説明

車両のウォッシャタンク取付構造

【課題】ウォッシャタンクの容量増大、ウォッシャタンク周辺の車体部品の生産性とウォッシャタンクの組付性の向上等を図ることができる車両のウォッシャタンク取付構造を提供すること。
【解決手段】車両のエンジンルーム1側方のフェンダパネル3とダッシュサイドパネル2の間の空間Sに配置されるウォッシャタンク4の取付構造でとして、前記ウォッシャタンク4を前輪の上方に配置し、該ウォッシャタンク4をこれの前後に設けられた取付座を介して車体に取り付けるとともに、該ウォッシャタンク4の車両前後方向において前記前後の取付座の間に固定座12を形成し、該固定座12にフェンダライニング14の一部を固定する。又、前記フェンダライニング14を上に凸の湾曲形状に成形し、その頂部付近を前記ウォッシャタンク4の下部に形成された前記固定座12に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のエンジンルーム側方のフェンダパネルとダッシュサイドパネルの間の空間に配置されるウォッシャタンクの取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のフロントウインドガラスはウォッシャ液によるワイピングによって適時清掃されるが、ウォッシャ液はウォッシャタンクに収容され、ウォッシャタンク内のウォッシャ液はポンプによって加圧された後、フロントウインドガラスに向けて噴射されてワイパーによるワイピングに供される。
【0003】
例えば図8の部分正断面図に示すように、ウォッシャタンク104は、エンジンルーム101側方のダッシュサイドパネル102とフェンダパネル103の間の空間Sに配置されているが、このような配置を採用する場合において、例えば特許文献1には、L字型のウォッシャタンクを周辺部材に沿って配置し、該ウォッシャタンクに周辺部材を連結する機能を持たせることによって、エンジンルームスペースの拡大とウォッシャタンクの容量増加を図るようにした構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭62−082866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来は図8に示すように、ダッシュサイドパネル102とフェンダパネル103の間の空間Sを下方から覆うフェンダライニング114をダッシュサイドパネル102にクリップ116によって固定する構成が採用されていたため、ダッシュサイドパネル102にはフェンダライニング114を固定するための取付部102aが車両外側に向けて略水平に突設されていた。つまり、取付部102aが空間Sの下方に略水平に突出していた。このため、ウォッシャタンク104をダッシュサイドパネル102とフェンダパネル103の間の空間Sに下方から組み込む場合、その組込性を考慮すると、ウォッシャタンク104の幅X2は空間Sの開口幅X1よりも小さくなければならず(X2<X1)、ウォッシャタンク104に大きな容量を確保することができないという問題があった。
【0006】
又、ダッシュサイドパネル102にフェンダライニング114を固定するための取付部102aを折り曲げて形成する必要があるため、その生産性が悪い他、取付部102aのためにウォッシャタンク104の組付性も悪いという問題もあった。
【0007】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、ウォッシャタンクの容量増大、ウォッシャタンク周辺の車体部品の生産性とウォッシャタンクの組付性の向上等を図ることができる車両のウォッシャタンク取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、車両のエンジンルーム側方のフェンダパネルとダッシュサイドパネルの間の空間に配置されるウォッシャタンクの取付構造として、前記ウォッシャタンクを前輪の上方に配置し、該ウォッシャタンクをこれの前後に設けられた取付座を介して車体に取り付けるとともに、該ウォッシャタンクの車両前後方向において前記前後の取付座の間に固定座を形成し、該固定座にフェンダライニングの一部を固定したことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記フェンダライニングを上に凸の湾曲形状に成形し、その頂部付近を前記ウォッシャタンクの下部に形成された前記固定座に固定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、ウォッシャタンクの車両前後方向において前後の取付座の間に固定座を形成し、該固定座にフェンダライニングの一部を固定するようにしたため、従来のようにダッシュサイドパネルにフェンダライニングを固定するための取付部を車両側方に張り出して形成する必要がなく、フェンダパネルとダッシュサイドパネルの間の空間の開口幅を広くすることができ、これに伴ってウォッシャタンクの幅寸法を拡大して容量増大を図ることができる。