説明

車両のエンジンルーム構造

【課題】エンジンルームの換気を促進することができるエンジンルーム構造を提供する。
【解決手段】車体11の後部にエンジンルーム12が形成されている。エンジンルーム12を囲繞する一方の側壁35に空気取入れ口40が形成されている。他方の側壁36に空気排出口41が形成されている。エンジンルーム12の後壁を構成する後面リッド13に、換気口50が形成されている。換気口50は車体11の幅方向に延びる横長スリットによって構成されている。換気口50の裏側のエンジンルーム12内に、換気口50に沿って遮蔽部材51が配置されている。遮蔽部材51の面積は換気口50の開口面積よりも大きい。この遮蔽部材51と後面リッド13との間に、空気が入り込むことのできる隙間Gが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バス等の車両のエンジンルーム構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体の後部にエンジンが配置された大型バスなどの車両では、車体後部に形成されたエンジンルームにエンジンやラジエータなどが収容されている。従来のリヤエンジンバスでは、例えば下記の特許文献1に開示されているように、車体の両側壁のうちの一方の側壁に空気取入れ口が形成され、他方の側壁に空気排出口が形成されている。この空気取入れ口から導入された外気によってラジエータが冷やされるとともに、エンジンルーム内を冷却し、熱交換されて温度が上昇した空気を空気排出口から車体の外部に排出するようになっている。
【特許文献1】実開平6−37073号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
最近の車両は、排出ガス浄化用の機器等がエンジンルーム内に収容される傾向があることなどから、エンジンルーム内の温度上昇を抑制することが重要になってきている。エンジンルーム内の温度を下げるためには、エンジンルームの換気を促進することが有効であるため、車体の側壁だけでなく車体の後壁等にも換気口を形成することが望まれる。
【0004】
しかしながらリヤエンジンバスの車体後面に換気口を形成すると、エンジンルーム内の様子が車体後方から見えてしまう。このため、特に観光バスのように走行性能だけでなく外観も重要視される車両においては、車体後面に換気口を設けることに格別の配慮が必要である。
【0005】
しかも車体後面に換気口が形成されると、エンジンあるいはその周辺機器から発生する音が換気口を通じて車外に向かい、例えば後方の車両に不快感を与える原因になりかねない。また車体後面の近傍には、エンジンによって回転するプーリ等のエンジン部品が車体後面にかなり接近した位置に配置されているため、車体後面に換気口が形成されていると、洗車時等に車体後面に吹き付けられた水がエンジンルーム内に直接進入し、エンジン部品に付着する懸念がある。
【0006】
従って本発明の目的は、エンジンルームの換気を促進することができ、かつ、換気口を設けたことによる問題を解決できるエンジンルーム構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のエンジンルーム構造は、車両のエンジンルームを形成する周壁と、前記周壁に形成され前記エンジンルームの外部と内部とを連通させる換気口と、前記換気口と前記エンジンルーム内の音発生源との間に配置されかつ前記周壁との間に空気が通ることのできる隙間を形成しかつ前記換気口の開口面積よりも大きな面積を有する遮蔽部材とを具備している。
【0008】
本発明の好ましい形態では、前記遮蔽部材は前記換気口に近接してエンジンルーム内に設けられ、前記車体の外側から見て、前記換気口の内周縁に対し前記遮蔽部材の外周縁が重なるオーバーラップ量が前記周壁から前記遮蔽部材までの距離と同等以上である。また前記遮蔽部材の外周縁のうち少なくとも上縁に、前記周壁に向って屈曲した形状のフランジ部が設けられていてもよい。
【0009】
さらに本発明の好ましい形態では、前記エンジンルームの前記周壁が左右一対の側壁を含み、一方の側壁に空気取入れ口が形成され、他方の側壁に空気排出口が形成され、前記空気取入れ口から前記エンジンルーム内に取入れた空気が前記空気排出口から車体の外部に排出されるエンジンルーム構造であって、前記換気口が前記エンジンルームの後壁をなす後面リッドに形成され、かつ、この換気口が前記車体の幅方向に延びる横長スリットからなる。また前記後壁の前記換気口の端部近傍に、上下方向に延びる縦長スリットからなる補助換気口が形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、エンジンルームの周壁の一部に換気口を形成したことにより、エンジンルーム内の換気を促進することができ、エンジンルーム内部の熱気を車外に逃がすことができる。そして本発明によれば、エンジンルーム内部の様子が前記換気口を通じて車外側から見えてしまうことを前記遮蔽部材によって回避できる。また本発明によれば、エンジンルーム内で発生する音が換気口を通じて外部に放出されることを前記遮蔽部材によって防止することができる。また洗車時等に車体の外側から水が吹き付けられても、この水が換気口から直接エンジン部品にかかることを防止できる。
【0011】
