説明

車両のエアバッグ装置

【課題】エアバッグモジュール5の取付け、取外しに支障を来さないように、エアバック装置4を構成する。
【解決手段】インストルメントパネル1の後側支持部19とステアリングメンバー22との間にエアバッグモジュール5を通すスペースを確保し、このスペースにエアバッグモジュール5を後側から受けるバックプレート7を臨ませて、その上部を後側支持部19にフック23で留める一方、その下部をステアリングメンバー22に支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両のインストルメントパネル内の車幅方向に延びるステアリングメンバーの上方にエアバッグモジュールを組み込み、車両に衝撃が加わったときに助手席の乗員の前面にエアバッグを展開させることがなされている。このエアバッグモジュールは、ケースに収容されたエアバッグとガス発生器とを備えてなり、その点検や交換等の際の作業性の向上のために、エアバッグ装置はエアバッグモジュールの取付け・取外しが容易な構造にすることが望ましい。
【0003】
そのような観点から車両のエアバッグ装置を構成した例が特許文献1に記載されている。この例では、エアバッグモジュールの下部がステアリングメンバーに支持されているとともに、エアバッグモジュールの前部と後部がインストルメントパネルから下方に突設された前後の支持部にフック部材にて留められている。具体的には、エアバッグモジュールのケースからブラケットが下方に突設され、このブラケットがステアリングメンバーのブラケットにボルト及びナットにて締結されている。前側のフック部材は、上記ケースの前面に溶接されていて、インストルメントパネルの前側支持部に設けられた孔に掛けられている。後側のフック部材は、上記ケースの後面に溶接された台座ブラケットにボルト及びナットにて締結されていて、インストルメントパネルの前側支持部に設けられた孔に掛けられている。
【0004】
この例の場合、エアバッグモジュールをインストルメントパネルから取り外すときは、まず、後側フック部材とケース後面の台座ブラケットとの締結を解除して後側フック部材をインストルメントパネルの後側支持部から外す。次に、ケース下部のブラケットとステアリングメンバーのブラケットとの締結を解除する。これにより、ケース前面のフック部材をインストルメントパネルの前側支持部から外してエアバッグモジュールを取り出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4617766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
エアバッグ装置が作動したときは、エアバッグの展開圧力によってインストルメントパネル上面に形成された開裂リッドが開く。この開いたリッドと乗員との接触を避けるには、エアバッグモジュールをできるだけ前側に配置する必要がある。その場合、エアバッグモジュールがインストルメントパネル内のステアリングメンバーの上に配置されることが多くなる。ところが、ステアリングメンバーとインストルメントパネル上壁との間に、エアバッグモジュールを脱着できるように配設するスペースを十分に確保することができないことがある。
【0007】
すなわち、一般には、インストルメントパネルの内側にはエアバッグシュータが取り付けられ、このシュータ内にエアバッグモジュールが配設される。従って、エアバッグモジュールをシュータに対して下方から出し入れすることになるが、シュータとステアリングメンバーとの間隔が狭い場合には、エアバッグモジュールの出し入れをすることができない。
【0008】
そこで、本発明は、ステアリングメンバーとインストルメントパネル上壁との間に広いスペースを確保することができない場合でも、エアバッグモジュールの取付け、取外しに支障を来さないように、エアバック装置を構成する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために、インストルメントパネルからエアバッグモジュールの後側に突設する後側支持部の突出量を抑えて、該後側支持部とステアリングメンバーとの間にエアバッグモジュールを通すスペースを設け、その部位にバックプレートを脱着自在に設けた。
【0010】
すなわち、ここに提示する車両のエアバッグ装置は、ケースに収容されたエアバッグとエアバッグ膨張用ガスを発生するガス発生器とを備えてなるエアバッグモジュールが、インストルメントパネル内の車幅方向に延びるステアリングメンバーの上方に配置されているものであり、
