説明

車両のエアバッグ装置

【課題】エアバッグ11の展開圧力によるエアバッグケース8の変形を抑えてエアバッグ11の展開をスムースにする。
【解決手段】エアバッグモジュール5のエアバッグ11を収容するケース8の後側に、エアバッグ展開時のケース8の後方への変形を抑えるべく、剛性付与部28を有するバックプレート7を配置し、このバックプレート7は、ステアリングメンバー又はケース8に支持するとともに、バックプレート7の上部をインストルメントパネル1より下方に突出した後側支持部19に留める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両のインストルメントパネル内の車幅方向に延びるステアリングメンバーの上方にエアバッグモジュールを組み込み、車両に衝撃が加わったときに助手席の乗員の前面にエアバッグを展開させることがなされている。このエアバッグモジュールは、ケースに収容されたエアバッグとガス発生器とを備えてなり、その点検や交換等の際の作業性の向上のために、エアバッグ装置はエアバッグモジュールの取付け・取外しが容易な構造にすることが望ましい。
【0003】
そのような観点から車両のエアバッグ装置を構成した例が特許文献1に記載されている。この例では、エアバッグモジュールの下部がステアリングメンバーに支持されているとともに、エアバッグモジュールの前部と後部がインストルメントパネルから下方に突設された前後の支持部にフック部材にて留められている。具体的には、エアバッグモジュールのケースからブラケットが下方に突設され、このブラケットがステアリングメンバーのブラケットにボルト及びナットにて締結されている。前側のフック部材は、上記ケースの前面に溶接されていて、インストルメントパネルの前側支持部に設けられた孔に掛けられている。後側のフック部材は、上記ケースの後面に溶接された台座ブラケットにボルト及びナットにて締結されていて、インストルメントパネルの前側支持部に設けられた孔に掛けられている。
【0004】
この例の場合、エアバッグモジュールをインストルメントパネルから取り外すときは、まず、後側フック部材とケース後面の台座ブラケットとの締結を解除して後側フック部材をインストルメントパネルの後側支持部から外す。次に、ケース下部のブラケットとステアリングメンバーのブラケットとの締結を解除する。これにより、ケース前面のフック部材をインストルメントパネルの前側支持部から外してエアバッグモジュールを取り出すことができる。
【0005】
また、上記特許文献1には、エアバッグモジュールのケース及び台座ブラケットに、インストルメントパネルに上方から衝撃荷重を受けたときの変形を容易にすべく衝撃吸収部が設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4617766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記エアバッグ装置においては、車両に前突等による衝撃が加わると、そのことがセンサ(図示省略)で感知されてガス発生器が作動し、ケースに収容されているエアバッグにガスが注入される。これにより、エアバッグが折り畳み状態から膨らんで展開し、その展開圧力によってインストルメントパネル上壁の開裂リッドが開裂して、エアバッグが車室内に膨出する。
【0008】
上記エアバッグの展開において、エアバッグモジュールのエアバッグケースは、エアバッグ展開圧によって後方へ膨出するように歪む。仮にこの歪みが大きくなると、エアバッグの展開遅れ(速やかに展開しない)等を招き、展開性能が悪くなる。エアバッグケースのケース壁に構造ビードを設けてその剛性を高めることも考えられるが、構造ビードによってケース壁に凹凸ができると、エアバッグの展開に不利になる。
【0009】
本発明は、上記エアバッグ展開圧力によるエアバッグケースの変形を抑えてエアバッグの展開をスムースにする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するために、エアバッグケースの変形をバックプレートにて抑えるようにした。
【0011】
すなわち、ここに提示する車両のエアバッグ装置は、ケースに収容されたエアバッグとエアバッグ膨張用ガスを発生するガス発生器とを備えてなるエアバッグモジュールが、インストルメントパネル内に配置されていて、
上記エアバッグモジュールの前側において、上記インストルメントパネルより下方に突設された前側支持部と、
上記エアバッグモジュールの後側において、上記インストルメントパネルより下方に突設された後側支持部とを備え、