エンジンルームを構成する一方の側壁に空気取入れ口が形成され、他方の側壁に空気排出口が形成されている車両の場合、空気取入れ口から空気排出口に向ってエンジンルーム内に空気が流れるため、前記換気口が車体の幅方向に沿う横長スリットによって構成され、この換気口に沿って前記遮蔽部材を水平方向に配置するとよい。こうすることにより、空気取入れ口から空気排出口に向って流れる空気が前記遮蔽部材によって整流されつつ、前記換気口から外部に出てゆく。つまり遮蔽部材の整流効果によって換気効果をさらに高めることができる。また横長スリットからなる換気口であれば、例えば大型バスの後面リッドに換気口を形成する場合に、後面リッドの外観を損なうことがないなどデザイン的にも有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明の一実施形態に係るエンジンルーム構造を備えた車両について、図1から図4を参照して説明する。
図1は、車両10の一例として大型バス(リヤエンジンバス)を示している。この車両10の車体11の後部に、エンジンルーム12と、エンジンルーム12を覆う開閉可能な後面リッド13が設けられている。後面リッド13は、エンジンルーム12を形成する周壁の一部をなす後壁を構成している。図2に後面リッド13が示されている。
【0013】
後面リッド13は、車体11の後部に設けられたヒンジ機構15(図1に示す)によって、上下方向に回動させることができるようになっている。例えばエンジンルーム12内の整備を行なう際に、後面リッド13を回動上昇させた位置で保持することにより、エンジンルーム12の後面側を開放することができる。
【0014】
図3はエンジンルーム12の内部を模式的に示している。エンジンルーム12内に、エンジン20と、ラジエータ21と、エンジン部品22(一部のみ示す)等が収容されている。エンジン20が回転することによって得られる動力は、トランスミッションや差動機等の動力伝達機構25を介して車輪(後輪)26に伝達される。エンジン20はサイドメンバ30,31間に配置されている。サイドメンバ30,31は車体11の前後方向に延びている。このエンジンルーム12は、後面リッド13と、左右一対の両側壁35,36と、仕切り壁37などによって囲繞されている。
【0015】
車体11の後部の両側壁35,36のうち、一方の側壁35のラジエータ21と対向する位置に、空気取入れ口40が形成されている。他方の側壁36に空気排出口41が形成されている。これら空気取入れ口40と空気排出口41に網状のカバー部材43(図1に示す)が設けられている。
【0016】
ラジエータ21のファン21aが回転することによって空気(外気)42がエンジンルーム12内に取り込まれる。この空気42によってラジエータ21が冷却されるとともに、エンジン20や補機類等のエンジン関連機器が冷却され、温度が上昇した空気42が空気排出口41から車体11の外部に排出される。すなわちエンジンルーム12内には、空気取入れ口40と空気排出口41との間に空気42が流れる空気流路が形成される。
【0017】
エンジンルーム12の周壁の一部をなす後壁を構成する後面リッド13に、図2に示すように横長のスリットからなる換気口50が形成されている。この換気口50は、車体11の外部と内部とを連通させることができるように、後面リッド13の板厚方向に貫通している。
【0018】
換気口50は、車体11の幅方向(図2に矢印Yで示す方向)に沿って形成された横長スリットからなる。すなわちこの換気口50は、空気取入れ口40から空気排出口41に向って流れる空気の流通方向に沿って形成されている。横長スリットからなる換気口50は、大型バスの後面リッド13に形成されても、後面リッド13の外観を損なうことがなくデザイン的に良好である。
【0019】
そしてこの換気口50の裏側(エンジンルーム12の内部側)に、換気口50に沿って遮蔽部材51が配置されている。遮蔽部材51は、車体11の幅方向Yに沿って水平方向に延びる横長形状の金属板からなり、少なくとも換気口50の開口面積よりも大きな面積を有している。遮蔽部材51は例えば制振鋼板等の金属板からなり、エンジンルーム12内の音発生源(例えばエンジン20)と換気口50との間に配置されている。
【0020】
図4に示すように、遮蔽部材51とエンジンルーム12の後壁(後面リッド13)との間に、空気が通ることが可能な所定の広さの隙間Gが形成されている。このため遮蔽部材51はブラケット等の固定手段60(図3に示す)によって後面リッド13に固定されている。
【0021】
遮蔽部材51の上縁には、後面リッド13に向って屈曲した形状のフランジ部61が設けられている。このフランジ部61は遮蔽部材51の外周縁51aの全周にわたって形成されていてもよい。遮蔽部材51の外周縁51aにフランジ部61を設けたことにより、例えば高圧洗車機等を使用して洗車を行なう際、あるいは強い降雨時等に、水が換気口50から直接エンジンルーム12内に吹き込むことをさらに効果的に防止できる。
【0022】
遮蔽部材51は換気口50に近接してエンジンルーム12内に配置されている。車体11の外側から見て、換気口50の内周縁50aに対し、遮蔽部材51の外周縁51aが重なるオーバーラップ量G1は、周壁(後面リッド13)から遮蔽部材51までの距離G2と同等以上である。こうすることにより、エンジンルーム12内の騒音が換気口50から外部に洩れることを効果的に防止できるとともに、高圧洗車時あるいは降雨時等に水が換気口50から直接エンジンルーム12内に吹き込むことをさらに効果的に防止できる。
【0023】
後面リッド13の前記換気口50の両端部の近傍には、上下方向に延びる縦長スリットからなる補助換気口70が形成されている。この補助換気口70の裏側にも、前記遮蔽部材51と同様に遮蔽部材71(図2と図3に示す)が配置されている。
【0024】
