説明

車両のエネルギー回生装置

【課題】電気回生と油圧回生とを切り替えて回生を行うことにより高効率で回生を行うことができる車両のエネルギー回生装置を提供する。
【解決手段】車両の運動エネルギーを電気エネルギーとして回生する電気回生手段と、車両の運動エネルギーを油圧エネルギーとして回生する油圧回生手段と、車両の機関運転状態を検出する運転状態検出手段と、前記運転状態検出手段により検出される機関回転数が所定の閾値より低い場合、前記油圧回生手段により回生を行い、前記機関回転数が前記閾値以上の場合、前記電気回生手段により回生を行う回生制御手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のエネルギー回生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンから入力される動力を車両の駆動軸へ伝達する動力伝達機構において、エンジンから駆動軸への動力伝達経路の途中から取り出した動力により駆動可能な発電機や油圧ポンプを備え、車両減速時等の駆動軸側から動力伝達経路に動力が入力される場合に、駆動軸から入力される動力を利用して発電機や油圧ポンプを駆動し、車両の運動エネルギーを電気エネルギーや油圧エネルギーとして回生する技術が知られている。
【0003】
これに関連して、特許文献1には、原動機から変速機入力軸への動力伝達経路から取り出した動力を用いて補機を駆動する入力側駆動と、変速機出力軸から負荷への動力伝達経路から取り出した動力を用いて当該補機を駆動する出力側駆動と、を選択的に行う動力切替機構を備えた補機駆動装置において、補機として発電機を備え負荷からのエネルギーを電気エネルギーとして回生する構成と、補機として油圧ポンプを備え負荷からのエネルギーを油圧エネルギーとして回生する構成と、がそれぞれ開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−248446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発電機による電気回生と油圧ポンプによる油圧回生とは、回生効率の特性が異なる。従って、電気回生と油圧回生とを切り替え可能に回生装置を構成し、それぞれの回生効率の特性を考慮した制御を行えば、回生効率を向上させることができると考えられる。
【0006】
本発明はこの着眼に基づいてなされたものであり、電気回生と油圧回生とを切り替えて回生を行うことにより高効率で回生を行うことができる車両のエネルギー回生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の車両のエネルギー回生装置は、
車両の運動エネルギーを電気エネルギーとして回生する電気回生手段と、
車両の運動エネルギーを油圧エネルギーとして回生する油圧回生手段と、
車両の機関運転状態を検出する運転状態検出手段と、
前記運転状態検出手段により検出される機関回転数が所定の閾値より低い場合、前記油圧回生手段により回生を行い、前記機関回転数が前記閾値以上の場合、前記電気回生手段により回生を行う回生制御手段と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
電気回生手段による回生効率(電気回生効率)及び油圧回生手段による回生効率(油圧回生効率)は、ともに機関回転数によって変化する特性がある。この特性は、ともに機関回転数が高くなるほど回生効率が高くなる傾向があるが、機関回転数に応じた変化の仕方は電気回生効率と油圧回生効率とで異なる。具体的には、油圧回生効率の機関回転数に応じた変化の仕方は緩やかであるのに対し、電気回生効率は機関回転数に応じて大きく変化する。そして、低回転域では油圧回生効率が電気回生効率を上回るのに対し、高回転域に
おいては電気回生効率が油圧回生効率を上回る。従って、より高効率で回生を行うことができる回生手段が、ある機関回転数を境に変化する。本発明では、この境となる機関回転数に相当する機関回転数を閾値として、検出された機関回転数が閾値より低い場合は油圧回生手段により回生を行い、検出された機関回転数が閾値以上の場合は電気回生手段により回生を行う。従って、全機関回転数において回生効率の高い方の回生手段により回生が行われることになるので、高効率で回生を行うことが可能になる。