上記ケースは、上記ステアリングメンバーに支持されているとともに、上記前側支持部に留められており、
上記ケースの後側に、上記エアバッグ展開時の上記ケースの後方への変形を抑えるべく、剛性付与部を有するバックプレートが配置され、
上記バックプレートは、上記ステアリングメンバー又は上記ケースに支持されているとともに、上部が上記後側支持部に留められていることを特徴とする。
【0012】
従って、エアバッグの展開圧力によってケースが後方に大きく変形することがバックプレートの剛性付与部によって防止され、エアバッグの展開遅れ等の展開不良を招くことが避けられる。
【0013】
好ましい実施形態では、上記バックプレートの剛性付与部は、車幅方向に延びる複数のビードが上下に並設されてなる。従って、バックプレートの剛性付与部は、その車幅方向両端に対して中央が後方へ変位する形態の曲げ(以下、「横曲げ」という。)に対する剛性がビードによって高められ、簡単な構成でケースの後方への変形を抑制することができる。しかも、そのようなビードはバックプレートのプレス成形によって簡単に形成することができる。
【0014】
好ましい実施形態では、上記バックプレートの剛性付与部よりも下側に、上記インストルメントパネルに上方から衝撃荷重を受けたときの変形を容易にする衝撃吸収部が設けられている。これは、所謂ヘッドインパクトプロテクションに係る構造である。すなわち、エアバッグケースの背部にバックプレートを設けることによってインストルメントパネルの上下方向の剛性が高くなると、事故等で乗員がインストルメントパネル1の上面に衝突した場合の乗員の保護に不利になる。そこで、インストルメントパネルに上方から衝撃荷重が加わったときのバックプレートの変形を衝撃吸収部によって容易にし、その変形によって衝撃エネルギーの吸収を図ったものであり、乗員の保護に有利になる。
【0015】
上記衝撃吸収部は、例えば、上記バックプレートを部分的に後方へ折り曲げてなる折曲部によって構成することができる。この場合、インストルメントパネルに上方から衝撃荷重が加わったときに、バックプレートが折曲部において大きく折れ曲がり、これにより、衝撃エネルギーが吸収される。
【0016】
好ましい実施形態では、上記エアバッグは、平面形状が矩形状となるように折り畳まれて上記ケースに収容されており、上記バックプレートの剛性付与部は車幅方向にのみ広がり、上記ケースが、上記折り畳まれたエアバッグの後側の両側角部を覆うコーナーカバー部を備えている。
【0017】
従って、バックプレートの剛性付与部は車幅方向のみに広がっているものの、ケースのコーナーカバー部がエアバッグの展開ないし膨出をガイドするから、エアバッグの展開、膨出がスムースになる。そして、バックプレートは車幅方向のみに広がるプレートとすることができるから、その製作が容易になる。
【0018】
上記バックプレートを上記ケースに支持する場合の好ましい実施形態では、上記ケースの後壁の下端部に後側へ突出した複数の凸部が設けられ、各凸部裏側の凹部にスタッドボルトの頭部が収容されて該スタッドボルトの軸部が凸部を貫通して後方へ突出しており、このスタッドボルトに対するナット締結によって上記バックプレートの下端部が上記ケースの後壁に支持されている。
【0019】
かかる支持構造によれば、バックプレートの上下長さ(上記後側支持部に対する留め部からケースに対する支持部までの寸法)が、バックプレートをステアリングメンバーに支持する場合に比べて短くなる。よって、エアバッグの展開圧力によってバックプレートに加わる後方への曲げモーメントが小さくなる。これにより、バックプレートが倒れにくくなるため、エアバッグの展開が安定し、また、インストルメントパネルより下方へ突出している後側支持部の破損も避けられる。従って、エアバッグ装置の補強要素を減らすことも可能になり、軽量化の上でも有利になる。
【0020】
ここに、特許文献1においても後側のフック部材がケースに支持されているが、それは、予めスタッドボルトを固定した台座ブラケットをケースに固着しておき、この台座ブラケットを介してフック部材をケースに締結するというものである。
【0021】
これに対して、本発明に係る上記支持構造では、ケースの後壁に凸部を設け、その裏側の凹部にバックプレート支持用のスタッドボルトの頭部を収容するようにしている。従って、スタッドボルト頭部のケース内への突出がなく、ケースへのエアバッグやガス発生器の収容、エアバッグのスムースな展開に有利になる。すなわち、上記支持構造によれば、特許文献1とは違って、特別なブラケットを用いることなく、しかも、ケースへのエアバッグやガス発生器の収容、エアバッグの展開に支障を来すことなく、バックプレートをケースに支持することができ、構造が簡単になるとともに、軽量化にも有利になる。
