説明

車両における還元剤タンク配設構造

【課題】この発明は、車両に対して付加的に設けられる還元剤タンクを効果的に配設することができる還元剤タンク配設構造を提供することを目的とする。
【解決手段】車体Vを構成するリヤサイドフレーム10の車幅方向外側に尿素タンク1を配設することとし、具体的には、リヤサイドフレーム10の車幅方向外側に配設したサイドパネル3のサイドパネルインナ3aとサイドパネルアウタ3bとの間に尿素タンク1を配設するようにした。これにより、リヤサイドフレーム10の車幅方向外側のデッドスペースを利用して、車両Vに対して付加的に設けられる尿素タンク1を配設することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両における排気ガス浄化のために車載される還元剤タンクの配設構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排気ガスに含まれる粒子状物質(PM)や窒素酸化物(NOx)については、酸性雨や光化学スモッグ等の環境汚染の問題から、その排出を規制する動きが高まっている。
【0003】
そこで、内燃機関の排気系に尿素水溶液等の還元剤を噴射供給し、排気ガスに含まれる粒子状物質や窒素酸化物を還元浄化することが行われている。
【0004】
下記特許文献1では、還元剤を貯蔵した還元剤収容部(タンク)を車両に配設する構造について開示しており、この特許文献1では、還元剤収容部は燃料収容部(タンク)と一体化されている。
【特許文献1】特表2000−512245号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、実際の車両では、レイアウトの制限等により、還元剤タンクのような付加的な部材を新たに設けることは容易ではなかった。
【0006】
この発明は、車両に対して付加的に設けられる還元剤タンクを効果的に配設することができる還元剤タンク配設構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の車両における還元剤タンク配設構造は、車両における排気ガス浄化のために車載される還元剤タンクの配設構造であって、車体を構成するフレーム部材の車外側に上記還元剤タンクを配設したものである。
【0008】
この構成によれば、車体を構成するフレーム部材の車外側のデッドスペースを利用して、車両に対して付加的に設けられる還元剤タンクを効果的に配設することができる。
【0009】
この発明の一実施態様においては、上記フレーム部材として、車幅方向両側部にて車両前後方向に延びるサイドフレームを備えるとともに、該サイドフレームの車幅方向外側に車体のサイドパネルを配設し、該サイドパネルを構成するサイドパネルインナとサイドパネルアウタとの間に上記還元剤タンクを配設したものである。
【0010】
この構成によれば、サイドパネルを構成するサイドパネルインナとサイドパネルアウタとの間のデッドスペースを利用して、上記還元剤タンクを効果的に配設することができる。
【0011】
この発明の一実施態様においては、上記サイドフレームをリヤサイドフレームとし、上記還元剤タンクには、タイヤハウスの後方の車体フロア下方で車幅方向内方に向かって容積を拡大する容積拡大部を形成したものである。
【0012】
この構成によれば、車体フロア、サイドパネルアウタ、リヤサイドフレームにより囲まれたスペースを利用して上記還元剤タンクの容量を確保することができる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、燃料タンクに燃料を供給するための注入口と、上記還元剤タンクに還元剤を供給するための注入口とを近接して配設するとともに、上記両注入口を共通のリッドで開閉するように構成したものである。
【0014】
この構成によれば、還元剤が供給される注入口に対応してリッドを別途設けることが不要になる。
【0015】
この発明の一実施態様においては、上記車両を、トラックタイプの車両としたものである。
【0016】
トラックタイプの車両においては、車載装置が配設されたり、ハーネスが配索されたりする範囲が主に車両前部であるため、車両後部にはデッドスペースが形成され易い。この構成によれば、上記車両後部のデッドスペースにより還元剤タンクを容易に配設することができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、車体を構成するフレーム部材の車外側のデッドスペースを利用して、車両に対して付加的に設けられる還元剤タンクを効果的に配設することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
