説明

車両における車体構造

【課題】車両の走行時に、走行路面からの衝撃力により車体が振動する場合でも、ステアリングハンドルにつき円滑な操作が確保されるようにする。
【解決手段】車両における車体構造は、左右フロントピラーに両端支持されるピラー補強メンバ25と、フロアパネルにおける車体2の幅方向の中央部に、上方に向かって膨出すると共に前後方向に延びるよう形成されるトンネル30と、ピラー補強メンバ25に支持されるステアリングハンドル45とを備える。車両1の走行時、トンネル30の長手方向の各部分に生じる上下振動Vpの振幅Aのうち、ピラー補強メンバ25の下方におけるトンネル30の長手方向の中途部分30aの振幅Aがほぼ最大振幅Amaxとなるよう、ピラー補強メンバ25よりも後方のトンネル30の後部側30bの剛性を、ピラー補強メンバ25よりも前方のトンネル30の前部側30cの剛性よりも大きくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロアパネルに形成されたトンネルにおいて車両の走行時に生じる振動を構造的に制御するようにした車両における車体構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記車両における車体構造には、従来、下記特許文献1に示されるものがある。この公報のものによれば、車両は、車体の幅方向に延びて車室の前端部に配置され、その長手方向の各端部が左右フロントピラーに支持されるピラー補強メンバと、車体の幅方向、かつ、上下方向に延びて車室の前面を形成するダッシュパネルと、このダッシュパネルの下端縁部から車体の後方に延びて車室の下面を形成するフロアパネルと、このフロアパネルにおける車体の幅方向の中央部に、上方に向かって膨出するよう形成され、かつ、車体の前後方向に延びるトンネルと、上記ピラー補強メンバに支持されるステアリングハンドルとを備えている。また、通常、上記ピラー補強メンバの前方で、車体の幅方向に延び、その長手方向の各端部が上記左右フロントピラーに支持されるフロントカウルが設けられ、このフロントカウルに上記ダッシュパネルの上端縁部が結合される。
【0003】
また、上記車両は、上記ダッシュパネルを補強する補強材と、上記ピラー補強メンバとトンネルとを互いに結合させるブレース材とを、上記車室に備えている。そして、上記補強材とブレース材とによって、上記ピラー補強メンバの周りに所定の剛性が与えられている。
【0004】
車両の走行時には、通常、走行路面からの衝撃力により上記ピラー補強メンバを含めて車体が全体的に振動しようとする。このため、上記ピラー補強メンバに支持されているステアリングハンドルも振動しがちになることから、この振動により、上記ステアリングハンドルについての円滑な操向操作が阻害されるおそれを生じる。
【0005】
しかし、前記した従来の技術では、補強材やブレース材により上記ピラー補強メンバの周りに所定の剛性が与えられるため、車両の走行時に上記ピラー補強メンバが振動することは抑制され、これにより、上記ステアリングハンドルが振動することも抑制されて、このステアリングハンドルにつき円滑な操向操作が得られることと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−145124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記したように、ステアリングハンドルについて円滑な操向操作を得るために、上記した補強材やブレース材を設けた場合には、上記車両における車体の部品点数が多くなって、その構成が複雑になると共に、車室が無用に狭められるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、車両の走行時に、走行路面からの衝撃力により車体が振動する場合でも、ステアリングハンドルが振動することを抑制してこのステアリングハンドルについての円滑な操作が確保されるようにし、かつ、これが簡単な構成によって、かつ、車室を無用に狭めないで達成できるようにすることである。
【0009】
請求項1の発明は、それぞれ車体2の幅方向に延びると共に車体2の前後方向に離れて車室4の前端部に配置され、その長手方向の各端部が左右フロントピラー17にそれぞれ支持されるフロントカウル24およびピラー補強メンバ25と、車体2の幅方向に延びると共に、上記フロントカウル24から下方に延びて車室4の前面を形成するダッシュパネル28と、このダッシュパネル28の下端縁部から車体2の後方に延びて車室4の下面を形成するフロアパネル29と、このフロアパネル29における車体2の幅方向の中央部に、上方に向かって膨出すると共に前後方向に延びるよう形成されるトンネル30と、上記ピラー補強メンバ25に支持されるステアリングハンドル45とを備えた車両において、