【0022】
また、別の好ましい実施形態では、上記前側支持部及び後側支持部は、上記インストルメントパネルに固定された筒状のエアバッグシュータの前部と後部とによって構成されており、このエアバッグシュータに、エアバッグ膨出時の該シュータの変形を抑える筒状補強部材が嵌められている。すなわち、エアバッグの展開圧力はバックプレートを介してエアバッグシュータに加わるが、それによって、エアバッグシュータが変形すると、エアバッグのスムースな展開に不利になる。そこで、エアバッグシュータの変形を抑えるべく、これを筒補強部材によって補強するものである。これによって、エアバッグのスムースな展開・膨出に有利になる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、エアバッグを収容するケースの後側に、エアバッグ展開時のケースの後方への変形を抑えるべく、剛性付与部を有するバックプレートを配置し、このバックプレートをステアリングメンバー又はケースに支持するとともに、バックプレートの上部をインストルメントパネルより突出した後側支持部に留めるようにしたから、エアバッグの展開圧力によってケースが後方に大きく変形することが防止され、エアバッグのスムースな展開、膨出に有利になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】インストルメントパネルの斜視図である。
【図2】実施形態1に係るエアバッグ装置の断面図である。
【図3】実施形態1のエアバッグモジュールとバックプレートとの関係を示す平面図である。
【図4】実施形態1のエアバッグモジュールとバックプレートとの関係を示す斜視図である。
【図5】実施形態1のエアバッグシュータのインストルメントパネルへの組付態様を示す斜視図である。
【図6】実施形態1のインストルメントパネルを除いてエアバッグ装置を示す斜視図である。
【図7】実施形態1のエアバッグ装置の側部を示す斜視図である。
【図8】実施形態1のエアバッグ装置のバックプレートを外した状態を示す断面図である。
【図9】別の実施形態に係るエアバッグ装置を示す図6と同様の斜視図である。
【図10】実施形態2に係るエアバッグ装置を示す図6と同様の斜視図である。
【図11】実施形態2に係るケースの斜視図である。
【図12】実施形態2に係るエアバッグ装置の断面図である。
【図13】実施形態2に係るエアバッグ装置を基準ピン位置で切断した要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0026】
図1に示す車両のインストルメントパネル1において、2は合成樹脂製のパネル本体、3はパネル本体2の表面に張られたトリムである。トリム3は図2に示すように発泡ウレタン層3aと表皮層3bとからなる。インストルメントパネル1の助手席側に、車両に衝撃が加わったときにインストルメントパネル1の上壁の開裂リッド1aからエアバッグを展開させて助手席の着座乗員を保護するエアバッグ装置4が組み込まれている。トリム3の裏面には開裂用溝3cが形成されている。
【0027】
[実施形態1]
<エアバッグ装置の構造>
図2に示すように、エアバッグ装置4は、エアバッグモジュール5、エアバッグシュータ6及びバックプレート7を備えている。エアバッグモジュール5は、鋼板製のケース8に収容されたエアバッグ11と、エアバッグ膨張用ガスを発生するガス発生器(インフレータ)12とを備えている。本例のガス発生器12はディスク型であり、ケース8の底部に組み付けられている。図3に示すように、ケース8は、開口部が矩形状になった角型ケースである。エアバッグ11は、平面形状が矩形状となるように折り畳まれてケース8に収容されている。
【0028】
図4に示すように、ケース8の後壁8aは、折り畳まれてケース8に収容されたエアバッグ11の高さに匹敵する高さになるように、前壁8bよりも高く立ち上げられている。ケース8の側壁8cは、前壁8b側から後壁8a側にいくに従って高くなり、後壁8a近傍では該後壁8aと同じ高さになっている。そして、この後壁8aと側壁8cとがなすコーナー部は、折り畳まれたエアバッグ11の後側の両側角部を覆うコーナーカバー部9を構成している。
【0029】