図1は、本発明の実施形態に係る尿素タンク1の配設構造を示す斜視図であり、図2は、尿素タンク1周辺を拡大して示す要部拡大斜視図、図3は、図2におけるA−A線矢視断面図である。なお、図中において矢印(IN)は車両内方、矢印(OUT)は車両外方を示す。
【0019】
図1に示す車両Vは、所謂ピックアップトラックであり、本実施形態では、還元剤としての尿素水溶液X(図3参照)を貯蔵した尿素タンク1が、車両後部に備えられた荷台2側部のサイドパネル3内部に配設されている。
【0020】
尿素は、加水分解して容易にアンモニアを発生する物質であり、尿素水溶液Xは、従来より排気ガスに含まれる粒子状物質や窒素酸化物を還元浄化する還元剤として用いられている。
【0021】
車両Vにおいても、尿素水溶液Xは、ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出された排気ガス中に噴射供給されるべく尿素タンク1に貯蔵され、排気ガス中の窒素酸化物と触媒中で還元反応することで、窒素酸化物が無害成分に浄化処理される。
【0022】
ところで、車両Vにおいては、車両前部のキャビン4後端両側部から車両後方に向かってサイドパネル3、3が延びており、尿素タンク1は、このサイドパネル3に対応して、長手方向が車両前後方向を向くように配置されている。図示のものにおいては、その後端が車両Vの後端付近に位置し、前端が後輪Wを覆うタイヤハウス5の位置まで延びている。尿素タンク1には、その前側下部において、タイヤハウス5との干渉を回避するための円弧状の切欠部1aが形成されている。
【0023】
さらに、尿素タンク1には、タイヤハウス5の後方の、荷台2のフロアパネル2a下方で車幅方向内方に向けて容積が拡大された容積拡大部1bが形成されており、これによって、尿素タンク1は、その一部が車幅方向内方にも延びている。
【0024】
また、本実施形態では、尿素タンク1が一方のサイドパネル3のみに配設されており、この一方のサイドパネル3には、尿素タンク1の他にも、後述する燃料パイプ6a、尿素パイプ6bの注入口6a1、6b1、及びこれらを共通に覆うリッド7が、尿素タンク1の前端から車両前方に離間して配設されている。
【0025】
サイドパネル3は、図2、図3に示すように、サイドパネルインナ3a、該サイドパネルインナ3aの外側を覆うサイドパネルアウタ3b、サイドパネルインナ3aとによって閉断面3cを形成するスティフナ3dとから構成されており、尿素タンク1は、その上端に形成された第1締結片1cがボルト8a、8bによってサイドパネルインナ3aの外側面に締結されることで、サイドパネルインナ3aとサイドパネルアウタ3bとの間の所定位置に固定されている。
【0026】
さらに、尿素タンク1においては、容積拡大部1bの内側端部に形成された逆L字状の第2締結片1dがボルト8cによってクロスメンバ9の下端に締結されており、これによって、容積拡大部1bを含む下部が安定的に支持されている。
【0027】
クロスメンバ9は、その車幅方向両端部が、一対のリヤサイドフレーム10、10(図2、図3では一方のみ示す)にそれぞれ接合されており、該リヤサイドフレーム10、10間に架設された状態となっている。
【0028】
リヤサイドフレーム10は、車体を構成するフレーム部材の1つとされ、車両Vの車幅方向両側部にて車両前後方向に延びている。本実施形態では、サイドパネル3が、このリヤサイドフレーム10の車幅方向外側に位置することによって、尿素タンク1がリヤサイドフレーム10の車幅方向外側に位置している。
【0029】
従来より、車両Vの後部においては、車載装置やハーネス等が多数存在することがなかったために、リヤサイドフレーム10の車幅方向外側の領域はデッドスペースとなっていた。
【0030】
本実施形態では、リヤサイドフレーム10の外側に尿素タンク1を配設するようにしたため、本来デッドスペースとなるはずの上記スペースを利用して、車両Vに対して付加的に設けられる尿素タンク1を効果的に配設することができる。
【0031】
特に、リヤサイドフレーム10の車幅方向外側の領域では、サイドパネルインナ3aとサイドパネルアウタ3bとによって、その間には上方に長く延びるスペースが形成されている。従って、本実施形態のように、サイドパネルインナ3aとサイドパネルアウタ3bとの間に尿素タンク1を配設することで、上方に長く(広く)延びたデッドスペースを利用して尿素タンク1をより効果的に配設することができる。