車両1の走行時、上記トンネル30の長手方向の各部分に生じる上下振動Vpの振幅Aのうち、上記ピラー補強メンバ25の下方における上記トンネル30の長手方向の中途部分30aの振幅Aがほぼ最大振幅Amaxとなるよう、上記ピラー補強メンバ25よりも後方の上記トンネル30の後部側30bの剛性を、上記ピラー補強メンバ25よりも前方の上記トンネル30の前部側30cの剛性よりも大きくしたことを特徴とする車両における車体構造である。
【0010】
なお、この項において、上記各用語に付記した符号や図面番号は、本発明の技術的範囲を後述の「実施例」の項や図面の内容に限定解釈するものではない。
【発明の効果】
【0011】
本発明による効果は、次の如くである。
【0012】
請求項1の発明は、それぞれ車体の幅方向に延びると共に車体の前後方向に離れて車室の前端部に配置され、その長手方向の各端部が左右フロントピラーにそれぞれ支持されるフロントカウルおよびピラー補強メンバと、車体の幅方向に延びると共に、上記フロントカウルから下方に延びて車室の前面を形成するダッシュパネルと、このダッシュパネルの下端縁部から車体の後方に延びて車室の下面を形成するフロアパネルと、このフロアパネルにおける車体の幅方向の中央部に、上方に向かって膨出すると共に前後方向に延びるよう形成されるトンネルと、上記ピラー補強メンバに支持されるステアリングハンドルとを備えた車両において、
車両の走行時、上記トンネルの長手方向の各部分に生じる上下振動の振幅のうち、上記ピラー補強メンバの下方における上記トンネルの長手方向の中途部分の振幅がほぼ最大振幅となるよう、上記ピラー補強メンバよりも後方の上記トンネルの後部側の剛性を、上記ピラー補強メンバよりも前方の上記トンネルの前部側の剛性よりも大きくしている。
【0013】
ここで、上記したように、車両の走行時には、トンネルの中途部分の振幅がほぼ最大振幅となるが、上記トンネルの中途部分は、上記ピラー補強メンバの下方に位置した部分であって、通常走行時では、車室における乗員の前方に位置する部分である。このため、上記トンネルの中途部分における大きい振幅の上下振動が上記各乗員に直接影響することは防止されて、車両への乗り心地は良好に保たれる。
【0014】
一方、上記トンネルはフロアパネルに形成されたものであって、このフロアパネルには上記ダッシュパネルが連設されている。このため、上記トンネルの中途部分の大きい振幅の上下振動に連動して、上記ダッシュパネルも大きく振動しがちとなり、この振動は、このダッシュパネルから、順次、フロントカウル、フロントピラー、ピラー補強メンバ、およびステアリングハンドルに伝達されるおそれがある。
【0015】
しかし、上記ダッシュパネルは、前記したように車体の幅方向に延びると共に、上記フロントカウルから下方に延びたものであり、その板厚方向の剛性は比較的低いものである。このため、上記ダッシュパネルは、上記トンネルの中途部分の上下振動に連動して、その板厚方向である車体の前後方向に向かって円滑に前後振動しがちとなる。
【0016】
よって、上記トンネルの中途部分の大きい振幅の上下振動が上記フロントカウルにまで達することは、上記ダッシュパネルの前後振動により効果的に吸収される。このため、上記トンネルの中途部分に連動して上記ステアリングハンドルが振動することは抑制され、このステアリングハンドルについての円滑な操向操作が確保される。
【0017】
そして、上記したステアリングハンドルについての円滑な操向操作の確保は、前記従来の技術で示したようなダッシュパネルを補強するための補強材や、ピラー補強メンバとトンネルの前部側とを互いに結合させるためのブレース材を設けないでも達成できる。よって、その分、上記した円滑な操向操作の確保は簡単な構成で、かつ、車室を無用に狭めることなく達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】車両の側面部分断面図である。
【図2】車両の平面部分断面図である。
【図3】図2のIII−III線矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の車両における車体構造に関し、車両の走行時に、走行路面からの衝撃力により車体が振動する場合でも、ステアリングハンドルが振動することを抑制してこのステアリングハンドルについての円滑な操作が確保されるようにし、かつ、これが簡単な構成によって、かつ、車室を無用に狭めないで達成できるようにする、という目的を実現するため、本発明を実施するための形態は、次の如くである。
