側方に向かって一体的に延出する上、下板23,24と、この上板23の延出端縁部から上記内側板22の上部に対面するよう一体的に下方に向かって延出する外側板25とを有している。上記各板22〜25で囲まれた内部空間26に上記ローラ17が嵌入され、上記下板24と外側板25との各延出端縁部の間に上記内部空間26を車体2の外側方に向かって開くレール開口27が形成されている。
【0032】
上記ローラ17は、次のようにして上記スライドドア11に支持されている。即ち、上記ドア11の車室5側の面に締結具30により固定ブラケット31が取り付けられ、この固定ブラケット31に対し軸心32が縦向きの枢支軸33により回動ブラケット34が上記軸心32回りに回動可能に枢支されている。上記回動ブラケット34の回動端部は、上記センターレール14のレール開口27を通し内部空間26に挿入され、上記回動ブラケット34の回動端部に上記ローラ17が支持されている。
【0033】
上記ローラ17は、上下方向に延びる軸心37回りに回転可能となるよう上記回動ブラケット34に支持される前後一対の横向きローラ38,38と、車体2の幅方向に延びる軸心39回りに回転可能となるよう上記回動ブラケット34に支持され、上記前後横向きローラ38,38の間に配置される縦向きローラ40とを有している。上記各横向きローラ38は、上記センターレール14の内、外側板22,25の間に嵌入されて、これら22,25の各内面を転動可能とされている。また、上記縦向きローラ40は、上記センターレール14の下板24の内面(上面)を転動可能とされている。
【0034】
上記センターレール14の前端部を、その強度と剛性とを向上させるために補強する板金製の補強材43が設けられている。この補強材43は、上下方向に延び、上記上、下板23,24の各前端部に架設される補強基板44と、上記上板23の外面(上面)に沿うよう上記補強基板44の上端縁部から後方に向けて一体的に延出する第1補強板45と、上記外側板25の外面に沿うよう上記第1補強板45の外側端縁部から一体的に下方に向かって延出する第2補強板46と、この第2補強板46の前端縁部から一体的に延出してその延出端部側が上記補強基板44の上下方向の中途部に面接触させられる第3補強板47とを備えている。
【0035】
上記補強基板44の下端部は後方に向けて屈曲され、上記下板24の前端部の外面(下面)にスポット溶接S1により結合されている。また、上記第1補強板45は上記上板23の外面(上面)に面接触させられて前、後スポット溶接S2により結合されている。これにより、上記上、下板23,24の各前端部は上記補強基板44により互いに結合されている。ここで、上記上板23と第1補強板45との結合部は上記ローラ17が転動する部分ではないため、上記のようにスポット溶接S2により結合しても、上記ローラ17の転動に支障はない。なお、上記補強基板44の上端部を、上下方向で上記スポット溶接S1と対応する位置で上記上板23の外面(上面)にスポット溶接してもよい。
【0036】
また、上記第2補強板46は、上記外側板25の外面に面接触させられている。ここで、この外側板25の内面は上記ローラ17の横向きローラ38が転動する面であって、平滑であることが求められる。また、上記第2補強板46の外面は車体2の外側方に向かって露出するため、外観上の見栄えが求められる。そこで、上記外側板25に対し上記第2補強板46を溶接せず、溶接痕の発生が防止されている。一方、上記第3補強板47の延出端部側は、上記補強基板44の上下方向の中途部にスポット溶接S3により結合されている。
【0037】
なお、以上は図示の例によるが、上記センターレール14は、上記外側板25に代え、もしくは、これと共に上記下板24の延出端縁部から上記内側板22の下部に対面するよう上方に向けて一体的に延出する他の外側板を有していてもよい。この場合、上記構成と同様に、上記下板24の外面(下面)に沿うよう第1補強板45の相当板を設け、他の外側板の外面に沿うよう第2補強板46の相当板を設けてもよい。
【0038】
また、上記センターレール14の上板23に対する第1補強板45のスポット溶接S2による結合に代え、もしくは、これと共に、外側板25に第2補強板46をスポット溶接により結合してもよい。
【0039】
また、上記センターレール14の前端部の上記上、下板23,24の各端面に対し上記補強材43の補強基板44を当接させてもよい。
【0040】
そして、上記スライドドア装置8において、上記ドア開口10がドア11により閉じられている各図中実線図示の状態から、上記ドア11に外力を与えることにより、上記各レール12〜14内をその前端部から後方に向かって上記各ローラ15〜17を往移動Aさせれば、これと共に上記ドア11が後方移動して上記ドア開口10が開けられる(図2、図3中、各一点鎖線)。また、この状態から、上記ドア11に外力を与えることにより、上記各レール12〜14内を上記各ローラ15〜17を復移動Bさせれば、これと共に上記ドア11が前方移動して上記ドア開口10が元の状態のように閉じられる(各図中実線)。
【0041】
上記ドア11と各ローラ15〜17とが復移動Bして上記ドア開口10が全閉状に閉じられるときの上記センターレール14におけるローラ17の縦向きローラ40は、上記レール14の下板24と補強材43の補強基板44の下端部との前記スポット溶接S1による結合部の後方に離れて位置させられる。これにより、上記縦向きローラ40が上記スポット溶接S1による溶接痕上に乗り上げることは防止される。
【0042】
なお、上記したように、ドア11と各ローラ15〜17とが復移動Bして上記ドア開口10が全閉状に閉じられるとき、上記センターレール14におけるローラ17の前側の横向きローラ38が上記補強材43の補強基板44に当接して、それ以上の上記ドア11と各ローラ15〜17との復移動Bが阻止されるようにしてもよい。つまり、上記補強材43の補強基板44を上記ドア11と各ローラ15〜17との復移動B時におけるストッパに利用してもよい。また、この場合、上記補強材43の補強基板44の後面に上記横向きローラ38が当接するストッパゴムを取り付けてもよい。