又、ダッシュサイドパネルに車両側方に張り出す取付部を設ける必要がないため、該ダッシュサイドパネルの生産性とウォッシャタンクの組付性が高められる。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、上に凸の湾曲形状に成形されたフェンダライニングの頂部付近をウォッシャタンクの下部に形成された固定座に固定するようにしたため、固定座を下方へと長く延設することなく容易に形成することができ、ウォッシャタンクの生産性が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るウォッシャタンク取付構造を示す車両の左前部の斜視図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】ウォッシャタンクの組付要領を示す図2と同様の図である。
【図4】ウォッシャタンクの斜視図である。
【図5】フェンダライニングの斜視図である。
【図6】本発明の別実施形態に係るフェンダライニングの斜視図である。
【図7】図6のB−B線断面図である。
【図8】従来のウォッシャタンク取付構造を示す車両の左前部の正断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0014】
図1は本発明に係るウォッシャタンク取付構造を示す車両の左前部の斜視図、図2は図1のA−A線断面図、図3はウォッシャタンクの組付要領を示す図2と同様の図、図4はウォッシャタンクの斜視図、図5はフェンダライニングの斜視図である。
【0015】
車両前部には、エンジンルーム1の左右の隔壁であるダッシュサイドパネル(エプロンパネル、カウルサイドパネルとも呼ばれる車体パネル)が配置されている。そして、図2に示すように、車両前部のエンジンルーム1の右側方には板金製のダッシュサイドパネル2が略垂直に起立しており、その外側には同じく板金製のフェンダパネル3がダッシュサイドパネル2を覆うように位置している。そして、フェンダパネル3の裏側の空間となる車両右側部の前輪(不図示)上方のダッシュサイドパネル2とフェンダパネル3の間に形成される空間Sにはウォッシャタンク4が配置されている。
【0016】
上記ウォッシャタンク4は、全体として車両前後方向に長くて車幅方向に偏平な樹脂容器として構成され、その内部にはウォッシャ液が収容されている。より詳細には、ウォッシャタンク4は、図4に示すように、下部タンク4Aとその上部を覆う上部タンク4Bとを接合一体化して構成され、その上部タンク4Bにはインレットパイプ5の接続部が形成され、接続部に嵌合されたインレットパイプ5が車両内側(ダッシュサイドパネル2側)に向かって横方向に延び、ダッシュサイドパネル2に形成された貫通孔を通過してエンジンルーム1に突出した後、上方に向かって直角に曲げられており、その端部に開口する液補給口は着脱可能なキャップ6によって塞がれている。
【0017】
又、ウォッシャタンク4の上部タンク4Bの前端部に上部取付座が形成され、この上部取付座からはネジ部材7が上記インレットパイプ5と平行に車両内側(ダッシュサイドパネル2側)に向かって水平に突出している。更に、図1に示すように、ウォッシャタンク4の外面には2基のポンプ8が縦置き状態で取付配置されており、各ポンプ8から延びるホース9は車両のフロントウインド及びリヤウインドに向かって開口する不図示のノズルにそれぞれ接続されている。
【0018】