【0020】
即ち、車両は、それぞれ車体の幅方向に延びると共に車体の前後方向に離れて車室の前端部に配置され、その長手方向の各端部が左右フロントピラーにそれぞれ支持されるフロントカウルおよびピラー補強メンバと、車体の幅方向に延びると共に、上記フロントカウルから下方に延びて車室の前面を形成するダッシュパネルと、このダッシュパネルの下端縁部から車体の後方に延びて車室の下面を形成するフロアパネルと、このフロアパネルにおける車体の幅方向の中央部に、上方に向かって膨出すると共に前後方向に延びるよう形成されるトンネルと、上記ピラー補強メンバに支持されるステアリングハンドルとを備えている。
【0021】
車両の走行時、上記トンネルの長手方向の各部分に生じる上下振動の振幅のうち、上記ピラー補強メンバの下方における上記トンネルの長手方向の中途部分の振幅がほぼ最大振幅となるよう、上記ピラー補強メンバよりも後方の上記トンネルの後部側の剛性を、上記ピラー補強メンバよりも前方の上記トンネルの前部側の剛性よりも大きくしている。
【実施例】
【0022】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
【0023】
図において、符号1は、自動車で例示される車両であり、矢印Frは、この車両1の進行方向の前方を示している。
【0024】
上記車両1の車体2は、その下部を構成する車体フレーム3と、この車体フレーム3上に支持され、内部が車室4とされる車体本体5と、上記車体フレーム3の前部に不図示の懸架装置により操向可能に支持される左右一対の前車輪6と、上記車体フレーム3の後部に懸架装置7により支持される左右一対の後車輪8とを備えている。
【0025】
前記車体フレーム3は、それぞれ車体2の前後方向に延びる左右一対のサイドメンバ12,12と、これら両サイドメンバ12,12を互いに結合する前、後複数のクロスメンバ13とを備えている。
【0026】
前記車体本体5は、上記各サイドメンバ12の外側方に位置して車体2の前後方向に延び、それぞれ上記サイドメンバ12に支持される左右一対のサイドシル16,16と、これら各サイドシル16からそれぞれ上方に突出するフロント、センタ、リヤピラー17〜19と、これら各ピラー17〜19の上端部に支持されて車室4の上面を形成するルーフ20とを備えている。車体2の各側部において、各ピラー17〜19の間の空間がサイドドア用のドア開口21とされている。
【0027】
また、上記車体本体5は、それぞれ車体2の幅方向に延びると共に車体2の前後方向に少し離れて車室4の前端部に配置されるフロントカウル24およびピラー補強メンバ25を備え、これらフロントカウル24およびピラー補強メンバ25の長手方向の各端部は、上記左右フロントピラー17,17にそれぞれ強固に支持されている。
【0028】
上記フロントカウル24は板金製で、その長手方向の各部断面がU字形状をなして十分の強度と剛性とを有し、車体2の前部の骨格部材を構成している。上記ピラー補強メンバ25は、ピラーツーピラーチューブといわれるもので、その長手方向の各部断面が円形のパイプ形状をなして十分の強度と剛性とを有し、上記各フロントピラー17を補強している。
【0029】
また、車体本体5は、車体2の幅方向に延びると共に、上下方向に延び、全体として平坦な形状とされて車室4の前面を形成する板金製のダッシュパネル28と、このダッシュパネル28の下端縁部から車体2の後方に延びて車室4の下面を形成する板金製のフロアパネル29と、このフロアパネル29における車体2の幅方向の中央部に、上方に向かって膨出すると共に車体2の前後方向に直線的に延びるよう形成されるフロアトンネル30と、車体2の幅方向に延び、上記トンネル30と各サイドシル16とのそれぞれ長手方向の中途部同士を結合する左右一対の補強クロスメンバ31,31とを備えている。
【0030】
上記ダッシュパネル28は、その左右各外側縁部が上記各フロントピラー17に結合され、上端縁部は上記フロントカウル24に結合され、下端縁部は上記フロアパネル29の前端縁部に結合されている。
【0031】
上記フロアパネル29は、上記サイドメンバ12およびクロスメンバ13上面に結合されて支持され、かつ、左右各外側縁部は上記各サイドシル16に結合されている。また、上記フロアパネル29は、その前端部を構成して後下がり状の傾斜パネル34と、上記フロアパネル29の前部を構成し、上記傾斜パネル34の後端縁部から後方に向かってほぼ水平に延びる前部パネル35と、この前部パネル35の後端縁部から屈曲して一段高く位置した後、後方に延びる後部パネル36とを備えている。
