説明

車両のための伝動装置構造

本発明は、車両のための伝動装置構造であって、発進要素を介して駆動装置に連結されている形式のものに関する。本発明では、前記発進要素として調節可能なクランク伝動装置が設けられており、該クランク伝動装置の入力軸が駆動側で前記駆動装置の駆動軸に連結されているようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のための伝動装置構造(Getriebeanordnung)であって、発進要素(Anfahrelement)を介して駆動装置に連結されている形式のものに関する。
【0002】
車両技術において、車両のための伝動装置構造は公知である。公知の伝動装置構造では、例えばクラッチを使用することで、特に内燃機関による駆動の際に、発進プロセス中、速度差をクラッチの閉鎖時に解消している。その際、多くのエネルギが摩擦熱に変換されるので、クラッチを十分に冷却することが必要である。さらに、このプロセスを快適に、かつ構成部品に負担をかけずに実施するためには、特別な構成が必要である。
【0003】
さらに、ドイツ連邦共和国特許出願公開第10243535号明細書において、種々異なる変速比を設定するために、調節可能なクランク伝動装置(Kurbelgetriebe)を使用する伝動装置が公知である。クランク伝動装置は、伝動装置のケーシング内に回転可能にかつ互いに平行に配置されている駆動軸及び被動軸を有する。両軸は互いに駆動接続されている。この接続は、駆動軸に設けられる偏心体駆動装置(Exzenterantrieb)と、被動軸に設けられるフリーホイール装置(Freilaufeinrichtung)とによってなされる。偏心体駆動装置とフリーホイール装置とは、コンロッド状に形成されている複数の接続部材を介して互いに接続されている。偏心体駆動装置は、複数の偏心体ユニットによって実現される。偏心体ユニットを形成するために、駆動軸は、この駆動軸の回転軸線に対して偏心的に配置されるガイド領域を備え、ガイド領域の周面には、偏心体構成部分が相対回動可能に支承されている。駆動すべき軸、あるいはこの駆動すべき軸を形成するガイド領域は、軸線方向で延在する孔を有する。孔は調節軸を受容する。調節軸は、歯列を介して偏心体構成部分に連結されている。調節軸は、伝動装置において所望の変速比を設定するための調節機構を介して調節可能である。
【0004】
本発明の課題は、少なくとも同じ構成スペースで、改善された発進プロセスが実現される、冒頭で述べた形式の伝動装置構造を提案することである。
【0005】
この課題は、本発明により、車両のための伝動装置構造であって、発進要素を介して駆動装置に連結されている形式のものにおいて、前記発進要素として調節可能なクランク伝動装置又はこれに類するものが設けられており、該クランク伝動装置の入力軸が駆動側で前記駆動装置の駆動軸に連結されていることによって解決される。好ましくは、発進要素として設けられる前記クランク伝動装置に、種々異なる変速比を実現する少なくとも1つの別の構成群が接続されている。好ましくは、前記クランク伝動装置の出力軸が、別の構成群としてのCVT伝動装置の第1のプーリセットに連結されている。好ましくは、前記クランク伝動装置の入力軸が被動側でCVT伝動装置の第1のプーリセットに連結されており、かつ前記クランク伝動装置の出力軸がCVT伝動装置の第2のプーリセットに連結されている。好ましくは、前記クランク伝動装置の入力軸が被動側でクラッチを介してCVT伝動装置の第1のプーリセットに結合されている。好ましくは、前記クランク伝動装置の出力軸及びCVT伝動装置の第2のプーリセットが、チェーン駆動装置又は歯車段を介して被動ディファレンシャルに連結されている。好ましくは、前記クランク伝動装置が、切換可能なフリーホイールを備える。好ましくは、前記クランク伝動装置の入力軸及び出力軸がCVT伝動装置の第1のプーリセットに連結されている。好ましくは、前記クランク伝動装置の入力軸及び出力軸がそれぞれ歯車段を介して前記第1のプーリセットに結合されており、前記クランク伝動装置の入力軸が付加的にクラッチを介して前記歯車段に結合されている。
【0006】
発進要素として設けられるクランク伝動装置は、好ましくは、冒頭で述べた刊行物から公知であるように構成されていてよい。しかし、その他のクランク伝動装置が使用されてもよい。クランク伝動装置の使用によって、本発明により提案される伝動装置構造において、同じか、又はより小さな構成スペースで、機能の拡張を実現することができる。改善された発進プロセスに加えて、より大きな伝動装置レンジ及びより高い走行快適性が実現される。
【0007】
本発明の可能な態様は、発進要素として設けられるクランク伝動装置に、種々異なる変速比を特に無段階にも実現可能な別の構成群が接続されていることによって実現され得る。有利には、この構成群は、発進要素として機能するクランク伝動装置と相俟って、変速比におけるさらに広いレンジが実現され、加えて、所望の走行特性、例えば惰行運転あるいはコースト運転(Schubbetrieb)が維持され得るように配置されていてよい。別の構成群として、例えば、無段変速する伝動装置を使用することができる。付加的な構成群として、その他の伝動装置構造を使用することも可能である。