ところで、図4に示すように、ウォッシャタンク4の下部の前後位置には取付座10,11が車両内側(ダッシュサイドパネル2側)に向かってそれぞれ一体に形成されている。詳細には、ウォッシャタンク4の下面の前端部位置には取付座10が車両内側(ダッシュサイドパネル2側)の斜め下方に向かって延びるように一体に延設形成されおり、この取付座10には円孔10aが形成されている。そして、ウォッシャタンク4の下面の後端部位置には取付座11がウォッシャタンク4の本体部分よりもやや車両内側(ダッシュサイドパネル2側)に斜め下方に向かって突出するように一体に形成されおり、この取付座11には取付用のボルトが締め込まれるナットが取り付られている。又、ウォッシャタンク4の車両前後方向において前後の前記取付座10,11の間の下面には固定座12が車両内側(ダッシュサイドパネル2側)に向かって一体に突出形成されており、この固定座12は略水平な取付座面を有し、この取付座面には円孔12aが形成されている。
【0019】
ところで、車両の前輪はフェンダパネル3の内側下部に形成されたタイヤハウス13に収容されるが、このタイヤハウス13は図5に示す樹脂製のフェンダライニング14によって囲まれている。つまり、本願発明のウォッシャタンク4が配置されるダッシュサイドパネル2とフェンダパネル3の間に形成される空間Sの下方の開口は、フェンダライニング14によって閉塞されている。そして、このフェンダライニング14は、タイヤハウス13の形状に沿って上に凸の半円状の湾曲形状に成形されており、その頂部付近には矩形の台座15が上方に突出するように形成され、この台座15は略水平な取付座面を有し、この取付座面には円孔15aが形成されている。
【0020】
而して、ウォッシャタンク4は、フェンダライニング14の取り付け前に、タイヤハウス13からダッシュサイドパネル2とフェンダパネル3の間に挿入されて車体に固定される。詳細には、ウォッシャタンク4は、ダッシュサイドパネル2とフェンダパネル3の間に後端側を上方にした斜めの姿勢で挿入され、ウォッシャタンク4の下面の後端部位置に形成された取付座11を、ダッシュサイドパネル2からフェンダパネル3側に突出する取付片の上面に載置する。そして、前端側を上方に回転させてネジ部材7をダッシュサイドパネル2の縦壁面に形成された不図示の円孔に挿入する。このとき、取付座11の載置とネジ部材7の挿入によって、ウォッシャタンク4はダッシュサイドパネル2に仮保持され、作業者が手を離しても脱落しないように構成されているために作業性が向上する。又、このとき、取付座10の取付座面は、ダッシュサイドパネル2(エプロンパネル)の屈曲部(縦壁の下端からエンジンルーム1側への屈曲部分)の下面に当接する。そして、取付座10の円孔10aに下方から挿通する不図示のボルトをダッシュサイドパネル2に形成された不図示のネジ座にねじ込むことによって取付座10がダッシュサイドパネル2(エプロンパネル)に締め付け固定され、ダッシュサイドパネル2の取付片に形成された円孔に下方から挿通する不図示のボルトを取付座11に保持されたナットにねじ込むことによって取付座11がダッシュサイドパネル2(エプロンパネル)に締め付け固定される。更に、ダッシュサイドパネル2の円孔からエンジンルーム1側に突出するネジ部材7の端部に螺合する不図示のナットを締め付けることによってダッシュサイドパネル2に取り付けられる。尚、インレットパイプ5は、エンジンルーム1側からダッシュサイドパネル2の円孔を通過させて上部タンク4Bに形成された接続部に挿入嵌合して取り付けられる。
【0021】
上述のようにウォッシャタンク4がダッシュサイドパネル2に取り付けられると、このウォッシャタンク4を収容するダッシュサイドパネル2とフェンダパネル3の間の空間Sの下部開口部(タイヤハウス13に開口する開口部)はフェンダライニング14によって塞がれるが、本実施の形態では、フェンダライニング14の頂部近傍の1点はウォッシャタンク4の固定座12に固定される。即ち、図2に示すように、ダッシュサイドパネル2に先に取り付けられたウォッシャタンク4の固定座12にフェンダライニング14の頂部近傍に形成された台座15を合わせ、この台座15に形成された円孔15aに下方(タイヤハウス13側)から挿通するクリップ16をウォッシャタンク4の固定座12に形成された円孔12aに差し込むことによってフェンダライニング14の上部近傍の1点がウォッシャタンク4の固定座12に固定される。尚、フェンダライニング14の他の複数箇所はクリップによって車体に固定される。
【0022】