【0009】
機関回転数に対する油圧回生効率の変化特性は、油圧回生手段における油温に応じて変化する。具体的には、等機関回転数条件では、油温が低くなるほど回生効率は高くなる傾向がある。従って、油温が低くなるほど、より高回転側まで油圧回生効率優位となる。
【0010】
この点に鑑みて、本発明においては、
前記油圧回生手段における油温を検出する油温検出手段を備え、
前記閾値は、前記油温が低いほど高回転側の値であるようにしても良い。
【0011】
機関回転数に対する電気回生効率の変化特性は、電気回生手段における発電電圧に応じて変化する。具体的には、等機関回転数条件では、発電電圧が高くなるほど回生効率は高くなる傾向がある。従って、発電電圧が高くなるほど、より低回転側まで電気回生効率優位となる。
【0012】
この点に鑑みて、本発明においては、
前記電気回生手段における発電電圧を検出する発電電圧検出手段を備え、
前記閾値は、前記発電電圧が高いほど低回転側の値であるようにしても良い。
【0013】
なお、電気回生効率及び油圧回生効率は、機関回転数以外の機関運転状態や、電気回生手段の温度、バッテリの温度や蓄電余裕量、油圧回生手段の温度、油温、オイル吐出量、吐出圧力、アキュムレータ圧力等の種々のパラメータによっても変化し得る。従って、電気回生効率及び油圧回生効率に影響し得るこれらのパラメータを検出し、それに基づいて現在の条件での電気回生効率及び油圧回生効率を算出或は予め設定したマップから読み込む等して検出し、検出した電気回生効率と油圧回生効率を比較し、回生効率が高い方の回生手段により回生を行うようにしても良い。
【0014】
すなわち、本発明は、
車両の運動エネルギーを電気エネルギーとして回生する電気回生手段と、
車両の運動エネルギーを油圧エネルギーとして回生する油圧回生手段と、
車両の機関運転状態を検出する運転状態検出手段と、
前記運転状態検出手段により検出される機関運転状態に基づいて前記電気回生手段による回生効率を検出する電気回生効率検出手段と、
前記運転状態検出手段により検出される機関運転状態に基づいて前記油圧回生手段による回生効率を検出する油圧回生効率検出手段と、
前記電気回生効率検出手段により検出される回生効率と前記油圧回生効率検出手段により検出される回生効率とを比較し、回生効率が高い方の回生手段により回生を行う回生制御手段と、
を備えることを特徴とする車両のエネルギー回生装置であっても良い。
【0015】
また、電気回生手段及び油圧回生手段による回生にはそれぞれ上限が存在する場合がある。電気回生手段による回生の場合、バッテリにおける蓄電量が上限に近い状態では、車両の運動エネルギーを全て電気回生手段により回生できない可能性がある。また、油圧回生手段による回生の場合、アキュムレータにおける蓄圧が上限に近い状態では、車両の運動エネルギーを全て油圧回生手段により回生できない可能性がある。そのような場合、回
生効率の高い方の回生手段をメインとして回生を行い、当該メインの回生手段で回生できないエネルギーを他方の回生手段により回生するようにしても良い。これにより、高効率で回生を行うことができるとともに、より多くの運動エネルギーを回生することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電気回生と油圧回生とを切り替えて回生を行うことにより高効率で回生を行うことができる車両のエネルギー回生装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1の車両のエネルギー回生装置の概略構成を示す図である。
【図2】実施例1の車両のエネルギー回生装置における回生制御を表すフローチャートである。
【図3】電気回生効率及び油圧回生効率の回転数に対する変化特性を表す図である。
【図4】実施例2の車両のエネルギー回生装置における回生制御を表すフローチャートである。
【図5】オルタネータの構造を示す図である。
【図6】オルタネータのフィールドコイルの抵抗値とオルタネータの温度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施例1)