以下に、前記構成のエンジンルーム構造を備えた車両10の作用について説明する。
図3に示すように、空気取入れ口40のラジエータ21のファン21aによって、空気(外気)42がラジエータ21を通ってエンジンルーム12内に導入される。この空気42によってラジエータ21が冷却されるとともに、エンジンルーム12内が冷やされたのち、空気42が空気排出口41に向かう。
【0025】
エンジンルーム12内を流れる空気42によってエンジン20や補機類等のエンジン関連機器が冷却される。エンジンルーム12内において後面リッド13付近を流れる空気42は、換気口50の裏側に配置されている遮蔽部材51によって整流されつつ、空気42の一部が遮蔽部材51と後面リッド13との間の隙間Gに入り、換気口50から外部に出てゆく。また空気の一部は補助換気口70から車外に出てゆく。
【0026】
このため換気口50と補助換気口70の位置や形状、大きさなどを適宜に選定することにより、エンジンルーム12内の換気を行なう上で望ましい空気の流れを生じさせることができ、エンジンルーム12の換気を促進できるため、エンジン20やエンジン関連機器等の温度上昇を抑えることができる。
【0027】
図4に示すように、車体11の外側から後面リッド13に向かう視線80に対しては、換気口50を通じてエンジンルーム12の内部が見えてしまうことを遮蔽部材51によって遮ることができ、また補助換気口70からエンジンルーム12内が見えてしまうことを遮蔽部材71によって遮ることができる。このためエンジンルーム12内の機器が車体11の後方から見えてしまうことを回避され、外観が良くなる。
【0028】
また洗車時等に外部から吹き付けられる水流81が換気口50からエンジンルーム12内に向っても、遮蔽部材51によって水流81を遮ることができるため、水流81が直接エンジン部品22にかかることを回避できる。補助換気口70も同様に、水がエンジン部品等に直接当たることを遮蔽部材71によって防止できる。
【0029】
またエンジンルーム12内で発生する音(音波82)が換気口50から外部に洩れることを遮蔽部材51によって防止できる。補助換気口70も同様に、エンジンルーム12内の音が外に洩れることを遮蔽部材71によって防止できる。このためエンジン20等から発生する騒音が車体11の後方に洩れることが軽減される。
【0030】
なお本発明を実施するに当たって、車体や換気口、遮蔽部材などの本発明の構成要素の構造と配置等の具体的態様を、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜に変形して実施できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態に係るエンジンルーム構造を備えた車両の斜視図。
【図2】図1に示された車両の後面リッドの斜視図。
【図3】図1に示された車両のエンジンルームの内部を模式的に示す平面図。
【図4】図2中のF4−F4線に沿うエンジンルームの一部の断面図。
【符号の説明】
【0032】
10…車両
11…車体
12…エンジンルーム
13…後面リッド(後壁)
20…エンジン
21…ラジエータ
22…エンジン部品
35,36…側壁
40…空気取入れ口
41…空気排出口
50…換気口
51…遮蔽部材
61…フランジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のエンジンルームを形成する周壁と、
前記周壁に形成され前記エンジンルームの外部と内部とを連通させる換気口と、
前記換気口と前記エンジンルーム内の音発生源との間に配置されかつ前記周壁との間に空気が通ることのできる隙間を形成しかつ前記換気口の開口面積よりも大きな面積を有する遮蔽部材と、
を具備したことを特徴とする車両のエンジンルーム構造。
【請求項2】
前記遮蔽部材は前記換気口に近接してエンジンルーム内に設けられ、前記車体の外側から見て、前記換気口の内周縁に対し前記遮蔽部材の外周縁が重なるオーバーラップ量が前記周壁から前記遮蔽部材までの距離と同等以上であることを特徴とする請求項1に記載の車両のエンジンルーム構造。
【請求項3】
前記遮蔽部材の外周縁のうち少なくとも上縁に、前記周壁に向って屈曲した形状のフランジ部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両のエンジンルーム構造。
【請求項4】
前記エンジンルームの前記周壁が左右一対の側壁を含み、一方の側壁に空気取入れ口が形成され、他方の側壁に空気排出口が形成され、前記空気取入れ口から前記エンジンルーム内に取入れた空気が前記空気排出口から車体の外部に排出されるエンジンルーム構造であって、前記換気口が前記エンジンルームの後壁をなす後面リッドに形成され、かつ、この換気口が前記車体の幅方向に延びる横長スリットからなることを特徴とする請求項1に記載の車両のエンジンルーム構造。
【請求項5】
前記後壁の前記換気口の端部近傍に、上下方向に延びる縦長スリットからなる補助換気口が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の車両のエンジンルーム構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−154830(P2009−154830A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338362(P2007−338362)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】