フェンダライニング14の上部近傍がウォッシャタンク4の車両の前後方向の中央付近に位置しているため、フェンダライニング14を固定するためにダッシュサイドパネル2から取付部を突設すると、ウォッシャタンク4に支障が生じるが、本実施の形態では、ウォッシャタンク4に固定座12を形成し、この固定座12にフェンダライニング14の頂部近傍の1点を固定するようにしたため、ダッシュサイドパネル2にフェンダライニング14を固定するための屈曲した取付部(図8に示す取付部102a)を車両側方に張り出して形成する必要がなく、フェンダパネル3とダッシュサイドパネル2の間の空間Sの開口幅X3を図8に示す従来の開口幅X1よりも広くすることができる(X3>X1)。この結果、図3に示すようにウォッシャタンク4をフェンダパネル3とダッシュサイドパネル2の間の空間Sに下方から組み込む際の作業性を考慮しても、ウォッシャタンク4の幅寸法X4を従来の幅寸法X2よりも大きくすることができ(X4>X2)、その拡大した幅寸法分だけウォッシャタンク4の容量を増やすことができる。このため、ウォッシャタンク4へのウォッシャ液の補給頻度を減らすことができ、ユーザーの負担を軽減することができる。尚、ウォッシャタンク4のウォッシャ液の補給は、ウォッシャタンク4からダッシュサイドパネル2を貫通してエンジンルーム1内に突出するインレットパイプ5の端部に被着されたキャップ6を外し、インレットパイプ5の端部に開口する液補給口からウォッシャ液を注入することによってなされる。
【0023】
又、上述のようにダッシュサイドパネル2に車両側方に張り出す取付部を設ける必要がないため、該ダッシュサイドパネル2の生産性とウォッシャタンク4の組付性が高められる。
【0024】
そして、本実施の形態では、上に凸の湾曲形状に成形されたフェンダライニング14の頂部付近をウォッシャタンク4の下部に形成された固定座12に固定するようにしたため、固定座12を下方へと長く延設することなく容易に形成することができ、ウォッシャタンク4の生産性が更に高められるという効果が得られる。
【0025】
更に、本実施の形態のようにウォッシャタンク4にフェンダライニング14を固定するための固定座12を設けることによってフェンダライニング14の形状に自由度が増えるという効果も得られる。例えば、図6及び図7に示すように、タイヤハウス13内に突出する深さの深い固定座17の形状がフェンダライニング14に必要となった場合、プレス成形できないようなパネルの深絞り形状のため板金製のダッシュサイドパネル2では対応できないが、本実施の形態のようにウォッシャタンク4に固定座12を設けることによって深い固定座17の形状に対応することが可能となり、深さの深い固定座17をフェンダライニング14に一体に形成することができる。尚、図6は別実施形態に係るフェンダライニングの斜視図、図7は図6のB−B線断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 エンジンルーム
2 ダッシュサイドパネル
3 フェンダパネル
4 ウォッシャタンク
10,11 ウォッシャタンクの取付座
12 ウォッシャタンクの固定座
14 フェンダライニング
15 フェンダライニングの台座
S 空間


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のエンジンルーム側方のフェンダパネルとダッシュサイドパネルの間の空間に配置されるウォッシャタンクの取付構造であって、
前記ウォッシャタンクを前輪の上方に配置し、該ウォッシャタンクをこれの前後に設けられた取付座を介して車体に取り付けるとともに、該ウォッシャタンクの車両前後方向において前記前後の取付座の間に固定座を形成し、該固定座にフェンダライニングの一部を固定したことを特徴とする車両のウォッシャタンク取付構造。
【請求項2】
前記フェンダライニングを上に凸の湾曲形状に成形し、その頂部付近を前記ウォッシャタンクの下部に形成された前記固定座に固定したことを特徴とする請求項1記載の車両のウォッシャタンク取付構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−251662(P2011−251662A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128384(P2010−128384)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】