エアバッグシュータ6は、合成樹脂製であって、エアバッグ11を膨出させるシューティング筒10と、このシューティング筒10の上端開口を覆う前後のフラップ13を備えている。このフラップ13はトリム3の開裂溝3aが形成された部分と共に開裂リッド1aを構成している。シューティング筒10は、エアバッグモジュール5のケース8の形状に対応する矩形状の筒であり、図5にも示すように、エアバッグ11の膨出時の変形を抑える鋼板製の筒状補強部材14で補強されている。
【0030】
上記エアバッグシュータ6は、インストルメントパネル1のパネル本体2に保持されている。すなわち、図5に示すように、パネル本体2の上壁部にはエアバッグ用の開口15が形成されている。一方、シューティング筒10の上端にはフランジ16が設けられ、筒壁の外面には爪17が設けられている。そうして、このシューティング筒10がパネル本体2のエアバッグ用開口15に上方から差し込まれており、エアバッグシュータ6は、フランジ16と爪17とによって、パネル本体2のエアバッグ用開口15の縁部に保持されている。
【0031】
次にエアバッグモジュール5の支持構造を説明する。
【0032】
まず、エアバッグシュータ6は、上述の如く、インストルメントパネル1の上壁部に取り付けられ、そのシューティング筒10がインストルメントパネル1から下方に突出している。そして、このシューティング筒10の前壁及び後壁がエアバッグモジュール6のための前側支持部18及び後側支持部19を構成している。
【0033】
図2に示すように、エアバッグモジュール5は、エアバッグシュータ6の前側支持部18に前側フック21によって留められているとともに、インストルメントパネル1内を車幅方向に延びるステアリングメンバー(ステアリングシャフト等を支持する高強度メンバー)22に支持されている。エアバッグシュータ6の後側支持部19とステアリングメンバー22との間には、エアバッグモジュール5を通すスペースがあけられている。
【0034】
一方、バックプレート7は、エアバッグモジュール5を後側から受けるべく、上記スペースに臨むように配置されている。このバックプレート7の上部が後側フック23によって後側支持部19に留められ、その下部がステアリングメンバー22に支持されている。以下、具体的に説明する。
【0035】
エアバッグシュータ6の前側支持部18には、図5にも示すように、複数の係合孔24が車幅方向に間隔をおいて設けられている。そして、エアバッグモジュール5は、ケース8の前壁に固定された前側フック21を係合孔24に後側から掛けることによって、前側支持部18に留められている。
【0036】
ステアリングメンバー22には、図2に示すように、エアバッグモジュール5及びバックプレート7を支持するための支持ブラケット26が固定されている。支持ブラケット26は、後方を向いた支持面を備え、該支持面からボルトが後方へ向けて突設されている。一方、エアバッグモジュール5のケース8の下面にはブラケット27が固定されている。このブラケット27に下方へ突出した第1取付部27aが設けられている。エアバッグモジュール5は、ブラケット27の第1取付部27aをステアリングメンバー22の支持ブラケット26に後側からナットにて締結することによって、ステアリングメンバー22に支持されている。
【0037】
バックプレート7は、図4に示すように、エアバッグモジュール5のケース8の後面をカバーし、エアバッグ展開時のケース8の後方への変形(膨出変形)を抑える剛性付与部28を備えている。また、バックプレート7の上端部に、上記後側フック23が車幅方向に間隔をおいて複数設けられ、下端部の両側端から脚部29が下方へ延びている。
【0038】
剛性付与部28は、バックプレート7の車幅方向両端に対して中央が後方へ変位する形態の曲げ(以下、「横曲げ」という。)に対する剛性が高められた部分であり、車幅方向に延びる複数の補強ビード30が上下に並設されてなる。また、この剛性付与部28は車幅方向にのみ広がっている。補強ビード30は、バックプレート7のプレス成形時に該プレートに凹凸を付与して得た構造ビードである。
【0039】
バックプレート7の剛性付与部28の上端より後側フック23に至る間は、ケース8の後壁8aと略面一になるように設けられている。
【0040】
脚部29には、インストルメントパネル1に上方から衝撃荷重を受けたときの変形を容易にする衝撃吸収部31が設けられている。この衝撃吸収部31は、脚部29の一部を後方へ「く」の字状に折り曲げてなる折曲部によって構成されている。そして、脚部29の衝撃吸収部31に続く下端部に第2取付部29aが設けられている。
【0041】