上記エアバッグモジュールの前側において、上記インストルメントパネルの上壁部より下方に突設された前側支持部と、
上記エアバッグモジュールの後側において、上記インストルメントパネルの上壁部より下方に突設され、且つ上記ステアリングメンバーとの間に上記エアバッグモジュールを通すスペースがあけられた後側支持部と、
上記ステアリングメンバーと上記後側支持部との間に臨ませて上記エアバッグモジュールの後側に配置されたバックプレートと、
上記ケースを上記前側支持部に留める前側フックと、
上記バックプレートの上部を上記後側支持部に留める後側フックと、
上記エアバッグモジュールを上記ステアリングメンバーに支持すべく、上記ケースに設けられた、上記ステアリングメンバーに脱着可能な第1取付部と、
上記バックプレートを上記ステアリングメンバーに直接又は間接に支持すべく、該バックプレートの下部に設けられた、上記ステアリングメンバー又は上記ケースに脱着可能な第2取付部とを備えていることを特徴とする。
【0011】
このエアバック装置の場合、バックプレートは、インストルメントパネルの後側支持部とステアリングメンバーとを結び、エアバッグモジュールをその後側から受けることになる。このバックプレート下部の第2取付部をステアリングメンバー又はエアバッグモジュールのケースから外すと、バックプレートは、その上部の後側フックが後側支持部に掛けられているだけになるから、インストルメントパネルから簡単に取り外すことができる。これにより、インストルメントパネルの後側支持部とステアリングメンバーとの間にエアバッグモジュールを通すスペースができる。よって、エアバッグモジュールを当該スペースから後方に取り出すことができる。エアバッグ装置を車両に組み付けるときにおいても、エアバッグモジュールを上記スペースからステアリングメンバーの上に入れることができる。
【0012】
また、上述の如くバックプレートを取り外すことによってインストルメントパネルの後側支持部とステアリングメンバーとの間にエアバッグモジュールを通すスペースを形成するようにしたから、エアバッグモジュール脱着用のスペースを別途確保する必要はない。よって、エアバック装置全体をコンパクトにまとめることができ、インストルメントパネル上壁とステアリングメンバーとの間のスペースを広くとることができない場合のエアバッグモジュールの配置に有利になる。
【0013】
好ましい実施形態では、上記第1取付部及び上記第2取付部は、上記ステアリングメンバーに対してそれぞれ同じ方向から締結部材にて締結される。従って、第1取付部及び第2取付部の締結作業が容易になり、エアバッグモジュールの取付け、取外しにおける作業性が向上する。
【0014】
この場合、上記第1取付部及び上記第2取付部は、上記ステアリングメンバーに対して共締めされることがさらに好ましい。これにより、バックプレート及びエアバッグモジュールを一緒にステアリングメンバーに対して脱着することができ、作業工数が少なくなるため、作業性が向上する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、インストルメントパネルの後側支持部とステアリングメンバーとの間にエアバッグモジュールを通すスペースを確保し、このスペースにエアバッグモジュールを後側から受けるバックプレートを臨ませて、その上部を後側支持部にフックで留める一方、その下部をステアリングメンバー又はケースに支持するようにしたから、このバックプレートを外すことにより、エアバッグモジュールの取付け、取外しを後側から簡単に行なうことができる。そして、エアバッグモジュール脱着用のスペースを別途確保する必要がないから、エアバック装置全体をコンパクトにまとめることができ、インストルメントパネル上壁とステアリングメンバーとの間に、エアバッグモジュールを、その取付け、取外しに支障を来すことなく配置する上で有利になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】インストルメントパネルの斜視図である。
【図2】エアバッグ装置の断面図である。
【図3】エアバッグモジュールとバックプレートとの関係を示す平面図である。
【図4】エアバッグモジュールとバックプレートとの関係を示す斜視図である。
【図5】エアバッグシュータのインストルメントパネルへの組付態様を示す斜視図である。
【図6】インストルメントパネルを除いてエアバッグ装置を示す斜視図である。
【図7】エアバッグ装置の側部を示す斜視図である。
【図8】エアバッグ装置のバックプレートを外した状態を示す断面図である。
【図9】別の実施形態に係るエアバッグ装置を示す図6と同様の斜視図である。