以下に図面を参照して、本発明を実施するための実施形態を例示的に詳しく説明する。図1は本実施例に係る車両のエネルギー回生装置の概略構成を示す図である。図1において、車両1は、原動機としてのエンジン2、エンジン2が出力する動力を車輪3に伝達する動力伝達機構としての駆動軸11、動力入力軸14から入力される動力により回転駆動されて発電する電気回生手段としてのオルタネータ4、オルタネータ4が発電した電力を蓄電するバッテリ5、動力入力軸15から入力される動力により回転駆動されてリザーバタンク7からオイルを吸い上げ吐出し油圧を発生する油圧回生手段としての油圧ポンプ6、油圧ポンプ6による油圧を蓄圧するアキュムレータ8を備える。
【0019】
駆動軸11から動力伝達経路12を介して取り出された動力は、動力切換機構9に入力され、動力入力軸14及び/又は動力入力軸15に出力される。動力切換機構9は、動力伝達経路12から入力される動力を動力入力軸14及び動力入力軸15の両方に動力を分配可能な構成でも良いし、動力入力軸14又は動力入力軸15のいずれか一方に選択的に出力可能な構成でも良い。動力切換機構9は、ECU10からの制御により動力の分配比率又は動力出力先の選択を制御される。動力切換機構9は、遊星歯車機構やクラッチ等を利用した公知の機構により実施する。
【0020】
ECU10は、エンジン2を制御するコンピュータである。ECU10には、車両の運転者によるアクセルペダル(不図示)の踏み込み量を検出するアクセル開度センサ16、車両の速度を検出する車速センサ17及びエンジン2の機関回転数を検出する回転数センサ18による検出値が入力される(運転状態検出手段)。
【0021】
また、オルタネータ4の温度を検出するオルタネータ温度センサ19、オルタネータ4の回転数を検出するオルタネータ回転数センサ20、オルタネータ4の発電電圧を検出する発電電圧検出手段としてのオルタネータ発電電圧センサ21、バッテリ5の温度を検出するバッテリ温度センサ22、バッテリ5の蓄電状態を検出するバッテリSOCセンサ23、油圧ポンプ6のオイルの温度を検出する油温検出手段としてのオイル温度センサ24、油圧ポンプ6の回転数を検出する油圧ポンプ回転数センサ25、油圧ポンプ6のオイル
吐出量を検出する油圧ポンプ吐出量センサ26、油圧ポンプ6の油圧を検出する油圧ポンプ圧力センサ27、アキュムレータ8の蓄圧状態を検出するアキュムレータ圧力センサ28による検出値が入力される。
【0022】
ECU10は、これら各種センサから入力される検出値に基づいて、エンジン2及び動力切換機構9を制御する。ECU10は、CPU、RAM、ROM等を有する一般的な構成のマイクロコンピュータである。
【0023】
なお、オルタネータ4の温度は、オルタネータ温度センサ19により検出する代わりに、オルタネータ4のフィールドコイルの抵抗値に基づいて推定しても良い。図5はオルタネータ4の内部構造を示す図である。図5に示すようにオルタネータ4の構成部品の1つであるフィールドコイル29は、その抵抗値がオルタネータ4の温度と関係がある(図6参照)。従って、オルタネータ4の温度をセンサによって直接測定する代わりに、フィールドコイル29の抵抗値を測定して、図6に示す関係に基づいてオルタネータ4の温度を推定することができる。
【0024】
車両1の減速時には、車輪3の回転力を駆動軸11を介してエンジン2に入力し、エンジン2を回転させることにより、車両の運動エネルギーを熱エネルギーに変換したり、動力伝達経路12及び動力入力軸14を介してオルタネータ4に入力し、オルタネータ4で発電することにより、車両の運動エネルギーを電気エネルギーに変換したり(電気回生)、動力伝達経路12及び動力入力軸15を介して油圧ポンプ6に入力し、油圧ポンプ6で油圧を発生させることにより、車両の運動エネルギーを油圧エネルギーに変換したりすることで(油圧回生)、エネルギー回生が可能である。回生効率を高めることによって車両の燃費特性が向上する。
【0025】
