説明

車両のためのFMCWレーダセンサ

車両のためのFMCWレーダセンサであって、レーダ信号を生成し送信し受信するための高周波ユニットと、送信されたレーダ信号の変調を制御するための変調素子(36)と、受信されたレーダ信号から形成される中間周波数信号(22)のための少なくとも1つのアナログ事前処理段(48)と、少なくとも1つのアナログ/デジタル変換段(50)と、変調素子(36)を駆動し、アナログ/デジタル変換段(5)のデジタル信号をさらに処理するためのプロセッサとを有する、FMCWレーダセンサにおいて、変調素子(36)と、事前処理段(48)と、アナログ/デジタル変換段(50)とは、1つの半導体モジュール(12)に組み込まれ、半導体モジュール(12)はさらに、半導体モジュールの構成要素を設定し監視するための監視素子(12)およびレジスタ(44)と、プロセッサへのインタフェース(52)を有する、FMCWレーダセンサに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のためのFMCWレーダセンサであって、レーダ信号を生成し送信し受信するための高周波ユニットと、送信されたレーダ信号の変調を制御するための変調素子と、受信されたレーダ信号から形成される中間周波数信号のための少なくとも1つのアナログ事前処理段と、少なくとも1つのアナログ/デジタル変換段と、変調素子を駆動し、アナログ/デジタル変換段のデジタル信号をさらに処理するためのプロセッサとを、有する上記FMCWレーダセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)レーダセンサの場合、レーダ信号が継続的に送信されるが、このレーダ信号の周波数はランプ形状に変調される。独国特許出願公開第10 2004 051 276号明細書には、この種のレーダセンサが開示されており、高周波ユニットと、変調素子の少なくとも一部とが、1つの半導体モジュール、いわゆるMMIC(Monolithic Microwave Integrated Circuit。モノリシックマイクロ波集積回路)に組み込まれている。レーダセンサの残りの構成要素は、別体のアナログおよびデジタル機能モジュールによって形成され、当該機能モジュールは、高周波ユニットの構造および各所望の作動形態に対して特別に調整される。
【0003】
車両内では、このようなレーダセンサは一般的に、例えば、自動間隔制御、衝突警告等のための運転者支援装置との関連で使用される。このようなシステムは、走行快適性を高めるのみならず、安全性に関わる機能もますます果たすようになっているため、システムの信頼性、したがって、レーダセンサの信頼性に対する要請もますます高まっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、より容易に、かつ、より確実に制御され監視される、コンパクトに構成されたレーダセンサを創出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本課題は、本発明に基づいて、変調素子と、事前処理段と、アナログ/デジタル変換段とが、1つの半導体モジュールに組み込まれ、上記半導体モジュールがさらに、当該半導体モジュールの構成要素を設定し監視するための監視素子およびレジスタと、プロセッサへのインタフェースと、を有することにより解決される。
【0006】
したがって、半導体モジュールは、高周波数帯域よりも低い帯域で作動する本質的にデジタル的な構成要素と本質的にアナログ的な構成要素とを統合する。基本的な利点は、アセンブリの大きさが縮小されることのほか、特に、統合型の設計によって、様々な機能構成要素の、根本的により集中的かつより簡単な、監視と、マイクロプロセッサのタスクに依存しない切り離し(Absteuerung)とが可能となり、干渉感受性(Stoeranfaelligkeit)と損失電力とが低減され、電磁両立性(EMV=elektromagnetische Vertraeglichkeit)が改善されることにある。同様に半導体モジュールに組み込まれた様々なレジスタは、対応する設定により、様々に組み立てられ、および/または、様々に作動する高周波ユニットに対して半導体モジュールを調整することを可能とするので、半導体モジュールの使用について高い自由度が実現される。このことにより、特定用途向けの半導体モジュール(ASIC)を、比較的大量に、したがって経済的に製造することが可能となる。
【0007】
本発明の好適な構成および発展形態は、従属請求項において示される。
【0008】
自由度の根本的な向上は、シーケンサがモジュールに含まれることにより達成され、このシーケンスによって、測定工程について様々なタイム・シーケンスおよび変調方式がプログラミングされる。このことにより、「オフライン監視」(“Offline−Ueberwachung”)と、マイクロプロセッサの負荷の軽減(割込みが無いなど)と、が可能となるため、より安価なプロセッサを利用することができる。