【0032】
また、車両Vのようなトラックタイプの車両である場合、車載装置が配設されたり、ハーネスが配索されたりする範囲は、主にキャビン4(図1参照)を含む車両V前部となる。このため、車両V後部のリヤサイドフレーム10の車幅方向外側の領域はデッドスペースになり易かった。従って、トラックタイプの車両Vでは、尿素タンク1を容易に配設することができる。
【0033】
また、従来、サイドパネルインナ3aとサイドパネルアウタ3bとの間にとどまらず、タイヤハウス5の後方では、フロアパネル2a、サイドパネルアウタ3b、リヤサイドフレーム10により三方が囲まれたスペースもデッドスペースとなっていた。
【0034】
そこで、本実施形態では、容積拡大部1bを、図3に示すようにサイドパネル3aの下端から車幅方向内方へ延びるように形成し、これを上記スペース内に位置させるようにした。この場合、フロアパネル2a、サイドパネルアウタ3b、リヤサイドフレーム10により囲まれた上記スペースを利用して尿素タンク1の容量を確保することができ、タイヤハウス5によって侵食された分を補填することができる。
【0035】
ところで、図3に示す部材11は燃料タンクであり、この燃料タンク11には、図1に示す燃料パイプ6aが接続されている。これにより、燃料パイプ6aの注入口6a1は燃料供給用の注入口に設定されている。また、尿素タンク1には、尿素パイプ6bが接続されており、これにより、尿素パイプ6bの注入口6b1は尿素水溶液X供給用の注入口に設定されている。
【0036】
ここで、尿素タンク1、燃料タンク11は、図3に示すように車幅方向の片側に集約されており、これによって、上記一方のサイドパネル3に、2つの注入口6a1、6b1を近接して配設することを可能にしている。
【0037】
このように、尿素水溶液X供給用の注入口6b1を、燃料供給用の注入口6a1に近接して配設することで、本実施形態のように、これらを共通のリッド7で開閉するような構成とすることができ、注入口6b1に対応するリッドを別途設けることが不要になる。
【0038】
尿素水溶液Xは、燃料に比べて消費速度が遅く、その補給を行う頻度も少ない(2年に1回程度)のが実情であり、注入口6b1専用のリッドを設けたとしても、それが頻繁に使用されることはない。本実施形態では、このように使用頻繁の少ない注入口6b1専用のリッドが省略された構成となっており、これによって、部品点数の削減、及びパーティングラインの削減による外観の向上が図られている。
【0039】
なお、図1〜図3に示す実施形態では、タイヤハウス5の後方のフロアパネル2a下方で容積を拡大する容積拡大部1bを尿素タンク1に形成するようにしたが、他の車載装置のレイアウト等との関係で、フロアパネル2a、サイドパネルアウタ3b、リヤサイドフレーム10により囲まれた上記スペースが利用できない場合、容積拡大部1bを形成する代わりに、図4に示すように、尿素タンク50の前端位置をより前方に設定することでその容量を確保するようにしてもよい。
【0040】
但し、この尿素タンク50においても、タイヤハウス5との干渉を回避するための円弧状の切欠部50a、及びサイドパネルインナ3a(図2、図3参照)に締結するための締結片50cが形成されており、この点については、図1〜図3に示す実施形態の尿素タンク1と同様である。
【0041】
しかしながら、図4に示す尿素タンク50の場合、その前部を注入口6a1、6b1の位置まで延ばすことによって、両者が車両前後方向において図示のようにラップする可能性があり、この場合、尿素タンク50が車幅方向内方の燃料タンク11(図3参照)を遮ることで、燃料パイプ6aの配管が困難になる可能性がある。そのような場合には、尿素タンク50に、燃料パイプ6aとの干渉を回避するためのパイプ貫通孔や凹溝を形成してもよい。
【0042】
なお、図4において、図1と同様の構成要素については、同一の符号を付しており、ここではその詳しい説明を省略する。
【0043】
また、図1〜図3に示す実施形態のように2つの注入口6a1、6b1を近接して配設する場合、供給可能な液体が一目で分かるように、図5に示すような表示部12a、12bを設けてもよい。図5の場合、注入口6a1の真上に位置する表示部12aにおいては、燃料を意味する「FUEL」の表示がなされ、注入口6b1の真上に位置する表示部12bにおいては、尿素を意味する「UREA」の表示がなされている。これにより、燃料、または尿素水溶液Xを供給する際の注入口の選択間違えを防止できる。