図3は、オルタネータ4による電気回生の効率(電気回生効率)及び油圧ポンプ6による油圧回生の効率(油圧回生効率)の機関回転数に対する変化特性を表す図である。図3に示すように、電気回生効率及び油圧回生効率は、機関回転数によって変化する特性を有し、ともに機関回転数が高いほど回生効率が高くなる傾向があるが、電気回生効率と油圧回生効率とではその特性に相違がある。図3に示すように、油圧回生効率は機関回転数の変化に対して比較的緩やかに変化する特性を有する一方、電気回生効率は機関回転数の変化に対して比較的大きく変化する特性を有しており、そのため、低回転域では油圧回生効率の方が電気回生効率より高く、高回転域では電気回生効率の方が油圧回生効率より高い。すなわち、より高効率で回生を行うことができる回生手段が変化する機関回転数(境界機関回転数)が存在する。
【0026】
また、油圧回生効率の機関回転数特性自体も、油圧ポンプ6の状態に応じて変化する。図3には、油圧ポンプ6の2つの異なるオイル温度における、油圧回生効率の機関回転数特性を示している。図3に示すように、オイル温度が低いほど油圧回生効率は高い傾向がある。同様に、電気回生効率の機関回転数特性自体も、オルタネータ4の状態に応じて変化する。図3には、オルタネータ4の2つの異なる発電電圧における、電気回生効率の機関回転数特性を示している。図3に示すように、発電電圧が高いほど電気回生効率は高い傾向がある。
【0027】
このような電気回生効率と油圧回生効率の特性のために、境界機関回転数は、オルタネータ4や油圧ポンプ6の状態によって変化する。例えば、あるオイル温度においてオルタネータ4の発電電圧が比較的高い場合の境界機関回転数NETH1と、同じオイル温度においてオルタネータ4の発電電圧が比較的低い場合の境界機関回転数NETH2とは、図3に示すように、NETH1<NETH2の関係になる。すなわち、他の条件が一定であれば、オルタネータ4の発電電圧が高いほど電気回生効率優位の領域がより低回転側にな
る。同様に、他の条件が一定であれば、油圧ポンプ6のオイル温度が低いほど油圧回生効率優位の領域がより高回転側になる。
【0028】
このような電気回生効率と油圧回生効率の特性を考慮して、本実施例のエネルギー回生装置では、オルタネータ4の発電電圧及び油圧ポンプ6のオイル温度に応じて機関回転数の閾値を決定し、機関回転数がこの閾値より低い場合には油圧回生を行い、機関回転数がこの閾値以上の場合には電気回生を行うようにした。この閾値は、図3に示したような電気回生効率及び油圧回生効率の機関回転数特性を種々の発電電圧及びオイル温度において求めたものをマップ化してECU10のROMに記憶させておく。
【0029】
そして、オルタネータ発電電圧センサ21による検出値及びオイル温度センサ24による検出値に基づいてマップから機関回転数の閾値NETHを読み込む。回転数センサ18によう検出値と閾値NETHとを比較し、機関回転数の検出値が閾値より低ければ油圧回生を行う。すなわち、動力伝達経路12からの動力が動力入力軸15に入力されるように動力切換機構9を制御し、油圧ポンプ6を駆動して油圧を発生させる。一方、機関回転数の検出値が閾値以上であれば電気回生を行う。すなわち、動力伝達経路12からの動力が動力入力軸14に入力されるように動力切換機構9を制御し、オルタネータ4を駆動して発電させる。これにより、全ての機関回転数において、電気回生と油圧回生のうち回生効率がより高い方の回生手段によって回生を行うことができる。よって、回生効率を向上させることが可能になる。
【0030】
図2は、以上説明した本実施例のエネルギー回生装置における回生制御を表すフローチャートである。このフローチャートで表されるプログラムはECU10のROMに記憶されており、ECU10のCPUにより実行される。このフローチャートの処理は、回生を行うべき条件が成立した場合に実行される。回生を行うべき条件とは、例えば車両の減速時である。このフローチャートの処理を実行するECU10が本発明の回生制御手段を構成する。
【0031】
ステップS101において、ECU10は回転数センサ18による検出値に基づいて機関回転数NEを検出する。
【0032】
ステップS102において、ECU10はオルタネータ発電電圧センサ21による検出値に基づいてオルタネータ4の発電電圧を検出する。
【0033】
ステップS103において、ECU10はオイル温度センサ24による検出値に基づいて油圧ポンプ6のオイル温度を検出する。
【0034】