【図10】さらに別の実施形態に係るエアバッグ装置を示す一部断面にした図6と同様の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0018】
図1に示す車両のインストルメントパネル1において、2は合成樹脂製のパネル本体、3はパネル本体2の表面に張られたトリムである。トリム3は図2に示すように発泡ウレタン層3aと表皮層3bとからなる。インストルメントパネル1の助手席側に、車両に衝撃が加わったときにインストルメントパネル1の上壁の開裂リッド1aからエアバッグを展開させて助手席の着座乗員を保護するエアバッグ装置4が組み込まれている。トリム3の裏面には開裂用溝3cが形成されている。
【0019】
<エアバッグ装置の構造>
図2に示すように、エアバッグ装置4は、エアバッグモジュール5、エアバッグシュータ6及びバックプレート7を備えている。エアバッグモジュール5は、鋼板製のケース8に収容されたエアバッグ11と、エアバッグ膨張用ガスを発生するガス発生器(インフレータ)12とを備えている。本例のガス発生器12はディスク型であり、ケース8の底部に組み付けられている。図3に示すように、ケース8は、開口部が矩形状になった角型ケースである。エアバッグ11は、平面形状が矩形状となるように折り畳まれてケース8に収容されている。
【0020】
図4に示すように、ケース8の後壁8aは、折り畳まれてケース8に収容されたエアバッグ11の高さに匹敵する高さになるように、前壁8bよりも高く立ち上げられている。ケース8の側壁8cは、前壁8b側から後壁8a側にいくに従って高くなり、後壁8a近傍では該後壁8aと同じ高さになっている。そして、この後壁8aと側壁8cとがなすコーナー部は、折り畳まれたエアバック11の後側の両側角部を覆うコーナーカバー部9を構成している。
【0021】
エアバッグシュータ6は、合成樹脂製であって、エアバッグ11を膨出させるシューティング筒10と、このシューティング筒10の上端開口を覆う前後のフラップ13を備えている。このフラップ13はトリム3の開裂溝3aが形成された部分と共に開裂リッド1aを構成している。シューティング筒10は、エアバッグモジュール5のケース8の形状に対応する矩形状の筒であり、図5にも示すように、エアバッグ11の膨出時の変形を抑える鋼板製の筒状補強部材14で補強されている。
【0022】
上記エアバッグシュータ6は、インストルメントパネル1のパネル本体2に保持されている。すなわち、図5に示すように、パネル本体2の上壁部にはエアバッグ用の開口15が形成されている。一方、シューティング筒10の上端にはフランジ16が設けられ、筒壁の外面には爪17が設けられている。そうして、このシューティング筒10がパネル本体2のエアバッグ用開口15に上方から差し込まれており、エアバッグシュータ6は、フランジ16と爪17とによって、パネル本体2のエアバッグ用開口15の縁部に保持されている。
【0023】
次にエアバッグモジュール5の支持構造を説明する。
【0024】
まず、エアバッグシュータ6は、上述の如く、インストルメントパネル1の上壁部に取り付けられ、そのシューティング筒10がインストルメントパネル1から下方に突出している。そして、このシューティング筒10の前壁及び後壁がエアバッグモジュール6のための前側支持部18及び後側支持部19を構成している。
【0025】
図2に示すように、エアバッグモジュール5は、エアバッグシュータ6の前側支持部18に前側フック21によって留められているとともに、インストルメントパネル1内を車幅方向に延びるステアリングメンバー(ステアリングシャフト等を支持する高強度メンバー)22に支持されている。エアバッグシュータ6の後側支持部19とステアリングメンバー22との間には、エアバッグモジュール5を通すスペースがあけられている。
【0026】
一方、バックプレート7は、エアバッグモジュール5を後側から受けるべく、上記スペースに臨むように配置されている。このバックプレート7の上部が後側フック23によって後側支持部19に留められ、その下部がステアリングメンバー22に支持されている。以下、具体的に説明する。
【0027】
エアバッグシュータ6の前側支持部18には、図5にも示すように、複数の係合孔24が車幅方向に間隔をおいて設けられている。そして、エアバッグモジュール5は、ケース8の前壁に固定された前側フック21を係合孔24に後側から掛けることによって、前側支持部18に留められている。
【0028】