【0008】
本発明の別の態様では、クランク伝動装置の出力軸がCVT伝動装置の第1のプーリセットに連結されているようになっていてよい。これにより、クランク伝動装置を発進プロセス中に使用することができ、発進プロセスの終了後には、所望の変速比を無段階にCVT伝動装置のバリエータによって設定することができる。
【0009】
本発明の別の態様では、クランク伝動装置の入力軸が駆動側でCVT伝動装置の第1のプーリセットに連結されており、クランク伝動装置の出力軸が第2のプーリセットあるいは被動部に連結されているようになっていてよい。こうして、必要ならば、発進機能も、所望される変速比の設定も、クランク伝動装置を介して行うことができる。
【0010】
有利には、クランク伝動装置の入力軸が被動側でクラッチ、例えばかみ合いクラッチ又はこれに類するものを介してCVT伝動装置の第1のプーリセットに結合されてよい。これにより、クランク伝動装置の入力軸を駆動側で、必要ならば、CVT伝動装置の第1のプーリセットから切り離すことができる。クランク伝動装置の入力軸及び/又は出力軸と、CVT伝動装置の第1のプーリセットとの間の結合手段として、歯車段、チェーン駆動装置又はこれに類するものを設けて、本発明に係る伝動装置構造を、設定可能な変速比及び利用可能な出力分岐に関してよりフレキシブルに構成することもできる。
【0011】
有利には、歯車段が、必要な回転方向反転を実現するために使用される。本発明の有利な態様では、回転方向反転が、本発明により提案される伝動装置構造において、クランク伝動装置が切換可能なフリーホイール又はこれに類するものを有することによって実現されるようになっていてよい。これにより、別の構成部分、例えば遊星歯車式の前後進切換機構(Planetenwendesatz)を、本発明に係る伝動装置構造では省略することができる。
【0012】
本発明の別の態様の範囲内では、クランク伝動装置の入力軸及び出力軸がCVT伝動装置の第1のプーリセットに連結されているようになっていてもよい。例えば、この連結は、2つの歯車段を介してなすことができる。クランク伝動装置の入力軸は、クラッチ、例えばかみ合いクラッチ又はこれに類するものを介して、第1のプーリセットに連結可能である。
【0013】
その他の有利な態様は、従属請求項、及び後述する、本発明についてさらに解説する図面から看取される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る伝動装置構造の第1の実施の形態の概略図である。
【図2】伝動装置構造の第2の実施の形態の概略図である。
【図3】伝動装置構造の第3の実施の形態の概略図である。
【図4】伝動装置構造の第4の実施の形態の概略図である。
【0015】
図1〜図4には、本発明に係る伝動装置構造あるいはトランスミッションアッセンブリの種々異なる実施の形態が示されている。それぞれの実施の形態に関わりなく、クランク伝動装置1が、少なくとも発進要素として、クランク伝動装置1の入力軸2を介して、車両駆動装置の図示しない駆動軸に結合されている。駆動軸は、概略的に矢印により示されている。これにより、構成スペース及び重量は同じまま、改良された伝動装置構造が実現される。
【0016】
図1は、第1の実施の形態を示す。第1の実施の形態において、発進要素として設けられたクランク伝動装置1の出力軸3は、かみ合いクラッチあるいはつめクラッチ4を介してCVT伝動装置の第1のプーリセット5に結合されている。CVT伝動装置によって無段調節された伝動は、CVT伝動装置の第2のプーリセット6からチェーン駆動装置7を介して被動ディファレンシャル8に連結される。チェーン駆動装置7は、回転方向反転のために役立つ。それぞれの実施の形態に関わりなく、回転方向反転のために使用される構成部分は、クランク伝動装置1が切換可能なフリーホイールを備えている場合、省略されてもよい。これにより、回転方向反転はCVT伝動装置において前進と後進との間の切換時になされる。
【0017】
本発明の第2の実施の形態は、図2に示されている。クランク伝動装置1の入力軸2は、第1の実施の形態とは異なり、かみ合いクラッチ9を介してCVT伝動装置の第1のプーリセット5に結合されている。こうして、クランク伝動装置1を、開放されたかみ合いクラッチ9を介してバリエータ系統から必要に応じて切り離すことができる。この場合、クランク伝動装置1を調節機構によって適当に調節し、適当な変速比を設定することができる。クランク伝動装置1の出力軸3は、CVT伝動装置の第2のプーリセット6とともにチェーン駆動装置7に割り当てられている。チェーン駆動装置7は、再び、被動ディファレンシャル8との結合手段をなしている。
【0018】