エアバッグシュータ6の後側支持部19には、図5にも示すように、バックプレート7を支持するべく複数の係合孔32が車幅方向に間隔をおいて設けられている。そして、バックプレート7は、図2及び図6に示すように、上端部の後側フック23を上記係合孔32に前側から掛けることによって、後側支持部19に留められている。さらに、バックプレート7は、その脚部29の第2取付部29aをステアリングメンバー22の支持ブラケット26に後側からナットにて締結することによって、ステアリングメンバー22に支持されている。
【0042】
本例の場合、エアバッグモジュール5のブラケット27の第1取付部27aと、バックプレート7の脚部29の第2取付部29aとは、ステアリングメンバー22の支持ブラケット26に対する締結方向が同じ(後側からの締結)であり、且つ共締めである。
【0043】
また、図3等に示すように、エアバッグモジュール5のケース8の両側壁にはブラケット33が設けられている。そして、図7に示すように、ケース8のブラケット33とインストルメントパネル本体2とが支持杆34によって連結されている。
【0044】
<エアバッグ装置の車両への組付、取外し>
エアバッグ装置4の車両への組付について説明する。まず、図5に示すように、エアバッグシュータ6のシューティング筒10に筒状補強部材14を嵌め、その状態でシューティング筒10をインストルメントパネル本体2の開口15に上から嵌め込む。これにより、図2に示すように、エアバッグシュータ6及び筒状補強部材14はフランジ16と爪17とによってパネル本体2の開口15の縁部に保持された状態になる。このエアバッグシュータ6及び筒状補強部材14が組み付けられたパネル本体2にトリム3を一体成形する。
【0045】
次いで、エアバッグシュータ6及び筒状補強部材14が組み付けられたインストルメントパネル1を車両に組み付け、エアバッグモジュール5をインストルメントパネル1内に組み込む。
【0046】
すなわち、図8に示すように、エアバッグシュータ6の後側支持部19とステアリングメンバー22との間のスペースを利用して、エアバッグモジュール5をステアリングメンバー22の上に後側から差し入れる。このエアバッグモジュール5の前側フック21をエアバッグシュータ6の前側支持部18の係合孔24に後側から掛ける。また、エアバッグモジュール5のケース8より下方に突出させた第1取付部27aのねじ孔をステアリングメンバー22の支持ブラケット26のボルトに嵌める。
【0047】
次に、バックプレート7の上部の後側フック23をエアバッグシュータ6の後側支持部19の係合孔32に前側から掛け、バックプレート7の下端の第2取付部29aのねじ孔をステアリングメンバー22の支持ブラケット26のボルトに嵌める。そうして、このボルトにナットを適用して、エアバッグモジュール5及びバックプレート7をステアリングメンバー22の支持ブラケット26に共締めする。しかる後、図7に示すように、エアバッグモジュール5のケース8のブラケット33とインストルメントパネル本体2とを支持杆34によって連結する。
【0048】
エアバッグモジュール5をインストルメントパネル1内から取り出すには、まず、バックプレート7を外す。すなわち、ステアリングメンバー22のブラケット26のボルトから上述の共締めに係るナットを外す。そして、バックプレート7の下端の第2取付部29aを上記ボルトから抜き、上端の後側フック23を後側支持部19の係合孔32から外して、バックプレート7をインストルメントパネル1内から取り出す。これにより、後側支持部19とステアリングメンバー22との間に、エアバッグモジュール5を通すスペースができる。
【0049】
そこで、エアバッグモジュール5のケース8とインストルメントパネル本体2とを連結する支持杆34を外す。そして、ケース8より下方に突出させた第1取付部27aをステアリングメンバー22の支持ブラケット26のボルトから外し、前側フック21を前側支持部18の係合孔24から外して、エアバッグモジュール5を上記スペースから後方に取り出す。なお、支持杆34をバックプレート7より先に取り外してもよい。
【0050】
<エアバッグの展開について>
車両に前突等による衝撃が加わると、そのことがセンサ(図示省略)で感知されてガス発生器12が作動し、ケース8内のエアバッグ11にガスが注入される。これにより、エアバッグ11が折り畳み状態から展開し、エアバッグシュータ6のフラップ13がエアバッグ11に押されて上方へ開き、インストルメントパネル1のトリム3が開裂して、エアバッグ11が車室内に膨出する。
【0051】
エアバッグ11の上記展開において、エアバッグモジュール5のケース8は、図3に鎖線で示すように、後壁8aがエアバッグ展開圧力によって後方へ膨出するように歪む。仮にこの歪みが大きくなると、エアバッグ11の展開遅れ(速やかに展開しない)等を招き、展開性能が悪くなる。