ステアリングメンバー22には、図2に示すように、エアバッグモジュール5及びバックプレート7を支持するための支持ブラケット26が固定されている。支持ブラケット26は、後方を向いた支持面を備え、該支持面からボルトが後方へ向けて突設されている。一方、エアバッグモジュール5のケース8の下面にはブラケット27が固定されている。このブラケット27に下方へ突出した第1取付部27aが設けられている。エアバッグモジュール5は、ブラケット27の第1取付部27aをステアリングメンバー22の支持ブラケット26に後側からナットにて締結することによって、ステアリングメンバー22に支持されている。
【0029】
バックプレート7は、図4に示すように、エアバッグモジュール5のケース8の後面をカバーし、エアバッグ展開時のケース8の後方への変形(膨出変形)を抑える剛性付与部28を備えている。また、バックプレート7の上端部に、上記後側フック23が車幅方向に間隔をおいて複数設けられ、下端部の両側端から脚部29が下方へ延びている。
【0030】
剛性付与部28は、バックプレート7の車幅方向両端に対して中央が後方へ変位する形態の曲げ(以下、「横曲げ」という。)に対する剛性が高められた部分であり、車幅方向に延びる複数の補強ビード30が上下に並設されてなる。また、この剛性付与部28は車幅方向にのみ広がっている。補強ビード30は、バックプレート7のプレス成形時に該プレートに凹凸を付与して得た構造ビードである。
【0031】
脚部29には、インストルメントパネル1に上方から衝撃荷重を受けたときの変形を容易にする衝撃吸収部31が設けられている。この衝撃吸収部31は、脚部29の一部を後方へ「く」の字状に折り曲げてなる折曲部によって構成されている。そして、脚部29の衝撃吸収部31に続く下端部に第2取付部29aが設けられている。
【0032】
エアバッグシュータ6の後側支持部19には、図5にも示すように、バックプレート7を支持するべく複数の係合孔32が車幅方向に間隔をおいて設けられている。そして、バックプレート7は、図2及び図6に示すように、上端部の後側フック23を上記係合孔32に前側から掛けることによって、後側支持部19に留められている。さらに、バックプレート7は、その脚部29の第2取付部29aをステアリングメンバー22の支持ブラケット26に後側からナットにて締結することによって、ステアリングメンバー22に支持されている。
【0033】
本例の場合、エアバッグモジュール5のブラケット27の第1取付部27aと、バックプレート7の脚部29の第2取付部29aとは、ステアリングメンバー22の支持ブラケット26に対する締結方向が同じ(後側からの締結)であり、且つ共締めである。
【0034】
また、図3等に示すように、エアバッグモジュール5のケース8の両側壁にはブラケット33が設けられている。そして、図7に示すように、ケース8のブラケット33とインストルメントパネル本体2とが支持杆34によって連結されている。
【0035】
<エアバッグ装置の車両への組付、取外し>
エアバッグ装置4の車両への組付について説明する。まず、図5に示すように、エアバッグシュータ6のシューティング筒10に筒状補強部材14を嵌め、その状態でシューティング筒10をインストルメントパネル本体2の開口15に上から嵌め込む。これにより、図2に示すように、エアバッグシュータ6及び筒状補強部材14はフランジ16と爪17とによってパネル本体2の開口15の縁部に保持された状態になる。このエアバッグシュータ6及び筒状補強部材14が組み付けられたパネル本体2にトリム3を一体成形する。
【0036】
次いで、エアバッグシュータ6及び筒状補強部材14が組み付けられたインストルメントパネル1を車両に組み付け、エアバッグモジュール5をインストルメントパネル1内に組み込む。
【0037】
すなわち、図8に示すように、エアバッグシュータ6の後側支持部19とステアリングメンバー22との間のスペースを利用して、エアバッグモジュール5をステアリングメンバー22の上に後側から差し入れる。このエアバッグモジュール5の前側フック21をエアバッグシュータ6の前側支持部18の係合孔24に後側から掛ける。また、エアバッグモジュール5のケース8より下方に突出させた第1取付部27aのねじ孔をステアリングメンバー22の支持ブラケット26のボルトに嵌める。
【0038】
次に、バックプレート7の上部の後側フック23をエアバッグシュータ6の後側支持部19の係合孔32に前側から掛け、バックプレート7の下端の第2取付部29aのねじ孔をステアリングメンバー22の支持ブラケット26のボルトに嵌める。そうして、このボルトにナットを適用して、エアバッグモジュール5及びバックプレート7をステアリングメンバー22の支持ブラケット26に共締めする。しかる後、図7に示すように、エアバッグモジュール5のケース8のブラケット33とインストルメントパネル本体2とを支持杆34によって連結する。