【0009】
プロセッサへの標準インタフェースは、標準マイクロコントローラをプロセッサとして使用することを可能にする。
【0010】
好適な実施形態において、半導体モジュールにはさらに、半導体モジュールの全機能のために、および、好適にマイクロコントローラのためにも統一的なクロック周波数を提供するクロック周波数発振器、または、少なくともその電子部品が組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明の実施例は図面に示されており、以下の記載においてより詳細に解説される。
【図1】本発明にかかるレーダセンサのブロック図である。
【図2】図1のレーダセンサの、組み込まれた半導体モジュールのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に示されるレーダセンサは、高周波ユニット10と、当該高周波ユニットを駆動し、受信されたレーダ信号を事前処理するための組み込まれた半導体モジュール12と、プロセッサ14(例えば、標準マイクロコントローラ)であって、半導体モジュール12へと設定命令を伝達し、当該半導体モジュールにおいて事前処理されたデータをさらに評価する上記プロセッサ14と、を備える。
【0013】
高周波ユニット10は、FMCWレーダには一般的な構造を有し、複数の、示される例では4つの、アンテナパッチであって、ここではレーダ信号の送信およびレーダ信号の受信に役立つ上記アンテナパッチを備えるアンテナ群16を備える(モノスタティック・アンテナ構想)。送信されるレーダ信号は、電圧制御型の高周波発振器18によって生成される。個々のアンテナパッチにより受信される信号は、混合器20内で、高周波発振器18の信号と混合されて中間周波数信号22が獲得されるが、当該中間周波数信号22は、(4つの)並列チャネルで半導体モジュール12へと伝達される。
【0014】
半導体モジュール12から高周波発振器18への制御線24、26は、発振器の振幅変調の制御と、周波数同調および周波数変調とに役立つ。高周波発振器18により伝達されるフィードバック信号28は、周波数制御ループ(FFL)、または、ここで検討される例では、位相制御ループ(PLL)における高周波発振器の制御を可能にする。
【0015】
半導体モジュール12は、デジタルデータバス30、例えば16ビットバスを介して、さらには同期およびアドレス線32を介して、プロセッサ14と通信し、さらに線34で、プロセッサ14からのリセット命令を受信することができる。反対に、半導体モジュール12は、例えば周波数が40MHzのクロック信号CLKをプロセッサ14へと伝達する。
【0016】
半導体モジュール12の構造が、図2により詳細に示される。
【0017】
半導体モジュールの本質的にアナログ的な機能群は、高周波発振器18の周波数変調および周波数同調のための変調素子36である。示される例では、当該変調素子36は、例えば2GHzの周波数により作動する基本位相制御ループ(FM−PLL)38と、さらなる別の位相制御ループ40(MMIC−PLL)であって、基本位相制御ループの信号に基づいて、作動周波数帯が約76GHzである高周波ユニット(MMIC)を制御する役目を果たす上記位相制御ループ40と、を含む。これら構成要素によって、高周波発振器18の周波数が、例えば時間的に連続する立ち上がりランプおよび立下りランプにおいて変調される。
【0018】
変調素子36はさらに、変調ランプの幅および位置を変調するために必要であれば挿入される追加的な位相制御ループ42を備える。
【0019】
変調素子36は、当該変調素子36を制御するための様々な制御およびパラメータレジスタと、機能監視のためのエラーレジスタと、を含むレジスタブロック44と通信する。
【0020】
高周波発振器18により伝達される中間周波数の処理のために、半導体モジュール12は受信経路46を有する。当該受信経路の事前処理段48は、4つのチャネルで伝達される中間周波数信号22をチャネルごとに処理する複数のブロックからなる。この事前処理ブロックは、特に、低ノイズの前置増幅器、変調フィルタ、アンチエイリアシングフィルタ(Anti−Alliasing−Filter)、および、オフセット補正器等を含む。図2に象徴的に示されるように、これら機能ブロックは多重に、示される例では4重に備えられている。しかしながら、その数はより大きくてもよく、半導体モジュール12は選択的に、チャネルが4つ以上の高周波ユニットのためにも使用される。
【0021】
受信経路46のアナログ/デジタル変換段50は、ADCブロックにより形成され、アナログ/デジタル変換器(例えば、シグマデルタADC(Sigma−Delta−ADC))と、デジタル化された信号をサンプリングし、フィルタに掛けるための可変的なデシメータ(Dezimator)(サンプラー)およびフィルタ(例えば、FIRフィルタ(FIR−Filter))と、を含む。
【0022】