【0043】
そして、このように補強材43の補強基板44を上記ドア11等の復移動B時におけるストッパとして利用する場合、前記したように、補強基板44は、上記補強材43の他の構成である第1〜第3補強板45〜47のうち、特に第3補強板47により補強されていて、強度と剛性とが向上させられているため、上記したドア11等の復移動B時におけるストッパ機能は、より確実に達成される。
【0044】
上記構成によれば、上下方向に延び、上記上、下板23,24の各前端部を互いに結合する補強基板44と、上記一方の板の外面に沿うよう上記補強基板44から後方に向けて延出する第1補強板45と、上記外側板25の外面に沿うよう上記第1補強板45から延出する第2補強板46と、この第2補強板46から延出して上記補強基板44に結合される第3補強板47とを設けており、次の効果が生じる。
【0045】
即ち、上記ドア開口10がドア11で閉じられた車両1の通常走行時に、側突の発生により、車体2内部の車室5における乗員など何らかの物体が上記ドア11に衝突した場合には、このドア11に与えられる衝撃力Fにより、このドア11は車体2の外側方に向かい移動して、上記センターレール14内のローラ17の各横向きローラ38は上記センターレール14の前端部における外側板25に圧接する。
【0046】
ここで、上記構成によれば、上記第1補強板45とこの第1補強板45の外側端縁部から下方に向かって延出する第2補強板46とによる組み合わせ体は横断面が倒立L字形状をなして強度と剛性とが大きいものである。そして、上記外側板25は、上記第1、第2補強板45,46の組み合わせ体により補強され、かつ、上記センターレール14の上、下板23,24の各前端部に結合された上記補強基板44に対し上記第2補強板46は第3補強板47を介し連結されることによっても補強される。
【0047】
このため、上記ドア11への衝突の衝撃力Fが大きくて、上記センターレール14の外側板25に対しての上記ローラ17からの圧接力が大きいとしても、上記外側板25が車体2の外側方に向かって屈曲変形することは、上記した補強基板44と第1〜第3補強板45〜47とによる補強によって防止される。
【0048】
また、上記センターレール14の外側板25に対しての上記ローラ17からの圧接力が大きくて、上記上、下板23,24が互いに離反して、上記レール開口27が拡大しようとしても、これは、上記した上、下板23,24の各前端部を結合する上記補強基板44によって防止される。
【0049】
よって、上記したドア11への衝突の衝撃力Fが大きくて、上記センターレール14の外側板25に対しての上記ローラ17からの圧接力が大きいとしても、上記センターレール14の前端部の各種変形は防止されて、このレール14内から上記ローラ17が脱落しがちとなることは防止される。この結果、側突時の上記衝撃力Fにより、上記ドア11が車体2の外側方に向かって大きく移動することは効果的に防止され、このため、上記側壁9のドア開口10とドア11との間に大きな隙間が発生することは防止される。
【0050】
また、上記したドア開口10とドア11との間に大きな隙間が発生することの防止は、一枚の板材で形成され、かつ、コンパクトで単純な形状をなす上記補強基板44と第1〜第3補強板45〜47との組み合わせ体である補強材43によって達成されることから、このスライドドア装置8の形成は容易かつ安価にできると共に、スライドドア装置8の質量が無用に大きくなることは防止される。
【0051】
更に、上記補強基板44と第1〜第3補強板45〜47との組み合わせ体である補強材43は、上記センターレール14の前端部に対し、面方向が互いに相違する少なくとも前記上板23の外面と外側板25の外面との2つの面に当接した状態で結合されるため、この結合に先立ってなされる上記センターレール14の前端部への上記補強材43の位置決めは容易にできる。よって、その分、上記センターレール14への補強材43の組み付け作業が容易にできる。
【符号の説明】
【0052】
1 車両
2 車体
5 車室
8 スライドドア装置
9 側壁
10 ドア開口
11 (スライド)ドア
14 (センター)レール
17 ローラ
21 締結具
22 内側板
23 上板
24 下板
25 外側板
26 内部空間
27 レール開口
43 補強材
44 補強基板
45 第1補強板
46 第2補強板
47 第3補強板
A 往移動
B 復移動
F 衝撃力
S1〜S3 スポット溶接

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の側壁に形成されたドア開口を開閉可能に閉じるスライドドアと、車体の前後方向に延びて上記側壁の外面に取り付けられるセンターレールと、上記レール内をその前端部から後方に向かって往、復移動するよう案内され、上記ドアと共に移動するローラとを備え、上記レールが、その横断面視で上記側壁の外面に沿って延びる内側板と、この内側板の上、下端縁部から車体の外側方に向かって延出する上、下板と、これら上、下板の少なくともいずれか一方の板の延出端縁部から上記内側板に対面するよう延出する外側板とを有した車両におけるスライドドア装置において、
上下方向に延び、上記上、下板の各前端部を互いに結合する補強基板と、上記一方の板の外面に沿うよう上記補強基板から後方に向けて延出する第1補強板と、上記外側板の外面に沿うよう上記第1補強板から延出する第2補強板と、この第2補強板から延出して上記補強基板に結合される第3補強板とを設けたことを特徴とする車両におけるスライドドア装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−95241(P2013−95241A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239091(P2011−239091)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)