【0039】
エアバッグモジュール5をインストルメントパネル1内から取り出すには、まず、バックプレート7を外す。すなわち、ステアリングメンバー22のブラケット26のボルトから上述の共締めに係るナットを外す。そして、バックプレート7の下端の第2取付部29aを上記ボルトから抜き、上端の後側フック23を後側支持部19の係合孔32から外して、バックプレート7をインストルメントパネル1内から取り出す。これにより、後側支持部19とステアリングメンバー22との間に、エアバッグモジュール5を通すスペースができる。
【0040】
そこで、エアバッグモジュール5のケース8とインストルメントパネル本体2とを連結する支持杆34を外す。そして、ケース8より下方に突出させた第1取付部27aをステアリングメンバー22の支持ブラケット26のボルトから外し、前側フック21を前側支持部18の係合孔24から外して、エアバッグモジュール5を上記スペースから後方に取り出す。なお、支持杆34をバックプレート7より先に取り外してもよい。
【0041】
<エアバッグの展開について>
車両に前突等による衝撃が加わると、そのことがセンサ(図示省略)で感知されてガス発生器12が作動し、ケース8内のエアバッグ11にガスが注入される。これにより、エアバッグ11が折り畳み状態から展開し、エアバッグシュータ6のフラップ13がエアバッグ11に押されて上方へ開き、インストルメントパネル1のトリム3が開裂して、エアバッグ11が車室内に膨出する。
【0042】
エアバッグ11の上記展開において、エアバッグモジュール5のケース8は、図3に鎖線で示すように、後壁8aがエアバッグ展開圧力によって後方へ膨出するように歪む。仮にこの歪みが大きくなると、エアバッグ11の展開遅れ(速やかに展開しない)等を招き、展開性能が悪くなる。
【0043】
この点に関し、本発明の場合、後壁8aの後方への変形がバックプレート7によって抑えられる。よって、エアバッグ11の良好な展開に有利になる。この場合、バッグプレート7の剛性付与部28は、車幅方向に延びる複数の補強ビード30を有し、横曲げに対する剛性が高いから、上記後壁8aの後方への変形が効果的に抑えられる。しかも、補強ビード30はプレス成形による構造ビードであるから、バックプレート7の重量増が抑えられ、車両の軽量化にも有利になる。
【0044】
上述の如く、エアバッグ11の展開圧力がバックプレート7に加わることから、このバックプレート7の後側フック23を介してエアバッグシュータ6に力が加わる。しかし、このエアバッグシュータ6のシューティング筒10は筒状補強部材14が補強されているから、シューティング筒10の変形は防止され、エアバッグ11のスムースな展開・膨出に有利になる。
【0045】
また、ケース8にはエアバッグ11の後側の両側角部を覆うコーナーカバー部9が設けられているから、このコーナーカバー部9がエアバッグシュータ6と共にエアバッグ11の展開ないし膨出をガイドすることになる。従って、バックプレート7の剛性付与部28は車幅方向のみに広がっているものの、コーナーカバー部9がガイド機能を果たすから、エアバッグ11の展開、膨出に支障はない。そして、バックプレート7は車幅方向のみに広がるプレートとすることができるから、その製作が容易になる。
【0046】
また、エアバッグ11の展開圧力はインストルメントパネル1にこれを押し上げる力として加わる。しかし、インストルメントパネル本体2とエアバッグモジュール5のケース8とが支持杆34によって連結されているため、インストルメントパネル1の上方への逃げは抑えられる。よって、エアバッグ11の展開時には開裂リッド1aが速やかに開裂するため、エアバッグのスムースな展開が図れる。
【0047】
<ヘッドインパクトプロテクション>
上記エアバッグ装置において、バックプレート7は、後側支持部19とステアリングメンバー22とを結んでいるが、脚部29の一部を後方へ折り曲げてなる衝撃吸収部31を備えている。このため、図2に示すように、インストルメントパネル1に上方から衝撃荷重Fが加わったときは、バックプレート7が衝撃吸収部31において鎖線で示すように大きく折れ曲がり、これにより、衝撃エネルギーが吸収される。よって、事故等で乗員がインストルメントパネル1の上面に衝突した場合の乗員の保護に有利になる。
【0048】
<他の実施形態>