ステップS104において、ECU10は上記検出した発電電圧とオイル温度に基づいて上述したマップを検索し、機関回転数の閾値NETHを決定する。なお、発電電圧とオイル温度から閾値NETHを算出する関数を用いて演算により決定しても良い。
【0035】
ステップS105において、ECU10は上記検出した機関回転数NEが上記決定した閾値NETHより小さいか否か判定する。機関回転数NEが閾値NETHより小さい場合(S105:Yes)、ECU10はステップS106に進み、油圧ポンプ6により油圧回生を行う。機関回転数NEが閾値NETH以上の場合(S105:No)、ECU10はステップS107に進み、オルタネータ4により電気回生を行う。
【0036】
(実施例2)
図3で説明したように、電気回生効率や油圧回生効率には機関回転数依存性があり、さらにその機関回転数特性は、オルタネータ4の発電電圧や油圧ポンプ6のオイル温度によ
って変化する。電気回生効率は、オルタネータ4の発電電圧以外にも、例えばオルタネータ4の温度やバッテリ5のSOC等のオルタネータ4の状態を表す種々のパラメータによっても変化し得る。また、油圧回生効率は、油圧ポンプ6の吐出量や圧力、アキュムレータ8の圧力といった油圧ポンプ6の状態を表す種々のパラメータによっても変化し得る。また、機関回転数以外の例えば負荷や車速といったエンジン2や車両1の運転状態によっても変化することも考えられる。
【0037】
そこで、これら電気回生効率や油圧回生効率に影響する種々のパラメータの、回生を行うべき条件が成立した時における値に基づいて、電気回生効率及び油圧回生効率を算出して比較し、より高効率で回生可能な回生手段を選択して回生を行うようにしても良い。上記種々のパラメータと電気回生効率及び油圧回生効率との関係は、予め実験や計算により調べてマップ化してECU10のROMに記憶させておいても良いし、演算により算出できるようにしても良い。こうすることで、より精度良く、効率の高い回生手段による回生を行うことが可能になる。
【0038】
図4は、以上説明した本実施例のエネルギー回生装置における回生制御を表すフローチャートである。このフローチャートで表されるプログラムはECU10のROMに記憶されており、ECU10のCPUにより実行される。このフローチャートの処理は、回生を行うべき条件が成立した場合に実行される。回生を行うべき条件とは、例えば車両の減速時である。このフローチャートの処理を実行するECU10が本発明の回生制御手段、電気回生効率検出手段及び油圧回生効率検出手段を構成する。
【0039】
ステップS201において、ECU10はアクセル開度センサ16、車速センサ17及び回転数センサ18による検出値に基づいて機関運転状態を検出する。
【0040】
ステップS202において、ECU10はオルタネータ温度センサ19、オルタネータ回転数センサ20、オルタネータ発電電圧センサ21、バッテリ温度センサ22及びバッテリSOCセンサ23による検出値に基づいてオルタネータ4の状態を検出する。
【0041】
ステップS203において、ECU10はオイル温度センサ24、油圧ポンプ回転数センサ25、油圧ポンプ吐出量センサ26、油圧ポンプ圧力センサ27及びアキュムレータ圧力センサ28による検出値に基づいて油圧ポンプ6の状態を検出する。
【0042】
ステップS204において、ECU10は電気回生可能量を検出する。電気回生可能量は、バッテリ5の充電余裕量であり、上記検出したオルタネータ4の状態を表す各種パラメータに基づいて検出される。
【0043】
ステップS205において、ECU10は油圧回生可能量を検出する。油圧回生可能量は、アキュムレータ8の蓄圧余裕量であり、上記検出した油圧ポンプ6の状態を表す各種パラメータに基づいて検出される。
【0044】
ステップS206において、ECU10は上記検出した機関運転状態、オルタネータ4の状態を表す各種パラメータ及び油圧ポンプ6の状態を表す各種パラメータに基づいて電気回生効率及び油圧回生効率を算出する。
【0045】
ステップS207において、ECU10は上記算出した電気回生効率と油圧回生効率を比較する。電気回生効率の方が油圧回生効率より高い場合(S207:Yes)、ECU10はステップS208に進み、オルタネータ4により電気回生を行う。一方、油圧回生効率の方が電気回生効率より高い場合(S207:No)、ECU10はステップS209に進み、油圧ポンプ6により油圧回生を行う。