図3は、本発明に係る伝動装置構造の第3の実施の形態を示す。第3の実施の形態では、第2の実施の形態とは異なり、クランク伝動装置1の入力軸2が、付加的に歯車段10を介してCVT伝動装置の第1のプーリセット5に連結されている。歯車段10は、例えば付加的な減速装置として役立つ。さらに、出力軸3及びCVT伝動装置の第2のプーリセット6は、別の歯車段11を介して被動ディファレンシャル8に結合されていてもよい。さらに、伝動装置構造の個々の構成部分の配置は、クランク伝動装置1が第2の実施の形態と比較して別サイドに配置されているように変更されている。
【0019】
最後に図4は、第4の実施の形態を示す。第4の実施の形態では、クランク伝動装置1の入力軸2が、かみ合いクラッチもしくはつめクラッチ13と、歯車段10とを介してCVT伝動装置の第1のプーリセット5に結合されている。さらに、クランク伝動装置1の出力軸3も、歯車段12を介してCVT伝動装置の第1のプーリセット5に結合されている。CVT伝動装置の第2のプーリセット6は、回転方向反転のための歯車段11を介して被動ディファレンシャル8に結合されている。これにより、クランク伝動装置1を介して、発進プロセス及び所定の変速比範囲を実現することができる。クランク伝動装置1は、かみ合いクラッチ13を介して切り離すことができるので、残りの変速比範囲は、CVT伝動装置によって実現される。
【符号の説明】
【0020】
1 クランク伝動装置
2 クランク伝動装置の入力軸
3 クランク伝動装置の出力軸
4 かみ合いクラッチ
5 CVT伝動装置の第1のプーリセット
6 CVT伝動装置の第2のプーリセット
7 チェーン駆動装置
8 被動ディファレンシャル
9 かみ合いクラッチ
10 歯車段
11 歯車段
12 歯車段
13 かみ合いクラッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のための伝動装置構造であって、発進要素を介して駆動装置に連結されている形式のものにおいて、前記発進要素として調節可能なクランク伝動装置(1)が設けられており、該クランク伝動装置(1)の入力軸(2)が駆動側で前記駆動装置の駆動軸に連結されていることを特徴とする、車両のための伝動装置構造。
【請求項2】
発進要素として設けられる前記クランク伝動装置(1)に、種々異なる変速比を実現する少なくとも1つの別の構成群が接続されている、請求項1記載の伝動装置構造。
【請求項3】
前記クランク伝動装置(1)の出力軸(3)が、別の構成群としてのCVT伝動装置の第1のプーリセット(5)に連結されている、請求項1又は2記載の伝動装置構造。
【請求項4】
前記クランク伝動装置(1)の入力軸(2)が被動側でCVT伝動装置の第1のプーリセット(5)に連結されており、かつ前記クランク伝動装置(1)の出力軸(3)がCVT伝動装置の第2のプーリセット(6)に連結されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の伝動装置構造。
【請求項5】
前記クランク伝動装置(1)の入力軸(2)が被動側でクラッチを介してCVT伝動装置の第1のプーリセット(5)に結合されている、請求項4記載の伝動装置構造。
【請求項6】
前記クランク伝動装置(1)の出力軸(3)及びCVT伝動装置の第2のプーリセット(6)が、チェーン駆動装置(7)又は歯車段(11)を介して被動ディファレンシャル(8)に連結されている、請求項4又は5記載の伝動装置構造。
【請求項7】
前記クランク伝動装置(1)が、切換可能なフリーホイールを備える、請求項1から6までのいずれか1項記載の伝動装置構造。
【請求項8】
前記クランク伝動装置(1)の入力軸(2)及び出力軸(3)がCVT伝動装置の第1のプーリセットに連結されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の伝動装置構造。
【請求項9】
前記クランク伝動装置(1)の入力軸(2)及び出力軸(3)がそれぞれ歯車段(10,12)を介して前記第1のプーリセット(5)に結合されており、前記クランク伝動装置(1)の入力軸(2)が付加的にクラッチを介して前記歯車段(10)に結合されている、請求項8記載の伝動装置構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−506883(P2011−506883A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538327(P2010−538327)
【出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【国際出願番号】PCT/DE2008/002053
【国際公開番号】WO2009/079981
【国際公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(390009070)ルーク ラメレン ウント クツプルングスバウ ベタイリグングス コマンディートゲゼルシャフト (236)
【氏名又は名称原語表記】LuK Lamellen und Kupplungsbau  Beteiligungs KG
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 3, D−77815 Buehl, Germany
【Fターム(参考)】