図9はバックプレート7の衝撃吸収部31に関する他の実施形態を示す。この実施形態では、バックプレート7の脚部29に折曲部を設ける代わりに、脚部29のフラット部分にスロット35を設けている。すなわち、脚部29の強度を部分的に落とすことによって衝撃吸収部31を形成している。この場合、スロット35を有するフラット部分が衝撃荷重によって変形することによって衝撃が吸収される。
【0049】
図10はバックプレート7に関する他の実施形態を示す。この実施形態では、エアバッグモジュール5のケース8にコーナーカバー部を設ける代わりに、バックプレート7に、その車幅方向の両端部よりエアバッグモジュール5のエアバッグ11の後側の両側角部を覆うように前方に延びるサイドカバー36を設けている。従って、エアバッグ11はバックプレート7のサイドカバー36にガイドされて展開・膨出することになる。バックプレート7を外すことによってエアバッグモジュール7を出し入れすることができる点は、先の実施形態と同じである。
【0050】
<その他>
上記実施形態では、エアバッグモジュール5の第1取付部27aとバックプレート7の第2取付部29aをステアリングメンバー22のブラケット26に共締めしてが、ステアリングメンバー22に第1取付部27aを締結するブラケットと第2取付部29aを締結するブラケットとを別に設けてもよい。
【0051】
また、バックプレート7の第2取付部29aはエアバッグモジュール5のケース8に締結するようにしてもよい。
【0052】
上記実施形態では、エアバッグシュータ6のシューティング筒10を筒状補強部材14で補強したが、シューティング筒10に補強リブを設けるなど他の補強手段を採用することもできる。
【符号の説明】
【0053】
1 インストルメントパネル
2 パネル本体
3 トリム
4 エアバッグ装置
5 エアバッグモジュール
6 エアバッグシュータ
7 バックプレート
8 ケース
11 エアバッグ
12 ガス発生器
18 前側支持部
19 後側支持部
21 前側フック
22 ステアリングメンバー
23 後側フック
27a 第1取付部
28 剛性付与部
29a 第2取付部
31 衝撃吸収部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースに収容されたエアバッグとエアバッグ膨張用ガスを発生するガス発生器とを備えてなるエアバッグモジュールが、インストルメントパネル内の車幅方向に延びるステアリングメンバーの上方に配置されている車両のエアバッグ装置において、
上記エアバッグモジュールの前側において、上記インストルメントパネルの上壁部より下方に突設された前側支持部と、
上記エアバッグモジュールの後側において、上記インストルメントパネルの上壁部より下方に突設され、且つ上記ステアリングメンバーとの間に上記エアバッグモジュールを通すスペースがあけられた後側支持部と、
上記ステアリングメンバーと上記後側支持部との間に臨ませて上記エアバッグモジュールの後側に配置されたバックプレートと、
上記ケースを上記前側支持部に留める前側フックと、
上記バックプレートの上部を上記後側支持部に留める後側フックと、
上記エアバッグモジュールを上記ステアリングメンバーに支持すべく、上記ケースに設けられた、上記ステアリングメンバーに脱着可能な第1取付部と、
上記バックプレートを上記ステアリングメンバーに直接又は間接に支持すべく、該バックプレートの下部に設けられた、上記ステアリングメンバー又は上記ケースに脱着可能な第2取付部とを備えていることを特徴とする車両のエアバッグ装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記第1取付部及び上記第2取付部は、上記ステアリングメンバーに対してそれぞれ同じ方向から締結部材にて締結されることを特徴とする車両のエアバッグ装置。
【請求項3】
請求項2において、
上記第1取付部及び上記第2取付部は、上記ステアリングメンバーに対して共締めされることを特徴とする車両のエアバッグ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−67291(P2013−67291A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207786(P2011−207786)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(390026538)ダイキョーニシカワ株式会社 (492)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】