【0052】
この点に関し、本発明の場合、後壁8aの後方への変形がバックプレート7によって抑えられる。よって、エアバッグ11の良好な展開に有利になる。この場合、バッグプレート7の剛性付与部28は、車幅方向に延びる複数の補強ビード30を有し、横曲げに対する剛性が高いから、上記後壁8aの後方への変形が効果的に抑えられる。しかも、補強ビード30はプレス成形による構造ビードであるから、バックプレート7の重量増が抑えられ、車両の軽量化にも有利になる。
【0053】
上述の如く、エアバッグ11の展開圧力がバックプレート7に加わることから、このバックプレート7の後側フック23を介してエアバッグシュータ6に力が加わる。しかし、このエアバッグシュータ6のシューティング筒10は筒状補強部材14が補強されているから、シューティング筒10の変形は防止され、エアバッグ11のスムースな展開・膨出に有利になる。
【0054】
また、ケース8にはエアバッグ11の後側の両側角部を覆うコーナーカバー部9が設けられているから、このコーナーカバー部9がエアバッグシュータ6と共にエアバッグ11の展開ないし膨出をガイドすることになる。従って、バックプレート7の剛性付与部28は車幅方向のみに広がっているものの、コーナーカバー部9がガイド機能を果たすから、エアバッグ11の展開、膨出に支障はない。そして、バックプレート7は車幅方向のみに広がるプレートとすることができるから、その製作が容易になる。
【0055】
また、エアバッグ11の展開圧力はインストルメントパネル1にこれを押し上げる力として加わる。しかし、インストルメントパネル本体2とエアバッグモジュール5のケース8とが支持杆34によって連結されているため、インストルメントパネル1の上方への逃げは抑えられる。よって、エアバッグ11の展開時には開裂リッド1aが速やかに開裂するため、エアバッグのスムースな展開が図れる。
【0056】
<ヘッドインパクトプロテクション>
上記エアバッグ装置において、バックプレート7は、後側支持部19とステアリングメンバー22とを結んでいるが、脚部29の一部を後方へ折り曲げてなる衝撃吸収部31を備えている。このため、図2に示すように、インストルメントパネル1に上方から衝撃荷重Fが加わったときは、バックプレート7が衝撃吸収部31において鎖線で示すように大きく折れ曲がり、これにより、衝撃エネルギーが吸収される。よって、事故等で乗員がインストルメントパネル1の上面に衝突した場合の乗員の保護に有利になる。
【0057】
<衝撃吸収部に関する他の実施形態>
図9はバックプレート7の衝撃吸収部31に関する他の実施形態を示す。この実施形態では、バックプレート7の脚部29に折曲部を設ける代わりに、脚部29のフラット部分にスロット35を設けている。すなわち、脚部29の強度を部分的に落とすことによって衝撃吸収部31を形成している。この場合、スロット35を有するフラット部分が衝撃荷重によって変形することによって衝撃が吸収される。
【0058】
<その他>
上記実施形態では、エアバッグモジュール5の第1取付部27aとバックプレート7の第2取付部29aをステアリングメンバー22のブラケット26に共締めしてが、ステアリングメンバー22に第1取付部27aを締結するブラケットと第2取付部29aを締結するブラケットとを別に設けてもよい。
【0059】
また、バックプレート7の第2取付部29aはエアバッグモジュール5のケース8に締結するようにしてもよい。
【0060】
上記実施形態では、エアバッグシュータ6のシューティング筒10を筒状補強部材14で補強したが、シューティング筒10に補強リブを設けるなど他の補強手段を採用することもできる。
【0061】
[実施形態2]
図10乃至図13に示すように、本実施形態では、バックプレート7の下端部を、実施形態1とは違ってステアリングメンバー22ではなく、エアバッグモジュール5のケース8の後壁8aの下部に支持している。以下、具体的に説明する。
【0062】
まず、図10に示すように、バックプレート7は、実施形態1と同じく、その上端部の後側フック23をエアバッグシュータ6の後側支持部19の係合孔32に前側から掛けることによって、この後側支持部19に留められている。また、バックプレート7は、エアバッグモジュール5のケース8の後面をカバーし、エアバッグ展開時のケース8の後方への変形(膨出変形)を抑える剛性付与部28を備えている。剛性付与部28には、車幅方向に延びる複数の補強ビード30が上下に並設されている。
【0063】