【0046】
なお、図4には図示していないが、ステップS207の判定によりオルタネータ4により電気回生を行うと判定された場合であっても、ステップS204で検出した電気回生可能量が所定の閾値より少ない場合には、電気回生ではなく油圧回生を実行するようにしても良い。所定の閾値とは、バッテリ5が満充電か又はそれに近い状態であるか否かを判断できるように定められる値である。逆に、ステップS207の判定により油圧ポンプ6により油圧回生を行うと判定された場合であっても、ステップS205で検出した油圧回生可能量が所定の閾値より少ない場合には、油圧回生ではなく電気回生を実行するようにしても良い。所定の閾値とは、アキュムレータ8の蓄圧量が上限に近い状態であるか否かを判断できるように定められる値である。
【0047】
また、実施例1では電気回生効率の機関回転数特性がオルタネータ4の発電電圧によって変化することと、油圧回生効率の機関回転数特性が油圧ポンプ6のオイル温度によって変化することを考慮して、オルタネータ4の発電電圧と油圧ポンプ6のオイル温度とに基づいて機関回転数の閾値NETHを決定する例を示したが、実施例2で述べたように、電気回生効率や油圧回生効率の機関回転数特性はこれら以外のオルタネータ4の状態を表す種々のパラメータや油圧ポンプ6の状態を表す種々のパラメータによっても変化し得る。よって、機関回転数の閾値NETHを決定する際に基づくオルタネータ4の状態を表すパラメータや油圧ポンプ6の状態を表すパラメータは、実施例1の発電電圧やオイル温度に限らず、上述した他のパラメータであっても良い。また、3つ以上のパラメータに基づいて機関回転数の閾値NETHを決定するようにしても良い。
【符号の説明】
【0048】
1 車両
2 エンジン
3 車輪
4 オルタネータ
5 バッテリ
6 油圧ポンプ
7 リザーバタンク
8 アキュムレータ
9 動力切換機構
10 ECU
11 駆動軸
12 動力伝達経路
14 動力入力軸
15 動力入力軸
16 アクセル開度センサ
17 車速センサ
18 回転数センサ
19 オルタネータ温度センサ
20 オルタネータ回転数センサ
21 オルタネータ発電電圧センサ
22 バッテリ温度センサ
23 バッテリSOCセンサ
24 油圧ポンプ温度センサ
25 油圧ポンプ回転数センサ
26 油圧ポンプ吐出量センサ
27 油圧ポンプ圧力センサ
28 アキュムレータ圧力センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運動エネルギーを電気エネルギーとして回生する電気回生手段と、
車両の運動エネルギーを油圧エネルギーとして回生する油圧回生手段と、
車両の機関運転状態を検出する運転状態検出手段と、
前記運転状態検出手段により検出される機関回転数が所定の閾値より低い場合、前記油圧回生手段により回生を行い、前記機関回転数が前記閾値以上の場合、前記電気回生手段により回生を行う回生制御手段と、
を備えることを特徴とする車両のエネルギー回生装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記油圧回生手段における油温を検出する油温検出手段を備え、
前記閾値は、前記油温が低いほど高回転側の値であることを特徴とする車両のエネルギー回生装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記電気回生手段における発電電圧を検出する発電電圧検出手段を備え、
前記閾値は、前記発電電圧が高いほど低回転側の値であることを特徴とする車両のエネルギー回生装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−163311(P2011−163311A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−30176(P2010−30176)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】