【0032】
前記トンネル30は、車体2の前後方向で、上記フロアパネル29の傾斜パネル34と前部パネル35とのほぼ全体にわたり形成されている。上記トンネル30は、その長手方向の各部断面が倒立U字形状とされ、左右一対の側部パネル38,38と、これら両側部パネル38,38の上端縁部同士を一体的に結合する天井パネル39とを備えている。
【0033】
上記車室4において、上記フロアパネル29の前部パネル35における車体2の前後方向の中途部上に左右一対のフロントシート42,42が支持されている。この場合、前記各補強クロスメンバ31は、上記各フロントシート42を強固に支持するための支持部材を構成している。また、上記フロアパネル29の後部パネル36上にベンチ式のリヤシート43が支持されている。
【0034】
上記両フロントシート42,42のうち、一方のフロントシート42はドライバーシートとされ、その前方にステアリングハンドル45が配置されている。このステアリングハンドル45は、上記ピラー補強メンバ25の一側部にブラケット46により支持されたスリアリングコラム47に操作可能に支持されている。上記ステアリングハンドル45は、ステアリングシャフト48や自在継手49を介して前記前車輪6に連動連結されている。上記ドライバーシートであるフロントシート42に着座したドライバーが、車両1の走行時に、上記ステアリングハンドル45を操向操作すれば、これに連動する上記各前車輪6が所望方向に操向されるようになっている。
【0035】
図1において、車両1の走行時、上記トンネル30の長手方向の各部分に生じる上下振動Vpの振幅Aのうち、上記ピラー補強メンバ25の下方における上記トンネル30の長手方向の中途部分30aの振幅Aがほぼ最大振幅Amaxとなるよう、上記トンネル30の長手方向の各部分の剛性が定められている。つまり、上記ピラー補強メンバ25よりも後方の上記トンネル30の後部側30bの剛性が、上記ピラー補強メンバ25よりも前方の上記トンネル30の前部側30cの剛性よりも大きくされている。
【0036】
具体的には、図1,2において、上記実施例においては、前記従来の技術で示したようなダッシュパネル28を補強するための補強材や、上記ピラー補強メンバ25とトンネル30の前部側30cとを互いに結合させるブレース材は設けていない。つまり、これら補強材やブレース材によってダッシュパネル28やトンネル30の前部側30cの剛性を向上させることが回避されている。
【0037】
しかも、その一方、上記トンネル30の後部側30bの長手方向の中途部は前記各補強クロスメンバ31により補強されている。また、図2において、上記トンネル30の後部側30bの左右側部パネル38,38の各基部幅は、上記トンネル30の前部側30cのそれに比べてより大きくされ、また、これと共に、上記トンネル30の後部側30bの断面積が、上記トンネル30の前部側30cのそれに比べてより大きくされている。更に、図1〜3において、上記トンネル30の後部側30bは、その内面に取り付けられた板金製の補強材51により補強されている。
【0038】
即ち、上記したように、従来の技術にいう補強材やブレース材を設けていないことと、上記トンネル30の後部側30bを補強する補強クロスメンバ31と補強材51とを設け、かつ、トンネル30の後部側30bの断面積をより大きくするなど形状をより大きくしたことにより、前記したように、トンネル30の後部側30bの剛性がトンネル30の前部側30cの剛性よりも大きくされている。
【0039】
なお、上記補強クロスメンバ31や補強材51を設けることと、トンネル30の後部側30bの形状を、より大きくすることとは、いずれか一つのみを適用するようにしてもよい。
【0040】
上記構成によれば、車両1の走行時、上記トンネル30の長手方向の各部分に生じる上下振動Vpの振幅Aのうち、上記ピラー補強メンバ25の下方における上記トンネル30の長手方向の中途部分30aの振幅Aがほぼ最大振幅Amaxとなるよう、上記ピラー補強メンバ25よりも後方の上記トンネル30の後部側30bの剛性を、上記ピラー補強メンバ25よりも前方の上記トンネル30の前部側30cの剛性よりも大きくしている。
【0041】