また、バックプレート7の上記剛性付与部28よりも下側にヘッドインパクトプロテクションのための衝撃吸収部31が設けられている。この衝撃吸収部31は、当該プレートを後方へ「く」の字状に折り曲げてなる折曲部によって構成されている。
【0064】
そうして、本実施形態では、図11に示すように、ケース8の後壁8aの下部に後側へ突出した車幅方向に並ぶ複数の凸部41が設けられている。後壁8aの車幅方向両側の凸部41には、バックプレート7とケース8とを締結するためのスタッドボルト42が設けられている。車幅方向中央部の凸部41には、バックプレート7とケース8との相互位置決め用の基準ピン43が設けられている。
【0065】
スタッドボルト42は、図12に示すように、その頭部が凸部41の裏側(前側)の凹部に収容されて当該ケース8に溶接され、軸部(ねじ部)が凸部41を貫通して後方へ突出している。基準ピン43も、図13に示すように、頭部を有し、この頭部が凸部41の裏側(前側)の凹部に収容されて当該ケース8に溶接され、ピン部が凸部41を貫通して後方へ突出している。基準ピン43の後方への突出量はスタッドボルト42の後方への突出量よりも大きい。
【0066】
図10に示すように、バックプレート7の下端部の上記スタッドボルト42に対応する部分には下方に開口した取付用の逆U字状切欠き44が設けられている。また、バックプレート7の下端部には上記基準ピン43に対応する部分に後方へ突出した突出部45が設けられている。図12に示すように、バックプレート7の取付用切欠き44がスタッドボルト42の軸部に嵌められ、スタッドボルト42にナットが適用されてバックプレート7の下端部がケースの下端部に支持されている。図13に示すように、ケース8の基準ピン43は、バックプレート7の突出部45の先端部に設けた位置決め孔47に嵌まっている。
【0067】
本実施形態では、図12及び図13に示すように、ステアリングメンバー22の後面部にコ字状の支持ブラケット26が固定されている。この支持ブラケット26は、後方を向いた支持面を備え、該支持面からボルトが後方へ向けて突設されている。一方、ケース8の下面にはブラケット27が固定されている。このブラケット27の後部に下方へ突出した取付部が設けられている。このブラケット27の取付部を支持ブラケット26に後側からナットにて締結することによって、ケース8がステアリングメンバー22に支持されている。
【0068】
なお、先の実施形態1では、エアバッグシュータ6に筒状補強部材14が嵌められ、ケース8とインストルメントパネル本体2とが支持杆34によって連結されているが、本実施形態2ではそのような筒状補強部材や支持杆を設けていない。
【0069】
<バックプレート7の取付け>
エアバッグモジュール5の前側フック21をエアバッグシュータ6の前側支持部18の係合孔24に掛け、エアバッグモジュール5のケース8より下方に突出させたブラケット27をステアリングメンバー22の支持ブラケット26に締結する。次に、バックプレート7の後側フック23をエアバッグシュータ6の後側支持部19の係合孔32に掛ける。そして、バックプレート7の下部を前方に移動させ、ケース8のスタッドボルト42をバックプレート7の取付用切欠き44に嵌める。このとき、基準ピン43と位置決め孔47との嵌合により、バックプレート7がケース8に位置決めされるから、スタッドボルト42のねじ部がバックプレート7の取付用切欠き44の周縁部に干渉して損傷することが避けられ、バックプレート7のケース8への確実な締結に有利になる。
【0070】
<エアバッグの展開>
エアバッグ11が展開するとき、その展開圧力によってバックプレート7にその下端部を支点として後方へ倒す方向の力が加わる。本実施形態のバックプレート7は、その下端部がケース8に支持されていて、この下端支持部から後側支持部19に対する留め部までの上下長さが、バックプレート7の下端部をステアリングメンバー22に支持した実施形態1よりも短い。すなわち、エアバッグ11の展開圧力によってバックプレート7に加わる後方への曲げモーメントが小さくなる。これにより、バックプレート7が倒れにくくなるため、エアバッグ11の展開が安定し、また、インストルメントパネル1より下方へ突出している後側支持部19の破損も避けられる。その結果、エアバッグ装置の補強要素としての筒状補強部材14は不要になり、軽量化に有利になる。
【0071】
また、本実施形態2では、スタッドボルト42及び基準ピン43の頭部をケース8の後壁8aに凸部41の裏側凹部に収容しているから、それら頭部のケース8内への突出がない。よって、ケース8へのエアバッグ11やガス発生器12の収容、エアバッグ11のスムースな展開に有利になる。