ADCブロックによりデジタル処理された信号は、標準インタフェース52を介してプロセッサ14へと出力され、または、選択的に、プロセッサにより読み出されるまでデータメモリに一時的に格納される。
【0023】
さらに、半導体モジュール12は、シーケンサ54を含むが、当該シーケンサ54は、インタフェース52と、および、レジスタブロック44と通信し、かつ、レーダセンサの様々な作動形態のための処理シーケンスを制御しうるように、(プロセッサ14を介して)プログラミングされる。この作動形態は、例えば、周波数変調の形態、および、変調ランプの順序および繰り返し方式の点で異なりうる。例えば、FMCW作動形態のほかに、連続的な作動形態(CW)、ステップFMCW(Step−FMCW)またはマルチプレックスFMCW(Multiplex−FMCW)機能もプログラム可能である。同様に、様々な振幅変調が、例えば、送信線の全般的な制御のために、または、様々なパルス変調パターンのためにプログラムされる。事前処理段48およびアナログ/デジタル変換段50の作動形態も、シーケンサ54により制御され、したがって、各送信される変調方式に対して調整される。特に、デジタルデータストリームのサンプリングの際の、サンプリングパターンおよびサンプリング点の位置も変更されうる。
【0024】
これら全ての機能を時間的に調整するために、半導体モジュール12はさらに、クロック信号生成器56を含み、当該クロック信号生成器56は、半導体モジュール12の様々な構成要素に、さらにプロセッサ14にも、クロック信号CLKを供給する。このクロック生成器56には、周波数基準として、外部に接続された水晶振動子58も属する。
【0025】
同様に、変調素子36も、外部フィルタ切り替えのための接続口60を有する。
【0026】
最後に、半導体モジュール12には、ここでは別体のブロックとして示され、半導体モジュール全体にその機能が分散されて実現されている内部監視素子62も組み込まれており、全機能構成要素の駆動状態および正確な作動形態を監視することが可能であり、レジスタブロック44のエラーレジスタ内の起こり得るエラーが確認され、インタフェース52を介してプロセッサ14に通知されうる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のためのFMCWレーダセンサであって、レーダ信号を生成し送信し受信するための高周波ユニット(10)と、送信された前記レーダ信号の変調を制御するための変調素子(36)と、受信された前記レーダ信号から形成される中間周波数信号(22)のための少なくとも1つのアナログ事前処理段(48)と、少なくとも1つのアナログ/デジタル変換段(50)と、前記変調素子(36)を駆動し、前記アナログ/デジタル変換段(50)のデジタル信号をさらに処理するためのプロセッサ(14)とを、有する前記FMCWレーダセンサにおいて、
前記変調素子(36)と、前記事前処理段(48)と、前記アナログ/デジタル変換段(50)とは、1つの半導体モジュール(12)に組み込まれ、前記半導体モジュール(12)はさらに、前記半導体モジュールの構成要素を設定し監視するための監視素子(62)およびレジスタ(44)と、前記プロセッサ(14)へのインタフェース(52)を有することを特徴とする、FMCWレーダセンサ。
【請求項2】
前記半導体モジュール(12)には、前記変調素子(36)および前記アナログ/デジタル変換段(50)の動作シーケンスを可変的に制御するためのプログラム可能なシーケンサ(54)が組み込まれていることを特徴とする、請求項1に記載のレーダセンサ。
【請求項3】
前記半導体モジュール(12)には、前記半導体モジュールの機能群に、統一的なクロック信号(CLK)を供給するクロック信号生成器(56)が組み込まれていることを特徴とする、請求項1または2に記載のレーダセンサ。
【請求項4】
前記クロック信号生成器(56)は、前記プロセッサ(14)にも前記クロック信号(CLK)を供給することを特徴とする、請求項3に記載のレーダセンサ。
【請求項5】
前記半導体モジュール(12)は、異なる形態の周波数および/または振幅変調の制御のために構成されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のレーダセンサ。


【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−511703(P2012−511703A)
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539977(P2011−539977)
【出願日】平成21年10月20日(2009.10.20)
【国際出願番号】PCT/EP2009/063701
【国際公開番号】WO2010/066495
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(501125231)ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (329)
【Fターム(参考)】