ここで、上記したように、車両1の走行時には、トンネル30の中途部分30aの振幅Aがほぼ最大振幅Amaxとなるが、上記トンネル30の中途部分30aは、上記ピラー補強メンバ25の下方に位置した部分であって、通常走行時に車室4におけるフロントシート42に着座した乗員の前方に位置する部分である。このため、上記トンネル30の中途部分30aにおける大きい振幅Aの上下振動Vpが上記各乗員に直接影響することは防止されて、車両1への乗り心地は良好に保たれる。
【0042】
一方、上記トンネル30はフロアパネル29に形成されたものであって、このフロアパネル29には上記ダッシュパネル28が連設されている。このため、上記トンネル30の中途部分30aの大きい振幅Aの上下振動Vpに連動して、上記ダッシュパネル28も大きく振動しがちとなり、この振動は、このダッシュパネル28から、順次、フロントカウル24、フロントピラー17、ピラー補強メンバ25、およびステアリングハンドル45に伝達されるおそれがある。
【0043】
しかし、上記ダッシュパネル28は、前記したように車体2の幅方向に延びると共に、上記フロントカウル24から下方に延びて全体として平坦な形状とされたものであり、その板厚方向の剛性は比較的低いものである。このため、上記ダッシュパネル28は、上記トンネル30の中途部分30aの上下振動Vpに連動して、その板厚方向である車体2の前後方向に向かって円滑に前後振動Vhしがちとなる。
【0044】
よって、上記トンネル30の中途部分30aの大きい振幅Aの上下振動Vpが上記フロントカウル24にまで達することは、上記ダッシュパネル28の前後振動Vhにより効果的に吸収される。このため、上記トンネル30の中途部分30aに連動して上記ステアリングハンドル45が振動することは抑制され、このステアリングハンドル45についての円滑な操向操作が確保される。
【0045】
そして、上記したステアリングハンドル45についての円滑な操向操作の確保は、前記従来の技術で示したようなダッシュパネル28を補強するための補強材や、ピラー補強メンバ25とトンネル30の前部側30cとを互いに結合させるためのブレース材を設けないでも達成できる。よって、その分、上記した円滑な操向操作の確保は簡単な構成で、かつ、車室4を無用に狭めることなく達成できる。
【0046】
また、上記構成によれば、その構成が簡単で、コンピュータ解析(CAE)によるモードコントロールが容易であることにより、実機(製造車両)を評価することなく、設計段階で振動計算を織り込むことができる、という効果もある。
【符号の説明】
【0047】
1 車両
2 車体
3 車体フレーム
4 車室
5 車体本体
12 サイドメンバ
13 クロスメンバ
16 サイドシル
17 フロントピラー
24 フロントカウル
25 ピラー補強メンバ
28 ダッシュパネル
29 フロアパネル
30 トンネル
30a 中途部分
30b 後部側
30c 前部側
31 補強クロスメンバ
42 フロントシート
43 リヤシート
45 ステアリングハンドル
51 補強材
A 振幅
Amax 最大振幅
Vp 上下振動
Vh 前後振動

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ車体の幅方向に延びると共に車体の前後方向に離れて車室の前端部に配置され、その長手方向の各端部が左右フロントピラーにそれぞれ支持されるフロントカウルおよびピラー補強メンバと、車体の幅方向に延びると共に、上記フロントカウルから下方に延びて車室の前面を形成するダッシュパネルと、このダッシュパネルの下端縁部から車体の後方に延びて車室の下面を形成するフロアパネルと、このフロアパネルにおける車体の幅方向の中央部に、上方に向かって膨出すると共に前後方向に延びるよう形成されるトンネルと、上記ピラー補強メンバに支持されるステアリングハンドルとを備えた車両において、
車両の走行時、上記トンネルの長手方向の各部分に生じる上下振動の振幅のうち、上記ピラー補強メンバの下方における上記トンネルの長手方向の中途部分の振幅がほぼ最大振幅となるよう、上記ピラー補強メンバよりも後方の上記トンネルの後部側の剛性を、上記ピラー補強メンバよりも前方の上記トンネルの前部側の剛性よりも大きくしたことを特徴とする車両における車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−194915(P2011−194915A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−60754(P2010−60754)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】