【0072】
<その他>
上記実施形態2においても、ケース8とインストルメントパネル本体2とを連結する支持杆34を設けることができる。
【0073】
また、バックプレート7には取付用の逆U字状切欠き44に代えて、ボルト挿入孔を設けてよい。
【符号の説明】
【0074】
1 インストルメントパネル
2 パネル本体
3 トリム
4 エアバッグ装置
5 エアバッグモジュール
6 エアバッグシュータ
7 バックプレート
8 ケース
9 コーナーカバー部
11 エアバッグ
12 ガス発生器
18 前側支持部
19 後側支持部
21 前側フック
22 ステアリングメンバー
23 後側フック
27a 第1取付部
28 剛性付与部
29a 第2取付部
31 衝撃吸収部
41 凸部
42 スタッドボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースに収容されたエアバッグとエアバッグ膨張用ガスを発生するガス発生器とを備えてなるエアバッグモジュールが、インストルメントパネル内に配置されている車両のエアバッグ装置において、
上記エアバッグモジュールの前側において、上記インストルメントパネルより下方に突設された前側支持部と、
上記エアバッグモジュールの後側において、上記インストルメントパネルより下方に突設された後側支持部とを備え、
上記ケースは、上記ステアリングメンバーに支持されているとともに、上記前側支持部に留められており、
上記ケースの後側に、上記エアバッグ展開時の上記ケースの後方への変形を抑えるべく、剛性付与部を有するバックプレートが配置され、
上記バックプレートは、上記ステアリングメンバー又は上記ケースに支持されているとともに、上部が上記後側支持部に留められていることを特徴とする車両のエアバッグ装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記バックプレートの剛性付与部は、車幅方向に延びる複数のビードが上下に並設されてなることを特徴とする車両のエアバッグ装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
上記バックプレートの剛性付与部よりも下側に、上記インストルメントパネルに上方から衝撃荷重を受けたときの変形を容易にする衝撃吸収部が設けられていることを特徴とする車両のエアバッグ装置。
【請求項4】
請求項3において、
上記衝撃吸収部は、上記バックプレートを部分的に側方へ折り曲げてなる折曲部によって構成されていることを特徴とする車両のエアバッグ装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一において、
上記エアバッグは、平面形状が矩形状となるように折り畳まれて上記ケースに収容されており、
上記バックプレートの剛性付与部は車幅方向にのみ広がり、上記ケースが、上記折り畳まれたエアバッグの後側の両側角部を覆うコーナーカバー部を備えていることを特徴とする車両のエアバッグ装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一において、
上記ケースの後壁の下端部に後側へ突出した複数の凸部が設けられ、各凸部裏側の凹部にスタッドボルトの頭部が収容されて該スタッドボルトの軸部が凸部を貫通して後方へ突出しており、
上記バックプレートは、上記スタッドボルトに対するナット締結によって下端部が上記ケースの後壁に支持されていることを特徴とする車両のエアバッグ装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一において、
上記前側支持部及び後側支持部は、上記インストルメントパネルに固定された筒状のエアバッグシュータの前部と後部とによって構成されており、
上記エアバッグシュータに、上記エアバッグ膨出時の該シュータの変形を抑える筒状補強部材が嵌められていることを特徴とする車両のエアバッグ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−79062(P2013−79062A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−144079(P2012−144079)
【出願日】平成24年6月27日(2012.6.27)
【出願人】(390026538)ダイキョーニシカワ株式会社 (492)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】