【0044】
また、図5に示すように、尿素水溶液X供給用の注入口6b1を蓋13で覆うことによって、燃料が誤って注入口6b1に注入されることを防止するようにしてもよい。さらにこの場合、蓋13を特殊なビス14、…14で固定するようにし、専門業者等の特定の人物のみが所有する工具でなければ取外すことができないようにしてもよい。
【0045】
また、上述した実施形態では、尿素タンク1、燃料タンク11が車幅方向方の片側に集約されるようになっているが、両側のサイドパネル3、3に別々に配設されるようにしてもよい。この場合、尿素タンク1と燃料タンク11とによって車幅方向における重量バランスの均衡を図ることができる。
【0046】
また、上述した実施形態では、本発明をトラックタイプの車両Vに適用した場合を説明したが、リヤサイドフレームを含むフレーム部材の車外側においてデッドスペースが形成されるものであれば、トラックタイプの車両Vに限らず乗用車などの種々の形態の車両に本発明を適用することができる。
【0047】
また、上記還元剤は、尿素のみならず、炭化水素、シアヌール酸、アンモニア、炭酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム等のうちいずれの物質であってもよく、複数組み合わせてもよい。
【0048】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の還元剤タンクは、尿素タンク1、50に対応し、
以下同様に、
車体フロアは、フロアパネル2aに対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】この発明の実施形態に係る尿素タンクの配設構造を示す斜視図。
【図2】尿素タンク周辺を拡大して示す要部拡大斜視図。
【図3】図2におけるA−A線矢視断面図。
【図4】この発明の他の実施形態に係る尿素タンクの配設構造を示す斜視図。
【図5】注入口周辺の構造を示す正面図。
【符号の説明】
【0050】
1、50…尿素タンク
1b…容積拡大部
2a…フロアパネル
3…サイドパネル
3a…サイドパネルインナ
3b…サイドパネルアウタ
5…タイヤハウス
6a1、6b1…注入口
7…リッド
10…リヤサイドフレーム
11…燃料タンク
X…尿素水溶液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両における排気ガス浄化のために車載される還元剤タンクの配設構造であって、
車体を構成するフレーム部材の車外側に上記還元剤タンクを配設した
車両における還元剤タンク配設構造。
【請求項2】
上記フレーム部材として、車幅方向両側部にて車両前後方向に延びるサイドフレームを備えるとともに、
該サイドフレームの車幅方向外側に車体のサイドパネルを配設し、
該サイドパネルを構成するサイドパネルインナとサイドパネルアウタとの間に上記還元剤タンクを配設した
請求項1記載の車両における還元剤タンク配設構造。
【請求項3】
上記サイドフレームをリヤサイドフレームとし、
上記還元剤タンクには、タイヤハウスの後方の車体フロア下方で車幅方向内方に向かって容積を拡大する容積拡大部を形成した
請求項2記載の車両における還元剤タンク配設構造。
【請求項4】
燃料タンクに燃料を供給するための注入口と、上記還元剤タンクに還元剤を供給するための注入口とを近接して配設するとともに、
上記両注入口を共通のリッドで開閉するように構成した
請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両における還元剤タンク配設構造。
【請求項5】
上記車両は、トラックタイプの車両である
請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両における還元剤タンク配設構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−273372(P2008−273372A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−118954(P2007−118954)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】